説明

ペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法

【課題】 各種用途における有用な高分子材料として、適当な分子量Mwおよび樹脂物性を有するとともに該樹脂物性の安定性にも優れ、さらに、製造後の取扱い性にも優れるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、安全性、経済性および生産性に優れ且つ容易に得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法は、溶液重合により得ておいたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の溶液から溶媒を揮発させて流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を用いてペレット化する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、接着剤、塗料、シーリング剤、エラストマー、床材等のポリウレタン樹脂の他、硬質、軟質もしくは半硬質のポリウレタン樹脂、さらには、界面活性剤、サニタリー製品、脱墨剤、潤滑油、作動液などの用途における高分子材料として有用であり、近年は、その可能性に鑑みて、上に述べた以外の様々な新用途への利用が考えられつつある。
従来から、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を製造する方法としては、バルク重合により得る方法や、沈殿重合後の反応液から濾過や遠心分離で樹脂分を分離しこれを乾燥して得る方法や、溶液重合後の反応液に貧溶媒を加えて樹脂分を沈殿(再沈)させ濾過や遠心分離で樹脂分を回収してこれを乾燥して得る方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
しかしながら、上述のバルク重合においては、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の重量平均分子量Mwを所定のレベルまで上げることが非常に困難であり、上記各種用途における高分子材料として有用な分子量Mw2万〜50万程度のものを、容易に得ることが出来ないという問題があった。また、重合中に除熱することや、得られる樹脂の粘度をコントロールすることが非常に困難であるという問題もあった。
これに対し、上述の沈殿重合や溶液重合は、十分な分子量のものが得られ、除熱や粘度コントロールも可能であるという利点を有するが、沈殿重合や溶液重合では、通常、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がろ過等で溶媒から分離したのちの加熱乾燥により粉体状で得られるので、溶剤不在の固形状態で取り扱えるという利点はあるものの、反面、その固形形状が粉体であることから、粉体粒子間の摩擦等による静電気の発生が粉塵爆発に繋がる危険性が非常に高く、他方、貧溶媒として用いる溶媒に引火性のものが多いことから、樹脂粉体に予め帯電防止剤等の添加剤を混合しておく必要があり、経済性に劣るほか、用途によっては帯電防止剤等の添加が物性を大きく低下させたり、その用途に使用できないようにさせたりする、という問題がある。固形状の樹脂を得る上で、重合後や再沈後に濾過や遠心分離を必ず行わなければならず、生産性に劣り、コスト高となるという問題をも有する。
【0004】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を粉体状で得た場合においては、その仕込み時等に非常に飛散しやすく正確な使用量の調整(計量)が極めて困難であることや、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、本来吸湿性に富み、粉体であればなおさら吸湿しやすいため、その他の樹脂に比べて、その取扱い環境や保存環境によって含有水分量が大きく異なり(含有水分量に顕著なバラツキがあり)、樹脂物性が不安定となること、等の問題がある。
【特許文献1】特開平05−17566号公報
【特許文献2】特開平05−310908号公報
【特許文献3】国際公開第03/040210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、各種用途における有用な高分子材料として、適当な分子量Mwおよび樹脂物性を有するとともに該樹脂物性の安定性にも優れ、さらに、製造後の取扱い性にも優れる固形状の、すなわち、ペレット状のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、安全性、経済性および生産性に優れ且つ容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した。その過程において、本発明者は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、粉体状でなく、ペレット状で得ることにすれば、粉塵爆発の問題を回避することができ、帯電防止剤等の添加剤の使用を避けることもできることを考えて、ペレット化を容易に実現できる方策を工夫することにした。そして、まず溶液重合により樹脂溶液として得、その後、この樹脂溶液から溶剤分だけを加熱混合しながら揮発させる(脱揮する)ようにして流動性のある樹脂状態を保持しておいた上で、そのまま、ペレット化に用いるようにすれば、前記従来の重合方法を前提とした場合のように一旦粉体状態で得ることも無いため、工業的観点から見ても、非常に生産性良く経済性にも優れる上、粉塵爆発の危険性も無く安全性の高い状態で、かつ、容易に、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂得ることができることを見出した。
【0007】
ところで、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂には、その吸湿の強さを抑えるために、取り扱いに注意を要するという別の問題もあるが、本発明者は、種々の実験により、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂がペレット状であれば、その含有水分量のバラツキが大きく減少することを確認し、また、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をペレット状にすることで、使用量の調整(計量性)の困難性をも容易に解消し得ることも見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法は、溶液重合により得ておいたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の溶液から溶媒を揮発させて流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を用いてペレット化する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各種用途における有用な高分子材料として、適当な分子量Mwおよび樹脂物性を有するとともに該樹脂物性の安定性にも優れ、さらに、製造後の取扱い性にも優れるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、安全性、経済性および生産性に優れ且つ容易に得ることができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称することがある。)について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
以下では、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂とその製造と製品化について詳しく説明する。
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂とその製造>
(ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂)
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂(以下では、エチレンオキシド系共重合体を含めての意味であるとする。)は、その分子構造については、主鎖にエチレンオキシドモノマー等のアルキレンオキシドモノマーに由来するエーテル結合を有する構造でありさえすれば、その他の部分の構成は特に限定されない。
【0010】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂としては、エチレンオキシドと下記構造式(1)で示される置換オキシラン化合物とを含む原料モノマーを重合してなるものが好ましい。この場合の重合は置換オキシラン化合物に由来するオキシラン基の開環重合である。
【0011】
【化1】

【0012】
