説明

ペリンドプリルおよびその塩の製法

本発明は簡単で、安全で、かつ都合がよくて費用効率が高い、式(II)のペリンドプリルおよびその塩の調製方法を提供する。該方法は、式(I)の化合物(Xは塩素または臭素である)を式(VII)の化合物(Aは二環系の6員環が飽和または不飽和のいずれかであることを意味する)と反応させ、つづいて接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、式(II):
【化1】

で示されるペリンドプリルおよびその塩を製造する新規な方法であって、簡単で、便利であり、費用効果に優れる方法に関する。
【0002】
従来技術
一般にペリンドプリルとして知られている、化学物質、(2S)−2−[(1S)−1−カルベトキシブチルアミノ]−1−オキソプロピル−(2S,3aS,7aS)−ペルヒドロインドール−2−カルボン酸およびその医薬上許容される塩、特にペリンドプリルの三級ブチルアミンとの塩、すなわち、ペリンドプリル・エルブミンは、高血圧の治療に有用な、市販のACE阻害剤である。
【0003】
ビンセント(Vincent)らは、米国特許第4508729号において、(2S)−1−[(S)−アラニル]−2−カルボキシペルヒドロインドールのシアノホウ水素化ナトリウムの存在下にてピルビン酸での還元的アミノ化を含む、2つのジアステレオマーの混合物としてのペリンドプリル・モノアンモニウム塩の調製方法を開示する。(2S)−1−[(S)−アラニル]−2−カルボキシペルヒドロインドールは、順次、(2S)−2−エトキシカルボニルペルヒドロインドールをL−BOC−アラニンと反応させて(2S)−N−[(S)−BOC−アラニル]−2−エトキシカルボニルペルヒドロインドールを得、それを段階的にカルボキシル基およびアミノ保護基を除去して(2S)−1−[(S)−アラニル]−2−カルボキシペルヒドロインドを得ることで調製される。この合成を模式的に以下に示す。
【0004】
【化2】

【0005】
しかしながら、この方法はペリンドプリルをジアステレオマーの混合物として付与するものであり、そのジアステレオマーをどのように分離してペリンドプリルまたはそのtert-ブチルアミン塩、すなわち、分子中の5個すべてのキラル中心に対して所望の(S)配置を有するペリンドプリル・エルブミンを得るかについて、何ら実施可能な開示はない。その上、該方法はt−BOC基としてのアラニン部分のアミノ基の保護を含み、その後で除去するための腐食性トリフルオロ酢酸の使用が不可欠である。
【0006】
ビンセントらは、米国特許第4902817において、N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンを工業的に合成するための立体選択的方法であって、接触水素化条件下でエチル−L−ノルバリネート塩酸塩をピルビン酸と反応させることを含む方法を開示する。こうして得られるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンはペリンドプリルの重要な中間体である。その合成を以下に模式的に示す。
【0007】
【化3】

【0008】
ビンセントらは、米国特許第4914214号において、ペリンドプリル・エルブミンの工業的合成方法であって、(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールのエチルまたはベンジルエステルを、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ルの存在下にあるジシクロヘキシルカルボジイミドなどの触媒の存在下、アルカリ性媒体中、N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーと反応させ、ペリンドプリルエチルまたはベンジルエステルを得ることを含む、方法を開示する。その後、脱保護して、tert−ブチルアミンと塩を形成させてペリンドプリル・エルブミンが得られる。
【0009】
【化4】

【0010】
米国特許第4914214号に開示されているのと同様の化学的方法がまた、ビンセントらの欧州特許第0129461号にて具現化されている。
【0011】
ビンセントらは、欧州特許第0309324号において、ペリンドプリルの重要な中間体である、N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーの別の合成方法であって、L−アラニンp−トルエンスルホン酸ベンジルエステルをアンモニアと反応させて遊離塩基を形成させ、それをα−ブロモ吉草酸エチルと縮合させてN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンとN−[(R)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのラセミ混合物を得る方法を開示する。その(S)異性体はマレイン酸で分割することにより分離され、その後にベンジルエステル基を除去することでさらにペリンドプリルおよびペリンドプリル・エルブミンに操作することのできるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーを得る。
【0012】
【化5】

【0013】
メイゼイ(Meizei)らは、欧州特許第1256590号において、ペリンドプリルの中間体としての(2S,3aS,7aS)−1−(S)−アラニル−オクタヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸の調製法であって、(2S)−2,3−ジヒドロインドール−2−カルボン酸をt−BOC−L−アラニンと反応させてアミド化合物を形成させ、つづいて水素化に付し、さらにペリンドプリルに操作することのできる(2S,3aS,7aS)−1−(S)−アラニル−オクタヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸を得ることを含む方法を開示する。
【0014】
【化6】

【0015】
スービ(Souvie)らは、PCT出願の公開番号WO 01/56353において、ペリンドプリルの重要な中間体であるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーの製法であって、パラジウム炭素を触媒として用いる還元条件下、ピルビン酸ナトリウムをL−ノルバリネートエステルと反応させることを含む方法を開示する。
【0016】
【化7】

【0017】
スービらは、PCT出願の公開番号WO 01/56972において、ペリンドプリルの重要な中間体であるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーを調製する別の方法であって、1−アラニンおよび2−オキソ−ペンタン酸エチルを接触水素化条件下で反応させ、その生成物を3ないし3.5の間のpHで単離し、つづいて結晶化させることを含む方法を開示する。
【0018】
【化8】

