説明

ペットフード及びその製造方法

【課題】臭みを抑えることのできるウェットタイプのペットフードであり、かつ、残渣を利用しながら栄養価を高めることが可能なペットフード及びその製造方法を提供する。
【解決手段】このペットフードは、所定量のマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を原料として含有し、この原料を粉砕した後に混練し、更に、所定の形状に整形した後に加熱して密封包装されたものである。さらに、このペットフードの加熱後の水分を吸収しており、また、マグロ主体は、マグロの食用肉からなり、マグロ残渣物は、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード及びその製造方法に関し、特に、犬や猫を対象とした小包形態のウェットタイプのペットフード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、犬や猫用のペットフードとしては、通常、比較的水分の含有割合の多いウェットタイプ、水分の含有割合の少ないドライタイプ、これらの中間のセミモイストタイプがある。このうち、ウェットタイプのペットフードは、他のタイプのペットフードに比較して特に水分が多く、素材の持ち味がより生かされるという利点があるためペットフードとして多くの需要がある。
【0003】
この種のウェットタイプのペットフードは、例えば、特許文献1のペットフードの製造方法により製造される。同文献1のペットフードの製造方法では、ペットフードの原料として、肉原料、糖類、小麦粉、食品添加物等が用いられ、これらの原料が、原料を混練する混練工程と、加熱及び圧縮する加熱圧縮工程と、冷却する冷却工程と、整形する整形工程とを経由してペットフードに加工される。
【0004】
【特許文献1】特開平9−313113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のペットフードの製造方法においては、肉を原料としたウェットタイプのペットフードであるにもかかわらず、肉の臭みを抑えることは特に考慮されていない。そのため、製造後のペットフードには肉の生臭さが残り、包装後のペットフードを開封したときにこの臭いが周囲に広がることもあった。
【0006】
また、同ペットフードは、肉原料に、糖類、小麦粉、食品添加物等を加えることにより食感や外観を実際の肉に近づけようとしているが、これらの添加によりペットフードとしての栄養価が大きく向上するものではない。しかも、このペットフードは、多種類の原料を使用しているため無駄なコストもかかっていた。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、臭みを抑えることのできるウェットタイプのペットフードであり、かつ、残渣を利用しながら栄養価を高めることが可能なペットフード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、所定量のマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を原料として含有し、この原料を粉砕した後に混練し、更に、所定の形状に整形した後に加熱して密封包装したペットフードである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のペットフードにおいて、加熱後の水分を吸収したペットフードである。
【0010】
請求項3に係る発明は、マグロ主体は、マグロの食用肉からなり、マグロ残渣物は、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずを有するペットフードである。
【0011】
請求項4に係る発明は、原料に所定量の小麦粉を加えたペットフードである。
【0012】
請求項5に係る発明は、マグロ主体を100重量部としたときに、マグロ残渣物を20重量部、明日葉を3重量部、小麦粉を10重量部としたペットフードである。
【0013】
請求項6に係る発明は、マグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を含有する原料を所定量に計量する計量工程と、原料を粉砕して粉砕物を設ける粉砕工程と、粉砕物を混練して混練物を設ける混練工程と、混練物を所定の形状に整形して整形物を設ける整形工程と、整形物を加熱して加熱物を設ける加熱工程と、加熱物を密封包装して包装物を設ける包装工程とを有し、各工程を経ることによりペットフードを製造するようにしたペットフードの製造方法である。
【0014】
請求項7に係る発明は、加熱工程後に、加熱物の水分を吸収する吸水工程を経るようにしたペットフードの製造方法である。
