説明

ペンタセンキノン誘導体及びその製造方法

【課題】発光素子、光電変換素子及び半導体などの有機電子素子材料として使用可能なペンタセン誘導体の合成中間体及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、下記式(I):


[式中、R1〜R4は、水素原子、アルキル基等であり、A1〜A4は、水素原子又はアルコキシカルボニル基等の電子吸引性基であり、A1〜A4の少なくとも一つは電子吸引性基である。]で示されるペンタセンキノン誘導体及びその製造方法等を提供する。該ペンタセンキノン誘導体をグリニャール試薬又は有機リチウム試薬と反応させることによりペンタセン誘導体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタセンキノン誘導体及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ペンタセンキノンの末端芳香環に電子吸引性基を有するペンタセンキノン誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナフタセン及びペンタセンなどのポリアセン類は、高い電荷移動度とそれによる優れた有機半導体特性を発現することが知られており、発光素子、太陽電池、トランジスタ等の有機電子デバイスへの応用が種々検討されている。しかし、一般にポリアセン類は有機溶媒に難溶であるため、薄膜を形成する際には制約があり、真空蒸着法を採用するしかなかった。真空蒸着法で薄膜を形成する場合、煩雑な装置が必要であったり、基板温度を高温に保持する必要があるため、より簡便な方法でポリアセン類の薄膜を形成する方法が求められていた。
【0003】
本発明者はこれまで、ポリアセン骨格の側鎖の任意の位置に様々な置換基を有するポリアセン類を製造する方法を見出した(例えば、国際公開第01/064611号パンフレット(特許文献1)及び特開2004−331534号公報(特許文献2)など)。この方法によれば、例えば、ポリアセン骨格の側鎖にアルキル基などの有機溶媒との相溶性が高い置換基を複数導入することにより有機溶媒に対する溶解が向上し、有機電子デバイス薄膜を作製するために塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの印刷法などの真空蒸着以外の方法を用いることが可能になる。
【0004】
ところで、ポリアセン類などの有機電子素子材料を、例えば太陽電池素子などに利用する場合、より高い開放電圧を得るためには、より低いHOMO(最高占有分子軌道)を有していることが求められる。このためにはポリアセン骨格の末端の芳香環に電子吸引性基を導入する必要があるが、これまでダブルホモロゲーション法など限られた方法でしか任意に置換基を導入する方法はなかった(特許文献1及び2)。しかし、この方法では中央の環の部分、例えば、ペンタセンでは6,13位に置換基を後から導入することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の下、より低いHOMOを有し、すなわちポリアセン骨格の末端芳香環に電子吸引性基をもち、中央の環に任意の置換基を導入したポリアセン類及びその製造方法の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を克服するべく鋭意研究を重ねた結果、より低いHOMOを与えうるペンタセンキノン誘導体を製造することに成功した。このペンタセンキノン誘導体にグリニャール試薬または有機リチウム試薬を反応させて、所望の置換基を導入することによって、所望の電子状態を与えうる多置換ペンタセン誘導体を容易に得ることができる。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示されるペンタセンキノン誘導体及びその製造方法、該ペンタセンキノン誘導体を合成中間体として用いるペンタセン誘導体の製造方法等に関するものである。
【0008】
[1]下記式(I):
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、
1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化C1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;トリシアノビニル基;ジシアノビニル基;ニトロ基;ハロホルミル基;ホルミル基;カルボキシル基;イソシアノ基;イソシアナト基;チオシアナト基;チオイソシアナト基;又は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルチオカルボニル基であり、
但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)。]
で示されるペンタセンキノン誘導体。
【0009】
[2]A1及びA2、または、A3及びA4が水素原子以外の官能基である、[1]記載のペンタセンキノン誘導体。
[3]A1、A2、A3及びA4が水素原子以外の官能基である、[1]記載のペンタセンキノン誘導体。
[4]A1、A2、A3及びA4が同一の官能基である、[3]記載のペンタセンキノン誘導体。
[5]A1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン化C1〜C10アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C10アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;置換基を有してもよいC1〜C10アルキルチオカルボニル基であり、但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)、[1]〜[4]の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
[6]R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基である、[1]〜[5]の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
[7]R1、R2、R3及びR4がすべて水素原子である、[1]〜[6]の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
【0010】
[8][1]〜[7]の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体の製造方法であって、
下記式(II):
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を、酸素酸化させて、下記式(III):
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
次いで、前記式(III)で示される化合物を、下記式(IV):
【化4】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
で示される化合物と反応させて、前記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を得る、ペンタセンキノン誘導体の製造方法。
【0011】
[9] 請求項1〜7の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体の製造方法であって、
下記式(V):
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物をエーテル結合切断試薬で処理して、
下記式(VI):
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
次いで、前記式(VI)で示される化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化させて、前記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を得る、ペンタセンキノン誘導体の製造方法。
【0012】
[10]下記式(VII):
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義であり、R5及びR6は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、但し、R5及びR6の何れか一つは水素原子以外の基である。]
で示されるペンタセン誘導体の製造方法であって、
[1]〜[7]の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体をグリニャール試薬RaMgX(式中、Raは前記R5又はR6であり、Xはハロゲン原子である。)又は有機リチウム試薬RbLi(式中、Rbは前記R5又はR6である。)と反応させて前記式(V)で示されるペンタセン誘導体を得る、ペンタセン誘導体の製造方法。
【0013】
[11]R5及びR6が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキニル基である、[10]記載のペンタセン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ペンタセンキノン骨格の末端芳香環に電子吸引性基を有するペンタセンキノン誘導体を提供する。本発明のペンタセンキノン誘導体は、ペンタセンキノン骨格の末端芳香環に電子吸引性基を有していることにより、理論的にはHOMOとLUMOのレベルが下がり、酸化反応などを受け難く、化学的安定性に優れている。本発明の好ましい態様によれば、本発明のペンタセンキノン誘導体は、電子吸引性基の種類及び位置を適宜選択することによって、化合物の電子状態を制御することができる。本発明の製造方法によれば、このようなペンタセンキノン誘導体を簡便な方法で得ることができる。
本発明のペンタセンキノン誘導体は、ペンタセン誘導体の合成中間体として用いられる。本発明の好ましい態様によれば、合成中間体として用いるペンタセンキノン誘導体の末端芳香環に導入する電子吸引性基の種類及び導入する位置を種々選択することによって、所望の電子状態を有するペンタセン誘導体を得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、所望の電子状態を有し、酸化され難く、化学的安定性に優れたペンタセン誘導体を簡便な方法で得ることができる。
このようにして得られたペンタセン誘導体は、発光素子、光電変換素子、半導体などの有機電子素子材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のペンタセンキノン誘導体及びその製造方法並びに該ペンタセンキノン誘導体の用途等について詳細に説明する。
1.ペンタセンキノン誘導体
本発明の第1の態様では、下記式(I):
【化8】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、
1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化C1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;トリシアノビニル基;ジシアノビニル基;ニトロ基;ハロホルミル基;ホルミル基;カルボキシル基;イソシアノ基;イソシアナト基;チオシアナト基;チオイソシアナト基;又は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルチオカルボニル基であり、
但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)。]
で示されるペンタセンキノン誘導体が提供される。
【0016】
本発明のペンタセンキノン誘導体は、ペンタセンキノン骨格の末端芳香環に電子吸引性基を有するために、理論的にはHOMOとLUMOのレベルを下げることができる。本発明の好ましい態様によれば、電子吸引性基の種類及び位置を選択することによって、その電子状態を制御することが可能である。
【0017】
上記式(I)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基である。
【0018】
