説明

ペプチドベースの分散剤およびバインダを有する着色組成物

ペプチドベースの分散剤および/またはバインダを含んでなる着色組成物を提供する。組成物は、紙または編織物などの基材の着色または染色に特に有用である。ペプチドベースの分散剤および/またはバインダ組成物は、正に荷電した少なくとも1つの末端アミノ酸が組成物のペプチド部分に存在することを特徴とし、それによって基材への結合が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤および/またはバインダとして機能できるペプチドベースの組成物に関する。具体的には、顔料に付着したペプチドを含んでなり、ペプチドが正に荷電した少なくとも1個の末端アミノ酸と、顔料または基材表面に対する親和性を有する少なくとも1つのブロックセグメントとを有する組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイルのデジタル印刷は大規模な成長市場である。この市場の要求を満たすため、顔料分散剤、および顔料を分散させ様々な布帛表面に耐久結合させるバインダが必要とされている。ポリマー分散剤はインクジェット印刷インク中の顔料を安定化させるのに広く使用されている。分散剤は顔料粒子の周囲に外殻を形成する役割をし、凝集や凝固を防止する。更に、顔料の布帛表面への結合を向上させるため、ポリマーベースのバインダをインク組成物に添加してもよい。
【0003】
また、蛋白質およびペプチドも着色組成物中の分散剤および皮膜形成バインダとして使用されてきた。例えば、特許文献1のブリュックマン(Brueckmann)らは、色配合物中に分散剤としてカゼイン、コラーゲン、アルブミン、およびゼラチンなどの化学修飾された蛋白質を使用することを記載している。更に、布帛への有効剤(benefit agent)の堆積を確実にするため、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルエステラーゼ、およびキチナーゼなどの様々な酵素からのセルロース結合性ドメイン(CBDs)が、セルロース布帛を処理するための組成物に使用されてきた(特許文献2のジョーンズ(Jones)ら、特許文献3のスメッツ(Smets)ら)。また、様々な有効剤をセルロース布帛に結合させるため、30個以下のアミノ酸からなる、好ましくは少なくとも3個の芳香族アミノ酸を含有する合成ペプチドである模擬CBDsも使用されてきた(ビョルクイスト(Bjorkquist)ら、特許文献4)。
【0004】
ハン(Han)ら(非特許文献1)は、ファージディスプレイスクリーニングを使用してセルロースマトリックスに特異的に結合するペプチドの同定を記載している。これらのセルロース結合性ペプチドの推定されたアミノ酸配列は保存された芳香族残基、チロシンまたはフェニルアラニンを有し、これはセルロース結合性蛋白質の正常なセルロース結合性ドメインに類似している。着色用途のために新規な分散剤および/またはバインダ中にこれらのセルロース結合性ペプチドを使用することは、前記開示に記載されていない。
【0005】
特許文献5の野本(Nomoto)らは、ファージディスプレイを使用する顔料結合性ペプチドの同定を記載している。幾つかのカーボンブラック、銅フタロシアニン、二酸化チタン、および二酸化ケイ素結合性ペプチド配列が開示されている。しかし、着色用途のために分散剤および/またはバインダとして顔料結合性ペプチドを使用することは、記載されていない。
【0006】
同時係属中で同一出願人が所有する特許文献6および特許文献7のオブライエン(O’Brien)らは、顔料および印刷媒体に対する高い親和性で結合する、ファージディスプレイスクリーニングによって同定されたペプチドを記載している。ペプチドを使用して、着色用途のために改善された耐久性を提供するジブロックおよびトリブロック分散剤および/またはバインダが調製された。しかし、より大きい耐久性を提供する、特に編織物印刷のためにより大きい耐久性を提供する改善された分散剤および/またはバインダが依然として必要とされている。
【0007】
従って、解決すべき問題は、テキスタイル印刷などのより高度な高品質着色用途の厳しい要求を満たすため、顔料を有効に分散させ、改善された耐久性を提供する顔料分散剤および/またはバインダを提供することである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,124,438号明細書
【特許文献2】国際公開第9800500号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/18897号パンフレット
【特許文献4】国際公開第0132848号パンフレット
【特許文献5】EP1275728号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/935254号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20050054752号明細書
【非特許文献1】生物化学与生物物理学報(Shengwu Huaxue Yu Shengwu Wuli Xuebao)30:263−266(1998年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人らは、顔料または基材表面に対する結合親和性を有するペプチドの配列のN末端および/またはC末端に、正に荷電した少なくとも1個のアミノ酸残基を付加することによってペプチドと基材表面との相互作用の強さが向上することを発見することにより、前述の問題に対処してきた。正に荷電した少なくとも1個の末端アミノ酸残基を有するこれらの親和性ペプチドは、慣用的なポリマー分散剤およびバインダ、または非修飾親和性ペプチドと比較して、編織物に著しく改善された耐久性を提供する改善された顔料分散剤および/またはバインダとして機能する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、印刷業で使用される基材への顔料の結合を容易にするペプチドに関する。本明細書では、正に荷電した少なくとも1個のアミノ酸残基を配列のN末端および/またはC末端に有し、顔料を含んでなる組成物に添加されたときに基材への顔料の結合を向上させる役割をするペプチドが提供される。従って、本発明は、
a)顔料、
b)キャリア媒体、および
c)基材に対する親和性を有し、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとnが両方とも0であることはない]
で表されるペプチドを含んでなる、基材を着色するための着色組成物を提供する。
【0011】
代替の実施形態では、本発明は、
a)分散顔料、
b)キャリア媒体、および
c)基材に対する親和性を有し、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとyが両方とも0であることはない]
で表されるペプチドを含んでなる、基材を着色するための着色組成物を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、本発明の着色組成物を含んでなるインクを提供する。
【0013】
代替の実施形態では、本発明は基材が染色される条件で本発明の着色組成物を塗布することを含んでなる、基材の染色方法を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、基材に対する親和性を有し、次の一般式で表されるペプチドを提供する。
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとnが両方とも0であることはない]
【0016】
配列の説明の簡潔な説明
本出願の一部を構成する以下の詳細な説明および添付の配列の説明から、本発明をより完全に理解することができる。
【0017】
以下の配列は、37C.F.R.1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に適合し、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)(WIPO)標準ST.25(1998年)、並びに、EPOおよびPCTの配列列挙要件(規則5.2および49.5(aの2)、並びに実施細則第208号および付属書C)と合致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号およびフォーマットは、37C.F.R.1.822に記載の規則に従う。
【0018】
配列番号1、2、8、9、10、13、15、16および17は、本発明のペプチドベースの顔料分散剤とバインダのアミノ酸配列である。
【0019】
配列番号7、11、12、14、18、19、20および21は、本発明のペプチドベースのバインダのアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号3、4、5、6、22、23、24、25および26は、顔料または印刷媒体表面に対する結合親和性を有する親和性ペプチドのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、顔料または基材表面に対する結合親和性を有するペプチドの配列のN末端および/またはC末端に、正に荷電した少なくとも1個のアミノ酸残基を付加することによって形成されるペプチドベースの顔料分散剤および/またはバインダを提供する。ペプチドベースの顔料分散剤および/またはバインダは、着色組成物に、特にテキスタイル印刷用途の着色組成物に有用である。本発明の着色組成物は、編織物および他の基材上に塗工されたとき、向上した耐久性を提供する。
【0022】
本明細書では以下の定義を使用し、特許請求の範囲および明細書の解釈に参照すべきである。
【0023】
「ペプチド」の用語は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を指す。本明細書で使用されるとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「蛋白質」の用語は同義的に使用される。
