説明

ペルフルオロアルキル鎖を有する液晶化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】
高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、小さな粘度、および熱、光などに対する高い安定性を有する新規液晶化合物およびこの化合物を含有する液晶組成物を提供する。
【解決手段】
化合物(1)とする。また、この化合物(1)を含有する液晶組成物とする。


例えば、Rは炭素数4〜10のアルキルまたは−(CH−CH=CHであり、Rは炭素数2〜10のアルキルであり、nは8であり、RとRは同じ炭素数の直鎖アルキルになることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な液晶化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。詳しくは環構造を持たないにも関わらず液晶相を有し、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、小さな粘度を有する液晶化合物、およびこの化合物を含有する液晶組成物である。この組成物を使用した液晶表示素子は、幅広い温度範囲において使用可能で、低電圧駆動が可能であり、大きなコントラスト比、および急峻な電気光学特性を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物を用いた液晶表示素子は、時計、電卓、パソコンなどのディスプレイに広く利用されている。液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in−plane switching)、VA(vertical alignment)、PSA(polymer sustained alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0003】
液晶表示素子は、適切な物性を有する液晶組成物を含有する。素子の特性を向上させるには、組成物が適切な物性を有することが好ましい。組成物の成分である液晶化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。
(1)化学的に安定であること、および物理的に安定であること、
(2)高い透明点(液晶相−等方相の相転移温度)を有すること、
(3)液晶相(ネマチック相、スメクチック相等)の下限温度が低いこと、
(4)他の化合物との相溶性に優れること、
(5)粘度が小さいこと、
である。
【0004】
(1)のように化学的、物理的に安定な液晶化合物を含む組成物を液晶表示素子に用いると、電圧保持率を高くすることができる。
【0005】
(2)および(3)のように、高い透明点、または液晶相の低い下限温度を有する化合物を含む組成物はネマチック相の温度範囲が広いので、素子は幅広い温度範囲で使用することができる。
【0006】
液晶化合物は、単一の化合物では発揮することが困難な特性を発現させるために、他の多くの液晶化合物と混合して調製した液晶組成物として用いることが一般的である。したがって、素子に用いる液晶化合物は、(4)のように、他の化合物との相溶性が良好であることが好ましい。
【0007】
また、素子の応答速度は液晶組成物の粘度と相関している。よって高速で応答可能な素子を製造する為には、粘度が小さい組成物を用いなければならない。組成物の粘度を下げる為には、透明点が高く、粘度が小さい液晶化合物が減粘剤として用いられる。したがって(5)のように粘度が小さい液晶化合物が求められる。
【0008】
一般的に、液晶化合物の透明点と粘度は、その化合物を構成する環構造の数と相関している。すなわち、環数が多い程、透明点が高くなるが、粘度は大きくなる。逆に環数が少ない程、透明点は低くなるが、粘度は小さくなる。よって、環構造を持たないにも関わらず液晶相を有し、その透明点が高い化合物の開発が求められている。
【0009】
これまでに、環構造を持たないにも関わらず液晶相を有する化合物として、ペルフルオロアルキル鎖を有する化合物が見出されている。例えば、非特許文献1〜9にはペルフルオロアルキル鎖とアルキル鎖が連結した直鎖状の化合物(S−1)、および(S−2)が示されている。しかし、これらの化合物は、他の化合物との相溶性が非常に低く、また組成物に加えた際の上限温度が十分に高くないので、液晶表示素子用の液晶組成物の構成成分として用いられた例は無い。
【0010】
また、特許文献1および2にはペルフルオロアルキル鎖の両末端にアルキル鎖、またはアルケニル鎖を有する直鎖状の化合物(S−3)〜(S−5)が開示されている。しかし、これらの化合物は液晶相を持たず、組成物に加えた際の上限温度が十分に高くないので、液晶表示素子として使用できる温度範囲が十分に広くない。
【0011】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第4034123号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10018086号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Macromolecules, 1984, 17, 2786
【非特許文献2】Mol. Cryst. Liq. Cryst. Lett. 1985, 2(3-4), 111
【非特許文献3】Macromolecules, 1986, 19, 1135
【非特許文献4】Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1989, 168, 63
【非特許文献5】Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1996, 281, 123
【非特許文献6】Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1997, 302, 369
【非特許文献7】J. Fluor. Chem., 2005, 126, 79
【非特許文献8】Macromolecules, 2006, 39, 5836
【非特許文献9】Mol. Cryst. Liq. Cryst., 2006, 460, 63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の第一の目的は、環構造を持たないにも関わらず液晶相を有し、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、小さな粘度、および熱、光などに対する高い安定性を有する液晶化合物を提供することである。第二の目的は、この化合物を含有し、液晶相の広い温度範囲、大きな誘電率異方性、大きな屈折率異方性、低いしきい値電圧、小さな粘度を有する液晶組成物を提供することである。第三の目的は、この組成物を含有し、幅広い温度範囲において使用可能で、低電圧駆動が可能であり、大きなコントラスト比、および急峻な電気光学特性を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下のような液晶化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子を提供する。また、以下に、式(1)で表わされる化合物における末端鎖、およびペルフルオロアルキル鎖に関して好ましい例も述べる。
【0016】
[1] 式(1)で表される化合物。


式(1)において、Rは炭素数4〜15のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rは炭素数2〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、nは8、9、10、11、または12であり、RおよびRは同じ炭素数の直鎖アルキルになることはない。
【0017】
[2] 式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである項[1]に記載の化合物。
【0018】
[3] 式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである項[1]に記載の化合物。
【0019】
[4] 式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、nが8、9、または10であり、R≠Rである項[1]に記載の化合物。
【0020】
[5] 項[1]に記載の式(1)において、nが8である項[4]に記載の化合物。
【0021】
[6] 項[1]に記載の式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキルであり、Rが炭素数2〜7のアルキルである項[5]に記載の化合物。
【0022】
[7] 項[1]に記載の式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキルであり、Rが−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである項[5]に記載の化合物。
【0023】
[8] 項[1]に記載の式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである項[5]に記載の化合物。
【0024】
[9] 項[1]〜[8]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【0025】
[10] 式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。


式(2)〜(4)において、Rは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−CF=CF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【0026】
[11] 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。


式(5)において、Rは、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは、0、1または2であり、sは0または1であり、rとsの和は、0、1、2または3である。
【0027】
[12] 式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。


式(6)〜(11)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環C、環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−3,6−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;Z、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;LおよびLは独立して、フッ素または塩素であり;t、u、v、w、x、およびyは独立して0または1であり、u、v、w、およびxの和は、1または2である。
【0028】
[13] 式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[9]に記載の液晶組成物。


式(12)〜(14)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【0029】
[14] 項[11]に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[10]に記載の液晶組成物。
【0030】
[15] 項[13]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[10]に記載の液晶組成物。
【0031】
[16] 項[13]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[11]に記載の液晶組成物。
【0032】
[17] 項[13]に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[12]に記載の液晶組成物。
【0033】
[18] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する項[9]〜[17]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
[19] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する項[9]〜[18]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
[20] 項[9]〜[19]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0036】
本発明における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(2)から式(14)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどに対応する。環A、環B、Rなど複数の同じ記号を同じ式または異なった式に記載したが、これらのうちの任意の2つは同じでもよいし、異なってもよい。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
「Aおよび/またはB」という表現は、「AおよびB」という選択と、「AまたはB」という選択を任意に行なうことができることを意味する。
【0037】
「置き換えられてもよく(い)」の「少なくとも1つの」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示す。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。以下に本発明をさらに説明する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の液晶化合物は、環構造を持たないにも関わらず液晶相を有し、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、小さな粘度、および熱、光などに対する高い安定性を有する。本発明の液晶組成物は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、大きな誘電率異方性、大きな屈折率異方性、低いしきい値電圧、小さな粘度を有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含有し、使用できる広い温度範囲、低い駆動電圧、小さな消費電力、大きなコントラスト比、および急峻な電気光学特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.本発明の化合物
本発明の第1の態様は、式(1)で表される化合物に関する。

