説明

ページ記述データ処理装置、方法及びプログラム並びに印刷物生産方法

【課題】破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できるページ記述データ処理装置、方法及びプログラム並びに印刷物生産方法を提供する。
【解決手段】破線パターン70の形状に基づいて、破線パターン70を複数のサブ破線パターン106、114に分割するか否かを判別する。分割を要すると判別された場合、破線パターン70(特定描画オブジェクト)を記述するオペレータ群を、複数のサブ破線パターン106、114をそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ページ記述言語(Page Description Language;PDL)で記述されたページ記述データのうち、所定の属性を有するページ記述データに対して特定の処理を行い、よりロバスト性を有するページ記述データ(この明細書において、ロバスト化ページ記述データという。)に変換するページ記述データ処理装置、方法及びプログラム並びに印刷物生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、印刷製版の分野において、オペレータがコンピュータを利用して作った文字や画像を、DTP(DeskTop Publishing)アプリケーションソフトウエアが組み込まれた前記コンピュータを使って電子的なページに組み込むDTP処理が普及している。
【0003】
上記のDTPアプリケーションソフトウエアでは、作業者によって編集された文字や画像等の要素を基に、ページ毎のイメージを表現するページ記述データが作成される。
【0004】
ページ記述データは、プリンタやプレートセッタ等の出力機の解像度等に依存しないベクトルデータであり、このままでは出力機から出力することができない。そこで、ページ記述データをRIP(Raster Image Processor)でラスタライズ処理することにより、ページを構成する文字や画像等の要素を画素(ドット)の集合として表すラスタイメージデータに変換する。
【0005】
ラスタイメージデータが、プリンタあるいはプレートセッタ等の出力機に供給されると、出力機は、ラスタイメージデータに基づく画像を形成したハードコピーあるいは刷版を出力する(特許文献1参考)。
【0006】
ところで、ページ記述データの一種であるPDF(Portable Document File)version1.3には、線状のパスをストロークする際に、線素と隙間のパターンを制御する「破線パターン」オペレータが実装されている。ここで、「パス」とはそれ自体線幅を有しない、始点と終点とを結ぶ経路であり、「ストローク」とはパスに所定の線幅を付することをいう。
【0007】
なお、この「破線パターン」オペレータにより設定自在な変数として、交互に現われる線素と隙間の長さを指定する「破線配列」と、周期性を有する破線パターンの始点における描画状態を指定する「破線フェーズ」とが定義されている(非特許文献1参照)。以下、この「破線配列」及び「破線フェーズ」を総称して「破線形状パラメータ」という場合がある。
【0008】
以下、破線形状パラメータと実際に描画される破線パターンとの関係について、直線状のパスの始点から終点までの間を11単位長でストロークする場合を例に挙げて、図15Aを参照しながら詳細に説明する。
【0009】
例えば、[4 2]{0}は、破線配列[4 2]と、破線フェーズ{0}とのパラメータの結合を意味する。そのうち、破線配列[4 2]は、連続して4単位長をONにし、その後、連続して2単位長をOFFにすることに対応する。つまり、破線パターンの周期単位は6単位長である。換言すれば、この破線パターンは、線素が4単位長、隙間が2単位長の繰り返しで構成される。
【0010】
一方、破線フェーズ{0}は、前記破線パターンの周期の位相ずれ量が0単位長であることに対応する。図15Aに示すように、{0}の破線パターンを上段のように予め定めた場合、{1}の破線パターンは中段のように決定される。これは、{1}の破線パターンは、{0}の破線パターンに対して各単位長を左側(パスの始点側)に1個ずつシフトした結果に対応する。同様に、{2}の破線パターンは、{0}の破線パターンに対して各単位長を左側(パスの始点側)に2個ずつシフトした結果に対応する。
【0011】
このように、PDF仕様では、始点から終点までの間、所定の周期の繰り返し演算によって破線パターンの描画形状を順次決定するという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−70957号公報([0003])
