説明

ペプチド及び有利に疎水性の抗菌剤からなる特にグラム陰性菌を制御するための抗菌組成物

【課題】本発明は抗菌組成物、特にグラム陰性菌を制御するための、a)10から25個のアミノ酸残基から成る少なくとも1つのペプチドと、b)少なくとも1つの抗菌組成物の組合せを含む抗菌組成物に関する。
【解決手段】上記ペプチドa)は、i)3から9個のアミノ酸残基から成る中性pHを持つ2つの正荷電ドメインであって、そのうち少なくとも3分の2は陽イオンアミノ酸であるドメインと、ii)上記の正荷電ドメインの間に局在する2又は3個の非陽イオンアミノ酸残基のグループと、iii)上記ペプチドのN- 或いはC-最末端の1つに局在する非疎水性アミノ酸及び正荷電アミノ酸から成るグループから選ばれた0から10個、好ましくは0から5個のアミノ酸残基のグループであって、しかしながら、1個の正荷電アミノ酸残基が上記正荷電ドメインに直接には隣接していないグループとから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌治療の分野に関し、より詳しくは、ヒト、動物及び植物におけるグラム陰性菌によって惹き起こされる感染症を治療するための方法と組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌を破壊する能力を有するペプチドは先行技術に記載されている(CB Park、HS Kim、SC Kim Biochem Biophys Res Commun.3月6日号、1998年、244(1)号 頁253−7)。同様に、アミノグリカンと反応して問題の分子を真核及び原核細胞内に輸送する能力のあるペプチドは国際公開第01/64738号パンフレットに開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細菌に浸透する抗生物質分子の量はそれら分子の構造と基質の輸送に関与する機構に依存する。グラム陰性菌は、細菌被膜(包膜)を構成する二層の膜の存在のために構造的にグラム陽性菌と異なる。すべての細菌が一枚の内膜を持つならば、グラム陰性菌はもう一枚追加の外膜を有する。この外側の疎水性膜は半透性の障壁を形成して抗生物質の浸透を阻止し、一方、ポーリン、即ち、チャネルを形成するタンパク質は栄養素やペニシリン及びテトラサイクリンファミリーの抗生物質のような小分子の親水性溶質の浸入を許すが、大きな分子ならびにマクロライド/ケトライドファミリーの抗生物質の浸透を妨げる。
【0004】
グラム陰性菌の制御する治療に失敗する主な理由の1つは、耐性株の出現である。一定の耐性は細菌膜の透過性低下(ポーリンの定量的/定性的変化)に関連している。他の耐性は能動流出機構による上記抗生物質排除を惹き起こす膜タンパク質の存在によるものである。新しいタイプの抗菌性分子の開発、或いは非活性の市販抗生物質のグラム陰性菌への適用には、それら物質が選択的な細菌膜を通して菌体内に入り又は搬送されることが必要である。
【0005】
本発明の目的は、正しく、グラム陰性菌によって惹き起こされる感染症の有効な治療を、たとえこれらの細菌が抗生物質耐性を発現していた場合でさえも可能にする新しい方法と組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、グラム陰性菌の外膜を通過し、この膜転位によって、さもなければその物理化学的特性の故に浸透しない問題の物質を細菌の内部に搬送する能力のあるペプチドを使用することにより達成される。
【0007】
上記細菌の内部への浸透とは、本発明のペプチドが問題の分子の細菌内への浸透を助長し、或いは可能にすることを意味する。浸透及び内部化という術語は以後同意義で使用される。
【0008】
本発明に関連して行われた研究は、グラム陰性菌の外膜によって排除される疎水性蛍光分子であるボディピー(Bodipy)及びテトラメチルローダミンに関連するものであった。これら蛍光トレーサーは、化学的に疎水性分子に結合している本発明のペプチドの細胞内部化を評価するために選択された。グラム陰性菌における蛍光トレーサーの転位は大腸菌及び緑膿菌上で定性的に評価された。
【0009】
より詳しくはグラム陰性菌を制御するための、a)10から25個のアミノ酸残基から成る少なくとも1つのペプチドの会合から成る抗菌組成物であって、前記a)は、i)3から9個のアミノ酸残基によって形成され、中性pHにある2つの正荷電ドメインであって、そのうち少なくとも3分の2は陽イオンアミノ酸であるドメインと、ii)前記正荷電ドメインの間にある2又は3個の非陽イオンアミノ酸残基のグループと、iii)前記ペプチドのN-或いはC-最末端に、非疎水性アミノ酸及び正荷電アミノ酸から成るグループから選ばれた0から10個、好ましくは0から5個のアミノ酸残基のグループであって、しかしながら、1個の正荷電アミノ酸残基の場合、後者は上記正荷電ドメインに直接には隣接していないグループと、を含むことを特徴とする抗菌組成物である。
【0010】
b)少なくともひとつの抗菌組成物であり、
本発明の上記ペプチドは、このように、感染症、より特異的にはグラム陰性菌による感染症の治療を意図する薬剤組成物の調製に特に適しており、上記組成物中で、上記ペプチドは細菌膜を通過して、上記組成物中で上記ペプチドが会合している抗菌組成物を細菌内部へ搬送する。
【0011】
上記発明のペプチドにおいて、上記2つの正荷電ドメインの陽イオンアミノ酸はアルギニン及びリジンからなるグループから選ばれるのが有利である。
【0012】
上述の発明のペプチドにおいて、上記正荷電ドメイン間のグループの非陽イオンアミノ酸は、好ましくは、
非疎水性であって、例えば、グルタミン酸、セリン、グリシン及びグルタミンから成るグループから選ばれたアミノ酸、或いは、ロイシン(疎水性アミノ酸)である。
【0013】
本発明に記載のアミノ酸配列の方向は、典型的にN末端からC末端に向かっている。しかしながら、別の実施形態に従って上記方向が逆にされることがあり、その場合、アミノ酸配列はC末端からN末端の方向に向けられる。
【0014】
本発明に記載の組成物に対する好ましいペプチドは以下の配列(N末端からC末端への方向)から成るグループから選ばれる。
【0015】
・DPV3: Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser (配列番号:1)
・DPV3.10: Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser Arg Arg Ala Arg Arg Ser Pro Arg His
Leu (配列番号:2)
・DPV6: Gly Arg Pro
Arg Glu Ser Gly Lys Lys Arg Lys
Arg Lys Arg Leu Lys Pro (配列番号:3)
・DPV7: Gly Lys Arg
Lys Lys Lys Gly Lys Leu Gly Lys
Lys Arg Asp Pro (配列番号:4)
・DPV7b: Gly Lys
Arg Lys Lys Lys Gly Lys Leu Gly
Lys Lys Arg Pro Arg Ser Arg (配列番号:5)
・DPV15: Leu Arg Arg Glu
Arg Gln Ser Arg Leu Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg (配列番号:6)
・DPV15b: Gly Ala Tyr Asp Leu Arg Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg Leu
Arg Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg (配列番号:7)
・DPV1047: Val Lys Arg Gly Leu Lys Leu Arg His Val Arg Pro Arg Val Thr Arg Met Asp Val (配列番号:8)
・DPV11: Ala Lys Thr Gly Lys Arg Lys Arg Ser Gly (配列番号:9)