(ただし、R1はRa基または-CH2-O-Re-Ra基であり、該基において、Raは炭素数1〜16の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、(メタ)アクリロイル基およびアルケニル基の中のいずれかであり、Reは−(CH2-CH2-O)p−の構造を有する基(pは0から10までの整数)である。)
上記構造式(1)におけるR基は置換オキシラン化合物における置換基である。
置換オキシラン化合物は、上記構造式(1)で示す化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、2種以上からなるものであってもよい。
構造式(1)で示される置換オキシラン化合物としては、具体的には、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、シクロヘキセンオキシドおよびスチレンオキシド、または、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルおよびエチレングリコールメチルグリシジルエーテルなどを挙げることができ、さらに、置換基Rが架橋性の置換基である場合、つまり、置換基Rがアリール基、アルケニル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する場合として、エポキシブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジルおよびグリシジル−4−ヘキサノエート、または、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルおよびアリルペニルグリシジルエーテルなども挙げることができる。
【0013】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を架橋体にして用いるためには、置換オキシラン化合物として、置換基Rが架橋性置換基である置換オキシラン化合物を用いることが好ましい。
特に限定する訳ではないが、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂としては、その分子構造中に、エチレンオキシドモノマー由来の構成単位を90〜97モル%有するものが好ましい。同様に、置換オキシラン化合物群に含まれる化合物モノマー由来の構成成分が、特に限定はされないが、好ましくは3〜10モル%である。
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、その分子構造中、エチレンオキシドおよび置換オキシラン化合物群に含まれる化合物以外のモノマーに由来の構成成分を、上記各種モノマー(エチレンオキシドおよび置換オキシラン化合物群)の含有割合範囲が満たされる範囲内で含んでいてもよい。
【0014】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは50,000〜200,000、さらに好ましくは40,000〜130,000である。重量平均分子量が20,000未満であると成形物にタックの生じる傾向があり、500,000を超えると、成形が困難となり、加工性およびハンドリング性が低下する傾向がある。
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の分子量分布は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。分子量分布が3を超えると、成形体にした時にタックが生じ、ハンドリングが悪くなる傾向がある。ここに、分子量分布とは、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)の意味である。
【0015】
(重合)
−重合によるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の合成−重合工程−
本発明の製造方法における重合工程においては、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得るための重合法として、溶液重合法を採用するようにしている。後述する脱揮工程を経由した上でペレット状の樹脂を成形するためであり、本発明の特徴的構成となる。なかでも、予め仕込んでおいた所定の溶剤を溶媒とし、必要であれば所定の反応温度まで昇温しておいて、開始剤を投入後、これにモノマー成分をフィードしながら重合を行う溶液重合が、反応熱を除熱しやすいなど、安全性に優れるため、特に好ましい。
【0016】
溶液重合に用いる溶媒として用い得る溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ヘプタン、オクタン、n−へキサン、n−ペンタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒;などが好ましく挙げられ、なかでもトルエンおよびキシレンが特に好ましい。溶媒は先の重合で用いたものを揮発回収後に再利用するのでも良い。
【0017】
溶液重合反応は、例えば、エチレンオキシド95モル部、構造式(1)で示される置換オキシラン化合物5モル部、これらの合計100モル部に対し0〜5モル部のその他のモノマーからなる原料モノマーを、原料モノマー合計100重量部に対し10〜300重量部の溶媒の存在下、温度90〜120℃で1〜10時間、行うようにすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、重合工程後、すなわち、溶液重合により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液の含有水分量が7000ppm未満となるようにすることが、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量をコントロールし易い点で好ましく、上記含有水分量は、より好ましくは200ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満である。重合工程後の樹脂溶液の含有水分量が7000ppm以上であると、低含有水分量(特に100ppm程度)の製品を得る場合、製造コストが大幅に上昇することとなるおそれがある。
【0018】
重合工程後の樹脂溶液の含有水分量を上記のように調整・制御する手段としては、例えば、重合反応に使用するモノマー(コモノマー)や溶媒の含有水分量や、重合反応を行うために用いる装置(例えば、反応釜、原料タンク、配管、バルブなど)に付着している水分を管理すること等が挙げられる。重合反応に使用するモノマー(コモノマー)や溶媒の含有水分量をより低く抑えておくためには、重合反応に使用する前に、脱水塔に通して脱水処理したもの等を用いることが好ましい。
原料である液体および気体は網目状物(フィルター、篩、ストレーナなど)を通過される事により異物の混入を防ぐ事が出来る。
【0019】
(重合後の処理)
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の回収−脱揮工程−
本発明の製造方法では、溶媒を用いる重合反応(溶液重合)によってノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を合成した後の反応液(上記重合工程後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液)からノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得るために、加温下において溶媒として用いた溶剤を揮発させる(すなわち脱揮する)ことで回収するようにしている。このようにすれば、重合反応後に一旦回収したノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、粉体にしたり溶融させたりする必要がなく、初めから加温下の流動性のある状態で回収することができるので、後にペレット化することを考慮すれば、非常に生産性良好であり且つ経済性に優れた容易な製造方法となる。
【0020】
ここで脱揮とは、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂と、溶媒として用いた溶剤と、残存モノマーとを含む重合反応液(樹脂溶液)から、該溶媒と残存モノマーとを揮発除去させることによりノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得ることを言う。脱揮の程度は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が完全に溶媒を含まないものになっていることは必要でなく、溶媒が所望の濃度以下となっていればよい。
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂における溶媒濃度は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。溶媒濃度を0.01重量%未満にしようとすると、脱揮条件を厳しくする必要があり、そうするとノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の熱劣化につながり、性能低下が生じることとなるおそれがある。他方、溶媒濃度が30重量%を超えると、脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂にタックが生じ、ブロッキングなどが生じることとなるおそれがある。