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】PDFリファレンス 第2版、 Adobe Portable Document Format Version1.3、2008年11月20日初版第5刷発行、著者;アドビシステムズ、発行所;株式会社ピアソン・エデュケーション、ISBN4−89471−338−1、119ページ、124−126ページ等参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、PDFの上記仕様を用いて、線状のパスに沿って破線パターンを生成した後、ラスタライズ処理する場合に予期しない問題が生じ得る。例えば、線状のパスに沿って破線パターンを生成する際、線素及び隙間の繰り返し数が増加するにつれて、RIPの演算アルゴリズムやソフトウエアバージョンに起因する演算誤差が累積し、パスの終点近傍における線素が不定に発生する場合がある。以下、図15B及び図15Cを参照しながら具体的に説明する。
【0015】
図15Bの例によると、上記演算誤差の影響により、線素200aの終点202aの位置と、線素200bの終点202bの位置が異なっているとする。すると、次の線素204aの始点206aはパスの終点位置208を超えた位置(右方側)に存在し、次の線素204bの始点206bはパスの終点位置208を超えない位置(左方側)に存在する。
【0016】
図15Cは、図15Bに示す上段の破線パターン(線素200a、次の線素204a)及び下段の破線パターン(線素200b、次の線素204b)にそれぞれ所定の線幅を付してストロークした結果を表す概略説明図である。
【0017】
予め指定された線幅とキャップ形式(端部処理形式)に従って、線素200aを中心軸とした塗り潰し領域210aが形成される。線素200bについても、線素200aと同様に、塗り潰し領域210bが形成されている。
【0018】
ところが、パスの範囲外にある始点206a(上段の破線パターン)には、次の線素204aを中心軸とした塗り潰し領域は形成されない。一方、パスの範囲内にある始点206b(下段の破線パターン)には、次の線素204bの一部を中心軸とした長円形状の塗り潰し領域212が形成される。すなわち、図15B及び図15Cに示すように、同じパス長であっても、目論見と異なる破線形状に変換される場合がある。
【0019】
このように、破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理する場合、発生原因の特定が困難である予期しない印刷不具合の一因となり得る。特に、線素の長さが短い場合にこの問題が顕在化する。
【0020】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できるページ記述データ処理装置、方法及びプログラム並びに印刷物生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るページ記述データ処理装置は、入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する特定描画オブジェクト識別部と、前記特定描画オブジェクト識別部により前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部と、前記分割要否判別部により分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部とを有することを特徴とする。
【0022】
このように、破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部と、特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部を設けたので、RIPによるラスタライズ処理の過程で、破線パターンを構成する線素及び隙間の繰り返し数を減らすことで演算誤差の累積を抑制し、パスの終点近傍において線素が不定に発生する現象を未然に防止可能である。これにより、破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できる。
【0023】
また、前記分割要否判別部は、前記破線パターンに沿ったパスが複数のパス要素で構成される場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することが好ましい。
【0024】
さらに、前記分割要否判別部は、前記破線パターンに沿ったパスの長さが第1の閾値を超えた場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することが好ましい。
【0025】
さらに、前記分割要否判別部は、前記破線パターンを形成する線素の数が第2の閾値を超えた場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することが好ましい。
【0026】