【0015】
請求項8に係る発明は、マグロ主体は、マグロの食用肉からなり、マグロ残渣物は、マグロの残渣肉及び残渣骨と、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずとを有するペットフードの製造方法である。
【0016】
請求項9に係る発明は、混練工程前に、所定量の小麦粉を加えたペットフードの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、明日葉が有する香料作用により臭みを抑えることができるウェットタイプのペットフードであり、かつ、多種類の材料を必要とすることなく残渣を利用して栄養価の高いペットフードを提供できる。しかも、このペットフードは、保存料、防腐剤などの添加物を含有していないためペットの体に悪影響を与えることを防ぐことができることは勿論、マグロ主体やマグロ残渣物、明日葉に含まれる豊富な栄養によってペットの健康に寄与できる。また、冷凍又は冷蔵することにより優れた保存性を発揮でき、更に、予め、ペットの1回の食事分の分量に整形した状態で包装することにより、食事の分量だけペットに与えることができるため無駄を抑えることができるペットフードである。
【0018】
請求項2に係る発明によると、水分の含有量を少なくすることができ、より食感に優れたペットフードを提供することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によると、栄養価の高いペットフードであり、マグロの廃棄部分を利用してより多くのカルシウムからなる栄養素を含有させることができる。
【0020】
請求項4に係る発明によると、粘結材となる材料を加えることにより加工し易く、また、食感や外観を向上することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によると、原料と材料とを簡単に加工して栄養価を高くした状態に製造できるペットフードである。
【0022】
請求項6に係る発明によると、臭みを抑えることができるウェットタイプのペットフードを簡単な設備により容易に製造することができ、かつ、多種類の材料を必要とすることなく残渣を利用して栄養価の高いペットフードを製造できる。また、冷凍又は冷蔵することにより保存性にも優れたペットフードを製造でき、任意の分量に分けて包装することができるペットフードの製造方法である。
【0023】
請求項7に係る発明によると、水分の含有量を少なくすることができ、より食感に優れたペットフードを製造できるペットフードの製造方法である。
【0024】
請求項8に係る発明によると、栄養価の高いペットフードであり、マグロの廃棄部分を利用してより多くのカルシウムからなる栄養素を含有させたペットフードを製造できる。
【0025】
請求項9に係る発明によると、粘結材となる材料を加えることにより加工し易く、また、食感や外観を高めながらペットフードを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明におけるペットフード及びその製造方法の実施形態を詳細に説明する。
本発明のペットフードは、所定量のマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を原料として含有し、これらの原料を粉砕した後に混練し、更に、所定の形状に整形した後に加熱して密封包装したものである。この場合、ペットフードは、加熱後の水分が吸収されていてもよい。
【0027】
上記の原料のうち、マグロ主体は、マグロを解体して得られるマグロの食用肉からなっている。また、マグロ残渣物は、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずを有しており、主に、マグロの肉と骨とからなっている。この場合、これらの肉や骨は、生の状態以外にも、乾燥させて粉状にしたものであってもよい。更に、マグロ残渣物は、マグロの鋸くず以外の部分を含んでいてもよく、例えば、マグロの内臓やひれなどの廃棄部分を含ませることも可能である。
【0028】
一方、明日葉は、セリ課に属する植物であり、香料としての機能と、防臭・減臭機能とを有している。このため、この明日葉をマグロ主体やマグロ残渣物に混ぜ合わせることで香ばしい臭いが付与され、また、臭いの発生が防がれる。明日葉は、予め乾燥粉末状になっているものを使用することが望ましく、この場合には、明日葉が粉砕状態であることによりマグロやマグロ残渣物に混練しやすくなる。明日葉を乾燥粉末状にする場合、例えば、明日葉の歯や茎などをそのまま乾燥させたり、または、明日葉の搾汁を乾燥粉末状にすればよい。