【0040】
式(1)において、Rは炭素数4〜15のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rは炭素数2〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルである。アルキルおよびアルケニルは直鎖でも分岐でもよいが、直鎖の方が好ましい。分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0041】
アルキルの具体的な例は、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、−C1531、−CH(CH、−CH(CH)C、−CH(CH)C、−CH(CH)C13、−CHCH(CH、−CHCH(CH)C、−CHCH(CH)C11、−(CH−CH(CH)C、−(CH−CH(CH)C、−(CH−CH(CH、−(CH−CH(CH)C、および−(CHCH(CHである。
【0042】
アルケニルの具体的な例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH(CH)CHCH=CH、−CH(CH)CHCH=CHCH、−CHCH(CH)CH=CH、および−(CH−CH(CH)CH=CHである。
【0043】
好ましいRの例は、炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、および−(CH−CH=CHCHである。また、より好ましいRの例は、炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、および−(CH−CH=CHCHである。
【0044】
好ましいRの例は、炭素数2〜10のアルキル、および炭素数2〜10のアルケニルである。また、より好ましいRの例は、炭素数2〜10のアルキル、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、および−(CH−CH=CHCHである。
【0045】
とRは、同時に同じ炭素数の直鎖アルキルになることはない。
【0046】
式(1)において、nは8、9、10、11、または12である。好ましいnは8、9、または10である。より好ましいnは8である。
【0047】
〔本発明の化合物の性質およびその調整方法〕
化合物(1)をさらに詳細に説明する。化合物(1)はペルフルオロアルキル鎖を有する直鎖状の化合物である。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に安定であり、素子が通常使用される条件下で安定な組成物を提供する事ができる。この化合物は他の化合物との相溶性が良好であり、この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は環構造を持たない化合物であるにも関わらず、液晶相を有し、透明点が高いため、液晶相の上限温度が高い組成物を提供することができる。さらに、この化合物は粘度が小さいため、組成物の減粘剤として使用することができ、高速で応答可能な素子を製造するのに適している。
【0048】
化合物(1)のRおよびRの種類とその組み合わせ、nの数を適切に選択することによって、透明点、他の化合物との相溶性、および粘性などの物性を任意に調整することが可能である。この種類や組み合わせが化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0049】
およびRが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。RまたはRが分岐鎖であるときは他の化合物との相溶性が良好である。RまたはRが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。RおよびRが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。
【0050】
がアルキルである時は、その炭素数が伸びるに従い、他の化合物との相溶性が向上し、透明点も向上する。Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHである時は、他の化合物との相溶性が良好で粘度が小さい。Rが−(CH−CH=CHCH、または−(CH−CH=CHCHである時は、透明点が高く、組成物にした時の液晶相の上限温度が高い。
【0051】
がアルキルである時は、その炭素数が伸びるに従い、他の化合物との相溶性が向上し、透明点も向上する。Rが−CH=CHである時は特に粘度が小さい。Rが−(CH−CH=CHである時は、他の化合物との相溶性が良好で粘度が小さい。Rが−CHCH=CHCH、または−(CH−CH=CHCHである時は、透明点が高く、組成物にした時の液晶相の上限温度が高い。
【0052】
およびRが共にアルキルである時は、化合物の安定性が特に高い。ただしRとRは、同時に同じ炭素数の直鎖アルキルになることはない。RがアルキルでありRがアルケニルである時は、他の化合物との相溶性が良好で、粘度が小さい。Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rがアルケニルである時は、透明点が高く、組成物にした時の液晶相の上限温度が高い。
【0053】
nが大きくなるに従い、透明点が向上し、組成物にした時の上限温度が向上する。nが8、9、または10の時は、他の化合物との相溶性が良好であり、粘度が小さい。nが11、または12の時は透明点が高く、液晶相の温度範囲が広い。
【0054】
以上のように、RおよびRの種類とその組み合わせ、nの数を適切に選択することによって目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0055】
〔化合物(1)の合成〕
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0056】
〔化合物(1)を合成する方法〕
式(1)で表される化合物を合成する方法は複数あるが、ここにその例を示す。式(1)で表される化合物のうち、R、およびRが共にアルキルである場合には、以下の方法で合成できる。ジヨードペルフルオロアルカン(15)とアルケン(16)を、亜ジチアン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどのラジカル発生条件下で反応させ、モノアルキル付加体(17)を得る。続いてアルケン(18)をラジカル発生条件下で反応させ、ジアルキル付加体(19)を得る。次に水素化アルミニウムリチウムなどを用いて還元する事により、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数2〜13のアルキルであり、Rは炭素数1〜13のアルキル、または水素であり、Rが直鎖アルキルである場合には、R≠Rであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0057】
式(1)において、Rがアルキル、Rがプロピルである場合には以下の方法でも合成できる。モノアルキル付加体(17)と臭化アリル(20)をラジカル発生条件下で反応させ、アリル付加体(21)を得る。続いてラネーニッケルなどを用いて還元する事により、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数2〜13のアルキルであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0058】
式(1)において、Rがアルキル、Rが1−アルケニルである場合には以下の方法で合成できる。クロロヨードペルフルオロアルカン(22)とアルケン(18)をラジカル発生条件下で反応させ、モノアルキル付加体(23)を得る。続いて水酸化カリウムなどの塩基で処理してアルケニル誘導体(24)を得た後、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中、亜ジチアン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの存在下、アルケン(16)を反応させることにより化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数2〜13のアルキルであり、Rは炭素数1〜13のアルキル、または水素であり、nは8、9、10、11、または12である。
【0059】
式(1)において、Rがアルキル、Rが−CHCH=CH、または−CHCH=CHCHである場合には以下の方法で合成できる。モノアルキル付加体(17)に対し、臭化アルケニル(25)をラジカル発生条件下で反応させ、アルケニル付加体(26)を得る。続いて水素化アルミニウムリチウムなどを用いて還元する事により、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数2〜13のアルキルであり、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0060】
式(1)において、Rがアルキル、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである場合には以下の方法で合成できる。モノアルキル付加体(17)に対し、アリルアルコール(27)をラジカル発生条件下で反応させ、続いて水素化アルミニウムリチウムなどで還元することによりアルカノール誘導体(29)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、アルキルアルデヒド誘導体(30)を得た後、対応するホスホニウム塩(31)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数2〜13のアルキルであり、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0061】
式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが1−アルケニルである場合には以下の方法で合成できる。アルケニル誘導体(24)に対して、DMSO溶媒中、亜ジチアン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの存在下、アリルアルコール(27)を反応させることにより、アルカノール誘導体(32)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、アルキルアルデヒド誘導体(33)を得た後、対応するホスホニウム塩(31)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。