【0019】
ラングロイス(Langlois)らは、PCT出願の公開番号WO 01/58868において、ペリンドプリルの重要な中間体であるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーのさらなる製法であって、(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールのベンジルエステルのp−トルエンスルホン酸塩を、0.4ないし0.6モルの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1ないし1.2モルのジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1モルのトリエチルアミンの存在下、77℃でN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの(S,S)ジアステレオマーと反応させ、脱ベンジル化することでペリンドプリルが得られるジペプチド化合物を得ることを含む方法を開示する。
【0020】
【化9】

【0021】
セッラ(Serra)らは、PCT出願の公開番号WO96/33984において、N−[1−(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル/ブチル−S−アラニンのN−スルホキシ無水物およびその無水N−スルホキシ化合物を用いる、ペリンドプリルを含む、数種のACE阻害剤の調製法を開示する。そのN−スルホキシ無水物は、対応するカルボン酸の化合物をN−(クロロスルフィニル)−複素環化合物(その複素環はアルキルイミダゾール、ベンズイミダゾール、テトラゾールまたは他の類似の複素環式化合物である)と反応させることにより順番に調製される。
【0022】
【化10】

【0023】
シド(Cid)らは、欧州特許第1279665号において、N−[1−(S)−エトキシカルボニル−3−ブチル−S−アラニンのN−カルボキシ無水物およびその無水N−カルボキシ化合物を用いるペリンドプリルの製法を開示する。
【0024】
【化11】

【0025】
しかしながら、この方法は、無水N−カルボキシ化合物を調製するのに毒性かつ危険なホスゲンを利用しており、そのため商業的生産には不適当である。
【0026】
スー(Suh)らは、英国特許第2095252において、抗高血圧およびACE阻害活性を有する特定のN−(置換アミノアルカノイル)複素環化合物、ならびに適当なアミン化合物と適当なカルボン酸化合物の反応性誘導体とをアミド形成反応に付すことを含む、該化合物の製法を特許請求する。その中で示される反応性カルボン酸誘導体は、アシルハライド、無水物、混合無水物、低級アルキルエステル、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール等を包含する。
【0027】
【化12】

しかし、当該特許は、その中に言及される抗高血圧性およびACE阻害性化合物として、ペリンドプリルを包含しない。
【0028】
パロモ(Palomo)らは、ドイツ特許第19721290号にて、ペリンドプリルを含む、式(D)(式中、Zはアルキルまたはフェニルであり、Rは商業的価値のあるACE阻害剤に見られるアミノ酸である)で示される数種のACE阻害剤の調製法を記載する。該方法は、まず、式(A)の化合物をシリル化して式(B)の(ビス)シリル誘導体を得、つづいて化合物(B)を塩化チオニルと反応させて式(C)のシリル化された酸塩化物の誘導体を得る工程を含む。ついで、化合物(C)を個々のアミノ酸、R−Hと反応させて式(D)の化合物を得る。
【0029】
【化13】

しかしながら、この方法は、高価なシリル化剤を用いるシリル化工程を含み、その後に脱シリル化工程があるため、長期にわたり、かつ費用効果に優れない。
【0030】
ペリンドプリルの合成に利用することのできるいくつかの既知の方法があるが、その大部分は、有害であるか、費用のかかる、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのカップリング剤、ホスゲンなどの毒性の化学物質を利用するか、または必然的に特有の酸性またはアルカリ性条件を必要とすることは、上記した説明から明らかであろう。これらのことは製造を複雑にし、かかる生成物を製造する方法はあまり費用効果に優れないものとなる。
【0031】
発明の目的
かくして、本発明の主たる目的は、簡潔、安全、選択的であり、費用効果に優れる方法にてペリンドプリルを製造する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高純度のペリンドプリルを調製し、簡潔、安全で費用効果に優れる方法を提供することである。
具体的には、先行技術にて用いられるホスゲンなどの有害な化学物質の使用を回避するか、あるいは費用の面からジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのカップリング剤の使用を回避するペリンドプリルの製法を提供することがさらなる目的である。
【0032】
もう一つ別の目的は、触媒の介入を必要とせず、アルカリ性または酸性反応条件を必要としない、ペリンドプリルの改良された製造方法を提供することである。
さらなる目的は、ペリンドプリルの製造を、分子中の5個すべてのキラル中心にて(S)−配置を有するペリンドプリル(II)を高い立体選択性で付与し、薬局方仕様に合致するように改良することである。
【0033】
発明の開示
本発明の一の態様によれば、
式(II):
【化14】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化15】

で示される化合物を、式(VII):
【化16】

[式中、Aは二環系の6員環が飽和または不飽和のいずれかであることを意味する]
で示される化合物と反応させて式(VIII):
【化17】

[式中、Aは上記と同意義である]
で示される化合物を得、つづいてこうして得られた式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、方法が提供される。
【0034】
本発明のさらなる態様において、式(III):
【化18】

のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンをハロゲン化剤と反応させることを含む、式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0035】
本発明のさらなる態様において、式(III):
【化19】

のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンを製造する新たな方法であって、式(IV):
【化20】

のエチルL−ノルバリネートを、式(V)のラセミ2−ハロプロピオン酸ベンジルエステル[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
および式(V):
の光学的に活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステル
[式中、Xは上記と同じ]
のいずれかと
【化21】