【0024】
「顔料」の用語は、不溶性の有機または無機着色剤を指す。
【0025】
「基材」の用語は、染色または着色される任意の材料または物質を指す。基材の例としては、以下に限定されないが、印刷紙、シート、フィルム、不織布および編織物(ポリエステル、ナイロン、ライクラ(Lycra)(登録商標)、絹、綿、綿混紡、レーヨン、亜麻、麻、羊毛、スパンデックス、アセテート、アクリル、モダクリル、アラミド、およびポリオレフィンなど)が挙げられる。
【0026】
「分散剤」の用語は、本明細書で使用されるとき、液体媒体中での固体顔料粒子のコロイド溶液の形成を安定化させる物質を指す。
【0027】
「バインダ」の用語は、本明細書で使用されるとき、顔料と基材表面の向上した相互作用を提供する物質を指す。
【0028】
「親和性ペプチド」および「結合性ペプチド」の用語は、本明細書では同義的に使用され、顔料または基材表面に対する特異的な結合親和性を有するアミノ酸配列を指す。
【0029】
「アミノ酸」の用語は、蛋白質またはポリペプチドの基本的化学構造単位を指す。特定のアミノ酸を識別するため、本明細書では以下の略称を使用する。
【0030】
【表1】

【0031】
「ファージ」または「バクテリオファージ」の用語は、細菌に感染するウイルスを指す。改変された形態を本発明の目的に使用してもよい。好ましいバクテリオファージは、M13と称される「野生型」ファージに由来する。M13系は、感染する細胞を破壊せず、新しいファージを連続的に作り出させるように、細菌内で増殖することができる。それは一本鎖DNAファージである。
【0032】
「ファージディスプレイ」の用語は、バクテリオファージまたはファージミド粒子の表面の機能性外来ペプチドまたは小蛋白質のディスプレイを指す。遺伝子操作されたファージを使用し、ペプチドをそれらの未変性表面蛋白質のセグメントとして提示してもよい。異なる遺伝子配列を有するファージの集団でペプチドライブラリーを作製してもよい。
【0033】
本明細書で使用される標準的組み換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で周知であり、サムブルック,J.(Sambrook,J.)、フリッチュ,E.F.(Fritsch,E.F.)およびマニアティス,T(Maniatis,T)、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Habor,NY)(1989年)(以下、「マニアティス(Maniatis)」);並びに、シラビー,T.J.(Silhavy,T.J.)、ベナン,M.L.(Bennan,M.L.)、および、エンクイスト,L.W.(Enquist,L.W.)、遺伝子融合を用いた実験(Experiments with Gene Fusions)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州スプリング・ハーバー(Spring Habor,NY)(1984年);並びに、グリーン出版協会およびウィリー・インターサイエンス(Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience)(1987年)により出版されたオースベル,F.M.(Ausubel,F.M.)ら、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)によって記載されている。
【0034】
本発明は、顔料または基材表面に対する結合親和性を有するペプチドの配列のN末端および/またはC末端に、正に荷電した少なくとも1個のアミノ酸残基を付加することによって形成される、ペプチドベースの顔料分散剤および/またはバインダを提供する。親和性ペプチドはファージディスプレイスクリーニングなどのコンビナトリアル法によって同定される。正に荷電した少なくとも1個の末端アミノ酸残基を有する親和性ペプチドは、慣用的なポリマー分散剤およびバインダ、または非修飾親和性ペプチドと比較して、編織物に著しく改善された耐久性を提供する顔料分散剤および/またはバインダとして機能する。
【0035】
顔料
本明細書で使用されるとき、「顔料」の用語は不溶性着色剤を意味する。本発明では様々な有機及び無機顔料を単独でまたは組み合わせて使用してもよい。有機顔料の代表例としては、以下に限定されないが、(シアン)ピグメントブルー15:3およびピグメントブルー15:4;(マゼンタ)ピグメントレッド122およびピグメントレッド202;(イエロー)ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128、およびピグメントイエロー155;(レッド)ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントレッド17、ピグメントレッド49:2、ピグメントレッド112、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド188、ピグメントレッド255、およびピグメントレッド264;(グリーン)ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン2、ピグメントグリーン7およびピグメントグリーン36;(ブルー)ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット36、およびピグメントバイオレット38;並びに、(ブラック)カーボンブラックが挙げられる。好ましい有機顔料は、カーボンブラック、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントレッド122、ピグメントレッド202、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー128、およびピグメントイエロー155である。本明細書では着色剤を、染料染色学会(Society Dyers and Colourists)、英国ヨークシャー州ブラッドフォード(Bradford,Yorkshire,UK)によって確立され、カラーインデックス(The Color Index)、第3版、1971年に発表された「C.I.」名で呼ぶ。無機顔料の例としては、以下に限定されないが、銅、鉄、アルミニウム、およびこれらの合金などの微粉砕された金属;並びに、シリカ、アルミナ、およびチタニアなどの金属酸化物が挙げられる。
【0036】
基材
「基材」の用語は本明細書で使用されるとき、染色または着色される任意の材料または物質を指す。好ましい基材は、インクジェット印刷に好適な印刷媒体である。好適な印刷媒体としては、以下に限定されないが、印刷紙、シート、フィルム、不織布および編織物(ポリエステル、ナイロン、ライクラ(Lycra)(登録商標)、絹、綿、綿混紡、レーヨン、亜麻、麻、羊毛、スパンデックス、アセテート、アクリル、モダクリル、アラミド、およびポリオレフィンなど)が挙げられる。これらの基材は、多数の商業的供給元から容易に入手可能である。
【0037】
顔料結合性および基材結合性親和性ペプチド
顔料結合性ペプチドおよび基材結合性ペプチドは、本明細書で定義されるとき、それぞれ顔料および基材に高い親和性で特異的に結合するペプチド配列である。本発明の顔料結合性ペプチドおよび基材結合性ペプチドは、約4個のアミノ酸〜20個のアミノ酸、より好ましくは約4個のアミノ酸〜約12個のアミノ酸の長さである。
【0038】
オブライエン(O’Brien)らによって米国特許出願公開第20050054752号明細書に記載されているような当該技術分野で周知の方法を使用して、好適な顔料結合性ペプチドおよび基材結合性ペプチドの配列を選択してもよく、この文献は参照により本明細書に援用される。本発明のペプチドはランダムに生成された後、目的とする顔料または基材に対する結合親和性に基づいて特定の顔料または特定の基材に対して選択される。ランダムなペプチドライブラリーの作製は周知であり、バクテリアディスプレイ(ケンプ,D.J.(Kemp,D.J.);全米科学アカデミー会報(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)78(7):4520〜4524頁(1981年)、および、ヘルフマン(Helfman)ら、全米科学アカデミー会報(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)80(1):31〜35頁(1983年))、イーストディスプレイ(チェン(Chien)ら、全米科学アカデミー会報(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)88(21):9578〜82頁(1991年))、コンビナトリアル固相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、米国特許第5,639,603号明細書)、およびファージディスプレイ法(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、米国特許第5,837,500号明細書)を含む様々な技術によって達成されてもよい。このような生物学的ペプチドライブラリーを作製する技術は当該技術分野で周知である。例示的な方法は、ダニ,M.(Dani,M.)、レセプタおよび情報伝達研究誌(J.of Receptor & Signal Transduction Res.)21(4):447〜468頁(2001年)、シドゥ(Sidhu)ら、酵素化学の方法(Methods in Enzymology)328:333〜363頁(2000年)、並びに、ペプチドおよび蛋白質のファージディスプレイ(Phage Display of Peptides and Proteins)、実験室マニュアル(A Laboratory Manual)、ブライアン K.ケイ(Brian K.Kay)、ジル・ウィンター(Jill Winter)、およびジョン・マキャファティー(John McCafferty)編;アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(NY)、1996年に記載されている。更に、ファージディスプレイライブラリーは、ニューイングランド・バイオラブズ(New England BioLabs)(マサチューセッツ州ベバリー(Beverly, MA))などの会社から市販されている。