【0021】
なお、重合反応液中の溶媒成分は、通常は、重合する際に用いる溶媒をいうが、重合後に他の溶媒を反応液(樹脂溶液)に含めた場合の該他の溶媒も上記溶媒成分として含むものとする。
脱揮の方法、脱揮する際に用いる装置および各種条件としては、通常公知の脱揮の方法、使用可能な装置および設定される条件等を採用すればよく、特に限定されるわけではない。脱揮する際に用いる装置(脱揮装置)としては、撹拌槽蒸発器、下流液柱蒸発器、薄膜蒸発器、高粘度用薄膜蒸発器、表面更新型重合器、ニーダー、ロールミキサー、インテンシブミキサー(いわゆるバンバリーミキサー)、KRCニーダー、押出機などが好ましく挙げられ、用いる装置によって適宜使用条件が設定され得る。
【0022】
脱揮時の温度については、好ましくは40〜300℃、より好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは90〜200℃である。この温度範囲を満たすようにすることによって、上述したような溶媒濃度に調整することができ、また、含有水分量についても前述した範囲に調整することができる。脱揮時の温度が40℃未満の場合は、残存する溶媒が多くなるおそれがあり、300℃を超える場合は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂自体が熱分解するおそれがある。ここで、上記脱揮時の温度とは、具体的には、脱揮装置内のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の温度であるとする。
脱揮時の圧力は、好ましくは13〜100,000Pa、より好ましくは133〜70,000Pa、さらに好ましくは1333〜40,000Paである。この圧力の範囲を満たすようにすることによって、脱揮後に、上述した溶媒濃度に調整することができ、また、含有水分量についても前述した範囲に調整することができる。上記脱揮時の圧力が13Pa未満の場合は溶媒がフラッシュしてフォーミングが起こるおそれがあり、100,000Paを超える場合はノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が分解するぐらいまで温度をかけなければならないおそれがある。ここで、上記脱揮時の圧力とは、具体的には、脱揮装置の槽内圧力である。
【0023】
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、上述した加温下の脱揮により得られた樹脂であり、温かく流動性を有する樹脂である。脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の温度は、好ましくは40〜300℃、より好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは90〜200℃である。
最終製品としての樹脂の含有水分量を考慮した場合、該含有水分量が、脱揮終了の時点(具体的には脱揮装置から排出された時点)で、7000ppm未満であることが好ましく、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは50ppmである。
ここで言う水分は、通常、重合の際に用いたモノマー(コモノマー)や溶媒のほか、前述した重合反応を行うために用いる装置などに含まれていたものであり、樹脂の合成の際に樹脂中に含まれ得る。
【0024】
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、帯電防止剤を含まないものとすることができる。沈殿重合するか、溶液重合後に貧溶媒を加えて再沈させるかした後、樹脂を濾過や遠心分離で分離し、加熱乾燥する方法ではなく、溶液重合後の反応液(樹脂溶液)を脱揮する方法により得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂においては、加熱乾燥下における樹脂(樹脂粉体)どうしの摩擦等で生じる帯電を考慮して帯電防止剤を含めておく必要がないためである。しかし、脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂であっても、必要に応じ、帯電防止剤を含ませることができる。
脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の粘度は、固形分99重量%以上で100℃の場合、好ましくは5000〜100000ポイズ、より好ましくは10000〜80000ポイズ、さらに好ましくは15000〜60000ポイズである。5000ポイズ未満であると発泡およびタックが生じるおそれがあり、100000ポイズを超えると粘度が高すぎて脱揮ができないおそれがある。
【0025】
本発明の製造方法においては、脱揮工程により除去した溶媒を回収等して、溶液重合する工程において再利用してもよい。具体的には、揮発させた溶剤から軽質分および重質分を除く精製処理をし、その後、さらに脱水塔に通して処理する等して脱水しておき、再利用することが好ましい。上記精製処理や脱水処理を行うための装置や条件等は、特に限定はされず、通常の処理装置や条件等を適宜選択採用すればよい。なお、上記再利用に関しては、精製・脱水する溶剤に、モノマー成分が含まれていても何ら問題はなく、再利用時の重合反応に使用され得る。
−安定剤などの添加−添加工程−
本発明の製造方法においては、後述のペレット化工程を行うまでに、脱揮後の流動状態にあるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に、酸化防止剤に代表される安定剤などの各種添加剤を含有させておくことがある。すなわち、重合工程中や重合工程後や脱揮工程中のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂溶液、および/または、脱揮工程後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に、各種添加剤を添加し、必要に応じて混合・混練等しておくことができる。具体的には、脱揮工程により流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得た後、該樹脂に各種添加剤を添加して混合等することが一般的であるが、特に限定はされず、例えば、少量生産プロセスであれば、上記重合工程後の樹脂溶液や脱揮工程を行っている途中の樹脂溶液に各種添加剤を添加しておくと、脱揮工程とともに添加工程も行うようにすることができる。
【0026】
上記添加剤としては、例えば、抗酸化剤(酸化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、耐光性向上剤、可塑剤(ジオクチルフタレート、低分子量ポリエーテル化合物等)、フィラー(カーボン、ガラス繊維、無機繊維等)、界面活性剤(エチレンオキシド系非イオン性活性剤等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)などを挙げることができる。
添加工程においては、上記添加剤のほかに、有機質微粒子や無機質微粒子、低分子化合物等を添加することもできる。有機質または無機質の微粒子は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の使用目的や使用形態に応じて、ブロッキング防止等の機能を発揮し得る。有機質微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの微粒子を挙げることができ、無機質微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物などを挙げることができる。
【0027】
添加工程では、最終製品としてのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂において必要な成分であるとして重合開始時や重合反応時等から既に添加していた添加剤等であっても、脱揮工程等において減少してしまったり除去されたりすることもあるので、そのような場合は同様の添加剤を適量再度追加して添加してもよい。
添加工程では、添加した添加剤等を樹脂中に均一に混合させる必要がある場合は、混練機等を用いる。具体的には、前述のように脱揮工程とともに添加工程をも行うようにする場合は、通常、脱揮装置において混合・混練処理もなされるため、添加剤等を添加しさえすればそれ以外に混合等を行う必要はないが、脱揮工程後に添加剤等を添加した場合であれば、より均一に添加剤等を含有させるため、混合処理も行うようにすることが好ましい。
【0028】