これらの式において、Rは炭素数1〜13のアルキル、または水素であり、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0062】
式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、RがCH=CHCH−、またはCHCH=CHCH−である場合には以下の方法で合成できる。ジヨードペルフルオロアルカン(15)と、臭化アルケニル(25)をラジカル発生条件下で反応させ、モノアルケニル付加体(34)を得る。続いて、アリルアルコール(27)をラジカル発生条件下で反応させた後、水素化アルミニウムリチウムなどを用いて還元する事により、アルカノール誘導体(36)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、アルキルアルデヒド誘導体(37)を得た後、対応するホスホニウム塩(31)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0063】
式(1)において、Rが−(CH−CH=CHCHであり、Rが−(CH−CH=CHである場合には以下の方法で合成できる。ジヨードペルフルオロアルカン(15)と、アリルアルコール(27)をラジカル発生条件下で反応させ、続いて水素化アルミニウムリチウムなどを用いて還元する事により、ジアルカノール誘導体(39)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、ジアルキルアルデヒド誘導体(40)を得た後、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(41)を用いたWittig反応を行うことにより、アルキルアルデヒド誘導体(42)を得る。次に臭化エチルトリフェニルホスホニウム(43)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、nは8、9、10、11、または12である。
【0064】
式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが1−アルケニルである場合には以下の方法で合成できる。アルケニル誘導体(24)に対して、DMSO溶媒中、亜ジチアン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの存在下、4−ペンテン−1−オール(44)を反応させることにより、アルカノール誘導体(45)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、アルキルアルデヒド誘導体(46)を得た後、対応するホスホニウム塩(31)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。


これらの式において、Rは炭素数1〜13のアルキル、または水素であり、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0065】
式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、RがCH=CHCH−、またはCHCH=CHCH−である場合には以下の方法で合成できる。ジヨードペルフルオロアルカン(15)と、臭化アルケニル(25)をラジカル発生条件下で反応させ、モノアルケニル付加体(47)を得る。続いて、4−ペンテン−1−オール(44)をラジカル発生条件下で反応させた後、水素化アルミニウムリチウムなどを用いて還元する事により、アルカノール誘導体(49)を得る。続いてデスマーチンペルヨージナンなどを用いて酸化し、アルキルアルデヒド誘導体(50)を得た後、対応するホスホニウム塩(31)を用いたWittig反応を行うことによって、化合物(1)へと導く事ができる。



これらの式において、Rは水素または−CHであり、nは8、9、10、11、または12である。
【0066】
〔合成原料である化合物(15)、化合物(22)の合成〕
化合物(1)の合成原料であるジヨードペルフルオロアルカン(15)、クロロヨードペルフルオロアルカン(22)は、それぞれの式において、n=8である1,8−ジヨードペルフルオロオクタン(15−1)、および1−クロロ−8−ヨードペルフルオロオクタン(22−1)がそれぞれ市販されている。またその他の鎖長の化合物は以下の方法で合成できる。
【0067】
式(15)においてn=10またはn=12である化合物は次の方法で合成できる。化合物(15−1)とテトラフルオロエチレン(51)とを、高温加圧条件で反応させ、分留する事によって、1,10−ジヨードペルフルオロデカン(15−2)、1,12−ジヨードペルフルオロドデカン(15−3)を得る事ができる。また化合物(22−1)を用い、同様の操作を行うことによって、1−クロロ−10−ヨードペルフルオロデカン(22−2)、1−クロロ−12−ヨードペルフルオロドデカン(22−3)を得る事ができる。

【0068】
式(15)において、n=9またはn=11である化合物は、市販されている1,3−ジヨードペルフルオロプロパン(52)とテトラフルオロエチレン(51)とを、高温加圧条件で反応させる事により、1,9−ジヨードペルフルオロノナン(15−4)、1,11−ジヨードペルフルオロドウンデカン(15−5)を得る事ができる。

【0069】
式(22)においてn=9またはn=11である化合物は、市販されているペルフルオロシクロプロパン(53)と一塩化ヨウ素を高温で反応させ、1−クロロ−3−ヨードペルフルオロプロパン(54)を得た後、テトラフルオロエチレン(51)と、高温加圧条件で反応させる事により、1−クロロ−9−ヨードペルフルオロノナン(22−4)、1−クロロ−11−ヨードペルフルウンデカン(22−5)を得る事ができる。

【0070】
2.本発明の組成物
以下、本発明の液晶組成物について説明をする。この液晶組成物の成分は、少なくとも一種の化合物(1)を含むが、化合物(1)を2種以上含んでいてもよい。また本発明の液晶組成物を調製するときには、例えば、化合物(1)の粘性を考慮して成分を選択することもできる。成分を選択した液晶組成物は、粘度が低く、大きな誘電率異方性を有し、適切な弾性定数K33を有し、しきい値電圧が低く、さらに、ネマチック相の上限温度(ネマチック相−等方相の相転移温度)が高く、ネマチック相の下限温度が低い。
【0071】
〔液晶組成物(1)〕
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で示される化合物を成分Aとして含む。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、C、D、およびEから選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物が提供できる。
【0072】
成分Aに加える成分として、式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、および/または式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、および/または式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい。さらに式(12)、(13)および(14)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性および粘度等を調整することができる。
【0073】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0074】
上記成分Bのうち、式(2)で示される化合物の好適例として式(2−1)〜(2−16)を挙げることができ、式(3)で示される化合物の好適例として式(3−1)〜(3−112)を挙げることができ、式(4)で示される化合物の好適例として式(4−1)〜(4−54)を挙げることができる
【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】


これらの式において、RおよびXは前記と同じ定義である。
【0083】
これらの式(2)、(3)、および(4)で示される化合物すなわち成分Bは、誘電率異方性が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用およびPSA用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して1〜99重量%の範囲が適するが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また式(12)、(13)、および(14)で表される化合物(成分E)をさらに含有させることにより粘度を調整することができる。
【0084】
式(5)において、oが2のとき、2つの環Cは、同じであっても、異なっていてもよい。式(5)で示される化合物すなわち成分Cのうちの好適例として、式(5−1)〜(5−64)を挙げることができる。

【0085】

【0086】


これらの式において、RおよびXは前記と同じ定義である。
【0087】
式(5)で示される化合物すなわち成分Cは、誘電率異方性が正でその値が非常に大きいのでSTN用、TN用またはPSA用の液晶組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを含有させることにより、組成物のしきい値電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
【0088】
STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は0.1〜99.9重量%の範囲が適用するが、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、及び粘度などを調整できる
【0089】
成分Aに加える成分として式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)のそれぞれで表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい。さらに式(12)、(13)および(14)のそれぞれで表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、粘度等を調整することができる。
【0090】
式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)のそれぞれで表される化合物の群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)、高分子支持配向モード(PSAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の本発明の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
【0091】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0092】
この式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)で示される化合物(成分D)の好適例として、式(6−1)〜(6−6)、(7−1)〜(7−15)、(8−1)、(9−1)〜(9−3)、(10−1)〜(10−11)、および(11−1)〜(11−10)を挙げることができる。
【0093】

【0094】


これらの式において、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0095】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド、PSAモード用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性の値の絶対値が5程度であるので、含有量が40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0096】
成分Dのうち式(6)で表される化合物は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度の調整または屈折率異方性の調整の効果がある。また、式(7)および式(8)で表される化合物は3環化合物であるので透明点を高くする、ネマチックレンジを広くする、しきい値電圧を低くする、屈折率異方性を大きくするなどの効果が得られる。また、式(9)、(10)および(11)はしきい値電圧を低くするなどの効果が得られる。
【0097】
成分Dの含有量は、VAモ−ド、PSAモード用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して30重量%以下が好ましい。
【0098】
式(12)、(13)および(14)で表わされる化合物(成分E)の好適例として、式(12−1)〜(12−11)、(13−1)〜(13−19)、および(14−1)〜(14−6)を挙げることができる。
【0099】