有機溶媒の存在下、塩基の存在下で反応させる工程、および該化合物から式(VI):
【化22】

の化合物を得、接触水素化を介して式(VI)の化合物のベンジル保護基を除去し、式(III):
【化23】

の化合物を得る工程を含む、方法が提供される。
【0036】
発明の詳細な記載
本発明の上記した態様はすべて以下に詳細に説明されている:
1)式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンの調製
一の方法において、キラル炭素原子にて(S)−配置を有する式(IV)のエチル−L−ノルバリネートを、有機溶媒中、有機塩基の存在下、還流条件下にて式(V)のラセミ(±)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステル(Xは塩素または臭素である)と反応させてN−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルをジアステレオマーの混合物として、すなわち、N−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルおよびN−[−1− カルベトキシブチル]−(R)−アラニンのベンジルエステルの混合物として得る。
【0037】
両方の反応体、すなわち、エチル−L−ノルバリネートおよびラセミ(±)2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルが溶解するいずれかの有機溶媒中で反応を行うことができる。かかる溶媒の典型例が、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのニトリル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素などの塩素化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびアセトンなどのケトン溶媒;およびN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒である。ニトリル溶媒が好ましく、そのうちアセトニトリルが最も好ましい溶媒である。
ラセミ(±)2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルは、エチル−L−ノルバリネート1モルに付き、1ないし1.5モルのモル比にて、好ましくはエチル−L−ノルバリネート1モルに付き、1ないし1.2モルのモル比にて使用される。
【0038】
反応は、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン等などの有機塩基の存在下で行われる。とりわけ、トリエチルアミンが好ましい。典型的には、塩基はエチル−L−ノルバリネート1モルに付き1ないし5.0モルのモル比にて、好ましくはエチル−L−ノルバリネートに付き1ないし3.0モルのモル比にて使用される。
反応の最後に、有機溶媒を蒸発させ、残渣を溶媒に再び溶かし、無機酸および無機塩基の水溶液で連続して洗浄した。
【0039】
得られたジアステレオマーの混合物、すなわち、N−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルおよびN−[−1−カルベトキシブチル]−(R)−アラニンのベンジルエステルの混合物を、従来のクロマトグラフィー、分別晶出、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸との塩の形成を介する晶出などの、当該分野にて知られている方法により分離することができる。
【0040】
典型的な分離方法において、N−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンおよびN−[−1−カルベトキシブチル]−(R)−アラニンのベンジルエステルの混合物の有機溶媒中溶液を有機酸で処理して塩形成を容易にする。これに共溶媒を加え、その溶液を放置し、所望の(S)−異性体の酸付加塩を徐々に晶出させ、それを濾過により単離し、光学純度の高いN−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルの酸付加塩を得る。
該塩を当該分野で公知の方法により塩基で中和し、式(VI)のN−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルを高光学純度にて得る。
【0041】
塩形成、その後の2種の異性体の分離に利用することのできる溶媒は、とりわけ、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのニトリル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素などの塩素化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびアセトンなどの脂肪族ケトン溶媒;シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの環状ケトン;酢酸メチルおよび酢酸エチルなどの酢酸アルキル;n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの環状炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素を包含する。
【0042】
また、キラル炭素が(S)−配置の式(IV)のエチル−L−ノルバリネートを、式(V)の光学活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステル(Xが塩素または臭素である)と、有機溶媒中、有機塩基の存在下、還流条件下にて反応させ、N−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルを直接得ることができる。
【0043】
式(V)のラセミ(±)2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルを利用する場合のように、エチル−L−ノルバリネートと、式(V)の光学活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルの反応は、両方の反応体、すなわち、エチル−L−ノルバリネートと光学活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルが溶解しうるいずれの有機溶媒中で実施することもできる。かかる溶媒の典型例として、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのニトリル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素などの塩素化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびアセトンなどの脂肪族ケトン溶媒;シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの環状ケトン;およびN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒が挙げられる。ニトリル溶媒が好ましく、この中でもアセトニトリルが最も好ましい溶媒である。
【0044】
光学活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルをエチル−L−ノルバリネート1モルに付き1ないし1.5モルのモル比にて、好ましくはエチル−L−ノルバリネート1モルに付き1ないし1.2モルのモル比にて使用する。
該反応はジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン等などの有機塩基の存在下でなされる。このうち、トリエチルアミンが好ましい。典型的には、エチル−L−ノルバリネート1モルに付き1ないし5.0モルのモル比にて、好ましくはエチル−L−ノルバリネート1モルに付き1ないし3.0モルのモル比にて塩基を使用する。
【0045】
反応の終わりに、有機溶媒を蒸発させ、残渣を再び溶媒に溶かし、無機酸および無機塩基の水溶液で連続して洗浄し、式(VI)のN−[−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンのベンジルエステルを高光学純度にて得る。