添加工程において用いる機器としては、混練機として、例えば、ノリタケ社製、製品名:スタティックミキサーやスルザー社製、製品名:スルザーミキサーなど、単軸型押出機として、例えば、プラスティック工学研究所製、製品名:GTシリーズなど、二軸型押出機または二軸型混練機として、ニーダー、特殊ニーダー、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製、製品名:S2KRCニーダー;森山製作所社製、製品名:ニーダールーダー)などが挙げられ、これらを用いるにあたっては、これらを、重合槽や樹脂溶融槽、また、脱揮工程を行った場合であれば脱揮に供する装置に、ポリマーポンプやギアポンプ等を介して連結しておくことが好ましい。
【0029】
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製品化>
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のペレット化−ペレット化工程−
本発明の製造方法では、溶液重合工程、脱揮工程および必要に応じて行う添加工程等を経て得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、以下のようにしてペレット化する。一般的には、脱揮後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、冷却固化および成形することにより、ペレット状にし易い形状にしておき、これを引き続きペレット化に用いるようにするが、特に限定はされない。ここで、ペレット状とは、一般的に、粉体とは区別される程度の粒状であればよく、また、円柱状、短冊状、球状、半球状、ラグビーボール状、直方体状のような定形性を有するものであっても、
樹脂を砕いたチップ状のものや、フレーク状のもののような不定形性のものであってもよく、その形状は特に限定されない。
【0030】
得られるペレットの寸法は、特に限定はされないが、最大外径が0.1〜50mmであることが好ましく、1.0〜30mmであることがより好ましい。
(冷却固化工程)
本発明の製造方法においては、脱揮工程後(以下、添加工程後を含むとする。)のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、流動状態であり温かい状態であるため、これを冷却して固化させる工程を行う。冷却して固化させる工程(以下、冷却固化工程と称することがある。)としては、特に限定はされないが、例えば、脱揮後の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、金属板に接触させて冷却固化させる工程が好ましい。
【0031】
冷却固化工程において用い得る金属板としては、例えば、ドラムクーラー(例えば、ツバコー・ケー・アイ社製、製品名:COMPACT CONTI COOLER;三菱化学エンジニアリング社製、製品名:ドラムクーラーDC;モダンマシナリー(株)製、製品名:ラミネーター)、シングルベルトクーラー(例えば、サンドビック社製、製品名:スチールベルトクーラー;日本スチールコンベア(株)製、製品名:スチールベルトシングルクーラー)、ダブルベルトクーラー(例えば、サンドビック社製、製品名:ダブルスチールベルトクーラー)などの冷却装置における、樹脂と接触し得る、冷却用金属板・金属面を挙げることが出来る。金属板・金属面はその裏側から冷媒を吹き付ける等して所望の温度に冷やしている。ダブルベルトクーラー、シングルベルトクーラーおよびドラムクーラーを用いた場合、冷却ベルト、冷媒の温度、冷媒の種類の選択、および、Tダイの幅やドラムおよびベルトの幅などの選択により、任意の生産量の条件を容易に得ることができる。
【0032】
金属板・金属面の冷却温度は、例えば、脱揮工程後の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂等を結晶化温度および/または融点以下の温度にすることができる温度であり、具体的には、好ましくは−20〜40℃、より好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃である。
冷却固化工程においては、通常、上記いずれの冷却装置を用いた場合でも、脱揮工程後のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を金属板・金属面上に吐出して、金属板・金属面上を搬送しつつ冷却固化するようにする。
上記金属板・金属面上から冷却された樹脂を剥離するために、金属面上にテフロン(登録商標)のシートを貼るまたは金属面をテフロン(登録商標)処理やシリコン処理することが出来る。
【0033】
(ペレット化工程)
本発明の製造方法においては、脱揮後の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を最終製品としてペレット状(粒状)にするが、その方法としては、前述の冷却固化に先立って、または、冷却固化と同時に、ペレット化に用いるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、押出機等を用いていったんシート状、ひも状(ストランド状)、板状などに成形しておき(第1成形工程)、この成形物をペレット状に加工する(ペレット化する)(第2成形工程)ことが好ましいが、初めからペレット状に成形し且つ冷却するようにしてもよい。例えば、脱揮後の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、側面に複数の孔(所望の径)の開いた円筒ドラムに仕込み、このドラムを中心軸(円軸)を水平にして回転させることで、その孔から流動状態の樹脂を冷却固化用の金属板上に滴下し、ペレット状(粒状)の樹脂を成形すること等が、初めからペレット状に成形し且つ冷却することとして例示される。なお、シート状、ひも状、板状などへの第1成形工程は、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を成形用の型となる容器などに流し込んで行ってもよい。
【0034】
上記冷却固化と同時に行う第1成形工程の例としては、前述した、脱揮工程後の流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をそのまま冷却固化用の金属板・金属面に接触させる場合であって、接触させると同時にシート状に広げる場合等が挙げられる。冷却固化の効率を高める上では、成形工程ではシート状または板状にすることが好ましい。
第1成形工程を押出し成形で行う場合は、前述した脱揮装置の出口(樹脂排出口)にギアポンプなどを取り付けて、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を脱揮装置から抜き取りつつ、さらに押出機を連結しておき上記樹脂を押出す方法や、上記押出機の代わりにTダイやロールを用いる方法等が好ましい。
【0035】
押出機としては、単軸型押出機、二軸型押出機(例えば、製品名:SUPERTEXαII)、SCRセルフクリーニング式リアクター(三菱重工(株)製)などが挙げられるが、一定の厚さのシート状または板状に押出すためには、押出機にTダイを設置して押出すことが好ましい。ペレット状や微細粒子状に押出すには、ドロップフォーマー(製品名:ロートフォーム、サンドビック社製)を設置することが好ましい。
押出し厚みは、冷却固化工程での冷却効率や、冷却固化後にペレット状にしたときのサイズ等も考慮して、0.1〜50mmとすることが好ましく、より好ましくは1.0〜30mm、さらに好ましくは1.5〜25mmである。
【0036】
第2成形工程、すなわち、ペレット化する工程に用いる装置としては、例えば、シートペレタイザー(例えば、ホーライ社製、製品名:シートペレタイザSG(E)−220)、クラッシャー(例えば、ホーライ社製のクラッシャー)などが挙げられる。なかでも、得られるペレットの粒度が揃いやすいという点で、シートペレタイザーが好ましい。シートペレタイザーとしては、低流動点を有する樹脂を切断する場合などでは、カッター部分、特にスリッターロール部分を冷媒で冷却したり、それらの部分において樹脂を冷風で冷却したりすることができる機能を有するものが好ましい。この目的での冷却温度としては、ペレット状にしようとするノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を結晶化温度および/または融点以下の温度にすることができる温度であることが好ましい。したがって、冷却温度は、好ましくは−20〜40℃、より好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃である。
【0037】
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの分級−分級工程−
本発明の製造方法においては、ペレット化する工程で得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のペレットを、所定の粒径に分級(所定の粒径のものを選別)する分級工程を含んでいてもよい。分級工程においては、通常、ふるいを用いるが、樹脂ペレットの生産性を考慮すれば、振動する傾斜面のふるいの上に樹脂ペレットを流して分級することや、横型ラッパ状ふるいの傾斜面で樹脂ペレットを回転させながら分級すること等が好ましい。分級工程は、通常ペレット化する工程に直結して引き続き行うようにすることが好ましいが、例えば、ペレット化後に樹脂ペレット同士が融着しているような場合にあっては、必要に応じ、解砕機等を用いて融着している樹脂ペレット同士を単一分散化してから分級を行うようにしてもよい。