中でも、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基が好ましく、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいシリル基がより好ましく、C1〜C20アルキル基;C2〜C20アルケニル基;C2〜C20アルキニル基;トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0019】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C6〜C20アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることがより好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0024】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシカルボニル基」は、 C1〜C10アルコキシカルボニル基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシカルボニル基であることがより好ましい。アルコキシカルボニル基の例としては、制限するわけではないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」は、C6〜C12アリールオキシカルボニル基であることが好ましく、C6〜C10アリールオキシカルボニル基であることがより好ましい。アリールオキシカルボニル基の例としては、制限するわけではないが、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル、フェニルフェノキシカルボニル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「C1〜C20」と記載するときは、炭素数が1〜20であることを意味する。「C2〜C20」、「C6〜C20」などと記載するときも同様である。なお、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4ならびにそれらの置換基にアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基が含まれる場合、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は線状でもよいし、枝分かれでもよい。
【0028】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」、「C2〜C20アルケニル基」、「C2〜C20アルキニル基」、「C6〜C20アリール基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「C1〜C20アルコキシカルボニル基」、「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」、「アミノ基」、「シリル基」、「スルフィド基」又は「チエニル基」は置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などが挙げられる。置換基は、置換可能な位置に1個以上、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基が2個以上の場合、これらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0030】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0031】
本発明の一実施形態では、R1、R2、R3及びR4がすべて水素原子であることが好ましい。R1、R2、R3及びR4がすべて水素原子であると合成が容易である。また、この化合物から得られるペンタセン誘導体は、分子間の重なりが大きくなるものと考えられ、高い電荷移動度が期待できる。
【0032】
また、本発明の他の一実施形態では、R1、R2、R3及びR4がすべて置換基を有していてもよいシリル基であることが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチル基シリル基などのトリアルキルシリル基であることが好ましい。R1、R2、R3及びR4がすべて置換基を有していてもよいシリル基であると、溶解性が高く、また、脱離反応が容易であるため必要に応じて容易に脱離させることができる。
【0033】
さらに、本発明の他の一実施形態では、R1、R2、R3及びR4はすべて置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基であることが好ましい。R1、R2、R3及びR4がすべて置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基であると、溶解性が高く、また、隣接分子のアルキル基と相互作用して、薄膜を形成しやすくなる。
【0034】
また、本発明の他の一実施形態では、R1、R2、R3及びR4はすべて置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基であることが好ましい。R1、R2、R3及びR4がすべて置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基であると、π電子系の広がり機能が向上し、分子がより安定化する。
【0035】
なお、R1、R2、R3及びR4は同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよいが、R1、R2、R3及びR4がすべて同一、あるいは、R1及びR2、R3及びR4が、それぞれ同一であると、合成が容易であり好ましい。
【0036】
上記式(I)中、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化C1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;トリシアノビニル基;ジシアノビニル基;ニトロ基;ハロホルミル基;ホルミル基;カルボキシル基;イソシアノ基;イソシアナト基;チオシアナト基;チオイソシアナト基;又は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルチオカルボニル基である。但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)。
【0037】
上記のように、ペンタセンキノン骨格の末端に電子吸引性基を少なくとも一つ有していることにより、理論的にはペンタセンキノン誘導体のHOMOとLUMOのレベルが下がり、電子吸引性基の種類及び位置を選択することによって、電子状態の制御が可能になる。
【0038】
本明細書において、「ハロゲン化C1〜C20アルキル基」としては、C1〜C20アルキル基の水素原子の少なくとも一つがハロゲン原子で置換された官能基であれば特に制限されない。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基の数は特に制限されなく、1個でも2個以上でもよい。「ハロゲン化C1〜C20アルキル基」としては、例えば、トリフルオロメチルなどのパーフルオロアルキル基、クロロメチルなどのクロロアルキル基などが挙げられる。
【0039】
本明細書において、「C1〜C20アシル基」としては、C1〜C20アルキルカルボニル、C6〜C12アリールカルボニル、モノ−C1〜C4アルキルフェニルカルボニル、ジ−C1〜C3アルキルフェニルカルボニル、フェニル−C1〜C4アルキルカルボニル等を挙げることができる。アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ベンゾイル、メチルベンゾイル、ジメチルベンゾイル、メチルエチルベンゾイル、ジエチルベンゾイル、ベンジルカルボニルであることが好ましい。
【0040】
「C1〜C20アルコキシカルボニル基」及び「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」の具体例は、R1、R2、R3及びR4の説明で述べたとおりである。
【0041】
本明細書において、「シリル基」、「アミノ基」、「C1〜C20アルコキシカルボニル基」、「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」、「C1〜C20アシル基」、「カルバモイル基」及び「C1〜C20アルキルチオカルボニル基」は置換基を有していてもよく、この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又は置換基を有していてもよいシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
本明細書において、「置換基を有していてもよいカルバモイル基」の例としては、制限するわけではないが、モノ−C1〜C6アルキル−カルバモイル(メチルカルバモイル、エチルカルバモイルなど)、ジ−C1〜C6アルキル−カルバモイル(ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイルなど)等を挙げることができる。
【0043】
なお、シアノ基(−CN);カルバモイル基(−C(=O)NH2);ハロホルミル基(−C(=O)−X、式中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。);ホルミル基(−C(=O)−H)、イソシアノ基(−NCO)、イソシアナト基(−NOC)、チオシアナト基(−NCS)又はチオイソシアナト基(−NSC)は、例えば、アルコキシカルボニル基から通常の有機合成の手法により変換することができる。
【0044】
本発明の一実施形態では、A1及びA2、または、A3及びA4は水素原子以外の基である。A1及びA2、または、A3及びA4が電子吸引性基を有していることにより、HOMOとLUMOのレベルを効果的に下げることができると考えられる。
【0045】
本発明の好ましい形態では、A1、A2、A3及びA4はすべて水素原子以外の基である。A1、A2、A3及びA4がすべて水素原子以外の基(すなわち、電子吸引性基)であるとHOMOとLUMOのレベルをより効果的に下げることができると考えられる。
【0046】
本発明の一実施形態では、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン化C1〜C10アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C10アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;置換基を有してもよいC1〜C10アルキルチオカルボニル基であることが好ましい。但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)である。
中でも、置換基を有していてもよいC1〜C10アルコキシカルボニル基、あるいは、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4が互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成することが好ましい(Pは式−N(Q)−で示される基であることがより好ましい)。
1、A2、A3及びA4がこれらの基であると、HOMOとLUMOの準位を下げる効果が高く、より化学的安定性に優れた化合物を得ることができるといった利点がある。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、A1、A2、A3及びA4は同一の基である。A1、A2、A3及びA4が同一の基であると、対象性がよくなり、合成が容易であるだけでなく、物性が向上する。
【0048】
本発明の他の一実施形態では、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい。ここで、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、−C(=O)−O−C(=O)−、−C(=O)−NR−C(=O)−(但し、Rは、C1〜C20アルキル基である。)で示される環を形成していてもよい。このようにA1及びA2、及び/又は、A3及びA4が環を形成することにより構造を固定してπ電子系を広げる効果があり、これにより性能が向上すると考えられる。
【0050】
本発明のペンタセンキノン誘導体の好ましい例を以下に示す。
【化9】

