説明

ペットフード用嗜好性向上剤及びその製造方法

【課題】ペットフードの摂食性を向上させることができるペットフード用嗜好性向上剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】家禽あるいは家畜の肝臓100部をミンチもしくは磨砕により粗砕し、これに対して水を30〜100部加え、65℃〜100℃の温度で10分間〜1時間程度加熱し煮熟した。次いで、この煮熟した家禽あるいは家畜の肝臓にプロアテーゼを0.01〜1.0部加え、温度30℃〜75℃で1時間〜15時間かけて酵素反応を行った。酵素反応の終了又は50℃〜100℃で10分間〜1時間加熱してプロアテーゼ失活した後、乾燥促進及び賦形材としてのデキストリンを2〜20部、グルタミン酸ナトリウムを2〜20部添加溶解して、得られた原料液をスプレードライ方式もしくはドラムドライ方式によって乾燥させ、粉末状の嗜好性向上剤を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードに添加し、ペットフードの匂いを増強するために使用される嗜好性向上剤及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているペットフードは、よりペットに好まれる風味にするため、他の呈味成分を添加している。例えば、ウェットフードは保存料を要し、製造コストも嵩むため、ペットフード製造者は経済的に製造できるドライフードの表面を畜肉エキスや酵母エキスでコーティングして嗜好性を向上させることがよく知られている。
【0003】
このように、ペットフードに限らず食品の旨みを増強させる技術として、だし入り醤油等の液体調味料に、本来の醤油やだしの香り、風味、良好な味等を増強するために、醤油、だし等を含有する調味料に含硫化合物を添加して加熱する方法(特許文献1参照。)や魚介系調味料の旨みを増強するL−グルタミン酸アンモニウム組成物(特許文献2参照。)、食肉や惣菜等の味質を向上させるため、コハク酸又はコハク酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、フマル酸ナトリウム及び酢酸塩を含有する食品調味料製剤等が種々提案されている(特許文献3参照。)。
【0004】
一方、家禽あるいは家畜の肝臓加水分解物に対してペットの嗜好性が高いことが知られている(特許文献4及び特許文献5参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−313097号公報
【特許文献2】特開2004−261098号公報
【特許文献3】特開2001−178393号公報
【特許文献4】特表2005−507264号公報
【特許文献5】特表2008−541765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ペットフードの匂いの質を変化させペットの摂食性を向上させることができるペットフード用嗜好性向上剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明のペットフード用嗜好性向上剤は、家禽あるいは家畜の肝臓加水分解液に、グルタミン酸ナトリウムを添加し、加熱乾燥してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ペットが好む家禽あるいは家畜の肝臓を、よりペットが好む匂いに変化させることができ、これを添加したペットフードの嗜好性を向上させることができる。本発明中のペットフード用嗜好性向上剤という表現は、ペットの食欲促進剤、すなわちペットフードに添加して摂食量を顕著に増加させる組成物を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るペットフード用嗜好性向上剤の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るペットフード用嗜好性向上剤の調製を図面に基づいて説明する。本発明に係るペットフード用嗜好性向上剤は、家禽あるいは家畜の肝臓加水分解液に、グルタミン酸ナトリウムを添加し、加熱乾燥してなるものである。その製造方法は、図1に示すように、家禽あるいは家畜の肝臓を粉砕する工程、粉砕した家禽あるいは家畜の肝臓に加水し加熱する工程、加水加熱した家禽あるいは家畜の肝臓をプロアテーゼ処理する工程、プロアテーゼ失活後、デキストリン及びグルタミン酸ナトリウムを添加溶解して原料液を得る工程、得られた原料液を加熱乾燥する工程から構成される。
【実施例】
【0011】
[ペットフード用嗜好性向上剤の調製]
原材料の肉原料である家禽あるいは家畜の肝臓100部をミンチもしくは磨砕により粗砕し、これに対して水を0〜200部、より好ましくは30〜100部加え、65℃〜100℃の温度で10分間〜1時間程度加熱し煮熟した。次いで、この煮熟した家禽あるいは家畜の肝臓にプロアテーゼ(ペプチド結合加水分解処理酵素)を加えて加水分解処理を行った。使用するプロアテーゼとしては、下記のうちの少なくとも1種を0.01〜1.0部加え、温度30℃〜75℃で1時間〜15時間かけて酵素反応を行った。尚、このプロアテーゼ処理に際しては、防腐剤、抗酸化剤を適宜添加するものでもよい。
[使用したプロアテーゼ]:オリエンターゼ20A(商品名:エイチビィアイ社製)、オリエンターゼ90N(商品名:エイチビィアイ社製)、ヌクレイシン(商品名:エイチビィアイ社製)、オリエンターゼ10NL(商品名:エイチビィアイ社製)、オリエンターゼONS(商品名:エイチビィアイ社製)、オンエンターゼ22BF(商品名:エイチビィアイ社製)、アルカラーゼ(商品名:ノボザイムズ社製)、フレーバーザイム1000L(商品名:ノボザイムズ社製)、ニュートラーゼ(商品名:ノボザイムズ社製)、プロメタックス(商品名:ノボザイムズ社製)、プロアテーゼA「アマノ」SD(商品名:天野エンザイム社製)、プロアテーゼM「アマノ」SD(商品名:天野エンザイム社製)、プロアテーゼP「アマノ」3SD(商品名:天野エンザイム社製)、ウマミザイムG(商品名:天野エンザイム社製)、ペプチターゼR(商品名:天野エンザイム社製)、スミチームAP(新日本化学工業社製)、スミチームLP(新日本化学工業社製)、スミチームFP(新日本化学工業社製)、スミチームMP(新日本化学工業社製)、ビオプラーゼOP(商品名:ナガセケムテックス社製)、ビオプラーゼSP−4FG(商品名:ナガセケムテックス社製)、デナチームAP(商品名:ナガセケムテック社製)。
【0012】
酵素反応の終了又は50℃〜100℃で10分間〜1時間加熱してプロアテーゼ失活を行う。ここで、処理後の肝臓粉砕物はpH3〜8であることが好ましいが、pH調整剤を適宜添加してもよい。次いで乾燥促進及び賦形材としてのデキストリンを0〜50部、より好ましくは2〜20部、グルタミン酸ナトリウムを1〜40部、より好ましくは2〜20部添加溶解して、得られた原料液をスプレードライ方式もしくはドラムドライ方式によって乾燥させ、粉末状の嗜好性向上剤を得た。
【0013】
上記調製により得られたペットフード用嗜好性向上剤の評価を行った。先ずは人による官能評価を、1対2点識別法により行った。具体的には評価者にまず基準サンプル1点を提示し、次に比較するサンプル2点を提示して匂いのみ官能させ、比較するサンプルのうち基準サンプルと同じものを選ばせた。サンプル名はすべて3桁の数字でコード化して示した。結果を表1に示す。
[試験No.1]:グルタミン酸ナトリウム5%添加品と無添加品を供試
サンプル名:135・・・5%添加品
サンプル名:210・・・無添加品
サンプル名:397・・・5%添加品
サンプル名:410・・・無添加品
[試験No.2]:グルタミン酸ナトリウム10%添加品と無添加品を供試
サンプル名:192・・・無添加品
サンプル名:423・・・10%添加品
サンプル名:236・・・無添加品
サンプル名:388・・・10%添加品
【0014】
【表1】