・DPV1121: Val Lys Arg Gly Leu Lys Leu Arg Gln Lys Tyr Asn Lys Arg Ala Met
Asp Tyr (配列番号:11)
【0016】
これらのペプチドのうち、本発明は特に最も以下のペプチド、DPV3、DPV3.10、DPV6、DPV7、DPV7b、DPV15及びDPV15bに関する。
【0017】
上記の配列を整列すると、以下の配列の正荷電ドメインを目立たせる(強調する)。
【0018】
・Arg Lys Lys Arg Arg Arg (配列番号:13)
・Arg Pro Arg (配列番号:14)
・Lys Arg Lys Lys Lys Gly Lys (配列番号:15) 3 0
・Arg Arg Glu Arg (配列番号:16)
・Arg Arg Arg Glu
Arg (配列番号:17)
・Arg Arg Ala Arg Arg Ser Pro Arg (配列番号:18)
・Lys Lys Arg Lys Arg Lys Arg Leu Lys (配列番号:19)
・Lys Lys Arg (配列番号:20)
・Lys Lys Arg Pro Arg Ser Arg (配列番号:21)
・Arg Leu Arg Arg Glu Arg (配列番号:22)
・Arg Leu Arg Arg Arg Glu Arg (配列番号:23)
【0019】
配列番号13−17の上記配列のドメインは上記ペプチドのN最末端に隣接していることが好ましく、一方、配列番号18−23の配列のドメインはペプチドのC最末端に隣接している。
【0020】
また、上記配列を整列すると、以下の配列の正荷電ドメイン間にある2或いは3個の非陽イオンアミノ酸残基からなるグループを目立たせる(強調する)。
【0021】
Glu Ser、Glu Ser Gly、Leu Gly、Gln Ser
【0022】
本発明に記載の組成物中に存在する抗菌組成物は、それら組成物をグラム陰性菌の膜を通過し得なくする物理化学的特性を呈する組成物から選ばれることが好ましい。最も好ましくは、このことは疎水性抗菌組成物に関する。このような組成物の中には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン及びテリスロマイシンのようなマクロライドファミリー(系)やケトライド類の抗生物質がある。
【0023】
抗菌組成物は又アンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0024】
上記DPVペプチドの評価は、それらDPVペプチドがグラム陰性菌である大腸菌或いは緑膿菌の膜を通過して、ボディピーを、たとえ前者(ボディピー)が半透性障壁を代表するグラム陰性菌の外膜によって通常は排除される疎水性分子であっても、これを細菌内に搬送する能力のあることを示している。その上、これらのペプチドは、上記2種のグラム陰性菌株の外膜を通過して、エネルギー非依存性で且つ細菌には障害を与えない機構によって細菌の細胞質に集積できるように思われる。
【0025】
本発明に関連して行われた研究は、2株の細菌、緑膿菌と大腸菌との間に内部化に幾分の差異のあることを示している。このように、DPV7bペプチドは大腸菌よりも緑膿菌においてより内部化をするように思われる。この差異はこれら2つの細菌株間の外膜の構造的差異によって説明されるかも知れない。
【0026】
この故に、これらのペプチドは抗菌薬剤組成物、より詳しくはグラム陰性菌に対する抗菌薬剤組成物の調製に有用であり、これら組成物中で、これらのペプチドは1つ以上の抗菌剤と混合(併用)される。
【0027】
本発明の組成物は予防と治療目的の両方に有用である。
【0028】
その上、本発明に記載の組成物は、一種以上の製剤的に許容され、且つ、このタイプの薬剤と一般に併用される担体、希釈剤或いは賦形剤を含むことが有利である。
【0029】
本発明のペプチドは、化学合成によって、或いは細菌のような原核細胞、酵母細胞のような真核細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、NSO(マウス骨髄腫細胞)、トランスジェニック(遺伝子組換え)動物、例えばウサギ、ヤギ、雌ヒツジ、牝牛等のミルク、又はトランスジェニック植物、例えばトランスジェニックタバコの木等における遺伝子工学によって調製されてもよい。
【0030】
本発明は、又、糖鎖形成のような翻訳後の過程、或いは脂質、糖、ヌクレオチド配列との共役のような化学的修飾に由来する修飾体から成るペプチドのような上記定義のペプチドの機能的同等物質にも関する。但し、もしこれらの修飾が下記の実験の部に提供される試験に従って、上記ペプチドの抗細菌性及び/或いは抗真菌性活性を改変しない場合はである。機能的同等物質は又1つ以上のアミノ酸がD配座アミノ酸であるペプチドを含む。本発明は又D-アミノ酸ペプチド(retropeptides)及びD-アミノ酸-逆配列(retro-inverso)ペプチドを包含する。
【0031】
本発明に記載の組成物の会合は1つ以上の上記ペプチドと1つ以上の抗菌組成物からなる可能性があり、特に言及しない限り、活性薬剤(ペプチド及び抗菌組成物)の定義で使用される単数形は複数を指すと考えてもよい。
【0032】
本発明に記載の組成物は、ペプチド(複数)と抗菌組成物(複数)を混合物或いは生成物中で会合することによって実現してもよく、上記組成物中で1つ以上の同一又は異なったペプチドが、1つ以上の同一又は異なった組成物に、例えば、スペーサーアームによって共役結合している。このような生成物は特に式(I)の生成物であって、以下に記述される。
【0033】
上記ペプチド及び抗菌組成物を混合物で投与するのであれば、本発明の抗菌組成物のこれら2つの活性薬剤は別々に、各々適当な製剤形で1つの包装にして提供されてもよい。しかしながら、活性薬剤の同時投与の便宜を計るために、上記2つの活性構成成分、ならびに恐らくは適当な製剤賦形剤を、1つの混合物中に含む単一の製剤形で、薬物を調製することが一般に好ましい。
【0034】
当然、直接或いは間接に抗菌組成物に結合しているペプチドから構成される生成物は、それ自身で、本発明に記載の会合体と考えられて、単一の活性成分として使用してもよい。
【0035】
例えば、ペプチドと抗菌組成物はそれらの間に化学結合を設立することによって結合してもよい。特に、抗菌組成物又はその誘導体のレベルで存在するカルボン酸基によって、ペプチドのアミノ官能基をアミド化し、或いはペプチドの1つ以上のアルコール官能基をエステル化することが可能である。それ故、本発明の組成物の活性生成物を形成するアミド化生成物が得られる。又、ペプチドのN-及び/或いはC-最末端に、そのSH基が反応性であるシステイン残基のようなアミノ酸残基を付加することも可能であり、その側鎖は、例えば抗菌組成物との共役を可能にする。このような生成物の中に下記の式(I)の生成物がある。
【0036】
事実、本発明のもう1つの目的は、上記ペプチドと抗菌組成物が、恐らくは少なくとも1つのスペーサーアームによって、互いに共役結合した新規生成物を得ることにある。
【0037】
このような生成物は特に次式(I)に対応するものであり、
(A-)(X)(-P) (I)
式(I)において、先に定義されたように、Aは抗菌組成物の残基であり、Pはペプチドの残基であり、XはAとPとの間の共役結合、又は少なくともA残基を少なくとも1つのP残基に結合するスペーサーアームを表し、mは1から3の整数であり、nは1から3の整数であり、又、pはゼロ或いは多くて数値m及びnのより大きな方に等しい。確かに、1つ以上のA及び/或いはP残基を単一のスペーサーアームに接木する、或いは1つ以上のA-XグループをP残基に接木する(それによってmはpに等しく、nは1に等しい)、又は1つ以上のX-PグループをA残基に接木する(それによってnはpに等しく、mは1に等しい)ことが可能である。pがゼロに等しい場合には、1つ以上のA残基が直接P残基に結合し(そしてnは1に等しい)、或いは1つ以上のP残基が直接A残基に結合する(そしてmは1に等しい)。
【0038】
