説明

ペルフルオロブチルエーテルを含有する組成物

本発明は、ペルフルオロブチルエーテルを含有する共沸または共沸系の混合物または組成物に関する。本発明は、より詳細には、少なくとも1つのアルキルノナフルオロブチルエーテルおよび生分解性化合物を含む組成物に関し、これは溶媒または冷却剤として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共沸または共沸系のペルフルオロブチルエーテル混合物または組成物に関する。より詳細には、本発明の主題の1つは、少なくとも1つのノナフルオロブチルアルキルエーテルおよび生分解性化合物を含む組成物である。
【背景技術】
【0002】
地球の大気は、地球から生じるIR放出をブロックするが、これが、温室効果の原因となり、また生命体にとっては好ましい気温の緩和につながる。大気中において、こうした天然の温室効果に関与するのは、主に二酸化炭素COである。人間が特定のガス(化石燃料からのCOを含む。)を放出することでこの効果が増幅され、地球温暖化を生じて、気候:嵐、洪水、叢氷の表面積変動および氷河後退に影響を及ぼす。
【0003】
京都議定書(1997)は、6つの温室効果ガス(CO、CH、NO、HFC、PFC、SF)の放出を、約束期間2008から2012年の間に1990年(参照年)に対して世界的に5%削減することを目標としている。
【0004】
所与の製品の温室効果は、このGWP(地球温暖化係数)によって定量化され、これは分子が放射線を吸収する固有の効果だけでなく、大気中での分子の寿命(または所定の期間、通常1世紀の間のこの濃度と同じことを意味するもの)も考慮する。このGWPは、参照ガスとして採用するCOに対するものとして示されている。
【0005】
フッ素化溶媒は、電子、航空、精密機械または医療部門のような最先端技術産業にて長年使用されてきた。これらの分野において、この目的は常に同じ、即ち非常に高度な清浄面を得ることであり、これは多かれ少なかれ極性の脂状の汚れ、固体粒子、電子流または水を除去するということが問題である。
【0006】
精密洗浄では、手袋、リブまたは止り穴を備えた非常に複雑な部品が存在することが多く、これらの部品は、溶媒により、これらの様々な場所で有効となるために湿潤されなければならない。フッ素化溶媒は、可能性として最善の表面湿潤を提供する溶媒の族に由来し、これは非常に低い表面張力として表現される(HCFC141bについて18.4mN/m、HFC365mfcについて13.3mN/mであるのに対し、例えばペルクロロエチレンのような別の非フッ素化洗浄溶媒では32.3mN/m)。高度な湿潤の別の利点は、基材のより速い乾燥が得られることである。
【0007】
実際に同一の分子量において、フッ素化溶媒は、低い沸点および高い蒸気圧を有する。故に、HCFC141bは32℃で沸騰するが、クロロホルムは61℃で沸騰する。これらの2つの特性(低沸点および高蒸気圧)は、気相を用いて操作する従来の産業用機械中でこれらの溶媒を使用するのに有利となり、部品のすすぎおよび乾燥と、連続的に蒸留される溶媒の再生とが可能になる。凝集によるコイル上の蒸気の冷却用に頑丈なシステムを備えたこれらの機械の操作プロセスにより、使用される蒸気圧が高いという欠点を最小限にする。製造業者は、既存の備蓄機械で操作できる置換解決策を望んでいる。
【0008】
さらに、ヒドロフルオロカーボンは、冷凍および伝熱プロセスに広く使用されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、低いGWPを有し、生分解性の利点を有する組成物を提供する。
【0010】
本発明に従う組成物は、メチルテトラヒドロフランおよび式CORの少なくとも1つのノナフルオロブチルアルキルエーテルを含み、式中のRは、1から4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖飽和アルキル鎖を表す。有利なことに、組成物は、メチルテトラヒドロフラン5から40重量%、および式CORのノナフルオロブチルアルキルエーテル60から95重量%を含む。
【0011】
好ましいメチルテトラヒドロフランは、2−メチルテトラヒドロフランである。
【0012】
式CORのノナフルオロブチルアルキルエーテルのうち、ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびノナフルオロブチルエチルエーテルが好ましい。
【0013】
Rに拘わらず、好ましいノナフルオロブチルアルキルエーテルは、ノナフルオロ−n−ブチルアルキルエーテルおよびノナフルオロイソブチルアルキルエーテルから主になる。
【0014】
共沸または共沸系の組成物は特に有利である。