【0051】
2.ペンタセンキノン誘導体の製造方法
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様にかかるペンタセンキノン誘導体の製造方法の一例が提供される。すなわち、本発明の第2の態様では、下記式(II):
【化10】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を、酸素酸化させて、下記式(III):
【化11】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
次いで、前記式(III)で示される化合物を、下記式(IV):
【化12】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
で示される化合物と反応させて、前記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を得る、ペンタセンキノン誘導体の製造方法が提供される。
【0052】
本発明のペンタセンキノン誘導体の製造方法では、下記式(II):
【化13】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を、酸素酸化させて、下記式(III):
【化14】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得る。
【0053】
上記式(II)で示される化合物を酸素酸化させる方法は、特に制限されない。例えば、上記式(II)で示される化合物に酸素、過酸化水素、オゾンなどの酸化剤を加え、空気下で反応混合物を攪拌することにより、酸素分子を取り込むことができる。
酸化剤の使用量は、上記式(II)で示される化合物の1.0〜1.2当量用いることが好ましく、1.0〜1.15当量用いることが更に好ましく、1.0〜1.05当量用いることが更になお好ましい。
【0054】
上記式(II)で示される化合物は、既に本発明者らによって製造方法が確立されており、下記のような反応スキーム(ダブルホモロゲーション法)に従って得ることができる(例えば、国際公開第01/064611号パンフレット、特開2004−331534号公報及びT. Takahashi et al., Asian J. Chem. 2009, Vol. 4, 294-301参照)。
【化15】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は前記と同義である。Mは、周期表の第3族〜第5族又はランタニド系列の金属を示し;L1及びL2は、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示し、ただし、L1及びL2は、架橋されていてもよく;Y1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基である。]
【0055】
まず、テトラアルキン(XI)に、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジアルキルなどのL12MY12で示される有機金属化合物を作用させ、ビスメタラシクロペンタジエン(XII)を生成させる。L12MY12で示される有機金属化合物からのメタラシクロペンタジエンの生成については、例えば、T. Takahashi et al. J. Org. Chem. 1995, 60, 4444 に記載されており、これと同一又は近似した条件で反応が進行する。
【0056】
反応は、好ましくは−80〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは0〜150℃の温度範囲で行われる。圧力は0.1〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5〜10バールの範囲内である。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で、溶液中、懸濁液中、気相中又は超臨界媒体中で行える。溶媒は、上記したものと同じものが用いられる。
【0057】
ここで、Mは、周期表の第3族〜第5族又はランタニド系列の金属を示す。Mとしては、周期表第4族又はランタニド系列の金属が好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムが更に好ましい。
【0058】
1及びL2は、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示す。アニオン性配位子としては、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましい。
【0059】
中でも、L1及びL2は、非局在化環状η5−配位系配位子であることが好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子の例は、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換シクロペンタジエニル基である。この置換シクロペンタジエニル基は例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基及びオクタヒドロフルオレニル基である。
【0060】
非局在化環状η5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素などの1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0061】
非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C49)C(CH32、C(CH32、(CH32Si、(CH32Ge、(CH32Sn、(C652Si、(C65)(CH3)Si、(C652Ge、(C652Sn、(CH24Si、CH2Si(CH32、o−C64又は2、2'−(C642が挙げられる。
【0062】
2以上の非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、互いに、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋基により架橋されていてもよい。架橋基としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C49)C(CH32、C(CH32、(CH32Si、(CH32Ge、(CH32Sn、(C652Si、(C65)(CH3)Si、(C652Ge、(C652Sn、(CH24Si、CH2Si(CH32、o−C64又は2、2'−(C642が挙げられる。
メタラシクロペンタジエンは、二つ以上のメタラシクロペンタジエン部分(moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核のメタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0063】
1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基である。脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、n−ブチル基などのC1−C20アルキル基、フェニル基などのC6−C20アリール基が含まれる。
【0064】
次いで、メタラシクロペンタジエン(XII)に2種類のアルキンを反応させ、ベンゼン環を形成し、炭化水素縮合環(XIV)を得る。典型的には、メタラシクロペンタジエン(XII)を単離することなく、反応混合物にアルキンを添加する。
【0065】
ジルコナシクロペンタジエンなどのメタラシクロペンタジエンと、アルキンとを、CuClの存在下で反応させ、ベンゼン環を形成することは、T. Takahashi et al., J.Am.Chem.Soc.1998, 120, 1672−1680に記載されている。これと同一又は近似する条件で反応を進行させることができる。
【0066】
CuClに限られず、金属化合物を用いても良い。金属化合物が、周期表第4〜15族の金属化合物であることが好ましい。前記金属化合物が、CuClのような塩であってもいし、有機金属錯体であってもよい。
【0067】
塩としては、例えば、CuX、NiX2、PdX2、ZnX2 、CrX2 、CrX3、CoX2 、若しくは、BiX3(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)のような金属塩が用いられる。
【0068】
金属化合物は、有機金属錯体、特に、ニッケル錯体を用いてもよい。有機金属錯体としては、周期表3〜11族の中心金属、好ましくは周期表6〜11族の中心金属に、ホスフィン;ピリジン、ビピリジン等の芳香族アミン、ハロゲン原子等の配位子が配位しているものが好ましく用いられる。中心金属は、いわゆる4〜6配位であることが好ましく、周期表10族の金属が更に好ましい。ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等、制限がない。有機金属錯体としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケル、PdCl2(2,2'− ビピリジン)が挙げられる。ジルコナシクロペンタジエンのようなメタラシクロペンタジエンと、アルキンとを、ニッケルホスフィン錯体の存在下で反応させ、ベンゼン環を形成することは、T.Takahashi et.al. J.Am.Chem.Soc., Vol.121., No.48, 1999, 11095に記載されている。
【0069】
反応は好ましくは−80〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは0〜150℃の温度範囲で行われる。圧力は0.1〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5〜10バールの範囲内である。
【0070】
溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられ、好ましくは、極性溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。
【0071】
反応は、金属化合物を溶媒中で安定化させるための安定化剤の存在下で行われることが好ましい。特に、金属化合物が金属塩であり、かつ、溶媒が有機溶媒のときに、安定化剤が、金属塩を有機溶媒中で安定化させる。安定化剤としては、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ヘキサメチルホスホアミド等が挙げられる。
【0072】
次いで、炭化水素縮合環(XIV)を、脱水素試薬の存在下、芳香族化し、上記式(II)で示される化合物を得る。脱水素試薬としては、例えば、本発明の反応で用いられる下記式(IV)で示される化合物を用いることができる。
【0073】
【化16】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
【0074】
上記式(IV)で示される化合物において、X1、X2、X3、及び、X4がハロゲン原子の場合、ハロゲン原子は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子が更に好ましく、塩素原子が更になお好ましい。
【0075】
例えば、X1、X2、X3、及び、X4が全て塩素原子であってもよい。即ち、クロラニルであってもよい。あるいは、X1及びX2がシアノ基であり、X3及びX4が塩素原子であってもよい。即ち、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノンであってもよい。X1、X2、X3、及び、X4が全てシアノ基であってもよい。即ち、2,3,5,6−テトラシアノキノンであってもよい。
【0076】
上記式(IV)で示される化合物は、上記式(XIV)で示される化合物の0.9〜1.2当量用いることが好ましく、0.9〜1.15当量用いることが更に好ましく、0.95〜1.05当量用いることが更になお好ましい。
【0077】
溶媒は、有機溶媒が好ましく、特に、ベンゼン等の芳香族化合物が好ましい。
【0078】
反応温度は、−80〜200℃が好ましく、0〜100℃がさらに好ましく、10〜80℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0079】
また、前記脱水素試薬は、上記式(IV)で示される化合物に加えてパラジウムを含んでいてもよい。例えば、活性炭のような炭素に担持されたパラジウム、いわゆるパラジウムカーボンとして市販されているものを好適に用いることができる。Pd/Cは、脱水素化に広く用いられている触媒であり、本発明においても従来と同様に用いることができる。反応温度は、例えば、200〜500℃である。もっとも、反応温度は、出発物質等の様々な条件に依存して、適宜、設定すればよい。
【0080】
上記式(II)で示される化合物の製造方法の詳細については、国際公開第01/064611号パンフレット及び特開2004−331534号公報を参照されたい。
【0081】
次に、上記式(II)で示される化合物を酸素酸化させて上記式(III)で示される化合物を得た後、この化合物(III)に、下記式(IV)で示される化合物を反応させる。
【化17】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
【0082】
上記式(IV)で示される化合物は、上記式(XIV)で示される化合物を芳香族化する際に用いた脱水素試薬として用いられる化合物と同じであり、好ましい例示も同様である。上記式(IV)で示される化合物は、反応生成物の精製を容易にするため、上記式(II)で示される化合物に対してやや過剰量で用いることが好ましく、上記式(II)で示される化合物の1.0〜1.2当量用いることが好ましく、1.0〜1.15当量用いることが更に好ましく、1.0〜1.05当量用いることが更になお好ましい。
【0083】
反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒は、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が用いられ、好ましくは、極性溶媒が用いられる。好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドが挙げられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を用いてもよい。反応は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0084】
反応温度は、−80℃〜200℃が好ましく、−50℃〜100℃が更に好ましく、−20℃〜80℃が更に好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0085】
反応終了後は、反応混合物から、目的の式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を、常法に従い、例えばカラムクロマトグラフィー法等によって単離・精製して得ることができる。
【化18】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、前記の意味を表す。]
【0086】
なお、各反応工程において得られた反応中間体を単離・精製する必要は必ずしもなく、反応混合物をそのまま次の反応に供することができる。
【0087】
あるいは、本発明の上記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体は、下記式(V):
【化19】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物をエーテル結合切断試薬で処理して、下記式(VI):
【化20】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
前記式(VI)で示される化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化させて、得ることもできる。
【0088】
この方法では、まず、上記式(V)で示される化合物をエーテル結合切断試薬で処理して上記式(VI)で示される化合物を得る。
【0089】
上記式(V)で示される化合物は、テトラアルキン(XI)に代えて、下記式(XI')で示される化合物を用いること以外は、上記式(XIV)で示される化合物の製造方法で説明した方法と同様にして得ることができる。反応溶媒、反応温度等の反応条件も上記と同様である。
【化21】

