説明

ペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法

【課題】ペットボトルに充填しても、該ペットボトルから水素がほとんど抜け出ることのないペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウム、水酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムと精製水とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸と精製水を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸と精製水を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする一方、該酸性水溶液に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび精製水を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造し、更に前記混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造した後、該水素水原液をミネラルウォーターで80〜120倍希釈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルに充填しても、該ペットボトルから水素の分子がほとんど抜け出ることのないペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水素が生体内の代表的な活性酸素であるヒドロキシルラジカル(・OH)を直接分解し安定な水にすることが判り、それ以来、特に水素水が注目されている。我が国では、40年以上も前にアルカリイオン整水器、あるいはアルカリイオン(水)生成器が、医療用具として当時の厚生省の認可を得ている。しかしながら、これまで、アルカリイオン水中の何が医療的な各種効果の基になっているのか、明確な答えを見出せないできたのが実状である。ところが、最近電解で生成したアルカリイオン水中の水素が、その主要な成分の一つではないかと考えられるようになってきている。これまで、ペットボトル入りの水素水が数多く販売されてきたが、水素は分子が最も小さいため、ペットボトルから容易に抜け出てしまい、水素水の意味をなさなくなっていた。このため、水素水はアルミパウチ等のアルミ容器入りでないと無理で、然も前記アルミが薄いと長持ちしないということが業界の常識になっていた。
【0003】
前記のように、ペットボトルに、水に水素ガスを溶解した水素水や水を電解して生成した水素水を充填しても、水素の分子がペットボトルから容易に抜け出してしまうため、例えば、下記特許文献1において開示されているように、水素発生粒子を袋体に充填した水素発生体を、ボトルのキャップに取付け、飲用直前に水と接触させて水素水を生成する手段が公知である。
【0004】
前記のように、従来は水素水をペットボトルに充填しても、水素の分子が該ペットボトルから容易に抜け出してしまうために、アルミ容器に充填しなければならず、従って高価な水素水を飲用しなければならないという課題があった。
【0005】
また、特許文献1記載のものは、飲用時に水素発生体を水に浸漬して水素水を生成するが、水素水がどれ位の時間で生成されるのか不明であって、直ちに飲用することはできないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、水素を水中に固定することにより、ペットボトルに充填して、遊離した水素がペットボトルから抜け出すことがあっても、前記水中に固定した水素は安定して水中に滞留し、前記ペットボトルから抜け出すことのない飲用水素水の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、請求項1記載の発明において、
炭酸カルシウム0.5〜3.0重量%、水酸化カルシウム5.0〜10.0重量%および酸化マグネシウム0.5〜3.0重量%と精製水84.0〜94.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸35.0〜55.0重量%と精製水45.0〜65.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸5.0〜13.0重量%と精製水87.0〜95.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム3.0〜7.0重量%、水酸化ナトリウム2.0〜6.0重量%および精製水87.0〜95.0重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して、水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とにより製造するという方法を採用し、または、
請求項2記載の発明において、
酸化マグネシウム4.0〜10.0重量%と精製水90.0〜96.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸30.0〜50.0重量%に精製水50.0〜70.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸6.0〜13.0重量%に精製水87.0〜94.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム2.0〜6.0重量%、水酸化ナトリウム1.5〜5.5重量%に精製水88.5〜96.5重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とにより製造するという手段、