【0015】
表1から分かるように、総数17名の評価者のうち、12〜13名がサンプルの匂いの差異を判別でき、本試験の有効性が確認できた。この人による官能評価結果に基づいた検証結果を表2に示す。検証の結果、グルタミン酸ナトリウムの添加により家禽あるいは家畜の肝臓の匂いが変化することが認められた。
【0016】
【表2】

【0017】
次に犬による嗜好性試験を、2点比較法により行った。具体的には、グルタミン酸ナトリウム添加品もしくは無添加品でコーティングしたドライフードをそれぞれ皿に盛り、犬に対して同時に給与した。最初に食いついた方を記録し、給与開始後20分経過時点もしくは片方を完食した時点での摂食量を計測した。この試験は犬5頭を用い、皿の位置を入れ替えて2日間行った。その結果を表3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
表3から分かるように、グルタミン酸ナトリウムの添加により犬の食いつき性・摂食性が向上し、著しい食欲促進効果が認められた。
【0020】
一般的に、嗜好性向上剤は、例えば押出乾燥ペットフードなどの乾燥または半乾燥ペットフードに適用される。本発明のペットフード用嗜好性向上剤も、押出もしくは乾燥後、ペットフードに、例えば噴霧もしくは振りかけるなどの方法で適用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽あるいは家畜の肝臓の加水分解液に、グルタミン酸ナトリウムを添加し、加熱乾燥してなることを特徴するペットフード用嗜好性向上剤。
【請求項2】
家禽あるいは家畜の肝臓をプロアテーゼ処理する工程、プロアテーゼ失活後、デキストリン及びグルタミン酸ナトリウムを添加溶解して原料液を得る工程、得られた原料液を加熱乾燥する工程からなることを特徴とする請求項1記載のペットフード用嗜好性向上剤の製造方法。

【図1】
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