【0090】
本発明に用いられるエーテル結合切断試薬は、通常エーテル結合を切断する試薬として知られているものを用いることができる。エーテル結合切断試薬の例は、M. V. Bhatt and S. U. Kulkarni, Synthesis, 1983, 249及びR. C. Larock, Ether cleavage, in Comprehensive Organic Transformations, Wiley-VCH, 2nd Ed., 1999に詳しく記載されている。これらの中でも、エーテル結合切断試薬の好ましい例としては、BCl3、BBr3などのルイス酸としての金属ハロゲン化物などが挙げられる。
エーテル結合切断試薬の使用量は、式(V)で示される化合物の1〜20当量が好ましく、2〜5当量がより好ましく、2〜3当量がさらに好ましい。
【0091】
反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒は、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が用いられ、好ましくは、極性溶媒が用いられる。好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドが挙げられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を用いてもよい。反応は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0092】
反応温度は、−80℃〜200℃が好ましく、−50℃〜100℃が更に好ましく、−20℃〜80℃が更に好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0093】
反応終了後は、反応混合物から、目的の式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を、常法に従い、例えばカラムクロマトグラフィー法等によって単離・精製して得ることができる。
【0094】
次いで、得られた上記式(VI)で示される化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化し、ペンタセンキノン誘導体(I)を得る。脱水素試薬は、前記炭化水素縮合環(XIV)の芳香族化反応において用いたもの(式(IV)の化合物)と同じものを用いることができる。好ましい脱水素試薬の例示も前記したとおりである。炭化水素縮合環(XIV)の芳香族化方法の詳細については、国際公開第01/064611号パンフレット及び特開2004−331534号公報を参照されたい。
【0095】
3.ペンタセンキノン誘導体の用途
このようにして得られる本発明のペンタセンキノン誘導体は、ペンタセン誘導体の合成中間体として用いることができる。すなわち、本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様にかかるペンタセンキノン誘導体を合成中間体とするペンタセン誘導体の製造方法が提供される。
【0096】
本発明の第3の態様では、下記式(VII):
【化22】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義であり、R5及びR6は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、但し、R5及びR6の何れか一つは水素原子以外の基である。]
で示されるペンタセン誘導体の製造方法であって、
第1の態様にかかるペンタセンキノン誘導体をグリニャール試薬RaMgX(式中、Raは前記R5又はR6であり、Xはハロゲン原子である。)又は有機リチウム試薬RbLi(式中、Rbは前記R5又はR6である。)と反応させて前記式(V)で示されるペンタセン誘導体を得る、ペンタセン誘導体の製造方法が提供される。
【0097】
上記式(VII)中、R5及びR6は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキニル基が好ましい。
【0098】
上記式(VII)において、「C1〜C20アルキル基、「C2〜C20アルケニル基」、「C2〜C20アルキニル基」、「C6〜C20アリール基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「C1〜C20アルコキシカルボニル基」、「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」、「アミノ基」、「シリル基」、「スルフィド基」及び「チエニル基」が有していてもよい置換基は、上記式(I)で例示したものと同じものが挙げられる。置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、これらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0099】
グリニャール試薬を用いる場合、グリニャール試薬の使用量は、ペンタセンキノン誘導体の2〜20当量用いることが好ましく、3〜15当量用いることが更に好ましく、4〜10当量用いることが更になお好ましい。
また、有機リチウム試薬を用いる場合に、有機リチウム試薬の使用量は、ペンタセンキノン誘導体の2〜15当量用いることが好ましく、4〜10当量用いることが更に好ましく、4〜8当量用いることが更になお好ましい。R1〜R4に置換基を有する場合は、置換基を有さない場合と比べてグリニャール試薬の使用量を多め(例えば、6〜10当量)にするか、反応時間を長くすることが好ましい。
【0100】
反応は、好ましくは室温〜200℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは50〜150℃の温度範囲で行われる。圧力は大気圧で行うことが好ましい。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で、溶液中、懸濁液中、気相中又は超臨界媒体中で行える。溶媒は、上記したものと同じものが用いられる。
【0101】
反応は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。反応終了後は、反応混合物から、目的の式(V)で示されるペンタセンキノン誘導体を、常法に従い、例えばクロマトグラフィー法により単離・精製して得ることができる。
【0102】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の第3の態様で得られるペンタセン誘導体は下記式(VII’):
【化23】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義であり、R5'及びR6'は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基又は置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基である。]
で示される。
【0103】
上記式(VII’)において、「C1〜C20アルキル基、「C2〜C20アルケニル基」、「C2〜C20アルキニル基」、「C6〜C20アリール基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「C1〜C20アルコキシカルボニル基」、「C6〜C20アリールオキシカルボニル基」、「アミノ基」、「シリル基」、「スルフィド基」及び「チエニル基」が有していてもよい置換基は、上記式(I)で例示したものと同じものが挙げられる。置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、これらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0104】
上記式(VII’)において、R5'及びR6'は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、フェニル基、メチル基、エチル基、t−ブチル基、チエニル基が好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0106】
全ての反応は特に記載の無い限り、窒素雰囲気下、無水溶媒を用いて行った。THF、エーテルはナトリウム/ベンゾフェノン系を用いて脱水したものを使用した。試薬は特に記載のない限り、市販品を精製せずにそのまま用いた。
【0107】
NMRは以下の機種を用いた。
NMR - JEOL JNM-AL300、Bruker ARX-400
NMRデータは、以下の表記方法に従い記載した。
1H NMR (400 MHz および 300MHz):
各試料の化学シフトはテトラメチルシランを内部標準としたときのδ値 (ppm) で示した。スピン結合定数はJ値 (Hz) で示した。カップリングパターンは singlet (s), doublet (d), triplet (t), quartet (q), multiplet (m), broad (br)と略した。また、NMR収率はメシチレンを内部標準として決定した。
13C NMR (100 MHzおよび 75 MHz):
各試料の化学シフト値は、クロロホルム(77.00 ppm)を内部標準とした時のδ値(ppm)で示した。
【0108】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、Merck silica gel 60 (230-400 mesh ASTM)、関東化学シリカゲル60 N(球状, 中性, 40-100μm)もしくは関東化学シリカゲル60(40-63μm)を充填剤として使用した。また、分析用薄層クロマトグラフィーにはKiesel gel 60 PF254 を使用した。
【0109】
[実施例1]
ペンタセンキノン誘導体の製造1
【化24】