を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ペットボトルに充填しても、水中に水素が固定されているため、経時的に一部遊離して水に溶解した水素以外はペットボトルから抜け出ることがないペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法を提供することができる。また、本発明製造方法によって得られる飲用水素水は、水素が水中に安定して固定されているため、加熱殺菌しても水素濃度が低下しないという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の製造工程で製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで100倍希釈、200倍希釈および300倍希釈したときの水素発生量の変化を日単位で測定したデータを示したグラフである。
【図2】本発明の実施例1の製造工程で製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで100倍希釈して、6ヶ月間室内で自然放置して、6ヶ月後の水素発生量の変化を日単位で測定したデータを示したグラフである。
【図3】本発明の実施例1の製造工程で製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで100倍希釈して、製造後3日目から水素発生量の変化を日単位で測定したデータを示したグラフである。
【図4】本発明の実施例1の製造工程で製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで100倍希釈、90倍希釈および80倍希釈したときの水素発生量
【実施例1】
【0011】
本発明のペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法における実施例1について詳細に説明する。本発明実施例1に係るペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法は、以下の第1工程〜第4工程により製造される。すなわち、本発明のペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法は、
炭酸カルシウム0.5〜3.0重量%、水酸化カルシウム5.0〜10.0重量%および酸化マグネシウム0.5〜3.0重量%と精製水84.0〜94.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸35.0〜55.0重量%と精製水45.0〜65.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸5.0〜13.0重量%と精製水87.0〜95.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム3.0〜7.0重量%、水酸化ナトリウム2.0〜6.0重量%および水87.0〜95.0重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して、水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とより成る。以下、前記各工程を詳細に説明する。
【0012】
[第1工程]
本発明における第1工程では、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、および酸化マグネシウム(MgO)と精製水と混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸(HPO)と精製水とを混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸と精製水を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液を製造する。
【0013】
なお、前記酸性水溶液を製造するに当って、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、および酸化マグネシウム並びに精製水の混合比(重量%)は、好ましくは、炭酸カルシウム0.5〜3.0重量%、水酸化カルシウム5.0〜10.0重量%、酸化マグネシウム0.5〜3.0重量%および精製水84.0〜94.0重量%とすることが推奨され、特に好ましくは炭酸カルシウム1.0〜2.0重量%、水酸化カルシウム7.0〜9.0重量%、酸化カルシウム1.0〜2.0重量%および精製水87.0〜91.0重量%とすることが推奨される。そして、前記炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび精製水とを前記混合比率により混合して白濁分散液を調製する。
【0014】
前記白濁分散液に混合するリン酸水溶液は、好ましくは、リン酸35.0〜55.0重量%および精製水45.0〜65.0重量%とすることが推奨され、特に好ましくは、リン酸40.0〜50.0重量%、精製水50.0〜60.0重量%とすることが推奨される。