式(I)の生成物は塩の形で、特にアルカリ金属塩、例えばナトリウム或いはカリウムの塩の形で使用されてもよく、これらの塩は、例えば、リン酸基の塩であり、もし存在すればフェノール基(サリチル酸の場合)の塩等である。又、もし必要ならば、これらの生成物がアミン基を含む場合、式(I)の生成物を付加塩の形で(例えば塩酸塩の形で)使用することも可能である。
【0039】
スペーサーアームとA及びP残基間の、或いは直接AとP間の結合は共役結合である。これらの共役結合は、以前に指摘されたように、カルボン酸-エステル、カルボン酸-アミド、チオカルボン酸-エステル、或いはチオカルボン酸-アミド基間で形成されてもよい。
【0040】
上記抗菌組成物(A)及び上記ペプチド(P)の残基は、ある抗菌組成物又はペプチドの誘導体であり、それによって1つ以上の化学官能基が抑制又は修飾されて直接AとP間に、或いは間接的にスペーサーアームによって共役結合の形成を可能にする。
【0041】
これはスペーサーアーム又はペプチドと結合を形成することができるカルボキシル基を有する抗菌組成物のアシル官能基を含んでもよく、後者(ペプチド)はスペーサーアーム或いは抗菌組成物と共役結合を形成することができる第一級アミン又はヒドロキシル基を有する。
【0042】
スペーサーアームは、特に、その両末端のそれぞれに反応性官能基を有し、各官能基がA及びPと共役結合を形成することが可能な組成物のような二価性脂肪族組成物の二価の残基であってもよい。これらの組成物は、例えば、アミノ及びカルボキシル基(又はチオカルボキシル基)の両方を持つ組成物、又はアミノ基及びヒドロキシル基の両方を持つ組成物であってもよい。
【0043】
式(I)において、X基(その官能末端基を無視して)は、特に、二価の脂肪族基、恐らくは、1つ以上の異種原子 −O− 或いは −S− 、又は1つ以上の異種原子グループ −NH− 或いは−CO− −NH− によって中断されたグループを表す。
【0044】
上記ペプチド及び抗菌組成物或いはそれらの誘導体との反応後、AとPがスペーサーアームによって結合されている式(I)の生成物を生成し得る組成物の中に、α-、β- 或いはγ-アミノアルカンカルボン酸、特に、グリシン、アラニン、バリン又はロイシンのような天然のα-アミノ酸、又はペプチド、特にジペプチド或いはトリペプチドがある。実施例に示されるように、このペプチドはシステインを含むことが有利である。
【0045】
スペーサー作用物質も同様に乳酸、グリコール酸、アルドン(グルコン、マノン、ガラクトン、リボン、アラビノン、キシロン及びエリスロン)酸、及び対応するラクトン或いはジラクトン(例えば、ラクチド、グリコリド、δ-グルコノラクトン、δ-バレロラクトン)或いはアルダリン酸であってもよい。
【0046】
恐らくスペーサーアーム上に存在してA又はPとの結合に関与する官能基は、他のA及び/或いはP残基への継ぎ足しに使用して式(I)の組成物を得てもよく、これら組成物に対してm及び/或いはnは1よりも大である。このことは、例えば、ヒドロキシ酸のヒドロキシル基、カルボキシリルアミノ酸ジアシドの第二のカルボキシル基、ジアミノアミノ酸の第二のアミノ基、ヒドロキシル化アミノ酸のヒドロキシル基等に適合する。
【0047】
スペーサーアームは、A又はP残基の何れか或いは両方の徐放を可能にする、特に投与後これら残基を分解から保護することによって可能にする結合分子から成ることが有利であるかも知れない。スペーサーアームは、又、特定の器官或いは組織を標的として抗菌組成物のこれら残基を搬送することを可能にするベクトル化分子から成ってもよい。
【0048】
式(I)の組成物を調製するためには、有機合成の従来の方法が使用される。例えば、アミド又はエステルを調製するために、カルボキシル組成物を、カルボン酸(或いはチオカルボン酸)のハロゲン化物の形で、混合無水物の形で、或いは活性化エステル、例えばp-ニトロフェニルエステルの形で反応させることが可能である。カルボン酸の、ジクロロヘキシルカルボジイミドのような共役剤による活性化も行われてよい。
【0049】
式(I)の組成物はペプチド残基から成っているので、それらの調製は特にペプチド化学において衆知の方法を用いて行ってもよい。
【0050】
式(I)のA、P或いはXが由来する組成物が反応を受け易い幾つかの官能基を含む場合、試薬を化学量論的比率で(好適に反応に供されるA及び/或いはPの前駆体生成物の数に従って)使用することによって、或いは、もしそれらの反応が望ましくないならば、一時的に反応性官能基を保護することによって反応を進めることが得策である。
【0051】
上記反応性官能基の一時的保護法がこのために使用される。これらの一時的反応方法は、特にペプチド合成研究の間に開発された方法はよく知られている。例えば、-NH基は、カルボベンゾキシ、フタロイル、t-ブトキシカルボニル、トリフルオロアセチル、トルエンスルフォニル基によって保護されてもよく、カルボキシル基は、ベンジルエステル、テトラヒドロピラニルエステル或いはt-ブチルエステルの形で保護されてもよい。アルコールはエステル(例えばアセテート(酢酸エステル))、テトラヒドロピラニルエーテル、ベンジルエーテル又はトリチルエーテルの形で、或いはアセタールの形で(ビシナールグリコールの場合アセトニドの形におけるものを含む)保護されてもよい。種々の化学官能基の可能な保護及び脱保護反応は既知であって文献に記載されている。
【0052】
ヌクレオチド又はヌクレオシドの第一級アルコールのリン酸化或いは脱リン酸化反応は天然の酵素(例えば、ホスファターゼ、ホスホキナーゼ)を用いて行ってもよい。
【0053】
本発明の抗菌組成物及び特に式(I)の組成物から成る組成物は、治療従事者によって許可されている投与様式の何れかによって、即ち、経口、舌下、経鼻、経肺、直腸、或いは非経口(例えば、脈管内、筋肉内、経皮、動脈内)投与様式で投与されてもよい。全身的、或いは中枢系投与、例えば、頭蓋内手術経路による投与、又は眼球内投与さえも可能である。生分解性移植片の皮下移植も言及されてよい。
【0054】
この故に、これら組成物は以下の経路を介する投与を可能にする何れかの形態で提供されてもよい。
【0055】
・経口経路を介する形態(特に経口的に摂取されるカプセル、溶液又は乳濁液、粉末、ゲル、顆粒、丸薬、或いは錠剤)、徐放又は長期継続放出を伴う処方を含む錠剤、カプセル、軟カプセル、丸薬、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ及び乳濁液。この提供形態は特に腸障壁の通過に適しており、抗菌及び/或いは抗真菌組成物の最も普通の使用方法である。
【0056】
・非経口経路を介する形態、一般に注入(点滴)による筋肉内或いは静脈内注射。注射可能な組成物は従来からの方法で、懸濁液又は液体溶液或いは適当な液体への即席溶解に適した固体形で調製してもよく、ペプチドを脂質又はデキストラン処方の或いはPLGA又はその同等物の生分解性のミクロ或いはナノ粒子内に包含するような徐放又は長期間継続放出のための処方を含む。この提供形態は特に血液―脳障壁の通過、及び病院における抗細菌及び/或いは抗真菌組成物の使用に適している。
【0057】
1つの可能な非経口的投与は、徐放或いは長期継続放出系の移植を用いて用量レベルの一定不変のレベルの維持を確保する。
【0058】
もう1つの可能性は、本発明のペプチドを吸着により、さもなければカテーテル、人口的補欠物又は生物学的接着剤のような支持体上に固定することにある。
【0059】
・経鼻経路(例えば、点滴又は噴霧(スプレー)の形で投与されるべき溶液)、
・経肺経路(例えば、エアゾル用の加圧瓶内の溶液)、
・直腸経路(坐薬)、
・同時経路(例えば、クリーム、軟膏又は経皮製剤、所謂貼り薬)、
・経粘膜経路、例えば、舌下経路(加圧瓶内の溶液、或いは経口崩壊用の錠剤)。
【0060】
これらの製剤形は通常の方法で調製されて、適当な従来からの賦形剤及び担体を含んでもよい。
【0061】
他の通常の局所用製剤は、クリーム、軟膏、ローション(化粧水)、ゲル及びエアゾルスプレー(噴霧液)を包含する。後者は細菌による、及び/或いは気管支―肺の真菌による感染の治療により特に適している。
