説明

ペプチド−免疫グロブリン−複合体

本発明は、免疫グロブリンポリペプチド鎖末端の少なくとも2つと、1個のペプチドとが結合し、その際、それらのペプチドが異なるか、類似しているか、または同一でありうるペプチド−免疫グロブリン−複合体に関する。結合は核酸レベルで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個以上のペプチドが、それぞれ、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の一末端に結合しているペプチド−免疫グロブリン−複合体に関する。ペプチドは、アミノ酸レベルで異なり、類似し、または同一でありうる。ペプチドが結合する免疫グロブリンは機能的な免疫グロブリンではない。
【0002】
背景技術
細胞のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は、感染する細胞膜とウイルス膜が融合する過程によって行われる。この過程の一般的スキームを示す:ウイルスエンベロープ糖タンパク複合体(gp120/gp41)が、感染する細胞膜上にある細胞表面受容体と相互作用する。gp120が、CCR−5またはCXCR−4などのコレセプターと組み合わさって、例えばCD4受容体に結合すると、gp120/gp41複合体の立体配座に変化が生じる。この立体配座変化の結果、gp41タンパク質は標的細胞の膜内に挿入することができる。この挿入が膜融合過程の開始である。
【0003】
gp41タンパク質のアミノ酸配列は、天然の多型のために、異なるHIV株間で異なることが分かっている。しかし、(N末端からC末端方向に)融合シグナル、2個のヘプタッドリピートドメイン(HR1、HR2)、および膜貫通ドメインという同じドメイン構造は正確に認識することができる。融合(または融合誘導)ドメインは、細胞膜への挿入およびその分解に関与していることが示唆されている。HR領域は、7アミノ酸(「ヘプタッド(heptad)」)を含む複数のストレッチから構築されている(例えば、Shu, W.ら, Biochemistry 38 (1999) 5378−5385を参照されたい)。ヘプタッド以外にも、1つ以上のロイシンジッパー様モチーフが存在する。この組成物は、gp41タンパク質のコイルドコイル構造の形成、および同様にこれらのドメインに由来するペプチドの形成を担う。コイルドコイルは、一般的に、2個以上の相互作用へリックスからなるオリゴマーである。
【0004】
gp41のHR1またはHR2ドメインから推定されるアミノ酸配列を有するペプチドは、HIV阻害薬の細胞へのインビトロおよびインビボ取込みに有効である(例えば、ペプチド、例えば、US5,464,933、US5,656,480、US6,258,782、US6,348,568、またはUS6,656,906を参照されたい)。例えば、T20[DP178としても知られる、Fuzeon(登録商標)、HR2ペプチド]およびT651(US6,479,055)は、非常に強力なHIV感染の阻害薬である。
【0005】
例えば、アミノ酸置換または化学的架橋により、HR2由来のペプチドの効力を増強することが試されてきた(Sia, S. K.ら, PNAS USA 99 (2002) 14664-14669;Otaka, A.ら, Angew. Chem. Int. Ed. 41 (2002) 2937-2940)。
【0006】
ある分子にペプチドが結合すると、それらの薬物動態特性が変化することがあり、例えば、該ペプチド複合体の血清半減期を増大させることができる。結合は、例えば、ペグ化インターロイキン−6(EP0442724)、ペグ化エリスロポエチン(WO 01/02017)、エンドスタチンおよび免疫グロブリン含有キメラ分子(US2005/008649)、融合タンパク質を基に分泌された抗体(US2002/147311)、アルブミン含有融合ポリペプチド(US2005/0100991;ヒト血清アルブミンUS5,876,969)、ペグ化ポリペプチド(US2005/0114037)、およびインターフェロン融合体について報告している。
【0007】
該手法の意図は、例えば、ポリペプチド類と免疫グロブリン類を融合して、免疫グロブリンの抗原決定特性とポリペプチドの生物活性とを組み合わせることである。すなわち、複合体の免疫グロブリン部分は標的化機能を示し、ポリペプチド部分は生物活性を提供する。これは、例えば、ゲロニンを含む免疫毒素と抗体(WO 94/26910)について、改変トランスフェリン抗体融合タンパク質(US2003/0226155)について、抗体サイトカイン融合タンパク質(US2003/0049227)について、および免疫刺激活性、膜輸送活性または同種親和性活性を有するペプチドと抗体からなる融合タンパク質(US2003/0103984)について報告している。
【0008】
WO 2004/085505では、巨大分子に化学的に結合している、生物活性化合物からなる長時間作用性生物活性複合体について報告している。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、1個を超えるペプチドと前記免疫グロブリンとが結合しているペプチド−免疫グロブリン−複合体を提供することである。
【0010】
本発明は、ペプチド−免疫グロブリン−複合体であって、免疫グロブリンが、2本の重鎖、または2本の重鎖と2本の軽鎖からなり、免疫グロブリンが、非機能性免疫グロブリンであり、ペプチド結合によって、免疫グロブリン鎖のカルボキシ末端アミノ酸とペプチドのアミノ末端アミノ酸とが結合するか、あるいはペプチドのカルボキシ末端アミノ酸と免疫グロブリン鎖のアミノ末端アミノ酸とが結合し、かつ複合体が以下の一般式を有し、
免疫グロブリン−[ペプチド]
式中、nは2〜8の整数である、複合体を含む。
【0011】
一実施態様では、ペプチドは生物活性ペプチドである。
【0012】
別の実施態様では、ペプチドはペプチドリンカーと生物活性ペプチドからなる。
【0013】
一実施態様では、複合体のペプチドは、互いに90%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0014】
さらに別の実施態様では、免疫グロブリンは、Gクラス(IgG)またはEクラス(IgE)のいずれかの免疫グロブリンである。
【0015】
別の実施態様では、生物活性ポリペプチドは抗融合誘導ペプチドである。
【0016】
別の実施態様では、非機能性免疫グロブリンは、K値10−5mol/l以上でヒト抗原に結合する免疫グロブリンである。
【0017】
別の実施態様では、非機能性免疫グロブリンは、a)重鎖および/または軽鎖の両方が、1つ以上のフレームワークまたは/および超可変領域の一部または全てを欠く免疫グロブリン、またはb)重鎖および/または軽鎖の両方が可変領域を有しない免疫グロブリン、またはc)ヒト抗原に対して10−5mol/l以上の結合親和性を有する免疫グロブリン、またはd)ヒト抗原に対して10−5mol/l以上の結合親和性を有し、かつ非ヒト抗原に対して10−7mol/l以下の結合親和性を有する免疫グロブリンである。
【0018】
本発明がさらに包含するものは、本発明による複合体を生成する方法であって、該方法は複合体の発現に好適な条件下で、本発明による複合体をコードする1個以上の核酸分子を含む、1つ以上の発現ベクターを含有する細胞を培養する工程、およびその細胞またはその培地からその複合体を回収する工程を含む。
【0019】
本発明は、医薬的に許容され得る賦形剤または担体とともに、本発明による複合体、または医薬的に許容され得るその塩を含有する医薬組成物も含む。
【0020】
本発明がさらに包含するものは、ウイルス感染症を処置する薬剤を製造するための本発明による複合体の使用である。
【0021】
一実施態様では、ウイルス感染症はHIV感染症である。
【0022】
本発明は、さらに、抗ウイルス処置を必要とする患者を処置するために、本発明による複合体を使用する方法を含む。
【0023】
発明の説明
本発明は、ペプチド−免疫グロブリン−複合体において、免疫グロブリンが、2本の重鎖、または2本の重鎖と2本の軽鎖からなり、免疫グロブリンが、非機能性免疫グロブリンであり、ペプチド結合によって、免疫グロブリン鎖のカルボキシ末端アミノ酸とペプチドのアミノ末端アミノ酸とが結合するか、あるいはペプチドのカルボキシ末端アミノ酸と免疫グロブリン鎖のアミノ末端アミノ酸とが結合し、かつ複合体が以下の一般式を有し、ここで、この一般式の[ペプチド]−部分の位置は結合を示さず、すなわちアミノ酸、そのペプチドが免疫グロブリンと結合する位置を示さない、ペプチド−免疫グロブリン−複合体を含む。
免疫グロブリン−[ペプチド]
(式中、nは2〜8の整数である)
【0024】
本発明の範囲内で、用いる用語のいくつかは以下のように定義する。
【0025】
「遺伝子」は、例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の発現に必要な、染色体またはプラスミド上のセグメントを意味する。遺伝子には、コード領域以外に、プロモーター、イントロンおよびターミネーターを含む他の機能性成分も含まれる。
【0026】
「構造遺伝子」は、シグナル配列を持たない遺伝子のコード領域を意味する。
【0027】
「抗融合誘導ペプチド」は、膜融合に関連する事象または膜融合事象自体を阻害するペプチドであり、なかでも、膜融合によってウイルスが未感染細胞を感染することを阻害するペプチドを含む。これらの抗融合誘導ペプチドは、直鎖ペプチドであることが好ましい。例えば、それらは、gp41細胞外ドメイン、例えばDP107またはDP178などから派生することができる。該ペプチドの例は、US5,464,933、US5,656,480、US6,013,263、US6,017,536、US6,020,459、US6,093,794、US6,060,065、US6,258,782、US6,348,568、US6,479,055、US6,656,906、WO 1996/19495、WO 1996/40191、WO 1999/59615、WO 2000/69902、およびWO 2005/067960に見ることができる。例えば、該ペプチドのアミノ酸配列は、US5,464,933の配列番号1〜10、US5,656,480の配列番号1〜15、US6,013,263の配列番号1〜10および16〜83、US6,017,536の配列番号1〜10、20〜83、および139〜149、US6,093,794の配列番号1〜10、17〜83、および210〜214、US6,060,065の配列番号1〜10、16〜83、および210〜211;US6,258,782の配列番号1286および1310、US6,348,568の配列番号1129、1278〜1309、1311、および1433、US6,479,055の配列番号1〜10、および210〜238、US6,656,906の配列番号1〜171、173〜216、218〜219、222〜228、231、233〜366、372〜398、400〜456、458〜498、500〜570、572〜620、622〜651、653〜736、739〜785、787〜811、813〜815、816〜823、825、827〜863、865〜875、877〜883、885、887〜890、892〜981、986〜999、1001〜1003、1006〜1018、1022〜1024、1026〜1028、1030〜1032、1037〜1076、1078〜1079、1082〜1117、1120〜1176、1179〜1213、1218〜1223、1227〜1237、1244〜1245、1256〜1268、1271〜1275、1277、1345〜1348、1350〜1362、1364、1366、1368、1370、1372、1374〜1376、1378〜1379、1381〜1385、1412〜1417、1421〜1426、1428〜1430、1432、1439〜1542、1670〜1682、1684〜1709、1712〜1719、1721〜1753、および1755〜1757、またはWO 2005/067960の配列番号5〜95の群を含み、またはそれらの群から選択することができる。抗融合誘導ペプチドは、5〜100個のアミノ酸、好ましくは10〜75個のアミノ酸、より好ましくは15〜50個のアミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。
【0028】
本明細書で使用する「生物活性分子」という用語は、有機分子、例えば生物学的巨大分子(ペプチド、タンパク質、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチド、または合成タンパク質など)を指し、例えば細胞系およびウイルスを使用するバイオアッセイなどの人工的生物系に投与した場合、あるいは鳥類、およびヒトを含む哺乳動物を含むがそれだけに限定されない、動物にインビボで投与した場合、生物学的効果を引き起こす。この生物学的効果は、酵素阻害、活性化、もしくはアロステリック修飾、結合部位あるいは周辺での受容体との結合、受容体のブロックあるいは受容体の活性化、もしくはシグナル誘発でありうるが限定されない。