【0039】
ペプチドをランダムに生成する好ましい方法は、ファージディスプレイである。ファージディスプレイは、ペプチドまたは蛋白質をバクテリオファージのコート蛋白質に遺伝工学的に融合させ、その結果、ファージビリオンの外部に融合したペプチドをディスプレイさせるが、融合をコードするDNAはビリオン内に存在するin vitroセレクション法である。ディスプレイされたペプチドとそれをコードするDNAとのこの物理的結合は、「バイオパニング」と称される単純なin vitroセレクション手順により、それぞれが対応するDNA配列に結合する膨大な数のペプチド変異体をスクリーニングすることを可能にする。その最も単純な形態では、ファージディスプレイされた変異体のプールを、プレートまたはビーズ上に固定された目的とする標的と一緒にインクュベートし、非結合ファージを洗い流し、ファージと標的の結合相互作用を妨げることにより特異的に結合したファージを溶出することによって、バイオパニングが実施される。次いで溶出されたファージをin vitroで増幅させ、このプロセスを繰り返し、その結果、最も緊密な結合配列に有利なファージプールの段階的濃縮が起こる。3回以上セレクション/増幅を行った後、DNA配列決定で個々のクローンのキャラクタリゼーションを行う。
【0040】
以下の手順を使用して本発明の親和性ペプチドを選択してもよい。ファージペプチドの好適なライブラリーを作製した後、それらを適量の選択された顔料または特定の基材と接触させる。顔料または基材は、溶液中に懸濁された状態で、またはプレートもしくはビーズ上に固定された状態で、ファージペプチドのライブラリーに提供される。好ましい溶液は、界面活性剤を含有する緩衝生理食塩水溶液である。好適な溶液は0.1%トゥイーン(Tween)(登録商標)20を有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)である。ファージペプチドの顔料または基材表面への物質移動速度を増加させ、それによって最大結合を達成するのに要する時間を短縮するため、溶液を任意の手段で更に攪拌してもよい。接触時、ランダムに生成された多数のファージペプチドは顔料または基材に結合し、ファージペプチド−顔料またはペプチド−基材複合体を形成する。非結合ファージペプチドを洗浄により除去してもよい。非結合物質を全て除去した後、様々なストリンジェンシー(stringencies)を有する緩衝剤中で選択洗浄することにより、顔料または基材に対する様々な程度の結合親和性を有するファージペプチドを分画してもよい。使用される緩衝剤のストリンジェンシーが増加すると、ファージペプチド−顔料複合体中のファージペプチドと顔料の間に、またはファージペプチド−基材複合体中のファージペプチドと基材の間に必要な結合強度が増加する。
【0041】
ファージペプチドセレクションにおける緩衝液のストリンジェンシーを様々にするため、以下に限定されないが、酸性pH(1.5〜3.0);塩基性pH(10〜12.5);MgCl(3〜5M)およびLiCl(5〜10M)などの高い塩濃度;水;エチレングリコール(25〜50%);ジオキサン(5〜20%);チオシアネート(1〜5M);グアニジン(2〜5M);尿素(2〜8M);および、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム)、ノニデット(Nonidet)P−40、トリトン(Triton)X−100、トゥイーン(Tween)(登録商標)20などの様々な濃度の異なる界面活性剤を含む多数の物質を使用してもよく、ここではトゥイーン(Tween)(登録商標)20が好ましい。これらの物質を、以下に限定されないが、トリス−HCl、トリス−緩衝生理食塩水、トリス−ホウ酸塩、トリス−酢酸、トリエチルアミン、リン酸緩衝剤、およびグリシン−HClを含む緩衝液中で調製してもよく、ここではトリス緩衝生理食塩水が好ましい。
【0042】
より高いストリンジェンシーを有する緩衝剤を使用してセレクションプロセスを繰り返すことにより、顔料または基材に対するより高い結合親和性を有するファージペプチドが溶出され得ることが分かる。当該技術分野で既知の任意の手段を使用して、溶出されたファージペプチドを同定し、配列を決定してもよい。
【0043】
有用な親和性ペプチド配列としては、以下に限定されないが、前記のオブライエン(O’Brien)らによって記載されているようなカーボンブラック、クロモフタール(Cromophthal)(登録商標)イエロー、サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ、およびサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルーなどの顔料に対する結合親和性を有するペプチド、並びに、セルロース、ポリエステル、綿、ポリエステル/綿、および印刷紙などの印刷媒体に対する結合親和性を有するペプチドが挙げられる。顔料または印刷媒体表面に対する親和性を有する例示的な親和性ペプチド配列は、それぞれ配列番号3、6、23、24、および25、並びに、配列番号4、5、22、および26として記載される。更に、親和性ペプチドは、前記のオブライエン(O’Brien)らによって開示されているような2つの印刷媒体結合性ペプチド配列、または顔料結合性ペプチド配列と印刷媒体結合性配列を含んでなるジブロックまたはトリブロック組成物であってもよい。トリブロック組成物では、2つの結合性ペプチドブロックは、前記のオブライエン(O’Brien)らによって開示されているようなスペーサを介して結合されている。
【0044】
親和性ペプチドの製造
当該技術分野で周知の標準的なペプチド合成法(例えば、スチュアート(Stewart)ら、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)、ピアース・ケミカル社(Pierce Chemical Co.)、イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL)、1984年;ボダンスキー(Bodanszky)、ペプチド合成の原則(Principles of Peptide Synthesis)、シュプリンガー出版社(Springer−Verlag)、ニューヨーク(New York)、1984年;および、ペニントン(Pennington)ら、ペプチド合成プロトコル(Peptide Synthesis Protocols)、フマナ・プレス(Humana Press)、ニュージャージー州トトワ(Totowa,NJ)、1994年を参照されたい)を使用して親和性ペプチドを調製してもよい。更に、多くの会社がカスタムペプチド合成サービスを提供している。
【0045】
或いは、組み換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して本発明のペプチドを調製してもよい。顔料または基材結合性ペプチドをコードする遺伝子を異種宿主細胞中で、特に、前記のオブライエン(O’Brien)らによって記載されているような微生物宿主の細胞中で製造してもよい。
【0046】
ペプチドベースの分散剤および/またはバインダ
本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、親和性ペプチドの配列のN末端および/またはC末端に、正に荷電した少なくとも1個のアミノ酸残基を付加することによって調製されるペプチドである。本発明のペプチドベースの分散剤およびバインダは、顔料に対する結合親和性を有する親和性ペプチドを含んでなり、従って、分散剤とバインダの両方の役割をすることができる。本発明のペプチドベースのバインダは、基材に対する結合親和性を有する親和性ペプチドを含んでなる。好ましくは、親和性ペプチドの配列のN末端またはC末端のどちらかまたは両方に、正に荷電した1個より多くのアミノ酸残基を付加する。親和性ペプチドの少なくとも1つの末端に付加される正に荷電したアミノ酸残基の数は、1〜約50の範囲である。好ましくは、正に荷電したアミノ酸はリシンまたはアルギニンである。正に荷電した1個より多くのアミノ酸を付加する場合、前述の正に荷電したアミノ酸の組み合わせを使用してもよい。
【0047】
場合により、親和性ペプチド配列のC末端もしくはN末端に、または両端に、スペーサを介した結合により正に荷電したアミノ酸を付加してもよい。スペーサは、必要な間隔を提供し、特定の着色配合物の溶解度要件を満たすアミノ酸の任意の組み合わせを含んでなっていてもよい。好ましくは、スペーサは、アミノ酸プロリン、グリシン、アラニン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、ヒスチジン、アルギニン、およびこれらの混合物を含んでなる。ペプチドベースの分散剤および/またはバインダの水に対する溶解度を増加させるため、以下に限定されないが、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、ヒスチジン、アルギニン、およびこれらの混合物を含む極性アミノ酸を含んでなるスペーサを使用してもよい。アミノ酸スペーサは、1〜約20個のアミノ酸の長さであってもよい。
【0048】