この明日葉は、上記の香料や防臭・減臭としての機能以外にも、多くの栄養価を含有する植物として知られており、例えば、植物繊維や、ビタミンやミネラル、蛋白質、アミノ酸等を豊富に含んでいる。
【0029】
本発明のペットフードには、前述の原料以外にも所定量の小麦粉が材料として加えられる。原料と材料との重量割合としては、例えば、マグロ主体を100重量部とすると、マグロ残渣物を20重量部、明日葉を3重量部、小麦粉を10重量部とすることが好ましい。
【0030】
続いて、ペットフードの製造方法を述べる。図1においては、ペットフードの製造方法の一例をフローチャートによって示している。本発明のペットフードは、計量工程と、粉砕工程と、混練工程と、整形工程と、加熱工程と、包装工程とからなる各工程を経ることにより製造される。
【0031】
計量工程においては、ペットフードの原料であるマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を所定量の分量に計量する。小麦粉を含有させる場合には、この小麦粉も原料と同様に計量する。原料と材料との含有割合としては、上述した重量割合に示したものとし、これらの計量は、適宜の重量計によって行なう。
【0032】
次に、粉砕工程において、マグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を粉砕して粉砕物を設ける。これらは、例えば、カッターやチョッパー等の一般的に食品加工に用いられる粉砕機を用いて粉砕する。その際、乾燥粉末状の明日葉を用いた場合には、明日葉を粉砕する必要はない。粉砕物の大きさは、食感等を考慮して適宜の大きさに設定すればよい。
【0033】
続いて、混練工程において、粉砕物を混練して混練物を設ける。混練は、例えば、ボール等の容器にマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉、小麦粉を入れ、これらを手で混ぜたりこねたりすることにより実施する。
【0034】
そして、整形工程において、混練物を所定の形状に整形して整形物を設ける。この整形は、例えば、適宜の大きさの型枠に分割されたトレーに混練物を詰め込み、トレーから取り出すことにより行なう。このとき、およそペットの1回の食事分の大きさに分割された型枠を用いることで、ペットに与え易い分量の整形物が整形可能になる。
【0035】
次いで、加熱工程において、整形物を加熱することで加熱物を設ける。この加熱は、適宜の蒸し器の中にトレーから外した整形物を入れ、所定時間蒸すことにより実施する。このように、整形物は蒸し器による加熱を経ることで全体が調理され、また、内部に含まれる細菌やカビ等が殺菌される。
加熱工程後には、必要に応じて吸水工程を経て加熱物に含まれる水分を吸収させる。吸水工程は、例えば、吸水シートを用いてこの吸水シートの上に加熱物を載せることにより行なう。吸水工程を経た場合、加熱物中の余分な水分が除去される。
【0036】
最後に、包装工程において、加熱物を密封包装して包装物を設ける。この包装は、真空パックによって実施することが望ましく、この場合、長期に渡って真空状態で保存することが可能となる。真空パック時には、包装物を所定の分量に分けた状態で個別にパックするようにする。
【0037】
次に、本発明のペットフード及びその製造方法の上記実施形態における作用を説明する。
本発明のペットフードは、マグロ主体、マグロ残渣物に加えて明日葉を原料として含有させているので、これらを混ぜ合わせたときに明日葉が香料機能や防臭・減臭機能を発揮してマグロ肉の生臭さを抑えることができる。これにより、保存時や開封時に臭いが周囲に広がることを防ぐことができる。
【0038】
また、明日葉には、食物繊維や、ビタミンやミネラル、蛋白質、アミノ酸等の各種の栄養が豊富に含まれているので、えさとしての栄養価を高めることができる。
しかも、このペットフードは、計量工程と、粉砕工程と、混練工程と、整形工程と、加熱工程と、包装工程とを経て製造するようにしているので、特別な原料を混入することなく生の状態に近いウェットタイプのペットフードを提供でき、優れた外観と食感を発揮することができる。
【0039】
更に、本発明のペットフードは、マグロ残渣物として鋸くずを含んでいるので、マグロ残渣物中に含まれる栄養が混入されてより栄養価が高まっている。
【実施例】
【0040】
次に、本発明のペットフード及びその製造方法の実施例を以下に示す。