【0029】
「発現ベクター」は、宿主細胞中で発現させるタンパク質をコードする核酸分子である。通常は、発現ベクターは原核プラスミド増殖単位を含み、例えば、大腸菌では、複製起点、および選択可能なマーカー、真核生物の選択可能なマーカー、および対象となる遺伝子を発現させるための1つ以上の発現カセットを含み、各発現カセットはプロモーターと、構造遺伝子と、ポリアデニル化シグナルを含む転写ターミネーターとを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下におかれ、該核酸はプロモーターに「作動可能に結合」していると言われている。同様に、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合、調節エレメントとコアプロモーターは作動可能に結合している。
【0030】
「ポリシストロン性転写ユニット」は、1個を超える構造遺伝子が同じプロモーターの制御下にある転写ユニットである。
【0031】
「単離したペプチド」は、混入する細胞成分、例えば炭水化物、脂質、または事実上ペプチドに関連する他のタンパク質不純物、を本質的に含まないポリペプチドである。通常は、単離したペプチドの調製物には、高度に精製された形で、すなわち少なくとも約80%純粋な、少なくとも約90%純粋な、少なくとも約95%純粋な、95%を超えて純粋な、または99%超えて純粋なペプチドが含まれる。特定のタンパク質の調製物が単離したペプチドを含むことを示す一方法は、タンパク質調製物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、そのゲルをクマシーブリリアントブルー染色した後に、単一バンドが出現することによる。しかし、「単離した」という用語は、二量体などの代替の物理的形状を有する同じペプチド、または別法としてグリコシル化した形または誘導体化した形の同じペプチドの存在を除外するものではない。
【0032】
本明細書で使用する「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子およびその変異体もしくはフラグメントによって実質的にコードされている、1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質をさす。免疫グロブリンを構成する異なるポリペプチドは、それらの重量に応じて軽鎖および重鎖と呼ばれる。存在を認められている免疫グロブリン遺伝子には、異なる定常領域遺伝子および無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンは、様々な型で存在しうる。重鎖および軽鎖のそれぞれには、可変ドメイン(領域)(一般的に、ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)が含まれる。免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変ドメインには、異なるセグメント、すなわち4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(CDR)が含まれる。重鎖および軽鎖ポリペプチドのそれぞれは、定常領域(一般的に、そのポリペプチド鎖のカルボキシル末端部分)を含む。重鎖の定常ドメイン/領域は、抗体と、i)Fc−γ受容体(FcγR)を有する細胞、例えば食細胞、またはii)ブランベル(Brambell)受容体としても知られる、新生仔Fc受容体(FcRn)を有する細胞との結合を媒介する。また、その領域は、成分(C1q)など、従来の補体系因子を含む数種の因子への結合を媒介する。
【0033】
本発明による免疫グロブリンは、少なくとも2本の重鎖ポリペプチドを含む。場合により、2本の軽鎖ポリペプチドが存在しうる。本発明による免疫グロブリンは、非機能性免疫グロブリンである。
【0034】
本願内で使用する「非機能性免疫グロブリン」という用語は、K値(結合親和性)10−5mol/l以上で(例えば10−3mol/l)、好ましくはK値10−4mol/l以上で、ヒト抗原と結合する免疫グロブリンを意味する。結合親和性は、標準的結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴技術(Biacore(登録商標))によって定量する。この結合親和値は、正確な値として取り扱ってはならず、それは単に参照にすぎない。ヒト標的/抗原に対して免疫グロブリン典型的特異的標的結合性を示さず、それゆえヒト治療活性を有しない、免疫グロブリンを決定し、かつ/または選択するために結合親和性を用いる。すなわち、例えば、非機能性免疫グロブリンは、配列特異的抗原/エピトープ結合性を有しない免疫グロブリンである。同時に、例えば、イオン相互作用に基づく非特異的相互作用も、ともかく存在しうる。これは、免疫グロブリンが非ヒト標的/抗原に対して特異的標的結合を示すということを除外するものではない。この非ヒト抗原の特異的標的結合は、K値10−7mol/l以下(例えば、10−10mol/l)、好ましくはK値10−8mol/l以下に関連する。
【0035】
本願内で使用する「リンカー」または「ペプチドリンカー」という用語は、天然起源および/または合成起源ペプチドリンカーを意味する。リンカーは、20個の天然のアミノ酸が単量体構成単位である直鎖アミノ酸鎖を構築している。その鎖の長さは、1〜50個アミノ酸、好ましくは3〜25個アミノ酸である。リンカーは、反復アミノ酸配列または天然のポリペプチド配列、例えば、ヒンジ機能を有するポリペプチドを含むこともあり得る。ペプチドが正確に折り畳み、適切に提示できることにより、免疫グロブリンに結合したペプチドがその生物活性を確実に実施できるようにする機能を、リンカーは有する。
【0036】
好ましくは、リンカーは、グリシン残基、グルタミン残基、および/またはセリン残基が豊富であるといわれる「合成ペプチドリンカー」である。これらの残基は、例えば、アミノ酸5個まで、例えば、GGGGS、QQQQGまたはSSSSGの小さな反復単位に整列する。この小さな反復単位を2回から5回繰り返して多量体単位を形成しうる。多量体単位のアミノ末端および/またはカルボキシ末端に、追加で任意の天然のアミノ酸を6個まで加えてよい。他の合成ペプチドリンカーは、例えば、リンカーSSSSSSSSSSSSSSSのセリンなど、10〜20回繰り返される単一アミノ酸から構成される。アミノ末端および/またはカルボキシ末端のそれぞれには、追加で任意の天然のアミノ酸は6個まで存在することができる。
【0037】
本出願内で使用する「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む天然のカルボキシα−アミノ酸群を意味する。
【0038】
本発明を実施するのに有用である当業者に周知の方法や技術は、例えば、Ausubel, F.M.編, Current Protocols in Molecular Biology, I〜III巻(1997), Wiley and Sons;Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載している。
【0039】
本発明は、免疫グロブリン末端の少なくとも2つが、ペプチドに結合している免疫グロブリン複合体を含む。免疫グロブリンは、異なる5クラス:IgA(クラスA免疫グロブリン)、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てられる。これらのクラスの間で、免疫グロブリンはその全体的構造が異なる。その構成単位を見れば類似性が見てとれる。免疫グロブリンは全て、いわゆる免疫グロブリン軽鎖ポリペプチド(短鎖:軽鎖)と、いわゆる免疫グロブリン重鎖ポリペプチド(短鎖:重鎖)とを含むポリペプチド鎖の対から構築されている。IgGクラス免疫グロブリンの一般的構造を図1に示す。
【0040】
免疫グロブリンなど、異なるサブユニットから構成される複合体タンパク質では、それは、モジュール構造により、1つを超えるアミノ末端と、1つを超えるカルボキシ末端が得られる。例えば、クラスGおよびEの免疫グロブリンは、各2対の重鎖および軽鎖を有する。この構成により、これらの免疫グロブリン、すなわち、免疫グロブリン一分子中には、4つのアミノ末端と4つのカルボキシ末端が存在する。これにより、最多8個のペプチドが、IgGまたはIgEに結合できるようになり、すなわち、アミノ末端(N末端)とカルボキシ末端(C末端)を組み合わせた数まで可能になる。
【0041】
本発明の免疫グロブリンは、非機能性免疫グロブリンである。K値10−5mol/l以上を有する(ヒト抗原に対して)機能的な可変ドメインが存在しないために、たとえあったとしても免疫グロブリンはヒト抗原に結合する。これは、非ヒト抗原が、K値10−7mol/l以下で特異的に結合しているということを除外するものではない。
【0042】
免疫グロブリンは、ペプチドが遺伝子的手段によって結合する骨格を提供する。従って、機能的な可変ドメインを持たず、あるいは1つ以上の可変ドメイン領域の全てまたは一部が欠けており、従って任意の抗原結合能力を有しない、免疫グロブリンもまた、非機能性免疫グロブリンとして本発明に使用することができる。
【0043】
免疫グロブリン鎖の末端に導入するペプチドは、免疫グロブリン全体と比較すると小さいサイズのものである。例えば、最小の免疫グロブリンであるクラスG免疫グロブリンの分子量は約150kDaであり、改変したもののサイズは、約100個のアミノ酸に等しい12.5kDa未満であり、一般的には、約60個のアミノ酸に等しい7.5kDa未満である。
【0044】
ペプチドは、分子生物学的技術により核酸レベルで免疫グロブリンに導入する。
【0045】
免疫グロブリンに結合したペプチドは、5〜100のアミノ酸残基、好ましくは10〜75のアミノ酸残基、より好ましくは15〜50のアミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。免疫グロブリンに結合したポリペプチドは、生物活性分子/ペプチドを含む群から選択される。これらの分子は、人工生物系、生細胞または生きている生物、例えば、鳥類またはヒトを含む哺乳動物に投与した場合、生物学的効果を引き起こす。これらの生物活性化合物は、それだけには限定されないが、アゴニスト、および酵素、受容体、免疫グロブリンなどのアンタゴニスト;細胞障害活性、抗ウイルス活性、抗菌活性、または抗癌活性を示す標的薬剤、および抗原も含まれる。生物活性ペプチドは、抗融合誘導ペプチドの群から選択するのが好ましい。本発明の免疫グロブリン複合体は、医薬的、治療的、または診断的適用に有用である。
【0046】
生物活性ペプチドは、それらに限定されないが、例えば、ハリネズミタンパク質、骨形成タンパク質、増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、G−CSF、インターロイキン、およびインターフェロン、タンパク質ホルモン、抗ウイルス性ペプチド、抗融合誘導ペプチド、抗血管新生ペプチド、細胞障害性ペプチドなどからなる群から選択することができる。
【0047】
1個を超えるペプチドと免疫グロブリンとの末端結合には、異なる分配が存在する。免疫グロブリンに結合できるペプチドの数は、1から免疫グロブリンポリペプチド鎖のアノ末端とカルボキシ末端を組み合わせた数までである。
【0048】
1個のペプチドが免疫グロブリンと結合する場合、そのペプチドは免疫グロブリン末端のいずれか1つを占有することができる。同様に、できる限り多くのペプチドが免疫グロブリンと結合する場合、1個のペプチドによって全末端が占有される。免疫グロブリンと結合するペプチドの数が、1よりも大きいが最多可能数よりも小さい場合、免疫グロブリン末端でペプチドの異なる分配が可能である。
【0049】
例えば、4個のペプチドがGまたはEクラスの免疫グロブリンと結合する場合、異なる5個の組合せが可能である(表1を参照されたい)。2つの組合せでは、1種類の末端全て、すなわち免疫グロブリン鎖の、4つ全てのアミノ末端または4つ全てのカルボキシ末端が(それぞれ)1個のペプチドと結合している。他方の末端は結合しない。これによって、免疫グロブリンの一領域での改変/結合の配分により一実施態様ができる。他の事例では、ポリペプチドはいくつかの両末端と結合している。これらの組合せの中では、結合したペプチドは、免疫グロブリンの異なる領域に配分される。いずれの場合でも、結合する末端の合計は4である。
【0050】
表1:4個のペプチドと、4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン末端との結合の可能な組合せ。
【表1】