さらに、前記オペレータ置換部は、前記破線パターンを形成する線素の隙間の位置で順次結合する前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換することが好ましい。
【0027】
本発明に係るページ記述データ処理方法は、入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する識別ステップと、前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する判別ステップと、分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換する置換ステップとを備えることを特徴とする。
【0028】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する特定描画オブジェクト識別部、前記特定描画オブジェクト識別部により前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部、前記分割要否判別部により分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部として機能させることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る印刷物生産方法は、印刷しようとするページ記述データに基づいて校正画像を出力する校正ステップと、上記したページ記述データ処理方法を用いて、前記校正ステップの実行前に前記ページ記述データを処理する処理ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るページ記述データ処理装置、方法及びプログラム並びに印刷物生産方法によれば、破線パターンの形状に基づいて該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別し、特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するようにしたので、RIPによるラスタライズ処理の過程で、破線パターンを構成する線素及び隙間の繰り返し数を減らすことで演算誤差の累積を抑制し、パスの終点近傍において線素が不定に発生する現象を未然に防止可能である。これにより、破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態に係るページ記述データ処理方法を実施する出版システムの概略構成図である。
【図2】図1に示すページ記述データ処理装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るページ記述データ処理装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図4】図3のステップS5における破線パターンの形状の推定方法に関するフローチャートである。
【図5】直線ストロークオペレータにより生成された直線状のパス要素の概略説明図である。
【図6】曲線ストロークオペレータにより生成された三次ベジェ曲線状のパス要素の概略説明図である。
【図7】図7Aは、曲線に沿った破線パターンの一例を示す模式図である。図7Bは、図7Aの破線パターンに沿ったパスの構成を表す概略説明図である。
【図8】図8Aは、破線形状パラメータの一例を示す図である。図8Bは、図5に示すパス要素に沿って形成された破線パターンの説明図である。
【図9】図6に示すパス要素に沿って形成された破線パターンの説明図である。
【図10】図3のステップS6における破線パターンの分割要否の判別方法に関するフローチャートである。
【図11】図11A及び図11Bは、第2分割処理の要否の判別方法を説明するための概略図である。
【図12】図12A及び図12Bは、本発明に係る分割処理後における破線パターンの描画過程を表す第1説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは、本発明に係る分割処理後における破線パターンの描画過程を表す第2説明図である。
【図14】パスの別の分割例を表す概略説明図である。
【図15】図15Aは、破線形状パラメータと実際に描画される破線パターンとの関係を示す説明図である。図15B及び図15Cは、直線状のパスに所定の線幅を付してストロークし、破線パターンを形成した結果を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明に係るページ記述データ処理装置、方法及びプログラムの実施形態について、これを実施する出版システムを例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、この実施形態に係るページ記述データ処理方法を実施する出版システム10の概略構成図を示している。