【0038】
本発明の製造方法においては、上記分級工程を備えるとともに、分級後における、選別した所定の粒径以外の残留ペレットを、前記ペレット化工程以前の少なくとも1つの工程(例えば、重合後の熟成工程、脱揮工程やペレット化直前の樹脂冷却に入る前の段階など)におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその溶液に混合してもよい。
すなわち、通常、分級後は、所定の粒径以外のものは廃棄されるが、再度流動性のある状態に戻してリサイクル(再使用)すれば、生産性、経済性が大きく向上する。また、本発明の製造方法において、前述した添加工程を備えるようにする場合は、リサイクルのために残留ペレットを混合する工程は、前記添加する工程以前の少なくとも1つの工程(例えば、重合後の熟成工程や脱揮工程や添加工程等)におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその溶液に混合することができる。すなわち、本発明では、前述した樹脂を成形および/または冷却する工程以前の少なくとも1つの工程に、残留ペレットを混合してリサイクルできるのである。
【0039】
同様に、本発明の製造方法においては、前述した第1成形工程および第2成形工程において、余った樹脂残渣を、上記残留ペレットと同様の工程に混合してリサイクルすることができ、生産性、経済性の面で同様の効果が得られる。例えば、シート化した樹脂をシートペレタイザーでペレット化した際に、樹脂ペレットに供されなかったシートの端などの余分な樹脂残渣などが挙げられる。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの充填−充填工程−
本発明の製造方法においては、ペレット化工程を経て得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のペレットを、輸送用や貯蔵用等の容器に充填する工程(充填工程)をさらに備えていてもよい。含有水分量等の樹脂物性をできるだけ保持したまま、その後の輸送や貯蔵を行うためである。充填に用いる容器は、固定形状のものであっても袋などのように固定形状ではないものであってもよく、該容器の材質としては、例えば、アルミラミネートフィルムおよびポリエチレンフィルムなどが好ましく挙げられる。
【0040】
<ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの含有水分量の制御>
本発明の製造方法においては、所定の段階において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの取扱い環境の雰囲気を管理することで、含有水分量の制御を行うようにすることができる。また、この雰囲気管理をしながら、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの調湿(加湿および/または乾燥)を行うことで含有水分量をコントロールすることもできる。上記雰囲気管理および調湿について、以下に説明する。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂ペレットの雰囲気管理による調湿工程−
上記所定の段階、すなわち、重合後の樹脂の含有水分量を調整する工程後、充填工程以前において、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量が、所定の範囲、具体的には7000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは4000ppm未満の所望の含有水分量となるように、雰囲気管理するようにする。
【0041】
雰囲気管理は、上記所定の段階のすべてにおいて、具体的には上記所定の段階において行う全工程および各工程間の移送等の段階を含めたすべてにおいて、行うようにすることが、樹脂の含有水分量をコントロールする上では最も好ましいが、特にこれに限定はされず、上記所定の段階の少なくとも一部(例えば、少なくとも1つの工程、あるいは、工程間の移送段階のみ等)において行うようにしてもよい。
雰囲気管理は、前記調整する工程において調整したノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量の範囲(7000ppm未満)内の所望の値になるようを、前記充填工程の終了時点まで保持するようにする。なお、ここでいう保持とは、樹脂の含有水分量が少なくとも所定の値(7000ppm未満)の範囲内の特定の値になるようにすることである。
【0042】
雰囲気管理の方法としては、具体的には、上記所定の段階における各種装置、各種機器および樹脂移送経路等のうちの所望の領域を、機密性の高い材料で覆うなどして実質的な閉鎖系を設け、その中に所望の含有水分量に対応する露点を有する気体を送り込むことで系内の雰囲気をコントロールする方法などを好ましく挙げることができる。
このような露点管理により、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量を7000ppm未満の所望の量に調整することが容易となる。
系内に送り込む気体の圧力は、系外から空気(特に水分を多く含んだ空気など)を吸い込まないように、大気圧を超えるようにすることが好ましい。
【0043】
系内に気体を送り込む装置は、特に限定されることはなく、例えば、軸流通風機(プロベラファン)、多翼通風機(シロッコファン)、プレートファン、リミットロードファンやターボファンなどの通風機(ファン)類や、ターボブロワー、ロータリーブロワー、プロペラブロワーやルーツブロワーなどの送風機(ブロワー)類、レシプロコンプレッサー、ターボコンプレッサーやプロペラコンプレッサーなどの圧縮機(コンプレッサー)類などを挙げることができる。
系内に気体が送り込まれるときの速度は、特に限定はされないが、製品に接触する面での送風方向の線速度として、0.01m/秒〜100m/秒とすることが好ましい。100m/秒を超える場合は、圧力損失が大きくなったり、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂が気体に同伴されて、装置を運転できなくなるおそれがあり、0.01m/秒未満の場合は、一定の水分量に到達するまでの時間が長くかかりすぎるおそれがある。
【0044】
送り込んだ気体が計内で滞留しないように、例えば、実質的な閉鎖系の中で、周囲に比べ期待の線速度が特に遅くなる部分には、気体を逃すための小さな排風口を設けることが好ましい。
−ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の乾燥と加湿による調湿工程−
本発明では、上記所定の段階において、雰囲気管理を行うとともに、必要に応じて、これとは別に、樹脂の含有水分量を所定の値にコントロールする調湿工程を備えていてもよい。最終製品としての樹脂の含有水分量をほぼ正確にかつ効率良くコントロールできる点で、雰囲気管理および調湿工程を共に行うのが好ましい。ここで、調湿とは、上記所定の段階におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に対して積極的に加湿および/または乾燥を行うことで、意図的に所望の含有水分量となるように処理することである。
【0045】
調湿工程は、上記所定の段階中のどの段階で行うかは特に限定されず、その工程数についても1回であってもよいし複数であってもよく特に限定はされないが、例えば、充填工程の直前で所望の含有水分量となるように調湿すれば、最終製品としての樹脂の含有水分量を適切にコントロールすることができ品質のばらつきも抑えることができ、また、脱揮工程等の前記調整する工程の直後において雰囲気管理での変化を見越して調湿しておけば、充填工程の直前等といった最終段階で調湿を行うよりも経済性や生産性の面で好ましい場合もある。
加湿による調湿の方法としては、特に限定はされないが、例えば、水を吹きかける方法等が挙げられる。
【0046】
水を吹きかける方法としては、具体的には、ナウターミキサーやコニカルドライヤー等の装置にノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を投入して攪拌しながら水を吹きかける方法等がある。吹きかける水の量、吹きかける時間、吹きかける時の装置内の温度、水自体の温度および装置の攪拌回転速度などは、所望の含有水分量所望に応じて適宜設定すればよい。