一実施形態では、本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、nAは、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり;cAは、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり;正に荷電したアミノ酸は、リシンまたはアルギニンであり、SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり;APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり;x=0〜約50であり;y=0〜約50であり、但し、xとyが両方とも0であることはない]で表され得るペプチドである。例示的な親和性ペプチドは、配列番号3、4、5、6、22、23、24、25、および26で記載される。好ましくは、ペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、約5個のアミノ酸〜約100個のアミノ酸、より好ましくは約5個のアミノ酸〜約30個のアミノ酸、最も好ましくは約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸の長さである。本発明のペプチドベースの分散剤およびバインダの例示的ペプチド配列は、配列番号1、2、8、9、10、13、15、16、および17で記載される。本発明のペプチドベースのバインダは、配列番号7、11、12、14、18、19、20、および21で例示される。
【0049】
前述のように、標準的なペプチド合成法を使用してまたは組み換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して、親和性ペプチド配列のどちらかの端部または両端に正に荷電したアミノ酸残基を付加することにより、本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダを調製してもよい。或いは、顔料結合性ペプチドのN末端アミンを介した活性化により所望のアミノ酸のN−カルボン酸無水物(N−carboxyanhydride)をin situ重合することによって、正に荷電したアミノ酸を親和性ペプチド配列に付加してもよい。この手法は、N−カルボン酸無水物の開環重合を触媒する第一級アミンの既知の能力に基づく(例えば、ペンツェック(Penczek)、開環重合のモデル(Models of Ring Opening Polymerization)、CRCプレス(CRC Press)、フロリダ州ボカラトン(Boca Raton,FL)(1989年)を参照されたい)。更に、前述の方法を使用してペプチドブロックを別々に調製し、カルボジイミドカップリング剤(例えば、ハーマンソン(Hermanson)、バイオコンジュゲート法(Bioconjugate Techniques)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(New York)(1996年)を参照されたい)、二酸塩化物、ジイソシアネート、および、ペプチドの末端アミンおよび/またはカルボン酸末端基に対して反応性がある他の二官能性カップリング試薬を使用して化合させてもよい。
【0050】
本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、親和性ペプチド単独と比較して基材表面に対する親和性が強い。更に、それらと顔料との相互作用により、ペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、顔料の基材表面に対するより確実な結合を提供し、その結果、より耐久性のあるカラーコーティングが得られる。本明細書では本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダと様々な基材が相互作用するときに放出されるエネルギーの量(1モル当たりのキロカロリー(kcal/mol)の単位で表す)として定義される結合エネルギーは、結合親和性の強さの表示を提供する。従って、本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダと基材表面との相互作用のモル吸着熱を相互作用の結合エネルギーの尺度として使用してもよい。本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、水から基材表面に結合するとき、フローマイクロカロリメトリーで測定すると少なくとも約70kcal/molの発熱モル吸着熱を有する。実施例23〜31に詳述するように、マイクロスカル、ロンドン社(Microscal, London, Ltd.)から入手可能なものなどのフローマイクロカロリメーターを使用する標準的な熱量測定法を使用してモル吸着熱を測定してもよい。簡潔には、基材との相互作用に関するペプチドベースの分散剤および/またはバインダのモル吸着熱の測定は、水中に既知の濃度のペプチドベースの分散剤および/またはバインダを含有する溶液を、フローマイクロカロリメーター内の既知の量の基材上に送り、結合相互作用の結果として放出される熱の量をマイクロカロリメーター内に収容されたサーミスタで測定することによって達成される。本明細書では基材の単位面積当たりの吸着された結合ペプチドの量として定義される物質移動の値を、フローマイクロカロリメーターの下流に配置される屈折計などの質量感知検出器で決定してもよい。次いで、マイクロカロリメトリーでの決定から得られた吸着熱を物質移動の値で割ることによってモル吸着熱を計算してもよい。発熱プロセスでは、モル吸着熱は負の値として記載され、このプロセスで熱が放出されることを示す。更に、実施例8〜22に記載されるように米国繊維化学染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)方法61−1996などの促進洗濯試験(accelerated laundering tests)を使用して結合親和性を測定してもよい。
【0051】
着色組成物
本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダを様々な着色組成物に使用し、様々な基材を着色、染色、またはそれに印刷してもよい。本発明の着色組成物は、当該技術分野で既知の慣用的な着色組成物と比較して、基材に対する親和性が向上している。着色組成物は当該技術分野で周知であり、典型的には分散顔料およびキャリア媒体を含んでなる。
【0052】
キャリア媒体は、水性であってもまたは非水性であってもよく、好ましくはキャリア媒体は水性である。「水性キャリア媒体」の用語は、水、または、水と一般に補助溶剤もしくは湿潤剤と称される1種類もしくはそれ以上の有機水溶性成分を含んでなる媒体を指す。補助溶剤が着色剤の基材への浸透および乾燥を補助できるとき、それは浸透剤と称されることもある。本発明に使用され得る水溶性有機溶剤/湿潤剤の代表例は、米国特許第5,085,698号明細書に開示されており、この文献は参照により本明細書に援用される。好ましい水溶性有機溶剤としては、1価または多価アルコール、グリコールエーテルまたはエステル、グリコール、およびケトンが挙げられる。水と水溶性溶剤の混合物を使用する場合、水性キャリア媒体は、典型的には、約30%〜約95%の水を含有し、残部(即ち、約70%〜約5%)は水溶性溶剤である。
【0053】
「非水性キャリア媒体」は、非水性溶剤またはこのような溶剤の混合物から実質的に構成される媒体を指し、溶剤は極性および/または非極性とすることができる。極性溶剤の例としては、アルコール、エステル、ケトン、脂肪族有機酸、およびエーテル、特に、グリコールおよびポリグリコールのモノ−およびジ−アルキルエーテル(モノ−、ジ−、およびトリ−プロピレングリコールのモノメチルエーテル、並びにエチレン、ジエチレンおよびトリエチレングリコールのモノ−n−ブチルエーテルなど)が挙げられる。好ましい極性溶剤としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、第三級ブチルアルコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ベンジルアルコール、蟻酸、ハロゲン化酢酸(トリフルオロ酢酸など)、およびこれらの混合物が挙げられる。非極性溶剤の例としては、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族および芳香族炭化水素、並びに、精製蒸留生成物および副生成物を含むこれらの混合物が挙げられる。非水性キャリア媒体に水が意図的に添加されないときでも、水が幾らか偶発的に配合物中に混入する可能性があるが、一般にこれは約2〜4%以下である。定義により、本発明の非水性キャリア媒体は、非水性キャリア媒体の全重量を基準にして水を約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下有する。
【0054】
顔料は1種類の顔料であっても、または顔料の混合物であってもよい。好適な顔料は前述されている。着色組成物は、組成物の全重量に対して顔料を約0.1重量%〜約50重量%含有してもよい。
【0055】
顔料は、定義により、キャリア媒体中に実質的に不溶性であり、従って分散された形態で使用される。分散剤を使用して顔料を分散させてもよく、または自己分散性顔料を使用してもよい。分散剤を使用して顔料を分散させるとき、分散剤は、以下に限定されないが、後述するようなランダムまたは構造有機ポリマー分散剤;ブリュックマン(Brueckmann)ら(米国特許第5,124,438号明細書)によって記載されているものなどの蛋白質分散剤;および、前記のオブライエン(O’Brien)らによって記載されているものなどのペプチドベースの分散剤を含む、当該技術分野で既知の任意の好適な分散剤であってもよい。好ましいランダム有機ポリマー分散剤としては、アクリルポリマーおよびスチレン−アクリルポリマーが挙げられる。最も好ましいのは構造分散剤であり、これにはAB、BAB、およびABCブロック共重合体、分岐ポリマー、およびグラフトポリマーが挙げられる。好ましくは有機ポリマーは、ナイガン(Nigan)(米国特許出願公開第2004/0232377号明細書)によって記載されているものなどの、アクリレート、メタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、およびエトキシトリエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選択されるモノマー単位を含んでなる。幾つかの有用な構造ポリマー分散剤は、米国特許第5,085,698号明細書、EP−A−0556649号明細書、および米国特許第5,231,131号明細書に開示されている(これらの文献の開示は参照により本明細書に援用される)。