【0100】


これらの式において、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0101】
式(12)、(13)、および(14)で表される化合物(成分E)は、誘電率異方性の値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。式(12)で表される化合物は主として粘度の調整または屈折率異方性の調整の効果があり、また式(13)および(14)で表される化合物は透明点を高くするなどのネマチックレンジを広げる効果、または屈折率異方性の調整の効果がある。
【0102】
成分Eで表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。VA用またはPSA用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0103】
本発明の液晶組成物は、本発明の式(1)で示される化合物の少なくとも1種類を0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
【0104】
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法により一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物、または重合可能な化合物、重合開始剤を含む本発明の液晶組成物、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
【0105】
本発明の液晶組成物は、前述の本発明の液晶組成物にさらに1つ以上の光学活性化合物を含有してもよい。
【0106】
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0107】

【0108】
本発明の液晶組成物は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0109】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
【0110】
本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したマイクロカプセル化光散乱型液晶表示素子(NCAP)や、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0111】
また、本発明の液晶組成物は重合可能な化合物を添加してPSA(Polymer sustained alignment)型用の液晶組成物として使用することもできる。重合可能な化合物の例はアクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、ビニルケトン、およびオキセタンなどの重合可能な基を有する化合物である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocure1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。
【0112】
〔液晶組成物の製造方法〕
本発明に係る液晶組成物は、例えば、各成分を構成する化合物が液体の場合には、それぞれの化合物を混合し振とうさせることにより、また固体を含む場合には、それぞれの化合物を混合し、加熱溶解によってお互い液体にしてから振とうさせることにより調製することができる。また、本発明に係る液晶組成物はその他の公知の方法により調製することも可能である。
【0113】
〔液晶組成物の特性〕
本発明に係る液晶組成物では、ネマチック相の上限温度を70℃以上とすること、ネマチック相の下限温度は−20℃以下とすることができ、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この液晶組成物を含む液晶表示素子は広い温度領域で使用することが可能である。
【0114】
本発明に係る液晶組成物では、組成等を適宜調整することで、屈折率異方性を0.05〜0.18の範囲とすることができる。
【0115】
また、本発明に係る液晶組成物では、通常、−5.0〜−2.0の範囲の誘電率異方性、好ましくは、−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物を得ることができる。−4.5〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物は、IPSモード、VAモード、またはPSAモードで動作する液晶表示素子として好適に使用することができる。
【0116】
〔液晶表示素子〕
本発明に係る液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモード等の動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子だけでなく、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモード等の動作モードを有しパッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。
【0117】
これらAM方式、およびPM方式の液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
【0118】
また、本発明に係る液晶組成物は、導電剤を添加させた液晶組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、液晶組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【0119】
中でも本発明に係る液晶組成物では、上述のような特性を有するので、VAモード、IPSモード、またはPSAモードなどの負の誘電率異方性を有する液晶組成物を利用した動作モードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができ、特に、VAモードで駆動するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0120】
なお、TNモード、VAモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で駆動する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。なお、VAモードで駆動する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで駆動する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:US5576867)に報告されている。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」である。
【0122】
得られた化合物は、H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定したので、まず分析方法について説明をする。
【0123】
H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例などで合成したサンプルを、CDClなどのサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフト(δ)の内部標準にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0124】
GC分析:測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン(無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)の温度を300℃に設定した。
【0125】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液を調製し、この溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0126】
試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0127】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同じではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の化合物における補正係数に大きな差異がないからである。
【0128】
[測定試料]
化合物の物性を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0129】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、以下の方法で測定を行った。まず、得られた化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。そして、得られた試料の測定値から、下記の式に示す外挿法にしたがって、外挿値を計算した。この外挿値をこの化合物の物性値とした。
【0130】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0131】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性を測定し、上記の式にしたがって外挿値を求めて、これを化合物の物性値とした。
【0132】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在する。例えば、母液晶Aを用いることができる。母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。
母液晶A:

【0133】
母液晶Aの物性は以下のとおりであった。
上限温度(TNI)=100.1℃;誘電率異方性(Δε)=5.10;屈折率異方性(Δn)=0.093;粘度(η)=25.6mPa・s。
【0134】
[測定方法]
化合物の物性の測定は以下の方法で行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0135】
物性値のうち、化合物そのものを試料とした場合は、測定値をデータとして記載した。化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、測定値から外挿法で算出した値をデータとして記載した。相構造および相転移温度の測定には、化合物をそのまま試料として用いた。その他の測定には、試料として化合物と母液晶Aとの混合物を用いた。
【0136】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計Diamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0137】
以下、結晶はCと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、またはスメクチックC相の区別がつく場合は、それぞれS、S、またはSと表した。相転移温度の表記として、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(CN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0138】
ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0139】
低温相溶性:母液晶と化合物とを、化合物が15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0140】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):試料(母液晶と化合物との混合物)を、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0141】
屈折率異方性(Δn;25℃で測定):波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0142】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度のTN素子に試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
[実施例1]
【0143】
化合物(1−2)の合成

【0144】

【0145】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−1)(Apollo Scientific社製)(25.0g)とアセトニトリル(450ml)とを加え、亜ジチアン酸ナトリウム(7.83g)と炭酸水素ナトリウム(3.21g)を水(65ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、さらに10分間攪拌した。続いて反応液を0℃に冷却し、1−ペンテン(4.19ml)とアセトニトリル(40ml)との混合溶液をゆっくりと滴下し、30分間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をヘプタンで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製し、化合物(T−2)(8.88g;32%)を得た。
【0146】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−2)(8.88g)、臭化アリル(1.14ml)、およびアセトニトリル(240ml)を加えて、0℃に冷却した。そこへ、亜ジチアン酸ナトリウム(6.28g)と炭酸水素ナトリウム(2.58g)を水(60ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、さらに2時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をヘプタンで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製し、化合物(T−3)(4.46g;57%)を得た。
【0147】
第3工程
反応器へ、化合物(T−3)(4.46g)、炭酸水素ナトリウム(0.542g)、ラネーニッケル(0.223g)、およびメタノール(20ml)を加え、水素雰囲気下で12時間撹拌した。触媒を濾別した後、得られた反応混合物を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製した。さらにソルミックスA−11(登録商標;日本アルコール販売(株))からの再結晶により精製し、化合物(1−2)(2.19g;61%)を得た。
【0148】
化学シフトδ(ppm;CDCl);2.12−1.95(m,4H),1.70−1.55(m,4H),1.42−1.28(m,4H),1.03(t,J=7.40Hz,3H),0.92(t,J=6.80Hz,3H).
【0149】
化合物(1−2)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 2.2 S 26.8 I 。
[実施例2]
化合物(1−2)の物性
【0150】
母液晶A 90重量%と、実施例1で得られた化合物(1−2)の10重量%とからなる組成物Bを調製した。得られた組成物Bの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−2)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0151】
上限温度(TNI)=−8.9℃;誘電率異方性(Δε)=0.10;屈折率異方性(Δn)=0.053;粘度(η)=−2.1mPa・s。
【0152】
これらのことから化合物(1−2)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、上限温度が高く、粘度が小さい化合物であることが分かった。
[実施例3]
【0153】
化合物(1−4)の合成