【0062】
本発明の組成物は又化粧品の分野において、本質的には、保護の目的で使用されてもよく、クリーム、マニキュア液、生殖器官用の衛生製品、歯磨、口腔衛生溶液から成ることがあり、或いは緩慢拡散用のミクロ粒子に、水相に含まれ、例えば、月経帯、綿棒(Qチップ(商標))、絆創膏(バンドエード(商標))、化粧落しパッド、衛生タオル或いは動物のトイレに含まれてもよい。
【0063】
投与様式次第で、上記組成物は固体、半固体或いは液体の形であってもよい。
【0064】
錠剤、丸薬、粉末又は遊離顆粒のような、或いはカプセルに含まれた顆粒のような固体の組成物については、上記会合体は以下の物質と混合してもよい。
【0065】
・希釈剤、例えば、ラクトース(乳糖)、デキストロース(グルコース)、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/或いはグリシン、
・潤滑剤、例えば、シリカ、タルク(滑石)、ステアリン酸、そのマグネシウム又はカルシウム塩及び/或いはポリエチレングリコール、
・結合剤、例えば、マグネシウムとアルミニウムの珪酸塩、デンプン糊、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/或いはポリビニールピロリドン、ならびに、もし必要ならば、
・崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩、或いは飽和剤混合物、及び/或いは吸収剤、着色料、矯味剤及び甘味剤。
・賦形剤は、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム及び薬事法等級の類似体であってもよい。
【0066】
坐薬のような半固体の組成物については、賦形剤は、例えば、脂肪乳濁液又は懸濁液であってもよく、或いはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコールを基盤としてもよい。
【0067】
液性組成物、特に注射可能な、或いは軟カプセルに含まれるべき液性組成物は、例えば、活性成分を水、生理血清、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール、油及びその類似体のような薬剤的に純粋な溶媒に溶解、分散等をすることによって調製することが可能である。
【0068】
本発明に記載の組成物は又リポソームタイプの放出系を通じて、例えば、単一薄層の小胞、大き目の単一薄層の小胞及び多重薄層の小胞の形で投与されてもよい。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン或いはホスファチジルコリンを含む種々のリン脂質から形成される。1つの実施形態において、液性成分を有するフィルムが薬物の水溶液で加水されて上記薬物を内包する脂質層を形成する。
【0069】
本発明に記載の組成物は滅菌してもよく、及び/或いはアジュバント及び保存剤、安定化剤、湿潤剤或いは乳化剤のような無毒の補助物質、溶解促進剤、浸透圧調節塩及び/或いは緩衝剤を含んでもよい。その上、治療上関心のある他の物質が含まれてもよい。上記組成物はそれぞれ従来からの混合法、顆粒化法或いはコーティング法によって調製されて、活性成分を約0.1から75パーセント、好ましくは、約1から50パーセント含む。
【0070】
本発明に記載の組成物中の会合するペプチド及び抗菌剤は又標的にし得る薬物支持体のような可溶性ポリマーに連結してもよい。このようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシ-エチル-アスパナミド-フェノール、或いはパルミトイル残基で置換されたポリ(エチレンオキシド)ポリリジン、デキストランから成ってもよい。その上、本発明に記載の組成物は、薬物の制御放出の実施に有用な一群の生分解性ポリマーに、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及び網状の、或いは両親媒性ヒドロゲル配列のコポリマーに連結していてもよい。
【0071】
本発明に記載の組成物投与の薬用量は、患者(被験体)のタイプ、人種、年齢、体重,性別及び医学的状態を含む多くの因子、治療されるべき状態の重み、投与経路、患者(被験体)の腎臓及び肝臓機能の状態、及び使用される特定の組成物或いは塩の特質に基づいて選択される。普通の経験を積んだ医者或いは獣医は容易に有効量を決定し処方して治療すべき医学的状態の進行を予防し、妨げ、或いは阻止し得るであろう。
【0072】
本発明に記載の組成物は活性成分を0.1から99パーセント、好ましくは1から70パーセント含んでもよい。
【0073】
若干の例として、本発明に記載の組成物の経口薬用量は、経口摂取により1日当たり約0.5から1mgであり、活性成分を0.5、1、2.5、5、10、15、25、50、100、250、500及び1,000mg含む錠剤の形で提供されることが好ましい。有効血漿中濃度は1日に体重1kg当り0.002mgから50mgの薬用量に基づいて得られるであろう。
【0074】
本発明の組成物は1日当たり1回の用量で、或いは2回、3回又は4回の用量で投与されてもよい。
【0075】
本発明の他の有利な点及び特徴は以下に説明のために提供される実施例から明白であり、補遺で図面に言及している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
材料と方法
I.1)蛍光トレーサー
・ボディピー(登録商標) FL N-(2-アミノエチル)マレイミド(ボディピー)(分子探索カタログ番号#B-10250)は、その分子式はC2021BFであり、その分子量は414.22Da(ダルトン)であり、吸光極大は504nmで、発光波長は510nm(緑色蛍光)であり、その展開構造式は図1に示されている。
【0077】
・テトラメチルローダミン-6-マレイミド(TMR)(分子探索カタログ番号T-6028)は、その分子式がC2823NOであり、その分子量は481.51ダルトンで、その吸収極大は541nm、蛍光波長は567nm(赤色蛍光)であり、その展開構造式は図2に示されている。
【0078】
これら2つの蛍光分子は反応性マレイミド基を含み、ペプチドのシステインのチオール官能基に化学的共役を可能にしている。
【0079】
I.2)ペプチドベクター(DPVs)
以下の配列のペプチドが使用された。
【0080】
・DPV3: Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser (配列番号:1)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV3.10: Arg Lys Lys Arg Arg Arg Glu Ser Arg Arg Ala Arg Arg Ser Pro Arg His Leu (配列番号:2)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV6: Gly Arg Pro
Arg Glu Ser Gly Lys Lys Arg Lys
Arg Lys Arg Leu Lys Pro (配列番号:3)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV7: Gly Lys Arg
Lys Lys Lys Gly Lys Leu Gly Lys
Lys Arg Asp Pro (配列番号:4)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV7b: Gly Lys
Arg Lys Lys Lys Gly Lys Leu Gly
Lys Lys Arg Pro Arg Ser Arg (配列番号:5)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV15: Leu Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg Leu Arg Arg Glu Arg Gln