【0015】
Rがメチルである場合、共沸または共沸系の組成物は、メチルテトラヒドロフラン5から15重量%、ノナフルオロブチルメチルエーテル85から95重量%を含む。メチルテトラヒドロフラン8重量%およびノナフルオロブチルメチルエーテル92重量%を含む共沸組成物は、大気圧にて59.7℃の沸点を有する。
【0016】
Rがエチルである場合、共沸または共沸系の組成物は、メチルテトラヒドロフラン10から40重量%、ノナフルオロブチルエチルエーテル60から90重量%を含む。メチルテトラヒドロフラン24.6重量%およびノナフルオロブチルエチルエーテル75.4重量%を含む共沸組成物は、大気圧(103.3kPa)にて71.6℃の沸点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
共沸組成物は、一定の沸点を有する(即ち、沸騰または蒸発中に分画する傾向はない)2つ以上の化合物の液体混合物であり、この沸点は、それぞれの化合物の沸点より高いか、または低いかのいずれかであってもよい。故に、蒸発中に形成された蒸気の組成物は、初期の液体組成物と同一または実際に同一である。
【0018】
共沸系の組成物は、実質的に一定の沸点を有する、即ち単一の化合物として振る舞う2つ以上の化合物の液体混合物である。共沸系の化合物の決定は、蒸発または蒸留によって、または所与の温度における泡立ち点または露点での蒸気圧を比較することによって行われてもよい。
【0019】
共沸物の使用は、産業用途、例えば汚れで飽和したときの組成物の再生の場合に特に有利である。単純な蒸留により、構成要素が分画せず、初期の共沸組成物を回復できるためである。
【0020】
さらに、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)は、セルロース材料から得られるフルフラールのような再生可能原料から誘導されるという利点を有する。このように、ヘミセルロース多糖類は、5個の炭素原子を含有する糖系ポリマーである。ヘミセルロース多糖類は、硫酸の存在下で加熱する場合に、ペントース(5個の炭素原子を含有する糖)、例えばキシロースが得られる。キシロースの熱脱水和を行うと、このキシロースがフルフラールに転位する。
【0021】
低いGWPおよびこれらの生分解性の他、本発明に従う特定の組成物は、非可燃性(ASTM D3832標準に従う閉カップ型引火点が55℃を超える。)であり、最も詳細には、洗浄溶媒または加熱および冷却用途の冷凍剤として好適である。これらはまた、発泡剤としても使用できる。
【実施例1】
【0022】
実験項
液体混合物の沸点は、沸点上昇技術を用いて測定した。沸点上昇は、まず初めに、ある量のノナフルオロブチルメチルエーテルを充填し、次いで沸騰させる。平衡状態に到達した後、大気圧での沸点を記録した。次いでメチルテトラヒドロフランのアリコートを沸点上昇に導入し、平衡状態に到達した後に再び温度を記録した。表1は、ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびメチルテトラヒドロフランの様々な混合物について103.3kPaでの沸点測定を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
ノナフルオロブチルメチルエーテル50重量%およびメチルテトラヒドロフラン50重量%を含有する液体混合物の分留により、ノナフルオロブチルメチルエーテル92重量%およびメチルテトラヒドロフラン8重量%の共沸組成物が103.3kPaの圧力にて59.7℃の沸点を有することを示した。
【実施例2】
【0025】
沸点上昇方法は、実施例1に記載されるように行った。
【0026】
表2は、ノナフルオロブチルエチルエーテルおよびメチルテトラヒドロフランの様々な混合物について103.3kPaにおける沸点測定を示す。
【0027】
【表2】

【0028】
ノナフルオロブチルエチルエーテル50重量%およびメチルテトラヒドロフラン50重量%を含有する液体混合物の分留により、ノナフルオロブチルエチルエーテル75.4重量%およびメチルテトラヒドロフラン24.6重量%の共沸組成物が103.3kPaの圧力にて71.6℃の沸点を有することを示した。
【0029】
洗浄試験のための一般的手順
2×5cmのステンレススチールシートをまず、FORANE141bで脱脂した。これらのシートを試験前にそれぞれ計量し、これを自重とした。次いでこれらを、片面のみオイルREDUCTELF SP460でコーティングした。オイルコーティングされたシートを計量し、コーティングされたオイル量を自重との差から推測した。次に、オイルコーティングされたシートを、組成物100mlを含有するビーカーに含浸し、撹拌もせず、超音波もかけずに5分間評価した。一旦取り出し、シートを15分間通風下でドリップ乾燥し、この期間の終わりに、残存オイルの量を計量により決定した。オイルの初期量との比較により、除去されたオイルのパーセンテージを計算した。