乾燥による調湿の方法としては、特に限定はされないが、例えば、減圧下乾燥気体(空気、窒素、アルゴン、イリウムなど)を通過させて乾燥させる方法、(1)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をサイロに投入後、圧縮空気を上下から吹きかけ、循環させて乾燥させる方法、(2)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂をナウターミキサーやコニカルドライヤーに投入後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法、(3)ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を通気回転乾燥機(例えばロータリーキルン等)に投入後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法等が挙げられる。これら方法において、乾燥温度(空気の温度)や乾燥時間などは、所望の含有水分量所望に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
本発明においては、周りの空気が非常に乾燥しておりかつ目標とする含有水分量が高い(例えば4000ppm)ケースなど、特定の場合に限り、雰囲気管理を行う必要性に乏しい場合もある。このような場合、雰囲気管理を行わずに調湿工程のみを行うようにすることもできる。
<得られるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂とその用途>
本発明の製造方法により得られるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、含有水分量が7000ppm未満であることが好ましく、より好ましくは5000ppm未満、さらに好ましくは4000ppm未満である。ここでいう含有水分量は、最終製品段階でのノニオン性アルキレンオキシド系樹脂、具体的には、前記充填工程終了時点(充填し終えた時点)での樹脂、における値を意味し、本発明の方法における製造過程の一部または全てにおいて達成されている必要はない。上記含有水分量が7000ppm以上の場合は、樹脂の誘電率が必要以上に大きくなるため、例えば、カラーフィルターの保護膜などの用途に用いた場合は、樹脂が実質的に導電性を有し上記保護膜としては致命的な機能低下を引き起こしてしまうおそれがあり、また、水分が金属イオン分などと反応して水酸化物等を生成してしまうため、例えば、ポリマー電池の電解質層などの用途に用いた場合は、金属と電解質層との界面に絶縁層を形成してしまい、電位低下するとともに、定電流下での電圧が上昇し続け、電池のサイクル特性も悪化するおそれがある。また、半導体用粘着テープに用いた場合は、水分により誤動作が誘発されるおそれがあり、ウレタンフォームでは水分がイソシアネート基と反応して十分に反応が進行しないため物性が低下したり発泡が生じたりするおそれがある。
【0048】
本発明の方法により得られるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、特に限定はされないが、例えば、接着剤、塗料、シーリング剤、エラストマー、床材等のポリウレタン樹脂の他、硬質、軟質もしくは半硬質のポリウレタン樹脂、さらには、界面活性剤、サニタリー製品、脱墨剤、潤滑油、作動液、ポリマー電池に用いるセパレーター、電極および高分子電解質層や、カラーフィルター保護膜、レジストやフレキソ印刷版材等に用い得る感光性樹脂、半導体用粘着テープ、および、ウレタンフォームなどの広範囲な用途に対し、有用な高分子材料として好ましく使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「時間」を単に「h」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量」を「wt」と記す(例えば、「重量%」を「wt%」と、「重量/重量」を「wt/wt」と記す。)ことがある。
実施例と比較例における脱水処理と各種測定の条件を以下に示す。
モレキュラーシーブによる脱水処理: 脱水・乾燥しようとする溶媒(トルエン等)や各種単量体に対し、モレキュラーシーブを10wt%だけ添加後、窒素置換した。なお、使用したモレキュラーシーブは、ユニオン昭和社製の、製品名:モレキュラーシーブ(タイプ:4A 1.6)である。
【0050】
重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)の測定: ポリエチレンオキシドの標準分子量サンプルを用いて検量線を作成したGPC装置により測定した。重合反応後に得られた反応混合物(ポリマーを含む)を所定の溶媒に溶解後、測定した。
熱分析(融点の測定): 示差熱分析装置を用い、下記温度パターンでポリマーの融点を測定した。サンプルとするポリマーは、重合反応後に得られた反応混合物(ポリマーを含む)を減圧乾燥機により80℃で2時間乾燥し、反応混合物中の揮発分を除いた後、乾燥窒素流通下で10時間以上調湿したものとした。
分析装置(セイコー電子工業社製、製品名:熱分析装置「DSC220」)内で、80℃まで急熱(急加熱)して一旦ポリマーを融解させたあと、−5℃/minの冷却速度で80℃から−100℃まで冷却することにより、結晶化させたポリマーを、5℃/minの昇温速度で−100℃から80℃まで昇温する際に、結晶が完全に融解した温度をポリマーの融点(Tm(℃))として求めた。
【0051】
脱揮後における樹脂中の残存溶媒量の測定: 高速液体クロマトグラフィー(カラム:ODS−3(GLサイエンス社製)、カラム温度:40℃、流量:1.0mL/分、注入量:5μL、UV検出器:210nm、溶離液:「アセトニトリル/0.1wt%リン酸水溶液」の混合液(体積比:アセトニトリル/0.1wt%リン酸水溶液=85/15))により、試料サンプル中の残存溶媒量(wt%)を測定する。試料サンプルとしては、測定対象とする脱揮後の樹脂を、固形分1.0wt%となるように上記溶離液で希釈したものを用いる。具体的な測定方法は、初めに所定の溶媒(例えば、トルエン)についての検量線サンプルを用いて検量線を作成しておき、その後、上記試料サンプルを測定し、検量線を用いて残存溶媒量を求める。
【0052】
脱揮後における樹脂中の含有水分量の測定: グローブボックス中に、下記(1)〜(4)、すなわち、(1)脱揮により得られたエチレンオキシド系樹脂を、乾燥雰囲気下、熱時で(脱揮温度に近い樹脂温度を保持した流動性ある状態で)サンプリングし自然冷却しておいたもの、(2)溶媒としてのトルエン(予めモレキュラーシーブス(ユニオン昭和社製、製品名:モレキュラーシーブ3A1.6あるいはモレキュラーシーブ4A1.6)にて含有水分量を極力減らしておいたもの)、(3)ガラス容器および(4)注射器を入れて、2時間以上乾燥する。乾燥後、ガラス容器に、エチレンオキシド系樹脂2gとトルエン18gとを投入し、マグネチックスターラーで十分に溶解させ樹脂溶液とした後、注射器で該樹脂溶液をすべて採取する。同時に、別の注射器でトルエンのみを18g採取する。採取後のそれぞれの注射器をグローブボックスから外部へ持ち出し、AQUACOUNTERQ−7(HIRANUMA社製の含有水分量測定装置)を用いて、樹脂溶液とトルエンのみとにおける含有水分量をそれぞれ測定する。この測定により求められる含有水分量(ppm)の値から、樹脂溶液とトルエンのみとに含まれる水分の重量(mg)をそれぞれ算出し、その差からノニオン性アルキレンオキシド系樹脂に含まれる水分の重量(mg)を求める。そこで、この差である水分の重量(mg)を、初めに溶解させたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の重量(2g)で割ることにより、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の含有水分量(ppm)を算出する。
【0053】

〔合成例1〕
マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)および添加口を備えた100Lの反応器を、溶媒(トルエン)で洗浄した後、加熱乾燥および窒素置換した。この反応器に、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したトルエン207.2部と、反応開始剤としてのt−ブトキシカリウム(20wt%テトラヒドロフラン溶液)0.40部とを順次投入した。投入後、反応器内の窒素置換を行い、反応器内の圧力が0.3MPaになるまで窒素で加圧し、マックスブレンド翼で攪拌しながら、昇温した。
【0054】
反応器の内温が90℃になったことを確認したあと、エチレンオキシドと、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したブチレンオキシドおよびアリルグリシジルエーテルからなる単量体混合物(ブチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=18部/5.7部)との供給を、エチレンオキシドについては51.8部/hの供給速度で開始し、エチレンオキシドの供給開始15分後、ブチレンオキシドおよびアリルグリシジルエーテルからなる単量体混合物(ブチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=17部/5.7部)の供給を2.37部/hの供給速度で開始し、2.25時間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から2.5時間後、エチレンオキシドについては12.1部/h、単量体混合物については2.37部/hの供給速度で、それぞれ更に5時間定量的に供給した(エチレンオキシドの供給量:計190部、単量体混合物の供給量:計17.2部)。供給中、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら、100℃±5℃で反応を行った。