【0051】
本発明は、少なくとも2つの末端が、ペプチドと結合する免疫グロブリンを含む。結合するペプチド自体(1つ以上)は免疫グロブリンに由来しない。結合するペプチドのアミノ酸配列は、異なっているか、類似しているか、または同一であってよい。一般に、それらのアミノ酸配列は、異なり、すなわち、それらのアミノ酸同一性は90%未満である。一実施態様では、アミノ酸配列同一性が90%から100%未満の範囲であると、これらのアミノ酸配列とその対応するペプチドは類似すると定義される。別の実施態様では、ペプチドが同一性100%のアミノ酸配列を有すると、それらは同一であるとみなされる。
【0052】
結合するペプチドは、ある程度の相同性または同一性を示しうるが、それらはアミノ酸配列の全長で異なることもありうる。
【0053】
ペプチドと免疫グロブリン間の結合は核酸レベルで実施される。従って、2個のアミノ酸間のペプチド結合がペプチドと免疫グロブリンを結合させる。このように、ペプチドのカルボキシ末端アミノ酸は、免疫グロブリン鎖のアミノ末端アミノ酸と結合しているか、または免疫グロブリン鎖のカルボキシ末端アミノ酸はペプチドのアミノ末端アミノ酸と結合している。
【0054】
本発明によるペプチド−免疫グロブリン−複合体のさらなる特徴は、完全な複合体が、1つ以上の核酸分子、好ましくは2個の〜8個の核酸分子によってコードされることである。これにより、免疫グロブリン複合体を組換え産生できるようになる。
【0055】
本発明によるペプチド−免疫グロブリン−複合体を組換え産生するためには、異なるポリペプチドをコードする2個以上の核酸分子が必要であり、2個〜8個の核酸分子が好ましい。これらの核酸分子は、複合体の、異なる免疫グロブリンポリペプチド鎖をコードし、以下、これらの核酸分子を構造遺伝子と称する。それらは、同じ発現カセットの一部であっても、あるいは異なる発現カセット中にあってもよい。複合体の組み立ては、複合体が分泌される前に、およびそれゆえ発現する細胞内で行われるのが好ましい。従って、複合体のポリペプチド鎖をコードする核酸は、同じ宿主細胞中で発現されるのが好ましい。
【0056】
一般に、非抱合型免疫グロブリンを産生するためには、1つは軽鎖をコードし、1つは重鎖をコードする2個の構造遺伝子が必要である。ペプチド−免疫グロブリン−複合体を生成するためには、結合する免疫グロブリンの軽鎖および/または重鎖をコードする、追加の構造遺伝子が必要である。一例を図12に示す。そこには、免疫グロブリンと、異なる2個のペプチドのペプチド−免疫グロブリン−複合体すべてが示してある。
【0057】
同一のペプチドに結合している2本の重鎖から構成される本発明による免疫グロブリンは、1または2個の構造遺伝子によってコードされる。両ペプチドが重鎖の同じ末端アミノ酸と結合している場合、1個の構造遺伝子を使用する。1個のペプチドが第一の重鎖のアミノ末端アミノ酸に結合しており、他方のペプチドが第二の重鎖のカルボキシ末端アミノ酸に結合している場合、2個の構造遺伝子を使用する。
【0058】
別の例は、軽鎖の両アミノ末端が異なる、または類似のペプチドと結合している複合体である。この場合は、3個の構造遺伝子を使用しなければならない(図11)。1個の構造遺伝子は、非抱合型重鎖をコードし(構造遺伝子2)、1個の構造遺伝子は、ペプチド1と結合している第一の軽鎖をコードし(構造遺伝子1)、1個の構造遺伝子は、ペプチド2と結合している第二の軽鎖をコードする(構造遺伝子3)。それらの構造遺伝子用に、1つ以上の発現ベクター(プラスミド)に乗せる1つ以上の発現カセットを設計する。前記の例で抱合型ペプチドが同一である場合には、2個のみ構造遺伝子を必要とし、結合するペプチドは同一である。すなわち、1個が非抱合型重鎖をコードし、1個がアミノ抱合型軽鎖をコードする(図11を参照されたい:構造遺伝子1と3が同一である)。ペプチド−免疫グロブリン−複合体の3個の全ての構成単位は同じ細胞中で発現するのが好ましい。免疫グロブリン鎖の統計的組立てを仮定すると、異なる4個の免疫グロブリン複合体が実施可能である。これらのうち、免疫グロブリン2と免疫グロブリン2aは同一であり、従って異なる3個の免疫グロブリン複合体を培地に分泌する。3個の全て構造遺伝子が化学量論的に発現すると、免疫グロブリン1、免疫グロブリン2、および免疫グロブリン3の割合は1:2:1である。これらの構造遺伝子の1つ以上の発現を増加、または減少させることによって、組み立てられた複合体の割合を好ましい複合体(1、2、または3)にシフトさせることができる。従って、例えば、異なるプロモーター強度を有するプロモーターを使用する方法が当業者に周知である。ペプチドが同一である場合には、唯一の免疫グロブリン複合体が形成され培地に分泌される。
【0059】
得られる免疫グロブリン複合体の混合物は、当業者に周知の方法によって分離し、精製することができる。免疫グロブリンを精製するためのこれらの方法は、定評があり、広範に使用されており、単独でまたは組み合わせて使用されている。該方法には、例えば、微生物由来タンパク質を使用するアフィニティークロマトグラフィー(例えば、タンパク質Aまたはタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー〔例えば、カチオン交換(カルボキシメチル樹脂)、アニオン交換(アミノエチル樹脂)および混合モードの交換クロマトグラフィー]、親チオ性(thiophilic)吸着法(例えば、β−メルカプトエタノールおよび他のSHリガンドによる)、疎水的相互作用または芳香族吸着クロマトグラフィー[例えば、フェニル−セファロース、アザ親アレノ(arenophilic)樹脂、またはm−アミノフェニルボロン酸による]、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)およびCu(II)親和性物質による)、サイズ排除クロマトグラフィー、および調製用電気泳動法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)がある。
【0060】
図13および14は、軽鎖アミノ末端と結合している第一のペプチドと、重鎖カルボキシ末端に結合している第二のペプチドを使用し、得ることができる様々な複合体を示す。この場合、異なる4個の構造遺伝子から出発して、異なる10個の免疫グロブリン複合体が生成される。
【0061】
非抱合型ペプチドと比較して、ペプチド−免疫グロブリン−複合体は、半減期(すなわち、元のペプチド量の半分が血流から排出され、かつ/または代謝される時間)など、薬物動態の改善が見られる。同時に、本発明によるペプチド−免疫グロブリン−複合体によって、抱合型ペプチドの局所濃度を増大させることができる。抱合型ペプチドは、結合している免疫グロブリンに極めて近接して存在し、かつ固定されるからである。同じ免疫グロブリンに結合する1個を超える、すなわち、2個以上の異なるペプチドを提供することも可能である。
【0062】
本発明の免疫グロブリン複合体の先に概説した特性は、抱合型ペプチドの生物活性に依存する。従って、ペプチドは、それらの標的と相互作用できるように、それらの天然立体構造を取り入れ、そしてアクセス制限なく適切に存在させなければならない。立体障害を防止するために、抱合型ペプチドは、ペプチドリンカーと生物活性ペプチドからなりうる(ペプチドリンカーについては表2を参照されたい)。
【0063】
表2:ペプチドリンカー
【表2】