このように上記した2つの方法のいずれかで得られる化合物(VI)は[α20が+47.5゜(C=1;EtOH)である。
ついで、こうして得られた化合物(VI)のベンジル保護基を、VIII属の遷移金属触媒の存在下、当該分野にて公知の接触水素化条件の下で除去して式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンを得る。
【0046】
触媒は、炭素上パラジウム、アルミナ上パラジウム、炭酸バリウム上パラジウム、硫酸バリウム上パラジウム、炭酸カルシウム上パラジウム、キーゼルガー(珪藻土)上パラジウム、シリカ−アルミナ上パラジウム、シリカゲル上パラジウム、炭酸ストロンチウム上パラジウム、酸化スズ上パラジウム、チタン上パラジウム、炭素上水酸化パラジウム、炭素上白金、二酸化白金、アルミナ上白金、炭酸バリウム上白金、硫酸バリウム上白金、炭酸カルシウム上白金、キーゼルガー(珪藻土)上白金、シリカ−アルミナ上白金、シリカゲル上白金、炭酸ストロンチウム上白金、酸化スズ上白金、チタン上白金、炭素上イリジウム、アルミナ上イリジウム粉末、炭素上ロジウム、炭素上水酸化ロジウム、アルミナ上ロジウム、キーゼルガー(珪藻土)上ロジウム、シリカ−アルミナ上ロジウム、シリカゲル上ロジウム、チタン上ロジウム、炭素上ルテニウム、アルミナ上ルテニウム、キーゼルガー(珪藻土)上ルテニウム、シリカ−アルミナ上ルテニウム、シリカゲル上ルテニウム、チタン上ルテニウム、炭素上レニウム、アルミナ上レニウム、キーゼルガー(珪藻土)上レニウム、シリカ−アルミナ上レニウム、シリカゲル上レニウム、チタン上レニウム等から選択される。上記したVIII属の金属触媒を不活性な形態にて、あるいは活性な形態にて用いる。加えて、触媒を用いる適当な形態として、粉末、顆粒、押出物、ペレットおよび球体が挙げられる。
【0047】
化合物(VI)の水素化は有機溶媒または有機溶媒と水の混合液中でなされる。典型的な溶媒として、メタノールおよびエタノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン溶媒;シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの環状ケトン;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、グライムおよびジグライムなどのエーテル溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの環状炭化水素が挙げられる。アルコールが好ましく、アルコールの中でもエタノールが最も好ましい溶媒である。
【0048】
反応の終わりに、触媒を濾過し、溶媒を蒸発させて高光学純度の式(III)の化合物を得る。所望により、次の工程に使用する前に、上記した溶媒またはそれらの混合液から結晶化させることで化合物(III)をさらに精製することができる。
式(IV)のエチル−L−ノルバリネート、式(V)のラセミ(±)2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルおよび式(V)の光学活性な(R)−2−ハロプロピオン酸ベンジルエステルの合成にて用いられる出発材料は、当該分野にて公知の方法により調製することができ、あるいは商業的に獲得することもできる。2−クロロおよび2−ブロモプロピオン酸ベンジルエステルは共に該合成に用いることができる。
【0049】
2)N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンカルボン酸ハライド(I)の調製
ついで、上記の工程にて得られた式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンを、当該分野にて公知のハロゲン化剤と、適当な無水有機溶媒中、不活性ガスの存在または不存在の下で反応させることで、カルボン酸ハライド、すなわち、N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンカルボン酸ハライド(Xが塩素または臭素である)に変換する。
カルボン酸ハライド(I)は、英国特許第2095252号および米国特許第4760162号に記載される一般的合成の操作を用いることによりカルボン酸誘導体(III)を反応させることで形成することができる。
【0050】
カルボン酸ハライドの形成は、カルボン酸誘導体(III)を塩化チオニル、臭化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、五臭化リン、オキシ塩化リン、塩化オキサリル等より選択されるハロゲン化剤と反応させることで行うことができる。
典型的には、カルボン酸誘導体(III)をハロゲン化剤と有機溶媒中で反応させて対応する酸ハライド(I)を得る。例えば、カルボン酸誘導体(III)の有機溶媒中溶液を塩化チオニル、臭化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、五臭化リン、オキシ塩化リンまたは塩化オキサリルと反応させて酸ハライド(I)を形成することができる。
【0051】
かくして、本発明の具体的な実施形態によれば、上記した工程にて得られた式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンを無水有機溶媒に溶かし、五塩化リンと反応させて、その反応混合物を反応が終了するまで−20℃ないし約+30℃の温度で攪拌する。反応の最後に、溶媒を蒸発させて式(I)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンカルボン酸クロリドを得る。
カルボン酸ハライド(I)の形成に用いることのできる溶媒として、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタンなどの脂肪族非極性溶媒、およびベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒が無水であるとは、溶媒中の水含量ができるだけ低いことを意味する。
【0052】
反応は窒素およびアルゴンなどの不活性ガスの存在下で、あるいは不活性ガスの雰囲気の不存在下で行うことができる。いずれの条件も得られるカルボン酸ハライド(I)の收率および純度にて相当な変動をもたらすものではない。
ハロゲン化剤は用いる式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニン1モルに付き1.0ないし5.0のモル比にて使用される。
反応は−20℃から約+30℃の範囲の外界温度にて実施される。好ましい温度は20℃と25℃の間である。
反応は、一般に、使用する溶媒および反応温度に応じて1ないし6時間で終了する。
【0053】
こうして形成された式(I)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンカルボン酸ハライドは溶媒を蒸発させることで単離することができ、あるいは単離することなくその化合物の有機溶媒中溶液を次の工程に用いてペリンドプリルを生成することもできる。該化合物は低温で安定していることが判明し、固体形または不活性ガスの雰囲気下で水分の存在しない液体形のいずれかにて貯蔵することができる。
【0054】
3)式(II)のペリンドプリルの調製
式(I)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンカルボン酸ハライドを式(VII)の二環式化合物のベンジルエステル(ここで、Aは二環系の6員環が飽和または不飽和のいずれかであることを意味する)と反応させる。例えば、Aが6員環が飽和であることを示す場合、化合物(VII)は(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールのベンジルエステルであり、式(VII−A)で示すことができ、Aが6員環が不飽和であることを示す場合、化合物(VII)はインドリン−2(S)−カルボン酸のベンジルエステルであり、式(VII−B)で示すことができる。化合物(I)と化合物(VII−A)または(VII−B)との反応は、有機溶媒中、低温ないし外界温度にて、ペプチド結合の形成を容易にするため塩基の存在下にて行われ、それにより式(VIII)の化合物(ここで、Aは上記と同意義である)が得られる。
【0055】
【化24】