Ser Arg (配列番号:6)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV15b: Gly Ala Tyr Asp Leu Arg Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg
Leu Arg Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg (配列番号:7)で、そのN最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV1047: Val Lys
Arg Gly Leu Lys Leu Arg His Val
Arg Pro Arg Val Thr Arg Met Asp Val (配列番号:8)で、そのN最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV11: Ala Lys
Thr Gly Lys Arg Lys Arg Ser Gly
(配列番号:9)で、そのC最末端にCys(システイン)残基を持つ、
・DPV12: Gln Gly
Lys Ser Lys Arg Glu Lys Lys Asp Arg Val Phe (配列番号:10)で、そのC最末端にCys Cys 配列を持つ、
・DPV1121: Val Lys
Arg Gly Leu Lys Leu Arg Gln Lys Tyr Asn Lys Arg Ala Met Asp Tyr (配列番号:11)で、そのN最末端にCys residue
Cys 残基 Cysを持つ、
DPV19: Asn Pro Gly
Val Ser Thr Val Val Leu Gly Ala Tyr Asp
Leu Arg Arg Arg Glu Arg Gln Ser Arg (配列番号:12)で、そのN最末端にCys残基を持つ。
【0081】
ペプチドの合成は当事者には既知の方法に従って実施される。これらのペプチドは水溶性である。
【0082】
これらのペプチドはN- 又はC- 末端の位置にシステイン残基を有して蛍光トレーサーとの共役を可能にしている。
【0083】
1.3)対照生産物
ボディピー及びTMRはシステイン残基に化学共役して内部化の負の標識として作用する。
【0084】
1.4)化学的共役法
ボディピー又はTMR溶液は30ジメチルホルムアミド(DMF)中で50mMの最終濃度で調製された。DVP溶液はDMF中で10mMの最終濃度で調製された。ボディピー又はTMR溶液200μlが、DVP溶液700μlと混合された。混合物を外界温度、暗所で2時間保温した後、2mlの水と8mlのジクロロメタン(DCM)を添加した。上記溶液をボルテックス・ミキサーで混合して3000Gで2分間遠心した。水相を取り出して貯蔵した。DCM抽出を4回連続して行った。水相をガラス瓶に集め、−80℃に1時間放置した後、最小限18時間凍結乾燥した。得られた粉末はアルゴン中、−20℃で光を遮って貯蔵された。
【0085】
1.5)抱合体の溶液中での保存
DPV〜ボディピー及びDPV-TMR抱合体は水で3mMに希釈し、−20℃で光を遮って保存した。
【0086】
1.6)抱合体のHPLC分析
・ボディピー抱合体に対して:
100Å 3μ C18
100x4.6mmのルナカラム
溶媒A: 水中で0.1% TFA
溶媒B: アセトニトリル(CAN)中で0.1%TFA
勾配: 10分間で5%Bから60%、1分間で60%Bから90%、3分間90%B、2分間5%B
流れ: 1.2ml/分、注入容量: 10μl、注入サンプルの濃度は0.1%TFA中で1mg/mlであった。
検出器: DAD: 214nm、300nm
【0087】
・TMR抱合体に対して:
100Å 3μ C18
100x4.6mmのルナカラム
溶媒A: 水中で0.1%TFA
溶媒B: アセトニトリル(CAN)中で0.1%TFA
勾配: 10分間で5%Bから60%、1分間で60%Bから90%、3分間90%B、2分間5%B
流れ: 1.2ml/分、注入容量: 20μl、注入サンプルの濃度は0.1%TFA中で1mg/mlであった。
検出器: DAD: 220nm
【0088】
1.7) 細菌株
・大腸菌 ATCC 25922
・緑膿菌 ATCC 27853
【0089】
I.8)内部化の実験計画
I.8.a)37℃における抱合体の細菌への浸透の評価
培養の指数増殖期にある細菌を遠心して10mMでpH7.4のリン酸ナトリウム緩衝液(NAPB緩衝液)で3回洗浄した。細菌濃度をNAPB緩衝液で1x10cfu/ml(コロニー形成単位)に調整した。細菌懸濁液(50μl)をポリ-L-リジンスライドに滴下した。湿潤室37℃で30分間保温した後、スライド上に固定化された細菌をNAPBで3回洗浄した。DPV〜ボディピー又はDVP-TMR抱合体或いは対照物質の溶液(50μl)を細菌上に滴下した。湿潤室内37℃で光を遮って30分間インキュベーションした後、スライドをNAPBで3回洗浄した。37℃で光を遮って20分間インキュベーションすることによって、細菌をスライド上に固定することが可能である。50%PBS/グリセロールを1滴スライド上に滴下し、カバーガラスで覆った。カバーガラスをスライド上に密封した後、細菌の蛍光をライカエピ蛍光光学顕微鏡下で観察した(40X又は63X 液浸レンズ)。顕微鏡像を最大限ズーム及び0.63Xアダプターを装着したデジタルニコンクールピイックスカメラで撮影した。より詳細な分析を、倒立光学顕微鏡とX100の液浸レンズを装備した共焦点Bio-rad600顕微鏡(BIO-RADミクロサイエンス社、Hemel、Hempstead、英国)を用いて行った。細菌はクリプトン/アルゴンレーザーで励起した後、それらの蛍光で視覚化された。細菌の0.1-0.2μmの切片が幾つか作製された。
【0090】
I.8.b)+4℃における抱合体の細菌への浸透の評価
上述の方法(1.8.a)を以下のように改変した。ポリ-L-リジンのスライド上に固定化され、NAPBで3回洗浄された細菌を+4℃で24時間インキュベーションした後、予め+4℃で前培養されたDPV蛍光抱合体を添加した。爾後の段階はすべて冷溶液を用いて+4℃で行われた。
【0091】
I.9)細菌外膜の免疫標識:間接免疫蛍光
ポリ-L-リジンのスライド上に固定化された細菌をNAPBで3回洗浄して、30分間実験室の温度で0.05%のNAPB/SAB(ウシ血清アルブミン)溶液とインキュベーションした。細菌を30分間実験室の温度で、NAPB/SABで0.05%に希釈されたマウスの抗エンドトキシンモノクローナル抗体(バイオバレー、カタログ番号C555157、バッチ番号212529)とインキュベーションし、0.05%のNAPB/SABで数回洗浄し、次いで30分間実験室の温度で、光を遮ってもう1つの抗体:テトラメチルローダミン(TRITC)(ジャクソン イムノリサーチ カタログ番号315−026−003、バッチ番号47511)又はフルオレッセイン(FITC)(ジャクソン イムノリサーチ カタログ番号715−095−150、バッチ番号51038)と抱合したウサギの抗マウスポリクローナル抗体とインキュベーションした。NAPB緩衝液で数回洗浄した後、50%のPBS/グリセロールを1滴スライド上に滴下してカバーガラスで覆った。カバーガラスをスライドに密封した後、細菌の蛍光を、上述のように(1.8.a節)、共焦点顕微鏡で観察した。
【0092】
I.10)抱合体の抗菌活性の評価
最小阻害濃度(CMI)は、96-ウエルのポリスチレン盤上で細菌株のセットに対し液体培地(NCCLS M7A5)中ミクロ希釈法によって決定された。
【0093】
細菌大腸菌ATCC25922又は緑膿菌ATCC27853の単離コロニーを3から5mlのミュラー-10ヒントン(MH)培養培地に縣濁し、攪拌しながら37℃で一晩培養した。この一晩培養から、菌株の指数増殖期にある培養を作製した。即ち、MH培地に上記一晩培養を2%の割合で接種して、攪拌しながら37℃で2時間培養した。細菌濃度をMH培地中で1x10cfu/ml(コロニー形成単位)に調整した。