【0154】

【0155】
第1工程
1−ペンテンの代わりに1−ヘプテンを用い、実施例1の化合物(T−2)の合成と同様の手法により、化合物(T−4)(9.82g;34%)を得た。
【0156】
第2工程
化合物(T−4)(9.82g)を原料として用い、実施例1の化合物(T−3)の合成と同様の手法により、化合物(T−5)(4.75g;55%)を得た。
【0157】
第3工程
化合物(T−5)(4.75g)を原料として用い、実施例1の化合物(1−2)の合成と同様の手法により、化合物(1−4)(2.52g;65%)を得た。
【0158】
化学シフトδ(ppm;CDCl);2.11−1.95(m,4H),1.70−1.51(m,4H),1.42−1.21(m,8H),1.03(t,J=7.25Hz,3H),0.89(t,J=6.65Hz,3H).
【0159】
化合物(1−4)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C −0.2 C 10.0 S 32.5 I 。
[実施例4]
【0160】
化合物(1−4)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例3で得られた化合物(1−4)の15重量%とからなる組成物Cを調製した。得られた組成物Cの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−4)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0161】
上限温度(TNI)=−6.6℃;誘電率異方性(Δε)=−0.23;屈折率異方性(Δn)=0.046;粘度(η)=1.9mPa・s。
【0162】
これらのことから化合物(1−4)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、上限温度が高く、粘度が小さい化合物であることが分かった。
[実施例5]
【0163】
化合物(1−34)の合成

【0164】

【0165】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−4)(8.85g)、アリルアルコール(1.21ml)、およびアセトニトリル(200ml)を加えて、0℃に冷却した。そこへ、亜ジチアン酸ナトリウム(3.62g)と炭酸水素ナトリウム(1.48g)を水(50ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつさらに2時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をヘプタンで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=10/1(容量比)))により精製し、化合物(T−6)(6.37g;67%)を得た。
【0166】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、水素化アルミニウムリチウム(1.05g)とテトラヒドロフラン(THF)(120ml)とを加えて、−10℃に冷却した。そこへ、化合物(T−6)(6.37g)をTHF(30ml)に溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつさらに12時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、不溶物を濾別した後、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=10/1(容量比)))により精製し、化合物(T−7)(3.48g;79%)を得た。
【0167】
第3工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−7)(3.48g)とジクロロメタン(70ml)とを加えて、0℃に冷却した。そこへ、デスマーチンペルヨージナン(2.91g)をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに1時間撹拌した。不溶物を濾別した後、得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン)により精製し、化合物(T−8)(3.27g;94%)を得た。
【0168】
第4工程
窒素雰囲気下の反応器へ、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(2.52g)とTHF(40ml)とを加えて、−30℃に冷却した。そこへ、カリウム−t−ブトキシド(0.759g)をTHF(10ml)に溶解させた溶液をゆっくりと加え、さらに30分間撹拌した。続いて、化合物(T−8)(3.27g)をTHF(15ml)に溶解させた溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに1時間撹拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。得られた有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、化合物(1−34)(1.17g;36%)を得た。
【0169】
化学シフトδ(ppm;CDCl);5.83(ddt,J=16.8Hz,J=10.4Hz,J=6.50Hz,1H),5.12(dd,J=17.0Hz,J=1.25Hz,1H),5.07(d,J=10.2Hz,1H),2.42−2.33(m,2H),2.24−1.98(m,4H),1.64−1.55(m,2H),1.42−1.23(m,8H),0.89(t,J=6.75Hz,3H).
【0170】
化合物(1−34)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 21.9 S 35.0 I 。
[実施例6]
【0171】
化合物(1−34)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例5で得られた化合物(1−34)の15重量%とからなる組成物Dを調製した。得られた組成物Dの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−34)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0172】
上限温度(TNI)=−7.9℃;誘電率異方性(Δε)=0.43;屈折率異方性(Δn)=0.046;粘度(η)=6.0mPa・s。
【0173】
これらのことから化合物(1−34)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、上限温度が高く、粘度が小さい化合物であることが分かった。
[実施例7]
【0174】
化合物(1−44)の合成
【0175】

【0176】

【0177】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、水素化アルミニウムリチウム(0.240g)とTHF(40ml)とを加えて、−10℃まで冷却した。そこへ、化合物(T−5)(3.50g)をTHF(10ml)に溶解させた溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、不溶物を濾別した後、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製し、化合物(1−44)(1.32g;46%)を得た。
【0178】
化学シフトδ(ppm;CDCl);5.81(ddt,J=17.1Hz,J=10.2Hz,J=7.00Hz,1H),5.38−5.30(m,2H),2.86(td,J=18.3Hz,J=6.95Hz,2H),2.05(tt,J=18.7Hz,J=8.15Hz,2H),1.64−1.55(m,2H),1.42−1.23(m,8H),0.89(t,J=7.05Hz,3H).
【0179】
化合物(1−44)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 1.3 S 24.4 I 。
[実施例8]
【0180】
化合物(1−44)の物性
母液晶A 85重量%と、実施例7で得られた化合物(1−44)の15重量%とからなる組成物Eを調製した。得られた組成物Eの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−44)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0181】
上限温度(TNI)=−13.2℃;誘電率異方性(Δε)=−0.23;屈折率異方性(Δn)=0.046;粘度(η)=−0.7mPa・s。
【0182】
これらのことから化合物(1−44)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、上限温度が高く、粘度が小さい化合物であることが分かった。
[実施例9]
【0183】
化合物(1−62)の合成

【0184】

【0185】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−1)(25.0g)、アリルアルコール(2.61ml)、およびアセトニトリル(750ml)を加え、亜ジチアン酸ナトリウム(4.03g)と炭酸水素ナトリウム(1.61g)を水(50ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、3時間攪拌した。続いて臭化アリル(3.23ml)を加え、亜ジチアン酸ナトリウム(8.06g)と炭酸水素ナトリウム(3.21g)を水(100ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、さらに2時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=10/1(容量比)))により精製し、化合物(T−9)(4.82g;20%)を得た。
【0186】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、水素化アルミニウムリチウム(0.730g)とTHF(80ml)とを加えて、−10℃に冷却した。そこへ、化合物(T−9)(4.82g)のTHF(20ml)溶液をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつさらに12時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、不溶物を濾別した後、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=3/1(容量比)))により精製し、化合物(T−11)(3.44g;89%)を得た。
【0187】
第3工程
化合物(T−10)(3.44g)を原料として用い、実施例5の化合物(T−8)の合成と同様の手法により、化合物(T−11)(3.14g;92%)を得た。
【0188】
第4工程
化合物(T−11)(3.14g)を原料として用い、実施例5の化合物(1−34)の合成と同様の手法により、化合物(1−62)(0.700g;22%)を得た。
【0189】
化学シフトδ(ppm;CDCl);5.89−5.75(m,2H),5.38−5.30(m,2H),5.16−5.04(m,2H),2.86(td,J=18.3Hz,6.95Hz,2H),2.41−2.32(m,2H),2.25−2.10(m,2H).
【0190】
化合物(1−62)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C −29.8 S −5.1 I 。
[実施例10]
化合物(1−62)の物性
【0191】
母液晶A 85重量%と、実施例9で得られた化合物(1−62)の15重量%とからなる組成物Fを調製した。得られた組成物Fの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−62)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0192】
上限温度(TNI)=−20.6℃;誘電率異方性(Δε)=0.43;屈折率異方性(Δn)=0.046;粘度(η)=−11.7mPa・s。
【0193】
これらのことから化合物(1−62)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、粘度が特に小さい化合物であることが分かった。
[実施例11]
【0194】
化合物(1−71)の合成