【0034】
出版システム10は、プリプレス工程と印刷工程並びに図示しない製本工程とから構成される。
【0035】
プリプレス工程には、DTPコンピュータ12と、パーソナルコンピュータ等により構成されるページ記述データ処理装置14と、RIP16と、プリンタ20と、プレートセッタ22が備えられる。
【0036】
DTPコンピュータ12は、オペレータによって編集された文字や画像等の要素を基に、ページ毎のイメージを表現するページ記述言語で記述されたページ記述データDpを作成する。
【0037】
ページ記述データ処理装置14は、DTPコンピュータ12から出力されたページ記述データDpの内容(属性)を調べ、調査結果に応じて、所定の属性を有するページ記述データDpに対して特定の処理を行い、処理後のロバスト化ページ記述データDp´を作成するか、所定の属性を有さないページ記述データDpをそのまま出力する。なお、ページ記述データ処理装置14による処理機能は、DTPコンピュータ12に一体的に組み込み、ページ記述データ処理装置14を省略することもできる。
【0038】
RIP16は、ページ記述データ処理装置14から出力されたページ記述データDp又はロバスト化ページ記述データDp´を、例えばCMYK4版それぞれのラスタイメージデータDrに変換する。
【0039】
プリンタ20は、ラスタイメージデータDrに基づきハードコピーであるプルーフ18(校正画像)を出力する。
【0040】
プレートセッタ22は、プリンタ20によりプリントされたプルーフ18がオペレータによってOKであると判断された場合に、オペレータによる開始スイッチの操作後、RIP16の出力であるラスタイメージデータDrからCMYK4版のそれぞれの刷版PPを作成して出力する。
【0041】
印刷工程には、印刷機24が備えられる。印刷機24には、CMYK4版の刷版PPが装着され、刷版PPに担持されたCMYKのインキが本紙上に転移されて多色(4色)刷りが行われることで印刷物26が完成する。
【0042】
図2は、ページ記述データ処理装置14のCPU14a(図1参照)がROM14b(同参照)に記録されたプログラムを実行することで達成される機能のブロック図を示している。
【0043】
なお、前記プログラムは、ROM14b、ハードディスク、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。コンピュータ読み取り可能な記録媒体には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。
【0044】
ページ記述データ処理装置14は、入力インタフェース(入力I/F)32を通じて入力したページ記述データDpを分析処理したロバスト化ページ記述データDp´を作成し又は手を加えない元のままのページ記述データDpを作成し、出力インタフェース(出力I/F)34を通じて出力する。
【0045】
ページ記述データ処理装置14は、上記の入出力インタフェース32、34の他、ページ記述データDpの構造を解析する構造解析部36と、破線パターンを描画するオブジェクト(以下、「特定描画オブジェクト」という。)の有無を識別する描画オブジェクト識別部38(特定描画オブジェクト識別部)と、特定描画オブジェクトがあると識別された場合に前記破線パターンの分割条件(分割の要否も含む。)を設定する分割条件設定部40と、分割を要すると判別された場合に前記描画オブジェクトを記述するオペレータ群を置換するオペレータ置換部42とを備える。
【0046】
ここで、本明細書中の「描画オブジェクト」は、二次元グラフィクス(又は三次元グラフィクス)の各構成要素を意味し、ソフトウエア工学の技術分野で用いられる「オブジェクト」よりも狭い概念である。また、「オペレータ群」には、複数のオペレータの集合のみならず、単一のオペレータも含まれるものとする。
【0047】
分割条件設定部40は、破線パターンの形状(複数の線素の形状)を推定する破線形状推定部44と、前記破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部46(第1判別部48及び第2判別部50を含む。)と、前記複数のサブ破線パターンの記述条件を決定する記述条件決定部52とを備える。
【0048】
基本的には、以上のように構成される出版システム10のページ記述データ処理装置14の動作について、図3のフローチャート及び図2の機能ブロック図を参照して説明する。
【0049】
ステップS1において、ページ記述データ処理装置14は、DTPコンピュータ12から出力されるページ記述データDpをページ毎に取り込む。
【0050】
ステップS2において、構造解析部36は、ページ記述データDpの構造を解析してページに含まれる描画オブジェクトを抽出する。その後、描画オブジェクト識別部38は、抽出された描画オブジェクトにパスオブジェクトが含まれているか否かを確認する。パスオブジェクトが含まれていない場合には、ページ記述データDpを、変更せずそのまま出力インタフェース34を通じて出力する(ステップS9)。