【0094】
50μlの細菌接種原を、等量の適当な培養培地に半分ずつ混ぜて希釈した抱合体溶液(0から1μM)を含むウエル当りに分配した。培養は37℃で外気中16から20時間培養した。
【0095】
μMで表したCMIは細菌の増殖を示さない最初の濃度である。
【0096】
II 結果
II.1)グラム陰性菌におけるDPV〜ボディピー抱合体の内部化
II.1.a)DPV〜ボディピー抱合体の内部化の定性的評価
・大腸菌の定性的評価
図3は大腸菌におけるDPV〜ボディピー抱合体の内部化を示す。
【0097】
ポリ-L-リジンスライド上に固定化された細菌が1μMのDPV〜ボディピー抱合体と30分間37℃で培養された。顕微鏡像(エピ蛍光光学顕微鏡、X63液浸レンズ)はDPV〜ボディピー抱合体の生細菌への浸透を示している。A:DPV3、B:DPV3.10、C:DPV6、D:DPV7、E:DPV7b、F:DPV15、G:10 DPV15b、H:DPV1047、I:DPV11、J:DPV12、K:DPV1112、L:DPV19。
【0098】
大腸菌が、I.8.a項に記載のように、1μMのDPV〜ボディピー抱合体と30分間37℃で培養された。非固定細菌における蛍光DPV〜ボディピー抱合体の内部化はエピ蛍光顕微鏡下で視覚化された。対照のCys〜ボディピー抱合体では蛍光は検出されなかった。図3に示すように、数個のDPV〜ボディピー抱合体が大腸菌の細菌膜を通過して菌の細胞質に集積していた。DPV3.10ペプチド(図3B)、DPV3(図3A)、DPV6(図3C)及びDPV15ペプチド(図3F)は高度に浸透性であって疎水性分子を内部化した。DPV11及びDPV12ペプチド(図3Iと3J)によっては、単一の細菌固体群において不均一な蛍光レベルが得られた。これらペプチドの内部化特性は他よりも弱い。DPV19ペプチドは上記細菌には浸透しなかった(図3L)。
【0099】
DPV〜ボディピー抱合体の同一の内部化の様相が上記細菌の固定化後にも観察された。
【0100】
図4はDPV〜ボディピー抱合体の内部化後の外膜の免疫標識を示す。
【0101】
ポリ-L-リジンスライド上に固定化された大腸菌を37℃で30分間3μMのDPV〜ボディピー抱合体と培養した。内部化後、生細菌の外膜をマウスの抗エンドトキシンモノクローナル抗体及びTRITCに共役したウサギの抗マウスIgGポリクローナル抗体を用いて免疫標識により検出した。DPV〜ボディピー抱合体(緑色蛍光)及び外膜の免疫標識(赤色蛍光)の所在を共焦点顕微鏡で観察した。A:元の像の大きさ、BとD:像Aの細菌の拡大。
【0102】
細菌の細胞質におけるDPV〜ボディピー抱合体の所在を確認するために、大腸菌細菌を、1.8節に記載のように、3μMのDPV〜ボディピー抱合体と培養して、上記生細菌の外膜を、I.9節に記載のように、特異的免疫標識によって視覚化した。エンドトキシンはグラム陰性菌の外膜の特異的成分である。細菌の蛍光は共焦点顕微鏡で視覚化された(図4)。ボディピーの内部化を緑色蛍光により視覚化して、外膜は赤色蛍光によって同定した。これらの像の分析は、DPV3ペプチドがグラム陰性の大腸菌の外膜及び内膜を通過して細菌の細胞質へのボディピーの集積を可能にしていることを明白に示した。
【0103】
・緑膿菌における定性的評価
図5は緑膿菌におけるDPV〜ボディピー抱合体の内部化を示している。
【0104】
スライド上に固定化された細菌を1μMのDPV〜ボディピー抱合体と30分間37℃で培養した。顕微鏡像(エピ蛍光光学顕微鏡、X63液浸レンズ)はDPV〜ボディピー抱合体の生細菌への浸透を示した。A:DPV3、B:DPV.10、C:DPV6、D:DPV7、E:DPV7b、F:DPV15、G:DPV15b、H:DPV1047、I:10DPV11、J:DPV12、K:DPV1121、L:DPV19。
【0105】
図6は緑膿菌の共焦点顕微鏡写真である。
【0106】
細菌はポリ-L-リジンスライド上に固定化され、3μMのDPV3〜ボディピー抱合体(A)又はDPV7〜ボディピー抱合体(B)と37℃で30分間培養され、続いてスライド上に固定された。細菌は共焦点顕微鏡で観察された。細菌の元の像の拡大像が提示された。
【0107】
同様の定性的評価が緑膿菌についても行われた。図5は、30分間培養後の上記抱合体の細菌への内部化を示している。DPV内部化の特質は、緑膿菌においてDPV7b及びDPV6がより多く内部化するように見える以外は、大腸菌について観察されたものと同一である。DPV3又hDPV7bペプチドと培養された細菌の共焦点顕微鏡における観察(図6)は、これらのペプチドが外膜を通過することができてボディピーの細菌の細胞質への集積を可能にしていることを明らかにしている。
【0108】
II.1.b)DPVの分類
図3と5に示すように、DPV〜ボディピー抱合体の細菌の細胞質における集積レベルは、DPV及び細菌株に従って変動する。全般的にDPVの内部化は検討された2つの細胞株については殆ど同一である。DPVペプチドは三つの主要なグループに分割されることが可能である。
【0109】
・DPV3、DPV3.10:向上された内部化
・DPV6、DPV7、DPV7b、DPV15:中等度の内部化
・DPV15b、DPV1047、DPV1121:弱い内部化
【0110】
DPV3.10、DPV3、DPV6、DPV7及びDPV7bペプチドは、それらがペルオキシダーゼタンパク質又はIgGに化学的に共役している場合、真核細胞において、細胞質局在ペプチドとして記載されている(WO 01/64738号で公開された国際PCT特許出願)。対照的に、DPV15、DPV15b、DPV1047及びDPV1121ペプチドは、核局在ペプチドとして記述された。重要なことは、「核局在」DPVの内部化のレベルは「細胞質局在」DPVのレベルよりも劣っていることに注目することである。細胞質向性を持つペプチドは細菌においてより内部化し易い。
【0111】
下記の表1に示すように、DPV19、DPV11及びDPV12ペプチドは、真核細胞においては何ら内部化特性を有しない。同じ特性は、グラム陰性菌についてのように、原核細胞についても観察された。
【0112】
【表1】

【0113】
II.1.c)内部化に対するポリ-L-リジン(細菌支持体)の影響の検討
前述の結果を確認してポリ-L-リジンの抱合体内部化に対する潜在的干渉を評価するために、大腸菌をDPV〜ボディピーと30分間37℃でインキュベートし、次いで固定化する前にNAPB緩衝液で徹底的に洗浄して、ポリ-L-リジンスライド上に固定し、又は固定しなかった。抱合体の局在はエピ蛍光或いは共焦点光学顕微鏡で視覚化した。種々のDPVの内部化の特性は以前に得られた結果とは異なっていなかった。ポリ-L-リジンはDPVが細菌膜を通過して細菌に浸透する能力に対して何ら影響を持っていない。
【0114】
II.1.d)内部化レベルに対する温度の影響
以前に観察された内部化の機構を説明するために、DPVの+4℃における内部化能力を分析した。指数増殖期にある大腸菌をポリ-L-リジンスライド上に固定化し、次いで、細菌のエネルギー代謝を除外するために24時間+4℃で培養した。上記細菌は続いて、I.8.b)節に記載のように、3μMのDPV7〜ボディピー又はCyst-ボディピー(対照)と30分間+4℃で培養して、エピ蛍光及び共焦点顕微鏡で視覚化する前に大々的に洗浄した。37℃と+4℃における内部化のレベルを比較するために、同じ実験を、I.8.a節に記載のように、37℃で実施した。
【0115】
上記細菌におけるDPV7の内部化レベルは、上記実験の温度の遺憾に拘わらず同じであった。このように、大腸菌におけるDPV7〜ボディピー抱合体の内部化はエネルギー依存性機構ではないと思われる。この現象は恐らく細菌膜を横切る受動トランスロケーション(基質転移)である。
【0116】
II 2)大腸菌におけるDPV3-TMR抱合体の内部化
一定のDPVペプチドがグラム陰性菌の外膜を通過し、細菌内に浸透して通常はこの外膜によって排除されるボディピーのような疎水性組成物を内部化することが示された。
【0117】
