説明

ペリクル収納方法

【課題】 保管・輸送・開封に際しても、発塵することが少なく、袋に収納する製品、特にはペリクル容器の内部に収納されたペリクルを汚染することのないペリクル収納方法を提供する。
【解決手段】 ペリクルを収納した容器をクリーン仕様の第一の袋に入れてその口を閉じ、次いでこれを帯電防止機能を有する第二の袋に入れてその口を閉じ、更に帯電防止機能を有する第三の袋に入れて密閉することを特徴とするペリクル収納方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内で製造される製品(特にはペリクル)を収納するペリクル収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内で製造されたリソグラフィ用ペリクルは、専用の容器に収納された後、樹脂製の袋に収納される。ペリクル容器(ケース)やペリクルの帯電を防止するために、一般にこの袋は、帯電防止タイプの袋が使われてきた。
【0003】
帯電防止タイプの袋の場合、袋に導電性を持たせるために、帯電防止剤が練り込まれていたり、表面に金属薄膜を蒸着したりしているため、これらが発塵の原因となり、ペリクル容器の輸送状態や環境によっては袋に収納されたペリクル容器を汚染したり、さらに、ペリクル容器を袋から出して蓋を開ける際に、ペリクル容器の蓋等に付着した帯電防止剤等によって、内部に収納されたペリクルを汚染することがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の事情に鑑みて、本発明は、保管・輸送・開封に際しても、発塵することが少なく、袋に収納する製品、特にはペリクル容器の内部に収納されたペリクルを汚染することのないペリクル収納方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、本発明のペリクル収納方法は、ペリクルを収納した容器をクリーン仕様の第一の袋に入れてその口を閉じ、次いでこれを帯電防止機能を有する第二の袋に入れてその口を閉じ、更に帯電防止機能を有する第三の袋に入れて密閉することを特徴としている。
前記クリーン仕様の袋は、少なくとも清浄度1000以下のクリーンルーム内で製造された清浄度管理のされたものであり、前記帯電防止機能を有する袋は、少なくとも9.9×1011Ω/cm2以下の表面抵抗で帯電防止特性を有する。なお、前記密閉作業が清浄度1以上のクリーンルーム内において行われる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、最も内側の第一の袋にクリーンな袋を用い、第二、第三の袋に帯電防止タイプの袋を使用することによって、製品(ペリクル)を収納する容器ひいては製品に異物が付着することを防止すると共に、袋から容器を取り出すまでの帯電を最小限にとどめ、製品の汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のペリクル収納方法の模式的な実施態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、クリーンルーム内で、ペリクルを収めたペリクル容器を袋に収納するペリクル収納方法に関し、ペリクルを収めたペリクル容器を、内側より、非帯電防止のクリーン袋、帯電防止袋、帯電防止袋の順に3重に収納し、包装するものであり、ペリクル容器を帯電防止剤入りの袋に直接触れさせないことでペリクル容器、ひいては内部に収納したペリクルの汚染を防止するとともに、袋の帯電による静電気障害を最内側のクリーン袋によって防止することを基本とする。
【0009】
以下、本発明について、図を用いてさらに詳細に説明する。
図1において、ペリクル1を内部に収めたペリクル容器2が、クリーン仕様の第一袋3に収められ、その外側に帯電防止機能を有する第二袋4に収められ、さらにその外側に帯電防止機能を有する第三袋5に収められている。
本発明で使用される袋は、寸法に関しては、ペリクルの収納容器(ケース)を収納でき、かつ内部に収納する袋を外側の袋が収納できるサイズであれば、特に制限はない。厚さに関しては、各袋の口を閉じる際に、例えば、熱シールによって閉じる場合、軟化しすぎて破れたり切れたりすることが無いように、ある程度の厚さがあることが好ましい。逆に、融着しにくいほどに厚いと密閉がうまくできないことがあるため、厚さとしては、50〜200μmのものが好ましい。
【0010】
袋の材質としては、特に制限はないが、最も内側のペリクル容器と接触する袋(第一袋)に関しては、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂のみからなるもの、またはこれらを適宜積層したものを使用するのが好ましい。第一袋は、直接製品を収納した容器と触れるものであるから、クリーン仕様のもので、清浄度1000以下のクリーンルーム内で製造された清浄度管理のされたものである必要がある。
【0011】
この第一袋は、第二の袋に収納される。この第二袋については、第一袋と同様に、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂からなり、これらの樹脂に金属薄膜を蒸着したものや帯電防止剤を添加したもの、さらには前記樹脂を積層したものに帯電防止機能を付与したもの等が挙げられる。帯電防止性能としては一般的に用いられる程度の帯電防止性能を有していれば良いが、帯電防止袋として一般的な性能である、少なくとも9.9×1011Ω/cm2以下の表面抵抗であることが望ましい。
【0012】