【0056】
自己分散性顔料は、別々の分散剤を用いることなく安定な分散を可能にするため、化学的に結合した分散性付与基で表面改質された顔料である。水性キャリア媒体中に分散するように、表面改質は、親水性基、最も典型的にはイオン化可能な親水性基の付加を含む。官能基、または官能基を含有する分子を顔料の表面にグラフト化することによって、物理的処理(真空プラズマなど)によって、または化学処理(例えば、オゾンまたは次亜塩素酸等での酸化)によって自己分散性顔料を調製してもよい。1種類または複数種類の親水性官能基を1つの顔料粒子に結合させてもよい。自己分散性顔料は、例えば、米国特許第5,571,311号明細書、米国特許第5,609,671号明細書、米国特許第5,968,243号明細書、米国特許第5,928,419号明細書、米国特許第6,323,257号明細書、米国特許第5,554,739号明細書、米国特許第5,672,198号明細書、米国特許第5,69,8016号明細書、米国特許第5,718,746号明細書、米国特許第5,749,950号明細書、米国特許第5,803,959号明細書、米国特許第5,837,045号明細書、米国特許第5,846,307号明細書、5,895,522号明細書、米国特許第5,922,118号明細書、米国特許第6,123,759号明細書、米国特許第6,221,142号明細書、米国特許第6,221,143号明細書、米国特許第6,281,267号明細書、米国特許第6,329,446号明細書、米国特許第6,332,919号明細書、米国特許第6,375,317号明細書、米国特許第6,287,374号明細書、米国特許第6,398,858号明細書、米国特許第6,402,825号明細書、米国特許第6,468,342号明細書、米国特許第6,503,311号明細書、米国特許第6,506,245号明細書、および米国特許第6,852,156号明細書に記載されている。前記参考文献の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0057】
一実施形態では、本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダを慣用的な分散顔料と共に使用する。この実施形態では、ペプチドベースの分散剤および/またはバインダの親和性ペプチドは、顔料または基材に対する結合親和性を有する。従って、この実施形態では、着色組成物は、分散顔料、キャリア媒体、および次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、nAは、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり;cAは、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり;正に荷電したアミノ酸は、リシンまたはアルギニンであり、SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり;APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり;x=0〜約50であり;y=0〜約50であり、但し、xとyが両方とも0であることはない]で表されるペプチドを含んでなる。ペプチドベースの分散剤および/またはバインダの例示的ペプチド配列は、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21で記載される。
【0058】
親和性ペプチドが、組成物に使用される顔料に対する結合親和性を有し、従って顔料分散剤およびバインダとして機能する別の実施形態では、追加の顔料分散剤または自己分散顔料の使用は任意である。この実施形態では、着色組成物は、顔料、キャリア媒体、および次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、nAは、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり;cAは、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり;正に荷電したアミノ酸は、リシンまたはアルギニンであり、SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり;APは、顔料に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり;x=0〜約50であり;y=0〜約50であり、但し、xとyが両方とも0であることはない]で表されるペプチドを含んでなる追加の分散剤を用いることなく使用され得るペプチドベースの分散剤およびバインダの例としては、以下に限定されないが、配列番号1、2、8、9、10、13、15、16、および17で記載されるものが挙げられる。
【0059】
本発明の着色組成物は、場合により皮膜形成樹脂またはバインダを含んでなってもよい。好適な皮膜形成樹脂またはバインダは、水分散性または水溶性のイオン性または非イオン性樹脂である。樹脂は、アクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、アルキド、エポキシ、または皮膜に有用であることが知られている他のポリマーであってもよい。水性着色組成物に使用される水分散性ポリマーの例は、サビーノ(Savino)らにより米国特許第4,794,147号明細書に、サラティン(Salatin)ら米国特許第4,791,168号明細書、および桑島(Kuwajima)ら米国特許第4,5518724号明細書に記載されており、これらの文献は全て参照により本明細書に援用される。
【0060】
着色組成物は、以下に限定されないが、架橋剤、可塑剤、組成物の安定化または塗布を助ける追加の補助溶剤、レオロジー調整剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、触媒、および殺菌・殺カビ剤等を含む当該技術分野で周知の他の成分を更に含んでなってもよい。
【0061】
着色組成物はまた、いわゆる顔料濃縮物であってもよいが、この理由は、それが一般に、インクジェットインクなどの最終製品を製造する配合プロセスの一部として希釈されるように設計されるからである。顔料含有量は、希釈されるように比較的高く、キャリア媒体は単純に保たれる。濃縮物のキャリア媒体は、例えば、単純に水とするか、または、貯蔵および輸送を助けるため凝固点が降下するように少量の可溶性有機補助溶剤を有する水とすることができる。濃縮物中の顔料の量は、一般に濃縮物の全重量の5〜50重量%、より典型的には10〜30重量%である。
【0062】
一実施形態では、着色組成物は、インクジェットインクなどの水性インクである。水性インク配合物は当該技術分野で周知である。例えば、好適な水性インク配合物はマ(Ma)らにより米国特許第5,272,201号明細書に、およびマ(Ma)らにより米国特許第5,085,698号明細書に記載されており、これらの文献は共に参照により本明細書に援用される。水性着色配合物は、典型的には、水性キャリア媒体、分散顔料または分散顔料の混合物、および他の様々な成分を含んでなる。
【0063】
インク配合物に使用される水性キャリア媒体は、水、または、水と少なくとも1種類の水溶性有機溶剤/湿潤剤との混合物を含んでなる。一般に脱イオン水が使用される。水溶性有機溶剤/湿潤剤の代表例は、前記の米国特許第5,085,698号明細書に開示されている。水と水溶性有機溶剤との好適な混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択される顔料、組成物の乾燥時間、および、組成物が塗付される基材の種類などの特定の用途の要件に依存する。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する水溶性多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール)と脱イオン水との混合物が水性キャリア媒体として好ましく、水は水性キャリア媒体の全重量を基準にして約30重量%〜約95重量%、好ましくは約60重量%〜約95重量%を構成する。水性キャリア媒体の量は、有機顔料が選択されるとき組成物の全重量を基準にして約70%〜約99.8%、好ましくは約94%〜約99.8%の範囲であり、無機顔料が選択されるとき約25%〜約99.8%、好ましくは約70〜約99.8%の範囲である。
【0064】
分散顔料は、1種類の顔料または顔料の混合物を含んでなってもよい。好適な顔料の例は前述されている。インクは顔料を最大約30重量%まで含有してもよく、好ましくは、顔料の量は組成物の全重量に対して約0.1重量%〜約15重量%である。前述のように、分散剤を使用して顔料をキャリア媒体中に分散させてもよく、または自己分散性顔料を使用してもよい。インクに分散剤を使用する場合、分散剤はインクの全重量を基準にして約0.1〜約10%の量で存在してもよい。
【0065】
一実施形態では、前述のように、本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダを慣用的な分散顔料と共に使用する。この実施形態では、インクは、分散顔料、キャリア媒体、およびペプチドベースの分散剤および/またはバインダを含んでなる。ペプチドベースの分散剤および/またはバインダは、全組成物の約0.1重量%〜約30重量%の量で存在してもよい。
【0066】
顔料分散剤とバインダを使用する別の実施形態では、追加の顔料分散剤または自己分散顔料の使用は任意である。この実施形態では、インクは、顔料、並びに、ペプチドベースの分散剤およびバインダを含んでなる。ペプチドベースの分散剤は、全組成物の約0.1重量%〜約30重量%の量で存在してもよい。
【0067】