1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)−6,13−ペンタセンキノン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0110】
<工程1>
【化25】

【0111】
2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)(681mg、3.0mmol)を2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン(1)(802mg、1.0mmol)のトルエン溶液(20mL)中に添加した。この混合物を50℃で攪拌し、2時間経過後、室温まで冷却し、ペンタセン−DDQ−付加体が得られた。
次いで、ペンタセン−DDQ−付加体を単離せず、この反応混合物にγ−テルピネン(4.4mL、50.0mmol)を添加した。この反応混合物を100℃で3時間加熱し、青色の2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−ペンタセン(2)が形成された。
【0112】
<工程2>
【化26】

【0113】
次に、工程1で得られた反応混合物を室温まで冷却し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液はCHCl3を用いた。)を用いて精製し、ヒドロキノン及び残留γ−テルピネンを除去した。青色のペンタセンのクロロホルム溶液を室温で空気中に放置した。数時間後、青色は完全に消えた。
減圧下で溶媒を除去し、得られた黄色残留物をトルエン(15mL)中、DDQ(227mg、1.0mmol)を用いて100℃で2時間処理した。続いて、反応混合物を室温まで冷却し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はCHCl3を用いた。)により精製して、黄色固体状の標題化合物(4)を得た。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.57 (s, 36 H), 3.92 (s, 12 H), 9.39 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 2.0, 52.8, 129.7, 131.2, 138.8, 139.1, 141.8, 169.8, 182.3; HRMS (FAB) calcd for C42H53O10Si4 (M+H): 829.2716. Found: 829.2719.
【0114】
[実施例2]
ペンタセンキノン誘導体の製造2
【化27】

1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)−6,13−ペンタセンキノン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラエチルエステル
【0115】
【化28】

【0116】
出発物質として、2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセンに代えて、2,3,9,10−テトラキス(エトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン(5)(858mg、1.0mmol)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、標題化合物(6)(698mg)を得た(収率79%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.59 (s, 36 H), 1.42 (t, J = 7.2 Hz, 12 H), 4.36 (q, J = 7.2 Hz, 8 H), 9.38 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 2.2, 13.8, 62.1, 129.6, 131.2, 139.06, 139.13, 141.6, 169.4, 182.4; HRMS (EI) calcd for C46H60O10Si4: 884.3264. Found: 884.3262.
【0117】
[実施例3]
ペンタセンキノン誘導体の製造3
【化29】

6,13−ペンタセンキノン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラエチルエステル
【0118】
<工程1>
【化30】

【0119】
1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)−6,13−ペンタセンキノン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラエチルエステル(6)(884mg、1.0mmol)のTHF溶液(15mL)中に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1.0MTHF溶液、4.0mL、4.0mmol)を添加し、この混合物を0℃で1時間攪拌した。
次いで、この混合物に3NHClを加えて0℃に急冷し、酢酸エチルで分離操作を行った。有機相をまとめて水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた褐色粘性油をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はCHCl3を用いた。)により精製して、黄色固体状の標題化合物(7)(360mg)を得た(収率70%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 1.45 (t, J = 7.2 Hz, 12 H), 4.48 (q, J = 7.2 Hz, 8 H), 8.51 (s, 4 H), 9.02 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 14.2, 62.1, 130.4, 131.7, 132.3, 132.6, 135.4, 166.6, 181.8; HRMS (EI) calcd for C34H28O10: 596.1683. Found: 596.1692.
【0120】
[実施例4]
ペンタセンキノン誘導体の製造4
【化31】

1,4,8,11−テトラブチル−6,13−ペンタセンキノン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0121】
【化32】

【0122】
実施例1と同様にして、化合物(8)から標題化合物(9)(443mg)を得た(収率58%)。
8: 1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 1.03 (t, J = 7.2 Hz, 12 H), 1.50-1.62 (m, 8 H), 1.73-1.85 (m, 8 H), 3.21-3.26 (m, 8 H), 3.96 (s, 12 H), 9.22 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 13.9, 23.1, 30.1, 34.0, 52.7, 127.3, 130.9, 131.6, 134.9, 139.3, 168.7, 182.4; HRMS (EI) calcd for C46H52O10: 764.3560. Found: 764.3568.
【0123】
[実施例5]
ペンタセン誘導体の製造1
【化33】

6,13−ビス(フェニルエチニル)−1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0124】
<工程1>
【化34】