【0064】
全てのペプチドリンカーは、核酸分子によってコードし、従って組換えによって発現することができる。リンカーはそれ自体ペプチドなので、生物活性ペプチドは、2個のアミノ酸間に形成するペプチド結合を通じてリンカーに結合する。ペプチドリンカーは、生物活性ペプチドと、生物活性ペプチドが結合する免疫グロブリン鎖との間に導入する。従って、アミノ末端からカルボキシ末端方向に様々な可能な配列:a)生物活性ペプチド−ペプチドリンカー−免疫グロブリンポリペプチド鎖、またはb)免疫グロブリンポリペプチド鎖−ペプチドリンカー−生物活性ペプチド、またはc)生物活性ペプチド−ペプチドリンカー−免疫グロブリンポリペプチド鎖−ペプチドリンカー−生物活性ペプチドが存在し、その際、生物活性ペプチドは、同じでも、または異なっていてもよく、かつペプチドリンカーは存在しまたは存在しなくてもよく、すなわち、C末端からN末端方向に可能な配列には、d)生物活性ペプチド−免疫グロブリンポリペプチド鎖、またはe)免疫グロブリンポリペプチド鎖−生物活性ペプチド、またはf)生物活性ペプチド−免疫グロブリンポリペプチド鎖−生物活性ペプチドが含まれる。
【0065】
当業者に周知の組換え工学法により、免疫グロブリン複合体は、核酸/遺伝子レベルでオーダーメイドすることができる。免疫グロブリンをコードする核酸配列は公知であり、例えば、ゲノムデータベースから入手することができる。同様に、生物活性ペプチドの核酸配列も公知であるが、または生物活性ペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸をコードするヌクレオチドの三つ組コドンを基にして、そのアミノ酸配列から容易に推定することができる。
【0066】
本発明の複合体を発現させるための発現ベクター(プラスミド)の構築に必要な成分は、その天然型および/または改変型および/または抱合型バージョンの免疫グロブリン軽鎖用発現カセット、その天然型および/または改変型および/または抱合型バージョンの免疫グロブリン重鎖用発現カセット、選択可能なマーカー、および大腸菌複製物、さらに選択単位である。これらのカセットは、プロモーター、構造遺伝子、分泌シグナル配列をコードするDNAセグメント、およびターミネーターを含む。免疫グロブリン複合体の全ての鎖をコードする1つの発現ベクター(プラスミド)、あるいはそれぞれが、免疫グロブリン複合体の一本以上の鎖をコードする2つ以上の発現ベクター(プラスミド)上に、これらの成分を作動的に結合した形で組み立てる。
【0067】
コードされたポリペプチドを発現させるためには、(1つ以上の)発現ベクター(プラスミド)を好適な宿主細胞に導入する。タンパク質は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、NS0、細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、HEK細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6細胞などで産生するのが好ましい。ベクターの調節エレメントは、選択した宿主細胞中で機能的であるように選択しなければならない。
【0068】
発現させるためには、鎖の発現に適切な条件下で、免疫グロブリン複合体の一本以上の鎖をコードする(1つ以上の)ベクター(プラスミド)を含む宿主細胞を培養する。発現された免疫グロブリン鎖は機能的に組み立てられる。十分に処理したペプチド−免疫グロブリン−複合体は培地に分泌する。
【0069】
複合体の免疫グロブリン部分は、ペプチドが結合する骨格を提供する。その免疫グロブリンは、非機能性免疫グロブリンであり、すなわち、それは、K値(結合親和性)10−5mol/l以上(例えば10−3mol/l)でヒト抗原に結合する。この定義内に収まる免疫グロブリンは、例えば、重鎖および/または軽鎖の両方が、1つ以上のフレームワークまたは/および超可変領域の一部または全てを欠く免疫グロブリン、重鎖および/または軽鎖の両方が可変ドメイン(領域)を有しない免疫グロブリン、非ヒト抗原に対してK値10−7mol/l以下(例えば、10−10mol/l)の免疫グロブリンである。
【0070】
本発明の理解に役立てるために、以下の実施例、配列表および図を提供し、その真の範囲を添付の特許請求の範囲に記載する。本発明の趣旨から逸脱することなしに、記載の手順に手直しを加えることが可能なことは理解されよう。
【0071】
実施例
物質および方法
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は、Kabat, E.A.ら, (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版, NIH Publication No 91-3242に示している。
【0072】
EUナンバーリング(Edelman, G.M.ら, PNAS 63 (1969) 78-85;Kabat, E.A.ら, (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版, NIH Publication No 91-3242)に従って、抗体鎖のアミノ酸に番号を付す。
【0073】
組換えDNA技術
DNAを操作するために、Sambrook, J.ら, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載している標準的方法を使用した。製造業者の使用説明書に従って、分子生物学的試薬を使用した。
【0074】
タンパク質の定量
ペプチド−免疫グロブリン−複合体のタンパク質の濃度は、アミノ酸配列を基準として算出したモル減衰係数を使用し、280nmで光学密度(OD)を定量することによって定量した。
【0075】
DNA配列決定
MediGenomix GmbH(Martinsried, Germany)で実施した二本鎖シークエンシングによってDNA配列を決定した。
【0076】
DNAおよびタンパク質の配列分析および配列データ管理
配列作成、マッピング、分析、注釈、および作図には、GCG(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)社製ソフトウェアパッケージ10.2版およびInfomax社製Vector NTI Advance 8.0版を使用した。
【0077】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、化学合成し作成したオリゴヌクレオチドから、Medigenomix GmbH (Martinsried, Germany)により調製した。PCR増幅を含む、オリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーションによって、唯一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を隣接する100〜600bp長の遺伝子セグメントを組み立て、続いてA−オーバーハングを通じてpCR2.1−TOPO−TAクローニングベクター(Invitrogen)中にクローン化した。サブクローン化した遺伝子フラグメントのDNA配列は、DNAシークエンシングによって確認した。
【0078】
免疫グロブリン複合体のアフィニティー精製
公知の方法に従って、タンパク質A-Sepharose(商標)CL-4B(Amersham Bioscience)を使用し、アフィニティークロマトグラフィーによって、発現し分泌されたペプチド−免疫グロブリン−複合体を精製した。手短に言えば、遠心分離(10,000×g、10分間)および0.45μmフィルターによるろ過の後、PBS緩衝液(10mM NaHPO、1mM KHPO、137mM NaClおよび2.7mM KCl、pH7.4)で平衡化したタンパク質A-Sepharose(商標)CL-4Bカラムに、免疫グロブリン複合体を含む清澄な培養上清をのせた。PBS平衡化緩衝液と0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を用いて、未結合タンパク質を洗い流した。免疫グロブリン複合体を0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させ、画分を含有する免疫グロブリン複合体を1M Tris-Baseで中和した。次いで、4℃でPBS緩衝液に対して免疫グロブリン複合体を徹底的に透析し、Biomax-SK膜(Millipore)を備えたUltrafree遠心式フィルター器具を用いて濃縮し、0℃の氷水浴に貯蔵した。
【0079】
実施例1
発現プラスミドの作製
抗IGF−1R重鎖可変領域(V)の遺伝子セグメントと、ヒトγ1−重鎖定常領域(C1−ヒンジ−C2−C3)の遺伝子セグメントと同様に、インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)抗体(以下、抗IGF−1RまたはIRともいう)の軽鎖可変領域(V)をコードする遺伝子セグメントと、ヒトκ−軽鎖定常領域(C)(配列についてはUS2005/0008642を参照されたい)をコードする遺伝子セグメントとを連結した。
【0080】
a)ベクター4818
ベクター4818は、HEK293 EBNA細胞中で、抗IGF−1R抗体の重鎖(ゲノム的に組織化された発現カセット、エクソン−イントロン組織化)を一時的に発現させるための発現プラスミドである。それは以下の機能性エレメントを含む:
【0081】
抗IGF−1R γ1−重鎖発現カセットの他に、このベクターは以下:
− 選択可能なマーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子、
− エプスタイン−バーウイルス(EBV)の複製起点、oriP、
− 大腸菌でこのプラスミドを複製させるベクターpUC18の複製起点、および
− 大腸菌にアンピシリン耐性を授けるβ−ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0082】
抗IGF−1R γ1−重鎖遺伝子の転写ユニットは、以下のエレメント:
− ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− 合成5’非翻訳領域(UT)、
− シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列(シグナル配列1、イントロン、シグナル配列2[Ll−イントロン−L2])、
− 特有のBsmI制限部位を5’末端に、そしてスプライスドナー部位と特有のNotI制限部位を3’末端に置くセグメント配列をコードする、クローン化した抗IGF−1R可変重鎖(L2シグナル配列)、
− マウス重鎖エンハンサーエレメントを含むマウス/ヒト重鎖ハイブリッドイントロン2(部分JH、JH)(Neuberger, M.S., EMBO J. 2 (1983) 1373-1378)、
− ゲノムヒトγ1−重鎖遺伝子定常領域、
− ヒトγ1−免疫グロブリンのポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列、および
− 5’末端および3’末端に、それぞれ特有の制限部位AscIおよびSgrAI
から構成される。
【0083】
抗IGF−1R γ1−重鎖発現ベクター4818のプラスミドマップを図2に示す。
【0084】
b)ベクター4802
ベクター4802は、HEK293 EBNA細胞中で、抗IGF−1R抗体軽鎖(cDNA)を一時的に発現させるための発現プラスミドである。それは以下の機能性エレメントを含む。
【0085】
抗IGF−1R κ−軽鎖発現カセットの他に、このベクターは以下:
− 選択可能なマーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子、
− エプスタイン−バーウイルス(EBV)の複製起点、oriP、
− 大腸菌でこのプラスミドを複製させるベクターpUC18の複製起点、および
− 大腸菌にアンピシリン耐性を授けるβ−ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0086】
抗IGF−1R κ−軽鎖遺伝子の転写ユニットは、以下のエレメント:
− ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− クローン化した抗IGF−1R可変軽鎖cDNAであり、以下を含む:
− 未変性5’UT、および
− 特有のBgIII制限部位を5’末端に置くヒト免疫グロブリン生殖系列遺伝子の未変性軽鎖シグナル配列、
− ヒトκ−軽鎖遺伝子定常領域、
− ヒト免疫グロブリンκ−ポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列、および
− 5’末端および3’末端に、それぞれ特有の制限部位AscIおよびFseI
から構成される。
【0087】
抗IGF−1R κ−軽鎖発現ベクター4802のプラスミドマップを図3に示す。
【0088】
c)プラスミド4962
ベクター4962は、発現プラスミド4965、4966および4967を組み立てる基本構造として働いた。これらのプラスミドにより、改変された抗体重鎖(可変ドメインなしにN末端複合、cDNA組織化)をHEK293 EBNA細胞で一時的に発現できるようになった。プラスミド4962は以下の機能性エレメントを含む。
【0089】
γ1−重鎖定常領域用の発現カセットの他に、このベクターは以下:
− 選択可能なマーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子、
− エプスタイン−バーウイルス(EBV)の複製起点、oriP、
− 大腸菌でこのプラスミドを複製させるベクターpUC18の複製起点、および
− 大腸菌にアンピシリン耐性を授けるβ−ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0090】
γ1−重鎖定常領域遺伝子(C1−ヒンジ−C2−C3)の転写ユニットは、以下のエレメント:
− ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− 5’末端に単一のBglII制限部位および3’末端(CH1N末端内NheI部位)に単一のNheI制限部位を含む合成リンカー(配列番号13)。
【表3】