【0051】
ここで、「パスオブジェクト」とは、直線、矩形、曲線(例えば三次ベジェ曲線)で構成される任意の形状をいう。
【0052】
ステップS3において、描画オブジェクト識別部38は、ステップS2により確認された前記パスオブジェクトにストローク系オペレータが含まれているか否かを確認する。ここで、「ストローク系オペレータ」とは、パスオブジェクトを終了させるオペレータであり、カレントパスに線幅を付して線を描くオペレータをいう。一方、カレントパスが生成する閉空間を塗りつぶすオペレータを「塗りつぶし系オペレータ」といい、「ストローク系オペレータ」及び「塗りつぶし系オペレータ」を総称して「パスペイントオペレータ」という場合がある。
【0053】
描画オブジェクト識別部38は、例えば、オペレータ「S」「s」等が含まれているか否かを確認する。ストローク系オペレータが含まれていない(すなわち、塗りつぶし系オペレータ「f」「F」等が含まれている)場合には、ページ記述データDpを、変更せずそのまま出力インタフェース34を通じて出力する(ステップS9)。
【0054】
ステップS4において、描画オブジェクト識別部38は、ステップS2により確認された前記パスオブジェクトに破線パターン決定オペレータが含まれているか否かを確認する。ここで、「破線パターン決定オペレータ」とは、パスをストロークするときの破線パターンの記述方法を設定するオペレータをいう。
【0055】
本明細書で例示するPDFでは、「d」の1種類のオペレータが定義されている。「d」オペレータにより設定可能な変数として、交互に現れる個々の線素と隙間との長さを指定する「破線配列」と、破線の開始位置となる先頭の位置を指定する「破線フェーズ」とが定義されている。以下、「破線パターン決定オペレータ」が含まれない(存在しない)ことには、該オペレータ自体が存在しない場合のみならず、該オペレータには実線を表す変数が設定されており、実質的に破線パターンではないことが含まれる。
【0056】
描画オブジェクト識別部38は、例えば、オペレータ「d」が含まれているか否かを確認する。含まれていない場合には、ページ記述データDpを、変更せずそのまま出力インタフェース34を通じて出力する(ステップS9)。
【0057】
ステップS5において、破線形状推定部44は、パスに沿って形成される破線パターンの形状を推定する。具体的には、破線パターンを構成する複数の線素の始点及び終点の位置をそれぞれ推定する。以下、ユーザ空間(装置独立座標系)上において各線素の始点及び終点の位置を推定する方法について、図4のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0058】
ステップS51において、破線形状推定部44は、破線パターンに沿ったパスを構成するパス要素の個数を確認する。ここで、パス要素とは、1つのパスを構築するための基本単位を意味する。具体的には、前記パスの始点(起点)を決定するオペレータと、ストローク系オペレータとの間に存在するパス構築オペレータの個数を確認する。
【0059】
ここで、「パス構築オペレータ」は、パスの物理的形状を定義するオペレータをいう。PDFでは、「m」「l」「c」「v」「y」「h」「re」の7種類のオペレータが定義されている。パス構築オペレータには、カレントパスに直線を追加する「直線パス構築オペレータ」(「l」の1種類)と、カレントパスに曲線を追加する「曲線パス構築オペレータ」(「c」「v」「y」の3種類)とが含まれる。ここで、カレントパスとは、パスペイント処理(ストローク処理又は塗り潰し処理)の適用範囲にある現在のパスをいう。
【0060】
図5は、直線パス構築オペレータ(「l」オペレータ)により生成される直線状のパス要素60の概略説明図である。このパス要素60は、始点P1(x1,y1)及び終点P2(x2,y2)により定義されている。
【0061】
変数tの値を0〜1まで変化させることにより、始点P1と終点P2とを結ぶパス要素60が生成される。ここで、変数tにおけるパス要素60上の点の座標P(x(t),y(t))は、次の(1)式及び(2)式で算出される。
x(t)=(1−t)x1+tx2 ……(1)
y(t)=(1−t)y1+ty2 ……(2)
【0062】
ここで、(1)式及び(2)式より、x(0)=x1、y(0)=y1、x(1)=x2、y(1)=y2であることから諒解されるように、変数tが0〜1に変化すると、パス要素60上の点Pは、矢印E1の方向に始点P1から終点P2まで連続的に移動する。
【0063】
図6は、曲線パス構築オペレータ(「c」オペレータ)により生成される三次ベジェ曲線状のパス要素62の概略説明図である。このパス要素62は、2つの端点P0(x0,y0)及びP3(x3,y3)並びに2つの制御点P1(x1,y1)及びP2(x2,y2)により定義されている。