インクは、特定の用途のためにインク組成物の特性を変更するのに使用できる様々な種類の水性添加剤を更に含んでなってもよい。本発明のペプチドベースの分散剤および/またはバインダに加えて、界面活性剤化合物を使用してもよい。これらは、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、または両性界面活性剤であってもよい。ある一定の界面活性剤はある一定のインク組成物と非相溶性である可能性があり、顔料分散体を不安定化させる可能性があることが当該技術分野で既知である。特定の界面活性剤の選択は、また、印刷される基材の種類に非常に依存する。当業者が、使用される特定の基材に適切な界面活性剤を特定のインク組成物に選択できることが期待される。水性インクでは、界面活性剤は、インクの全重量を基準にして約0.01%〜約5%、好ましくは約0.2%〜約2%の量で存在してもよい。また、インク組成物の浸透性および目詰まり防止性を改善する補助溶剤を添加してもよく、実際、好ましい。このような補助溶剤は従来技術で周知である。更に、微生物の増殖を抑制するため、インク組成物に殺生物剤を使用してもよい。重金属不純物の有害な影響をなくすため、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属イオン封鎖剤も含んでよい。必要に応じてインク組成物の様々な特性を改善するため、湿潤剤、粘度調整剤、および他のアクリルまたは非アクリルポリマーなどの他の既知の添加剤を添加してもよい。
【0068】
本発明の着色組成物およびインクは、マ(Ma)らによって米国特許第5,272,201号明細書に記載されているように、他の着色組成物と同様に調製されてもよい。
【0069】
基材の染色方法
本発明は、また、基材が染色される条件で基材に前述の着色組成物の1つを塗布することを含んでなる、基材の染色方法も提供する。染色に使用される条件は、特定の基材に依存し、通常の実験を使用して当業者により容易に決定され得る。好適な基材としては前述の印刷媒体が挙げられるが、これに限定されない。以下に限定されないが、噴霧、はけ塗り、スクリーン印刷、グラビアロール印刷、およびインクジェット印刷を含む、当該技術分野で既知の任意の手段を使用して着色組成物を基材に塗付してもよい。好ましくは、着色組成物はインクジェット印刷を使用して塗付される。例えば、エプソン(Epson)またはヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)ブランドのデスクトップインクジェットプリンタなどの慣用的なインクジェットプリンタを使用して着色組成物を基材に塗付してもよい。産業用または家庭オフィス用に設計された市販のプリントヘッドと共に、コンティニュアスインクジェットプリンタまたはドロップオンデマンドプリンタ(即ち、ピエゾまたはサーマル方式)を使用してもよい。インクジェットプリンタを使用して着色組成物を基材に塗布し、コンピュータプログラムを使用してパターンを電子的に制御してもよい。次いで着色組成物を基材上で乾燥させ、所望のパターンを形成する。典型的には、乾燥は約20℃〜約200℃の温度で行われる。
【実施例】
【0070】
以下の実施例で本発明を更に明確にする。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すが、例示を目的として記載されるに過ぎないことを理解すべきである。前記説明およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特性を把握することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な用途および条件に適合するように本発明の様々な変更および修正を行うことができる。
【0071】
使用される略称の意味は以下の通りである:「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmole」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「MALDI質量分析法」はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法を意味し、「TFA」はトリフルオロ酢酸を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「P」は圧力を意味し、「P」は初期圧力を意味し、「pbw」は重量部を意味する。
【0072】
一般的方法:
別途明記しない限り、試薬は全てアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から入手した。親和性ペプチドはシン・ペップ社(SynPep Corporation)(カリフォルニア州ダブリン(Dublin,CA))から入手した。
【0073】
実施例1〜7
ポリリシンでキャップされた親和性ペプチドの調製
これらの実施例の目的は、顔料または印刷媒体表面に対する結合親和性を有する親和性ペプチドのN末端に保護されたポリリシンオリゴマーをグラフト化することによってN末端にリシン残基を有するペプチドを調製することであった。得られるポリリシンでキャップされたペプチドを脱保護し、遊離アミンを得た。
【0074】
ε−カルボベンジルオキシリシンN−カルボン酸無水物の合成
無水テトラヒドロフラン(THF)中でホスゲン化することにより、ε−カルボベンジルオキシリシンからε−カルボベンジルオキシリシンのN−カルボン酸無水物を合成した。熱電対さやを有する1,000mLの丸底四つ口フラスコに、上部に小さいドライアイスコールドフィンガーを備えた目盛り付き滴下漏斗を装備した。より大きい第2のコールドフィンガーもフラスコに装備した。磁気攪拌子をフラスコに入れ、それに無水THF500mLと、ε−カルボベンジルオキシリシン(アルドリッチ(Aldrich)、製品番号C8008)50g(71mmol)を投入した。ホスゲンを添加する前にフラスコの内容物を50℃に加熱した。液体ホスゲン(25.4mL、142mmol)を二等分して反応に添加し、僅かに濁った溶液が得られるまで反応混合物を攪拌した。次いで、溶剤を乾燥するまで40℃以下で真空蒸留し、生成物を無水THF150mL中に再懸濁させた。次いで、溶液をドライボックスに移し、活性炭(アルドリッチ(Aldrich)、製品番号16,1551)およびセライト(Celite)(登録商標)珪藻土(Diatomaceous Earth)(ワールド・ミネラルズ社(World Minerals Inc)、カリフォルニア州サンタバーバラ(Santa Barbara, CA))で別々の段階でろ過した。次いで、ヘキサン(EMサイエンス(EM Science)、ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown,NJ))を添加し、結晶化を開始した。溶液を−20℃の冷蔵庫に24時間入れた。得られる白色結晶(2回分(2 crops))を真空ろ過で捕集した。得られる収量はそれぞれ47.32gと4.32gであった。正しい構造を重水素化DMF中でのプロトンNMRにより確認した。
【0075】
ポリリシンでキャップされた親和性ペプチドの調製
親和性ペプチド(シン・ペップ社(SynPep Corporation)(カリフォルニア州ダブリン(Dublin,CA))から入手した)を真空下で乾燥させた。シリコーンゴムセプタムおよび磁気攪拌子を装備した乾燥した40mLのガラスバイアル瓶に無水DMF15mLを投入した。表1に示す乾燥した親和性ペプチドをバイアル瓶に添加し、ペプチドが完全に溶解するまで内容物を攪拌した。次いで、バイアル瓶を攪拌しながら加熱されたアルミニウムブロックに入れ、内容物を50℃の温度に平衡化させた。次いで、前述のように調製されたε−カルボベンジルオキシリシンN−カルボン酸無水物(CbzLys)を表1に示すように無水DMF中の1mmol/mL溶液として添加し、内容物を4時間攪拌した。同様にDMF中の残りのε−カルボベンジルオキシリシンN−カルボン酸無水物を表1に示すように注入し、反応物を50℃で72時間攪拌した。溶剤を蒸発させ、ヘキサンで洗浄した後、真空中で乾燥させることによって生成物を捕集した。MALDI質量分析法を使用して生成物のサンプルを分析し、所望の生成物の存在を確認した。分析の結果を表2に記載する。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
MALDI質量分析法の結果から、ポリリシンでキャップされた親和性ペプチドが形成されたことが分かる。ポリリシングラフトの平均長さはN−カルボン酸無水物モノマー対ペプチドの比に依存した。得られたポリリシングラフトの平均長さは、多くの場合、目標とする鎖長より短かった。おそらく、これはN−カルボン酸無水物の不完全な結合と連鎖移動プロセスによるものであり、その結果、ポリリシンホモポリマーが形成された。
【0079】
HBr/酢酸を使用してポリリシンでキャップされたペプチドからカルボベンジルオキシ基を除去し、グラフト化されたポリリシンオリゴマーを脱保護した。脱保護の後、トリエチルアミンを添加することによりリシン残基を遊離アミンの形態に転換した。表3に記載されている試薬の量で以下の手順を使用した。乾燥したガラスバイアル瓶に入ったトリフルオロ酢酸(TFA)にポリリシンでキャップされた親和性ペプチドを溶解させた。臭化水素酸1.49g/溶液100gを含有する臭化水素酸溶液67.11mLを、無水酢酸1.08g/溶液306gを含有する無水酢酸溶液283.33mLに添加することによって、HBr/酢酸試薬を調製した。(注意:かなりの熱が発生するため、この添加は冷却しながらゆっくり行わなければならない)。次いで、得られるHBr/酢酸試薬を、ポリリシンでキャップされたペプチド試薬が入ったバイアル瓶に添加し(ペプチド1グラム当たり10mL)、溶液を室温で2時間激しく攪拌した。次いで、ジエチルエーテル(200〜300mL)を反応混合物に添加した。2μmのポリテトラフルオロエチレンフィルタ(ミリポア社(Millipore Corporation)、マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica, MA))を使用してろ過することにより生成物を捕集した。捕集された生成物をジエチルエーテルで洗浄し、窒素下で乾燥させた。生成物を脱イオン水中10%のトリエチルアミン溶液に懸濁させた(ペプチド1グラム当たり20mL)。この溶液を500ダルトンの分子量分画を有する透析管に入れ、一晩、脱イオン水に対して透析した。溶液を透析管から取り出し、3.1μmのシリンジフィルタでろ過した。ろ液をロータリエバポレータに入れ、脱イオン水約10mLで洗浄した後、乾燥するまで蒸発させた。得られる乾燥生成物を真空下で乾燥させた。生成物を捕集し、秤量し(表3参照)、MALDI質量分析法を使用して分析した。この分析により、カルボベンジルオキシ保護基の除去が確認された。