【0195】

【0196】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−1)(25.0g)、アリルアルコール(5.75ml)、およびアセトニトリル(750ml)を加え、亜ジチアン酸ナトリウム(8.88g)と炭酸水素ナトリウム(3.21g)を水(100ml)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下し、2時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=3/1(容量比)))により精製し、化合物(T−12)(24.0g;82%)を得た。
【0197】
第2工程
窒素雰囲気下の反応器へ、水素化アルミニウムリチウム(5.32g)とTHF(240ml)とを加えて、−10℃に冷却した。そこへ、化合物(T−12)(24.0g)をTHF(120ml)に溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつさらに12時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、不溶物を濾別した後、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をトルエンからの再結晶により精製し、化合物(T−13)(13.2g;81%)を得た。
【0198】
第3工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−13)(4.00g)とジクロロメタン(80ml)とを加えて、0℃に冷却した。そこへ、デスマーチンペルヨージナン(6.87g)をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに1時間撹拌した。不溶物を濾別した後、得られた溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=20/1(容量比)))により精製し、化合物(T−14)(2.95g;74%)を得た。
【0199】
第4工程
窒素雰囲気下の反応器へ、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(4.92g)とTHF(55ml)とを加えて、−30℃に冷却した。そこへ、カリウム−t−ブトキシド(1.42g)をゆっくりと加え、さらに30分間撹拌した。続いて、化合物(T−14)(2.95g)をTHF(20ml)に溶解させた溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつさらに1時間撹拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。得られた有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、化合物(1−71)(0.760g;26%)を得た。
【0200】
化学シフトδ(ppm;CDCl);5.83(ddt,J=17.0Hz,J=10.4Hz,J=6.50Hz,2H),5.17−5.05(m,4H),2.41−2.33(m,4H),2.24−2.10(m,4H).
【0201】
化合物(1−71)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 21.4 (S 13.5) I 。
[実施例12]
化合物(1−71)の物性
【0202】
母液晶A 85重量%と、実施例11で得られた化合物(1−71)の15重量%とからなる組成物Gを調製した。得られた組成物Gの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−71)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0203】
上限温度(TNI)=−13.2℃;誘電率異方性(Δε)=0.43;屈折率異方性(Δn)=0.046;粘度(η)=−13.2mPa・s。
【0204】
これらのことから化合物(1−71)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、上限温度が高く、粘度が特に小さい化合物であることが分かった。
[実施例13]
【0205】
化合物(1−67)の合成

【0206】

【0207】
第1工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−13)(21.2g)、THF(420ml)、および水素化ナトリウム(1.96g)を加え、50℃で3時間攪拌した。続いて反応液を0℃に冷却し、塩化トリイソプロピルシリル(8.67ml)をゆっくりと滴下し、さらに12時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=5/1(容量比)))により精製し、化合物(T−15)(13.9g;50%)を得た。
【0208】
第2工程
化合物(T−15)(13.9g)を原料として用い、実施例5の化合物(T−8)の合成と同様の手法により、化合物(T−16)(13.1g;95%)を得た。
【0209】
第3工程
化合物(T−16)(13.1g)を原料として用い、実施例5の化合物(1−34)の合成と同様の手法により、化合物(T−17)(9.14g;70%)を得た。
【0210】
第4工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−17)(9.14g)とTHF(100ml)とを加えて、0℃に冷却した。そこへ、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M;THF溶液;15.0ml)をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。得られた反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル(=5/1(容量比)))により精製し、化合物(T−18)(6.41g;91%)を得た。
【0211】
第5工程
化合物(T−18)(3.00g)を原料として用い、実施例5の化合物(T−8)の合成と同様の手法により、化合物(T−19)(2.89g;97%)を得た。
【0212】
第6工程
窒素雰囲気下の反応器へ、化合物(T−19)(2.89g)、5−エチルスルフォニル−1−フェニル−1H−テトラゾール(1.75g)、およびエチレングリコールジメチルエーテル(DME)(100ml)とを加えて、−70℃に冷却した。そこへ、ヘキサメチルジシラザンカリウム(KHMDS)(1M;THF溶液;7.33ml)をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつ3時間攪拌した。得られた反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を、減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘプタン)により精製した。さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製し、化合物(1−67)(0.360g;12%)を得た。
【0213】
化学シフトδ(ppm;CDCl);5.83(ddt,J=17.0Hz,J=10.4Hz,J=6.45Hz,1H),5.59−5.49(m,1H),5.46−5.37(m,1H),5.17−5.05(m,2H),2.41−2.25(m,4H),2.24−2.05(m,4H),1.67(dd,J=6.35Hz,J=1.15Hz,3H).
【0214】
化合物(1−67)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 4.4 S 8.4 I 。
[実施例14]
化合物(1−67)の物性
【0215】
母液晶A 85重量%と、実施例13で得られた化合物(1−67)の15重量%とからなる組成物Hを調製した。得られた組成物Hの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−67)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0216】
上限温度(TNI)=−16.4℃;誘電率異方性(Δε)=0.40;屈折率異方性(Δn)=0.048;粘度(η)=−10.6mPa・s。
【0217】
これらのことから化合物(1−67)は、環構造を持たない化合物であるにも関わらず液晶相を有し、粘度が小さい化合物であることが分かった。
[実施例15]
【0218】
化合物(1−77)の合成

【0219】

【0220】
第1工程
1−ペンテンの代わりに4−メチルヘキセンを用い、実施例1の化合物(T−2)の合成と同様の手法により、化合物(T−20)(10.6g;37%)を得た。
【0221】
第2工程
化合物(T−20)(10.6g)を原料として用い、実施例1の化合物(T−3)の合成と同様の手法により、化合物(T−21)(4.43g;47%)を得た。
【0222】
第3工程
化合物(T−21)(4.43g)を原料として用い、実施例1の化合物(1−2)の合成と同様の手法により、化合物(1−77)(1.13g;31%)を得た。
【0223】
化学シフトδ(ppm;CDCl);2.12−1.95(m,4H),1.70−1.50(m,4H),1.42−1.30(m,3H),1.23−1.12(m,2H),1.03(t,J=7.40Hz,3H),0.87(t,J=6.50Hz,6H).
【0224】
化合物(1−77)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度 :C 24.8 I 。
[実施例16]
化合物(1−77)の物性
【0225】
母液晶A 95重量%と、実施例15で得られた化合物(1−77)の5重量%とからなる組成物Iを調製した。得られた組成物Iの物性を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−77)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0226】
上限温度(TNI)=−23.9℃;誘電率異方性(Δε)=−0.80;屈折率異方性(Δn)=0.033;粘度(η)=24.3mPa・s。
[実施例17]
【0227】
実施例1、3、5、7、9、11、13、15および前記の合成法をもとに、以下に示す化合物(1−1)〜(1−100)を合成することができる。なお、記載上RとRが反転して表現される場合がある。
【0228】

【0229】

【0230】

【0231】

【0232】

【0233】
[比較例1]
比較例として、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 2006, 460, 63に掲載されている、化合物(S−1)の物性を測定した。なお、化合物(S−1)は市販品(Matrix Scientific社製)をそのまま用いた。