− ヒトγ1−重鎖遺伝子定常領域(C1−ヒンジ−C2−C3、cDNA組織化)、
− ヒトγ1−免疫グロブリンのポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列、および
− 5’末端および3’末端に、それぞれ特有の制限部位AscIおよびFseI
から構成される。
【0091】
γ1−重鎖定常領域遺伝子ベクター4962のプラスミドマップを図4に示す。
【0092】
d)プラスミド4961
ベクター4961は発現プラスミド4970〜4975を組み立てる基本構造として働いた。これらのプラスミドにより、改変された抗体重鎖(C末端複合)をHEK293 EBNA細胞で一時的に発現できるようになった。
【0093】
基本ベクター4961は、HEK293 EBNA細胞中で抗IGF−1R抗体重鎖(ゲノム的に組織化された発現カセット)を一時的に発現させるための発現プラスミドである。それは以下の機能性エレメントを含む。
【0094】
抗IGF−1R γ1−重鎖発現カセットの他に、このベクターは以下:
− 選択可能なマーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子、
− エプスタイン−バーウイルス(EBV)の複製起点、oriP、
− 大腸菌でこのプラスミドを複製させるベクターpUC18の複製起点、および
− 大腸菌にアンピシリン耐性を授けるβ−ラクタマーゼ遺伝子
を含む。
【0095】
抗IGF−1R γ1−重鎖遺伝子の転写ユニットは、以下のエレメント:
− ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の前初期エンハンサーおよびプロモーター、
− 合成5’UT、
− シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列(L1、イントロン、L2)、
− 特有のBsmI制限部位を5’末端(L2シグナル配列)に、そしてスプライスドナー部位と特有のNotI制限部位を3’末端に置くセグメント配列をコードするクローン化した抗IGF−1R可変重鎖、
− マウス重鎖エンハンサーエレメントを含むマウス/ヒト重鎖ハイブリッドイントロン2(部分JH、JH)(Neuberger, M.S., EMBO J. 2 (1983) 1373-1378)、
− ゲノムヒトγ1−重鎖遺伝子定常領域と、わずかに改変されたC3−IgGポリアデニル化(pA)連結領域(配列番号14、特有のHindIIIおよびNheI制限部位の挿入)、
【表4】


− ヒトγ1−免疫グロブリンのポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列、ならびに
− 5’末端と3’末端に、それぞれ特有の制限部位AscIおよびFseI
から構成される。
【0096】
改変された抗IGF−1R γ1−重鎖発現ベクター4961のプラスミドマップを図5に示す。
【0097】
e)プラスミド4964
ベクター4964は発現プラスミド4976および4977を組み立てる基本構造として役立てた。これらのプラスミドにより、改変された抗IGF−1R抗体軽鎖(N末端結合)をHEK293 EBNA細胞で一時的に発現できるようになった。
【0098】
プラスミド4964は、発現プラスミド4802の変異体である。
【0099】
抗IGF−1R κ−軽鎖遺伝子の転写ユニットを以下に示すように改変した:
【0100】
特有のBglII制限部位を5’末端に、そして特有のNheI制限部位をV領域に直接連結して3’末端に置く合成リンカーにより、未変性軽鎖シグナル配列を置き換える(配列番号15)。
【表5】

【0101】
改変された抗IGF−1R κ−軽鎖発現ベクター4964のプラスミドマップを図6に示す。
【0102】
f)プラスミド4969
発現プラスミド4968および4969は、抗IGF−1R抗体軽鎖用の発現プラスミドであるプラスミド4802に由来する。そのプラスミドは、改変された抗体軽鎖フラグメントをコードする(可変ドメインなしにN末端結合、ポリペプチド−リンカー−κ鎖定常領域)。
【0103】
プラスミド4968および4969を構築するために、特有のBglII制限部位をCMVプロモーターの3’末端に導入し、特有のBbsI制限部位を抗IGF−1R抗体軽鎖の定常領域の内側に導入した(配列番号16)。
【表6】

【0104】
g)プラスミド4963
ベクター4963は、発現プラスミド4978および4979を組み立てる基本構造として役立てた。これらのプラスミドにより、改変された抗IGF−1R抗体軽鎖(C末端結合)をHEK293 EBNA細胞で一時的に発現できるようになった。
【0105】
プラスミド4963は、発現プラスミド4802の変異体である。
【0106】
抗IGF−1R κ−軽鎖遺伝子の転写ユニットを以下に示すように改変した。
− ヒトκ−軽鎖定常遺伝子領域をC−κ−Ig−κpA連結領域でわずかに改変した(特有のHindIIIおよびKasI制限部位の挿入、配列番号17)。
【表7】

【0107】
改変された抗IGF−1R軽鎖発現ベクター4963のプラスミドマップを図7に示す。
【0108】
実施例2
最終発現プラスミドの作製
公知の組換え法や技術を用いて、一致する核酸セグメントの結合により、免疫グロブリン遺伝子セグメント、任意のリンカー遺伝子セグメント、およびポリペプチド遺伝子セグメントを含む免疫グロブリン融合遺伝子(重鎖および軽鎖)を組み立てた。
【0109】
ペプチドリンカーおよびポリペプチドをコードする核酸配列をそれぞれ化学合成で合成し、次いで大腸菌プラスミド中にライゲートした。DNAシークエンシングによって、サブクローン化した核酸配列を検証した。
【0110】
それぞれ、免疫グロブリンポリペプチド鎖フラグメント(抗体軽鎖または重鎖の定常領域)、ポリペプチド結合位置(N末端またはC末端)である、使用した免疫グロブリンポリペプチド鎖(全長重鎖または軽鎖)、使用したリンカー、ならびに使用したポリペプチドを表2(3ページ目)、表3、および表3aに示す。
【0111】
表3:使用したタンパク質およびポリペプチド。アミノ酸配列、および位置ナンバーリングはBH8参照株に示す通りである(座位HIVH3BH8;フランスから得たHIV−1単離LAI/IIIBクローンBH8;Ratner, L. ら, Nature 313 (1985) 277-284)。
【0112】
【表8】