【0080】
【表4】

【0081】
実施例8〜22
布帛耐久性試験
これらの実施例の目的は、ポリリシンでキャップされた親和性ペプチドを含んでなるインク組成物を製造し、試験することであった。綿布帛に塗布されたときの、得られる組成物の耐久性を促進洗濯法(accelerated laundering method)を使用して試験した。
【0082】
インク配合物:
実施例1〜7に記載したように調製されたポリリシンでキャップされた親和性ペプチドを、表4に示すように、ブラックインクベースを使用して2〜4wt%のレベルでインクに配合した。更に、C末端またはN末端にリシンまたはアルギニン残基を有するペプチド、および、正に荷電した末端アミノ酸のない対照ペプチドはシン・ペップ社(SynPep Corporation)から入手した。これらのペプチドもブラックインクベースを使用してインクに配合した。
【0083】
まず、以下の成分:(i)脱イオン水210.4重量部(pbw)、(ii)41.5wt%(固形分)のアニオン性ポリマー分散剤80.3pbw、および(iii)ジメチルエタノールアミン9.24pbwを十分に混合することによって黒色分散体を調製した。アニオン性ポリマー分散剤は、米国特許出願公開第20030128246号明細書(段落0122〜0125)(この文献は参照により本明細書に援用される)の「分散剤1の調製(Preparation of Dispersant 1)」に従って調製されたグラフト共重合体66.3/−g−4.2/29.5POEA(フェノキシエチルアクリレート)/−g−ETEGMA(エトキシトリエチレングリコールメタクリレート)/MAA(メチルアクリル酸)であり、モノマーの比は、前記公開に示されている61.6/5.8/32.6の重量パーセント比ではなく66.3/4.2/29.5の重量パーセント比が得られるように調整された。これに黒色顔料(ナイペックス(Nipex)180IQ、デグサ(Degussa))100pbwを徐々に添加した。顔料を組み込んだ後、脱イオン水100pbwを混入し、ミルベース(mill base)を形成し、粉砕するためにそれを媒体ミル内を循環させた。次いで、最終濃度に希釈するため脱イオン水(55.4pbw)を添加した。この黒色分散体(276g)を、グリセロール200g、エチレングリコール120g、プロクセル(アーチ・ケミカルズ社(Arch Chemicals Inc.)、コネチカット州チェシア(Cheshire,CT))1.6g、脱イオン水143.6g、およびサーフィノール(Surfynol)(登録商標)485(エア・プロダクツ(Air Products)、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown,PA))2.5gと混合し、ブラックインクベースを形成した。必要に応じて、10%リン酸または10%水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、インク配合物のpHを7.0に調節した。
【0084】
【表5】

【0085】
促進洗濯:
ドローダウン(drawdown)法を使用して、綿100%の布帛(テストファブリックス(Testfabrics)、ペンシルバニア州ウエストピッツトン(West Pittston,PA)から入手したコットン・ブロードクロス・スタイル(Cotton Broadcloth Style)419W)にインクを塗布した。このプロセスは、比較的均一なコーティングが得られるように金属ローラを使用して試験インクを布帛表面に塗布することからなった。インクを塗布した後、布帛サンプルを空気乾燥させ、次いで160℃で2分間加熱することによりコンディショニングし、続いて、促進洗濯試験の前に冷水で予洗した。
【0086】
米国繊維化学染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)方法61−1996に従って促進洗濯を行った。簡潔には、染色された綿サンプルを50個のステンレス鋼ボールと一緒にステンレス鋼キャニスタに入れた。0.15%の洗剤でサンプルを120°F(49℃)で45分間洗濯した。洗濯中、多繊交織の布切れをサンプルの染みと接触するように配置した。布帛の着色された染み部位を光センサに入れ、測光器の応答を表すL、a、およびbパラメータを計算することにより促進洗濯前後の色強度測定値を分光光度的に決定した。染みのない布帛について初期ベースラインLの値を測定し、全ての測定値は3つの個々の決定の平均であった。デルタEの値を下記の式1から計算した。
デルタE=((L−L+(a−a+(b−b1/2 (1)
[式中、L=明度変数、並びに、aおよびbは、国際照明委員会(CIE)によって定義されるCIELAB色空間の色度座標である(ミノルタ(Minolta)、正確なカラーコミュニケーション−感覚から計装までの色管理(Precise Color Communication−Color Control From Feeling to Instrumentation)、ミノルタカメラ社(Minolta Camera Co.)、1996年)]。デルタE値は退色と相関する。従って、値が小さいほど洗濯堅牢度耐久性が良いことを示す。結果を表5に要約する。
【0087】
【表6】

【0088】
結果から、正に荷電したアミノ酸をC末端および/またはN末端に有する親和性ペプチドは、黒色インクベース(比較例20)および正に荷電した末端アミノ酸のない親和性ペプチド(比較例21および22)と比較して、洗濯堅牢度が著しく改善されていることが分かる。更に、実施例8と15、9と16、および、14と17を比較することによって分かるように、正に荷電した複数のアミノ酸を配列のどちらかの端部に有する親和性ペプチドは、正に荷電した1個のアミノ酸を一端に有する同じペプチドと比較して洗濯堅牢度が優れている。
【0089】
実施例23〜31
フローマイクロカロリメトリーを使用するペプチド−基材結合エネルギーの測定
これらの実施例の目的は、フローマイクロカロリメトリーを使用して、正に荷電した末端アミノ酸残基を有する親和性ペプチドと綿基材との相互作用の強さ(具体的には、モル吸着熱)を測定することであった。
【0090】
モデル4034フローマイクロカロリメーター(マイクロスカル、ロンドン社(Microscal, London, Ltd.))で、ペプチドと綿基材との相互作用の吸着熱および脱離熱を測定した。フローマイクロカロリメーターは、装置内部で一緒になり0.17cmの容積を有するサンプルキャビティまたはセルを形成する入口および出口コネクタを有する定温の金属ブロックからなった。1組の2つのサーミスタが、サンプルキャビティ内の第2組の2つのサーミスタと共に、金属ブロックに埋設された。マイクロカロリーの範囲内の熱変化をホイートストーンブリッジ回路で測定した。出口管に25μmのフィルタが装備され、その上にサンプル台が載置され、キャリブレーションコイルも含まれた。ホイートストーン回路からのアナログデータストリームを1秒間隔でサンプリングし、デジタル化し、保存して後で解析するために接続されたコンピュータに送った。実験は全て24.5±0.5℃で行った。
【0091】
ウォーターズ・モデル(Waters Model)2410示差屈折計(ウォーターズ社(Waters Corp)、マサチューセッツ州ミルフォード(Milford,MA))をフローマイクロカロリメーターの下流に配置し、キャリア溶液内外への物質移動をモニタした。第2の吸着/脱離サイクルでは検出可能な物質移動が観察されなかったため、この第2のサイクルを下流検出器のブランクとして使用した。ブランクと、下流検出器を通るサンプルとの時間毎の差を積分すると濃度ピークが得られた。ペプチド含有溶液を下流検出器の既知の容積のサンプルループに注入することによって、ピーク面積の較正を行った。
【0092】
綿基材(セルロース、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)、製品番号C6288)を装置のサンプルセル内に繊維または粒子の形態で堆積させた。キャリア溶剤として水を使用した。サンプルセル内外への熱流の変化がないことによって分かる平衡に達するまで、キャリア溶剤をサンプルセルを通るようにポンプで圧送した。平衡に達した後、溶剤流を既知の濃度の特定のペプチドを含有するものに切り換えた。ペプチドの基材への吸着の結果、発熱ピークが得られ、示差屈折率モニタを使用して下流で決定したとき、キャリア溶剤中のペプチド濃度が減少していた。平衡に達するまで、ペプチド含有溶剤を流し続けた。次いで、溶剤流を元のように純粋な溶剤に切り換え、ペプチドの基材からの脱離があればそれをモニタした。比較のため、同じ方法を使用して、従来のアクリルバインダ(ポリメタクリル酸、10mer)の基材への結合について試験した。
【0093】
屈折率モニタで収集したデータを使用して、基材表面の単位表面積当たりの親和性ペプチドの物質移動を計算するため、これらの研究に使用した綿基材の表面積を測定した。マイクロメリティクス(Micromeritics)ASAP(登録商標)モデル2400/2405ポロシメータ(マイクロメリティクス社(Micromeritics Inc.)、ジョージア州ノークロス(Norcross,GA))を使用して77.3°Kで二窒素吸着測定を使用して表面積の決定を行った。データ収集前にサンプルを60℃で一晩脱ガスした。ブルナウアー(Brunauer)ら(米国化学誌(J.Am.Chem.Soc.)60:309(1938年))によって記載されているように、0.05〜0.20の相対圧力(P/P)にわたって収集した5点吸着等温線を使用して表面積測定を行い、BET法で解析した。屈折率モニタで行った測定から決定された基材上に吸着されたサンプルの量を、基材の表面積で割ることによって物質移動の値(μmol/mで表す)を計算した。脱離段階中、サンプルのどれについても著しい濃度変化は観察されなかった。この結果は、不可逆的吸着と一致する。