【実施例3】
【0030】
ノナフルオロブチルメチルエーテルの組成物に関して、0%のオイル除去が得られた。
【実施例4】
【0031】
2−MeTHF8重量%およびノナフルオロブチルメチルエーテル92重量%を含む組成物に関して、75重量%のオイルが除去された。45℃での単純な加熱、または単純な撹拌、または周囲温度(20℃)での超音波適用により、堆積したオイルの全除去が可能になる。
【0032】
さらに、オイルの溶解ではなく、オイルの剥離が観測され、これが液体の表面まで上昇した(ローリングアップ機構)。この機構は、溶媒の飽和を早期に導く溶解の場合より有利である。
【0033】
オイル溶解試験のための一般的手順
シリコーンオイル(Crompton Corporation(Greenwich,USA)からのCrompton L9000−1000)を100mlの評価されるべき組成物に導入し、周囲温度にて一時的に溶解したシリコーンオイルの量を決定した(これを、混合物に対して溶解したオイルの%として表した。)。
【実施例5】
【0034】
ノナフルオロブチルエチルエーテル75.4重量%およびメチルテトラヒドロフラン24.6重量%の共沸組成物に関して、17重量%を超えるオイルが溶解した。
【実施例6】
【0035】
ノナフルオロブチルエチルエーテルに関して、最大2重量%のオイルが溶解し、分離が観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルテトラヒドロフランおよび式CORの少なくとも1つのノナフルオロブチルアルキルエーテルを含む組成物であって、ここでRは、1から4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖飽和アルキル鎖を表す組成物。
【請求項2】
メチルテトラヒドロフラン5から40重量%および式CORのノナフルオロブチルアルキルエーテル60から95重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式CORのノナフルオロブチルアルキルエーテルが、ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびノナフルオロブチルエチルエーテルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ノナフルオロブチルアルキルエーテルが、主にノナフルオロn−ブチルアルキルエーテルおよびノナフルオロイソブチルアルキルエーテルからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
共沸または共沸系であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
メチルテトラヒドロフラン5から15重量%およびノナフルオロブチルメチルエーテル85から95重量%を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
大気圧(103.3kpa)にて59.7℃の沸点を有する、メチルテトラヒドロフラン8重量%およびノナフルオロブチルメチルエーテル92重量%を含む共沸組成物。
【請求項8】
メチルテトラヒドロフラン10から40重量%およびノナフルオロブチルエチルエーテル60から90重量%を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
大気圧(103.3kpa)にて71.6℃の沸点を有するメチルテトラヒドロフラン24.6重量%およびノナフルオロブチルエチルエーテル75.4重量%を含む共沸組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする冷凍剤。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする溶媒。


【公表番号】特表2011−509329(P2011−509329A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541811(P2010−541811)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050048
【国際公開番号】WO2009/087322
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】