【0125】
オーブンで乾燥した後、窒素ガスで冷却した50mLフラスコ中に、フェニルアセチレン(0.25mL、2.5mmol)を添加した後、乾燥テトラヒドロフラン(15mL)を加えた。この混合物に、1.30mLのn−BuLi(2.0mmol、ヘキサン中の濃度1.55M)を0℃で滴下し、1時間室温で攪拌した。さらにこの混合物にペンタセンキノン(4)(415mg、0.5mmol)を加え、12時間還流した。
この混合物に3NHClを加えて0℃まで急冷し、酢酸エチルで分離操作を行った。有機相をまとめて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた黒色粘性油をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はヘキサン:酢酸エチル=5:1のものを用いた。)により精製して、黄色固体状のジオール化合物(10)を得た。
5: 1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.41 (s, 36 H), 3.86 (s, 12 H), 7.43-7.49 (m, 6 H), 7.69-7.72 (m, 4 H), 9.22 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 1.8, 52.6, 72.5, 87.6, 91.3, 121.5, 128.5, 129.3, 129.5, 132.1, 135.7, 136.5, 136.9, 139.3, 170.4; HRMS (FAB) calcd for C58H64O10Si4Na (M+Na+): 1055.3474. Found: 1055.3459.
【0126】
<工程2>
【化35】

【0127】
ジオール化合物(10)(50mg、0.05mmol)をCH3CN(5mL)に溶解し、これに無水SnCl2(48mg、0.25mmol)を加えた。反応は室温で行った。2時間経過後、暗緑色の沈殿物を濾取し、これをCH2Cl2に溶解し、再度濾取して白色固体状のスズ塩を除去した。暗色の溶媒を除去し、暗緑色固体状の標題化合物(33mg、67%)を得た。得られた化合物をジクロロメタン及びヘキサンから再結晶して、標題化合物(11)を得た。
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 0.62 (s, 36 H), 3.91 (s, 12 H), 7.47-7.55 (m, 6 H), 7.82-7.86 (m, 4 H), 9.81 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 2.1, 52.4, 87.5, 104.7, 118.5, 123.0, 128.7, 129.1, 129.6, 130.2, 131.8, 134.0, 136.7, 140.0, 170.3; HRMS (FAB) calcd for C58H63O8Si4 (M+H): 999.3600. Found: 999.3580.
【0128】
[実施例6]
ペンタセン誘導体の製造2
【化36】

6,13−ビス(フェニルエチニル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0129】
<工程1>
【化37】

【0130】
オーブンで乾燥した後、窒素ガスで冷却した50mLフラスコ中に、実施例5の工程1で得られたジオール化合物(10)(207mg、0.2mmol)を添加した後、乾燥テトラヒドロフラン(5mL)を加えた。この混合物に、1.0mLのテトラブチルアンモニウムフロリド(1.0mmol、THF中の濃度1.0M)を0℃で滴下し、1時間室温で攪拌した。この混合物に3NHClを加えて0℃まで急冷し、酢酸エチルで分離操作を行った。有機相をまとめて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた黒色粘性油をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はCHCl3を用いた。)により精製して、黄色固体状のジオール化合物(12)(102mg)を得た(収率68%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 3.94 (s, 12 H), 7.44-7.47 (m, 6 H), 7.73-7.75 (m, 4 H), 8.25 (s, 4 H), 8.74 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 52.8, 86.7, 91.2, 121.6, 127.9, 128.6, 129.4, 129.5, 130.4, 132.1, 133.1, 138.5, 167.9; HRMS (ESI) calcd for C46H32O10Si4Na (M+Na+): 767.1893. Found: 767.1903.
【0131】
<工程2>
【化38】

得られたジオール化合物(12)から、実施例5の工程2と同様の方法で、標題化合物(13)を得ることができる。
【0132】
[実施例7]
ペンタセン誘導体の製造3
【化39】

6,13−ビス(3,3−ジメチル−1−ブチニル)−1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0133】
<工程1>
【化40】

【0134】
フェニルアセチレンに代えてトリメチルシリルアセチレンを用いたことを除いては、実施例5の工程1と同様にして、ペンタセンキノン(4)(83mg、0.1mmol)からジオール化合物(14)(45mg)を得た(収率45%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.55 (s, 36 H), 1.29 (s, 18 H), 3.88 (s, 12 H), 9.02 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 2.1, 27.7, 30.9, 52.5, 69.1, 80.0, 98.0, 128.0, 136.3, 136.4, 136.6, 139.1, 170.4; HRMS (FAB) calcd for C54H72O10Si4Na (M+Na+): 1015.4100. Found: 1015.4117.
【0135】
<工程2>
【化41】

【0136】
実施例5の工程2と同様にして、ジオール化合物(14)(99mg、0.1mmol)から標題化合物(15)(67mg)を得た(70%の収率)。融点mp > 300 °C。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.64 (s, 36 H), 1.63 (s, 18 H), 3.92 (s, 12 H), 9.64 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 2.3, 29.3, 31.8, 52.5, 77.5, 113.7, 118.6, 129.5, 130.1, 133.5, 136.2, 139.9, 170.5; HRMS (EI) calcd for C54H70O8Si4: 958.4148. Found: 958.4129.
【0137】
[実施例8]
ペンタセン誘導体の製造4
【化42】

6,13−ジフェニル−1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0138】
<工程1>
【化43】

【0139】
フェニルアセチレンにBuLiを加える代わりにフェニルグリニャール試薬を用いたことを除いては、実施例5の工程1と同様にして、ペンタセンキノン(4)(83mg、0.1mmol)からジオール化合物(16)(77mg)を得た(収率78%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.13 (s, 36 H), 3.80 (s, 12 H), 7.39-7.49 (m, 6 H), 7.57-7.64 (m, 4 H), 8.06 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 1.6, 52.4, 77.2, 127.7, 128.3, 128.4, 130.4, 135.8, 136.3, 138.8, 140.3, 143.5, 170.4; HRMS (FAB) calcd for C54H54O10Si4Na (M+Na+): 1007.3474. Found: 1007.3477.
【0140】
<工程2>
【化44】

【0141】
実施例5の工程2と同様にして、ジオール化合物(16)(99mg、0.1mmol)から標題化合物(17)(82mg)を得た(70%の収率)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.17 (s, 36 H), 3.84 (s, 12 H), 7.60-7.77 (m, 10 H), 8.73 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 1.4, 52.4, 128.1, 128.2, 128.9, 129.4, 131.5, 132.3, 135.6, 137.2, 138.8, 139.7, 170.5; HRMS (EI) calcd for C54H62O8Si4: 950.3522. Found: 950.3516. Anal. Calcd for C54H62O8Si4: C, 68.17; H, 6.57. Found: C, 68.10; H, 6.65.
【0142】
[実施例9]
ペンタセン誘導体の製造5
【化45】

6,13−ジフェニルペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0143】
<工程1>
【化46】

【0144】
実施例8の工程1で得られたジオール化合物(16)(98mg、0.1mmol)を用いたことを除いては、実施例6の工程1と同様にしてトリメチルシリル基が脱離したジオール化合物(18)(55mg)を得た(収率78%)。
1H NMR (DMSO-d6, Me4Si)δ: 3.90 (s, 12 H), 6.50-6.52 (m, 4 H), 6.63-6.65 (m, 4 H), 6.77-6.79 (m, 2 H), 6.93 (s, 2 H), 8.56 (s, 4 H), 8.80 (s, 4 H); 13C NMR (DMSO-d6, Me4Si)δ: 52.7, 74.9, 126.18, 126.23, 126.9, 127.4, 128.3, 130.0, 132.0, 142.9, 143.0, 167.5; HRMS (EI) calcd for C42H32O10: 696.1996. Found: 696.2010.
【0145】
<工程2>
【化47】