【0015】
そして、前記炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび精製水の白濁分散液にリン酸水溶液を混合し、更にクエン酸水溶液を添加して酸性水溶液を製造するが、前記クエン酸水溶液は、好ましくは、クエン酸5.0〜13.0重量%および精製水87.0〜95.0重量%とすることが推奨され、特に好ましくは、クエン酸8.0〜11.0重量%および精製水89.0〜92.0重量%として製造することが推奨される。本第1工程は、カルシウム−マグネシウム−リン酸−クエン酸複合体に水素を固定すると共に、透明溶液にするための工程である。
【0016】
[第2工程]
本発明における第2工程は、前記第1工程で製造した酸性水溶液とアルカリ水溶液を混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する工程である。前記混合溶液のpHは、pH試験紙で測定することが、共存イオンの影響を排除して正確なpHを測定できるという観点から適当である。前記溶液系では、ガラス電極を用いた通常のpHメーターでは測定不能であることがあり、pH試験紙での測定が適当である。第2工程において製造される混合溶液は、pHが6.5〜8の範囲であることが、飲料として提供するという観点から好ましい。
【0017】
前記第1工程において製造した酸性水溶液に添加混合するアルカリ水溶液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび精製水を混合して得られ、その混合比率は、好ましくは、水酸化カリウム3.0〜7.0重量%、水酸化ナトリウム2.0〜6.0重量%および精製水87.0〜95.0重量%とすることが推奨され、特に好ましくは、水酸化カリウム4.0〜6.0重量%、水酸化ナトリウム3.0〜5.0重量%、精製水89.0〜93.0重量%とすることが推奨される。
【0018】
[第3工程]
本発明における第3工程は、前記第2工程で製造した混合溶液を電気分解して水素水原液を得る工程である。第3工程における電気分解は、前記第2工程で製造した混合溶液に陰極および陽極を浸漬して行う。陰極および陽極は、不活性な電極を用いれば良く、例えば白金や炭素電極を用いることが推奨される。陰極および陽極の電圧は、水の電気分解に適した値に設定すれば良い。電流は、電極の面積や溶液量等を考慮して適宜設定できる。電解時間は、溶液量および溶液中の成分量、電解後の水素含有量等を考慮して適宜設定できる。
【0019】
第3工程における電気分解は、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで行う。陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで行うことで、所定量の水素含有量を含む水素水原液を得ることができる。
【0020】
なお、前記第3工程で得られた水素水原液の水素含有量(濃度)の測定は、市販されている測定器、例えば、共栄電子研究所製KM2100DH(方式は隔膜式ポーラロ方式、溶存水素を定量的に測定できる)を用いて測定することができる。
【0021】
[第4工程]
前記第3工程で製造した水素水原液は、比較的高濃度の水素含有量であると共に、高濃度のため味もまずく、飲用には適さない。本発明における第4工程は、水素水原液を飲用できるようにするために、ミネラルウォーターで80〜120倍に希釈して、水素含有量が0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する工程である。
【0022】
また、第4工程において水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍に希釈しても、水素含有量が0.01〜0.8mg/lの範囲に入らない場合は、再度電気分解を行い、水素含有量が0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を得るようにする。前記再度の電気分解における電圧および電流値の条件は、第4工程における電気分解と同様にすることができるが、時間は短時間で良く、例えば、1〜10分間とすることができる。また、飲用とするために、前記希釈後に衛生法で定められた加熱殺菌(例えば、85℃×40分間)をすることもでき、加熱殺菌の前または後に、前記再度の電気分解を行うことができる。本発明製造方法で得られる飲用水素水は、前記加熱殺菌を行っても、水素含有量が大きく低下することがないという特徴も有する。
【0023】
次に、本発明の実施例1に係るペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法を用いて飲用水素水を製造したテストの一例につき詳細に説明する。なお、以下の操作は全て室温で行った。
【0024】
下記の(A)で示す成分からなる白濁分散液を調製した。この分散液に下記の(B)で示す成分からなるリン酸(HPO)水溶液を混合し、反応させた。混合すると溶液は一時的に透明になるが、最終的に白濁状態になり、極めて細かな粒子の分散状態の混合溶液を得た(1000g)。更に、下記の(C)で示す成分からなるクエン酸水溶液を、前記(A)と(B)の混合溶液に添加すると、白濁液は透明なコロイド液になった。コロイド液の総計(A+B+C)は5000g(以下、「1液」という)であった。なお、以下の(A)〜(D)の白濁分散液、リン酸水溶液、クエン酸水溶液およびアルカリ水溶液を製造する各素材の重量は、前記好ましい配合比率に記載の範囲内である。