【0056】
式(VII−A)の(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールのベンジルエステルは既知の化合物であり、米国特許第4508749号、米国特許第4879392号、米国特許第4935525号、米国特許第5258525号、欧州特許第0037231号、欧州特許第0084164号、欧州特許第0115345号、欧州特許第0173199号および欧州特許第0132580号に開示されている方法に従って調製することができる。
同様に、インドリン−2(S)−カルボン酸のベンジルエステル(VII−B)も既知の化合物であり、米国特許第4914214号に開示されている方法に従って調製することができる。
化合物(I)と化合物(VII−A)または(VII−B)のいずれかとの反応は、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;ベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素より選択される、有機溶媒、好ましくは無水溶媒中で行うことができる。これらすべての溶媒の中で、塩素化炭化水素が好ましい。
【0057】
反応は、−20℃から+30℃の範囲にある低温ないし外界温度、好ましくは−10℃ないし−15℃の間の温度で行うことができる。反応は使用する温度に応じて30分ないし2時間で終了する。
反応は、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン等などの有機塩基の存在下にて行われる。このうち、トリエチルアミンが好ましい。典型的には、塩基を化合物(VII−A)1モルに付き1ないし5.0モルのモル比で、好ましくは化合物(VII−A)1モルに付き1ないし3.0モルのモル比にて用いる。
式(VII−A)の(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールのベンジルエステルと使用したインドリン−2(S)−カルボン酸のベンジルエステル(VII−B)のモル比は、式(I)の化合物1モルに付き0.85ないし0.90モルの間にあり、好ましくは0.85ないし0.90モルの間にある。
【0058】
式(I)の化合物と式(VII−A)の化合物(ここで、Aは二環系の6員環が飽和であることを示す)とを反応させることで得られる式(VIII)の化合物のベンジルエステルは、有機溶媒を蒸発させることで単離することができ、あるいは好ましくは、単離することなく、その化合物を含有する溶液を接触水素化に用いて、それによりベンジル保護基を切断し、式(II)のペリンドプリルを得ることができる。
同様に、式(I)の化合物を式(VII−B)の化合物(ここで、Aは二環系の6員環が不飽和であることを示す)とを反応させることで得られる式(VIII)の化合物のベンジルエステルは、有機溶媒を蒸発させることで単離することができ、あるいは好ましくは、単離することなく、その化合物を含有する溶液を芳香族環の還元とベンジル化を同時に行う接触水素化に用い、式(II)のペリンドプリルを得ることができる。
【0059】
ついで、こうして得られた化合物(VIII)(ここで、Aは二環系の6員環が飽和であることを示す)のベンジル保護基を、VIII属の遷移金属触媒の存在下、当該分野にて公知の接触水素化条件の下で除去し、式(II)のペリンドプリルを得ることができる。
同様に、こうして得られた化合物(VIII)(ここで、Aは二環系の6員環が不飽和であることを示す)のベンジル保護基を、VIII属の遷移金属触媒の存在下、当該分野にて公知の接触水素化条件の下で同時に除去し、式(II)のペリンドプリルを得ることができる。
【0060】
触媒は、炭素上パラジウム、アルミナ上パラジウム、炭酸バリウム上パラジウム、硫酸バリウム上パラジウム、炭酸カルシウム上パラジウム、キーゼルガー(珪藻土)上パラジウム、シリカ−アルミナ上パラジウム、シリカゲル上パラジウム、炭酸ストロンチウム上パラジウム、酸化スズ上パラジウム、チタン上パラジウム、炭素上水酸化パラジウム、炭素上白金、二酸化白金、アルミナ上白金、炭酸バリウム上白金、硫酸バリウム上白金、炭酸カルシウム上白金、キーゼルガー(珪藻土)上白金、シリカ−アルミナ上白金、シリカゲル上白金、炭酸ストロンチウム上白金、酸化スズ上白金、チタン上白金、炭素上イリジウム、アルミナ上イリジウム粉末、炭素上ロジウム、炭素上水酸化ロジウム、アルミナ上ロジウム、キーゼルガー(珪藻土)上ロジウム、シリカ−アルミナ上ロジウム、シリカゲル上ロジウム、チタン上ロジウム、炭素上ルテニウム、アルミナ上ルテニウム、キーゼルガー(珪藻土)上ルテニウム、シリカ−アルミナ上ルテニウム、シリカゲル上ルテニウム、チタン上ルテニウム、炭素上レニウム、アルミナ上レニウム、キーゼルガー(珪藻土)上レニウム、シリカ−アルミナ上レニウム、シリカゲル上レニウム、チタン上レニウム等から選択される。上記した金属触媒を不活性な形態にて、あるいは活性な形態にて用いる。加えて、触媒を用いる適当な形態として、粉末、顆粒、押出物、ペレットおよび球体が挙げられる。
【0061】
化合物(VIII)(Aは二環系の6員環が飽和または不飽和であることを示す)の水素化は有機溶媒または有機溶媒の混合液あるいは水と混合した有機溶媒または有機溶媒の混合液中でなされる。典型的な溶媒として、メタノールおよびエタノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン溶媒;シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの環状ケトン;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、グライムおよびジグライムなどのエーテル溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタンおよびシクロヘキサンなどの環状炭化水素;およびベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。アルコールおよび芳香族炭化水素が好ましく、アルコールの中でもエタノールが最も好ましい溶媒であり、芳香族炭化水素の中でもトルエンが最も好ましい溶媒である。
【0062】
反応の終わりに、触媒を濾過し、溶媒を蒸発させて薬局方仕様に準拠する高光学純度のペリンドプリル(II)を得る。所望により、生理学的に許容されるエルブミン塩に変換する前に、上記した溶媒またはそれらの混合液から結晶化させることで化合物(II)をさらに精製することができる。
上記した2つの方法のうち、式(I)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニルハライドを式(VII−A)の(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールと縮合させ、つづいて接触水素化させるペリンドプリル(II)の調製が最も好ましい。
【0063】
ペリンドプリル(II)のエルブミン塩の形成は、米国特許第4914214号およびWO01/58868として公開されたPCT出願に開示されているいずれか既知の方法により行うことができる。こうして得られたペリンドプリル・エルブミンをさらに結晶化させてWO01/87835として公開されたPCT出願に開示されるようなα−結晶の形態を得、WO01/87836として公開されたPCT出願に開示されるようなβ−結晶の形態を得、またはWO01/83439として公開されたPCT出願に開示されるようなγ−結晶の形態を得ることができる。
【0064】
本発明に係る式(II)のペリンドプリルの合成を模式的にスキーム−Iに要約する。
【化25】