【0113】
表3a:化学的に調製した免疫グロブリン複合体遺伝子構築に使用した遺伝子セグメント。
【表9】

【0114】
改変された免疫グロブリンポリペプチド軽鎖および重鎖(発現カセット)を一時的に発現させるための最終発現プラスミドの構築に使用した成分を、使用した基本的プラスミド、クローニング部位、および抱合型免疫グロブリンポリペプチドをコードする挿入核酸配列に関して表4に示す。
【0115】
表4:使用した発現プラスミドの構築に利用した成分。
【表10】

【0116】
表5は、HIV−1阻害特性を有する、使用したポリペプチド(T−651、T−2635、およびHIV−1 gp41細胞外ドメイン変異体)、免疫グロブリン軽鎖または重鎖を生物活性ペプチドで結合させるために使用したペプチドリンカー、およびコードされたアミノ酸配列から推定された改変抗体鎖の推定分子量のリストである。
【0117】
表5:使用したポリペプチドおよび改変された免疫グロブリンポリペプチド鎖の推定分子量の概要。
【表11】

【0118】
実施例3
HEK293 EBNA細胞中での免疫グロブリン変異体の一時的発現
10%超低IgG FCS(ウシ胎仔血清、Gibco)、2mMグルタミン(Gibco)、1容量/容量%(v/v)非必須アミノ酸(Gibco)、および250μg/ml G418(Roche Molecular Biochemicals)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Gibco)中で培養した、接着増殖するHEK293−EBNA細胞(Epstein-Barrウイルス核抗原を発現するヒト胚腎細胞系293;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション寄託番号ATCC # CRL−10852)の一時的トランスフェクションによって、組換え免疫グロブリン変異体を生成した。トランスフェクションには、Fugene(商標)6トランスフェクション試薬(Roche Molecular Biochemicals)を試薬(μl):DNA(μg)=3:1〜6:1の範囲の割合で使用した。1:2〜2:1のモル比で軽鎖:重鎖をコードするプラスミドを使用して、異なる2個のプラスミドから免疫グロブリン軽鎖および重鎖を発現させた。細胞培養上清を含む免疫グロブリン変異体をトランスフェクションから4〜11日後に回収した。上清は、精製するまで氷水浴中0℃で貯蔵した。
【0119】
例えば、HEK293細胞でのヒト免疫グロブリンの組換え発現に関する一般的情報は、Meissner, P.ら, Biotechnol. Bioeng. 75 (2001) 197-203に示している。
【0120】
実施例4
SDS PAGE、ウェスタンブロッティング転写、および免疫グロブリン特異的抗体複合体による検出法を用いる発現分析
発現し分泌されたペプチド−免疫グロブリン−複合体は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって処理し、分離した免疫グロブリン複合体鎖をゲルから膜に転写し、続いて免疫学的方法によって検出した。
【0121】
SDS−PAGE
4倍濃縮(4×)LDS試料緩衝液:グリセロール4g、Tris-Base0.682g、Tris塩酸塩0.666g、LDS(ドデシル硫酸リチウム)0.8g、EDTA(エチレンジアミンテトラ酸)0.006g、1重量%(w/w)Serva Blue G250水溶液0.75ml、1重量%(w/w)フェノールレッド溶液0.75ml、水を加えて総容量を10mlにする。
【0122】
分泌されたペプチド−免疫グロブリン−複合体を含む培養液を遠心分離して、細胞および細胞残屑を除去した。清澄な上清のアリコートと、4×LDS試料緩衝液の1/4容量(v/v)および0.5M 1,4−ジチオトレイトール(dithiotreitol)(DTT)の1/10容量(v/v)を混合した。次いで、その試料を70℃で10分間インキュベートし、SDS−PAGEによりタンパク質を分離した。NuPAGE(登録商標)Pre-Cast gelシステム(Invitrogen)を製造業者の使用説明書に従って使用した。特に、10%NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-Tris Pre-Castゲル(pH6.4)およびNuPAGE(登録商標)MOPS泳動用緩衝液を使用した。
【0123】
ウエスタンブロット
転写緩衝液:39mMグリシン、48mM Tris塩酸塩、0.04重量%(w/w)SDS、および20容量%メタノール(v/v)
SDS−PAGE後、Burnette(Burnette, W.N., Anal. Biochem. 112 (1981) 195-203)の「セミドライ−ブロッティング方法」に従って、電気泳動により、分離した免疫グロブリン複合体ポリペプチド鎖をニトロセルロースフィルター膜(孔径:0.45μm)に移した。
【0124】
免疫学的検出
TBS緩衝液:50mM Tris塩酸塩、150mM NaCl、pH7.5に調整
ブロッキング液:1%(w/v)Western Blocking試薬(Roche Molecular Biochemicals)を含むTBS緩衝液
TBST緩衝液:0.05容量%(v/v)Tween-20を含む1×TBS緩衝液
免疫学的検出に、ウェスタンブロッティング膜は、振盪しながら室温で、TBS緩衝液中で5分間を2回インキュベートし、そしてブロッキング液中で90分間1回インキュベートした。
【0125】
免疫グロブリン複合体ポリペプチド鎖の検出
重鎖:ペプチド−免疫グロブリン−複合体の重鎖を検出するために、ペルオキシダーゼに結合している精製ウサギ抗ヒトIgG抗体を使用した(DAKO, Code No. P 0214)。
【0126】
軽鎖:ウサギ抗ヒトκ軽鎖抗体(DAKO, Code No. P 0129)に結合している精製ペルオキシダーゼを用いて、ペプチド−免疫グロブリン−複合体軽鎖を検出した。
【0127】
それらの抗体軽鎖および重鎖の可視化には、洗浄しブロックしたウエスタンブロット膜を最初に、重鎖の場合にはペルオキシダーゼと結合している精製ウサギ抗ヒトIgG抗体と、または軽鎖の場合にはウサギ抗ヒトκ軽鎖抗体と結合させた精製ペルオキシダーゼと、10mlブロッキング溶液中1:10,000希釈で、振盪しながら終夜4℃でインキュベートした。室温で10分間、膜をTBTS緩衝液で3回、そしてTBS緩衝液で1回洗浄後、ウエスタンブロット膜をルミノール/ペルオキシド(peroxid)溶液で展開し化学発光させた(Lumi-Light<PLUS>ウェスタンブロッティング基質、Roche Molecular Biochemicals)。従って、膜を10mlのルミノール/ペルオキシド(peroxid)溶液中で10秒〜5分間インキュベートし、その後Lumi-Imager F1 Analysator(Roche Molecular Biochemicals)を用いて発光を検出し、かつ/またはX線フィルムにより記録した。
【0128】
LumiAnalystソフトウェア(3.1版)によりスポット強度を数量化した。
【0129】
免疫ブロットの複数染色
検出用に使用した二次的ペルオキシダーゼで標識化した抗体複合体は、100mM β−メルカプトエタノールおよび20%(w/v)SDSを含む1M Tris塩酸塩緩衝液(pH6.7)中で、膜を70℃で1時間をインキュベートすることによって、染色されたブロットから除去することができる。この処理後、ブロットを異なる2次抗体により2度目の染色をすることができる。2回目の検出をする前に、ブロットを、TBS緩衝液を用いて室温で振盪しながらそれぞれ10分間3回洗浄する。
【0130】
試料配合を表6a〜6cに記載する。
【0131】
表6a:SDS PAGEゲル/ウエスタンブロット法−ゲル1の試料配合
【表12】