【0025】
(A)白濁分散液
CaCO 8.5g
Ca(OH) 40.0g
MgO 8.5g
精製水 443.0g
小計 500g
【0026】
(B)リン酸水溶液
PO 220.0g
精製水 280.0g
小計 500g
【0027】
(C)クエン酸水溶液
クエン酸 390.0g
精製水 3610.0g
小計 4000g
【0028】
次いで、下記(D)で示す成分からなるアルカリ水溶液に、前記1液を少量添加すると、白濁の分散液になり直ちに透明液になる。続けて前記1液を更に添加して、pH6.5(pH試験紙)になるまで添加をした。結果的に、1液を5000g添加したところで、pH6.5(pH試験紙)になった。得られた水溶液(以下、「2液」という)の総合計は、10000gであった。
【0029】
(D)アルカリ水溶液
KOH 200.0g
NaOH 180.0g
精製水 4620.0g
小計 5000g
【0030】
次いで、前記2液に、5〜15Vで10Aの直流を流して、電気分解を100分間行った。
【0031】
前記電気分解では、陰極で発生したHは、溶液中に存在するコロイド粒子に収着して、粒子全体を覆っているものと推察される。更に、陽極で発生したプロトン(H)が前記コロイド粒子に吸着して、コロイド粒子全体がプラスの電荷を持つ一方、クエン酸のマイナス基が付着して、所謂電気2重層を形成しているものと推察される。分散媒は水酸化物イオン(OH-)であり、プラスの電荷を持つコロイド粒子と相互作用し電気二重層による効果で、陰極で発生したマイナスイオンである水酸化イオンで覆われるものと推察される。従って、沈殿もなく透明性のある水素水原液
が得られた。
【0032】
前記電解前の水溶液(2液)の水素含有量と、電解後の水素水原液中の水素含有量を、共栄電子研究所製KM2100DH(方式は隔膜式ポーラロ方式、溶存水素を定量的に測定できる)を用いて測定した結果、電解前の水素含有量は、0.02mg/lであったのに対し、電解後の水素含有量は、0.8mg/lであった。なお、通電100分で水素含有量はほぼ飽和状態となった。
【0033】
そして、前記電解後の水素水原液(溶存水素量0.7mg/l)をミネラルウォーターで100倍希釈して飲用水素水を得た。得られた100倍希釈の飲用水素水の溶存水素量は0.4mg/lであった。
【0034】
前記水素水原液を岐阜県の奥長良川で採水したミネラルウォーターで100倍、200倍および300倍希釈して得られたた飲用水素水の溶存水素量の変化を経時的に示したグラフを図1に示す。図中「100A」・「100B」という表示は、100倍希釈飲用水素水を500mlの2本のペットボトルに充填したものを、それぞれ測定したことを示すもので、「200A」・「200B」・「300A」・「300B」も同様である。これらの溶存水素量の測定は、毎日、共栄電子研究所製の溶存水素計の測定セルに水素水を入れ、磁気スタラ―で、10〜15分程度撹拌しながら測定したものである。前記測定後は前記測定済みの各飲用水素水をペットボトルに戻した。そして、同様操作の繰り返しにより9日間測定した。
【0035】
図1は、平成22年2月12日に前記テスト例に示す混合比率により製造された水素水原液に、同年5月19日に前記奥長良川で採水したミネラルウォーターを前記各希釈倍率で希釈して、直ちにペットボトルに充填した飲用水素水について、溶存水素量の変化を日単位で測定したものである。図1において、溶存水素量が初めは増加し、ピークを打って減少するのは、初期は発生水素量がペットボトルを抜けての飛散水素量より多く、発生量と飛散量が等しくなったところでピークを打ち、逆に溶存水素の発生量より飛散量が多くなり減少すると推測される。
【0036】
図1に示す測定結果から、前記飲用水素水をペットボトルに充填した日(5月19日)から2日間(5月21日)までは、各飲用水素水とも水素発生量はほとんど0に近かった。ところが3日目の5月22日になると、100倍希釈倍率の飲用水素水が急激に水素発生量が増加した。その他の200倍、300倍希釈飲用水素水は水素発生量が多少増加したが余り増えなかった。そして、溶存水素量は、5月22日をピークとしてその後は漸減して、200倍希釈飲用水素水は5月26日〜27日には0になったが、100倍希釈飲用水素水は5月28日に0になった。すなわち、前記測定結果から、水素発生量は希釈倍率が小さいほど多いということが確認できた。
【0037】
図2は、平成21年12月18日に前記テスト例に示す混合比率により製造された水素水原液を、前記奥長良川で採水したミネラルウォーターで100倍希釈の飲用水素水(溶存水素量0.56mg/l)500mlを、500mlの2本のペットボトルに充填して、室内に6ヶ月間自然放置した後の平成22年6月21日から7月2日にかけて、発生水素量の変化を日単位で測定したデータを示すグラフである。図中、「12/18A」・「12/18B」という表示は、前記12月18日に製造した前記飲用水素水を500mlの2本のペットボトルに充填して、それぞれ測定したことを示す。そして、前記各ペットボトルの飲用水素水を前記の溶存水素計で測定したところ、6ヶ月後でも溶存水素量は0.55mg/lであった。すなわち、水素がほとんどペットボトルから抜け出ていないことの確認ができた。
【0038】
本発明者は、前記図1および図4に示すように、計測し始めて最初の2〜3日間は水素発生量が0に近いという理由は、磁気スタラ―の磁気エネルギーを前記飲用水素水が吸収してある程度の時間(2〜3日間)、すなわち誘導時間が経過しないと、水素が発生しないからであると判断した。