【0234】
比較化合物(S−1)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 16.9 S 36.7 I 。
【0235】
母液晶A 95重量%と、比較化合物(S−1)の5重量%とからなる組成物Jを調製した。得られた組成物Jの物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(S−1)の物性値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0236】
上限温度(TNI)=−39.9℃;誘電率異方性(Δε)=1.10;屈折率異方性(Δn)=0.013;粘度(η)=39.9mPa・s。
【0237】
比較化合物(S−1)と実施例に示した化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)とを比較した。まず、それぞれの相溶性を比較すると、(S−1)は母液晶Aに5%しか加えることができなかったのに対し、化合物(1−2)は母液晶Aに10%、また化合物(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、および(1−71)は母液晶Aに15%加えることができた。よって、本発明の化合物の方が、他の化合物との相溶性が良好であり、より低温でも使用できる優れた化合物であることが分かった。
【0238】
次に、比較化合物(S−1)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との上限温度(TNI)を比較すると、本願の化合物の方がTNIが高いことが分かった。よって本発明の化合物の方が、幅広い温度範囲で使用可能な優れた化合物であることが分かった。
【0239】
さらに、比較化合物(S−1)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との粘度を比較すると、本願のこれら化合物の方が粘度が小さかった。よって本発明の化合物の方が、組成物の粘度を小さくする事のできる優れた減粘剤であることが分かった。
【0240】
比較化合物(S−1)と化合物(1−4)とは、共に同じアルキル鎖長、および同じペルフルオロアルキル鎖長を持つ化合物であるが、ペルフルオロアルキル鎖の片末端のみにアルキル鎖を有する場合には、他の化合物への相溶性が低いうえ、TNIが低く、粘度が大きかった。よって液晶組成物の減粘剤として使用することは困難であり、ペルフルオロアルキル鎖の両末端にアルキル鎖を導入する事が、これらの化合物の特性向上に大きく寄与していることが分かった。
【0241】
[比較例2]
次に比較例として、DE4034123A1に掲載されている、化合物(S−3)を合成した。

【0242】
化学シフトδ(ppm;CDCl);2.20−1.98(m,4H),1.64−1.54(m,4H),1.42−1.22(m,16H),0.94−0.86(m,6H).
【0243】
比較化合物(S−3)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 34.0 I 。
【0244】
母液晶A 85重量%と、比較化合物(S−3)の15重量%とからなる組成物Kを調製した。得られた組成物Kの物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(S−3)の物性の外挿値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0245】
上限温度(TNI)=−43.9℃;誘電率異方性(Δε)=−0.90;屈折率異方性(Δn)=0.033;粘度(η)=−1.4mPa・s。
【0246】
比較化合物(S−3)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との相転移温度を比較すると、化合物(S−3)は液晶相を持たない化合物であるのに対し、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、および(1−71)は液晶相を有する化合物であった。よって本発明の化合物の方が、液晶組成物の構成成分として優れた化合物であることが分かった。
【0247】
次に、比較化合物(S−3)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との上限温度(TNI)を比較すると、本願のこれら化合物の方がTNIが高かった。よって本発明の化合物の方が、幅広い温度範囲で使用可能な優れた化合物であることが分かった。
【0248】
[比較例3]
次に比較例として、DE10018086A1に掲載されている、化合物(S−4)を合成した。

【0249】
化学シフトδ(ppm;CDCl);6.40(dt,J=15.7Hz,J=6.90Hz,2H),5.59(dt,J=14.8Hz,J=12.5Hz,2H),
2.25−2.15(m,4H),1.50−1.40(m,4H),1.40−1.25(m,6H),0.95−0.87(m,6H).
【0250】
比較化合物(S−4)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C <−50 I 。
【0251】
母液晶A 85重量%と、比較化合物(S−4)の15重量%とからなる組成物Lを調製した。得られた組成物Lの物性を測定し、測定値を外挿することで比較化合物(S−4)の物性の外挿値を算出した。その結果は以下のとおりであった。
【0252】
上限温度(TNI)=−98.6℃;誘電率異方性(Δε)=−1.47;屈折率異方性(Δn)=0.013;粘度(η)=14.6mPa・s。
【0253】
比較化合物(S−4)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との相転移温度を比較すると、化合物(S−4)は液晶相を持たない化合物であるのに対し、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、および(1−71)は液晶相を有する化合物であった。よって本発明の化合物の方が、液晶組成物の構成成分として優れた化合物であることが分かった。
【0254】
次に、比較化合物(S−4)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との上限温度(TNI)を比較すると、本願のこれら化合物の方がTNIが高かった。よって本発明の化合物の方が、幅広い温度範囲で使用可能な優れた化合物であることが分かった。
【0255】
さらに、比較化合物(S−4)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との粘度を比較すると、本願のこれら化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、および(1−71)の方が粘度が小さかった。よって本発明の化合物の方が、組成物の粘度を小さくする事のできる優れた減粘剤であることが分かった。
【0256】
[比較例4]
さらに比較例としてDE10018086A1に掲載されている、化合物(S−5)を合成した。

【0257】
化学シフトδ(ppm;CDCl);2.05(tt,J=18.8Hz,J=7.85Hz,4H),1.65−1.56(m,4H),1.43−1.31(m,8H),0.92(t,J=6.95Hz,6H).
【0258】
比較化合物(S−5)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 24.1 C 46.0 I 。
【0259】
比較化合物(S−5)と、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、(1−71)、および(1−77)との相転移温度を比較すると、化合物(S−5)は液晶相を持たない化合物であるのに対し、化合物(1−2)、(1−4)、(1−34)、(1−44)、(1−62)、(1−67)、および(1−71)は液晶相を有する化合物であった。よって本発明の化合物の方が、液晶組成物の構成成分として優れた化合物であることが分かった。
【0260】
比較化合物(S−5)と化合物(1−4)とは、共に同じ分子量を持つ化合物であるが、両末端のアルキルが対称形である場合、結晶性の向上に伴い融点が向上し液晶相が消失していた。すなわち、本発明の一般式(1)において、RとRが同じ炭素数の直鎖アルキルにならないことが、化合物の液晶相の発現に大きく寄与していることが分かった。
[実施例18]
【0261】
液晶組成物の実施例
以下、本発明で得られる液晶組成物の実施例を、組成例として詳細に説明する。なお、組成例で用いる液晶化合物は、下記表の定義に基づいて記号により表す。なお、表中、1,4−シクロへキシレンの立体配置はトランス配置である。各化合物の割合(百分率)は、特に断りのない限り、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各組成例の最後に得られた組成物の特性を示す。
【0262】
なお、各組成例で使用する液晶化合物の部分に記載した番号は、上述した本発明の液晶組成物に含有させる液晶化合物を示す式番号に対応をしており、式番号を記載せずに、単に「−」と記載をしている場合には、この化合物はその他の化合物であることを意味している。
【0263】
化合物の記号による表記方法を以下に示す。
【0264】

【0265】
特性の測定は以下の方法にしたがって行った。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0266】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。以下、ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0267】
(2)屈折率異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。まず、主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。そして、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(n‖)、および偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(n⊥)を測定した。屈折率異方性の値(Δn)は、(Δn)=(n‖)−(n⊥)の式から算出した。
【0268】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
【0269】
(4)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0270】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0271】
得られたVA素子に試料を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0272】
また、得られたTN素子に試料を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
この値が負である組成物が、負の誘電率異方性を有する組成物である。
【0273】
(5)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
(5−1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した屈折率異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0274】
(5−2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0275】
[組成例1]
5−F8−3 (1−2) 5%
7−F8−3 (1−4) 5%