得られたジオール化合物(18)から、実施例5の工程2と同様の方法で、標題化合物(19)を得ることができる。
【0146】
[実施例10]
ペンタセン誘導体の製造6
【化48】

1,4,8,11−テトラブチル−6,13−ビス(トリメチルシリルエチニル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0147】
<工程1>
【化49】

【0148】
オーブンで乾燥した後、窒素ガスで冷却した50mLフラスコ中に、トリメチルシリルアセチレン(0.35mL、2.5mmol)を添加し、その後、乾燥テトラヒドロフラン(15mL)を加えた。この混合物に、2.10mLのEtMgBr(2.0mmol、テトラヒドロフラン中の濃度0.96M)を0℃で滴下し、1時間室温で攪拌した。さらにこの混合物にペンタセンキノン(9)(382mg、0.5mmol)を加え、12時間還流した。
この混合物に3NHClを加えて0℃に急冷し、酢酸エチルで分離操作を行った。有機相をまとめて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた黒色粘性油をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はヘキサン:酢酸エチル=5:1のものを用いた。)により精製して、黄色固体状のジオール化合物(20)(380mg)を得た(収率79%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.22 (s, 18 H), 0.97 (t, J = 7.2 Hz, 12 H), 1.45-1.52 (m, 8 H), 1.70-1.80 (m, 8 H), 3.06-3.16 (m, 8 H), 3.82 (s, 12 H), 8.92 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.3, 14.0, 23.1, 29.8, 33.6, 52.4, 69.5, 94.0, 106.2, 123.8, 129.1, 132.4, 137.2, 137.3, 169.4; HRMS (EI) calcd for C56H72O10Si2: 960.4664. Found: 960.4675.
【0149】
<工程2>
【化50】

【0150】
実施例5の工程2と同様にして、ジオール化合物(20)(50mg、0.05mmol)から標題化合物(21)(30mg)を得た。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.52 (s, 18 H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 12 H), 1.57-1.64 (m, 8 H), 1.88-1.93 (m, 8 H), 3.32-3.35 (m, 8 H), 3.95 (s, 12 H), 9.58 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.2, 14.1, 23.5, 30.3, 33.5, 52.4, 102.0, 111.6, 119.2, 125.5, 127.8, 130.86, 130.92, 138.2, 169.4; HRMS (FAB) calcd for C56H70O8Si2 (M+H): 960.4609. Found: 960.4621.
【0151】
[実施例11]
ペンタセン誘導体の製造7
【化51】

1,4,8,11−テトラブチル−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0152】
<工程1>
【化52】

【0153】
トリメチルシリルアセチレンに代えて、トリイソプロピルシリルアセチレンを用いたことを除いては、実施例10の工程1と同様にして、ペンタセンキノン(9)(76mg、0.1mmol)からジオール化合物(22)(70mg)を得た(収率62%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.94 (t, J = 4.8 Hz, 12 H), 1.05 (s, 6 H), 1.06 (s, 36 H), 1.41-1.47 (m, 8 H), 1.68-1.77 (m, 8 H), 3.17 (t, J = 5.4 Hz, 8 H), 3.43 (s, 2 H), 3.88 (s, 12 H), 8.96 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 11.2, 14.0, 18.6, 23.0, 29.6, 33.7, 52.4, 69.4, 90.3, 108.8, 124.0, 129.0, 132.5, 137.3, 137.4, 169.5; HRMS (FAB) calcd for C68H96O10Si2Na (M+Na+): 1151.6440. Found: 1151.6455.
【0154】
<工程2>
【化53】

【0155】
実施例5の工程2と同様にして、ジオール化合物(22)(57mg、0.05mmol)から標題化合物(23)(39mg)を得た(収率70%)。
【0156】
[実施例12]
ペンタセン誘導体の製造8
【化54】

1,4,8,11−テトラブチル−6,13−ビス(トリメチルエチニル)ペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸テトラメチルエステル
【0157】
<工程1>
【化55】

【0158】
トリメチルシリルアセチレンに代えて、トリメチルアセチレンを用いたことを除いては、実施例10の工程1と同様にして、ペンタセンキノン(9)(76mg、0.1mmol)からジオール化合物(24)(54mg)を得た(収率58%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.97 (t, J = 4.8 Hz, 12 H), 1.29 (s, 18 H), 1.46-1.52 (m, 8 H), 1.70-1.80 (m, 8 H), 3.07-3.19 (m, 8 H), 3.83 (s, 2 H), 8.89 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 13.9, 23.1, 27.7, 29.9, 30.7, 33.6, 52.4, 69.2, 80.6, 98.1, 123.5, 128.9, 132.3, 137.3, 138.0, 169.4; HRMS (FAB) calcd for C58H72O10Na (M+Na+): 951.5023. Found: 951.5009.
【0159】
<工程2>
【化56】

【0160】
実施例5の工程2と同様にして、ジオール化合物(24)(46mg、0.05mmol)から標題化合物(25)(33mg)を得た(収率72%)。
1H NMR (C6D6, Me4Si)δ: 1.02 (t, J = 5.2 Hz, 12 H), 1.55 (s, 6 H), 1.65-1.72 (m, 8 H), 2.07-2.12 (m, 8 H), 3.50 (t, J = 5.2 Hz, 8 H), 3.66 (s, 12 H), 9.76 (s, 4 H); 13C NMR (C6D6, Me4Si)δ: 14.4, 24.1, 29.4, 30.9, 31.4, 34.0, 51.9, 77.7, 114.6, 119.8, 126.0, 128.8, 131.2, 131.3, 138.5, 169.3; HRMS (EI) calcd for C58H70O8: 894.5071. Found: 894.5054.
【0161】
[実施例13]
ペンタセン誘導体の製造9
【化57】

1,4,8,11−テトラキストリメチルシリル−2,3,9,10−テトラキスメトキシカルボニル−6,13−ジチエニルペンタセン
【0162】
<工程1>
【化58】

【0163】
チオフェン(24μL、0.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(3mL)に、n−BuLi(194μL、0.3mmol、ヘキサン中の濃度1.55M)を−78℃で加え、0℃で30分攪拌した。ペンタセンキノン(4)(42mg、0.05mmol)を添加し、得られた混合物を一晩攪拌した。
この混合物に3NHCl(2mL)を加えて0℃に急冷し、酢酸エチルで3回分離操作を行った。有機相をまとめて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物を得た。得られた粗生成物をCH3CN(3mL)に溶解し、SnCl2・2H2O(41mg、0.15mmol)を加えた。80℃に加熱して3時間反応を行った。冷却後、メタノール(5mL)を加えた。反応混合液を濾過し、標題化合物(26)を得た。深青色の固体であり、単離収率は46%であった。
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 0.28 (s, 36H), 3.86(s, 12H), 7.40-7.41 (m, 2H), 7.43-7.46 (m, 2H), 7.75 (dd, J = 5.0 Hz, 1.2 Hz, 2H), 8.91 (s, 4H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 1.6, 52.5, 127.4, 127.5, 129.1, 129.6, 130.4, 132.8, 136.0, 138.3, 139.8, 170.4 .
【0164】
[参考例1]
炭化水素縮合環(2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン)の製造
【化59】