本実施例において、上述したペットフードの製造方法によりペットフードを製造した。このとき、材料として、原料のマグロ主体として本マグロの食用肉、マグロ残渣物として鋸くずを乾燥させたマグロ骨粉を使用した。また、明日葉として乾燥粉末状のものを使用した。更に、粘結材となる材料として小麦粉をこれらに加えた。各原料と材料の重量と、これらに含まれるエネルギー、蛋白、脂質、カルシウムとを表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の分量により、以下の条件によりペットフードを設けた。
粉砕工程においては、マグロ主体をフードカッターで粉砕した。また、混練工程においては、マグロ主体、マグロ骨粉、明日葉、小麦粉をボールに入れて手で捏ねることにより混練した。整形工程においては、50g用の大きさの型枠に分割したトレーと25g用の大きさの型枠に分割したトレーとについて、それぞれ混練物を詰め込んで整形物を整形した。また、加熱工程においては、整形物を76℃に熱した蒸し器に入れ、50分の蒸し時間により加熱を実施した。更に、この加熱後に、包装工程において、約50gと約25gの加熱物をそれぞれ個別に真空パックした。その後、真空パックを袋に袋詰めした。
なお、表1において、明日葉の重量を3gとしているが、この明日葉は乾燥粉末状である場合であり、生葉からなる明日葉を用いる場合には27g程度とすればよい。
【0043】
以上の条件において、ペットフードを製造し、このペットフード100g中における栄養成分とその成分含有量を測定した。この測定結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表1と表2との結果より、マグロ残渣物としてマグロ骨粉を含有させた場合にはカルシウムの含有量が多くなり、栄養価の高いペットフードが得られた。このペットフードの臭いを嗅いだところ、不快な臭いは感じられず、明日葉による香料機能や防臭・減臭機能が発揮された。このため、このペットフードを真空パックした場合にも、外部への悪臭の漏れは感じられなかった。しかも、真空パック後のペットフードは、添加物を含有させていないにもかかわらず、冷蔵庫に保存したときにおよそ1ヶ月の賞味期限が確保された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ペットフードの製造方法の一例を示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量のマグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を原料として含有し、この原料を粉砕した後に混練し、更に、所定の形状に整形した後に加熱して密封包装したことを特徴とするペットフード。
【請求項2】
請求項1に記載のペットフードにおいて、加熱後の水分を吸収したペットフード。
【請求項3】
前記マグロ主体は、マグロの食用肉からなり、前記マグロ残渣物は、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずを有する請求項1又は2に記載のペットフード。
【請求項4】
前記原料に所定量の小麦粉を加えた請求項1乃至3の何れか1項に記載のペットフード。
【請求項5】
前記マグロ主体を100重量部としたときに、前記マグロ残渣物を20重量部、明日葉を3重量部、小麦粉を10重量部とした請求項4に記載のペットフード。
【請求項6】
マグロ主体、マグロ残渣物、明日葉を含有する原料を所定量に計量する計量工程と、前記原料を粉砕して粉砕物を設ける粉砕工程と、前記粉砕物を混練して混練物を設ける混練工程と、前記混練物を所定の形状に整形して整形物を設ける整形工程と、前記整形物を加熱して加熱物を設ける加熱工程と、前記加熱物を密封包装して包装物を設ける包装工程とを有し、各工程を経ることによりペットフードを製造するようにしたことを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程後に、前記加熱物の水分を吸収する吸水工程を経るようにした請求項6に記載のペットフードの製造方法。
【請求項8】
前記マグロ主体は、マグロの食用肉からなり、前記マグロ残渣物は、マグロの残渣肉及び残渣骨と、マグロを鋸で解体する際に生じる鋸くずとを有する請求項6又は7に記載のペットフードの製造方法。
【請求項9】
前記混練工程前に、所定量の小麦粉を加えた請求項6乃至8の何れか1項に記載のペットフードの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−130911(P2010−130911A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307324(P2008−307324)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(508356700)有限会社依田水産 (1)
【Fターム(参考)】