以前に得られた結果の正当性を実証し、ボディピーの蛍光トレーサーの内部化に対する如何なる影響をも除外するために、同一の実験をもう1つの疎水性蛍光トレーサー、即ち、TMRを用いて実施した。TMRは、構造或いは正荷電の存在のような、その物理化学的特性においてボディピーと異なる(図2)。
【0118】
図7は大腸菌におけるDPV3-TMRの内部化を示す。
【0119】
大腸菌をポリ-L-リジンスライド上に固定化して1μMのDPV3-TMR抱合体と37℃で30分間培養した。内部化後、生細菌の外膜をマウスの抗エンドトキシンモノクローナル抗体及びFITCに共役したマウスの抗IgG抗体に対するウサギのポリクローナル抗体を用いる免疫標識によって検出した。DPV3-TMR抱合体(赤色蛍光)及び外膜の免疫標識(緑色蛍光)の所在を共焦点顕微鏡において観察した。A:元のサイズの像、BとD:像Aにおける上記細菌の2つの拡大図。
【0120】
DPV3-TMR抱合体の内部化はポリ-L-リジンスライド上に固定化した或いは懸濁液中の大腸菌で評価された。上記細菌を1μMのDPV3〜TMR抱合体又はCyst〜TMR対照体と30分間37℃で培養し、次いで上記スライド上に固定化した後或いは固定化しないでエピ蛍光光学顕微鏡で視覚化した。何れの内部化の実験計画を使用するかに拘わらず、蛍光は対照の抱合体では検出されなかったが、一方、DPV3-TMRは上記細菌の赤色蛍光によって視覚化された。
【0121】
DPV3〜TMR抱合体の内部化を確認するために、上記細菌をポリ-L-リジンスライド上に固定化して1μMの抱合体と37℃で30分間培養した。外膜の免疫標識はマウスの抗エンドトキシンモノクローナル抗体及びFITCに共役したウサギの抗マウスIgGポリクローナル抗体を用いて実施された。DPV3〜TMR抱合体の局在は共焦点顕微鏡で観察された(図7)。DPV3〜TMR抱合体は外膜を通過し、細菌内に浸透して細胞質に集積した。この結果はボディピー蛍光トレーサーで得られた結果と同一であった。
【0122】
II.3)DPV抱合体の抗菌活性
DPV抱合体の内部化が上記細菌の死を誘導しないことを決定するために、12種のDPV〜ボディピー及びDPV3-TMR抱合体を、1.10)節に記載のように、それらの抗菌活性について検定した。検定されたこれらの抱合体は何れも大腸菌に対して、内部化実験に使用された濃度において何ら抗菌活性を示さなかった。この実験はこれら抱合体の内部化が細菌の生存度に何ら影響を持たないことを示した。本細菌における内部化の機構は細胞障害性ではない。
【0123】
III DPV-抗菌抱合体の内部化(例:DPV-エリスロマイシン
III.1)DPV-抗菌抱合体の合成
III.1.a)異種二価性架橋剤によるエリスロマイシンの活性化
マレイミドカプロン酸(MIC)(2.8当量)とジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(2.8当量)のジメチルホルムアミド溶液を0℃でアルゴン中、光を遮って一晩攪拌した。形成された沈殿(ジシクロヘキシル尿素)を濾過して除き、DMFで洗浄し、次いで再濾過した。抗生物質(1.0当量)とピリジン(5.0当量)のDMF溶液を完全に溶解するまで攪拌した。上記の得られた濾液をこの溶液に加えて外温で1時間攪拌した。
【0124】
この溶液を蒸留水に取り、ジクロロメタン(DCM)で4回洗浄した。得られた有機相を集め、0.1Nの塩酸(HCl)、炭酸ナトリウム(NaCO)で2回、及び水(HO)で3回連続的に洗浄した。硫酸マグネシウム(MgSO)上で乾燥して濃縮後、洗浄された粗製の試薬をシリカ上のフラッシュ・クロマトグラフィーで精製した(溶離液 CH12/MeOH)。
【0125】
III.1.b)活性化エリスロマイシンの浸透性DPVペプチドとの共役
浸透性ペプチド(1.0当量)のリン酸ナトリウム緩衝液(NaHPO/NaPO)(10mM、pH7.1)溶液を5分間、外界温でアルゴン中、光を遮って攪拌した。次いで、最少限のDMFに溶解した活性化抗生物質(1.5から2.0当量)を添加した。溶液は上記ペプチドが完全に形質転換するまで攪拌された(HPLCで追跡)。蒸留水を続いて加え、水相を同量のジクロロメタンで3回抽出して過剰の活性化抗生物質を除去した。水相を次いで分取用HPLCのために凍結乾燥した。それ故、浸透性の抗生物質が45と100%の間の得量と90%以上の純度で単離された。
【0126】
III.2)DPV-エリスロマイシン抱合体の抗微生物活性の評価
抱合体の最小阻害濃度(CMI)は、細菌株のセットに対するNCCLS-M7A5(臨床実験室基準国家委員会−文書M7A5)基準に従い液性培地中でミクロ希釈法を用いて96ウエルのポリスチレンプレート内で決定した。
【0127】
プロトコル(実験手順):
細菌(例えば大腸菌又は緑膿菌)によって分離されたプレート上のウエルの列(の内容)を3から5mlのミュラー-ヒントン(MH)培養培地に懸濁して攪拌しながら37℃で一晩培養した。この一晩培養から、上記細菌株の指数増殖期にある培養を実現する。即ち、MH培地に上記一晩培養を2パーセントの割合で接種して、攪拌しながら37℃で2時間培養した。細菌濃度はMH培地中で1×10cfu/ml(コロニー形成単位)に調整した。50μlの細菌接種原を、適当な培養培地で半分ずつ混ぜて希釈した抱合体溶液に等しい容量を含むウエルに分配した(0.5μg/mlで512)。培養物は37℃で外気中、16から20時間培養した。
【0128】
μg/mlで表されたCMI(国際単位)は細菌増殖を示さなかった最小濃度である。殺菌作用物質の最小濃度(CMB)の決定はCMI(最小阻害濃度決定)プレートの数値を読んだ後に行われた。CMBは継代培養寒天上ですべての細菌の増殖を阻害する抱合体の最低濃度である(<0.1%の生存菌)。
【0129】
IV ・所謂チェス盤法によるDPVペプチドとエリスロマイシンAの会合体の抗菌活性の評価
IV−1)物質と方法
選ばれたペプチド:DPV3及びDPV3.10
抗菌組成物:エリスロマイシン(シグマ E0774)
細菌株:大腸菌 ATCC 25922及び緑膿菌 ATCC 27853
【0130】
本法は96ウエルのポリスチレンミクロプレートにおいてミュラー-ヒントン(MH)培養培地中で行われ、細菌懸濁液を異なった濃度のDPVペプチドとエリスロマイシンに、単独又は両者を会合して用いて接触させることから成っていた。
【0131】
エリスロマイシン及びペプチドの最終選択濃度は、それぞれ256から4μg/ml及び256から2μg/mlに間隔をあけて設置された。希釈範囲は比率2の等比級数に従って調製された。
【0132】
所望の最終濃度よりも4倍高い濃度の生成物のMH培地溶液(25μl)又はMH培地(25μl)(レイン0に対して)を下記のチャート(表2)に従ってウエルに配分してウエル当り最終容量50μlを達成するようにした。
【0133】
【表2】

【0134】
大腸菌ATCC25922或いは緑膿菌ATCC27853の単離されたコロニーを3から5mlのMH培地に懸濁して攪拌しながら37℃で一晩培養した。この一晩培養から細菌株の指数増殖期にある培養を作製した。即ち、MH培地に上記一晩培養を1/50容量接種し、攪拌しながら37℃で2時間培養した。細菌濃度をMH培地で、5x10-10cfu/ml(コロニー形成単位)に調整した。50μlの細菌接種原を等容量のペプチド及び/或いはエリスロマイシン溶液を含むウエルに分布した。ペプチド及びエリスロマイシンのCMIは、乾燥室中37℃で18時間培養後、細菌の不在(混濁不在)を惹き起こす最弱濃度として決定された。CMIはμg/ml(mg/l)で表した。各ウエルの列に対して、DPVペプチドとエリスロマイシンの会合を含み、何ら目に見える増殖を示さない最初のウエルに注目し、各列について、以下の式を用いて阻害濃度分割指数(FIC)を計算した。
【0135】
FIC=(ペプチドとエリスロマイシン会合のCMI/ペプチド単独のCMI)+(エリスロマイシンとペプチド会合のCMI/エリスロマイシン単独のCMI)
【0136】
この指数は上記会合の定量化を可能にする。0.5以下或いはこれに等しい指数は相乗作用を示し、2以上の指数は拮抗作用を示す。付加効果は0.5と1の間のFICによって示され、無作用効果は1と2の間のFIC値によって示される。