【0132】
表6b:SDS PAGEゲル/ウエスタンブロット法−ゲル2の試料配合
【表13】

【0133】
表6c:SDS PAGEゲル/ウエスタンブロット法−ゲル3の試料配合
【表14】

【0134】
実施例5
組み立てられた免疫グロブリン複合体の検出
タンパク質A-Sepharose(商標)CL-4Bとの親和性結合による免疫グロブリン複合体ポリペプチドの精製および濃縮
(1つ以上の)プラスミド上に位置する(1個以上の)構造的免疫グロブリンポリペプチド鎖遺伝子の一時的発現に適切な条件下で、1つ以上のプラスミドを含むHEK293 EBNA細胞を6〜10日間培養した。1.8mlのエッペンドルフカップに入れた1mlの清澄な培養上清に、0.1mlのタンパク質A-Sepharose(商標)CL-4B(Amersham Biosciences)懸濁液[タンパク質A-Sepharose(商標)とPBS緩衝液(10mM NaHPO、1mM KHPO,137mM NaCl、および2.7mM KCl(pH7.4)の1:1(v/v)懸濁液]を加えた。懸濁液を室温で1〜16時間振盪しながらインキュベーションした。その後、遠心分離によって(30秒、5000rpm)によってSepharoseビーズを沈降させ、上清を廃棄した。続いて、Sepharoseのペレットを、それぞれ、1.6mlのPBS緩衝液、1.6mlの0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)、および1.6mlの蒸留水で洗浄した。0.1mlの1×LDS−PAGE試料緩衝液を用いて、70℃で5〜10分間、タンパク質A結合免疫グロブリンをSepharoseビーズから抽出した。実施例4に記載したように、SDS−PAGE分離とクマシーブリリアントブルーでの染色により分析を行った。
【0135】
結果:
一時的発現後の重鎖および軽鎖の発現/分泌分析:
図8a−c:アフィニティー精製した免疫グロブリン複合体をクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルを示す図である。試料配合は表6による。
免疫グロブリンポリペプチド鎖の免疫検出:
図9a−c:HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の軽鎖の免疫検出。
図10a−c:HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の重鎖の免疫検出。
【0136】
図8a−c、9a−cおよび10a−cから、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は一時的に発現し、培地に分泌されることが推定できる。免疫グロブリン鎖が、1つまたはいくつかの糖鎖形成部位を有する場合、最終ペプチド−免疫グロブリン−複合体鎖および単一免疫グロブリン複合体鎖は、それぞれ、厳密には所定の分子量を持たないが、グリコシル化の程度に応じて分子量が分配されている。これにより、SDS−PAGEにおいて、一免疫グロブリン複合体鎖を表す、全ての種が均質に遊走せず、従ってそれらのバンドは広がるということが生じる。
【0137】
免疫グロブリンとタンパク質Aの親和性結合は、(1つ以上の)重鎖のFc−部分の相互作用にのみ基づくということ、そして重鎖に加えて、SDS−PAGEおよびクーマシー色素での染色後に軽鎖が検出されるということによって、免疫グロブリン複合体は正確に組み立てられ、軽鎖および重鎖からなると結論づけることができる。
【0138】
実施例6
ヒトIgG ELISAで発現された重鎖の定量
細胞培養上清中の免疫グロブリン複合体重鎖ポリペプチドの濃度をサンドイッチELISAによって定量したが、このELISAは、捕獲試薬としてビオチン化抗ヒトIgG F(ab’)フラグメントを使用し、検出には、ペルオキシダーゼに結合させた抗ヒトIgG F(ab’)抗体フラグメントを使用した。
【0139】
ストレプトアビジンでコートした96ウェルプレート[Pierce Reacti-Bind(商標)ストレプトアビジンでコートしたポリスチレンストリッププレート、コード番号:15121]を0.5μg/mlのビオチン化したヤギポリクローナル抗ヒトIgG F(ab’)抗体フラグメント[(F(ab’)<h−Fcγ>Bi;Dianova、コード番号:109−066−098]捕獲抗体(0.1ml/well)を含む希釈緩衝液[希釈緩衝液:0.5重量/容量%(w/v)ウシ血清アルブミンを含むPBS緩衝液]を用いて、室温で(RT)1時間振盪しながらインキュベーションすることによりコートした。その後、プレートを、0.3mlを超える洗浄緩衝液[洗浄緩衝液:1重量/容量%(w/v)Tween 20を含むPBS]で3回洗浄した。細胞培養上清を含むIgG免疫グロブリン複合体(試料)を希釈緩衝液中0.5〜20ng/mlの濃度になるまで連続的に(二回)希釈し、プレートに入れ、室温で1時間振盪しながらインキュベーションした。精製した抗IGF−1R標準的抗体(0.5〜20ng/ml)を含む希釈緩衝液をIgGタンパク質の検量線の生成に使用した。0.3ml/wellの洗浄緩衝液でプレート3回を洗浄後、ヤギポリクローナル抗ヒトF(ab’)特異的IgG[F(ab’)<h−Fcγ>POD;Dianova、コード番号:109−036−098]のペルオキシダーゼと結合したF(ab’)フラグメントによって、ヒトFcγに結合した複合体を検出した。プレートを0.3ml/wellの洗浄緩衝液で3回洗浄後、そのプレートをABTS(登録商標)[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸]ペルオキシダーゼ基質溶液(Roche Molecular Biochemicals、コード番号:1684302)で展開した。10〜30分後、Tecan Spectrafluorplusプレートリーダー(Tecan Deutschland GmbH)により、405nmおよび490nmで、試薬ブランク(インキュベーション緩衝液+ABTS溶液)に対して吸光度を測定した。バックグラウンド補正には、式Iによる405nmでの吸光度から490nmでの吸光度を差し引いた。全試料を少なくとも二つ組でアッセイし、二重または三重の吸光度の測定値を平均化した。試料のIgG含有量を検量線から算出した。
【化1】

【0140】
実施例7
生ウイルス抗ウイルスアッセイ
生NL−Balウイルスを産生させるために、10%ウシ胎仔血清(FCS),100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、および0.5mg/mLゲニチシン(geniticin)(培地は全てInvitrogen/Gibco社製)を含むダルベッコ改変最少培地(DMEM)で培養したHEK293FT細胞系(Invitrogen)中に、プラスミドpNL−Bal(米国国立衛生研究所AIDS試薬プログラム)をトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、ウイルス粒子を含む上清を回収し、孔径0.45μmのPES(ポリエーテルスルホン)フィルター(Nalgene)により細胞残屑をろ過除去し、アリコートに入れて−80℃で貯蔵した。アッセイ性能を規準化するために、ウイルスストックアリコートを使用して、JC53−BL(米国国立衛生研究所AIDS試薬プログラム)細胞に感染させ、ウェル当たり約1.5×10RLU(相対的光単位)を得た。試験ペプチド−免疫グロブリン−複合体、抗CCR5モノクローナル抗体2D7(PharMingen;CCR5、ケモカイン受容体;HIV−1感染の共受容体)を含む参照抗体、および参照ペプチド(T−651およびT−2635)を96ウェルプレート中で連続希釈した。アッセイは四つ組で実施した。各プレートには、細胞対照ウェルとウイルス対照ウェルを含めた。各ウェルにウイルスストック1.5×10RLUの等量を加え、次いで2.5×10 JC53−BL細胞を各ウェルに加え、最終アッセイ容量を200μl/wellにした。3日間37℃、90%相対湿度、および5%COでインキュベーションした後、培地を吸引し、Steady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)50μlを各ウェルに加えた。室温で10分間インキュベーションした後、アッセイプレートをルミノメーター(Luminoskan, Thermo Electron Corporation)で読み取った。バックグラウンドを差し引いた後、各用量点のルシフェラーゼ活性%阻害を算出し、Excel用(3.0.5版Build12; Microsoft)XLfit曲線適合化ソフトウェアを使用し、IC50を定量した。
【0141】
表7:ペプチドおよびペプチド−免疫グロブリン−複合体の抗ウイルス活性
【表15】

【0142】
実施例8
単一サイクル抗ウイルスアッセイ
偽型NL−Balウイルスを産生させるために、プラスミドpNL4−3△env(env遺伝子中に欠失を有するHIV pNL4−3ゲノム構築体)およびpCDNA3.1/NL−BAL env[(国立生物学的製剤研究所AIDS試薬センター施設から入手した)NL−Bal env遺伝子含有pcDNA3.1プラスミド]を10%ウシ胎仔血清(FCS),100U/mLペニシリン,100μg/mLストレプトマイシン、2mM L−グルタミンおよび0.5mg/mLゲニチシン(培地は全てInvitrogen/Gibco社製)を含むダルベッコ改変最少培地(DMEM)で培養したHEK293FT細胞系(Invitrogen)に共トランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、偽型ウイルスを含む上清を回収し、孔径0.45μmのPES(ポリエーテルスルホン)フィルター(Nalgene)により細胞残屑をろ過除去し、アリコートに入れて−80℃で貯蔵した。アッセイ性能を規準化するために、ウイルスストックアリコートを使用して、JC53−BL(米国国立衛生研究所AIDS試薬プログラム)細胞に感染させると、ウェル当たり約1.5×10RLU(相対的光単位)が得られた。試験ペプチド−免疫グロブリン−複合体、参照抗体、および参照ペプチド(T−20、T−651およびT−2635)を96ウェルプレート中で連続希釈した。アッセイは四つ組で実施した。各プレートには、細胞対照ウェルとウイルス対照ウェルを含めた。各ウェルにウイルスストック1.5×10RLUの等量を加え、次いでその各ウェルに2.5×10 JC53−BL細胞を加え、最終アッセイ容量を200μl/wellにした。3日間37℃、90%相対湿度、および5%COでインキュベーションした後、培地を吸引し、Steady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)50μlを各ウェルに加えた。室温で10分間インキュベーション後、アッセイプレートをルミノメーター(Luminoskan, Thermo Electron Corporation)で読み取った。バックグラウンドを差し引いた後、各用量点のルシフェラーゼ活性%阻害を算出し、Excel用(3.0.5版Build12; Microsoft)XLfit曲線適合化ソフトウェアを使用しIC50値を定量した。
【0143】
表8:ペプチドおよびペプチド−免疫グロブリン−複合体の抗ウイルス活性
【表16】