【0055】
供給終了後、さらに90℃以上で5時間保持して熟成を行った。
以上の操作により、重量平均分子量Mwが107,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.65、融点が48℃であるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂(エチレンオキシド樹脂)を含む重合反応液を得た。
〔合成例2〕
マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)および添加口を備えた100Lの反応器を、溶媒(トルエン)で洗浄した後、加熱乾燥・窒素置換した。この反応器に、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したトルエン286.5部と、反応開始剤としてのt−ブトキシカリウム(20wt%テトラヒドロフラン溶液)0.6部とを順次投入した。投入後、反応器内の窒素置換を行い、反応器内の圧力が0.3MPaになるまで窒素で加圧し、マックスブレンド翼で攪拌しながら、昇温した。
【0056】
反応器の内温が90℃になったことを確認したあと、エチレンオキシドの供給を51部/hの供給速度で開始し、2時間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から15分後、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したブチレンオキシドを、9部/hの供給速度で1.75時間定量的に供給した。エチレンオキシドの供給開始から2時間後、エチレンオキシドについては24.9部/h、の供給速度で更に6時間、ブチレンオキシドについては6.5部/hの供給速度で更に3時間、それぞれ定量的に供給した(エチレンオキシドの供給量:計251.5部、ブチレンオキシドの供給量:計35部)。供給中、重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら、100℃±5℃で反応を行った。
【0057】
供給終了後、さらに90℃以上で5時間保持して熟成を行った。
以上の操作により、重量平均分子量Mwが117,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.4、融点が48℃であるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂(エチレンオキシド樹脂)を含む重合反応液を得た。

〔実施例1〕
合成例1の溶液重合により得られた、ノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂とトルエンとの重量比が50重量%/50重量%である重合反応液を、薄膜蒸発器(神鋼パンテック社製、製品名:EXEVA)(ジャケット温度180℃、減圧度6665Pa)に供給して、脱揮により濃縮し、上記薄膜蒸発器に備え付けてあるTダイ(シートダイ)(幅150mm、隙間2.3mm)から温度145℃、排出速度15kg/hで押し出し、トルエン含有率0.16重量%のシート状のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を得た。この時点でのノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の含有水分量は60ppmであった。
【0058】
排出されたシート状のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、ダブルベルトクーラー(サンドビック社製、製品名:ダブルベルトクーラー)の下側ベルトの上部表面に供給した。この時、ダブルベルトクーラーは、速度0.85〜0.90m/min、冷却水温度23.3℃、上下ベルトの隙間2.0mm、水圧0.20MPaで運転した。
ダブルベルトクーラーによって25℃以下まで冷却されたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂(1)のシートを、シートペレタイザー(ホーライ社製、製品名:SG(E)−220)に供給した。この時、シートペレタイザーは、縦切り刃のモーター周波数8〜9Hz、引取速度0.88〜0.99m/min、横切り刃のモーター周波数13〜15Hzで運転し、横切り刃の部分にスポットクーラーによる冷気(16〜17℃)を当てた。
【0059】
このようにして得られたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の角ペレットは、サイズ1.7〜2.4mm×4.0mm×2.5〜3.0mmで、トルエン含有率0.16重量%であった。得られた角ペレットの含有水分量は4120ppmであった。
〔実施例2〕
合成例1の溶液重合により得られた、ノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂とトルエンとの重量比が50重量%/50重量%である重合反応液を、薄膜蒸発器(神鋼パンテック社製、製品名:EXEVA)(ジャケット温度180℃、減圧度6665Pa)に供給して、脱揮により濃縮し、脱揮後のトルエン含有率0.45重量%のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ギアポンプを介して、Tダイ(幅700mm、隙間2.0〜2.5mm)から35kg/hで押し出した。押し出されたシート状のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ドラムクーラー(三菱化学エンジニアリング社製、製品名:ドラムクーラーDC)の冷却ドラムの上部表面に供給した。この時、ドラムクーラーは、ドラム回転数0.3〜0.4rpm、速度25〜34m/h、冷却水温度5〜10℃で運転した。
【0060】
ドラムクーラーによって20℃以下まで冷却されたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂のシートを、シートペレタイザー(ホーライ社製、製品名:SG(E)−220)に供給した。この時、シートペレタイザーは、縦切り刃のモーター周波数3.6〜5.5Hz、引取速度0.4〜0.6m/min、横切り刃のモーター周波数7.0〜12.0Hzで運転し、横切り刃の部分にスポットクーラーによる冷気(露点−60℃相当)を当てた。
このようにして得られたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の角ペレットは、平均サイズ2.0mm×4.0mm×3.5mmで、トルエン含有率0.45重量%であった。得られた角ペレットの含有水分量は900ppmであった。
【0061】
〔実施例3〕
実施例2において用いた合成例1の重合反応液の代わりに合成例2の重合反応液を用い、かつ、予め、Tダイ(シートダイ)の樹脂排出口から、ドラムクーラー(三菱化学エンジニアリング(株)製、製品名:ドラムクーラーDC)およびそのシート出口までの全て覆うようにブリキ製のカバーを設置しておき、吸水防止処理を施すようにした以外は、実施例2と同様の操作を行った。
なお、上記ブリキ製のカバーには、約9cmおきに内径約1.8cmの穴を1個または2個(約15cm間隔)開け、その穴からドライエアーを流すようにした。
【0062】
また、ドライエアーは、OILFREE SCROLL COMPRESSOR(ANEST IWATANI社製)およびAIR DRYER RAXシリーズ(ORION MACHINERY社製)という発生装置を用いて発生させた。具体的には、ドライエアーは、1Nm/minで発生させ、ブリキ製のカバーには、上記樹脂排出口側の開口部およびシート出口側の開口部で流量0.5〜0.6m/secのドライエアーを流通させ、ブリキ製のカバーの側面(上記樹脂排出口からシート出口までの間)内部で流量0.3〜0.5m/secのドライエアーを流通させるようにして、外気がカバー内に逆流してこないように調整した。また、その際、露点を−60℃に制御したドライエアーを流通させたところ、ブリキ製カバー内のエアーの露点は−60℃〜−59℃であった。なお、露点は永野電機産業(株)製のセラミック式水分センサーで測定した。
【0063】
このように吸水防止処理を施して得られたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の角ペレットの含有水分量は128ppmであった。

〔実施例4〕
これは、ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る過程において、溶剤(トルエン)をリサイクル使用する例である。