【0064】
変数tの値を0〜1まで変化させることにより、始点P0と終点P3とを結ぶパス要素62が生成される。ここで、変数tにおけるパス要素62上の点の座標P(x(t),y(t))は、次の(3)式及び(4)式で算出される。
x(t)=(1−t)30+3t(1−t)21+3t2(1−t)x2+t33 ……(3)
y(t)=(1−t)30+3t(1−t)21+3t2(1−t)y2+t33 ……(4)
【0065】
ここで、(3)式及び(4)式より、x(0)=x0、y(0)=y0、x(1)=x3、y(1)=y3であることから諒解されるように、変数tが0〜1に変化すると、パス要素62上の点Pは、矢印E2の方向に始点P0から終点P3まで連続的に移動する。なお、破線で示す線分P01は点P0におけるパス要素62の接線である。また、破線で示す線分P23は点P3におけるパス要素62の接線である。
【0066】
図7Aは、曲線に沿った破線パターン70の一例を示す模式図である。本図に示すように、線素72と隙間74(非線素)とが交互に配置されることで、破線パターン70が形成されている。
【0067】
図7Bは、図7Aの破線パターン70に沿ったパス76の構成を表す概略説明図である。カレントパスとしてのパス76(一点鎖線で表記する。)は、矢印E3方向に向かって、三次ベジェ曲線で表記されるパス要素78と、三次ベジェ曲線で表記されるパス要素80とが結合してなる。
【0068】
パス要素78の始点はパスの始点82(白抜け丸印で表記)に対応し、パス要素78の終点はパス76の中間点84に対応する。パス要素80の始点は中間点84に対応し、パス要素80の終点はパス76の終点86(塗り潰し丸印で表記)に対応する。
【0069】
図7A及び図7B例の場合、破線形状推定部44は、破線パターン70から2個のパス要素78、80を確認する。なお、パスの構成に関し、図7例のように曲線状のパス同士の結合に限定されず、直線状のパスとの結合であってもよい。また、パス要素の結合数は、3つ以上であってもよいことはいうまでもない。
【0070】
ステップS52において、破線形状推定部44は、パス構築オペレータからパスを決定するパラメータを取得する。図5の例では、オペレータ属性(「l」)、始点P1(x1,y1)及び終点P2(x2,y2)である。図6の例では、オペレータ属性(「c」、「v」、又は「y」)、始点P0(x0,y0)、終点P3(x3,y3)、制御点P1(x1,y1)及び制御点P2(x2,y2)である。
【0071】
ステップS53において、破線形状推定部44は、破線パターン70を決定するパラメータを取得する。ここでは、「d」オペレータに設定される「破線配列」及び「破線フェーズ」(破線形状パラメータ)に相当する。
【0072】
ステップS54において、破線形状推定部44は、複数の線素72における始点・終点の各位置を推定する。以下、ユーザ空間(装置独立座標系)上での各位置の推定方法について詳細に説明する。
【0073】
パス要素60、62(図5及び図6参照)上の点Pの座標を(x(t),y(t))とするとき、区間[u,v]でのパス要素60、62の線分の長さI(u,v)は、次の(5)式で算出される。
【0074】
【数1】

【0075】
なお、0≦u≦1、0≦v≦1である。この(5)式に基づいて、線素72の始点・終点位置を推定することができる。
【0076】
以下、図5に示す直線状のパス要素60の例に基づいて、破線形状推定部44が線素の始点・終点の位置を推定する手順について説明する。
【0077】
図8Aに示すように、破線形状パラメータが[D L−D]{S}で設定されたものとする。ここで、D、L及びSはいずれも正数であって、整数値のみならず、実数値を採ることができる。
【0078】
すると、図8Bに示すように、パス要素60の始点PA(x1,y1)と、終点PB(x2,y2)と、上記破線形状パラメータに基づいて、5つの線素A1〜A5の形状、具体的には、始点{Q1、Q3、Q5、Q7、Q9}及び終点{Q2、Q4、Q6、Q8、Q10}の位置をそれぞれ推定できる。以下、その推定方法について詳細に説明する。
【0079】
先ず、描画開始位置としての線素A1(長さL1)の始点Q1の位置は、パス要素60の始点PAの位置(t1=0)と推定される。そして、I(t1,t2)=D−Sを満たすt2を算出し、(1)式及び(2)式に基づいてt=t2に相当する位置を算出する。線素A1の終点Q2の位置は、位置(x(t2),y(t2))であると推定される。
【0080】
次いで、I(t2,t3)=L−Dを満たすt3を算出し、(1)式及び(2)式に基づいてt=t3に相当する位置を算出する。線素A2(長さL2)の始点Q3の位置は、算出された位置(x(t3),y(t3))であると推定される。そして、I(t3,t4)=Dを満たすt4を算出し、(1)式及び(2)式に基づいてt=t4に相当する位置を算出する。線素A2の終点Q4の位置は、位置(x(t4),y(t4))であると推定される。