【0065】
当該方法におけるすべての変形は本発明の実施形態の一部を形成するものであり、以下に記載の実施例に示されるような発明の実施を可能とする記載は本発明の範囲および精神を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されよう。
【0066】
実施例−1
N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニン(III)の調製
工程I:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(R,S)−アラニンベンジルエステルの調製
エチル−L−ノルバリネート(IV、62g、0.427モル)のアセトニトリル(300ml)の溶液に、ラセミ(±)−ベンジル−2−ブロモ−プロピオネート(V、125g、0.514モル)およびトリエチルアミン(178ml、1.282モル)を連続して添加した。該反応混合物を7−8時間還流させた。過剰な溶媒を減圧下で蒸留することで除去して粘性の油を得た。その油をジイソプロピルエーテル(500ml)と水(250ml)の混合液に溶かした。有機相を10%塩酸溶液(250mlx2)中に抽出した。合した酸性抽出液を炭酸ナトリウムの水溶液を添加することでアルカリ性にした。水相を再びジイソプロピルエーテル(200mlx2)で抽出した。合した有機層を減圧下で濃縮し、103gの標記化合物を油として得た。
【0067】
IR:1758&1728cm−1
PMR(CDCl、δ):0.65−1.5(m,13H,2x−CH3,C3H7);2.00(s,1H,−NH−);2.90−3.55(m,2x−CH−);3.85(q,2H,−CH2−);5.2(s,2H,−CH2−);7.3(m,5H,ArH)。
【0068】
工程II:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニンベンジルエステルのマレイン酸の調製
工程Iにて得られた油(100g、0.325モル)のアセトン(250ml)中溶液に、マレイン酸(22.67g、0.195モル)を添加した。該溶液を攪拌し、それにシクロヘキサン(600ml)を添加した。反応混合物を還流下で2.5−2時間加熱し、ついで22−25℃まで徐々に冷却し、ついでさらに0−5℃に冷却した。晶出した固体を濾過により集め、減圧下、45−50℃で乾燥させて42gのN−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニンベンジルエステルのマレイン酸塩を得た。アセトンおよびシクロヘキサンの混合液から再結晶に付し、所望の光学純度を有する38gの生成物を得た。
【0069】
[α20]:18.8°(C=1/EtOH)
融点:100℃
PMR(CDCl、δ):0.95(t,3H,−CH3);1.25(t,3H,−CH3);1.5(bq,2H,−CH2−);1.6(d,3H,−CH3);1.8(q,2H,−CH2−);3.6(t,1H,−CH−);3.8(q,1H,−CH−);4.25(q,2H,−CH2−);5.25(s,1H,−CH2−);6.25(s,2H,−CH−);7.30(s,5H,ArH);9.00(bs,3H,−NH−,−COOH)。
【0070】
工程III:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニンベンジルエステル(VI)の調製
工程IIにて得られたマレイン酸塩(23g)の水(100ml)およびジクロロメタン(200ml)中懸濁液に、反応混合物のpHが8.5−9.0の範囲にて一定であり続けるまでアンモニア水溶液(25%)を添加した。有機層を分離し、減圧下で濃縮し、標記化合物(16g)を油として得た。
[α20]:47.5°(C=1/EtOH)
PMR(CDCl,δ):0.95(t,3H,−CH);1.25(t,3H,−CH); 1.5(bq,2H,−CH−);1.6(d,3H,−CH);1.8(q,2H,−CH−);3.6(t,1H,−CH−);3.8(q,1H,−CH−);4.25(q,2H,−CH−);5.25(s,1H,−CH−);7.30(s,5H,ArH);9.00(bs,H,−NH−)。
【0071】
工程IV:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニン(III)の調製
工程IIIにて得られた油(14.5g)の無水エタノール(150ml)中溶液を、パラジウム処理のチャコール(0.8g)の存在下、40−45psi圧の下で1.5−2時間水素化した。ついで該反応混合物を減圧下で濃縮して固体を得た。これを減圧下40−45℃で乾燥させて8.7gの標記化合物を得た。
[α20]:4.6°(C=1/EtOH)
融点:148℃
PMR(DMSO−d,δ):0.9(t,3H,−CH);1.15(t,6H,2x−CH);1.2−1.4(m,2H,−CH−);1.45−1.6(m,2H,−CH−);3.0−3.3(m,2H,2x−CH−);4.0−4.2(q,2H,−CH−)。
【0072】
実施例−2
N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニン(III)の調製
工程I:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニンベンジルエステルの調製
エチル−L−ノルバリネート(IV、62g、0.427モル)のアセトニトリル(300ml)中溶液に、ベンジル−(R)−2−ブロモ−プロピオネート(V、20g、0.0822モル)およびトリエチルアミン(28ml、0.2016モル)を連続して添加した。反応混合物を7−8時間還流した。減圧下で蒸留することで過剰な溶媒を除去して粘性の油を得た。その油をジイソプロピルエーテル(80ml)と水(40ml)の混合物に溶かした。有機相を10%塩酸溶液(40mlx2)に抽出した。炭酸ナトリウム水溶液を添加することで合した酸性抽出液をアルカリ性にした。その水相を再びジイソプロピルエーテル(200mlx2)で抽出した。合した有機層を減圧下で濃縮し、103gの標記化合物を油として得た。