【0039】
更に、図3は、平成22年7月23日に製造した100倍希釈の飲用水素水(溶存水素量0.6mg/l)を、500mlの2本のペットボトルに充填して、同7月26日から8月3日にかけて、残存水素量の変化を日単位で測定したデータを示したグラフである。図中、「7/23(1)」・「7/23(2)」という表示は、前記7月23日に製造した前記飲用水素水を500mlの2本のペットボトルに充填して、それぞれ測定したことを示す。
【0040】
図3に示す測定結果を見ると、前記飲用水素水をペットボトルに充填した日(7月23日)から3日目(7月26日)の第1回目の測定においては、約約8μg/lでであったものが2回目の7月27日には0に下がり、3日目(7月28日)より水素発生量が急増加し、その後徐々に減少して行き、8月3日には0〜5μg/lまで減少した。
【0041】
図4は、平成22年2月12日に製造した水素水原液を、前記奥長良川で採水したミネラルウォーターで、100倍、90倍および80倍希釈して得られた飲用水素水の溶存水素量の変化を日単位で測定したデータを示すグラフである。図中「100A」・「100B」という表示は、100倍希釈飲用水素水を500mlの2本のペットボトルに充填して、それぞれ測定したことを示すもので、「90A」・「90B」・「80A」・「80B」も同様である。
【0042】
図4に示す測定結果を見ると、前記飲用水素水をペットボトルに充填した日(2月12日)から4日目(2月16日)の第1回目の測定時には、約8μg/lの溶存水素量が認められたが、その後3日間は徐々に溶存水素量が減少して行き、4日目の2月19日には、2〜3μg/l程度にまで低下し、その後6日目の2月22日には最大の溶存水素が発生し、その後徐々に減少して行き、3月4日には0〜0.5μg/lになった。
【0043】
本発明者は、前記図1〜図4に示す各測定結果から、ミネラルウォーターの100倍希釈が飲用水素水として最適であると共に、100倍希釈前後の80〜120倍希釈までの希釈割合であれば、飲用水素水として飲用できると判断した。
【0044】
本発明者が種々テストした結果、飲用水素水として重要なことは次の3点であり、且つ重要性の順序はこの順であると判断した。すなわち、
1)美味しいこと。
2)透明なこと。水に濁りがないこと。
3)水素含有量が多いこと。
【0045】
味の点からは、水素水原液中のCaとMgの割合が重要であり、可能な限りMgよりCaが多い方がよい。一方、濁りが出にくいものにするには、可能な限りCaよりMgが多い方がよいことが判った。先ず、味の点から、この両者を勘案して、水素水原液の希釈倍率を求めるために、80倍、90倍、100倍、120倍希釈で比較検討すると、100倍希釈程度が望ましいという結果になった。
【0046】
一方、濁りが出にくいという点からは、100倍希釈程度でCaよりMgが可能な限り多い方がよいという結果になった。最終的には、Caが軟水レベルのものになったが、味の点でも80倍〜120倍程度の希釈であれば、希釈するミネラルウォーターのもつ本来の美味しさが保持できた。
【0047】
また、図1に示すように、水素の発生量は希釈倍率が高いほど発生量が少なく、希釈倍率が低くなると水素発生量が多くなることが判った。更に、pHの水素発生に対する影響では、pH2やpH12というように、pHが低すぎても、また高過ぎても水素は発生せず、pH5〜9くらいが水素の発生に適していることが判明した。
【実施例2】
【0048】
本発明者は、前記実施例1の第1工程の白濁分散液の調製工程において使用している炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムを使用することなく、単に酸化マグネシウムと精製水を使用しても、白濁分散液を調製できることを確認した。以下、これを実施例2として説明する。
【0049】
本発明のペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法における実施例2について詳細に説明する。本発明の実施例2に係るペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法は、以下の第1工程〜第4工程により製造される。すなわち、本発明のペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法は、
酸化マグネシウム4.0〜10.0重量%と精製水90.0〜96.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸30.0〜50.0重量%に精製水50.0〜70.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸6.0〜13.0重量%に精製水87.0〜94.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム2.0〜6.0重量%、水酸化ナトリウム1.5〜5.5重量%に精製水88.5〜96.5重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とより成る。なお、前記各工程は、前記実施例1とほぼ同一であるので詳細な説明は省略する。
【0050】
次に、本発明の実施例2に係るペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法を用いて飲用水素水を製造したテストの一例につき詳細に説明する。なお、以下の操作は全て室温で行った。