5−HB−CL (2−2) 16%
3−HH−4 (12−1) 12%
3−HH−5 (12−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
5−HHB(F)−F (3−2) 8%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=104.2℃;Δn=0.088;Δε=3.2;Vth=2.60V;η=17.3mPa・s.
【0276】
[組成例2]
7−F8−1V (1−44) 5%
7−F8−2V (1−34) 4%

3−HHB(F,F)−F (3−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (3−27) 8%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
5−HHEBB−F (4−17) 2%
1O1−HBBH−5 (14−1) 4%
NI=80.6℃;Δn=0.106;Δε=8.3;Vth=1.48V;η=30.0mPa・s.
上記組成物100重量部に(Op−5)を0.25重量部添加したときのピッチは58.7μmであった。
【0277】
[組成例3]
7−F8−1V (1−44) 3%
V2−F8−1V (1−62) 3%

5−HB−F (2−2) 12%
6−HB−F (2−2) 9%
7−HB−F (2−2) 7%
2−HHB−OCF3 (3−1) 7%
3−HHB−OCF3 (3−1) 7%
4−HHB−OCF3 (3−1) 7%
5−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (3−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCHF2 (3−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (3−3) 5%
3−HH2B(F)−F (3−5) 3%
3−HBB(F)−F (3−23) 7%
5−HBB(F)−F (3−23) 7%
5−HBBH−3 (14−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (14−2) 3%
NI=79.1℃;Δn=0.087;Δε=4.0;Vth=2.42V;η=12.6mPa・s.
【0278】
[組成例4]
7−F8−2V (1−34) 4%
V2−F8−2V (1−71) 4%

5−HB−CL (2−2) 8%
3−HH−4 (12−1) 8%
3−HHB−1 (13−1) 2%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (3−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 8%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (3−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (3−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 6%
NI=72.6℃;Δn=0.100;Δε=8.3;Vth=1.40V;η=20.7mPa・s.
【0279】
[組成例5]
7−F8−1V (1−44) 4%
1V2−F8−2V (1−67) 4%

3−HB−CL (2−2) 3%
5−HB−CL (2−2) 4%
3−HHB−OCF3 (3−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (3−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (3−19) 15%
V−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−HHB(F)−F (3−2) 5%
5−HHB(F)−F (3−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (3−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (3−21) 7%
2−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−H2BB(F)−F (3−26) 5%
3−HBEB(F,F)−F (3−39) 5%
NI=64.6℃;Δn=0.092;Δε=7.7;Vth=1.71V;η=23.7mPa・s.
【0280】
[組成例6]
7−F8−1V (1−44) 5%
7−F8−V1 (1−54) 5%

5−HB−CL (2−2) 7%
7−HB(F,F)−F (2−4) 3%
3−HH−4 (12−1) 10%
3−HH−5 (12−1) 5%
3−HB−O2 (12−5) 15%
3−HHB−1 (13−1) 8%
3−HHB−O1 (13−1) 5%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (3−15) 5%
【0281】
[組成例7]
7−F8−3 (1−4) 5%
7−F10−3 (1−81) 5%

5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (12−1) 9%
3−HH−EMe (12−2) 23%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
【0282】
[組成例8]
5−F8−3 (1−2) 5%
7−F8−3 (1−4) 5%

3−HB−O2 (12−5) 10%
5−HB−CL (2−2) 13%
3−HBB(F,F)−F (3−24) 7%
3−PyB(F)−F (2−15) 10%
5−PyB(F)−F (2−15) 10%
3−PyBB−F (3−80) 10%
4−PyBB−F (3−80) 10%
5−PyBB−F (3−80) 10%
5−HBB(F)B−3 (14−5) 10%
NI=75.3℃;Δn=0.171;Δε=7.6;Vth=1.54V;η=33.9mPa・s.
【0283】
[組成例9]
5−F8−3 (1−2) 4%
7−F8−3 (1−4) 3%

2−BEB(F)−C (5−14) 5%
3−BEB(F)−C (5−14) 4%
4−BEB(F)−C (5−14) 12%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 12%
3−HB−O2 (12−5) 11%
2−HH−3 (12−1) 11%
3−HH−4 (12−1) 10%
3−HHB−1 (13−1) 8%
3−HHB−O1 (13−1) 4%
3−H2BTB−2 (13−17) 4%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
3−HB(F)TB−2 (13−18) 4%
NI=77.3℃;Δn=0.131;Δε=14.8;Vth=1.12V;η=21.0mPa・s.
【0284】
[組成例10]
V2−F8−2V (1−71) 5%
1V2−F8−2V (1−67) 5%

2−HB−C (5−1) 6%
3−HB−C (5−2) 14%
2−BEB−C (5−13) 10%
3−HB−CL (2−2) 15%
3−HHB−CL (3−1) 7%
5−HHB−CL (3−1) 5%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHEB−F (3−10) 3%
2−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
NI=76.7℃;Δn=0.113;Δε=8.1;Vth=1.58V;η=18.2mPa・s.
【0285】
[組成例11]
V2−F8−1V (1−62) 5%
7−F8−3 (1−4) 5%
7−F8−V1 (1−54) 5%
7−F10−3 (1−81) 5%

2−BB−C (5−5) 10%
5−BB−C (5−5) 10%
3−BEB−C (5−13) 12%
4−BEB−C (5−13) 12%
5−BEB−C (5−13) 12%
5−BBB−C (5−34) 7%
3−HHB−C (5−28) 7%
5−HHB−C (5−28) 10%
【産業上の利用可能性】
【0286】
本発明は、高い透明点、他の化合物との良好な相溶性、小さな粘度、および熱、光などに対する高い安定性を有する新規液晶化合物を提供する。また、この液晶化合物を成分として、その化合物を構成する末端鎖などを適切に選択することにより、望ましい特性を有する新たな液晶組成物を提供する。さらに、この液晶組成物を用いた液晶表示素子は、時計、電卓、パソコンなどのディスプレイに広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式(1)において、Rは炭素数4〜15のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rは炭素数2〜15のアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルであり、nは8、9、10、11、または12であり、RおよびRは同じ炭素数の直鎖アルキルになることはない。
【請求項2】
式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、−(CH−CH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキル、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが炭素数2〜10のアルキル、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、nが8、9、または10であり、R≠Rである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(1)において、nが8である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキルであり、Rが炭素数2〜7のアルキルである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式(1)において、Rが炭素数4〜10のアルキルであり、Rが−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(1)において、Rが−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHであり、Rが−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、または−(CH−CH=CHCHである請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【請求項10】
式(2)〜(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。


式(2)〜(4)において、Rは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−CF=CF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素である。
【請求項11】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。


式(5)において、Rは、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;Xは−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Zは、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;LおよびLは独立して、水素またはフッ素であり;rは、0、1または2であり、sは0または1であり、rとsの和は、0、1、2または3である。
【請求項12】
式(6)〜(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。


式(6)〜(11)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環C、環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−3,6−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;Z、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;LおよびLは独立して、フッ素または塩素であり;t、u、v、w、x、およびyは独立して0または1であり、u、v、w、およびxの和は、1または2である。
【請求項13】
式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。


式(12)〜(14)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項14】
請求項11に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項17】
請求項13に記載の式(12)〜(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する請求項9〜17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する請求項9〜18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項20】
請求項9〜19のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−60417(P2013−60417A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162931(P2012−162931)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】