【0094】
マイクロカロリメトリーで決定された吸着熱は、1平方メートル当たりのミリジュール(mJ/m)の単位で得られた。吸着熱を物質移動の値で割り、所望の単位を得るのに適切な換算係数を使用することによって、これらの値を表6に1モル当たりのキロカロリー(kcal/mol)の単位で記載されているモル吸着熱に換算した。表中のモル吸着熱の負の値は、プロセスが発熱性であった、即ち、結合の結果、熱が放出されたことを示す。
【0095】
【表7】

【0096】
表中のデータから分かるように、正に荷電したアミノ酸残基を配列の末端の一方に有する親和性ペプチドのモル吸着熱は全て、70kcal/molより大きく、メタクリレート対照および正に荷電した末端アミノ酸のない親和性ペプチドについて得られた値より大きい。これらの結果から、正に荷電した末端アミノ酸を有するペプチドは、メタクリレート対照および正に荷電した末端アミノ酸のない親和性ペプチドよりも強い綿基材との結合相互作用を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)顔料、
b)キャリア媒体、および
c)基材に対する親和性を有し、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとnが両方とも0であることはない]
で表されるペプチドを含んでなる、基材を着色するための着色組成物。
【請求項2】
a)分散顔料、
b)キャリア媒体、および
c)基材に対する親和性を有し、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとyが両方とも0であることはない]
で表されるペプチドを含んでなる、基材を着色するための着色組成物。
【請求項3】
顔料が、(シアン)ピグメントブルー15:3およびピグメントブルー15:4;(マゼンタ)ピグメントレッド122およびピグメントレッド202;(イエロー)ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128、およびピグメントイエロー155;(レッド)ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントレッド17、ピグメントレッド49:2、ピグメントレッド112、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド188、ピグメントレッド255、およびピグメントレッド264;(グリーン)ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン2、ピグメントグリーン7およびピグメントグリーン36;(ブルー)ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット36、およびピグメントバイオレット38;並びに、(ブラック)カーボンブラックよりなる群から選択される請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項4】
顔料が、カーボンブラック、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントレッド122、ピグメントレッド202、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー128、およびピグメントイエロー155よりなる群から選択される請求項3に記載の着色組成物。
【請求項5】
ペプチドが、約5個のアミノ酸の長さ〜約100個のアミノ酸の長さである請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項6】
ペプチドが、約5個のアミノ酸の長さ〜約30個のアミノ酸の長さである請求項5に記載の着色組成物。
【請求項7】
ペプチドが、約5個のアミノ酸の長さ〜約20個のアミノ酸の長さである請求項5に記載の着色組成物。
【請求項8】
ペプチドが、配列番号1、2、8、9、10、13、15、16および17よりなる群から選択される配列を有する請求項1に記載の着色組成物。
【請求項9】
ペプチドが、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21よりなる群から選択される配列を有する請求項2に記載の着色組成物。
【請求項10】
親和性ペプチドが、約4〜約20個のアミノ酸の長さである請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項11】
親和性ペプチドが、配列番号3、6、23、24および25よりなる群から選択される配列を有する請求項1に記載の着色組成物。
【請求項12】
親和性ペプチドが、配列番号3、4、5、6、22、23、24、25および26よりなる群から選択される配列を有する請求項2に記載の着色組成物。
【請求項13】
分散顔料が、分散剤を使用して分散されている請求項2に記載の着色組成物。
【請求項14】
分散剤がペプチドベースの分散剤である請求項13に記載の着色組成物。
【請求項15】
分散剤が、ランダムまたは構造有機ポリマー分散剤である請求項13に記載の着色組成物。
【請求項16】
ランダムまたは構造有機ポリマー分散剤が、アクリレート、メタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、およびエトキシトリエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選択されるモノマー単位を含んでなるポリマーである請求項15に記載の着色組成物。
【請求項17】
分散顔料が自己分散性顔料である請求項2に記載の着色組成物。
【請求項18】
顔料がカーボンブラックであり、分散顔料が、アクリレートまたはメタクリレートモノマーを含んでなる有機ポリマーを使用して分散されており、ペプチドが約8〜約50個のアミノ酸の長さであり、正に荷電したアミノ酸がリシンである請求項2に記載の着色組成物。
【請求項19】
キャリア媒体が水性キャリア媒体である請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項20】
任意のスペーサが、プロリン、グリシン、アラニン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、ヒスチジン、アルギニン、およびこれらの混合物よりなる群から選択されるアミノ酸を含んでなる請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項21】
基材が、印刷紙、シート、フィルム、不織布および編織物よりなる群から選択される請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項22】
基材が、ポリエステル、ナイロン、ライクラ(Lycra)(登録商標)、絹、綿、綿混紡、レーヨン、亜麻、麻、羊毛、スパンデックス、アセテート、アクリル、モダクリル、アラミド、およびポリオレフィンよりなる群から選択される請求項21に記載の着色組成物。
【請求項23】
請求項1または2に記載の着色組成物を含んでなるインク。
【請求項24】
基材が染色される条件で請求項1または2に記載の着色組成物を基材に塗布することを含んでなる、基材の染色方法。
【請求項25】
基材が、印刷紙、シート、フィルム、不織布および編織物よりなる群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
基材が、ポリエステル、ナイロン、ライクラ(Lycra)(登録商標)、絹、綿、綿混紡、レーヨン、亜麻、麻、羊毛、スパンデックス、アセテート、アクリル、モダクリル、アラミド、およびポリオレフィンよりなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項28】
ペプチドの基材に対する結合エネルギーが、70kcal/mol以上である請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項29】
組成物が、場合により、架橋剤、皮膜形成樹脂、バインダ、可塑剤、レオロジー調整剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、触媒、および殺菌・殺カビ剤よりなる群から選択される配合剤を含んでなる請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項30】
基材に対する親和性を有し、次の一般式:
(nA−(Sn)−AP−(Sc)−(cA
[式中、
(i)nAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのN末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(ii)cAは、リシンおよびアルギニンよりなる群から選択される、ペプチドのC末端の正に荷電したアミノ酸であり、
(iii)APは、顔料または基材に対する結合親和性を有するアミノ酸配列を有する親和性ペプチドであり、
(iv)x=0〜約50であり、
(v)y=0〜約50であり、そして、
(vi)SnおよびScは、0〜約20個のアミノ酸を含んでなる任意のスペーサであり、
但し、xとnが両方とも0であることはない]
で表されるペプチド。

【公表番号】特表2009−503091(P2009−503091A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525125(P2008−525125)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029974
【国際公開番号】WO2007/016583
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】