この第二袋にまで入れられたペリクル容器は、更に第三の袋に収納される。この第三袋は、外部と直接触れるものであるため、クリーンルーム内に搬入する直前に開封されて、外部の汚れをクリーンルーム内に持ち込まないようにするためのものである。
従って、搬入するクリーンルームのクリーン度に応じて、この第三袋は、第四の袋、第五の袋等へと、さらに収納する袋を増やしても良い。
【0013】
第三袋の材質については、第二袋と同様に、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂からなり、これらの樹脂に金属薄膜を蒸着したものや帯電防止剤を添加したもの、さらには前記樹脂を積層したものに帯電防止機能を付与したもの等が挙げられる。
第四袋以降の袋についても同様である。
【実施例】
【0014】
以下に実施例について述べる。なお、以下の実施例、参考例及び比較例で使用したクリーン仕様の袋は、清浄度1000以下のクリーンルーム内で製造洗浄されたポリエチレン製の袋であり、帯電防止袋には、ポリエチレンに帯電防止剤を添加して帯電防止機能(少なくとも9.9×1011Ω/cm2以下の表面抵抗で帯電防止特性)を持たせたポリエチレン製の袋を使用した。
【0015】
[実施例1]
先ず、厚さ70μmのクリーン仕様の第一袋に、ペリクルを収納したペリクル容器を袋の最奥部まで入れ、袋の口を熱シールによって閉じた。次に、厚さ70μmの帯電防止袋である第二袋に、ペリクル容器を収めた第一袋を入れ、袋の口を熱シールで閉じた。
最後に、このものを厚さ100μmの帯電防止袋である第三袋に入れて、袋の口を熱シールで閉じた。これをクッション材を入れたダンボール箱に収納し、密閉して振動試験機に載せ、10Hz、上下方向に1Gの加速度で24時間振動を与えた。
【0016】
次いで、このものをクリーンルーム内に持ち込み、開封したところ、第二袋、第三袋の表面に白く帯電防止剤と思われるものがブリードアウトしていた。このものは第一袋表面にも付着していたが、その中の容器表面は清浄であり、クリーンルーム内の暗室にて、30万ルクスの集光ランプで検査したが付着異物等は認められなかった。
また、収納容器を開いて製品(ペリクル)を上記方法にて検査したが、特に製品表面に付着物は無かった。
【0017】
[参考例1,2]
参考例1は、第一袋、第二袋に厚さ70μmのクリーン仕様の袋を使用し、第三袋には、厚さ100μmの帯電防止袋を使用した。参考例2は、第一袋、第二袋、第三袋のいずれにも厚さ70μmのクリーン仕様の袋を使用した。これ以外は、実施例1と同様にして袋の口を熱シールして24時間の振動試験を行った後、クリーンルーム内で開封し、収納容器を開いて製品(ペリクル)を取出し、クリーンルーム内の暗室にて30万ルクスの集光ランプによって検査したところ、いずれも製品上に異物の増加が認められた。この結果を、実施例1の結果と共にまとめて表1に示した。
【0018】
[参考例3〜5]
第一袋として、厚さ70μmの帯電防止袋を使用し、第二袋、第三袋には、帯電防止袋又はクリーン袋を適宜組み合わせて使用した以外は、実施例1と同じ構成で試験を行った(表1参照)。このものをクリーンルーム内に持ち込み、開封したところ、第一袋、第二袋、第三袋の何れの表面にも白く帯電防止剤と思われるものがブリードアウトしていた。
さらに、容器表面にも白い粉状のものが付着していることが確認された。クリーンルーム内の暗室にて30万ルクスの集光ランプによって検査したが、容器表面に白い粉状の付着物があった。また、収納容器を開いて製品を上記方法にて検査したが、付着異物があり、顕微IR分光分析によってこの付着物が第一袋に含有される帯電防止剤と同じ成分であることが確認された。この結果は、表1にまとめて示した。
【0019】
[比較例1]
従来行われていた帯電防止袋のみを使用した例であり、厚さ100μmの帯電防止袋にペリクルを収納したペリクル容器を入れ、袋の口を熱シールによって閉じた後、実施例1と同様にして、24時間の振動試験後、クリーンルーム内で開封し、収納容器を開いて製品(ペリクル)を取出し、クリーンルーム内の暗室にて30万ルクスの集光ランプによって検査したところ、製品上に異物の増加が認められた。この結果を、上記実施例、参考例の結果と共に表1に示した。
【0020】
【表1】

【符号の説明】
【0021】
1:ペリクル、
2:ペリクル容器、
3:(クリーン仕様の)第一袋、
4:(帯電防止袋からなる)第二袋、
5:(帯電防止袋からなる)第三袋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルを収納した容器をクリーン仕様の第一の袋に入れてその口を閉じ、次いでこれを帯電防止機能を有する第二の袋に入れてその口を閉じ、更に帯電防止機能を有する第三の袋に入れて密閉することを特徴とするペリクル収納方法。
【請求項2】
前記クリーン仕様の袋が、少なくとも清浄度1000以下のクリーンルーム内で製造された清浄度管理のされたものである請求項1に記載のペリクル収納方法。
【請求項3】
前記帯電防止機能を有する袋が、少なくとも9.9×1011Ω/cm2以下の表面抵抗で帯電防止特性を有する請求項1に記載のペリクル収納方法。
【請求項4】
前記密閉作業が清浄度1以上のクリーンルーム内において行われる請求項1に記載のペリクル収納方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−208158(P2012−208158A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71582(P2011−71582)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】