【0144】
実施例9
末梢血単核細胞(PBMC)での抗ウイルスアッセイ
Ficoll-Paque(Amersham, Piscataway, New Jersey, USA)密度勾配遠心分離により、製造業者のプロトコルに従って、(スタンフォード血液センターより入手した)バフィーコートからヒトPBMCを単離した。手短に言えば、バフィーコートから血液を50ml円錐チューブに移し、滅菌ダルベッコリン酸緩衝食塩水(Invitrogen/Gibco)で希釈して最終容量を50mlにした。2本の50ml円錐チューブに希釈血液25mlを移し、12.5mlのFicoll-Paque Plus(Amersham Biosciences)で慎重に沈降させ、室温で20分間450×gで遠心分離したがブレーキはかけなかった。新たな50ml円錐チューブに白血球層を慎重に移しPBSで2回洗浄した。残存する赤血球を除去するために、室温で5分間ACK溶解緩衝液(Biosource)で細胞をインキュベーションし、もう一度PBSで洗浄した。PBMCをカウントし、10%FCS(Invitrogen/Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、1mMナトリウム−ピルビン酸塩、および2μg/ml Phytohemagglutinin(Invitrogen)を含むRPMI1640中2〜4×10細胞/mlの濃度で37℃、24時間インキュベーションした。5 Units/mlのヒトIL−2(Roche Molecular Biochemicals)とともに、細胞を最短48時間インキュベーションした後アッセイした。96ウェル丸底プレート中、連続希釈した試験ペプチド−免疫グロブリン−複合体、参照免疫グロブリン、および参照ペプチド(T−20、T−651およびT−2635)の存在下、1×10PBMCにHIV−1JR−CSFウイルス(Koyanagi, Y.ら. Science 236 (1987) 819-822)を感染させた。使用したウイルス量は、1.2ng HIV−1 p24抗原/wellと等量であった。感染は四つ組で準備した。プレートを37℃で6日間インキュベーションした。感染の最後で、一結合部位を有するS字形用量応答モデルを用いて、p24 ELISA(HIV-1 p24 ELISA #NEK050B)を使用することによって、Microsoft Excel Fit(3.0.5版Build12; equation 205; Microsoft)でウイルス産生を測定した。
【0145】
表9:ペプチドおよびペプチド−免疫グロブリン−複合体抗のウイルス活性
【表17】

【0146】
実施例10
ポリペプチドの結合親和性の定量
25℃でBIAcore(登録商標)3000 instrument(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を使用し、HIV−1 gp41タンパク質(HR、ヘプタッドリピート1および2領域)のHR1−HR2相互作用をベースとする、ポリペプチドの結合親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。
【0147】
BIAcore(登録商標)システムは、分子の相互作用の研究において十分に確立されている。そのシステムによってリガンド/検体結合を連続的リアルタイムモニタリングし、それによって会合速度定数(k)、解離速度定数(k)、および平衡定数(K)が定量できる。SPR技術は、金被膜バイオセンサーチップの表面近くの屈折率を測定することに基づく。屈折率の変化は、固定リガンドと、溶液に注入された検体との相互作用によって生じた表面の質量変化を示す。分子が表面の固定リガンドに結合すると、質量が増大し、解離すると質量は減少する。
【0148】
結合アッセイ
センサーチップSA(SA、ストレプトアビジン)は、1M NaClを含む50mM NaOHを3回連続1分間注入することによって予め洗浄した。次いで、SAをコートしたセンサーチップ上に、ビオチン化させたHR1ペプチドビオチン−T−2324(配列番号37)を固定した。物質移動限界を回避するために、HBS−P緩衝液[10mMHEPES(pH7.4),150mM NaCl、0.005%(v/v)界面活性剤P20]に溶解しているHR1ペプチドの最低可能値(約200RU、共鳴単位)をSAチップ上に乗せた。測定を開始する前に、50μL/minの流量で0.5%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を1分間パルスすることにより、チップに一回目の再生を行った。
【0149】
分析するポリペプチドを含むHR2 HIV−1 gp41をまず、50mM NaHCO(pH9)に約1mg/mLの濃度で溶解し、次いでHPS−P緩衝液で25〜1.95nMの範囲の様々な濃度に希釈した。試料接触時間は5分である(会合相)。その後、チップ表面をHBS−Pで5分間洗浄した(解離相)。全ての相互作用は厳密に25℃(標準的温度)で実施した。測定サイクル中、試料は12℃で貯蔵した。1秒につき1シグナルの検出速度でシグナルを検出した。試料を上昇濃度で50μL/minの流量でHR1結合バイオセンサーエレメントに注入した。0.5%(w/v)SDS溶液により50μL/minの流量で1分間洗浄することによって表面を再生した。
【0150】
/kとして定義される平衡定数(K)は、BIAevaluation 4.1ソフトウェアパッケージを使用し、数種の異なる濃度によって得られたセンサグラム(sensogram)曲線を分析するによって定量した。HR2−HR1相互作用の値から、遊離ストレプトアビジン表面と相互作用したポリペプチドを含むHR2の応答値を引くことによって非特異的結合を修正した。データの適合化後、1:1Langmuir結合モデルを使用した。
【0151】
ポリペプチドの脱グリコシル化
ペプチド−N−グリコシダーゼF(PNGaseF, Prozyme, San Leandro, CA)を用いて、N−グリコシル化したポリペプチド1mgにつきPNGaseFを50mU使用し、PBS緩衝液に約2mg/mlの濃度で溶解した、HR2を含むポリペプチド試料を37℃で12〜24時間インキュベーションすることにより脱グリコシル化(N−グリカンの除去)した。
【0152】
表10a:ポリペプチドを含むHR2のHR1との代表的な結合定数
【表18】

【0153】
表10b:ポリペプチドを含むHR2のHR1に対する代表的なK
【表19】



【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】IgGクラス免疫グロブリンの一般的構造を示す図である。
【図2】抗IGF−1R γ1−重鎖発現ベクター4818のプラスミドマップである。
【図3】抗IGF−1R κ−軽鎖発現ベクター4802のプラスミドマップである。
【図4】γ1−重鎖定常領域遺伝子ベクター4962のプラスミドマップである。
【図5】改変された抗IGF−1R γ1−重鎖発現ベクター4961のプラスミドマップである。
【図6】改変された抗IGF−1R κ−軽鎖発現ベクター4964のプラスミドマップである。
【図7】改変された抗IGF−1R軽鎖発現ベクター4963のプラスミドマップである。
【図8a】アフィニティー精製した免疫グロブリン複合体のクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルを示す図である。試料配合は表6による。
【図8b】アフィニティー精製した免疫グロブリン複合体のクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルを示す図である。試料配合は表6による。
【図8c】アフィニティー精製した免疫グロブリン複合体のクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルを示す図である。試料配合は表6による。
【図9a】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の軽鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図9b】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の軽鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図9c】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の軽鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図10a】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の重鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図10b】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の重鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図10c】HEK293 EBNA細胞で一時的に発現後、細胞培養上清中の重鎖の免疫検出を示す図である。試料配合は表6による。
【図11】軽鎖の両アミノ末端が異なる、または類似するペプチドと結合しているペプチド−免疫グロブリン−複合体を示す図である。
【図12】1個の免疫グロブリンと異なる2個のペプチドからなるペプチド−免疫グロブリン−複合体を示す図である。
【図13】第一のペプチドが免疫グロブリン軽鎖アミノ末端と結合しており、第二のペプチドが免疫グロブリン重鎖カルボキシ末端と結合している、ペプチド−免疫グロブリン−複合体を示す図である。
【図14】第一のペプチドが免疫グロブリン軽鎖アミノ末端と結合しており、第二のペプチドが免疫グロブリン重鎖カルボキシ末端と結合している、ペプチド−免疫グロブリン−複合体を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド−免疫グロブリン−複合体であって、
a)前記免疫グロブリンが、2本の重鎖、または2本の重鎖と2本の軽鎖からなり、
b)前記免疫グロブリンが、非機能性免疫グロブリンであり、
c)前記複合体が次式
免疫グロブリン−[ペプチド]
を有し、式中、nは2〜8の整数であり、
d)ペプチド結合によって、ペプチドのカルボキシ末端アミノ酸と免疫グロブリン鎖のアミノ末端アミノ酸とが結合し、または免疫グロブリン鎖のカルボキシ末端アミノ酸とペプチドのアミノ末端アミノ酸とが結合する
ことを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記ペプチドが、生物活性ペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ペプチドが、ペプチドリンカーと生物活性ペプチドからなることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記ペプチドが、互いに90%以上のアミノ酸配列同一性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
該免疫グロブリンが、Gクラス(IgG)またはEクラス(IgE)の免疫グロブリンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記生物活性ペプチドが、抗融合誘導ペプチドであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記非機能性免疫グロブリンが、K値(結合親和性)10−5mol/l以上でヒト抗原に結合する免疫グロブリンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
前記非機能性免疫グロブリンが、
a)両重鎖および/または軽鎖が、1つ以上のフレームワークまたは/および超可変領域の一部または全てを欠く免疫グロブリンであるか、あるいは
b)両重鎖および/または軽鎖が、可変領域を有しない免疫グロブリンであるか、あるいは
c)ヒト抗原に対して10−5mol/l以上の結合親和性を有する免疫グロブリンであるか、あるいは
d)ヒト抗原に対して10−5mol/l以上の結合親和性を有し、かつ非ヒト抗原に対して10−7mol/l以下の結合親和性を有する免疫グロブリンである
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
請求項1に記載の複合体を生成する方法であって、
該方法が以下の工程:
a)該複合体の発現に好適な条件下で、請求項1に記載の複合体をコードする、1個以上の核酸分子を含む、1個以上のプラスミドを含む細胞を培養する工程、
b)該細胞またはその培地から該複合体を回収する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
医薬的に許容され得る賦形剤または担体とともに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体または医薬的に許容され得るその塩を含む医薬組成物。
【請求項11】
ウイルス感染症を処置する薬剤を製造するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項12】
該ウイルス感染症が、HIV感染症であることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
抗ウイルス処置を必要とする患者を処置するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項14】
前記ペプチドが、90%から100%未満の範囲のアミノ酸配列同一性を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項15】
前記非機能性免疫グロブリンが、重鎖および/または軽鎖の両方が、1つ以上のフレームワークまたは/および超可変領域の一部または全てを欠く免疫グロブリン、および/または重鎖および/または軽鎖の両方が可変領域を有しない免疫グロブリンであることを特徴とする、請求項1〜8および14のいずれか一項に記載の複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−512655(P2009−512655A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535967(P2008−535967)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010061
【国際公開番号】WO2007/045463
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】