(1)1回目の重合・脱揮・蒸留
合成例1と同じ重合を行った。
【0064】
得られ重合反応液を、50〜100℃のスチーム熱媒によって予め加温しておいた原料タンクに仕込み、この原料タンクからギアポンプを用いて46kg/hの供給速度で薄膜蒸発器(製品名:EXEVA、神鋼パンテック社製)に供給し、脱揮により濃縮した。薄膜蒸発器の運転条件は、撹拌翼モーターの回転数300rpm、排出スクリューの回転数90〜100rpm、ジャケット温度180℃、圧力50Torr(6,666Pa)に設定しておいた。薄膜蒸発器の出口の樹脂温度は178℃であった。
脱揮後に得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂は、エチレンオキシド系樹脂とトルエンの重量%比(樹脂/トルエン)が99.79重量%/0.21重量%であり、含有水分量が35ppmであった。
【0065】
上記の揮発処理で回収された溶剤(薄膜蒸発器よりの流出トルエン)に対し、理論段数10段の蒸留塔において、本溜条件がボトム温度=112℃、トップ温度=112℃、還流比=0.5で常圧蒸留を施して、1回目の蒸留トルエンを得た。
(2)2回目の重合・脱揮・蒸留
上記1回目の蒸留トルエンを用いて、合成例1と同等の重合を1Lのオートクレーブで9回行った。重合後、オートクレーブのまま加熱・減圧してトルエン留去(条件:パス150℃、減圧度760→200torr)し、その後、オールダーショウ蒸留装置(10段)を用いて、本溜条件がボトム温度=112℃、トップ温度=112℃、還流比=0.5で常圧蒸留を施して、2回目の蒸留トルエンを得た。
(3)3回目の重合・脱揮・蒸留
上記2回目の蒸留トルエンを用いて、実施例1と同等の重合を1Lのオートクレーブで6回行った。重合後、オートクレーブのまま加熱・減圧してトルエン留去(条件:パス150℃、減圧度760→200torr)し、その後、オールダーショウ蒸留装置(10段)を用いて、本溜条件がボトム温度=112℃、トップ温度=112℃、還流比=0.5で常圧蒸留を施して、3回目の蒸留トルエンを得た。
(4)4回目の重合・脱揮・蒸留
上記3回目の蒸留トルエンを用いて、実施例1と同等の重合を1Lのオートクレーブで4回行った。重合後、オートクレーブのまま加熱・減圧してトルエン留去(条件:パス150℃、減圧度760→200torr)し、その後、オールダーショウ蒸留装置(10段)を用いて、本溜条件がボトム温度=112℃、トップ温度=112℃、還流比=0.5で常圧蒸留を施して、3回目の蒸留トルエンを得た。
(5)5回目の重合・脱揮・蒸留
上記4回目の蒸留トルエンを用いて、実施例1と同等の重合を1Lのオートクレーブで2回行った。
【0066】
各回の重合で得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の物性を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より、リサイクル溶媒使用による重合に問題の無いことが分かった。また、リサイクル回数による重合への影響の無いことも分かった。
各回で得られたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を用い、実施例1と同様にして、各ペレットを得た。

〔実施例5〕
これは、ペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のリサイクル例である。
合成例1の溶液重合により得られた、ノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂とトルエンとの重量比が50重量%/50重量%である重合反応液を、薄膜蒸発器(神鋼パンテック社製、製品名:EXEVA)(ジャケット温度180℃、減圧度6665Pa)に供給して、脱揮により濃縮し、脱揮後のトルエン含有率0.4重量%のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ギアポンプを介して温度175℃、移送速度31kg/hで、KRCニーダー(栗本鉄工所社製、製品名:S2KRCニーダー)に移送したが、このとき同時に、この実施例5で以下に述べるようにして得られたペレットを4kg/hでKRCニーダーに移送した。
【0069】
この時、KRCニーダーは、加熱温度180℃、パドル回転数114rpmで運転した。
KRCニーダーの排出口から、安定剤が混練されたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ギアポンプを介して、Tダイ(幅700mm、隙間2.0〜2.5mm)から35kg/hで押し出した。押し出されたシート状のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ドラムクーラー(三菱化学エンジニアリング社製、製品名:ドラムクーラーDC)の冷却ドラムの上部表面に供給した。この時、ドラムクーラーは、ドラム回転数0.3〜0.4rpm、速度25〜34m/h、冷却水温度5〜10℃で運転した。
【0070】
ドラムクーラーによって20℃以下まで冷却されたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂のシートを、シートペレタイザー(ホーライ社製、製品名:SG(E)−220)に供給した。この時、シートペレタイザーは、縦切り刃のモーター周波数3.6〜5.5Hz、引取速度0.4〜0.6m/min、横切り刃のモーター周波数7.0〜12.0Hzで運転し、横切り刃の部分にスポットクーラーによる冷気(露点−60℃相当)を当てた。
このようにして得られたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の角ペレットは、サイズ2.0mm×4.0mm×3.0mmで、トルエン含有率0.4重量%であった。また、得られた角ペレットの含有水分量は1500ppmであった。
【0071】
上のようにして行ったペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のリサイクル実験の結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2より、ペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂のリサイクルに問題の無いことが分かった。また、リサイクル時間によるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の物性への影響の無いことも分かった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の製造方法は、各種用途における有用な高分子材料として、適当な分子量Mwおよび樹脂物性を有するとともに該樹脂物性の安定性にも優れ、さらに、製造後の取扱い性にも優れるペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を、安全性、経済性および生産性に優れ且つ容易に得させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液重合により得ておいたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の溶液から溶媒を揮発させて流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を用いてペレット化を行う工程と、を備える、ペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。
【請求項2】
ペレット化を行う工程に用いる樹脂を予めシート状に成形し冷却しておく工程をも備える、請求項1に記載のペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。
【請求項3】
ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得るための溶液重合が、前記溶媒揮発工程で回収された溶媒を再利用することで行われている、請求項1または2に記載のペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。
【請求項4】
ペレットを所定の粒径に分級する工程をさらに備えるとともに、所定の粒径以外の残留ペレットを、前記ペレット化工程以前におけるノニオン性アルキレンオキシド系樹脂および/またはその溶液に混合する、請求項1から3までのいずれかに記載のペレット状ノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2006−335905(P2006−335905A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163274(P2005−163274)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】