【0051】
下記の(A)で示す成分からなる白濁分散液を調製した。この分散液に下記の(B)で示す成分からなるリン酸(HPO)水溶液を混合し、反応させた。混合すると溶液は一時的に透明になるが、最終的に白濁状態になり、極めて細かな粒子の分散状態の混合溶液を得た(1000g)。更に、下記の(C)で示す成分からなるクエン酸水溶液を、前記(A)と(B)の混合溶液に添加すると、白濁液は透明なコロイド液になった。コロイド液の総計(A+B+C)は5000g(以下、「3液」という)であった。なお、以下の(A)〜(D)の白濁分散液、リン酸水溶液、クエン酸水溶液およびアルカリ水溶液を製造する各素材の重量は、前記好ましい配合比率に記載の範囲内である。
【0052】
(A)白濁分散液
MgO 36.0g
精製水 464.0g
小計 500g
【0053】
(B)リン酸水溶液
PO 200.0g
精製水 300.0g
小計 500g
【0054】
(C)クエン酸水溶液
クエン酸 360.0g
精製水 3640.0g
小計 4000g
【0055】
次いで、下記(D)で示す成分からなるアルカリ水溶液に、前記3液を少量添加すると、白濁の分散液になり直ちに透明液になる。続けて前記3液を更に添加して、pH6.5(pH試験紙)になるまで添加をした。結果的に、3液を5000g添加したところで、pH6.5(pH試験紙)になった。得られた水溶液(以下、「4液」という)の総合計は、10000gであった。
【0056】
(D)アルカリ水溶液
KOH 170.0g
NaOH 130.0g
精製水 4700.0g
小計 5000g
【0057】
前記4液に、5〜15Vで、10Aの直流を流して電気分解を100分間行った。前記4液の水素含有量および電解後の溶液中の水素含有量を、実施例1と同様に測定した結果、電解前の水素含有量は0.01mg/lであったのに対し、電解後の水素含有量は、0.56mg/lであった。
【0058】
そして、電解後の水素水原液(水素含有量0.56mg/l)をミネラルウォーターで100倍希釈した。得られた100倍希釈液(溶存水素量0.006mg/l)に対して、5〜15V、10Aの通電を15分間行ったところ、溶存水素量は0.6mg/lであった。
【0059】
また、前記水素水原液(水素含有量0.56mg/l)をミネラルウォーターで100倍希釈した。得られた100倍希釈飲用水素水(溶存水素量0.006mg/l)を85℃、40分間加熱した後に、5〜15V、10Aの通電を15分間行ったところ、溶存水素量は0.56mg/lであった。
【0060】
前記飲用水素水(溶存水素量0.5mg/l)500mlを、500mlのペットボトルに充填して、室内に自然放置した。その結果、6ヶ月後でも残存水素量は0.49mg/lであった。
【0061】
なお、実施例2によって製造された水素水原液をミネラルウォーターで希釈した結果についての測定データは示していない。実施例1によって製造された水素水原液と、実施例2によって製造された水素水原液との違いは、実施例2が前記実施例1の第1工程の白濁分散液の調製工程において使用している炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムを使用することなく、単に酸化マグネシウムと精製水を使用して水素水原液を製造している点である。そして、前記実施例2によって製造された水素水原液も最終製品としては、ミネラルウォーターで希釈するものである。前記ミネラルウォーターには当然カルシウム分が含まれているので、前記実施例2によって製造された水素水原液をミネラルウォーターで希釈すると、前記実施例1によって製造された水素水原液をミネラルウォーターで希釈したものと同一の飲用水素水となる。従って、前記図1〜図4に示す測定データは、実施例2によって製造された水素水原液をミネラルウォーターで希釈して得られた飲用水素水にも適用できるものであると考える。
【0062】
水素水は、最近注目されてきている代表的な機能水の1種であるが、水素収着成分の可溶化に関わっていると推測される添加クエン酸は、生体内でのクエン酸サイクルの重要な成分であり、且つクエン酸健康法の主要成分であることから、本発明方法によって得られた水素水は単なる水素水ではなく、次世代の機能水といえるものである。
【0063】
そして、本発明者らは、前記実施例2によって得られた飲用水素水を被験者に飲用してもらい、それらの飲用が生体にどう影響するかを、飲用前後の皮膚のインピーダンス変化を測定し求めた。
【0064】
測定法
前記飲用水素水を飲用する前、飲用した後の皮膚の変化をプリケアナディー(ミサワ製の皮膚インピーダンス測定装置AMI−100〈医療用具製造承認番号(04B)0768〉)を用いて測定(以後AMI測定と呼ぶ)し、生体の状態を観察する。具体的には手足に電極を装着し、ごく短時間3Vの電圧を加え、そのとき電極間に流れる電流を測定し、生体の反応を次の3つのパラメーターで評価する。これらのパラメーターの中でもBP平均値が最も重要である。
BP平均値:体液循環および気の流れのパラメーター
IQ平均値:生体の防衛機能―免疫力のパラメーター
AP平均値:自律神経系のパラメーター
【0065】