IR:1758&1728cm−1
PMR(CDCl,δ):0.65−1.5(m,13H,2x−CH,C);2.00(s,1H,−NH−);2.90−3.55(m,2x−CH−);3.85(q,2H,−CH−);5.2(s,2H,−CH−);7.3(m,5H,ArH)。
【0073】
工程II:N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニン(III)の調製
N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニンベンジルエステル(14.5g、工程Iに得られたもの)のエタノール(150ml)中溶液を、10%パラジウム処理チャコール(0.8g)の存在下、40−45psi水素圧の下で1.5ないし2時間水素化した。反応混合物を減圧下で濃縮して油を得た。アセトニトリルおよびエタノール(1:3)の混合液から結晶化させて6.1gの標記化合物を得た。
[α20]:4.6°(C=1/EtOH)
融点:148℃
PMR(DMSO−d,δ):0.9(t,3H,−CH);1.15(t,6H,2x−CH);1.2−1.4(m,2H,−CH−);1.45−1.6(m,2H,−CH−);3.0−3.3(m,2H,2x−CH−);4.0−4.2(q,2H,−CH−)。
【0074】
実施例−3
N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニルクロリド(I)の調製
N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニン(III、1.5g、0.0069モル)のn−ヘキサン(10ml)中スラリーに、25−30℃にて攪拌しながら乾燥塩化水素気体をパージした。これに細かく粉砕した五塩化リン(1.8g、0.0086モル)を、各々、10分の間隔を置いて4つのロットにて添加した。完全に添加した後、反応混合物を1.5時間攪拌した。沈殿した固体を濾過し、ヘキサンで洗浄し、1.88gの標記化合物(I)を得た。
IR νcm−1:1741および1791
PMR(DMSO−d,δ):0.90(3H,t,−CH);1.15(3H,t,−CH);1.2−1.5(5H,m,−CH,−CH);1.5−1.9(2H,m,−CH);3.8−4.3(4H,m,2x−CH,−CH);9.6(1H,bs,−NH)。
【0075】
実施例−4
ペリンドプリル(II)の調製
工程I:ペリンドプリルベンジルエステル(VIII)の調製
(2S,3aS,7aS)−オクタヒドロインドール−2−カルボン酸ベンジルエステル(VII−A、1.6g、0.0062モル)およびトリエチルアミン(2.9ml、0.0208モル)のジクロロメタン(10ml)中溶液に、N−[1−(S)−エトキシカルボニル−1−ブチル]−(S)−アラニルクロリド(I、1.88g、0.0069モル)のジクロロメタン(10ml)中スラリーを−10ないし15℃にて25−30分にわたって添加した。
添加終了後、反応混合物を徐々に25−30℃まで昇温させた。反応混合物を水(20ml)でクエンチさせた。有機層を分離し、5%HCl(10mlx2回)、10%炭酸ナトリウム水溶液(10mlx2回)および水(10mlx2回)で連続して洗浄した。有機層を減圧下40−45℃で濃縮し、2.3gのベンジルエステル(VIII)を得た。
【0076】
工程II:ペリンドプリル(II)の調製
工程Iにて得られたペリンドプリルベンジルエステル(1.4g)を無水エタノール(15ml)に溶かした。該溶液に10%Pd−C(5%w/w)を添加し、該混合物を反応が終了するまで3時間20−22℃にて水素化した。触媒を濾過し、濾液を減圧下45℃にて濃縮し、1.3gのペリンドプリル(II)を得た。
【0077】
上記した本発明に係るペリンドプリルの合成方法は、従来の方法に比べて、以下の利点を含め、種々の利点を提供する:
a)N−カルボキシ無水物であるN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンと(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドール(VII−A)の反応(使用されるカルボキシ無水物が有害かつ毒性のホスゲンなどの化学物質を用いて調製される)と異なり、本発明の方法にて使用される酸ハライドは有害な化合物を用いることなく容易に調製することができ、一度形成されれば、そのものをペリンドプリルを得るための二環式化合物との反応に用いることができる。
b)N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンおよび(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドール(VII−A)の反応と異なり、本発明の方法にて使用される酸ハライド(I)との反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの毒性、有害かつ費用のかかるカップリング剤を用いることなく実施することができる。
【0078】
c)N−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンと(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドール(VII−A)の反応と異なり、本発明の方法にて使用される酸ハライド(I)との反応は、触媒の介在を必要とせず、アルカリ性または酸性のいずれの反応条件をも必要としない。
d)本発明の方法にてなされる縮合反応は高い立体選択性を有し、分子中の5個すべてのキラル中心が(S)−配置であり、薬局方の仕様に適合するペリンドプリル(II)を付与する。
e)本発明の方法は簡単で費用効率が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化2】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、式(VII):
【化3】