【0137】
IV.2)結果
大腸菌及び緑膿菌のようなグラム陰性菌は、マクロライド系の抗生物質に、これら抗生物質が細菌の外膜を通って浸透しないために耐性である。以前に確認されたDPVペプチドの内部化性及びそれらがマクロライド系の抗生物質の細胞内浸透を容易にする能力を評価するために、エロスロマイシンの大腸菌及び緑膿菌に対する抗菌活性をDPV3或いはDPV3.10ペプチドとの会合において所謂チェス盤法に従って評価した。
【0138】
DPV3及びDPV3.10ペプチドのエリスロマイシンとの会合の相乗効果が表3と4に示されている。DPV3の存在下、エリスロマイシンとの会合の相乗効果は大腸菌においてのみ観察されて、このペプチドがエリスロマイシンの大腸菌への侵入を可能にしていることを示した。DPV3.10のエリスロマイシンとの会合は、これら2つの細菌株に対して相乗的である。DPV3.10ペプチドは、32μg/mlの非細胞障害性濃度においてエリスロマイシンの浸透(内部化)を可能にしている。
【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】ボディピー(登録商標) FL N-(2-アミノエチル)マレイミドの構造式を表す。
【図2】テトラメチルローダミン-6-マレイミドの構造式を表す。
【図3】大腸菌におけるDPV〜ボディピー抱合体の内部化を表す。
【図4】DPV3〜ボディピー抱合体の内部化に続く外膜の免疫標識を表す。
【図5】緑膿菌におけるDPV〜ボディピー抱合体の内部化を表す。
【図6】緑膿菌の共焦点顕微鏡写真像を提供する。
【図7】大腸菌におけるDPV3-TMR抱合体の内部化を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・10から25個のアミノ酸残基を持つペプチドの使用であって、
i)3から9個のアミノ酸残基を含む中性のpHの2つの正荷電ドメインであって、そのうち3分の2は陽イオンアミノ酸であるドメインと、
ii)前記正荷電ドメインの間にある2又は3個の非陽イオンアミノ酸残基の1つのグループと、
iii)前記ペプチドのN-或いはC-最末端に、非疎水性アミノ酸及び正荷電のアミノ酸から成るグループから選ばれた0から10個の、好ましくは0から5個のアミノ酸残基のグループであって、しかしながら、1個の正荷電アミノ酸残基の場合、後者は前記正荷電ドメインに直接には隣接していないグループと、を含み、
グラム陰性菌による感染症の治療を目指す薬剤組成物の調製のために、当該組成物において、前記ペプチドが細菌膜を通過して、当該組成物内で会合している抗菌組成物を細菌内部に搬送することを含むことを特徴とするペプチドの使用。
【請求項2】
・前記ペプチド(i)において、前記(ii)における前記正荷電ドメイン間のグループの前記非陽イオンアミノ酸は、例えば、グルタミン酸、セリン、グリシン、ロイシン及びグルタミンからなるグループから選ばれる非疎水性アミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項3】
・前記ペプチドは、配列:配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9及び11から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項1又は2の記載のペプチドの使用。
【請求項4】
・前記ペプチドは、配列:配列番号:1、2、3、4、5、6及び7から成るグループから選ばれることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のペプチドの使用。
【請求項5】
・前記抗菌組成物は、グラム陰性菌の膜を通過することができないようにする物理化学的特性を呈する組成物から選ばれることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のペプチドの使用。
【請求項6】
・前記抗菌組成物は、疎水性であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のペプチドの使用。
【請求項7】
・前記抗菌組成物は、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン及びテリスロマイシンのようなマクロライド、ケトライドのファミリーの抗生物質から選ばれることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のペプチドの使用。
【請求項8】
・前記抗菌薬剤組成物は、少なくとも1つのペプチドと少なくとも1つの抗菌組成物の、混合物の形での、或いは、1つ以上の同一の又は異なったペプチドが、1つ以上の同一の、或いは異なった抗菌組成物に、恐らくはスペーサーアームによって共役結合している混合物又は生成物の形態での会合から成ることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のペプチドの使用。
【請求項9】
・前記抗菌薬剤組成物は、式(I)を持つ生成物から成り、
(A-)(X)(-P) (I)
Aは抗菌組成物の残基であり、Pはペプチドの残基であり、また、XはAとP間の共役結合、或いは少なくともA残基を少なくともP残基に連結するスペーサーアームを表し、mは1から3の整数であり、nは1から3の整数であり、pは0或いは数値m及びnの大きい方に等しい整数を表すことを特徴とする請求項8に記載のペプチドの使用。
【請求項10】
・抗菌組成物であって、少なくとも1つのペプチドと少なくとも1つの抗菌組成物を含み、混合物の形で、又は、1つ以上の同一或いは異なったペプチドが1つ以上の同一或いは異なった抗菌組成物に、恐らくはスペーサーアームによって共役結合している生成物の形での会合から成り、前記ペプチドが以下の配列:配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び11から成るグループから選ばれることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項11】
・抗菌組成物であって、少なくとも1つのペプチドと1つの抗菌組成物を含み、混合物の形で、又は、1つ以上の同一或いは異なったペプチドが1つ以上の同一或いは異なった抗菌組成物に、恐らくはスペーサーアームによって共役結合している生成物の形での会合から成り、前記ペプチドが配列:配列番号1、2、3、4、5、6及び7から成るグループから選ばれることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項12】
・式(I)の生成物であって、
(A-)(X)(-P) (I)
A,X,m,p及びnは請求項9において定義された通りであり、Pは以下の配列、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び11から成るグループから選ばれたペプチドの残基であることを特徴とする生成物。
【請求項13】
・式(I)の生成物であって、
(A-)(X)(-P) (I)
A,X,m,p及びnは請求項9において定義された通りであり、Pは以下の配列、配列番号1、2、3、4、5、6及び7から成るグループから選ばれたペプチドの残基であることを特徴とする生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−502262(P2007−502262A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523036(P2006−523036)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002142
【国際公開番号】WO2005/018650
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(501046785)ディアトス (ソシエテ アノニム) (5)
【Fターム(参考)】