前記測定は、再現性を見るため、日時を変えて被験者の男性1人を2回測定した。測定データは、A(58歳)、A´(58歳)として表示した。また、前記と同様に、日時を変えて被験者の女性1人を2回測定した。測定データは、H(56歳)、H´(56歳)として表示した。更に、女性の被験者1人を1回のみ測定した。その測定データは、Y(84歳)として表示した。被験者は述べ5人である。前記測定は、飲用する前、飲用した直後、5分後、10分後にそれぞれ測定を行った。1回に飲用する水素水の量はコップ1杯(180ml)とした。
【0066】
測定結果
(1)被験者A(男58歳)
表1に結果をまとめた。BP平均値が、飲用直後にやや上昇し、5分後さらに上昇し、10分後はやや下った。IQ平均値は、上昇する傾向を示した。しかし、AP平均値には顕著な変化は認められない。
【0067】
【表1】

【0068】
(2)被験者A´(男58歳)
表2に結果をまとめた。BP平均値およびIQ平均値並びにAP平均値が、時間の経過とともに上昇する傾向を示した。
【0069】
【表2】

【0070】
(3)被験者H(女56歳)
表3に結果をまとめた。BP平均値は飲用後一旦上昇したが、その後少し下がり、再び上昇した。IQ平均値は飲用後顕著に上昇したが、その後少し下がり、再び上昇した。AP平均値には顕著な変化は認められない。
【0071】
【表3】

【0072】
(4)被験者H´(女56歳)
表4に結果をまとめた。BP平均値は飲用後一旦上昇したが、その後徐々に下がった。BP平均値は飲用前より下がった。IQ平均値およびもAP平均値には顕著な変化は認められない。
【0073】
【表4】

【0074】
(5)被験者Y(女84歳)
表5に結果をまとめた。BP平均値、IQ平均値およびAP平均値とも、10分経過後は飲用前に比べてかなり上昇した。
【0075】
【表5】

【0076】
以上の測定結果から、体液循環及び気の流れを表すBP平均値と、生体の防衛機能を表すIQ平均値が、飲用水素水を飲用後で10分経過後では5人中5人とも上昇傾向を示した。この結果は、水素水が体液の循環をスムーズにし、気の流れを良くする効果を持つこと、更に防衛機能を促進する効果をうかがわせる。特に、被験者Y(女84歳)では影響が顕著であることから、高年令等で体力の衰えた人には特に効果があると思われる。
【0077】
前記インピーダンス変化の測定結果から判断して、本発明製造方法によって得られた飲用水素水は、健康飲料水として効果が大いに期待できると共に、ペットボトルにも充填可能なため、高価なアルミ容器を使用する必要がないので安価に提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム0.5〜3.0重量%、水酸化カルシウム5.0〜10.0重量%および酸化マグネシウム0.5〜3.0重量%と精製水84.0〜94.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸35.0〜55.0重量%と精製水45.0〜65.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸5.0〜13.0重量%と精製水87.0〜95.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム3.0〜7.0重量%、水酸化ナトリウム2.0〜6.0重量%および精製水87.0〜95.0重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して、水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とにより製造することを特徴とするペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法。
【請求項2】
酸化マグネシウム4.0〜10.0重量%と精製水90.0〜96.0重量%とを混合して白濁分散液を調製すると共に、該白濁分散液にリン酸30.0〜50.0重量%に精製水50.0〜70.0重量%を混合したリン酸水溶液を添加混合して得られた混合溶液に、クエン酸6.0〜13.0重量%に精製水87.0〜94.0重量%を混合したクエン酸水溶液を添加混合してコロイド状の酸性水溶液とする第1工程と、
前記第1工程で製造されたコロイド状の酸性水溶液と、水酸化カリウム2.0〜6.0重量%、水酸化ナトリウム1.5〜5.5重量%に精製水88.5〜96.5重量%を混合して得られたアルカリ水溶液とを混合して、pHが5〜8の範囲である混合溶液を製造する第2工程と、
前記第2工程で製造した混合溶液を、陰極水の酸化還元電位が−500mV以下になるまで電気分解して水素水原液を製造する第3工程と、
前記第3工程により製造された水素水原液を、ミネラルウォーターで80〜120倍希釈して水素含有量を0.01〜0.8mg/lの範囲の飲用水素水を製造する第4工程とにより製造することを特徴とするペットボトルに充填可能な飲用水素水の製造方法。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139645(P2012−139645A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294410(P2010−294410)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【特許番号】特許第4881472号(P4881472)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(511003903)
【出願人】(501072924)
【出願人】(505001306)
【Fターム(参考)】