[式中、Aは二環系の6員環が飽和または不飽和のいずれかであることを意味する]
で示される化合物と反応させて式(VIII):
【化4】

[式中、Aは上記と同意義である]
で示される化合物を得、つづいて得られた式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、方法。
【請求項2】
式(II):
【化5】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化6】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、式(VII−A):
【化7】

の(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールと、有機溶媒中、−20℃と+30℃の間、塩基の存在下にて反応させて、式(VIII):
【化8】

の化合物を得、その式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(II):
【化9】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化10】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、インドリン−2(S)−カルボン酸のベンジルエステル、
【化11】

と、有機溶媒中、−20℃と+30℃の間、塩基の存在下にて反応させて、式(VIII):
【化12】

の化合物を得、その式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒が、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンから選択される無水溶媒を含むところの、請求項1記載の方法。
【請求項5】
温度が−10℃ないし−15℃の間であるところの、請求項1記載の方法。
【請求項6】
式(VII)の化合物のモル比が式(I)の化合物1モル当たり0.85と0.90モルの間にあるところの、請求項1記載の方法。
【請求項7】
塩基がジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチルモルホリンから選択されるところの、請求項1記載の方法。
【請求項8】
塩基のモル比が化合物(VII)1モル当たり1.0と5.0モルの間にあり、好ましくはモル比が化合物(VII)1モル当たり1と3.0モルの間にあるところの、請求項1記載の方法。
【請求項9】
化合物(VIII)を接触水素化に付して化合物(II)を得る工程をVIII族の遷移金属触媒の存在下で行うところの、請求項1記載の方法。
【請求項10】
接触水素化に付す前の化合物(VIII)を有機溶媒を蒸発させることで単離するところの、請求項1記載の方法。
【請求項11】
接触水素化の工程において、ベンジル保護基を切断し、式(II):
【化13】

のペリンドプリルを得るところの、請求項2記載の方法。
【請求項12】
芳香族環の還元およびベンジル化を同時に行い、式IIのペリンドプリルを得るための接触水素化のために、化合物(VIII)を有機溶媒と一緒に用いるところの、請求項3記載の方法。
【請求項13】
式(III)のN−[(S)−1−カルベトキシブチル]−(S)−アラニンをハロゲン化剤と無水有機溶媒中で反応させることを含む、式(I)の化合物の調製方法。
【請求項14】
ハロゲン化剤が、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、五臭化リン、オキシ塩化リン、塩化オキサリルから選択されるところの、請求項13記載の方法。
【請求項15】
使用される有機溶媒が、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタンなどの脂肪族非極性溶媒、およびベンゼンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素から選択されるところの、請求項13記載の方法。
【請求項16】
反応が−20℃ないし30℃、好ましくは20ないし25℃の温度範囲にて行われるところの、請求項13記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化2】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、式(VII):
【化3】

[式中、Aは二環系の6員環が飽和または不飽和のいずれかであることを意味する]
で示される化合物と、選択的なジクロロメタン、ジクロロエタンの溶媒中、−10℃ないし−15℃で反応させて式(VIII):
【化4】

[式中、Aは上記と同意義である]
で示される化合物を得、つづいて得られた式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、方法。
【請求項2】
式(II):
【化5】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化6】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、式(VII−A):
【化7】

の(2S,3aS,7aS)−2−カルボキシペルヒドロインドールと、選択的なジクロロメタン、ジクロロエタンの溶媒中、−10℃ないし−15℃で、塩基の存在下にて反応させて、式(VIII):
【化8】

の化合物を得、その式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(II):
【化9】

のペリンドプリルまたはその誘導体および/またはその医薬上許容される塩の製法であって、式(I):
【化10】

[式中、Xは塩素または臭素を意味する]
で示される化合物を、インドリン−2(S)−カルボン酸のベンジルエステル、
【化11】

と、選択的なジクロロメタン、ジクロロエタンの溶媒中、−10℃ないし−15℃で、塩基の存在下にて反応させて、式(VIII):
【化12】

の化合物を得、その式(VIII)の化合物を接触水素化に付して式(II)のペリンドプリルを得ることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
式(VII)の化合物のモル比が式(I)の化合物1モル当たり0.85と0.90モルの間にあるところの、請求項1記載の方法。
【請求項5】
塩基がジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチルモルホリンから選択されるところの、請求項1記載の方法。
【請求項6】
塩基のモル比が化合物(VII)1モル当たり1.0と5.0モルの間にあり、好ましくはモル比が化合物(VII)1モル当たり1と3.0モルの間にあるところの、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物(VIII)を接触水素化に付して化合物(II)を得る工程をVIII族の遷移金属触媒の存在下で行うところの、請求項1記載の方法。
【請求項8】
接触水素化に付す前の化合物(VIII)を有機溶媒を蒸発させることで単離するところの、請求項1記載の方法。
【請求項9】
接触水素化の工程において、ベンジル保護基を切断し、式(II):
【化13】

のペリンドプリルを得るところの、請求項2記載の方法。
【請求項10】
芳香族環の還元およびベンジル化を同時に行い、式IIのペリンドプリルを得るための接触水素化のために、化合物(VIII)を有機溶媒と一緒に用いるところの、請求項3記載の方法。

【公表番号】特表2006−519168(P2006−519168A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568714(P2004−568714)
【出願日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000042
【国際公開番号】WO2004/075889
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(502425916)ルピン・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LUPIN LIMITED
【Fターム(参考)】