1,4,8,11−テトラキス(トリメチルシリル)−2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン(1)(802mg、1.0mmol)のTHF(15mL)溶液にフッ化テトラブチルアンモニウム(1.0MTHF溶液、4.0mL、4.0mmol)を0℃で加え、混合物を1時間攪拌した。
その後、この混合物に3NHCl(2mL)を加えて0℃に急冷し、酢酸エチルで分離操作を行った。有機相をまとめて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた褐色粘性油をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はCHCl3を用いた。)により精製して、青白色固体状の標題化合物(27)を得た(386mg、収率75%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 3.90 (s, 12 H), 3.97 (s, 8 H), 7.22 (s, 2 H), 7.65 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 35.5, 52.6, 126.5, 128.1, 129.8, 133.4, 140.2, 168.2; HRMS (EI) calcd for C30H26O8: 514.1627. Found: 514.1613.
【0165】
[参考例2]
炭化水素縮合環(5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸)の製造
【化60】

無水ピリジンに2,3,9,10−テトラキス(メトキシカルボニル)−5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン(27)(514mg、1.0mmol)及びヨウ化リチウム(4.0g、30.0mmol)を加えた。窒素雰囲気下、混合液を3時間加熱還流した。この混合液を室温まで冷却した後、溶媒を真空除去した。3MHCl溶液を用いて残留物を酸性にした後、生成物をCHCl3で抽出した。溶媒を除去した後、残留物を3mLのCHCl3に溶解し、10mLのMeOH中に添加した。得られた沈殿物をろ過により回収し、真空下乾燥させて、薄黄色固体状の標題化合物(28)を得た(389mg、収率85%)。
1H NMR (DMSO-d6, Me4Si): 3.97 (s, 8 H), 7.26 (s, 2 H), 7.63 (s, 4 H); 13C NMR (DMSO-d6, Me4Si)δ: 34.6, 126.2, 127.3, 130.7, 133.5, 139.8, 168.7; HRMS (FAB, negative) calcd for C26H17O8 (M-H): 457.0923. Found: 457.0917.
【0166】
[参考例3]
炭化水素縮合環(5,7,12,14−テトラヒドロペンタセンジイミド)の製造
【化61】

5,7,12,14−テトラヒドロペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸(28)(457mg、1.0mmol)を酢酸(10mL)中、140℃で3時間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を真空除去した。対応する無水物(450mg)が定量的収率で得られた。
水分離器及び還流冷却器を備えた50mLのフラスコに無水物、2−エチルヘキシルアミン(1.62mL、10.0mmol)及び20mLのトルエンを添加した。フラスコを活発な還流を6時間維持するために加熱した。室温まで冷却した後、反応混合物を3MHCl水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液及び食塩水で洗浄し、得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液はCHCl3を用いた。)により精製して、青白色固体状の標題化合物(29)を得た(515mg、収率80%)。
1H NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 0.87 (t, J = 7.2 Hz, 6 H), 0.90 (t, J = 7.2 Hz, 6 H), 1.21-1.38 (m, 16 H), 1.80-1.86 (m, 2 H), 3.54 (d, J = 7.2 Hz, 4 H), 4.05 (s, 8 H), 7.28 (s, 2 H), 7.73 (s, 4 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 10.4, 14.0, 22.9, 23.8, 28.5, 30.5, 36.5, 38.2, 41.9, 122.2, 126.3, 130.4, 133.6, 143.6, 168.8; HRMS (FAB) calcd for C42H49O4N2 (M+H): 645.3692. Found: 645.3681.
【0167】
上記のとおり参考例1〜3に従って炭化水素縮合環を製造することができる。得られた炭化水素縮合環を実施例1の工程1と同様にして芳香族化し、実施例1の工程2と同様にしてペンタセンキノン誘導体を得た。収率は66%であった。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明のペンタセンキノン誘導体は、例えば、発光素子、光電変換素子、半導体などの有機電子素子材料として用いることができる。また、本発明のペンタセンキノン誘導体は、ペンタセン誘導体の合成中間体としても利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0169】
【特許文献1】国際公開第01/064611号パンフレット
【特許文献2】特開2004−331534号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化62】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、
1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン化C1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;トリシアノビニル基;ジシアノビニル基;ニトロ基;ハロホルミル基;ホルミル基;カルボキシル基;イソシアノ基;イソシアナト基;チオシアナト基;チオイソシアナト基;又は置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルチオカルボニル基であり、
但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)。]
で示されるペンタセンキノン誘導体。
【請求項2】
1及びA2、または、A3及びA4が水素原子以外の官能基である、請求項1記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項3】
1、A2、A3及びA4が水素原子以外の官能基である、請求項1記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項4】
1、A2、A3及びA4が同一の官能基である、請求項3記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項5】
1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;ハロゲン化C1〜C10アルキル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C10アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC1〜C10アシル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;置換基を有してもよいC1〜C10アルキルチオカルボニル基であり、但し、A1、A2、A3及びA4の少なくとも一つは水素原子以外の官能基であり、A1及びA2、及び/又は、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、互いに架橋して、式−C(=O)−P−C(=O)−で示される環を形成してもよい(式中、Pは、酸素原子又は式−N(Q)−で示される基(式中、Qは、水素原子、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基又はハロゲン原子である)である。)、請求項1〜4の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項6】
1、R2、R3及びR4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基である、請求項1〜5の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項7】
1、R2、R3及びR4がすべて水素原子である、請求項1〜6の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体の製造方法であって、
下記式(II):
【化63】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を、酸素酸化させて、下記式(III):
【化64】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
次いで、前記式(III)で示される化合物を、下記式(IV):
【化65】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
で示される化合物と反応させて、前記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を得る、ペンタセンキノン誘導体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体の製造方法であって、
下記式(V):
【化66】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物をエーテル結合切断試薬で処理して、
下記式(VI):
【化67】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義である。]
で示される化合物を得、
次いで、前記式(VI)で示される化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化させて、前記式(I)で示されるペンタセンキノン誘導体を得る、ペンタセンキノン誘導体の製造方法。
【請求項10】
下記式(VII):
【化68】

[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ前記と同義であり、R5及びR6は、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基;置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;水酸基;ハロゲン原子;置換基を有していてもよいスルフィド基;シアノ基;又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、但し、R5及びR6の何れか一つは水素原子以外の基である。]
で示されるペンタセン誘導体の製造方法であって、
請求項1〜7の何れか1項に記載のペンタセンキノン誘導体をグリニャール試薬RaMgX(式中、Raは前記R5又はR6であり、Xはハロゲン原子である。)又は有機リチウム試薬RbLi(式中、Rbは前記R5又はR6である。)と反応させて前記式(V)で示されるペンタセン誘導体を得る、ペンタセン誘導体の製造方法。
【請求項11】
5及びR6が、それぞれ互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアルキニル基である、請求項10記載のペンタセン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−180140(P2010−180140A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22767(P2009−22767)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(598051211)
【Fターム(参考)】