【0081】
以下同様にして、始点{Q1、Q3、Q5、Q7、Q9}及び終点{Q2、Q4、Q6、Q8、Q10}の座標がそれぞれ推定される。
【0082】
次いで、図6に示す曲線状のパス要素62の例に基づいて、破線形状推定部44が線素の始点・終点の位置を推定する手順について説明する。
【0083】
図9に示すように、パス要素62の始点P0(x0,y0)と、終点P3(x3,y3)と、上記破線形状パラメータに基づいて、5つの線素A1〜A5の形状、具体的には、始点{Q1、Q3、Q5、Q7、Q9}及び終点{Q2、Q4、Q6、Q8、Q10}の座標をそれぞれ推定できる。以下、その推定方法について詳細に説明する。
【0084】
先ず、描画開始位置としての線素A1(長さL1)の始点Q1の位置は、パス要素62の始点PAの位置(t1=0)と推定される。そして、I(t1,t2)=D−Sを満たすt2を算出し、(3)式及び(4)式に基づいてt=t2に相当する位置を算出する。線素A1の終点Q2の位置は、位置(x(t2),y(t2))であると推定される。
【0085】
次いで、I(t2,t3)=L−Dを満たすt3を算出し、(3)式及び(4)式に基づいてt=t3に相当する位置を算出する。線素A2(長さL2)の始点Q3の位置は、算出された位置(x(t3),y(t3))であると推定される。そして、I(t3,t4)=Dを満たすt4を算出し、(3)式及び(4)式に基づいてt=t4に相当する位置を算出する。線素A2の終点Q4の位置は、位置(x(t4),y(t4))であると推定される。
【0086】
以下同様にして、始点{Q1、Q3、Q5、Q7、Q9}及び終点{Q2、Q4、Q6、Q8、Q10}の座標がそれぞれ推定される。
【0087】
そして、図7B例のように、複数のパス要素78、80で構成されたパス76に関しても、上記した方法に従って各線素72の始点・終点を推定できる。すなわち、パス76の始点82から終点86までの区間で(パス要素78、パス要素80の順で)、各線素72の始点・終点を順次推定すればよい。このように、破線形状推定部44は、パス76に沿って形成される破線パターン70の形状を推定する(ステップS5)。
【0088】
図3に戻って、ステップS6において、分割要否判別部46は、破線パターン70の形状に基づいて、破線パターン70を複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する。具体的には、複数のパス要素に沿った1つの破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割する「第1分割処理」、又は、1つのパス要素からなる破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割する「第2分割処理」の要否を判別する。以下、破線パターン70の分割要否を判別する方法について、図10のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0089】
ステップS61において、第1判別部48は、パス76を構成するパス要素の個数を判別する。パス要素が1つの場合、第1判別部48は、第1分割処理が不要であると判別する(ステップS62)。一方、パス要素が複数の場合、第1判別部48は、第1分割条件を満たすとして、第1分割処理が必要であると判別する(ステップS63)。なぜならば、複数のパス要素が結合されたパス76の場合、そのパス全体が長くなる可能性が高いからである。
【0090】
ステップS64において、第2判別部50は、未だ判別されていないパス要素を1つ指定する。以下、この指定されたパス要素を「指定パス要素」という。初期の状態では、パス76のうち、パス要素78、80が指定パス要素の候補となる。
【0091】
ステップS65において、第2判別部50は、破線形状推定部44による推定結果を参照し、指定パス要素の全長PL及び線素数ENを算出する。ここでは、図11Aに示すように、パス要素78、80の全長は、それぞれPL1、PL2であったとする。また、図11Bに示すように、パス要素78、80上に形成される線素数は、それぞれEN1、EN2であったとする。
【0092】
ステップS66において、第2判別部50は、指定パス要素の全長PLと閾値PLth(第1の閾値)との大小関係を比較する。PL<PLthの場合、次のステップS67に進む。
【0093】
ステップS67において、第2判別部50は、指定パス要素の線素数ENと閾値ENth(第2の閾値)との大小関係を比較する。EN<ENthの場合、第2判別部50は、第2分割処理が不要であると判別する(ステップS68)。
【0094】
一方、PL≧PLth(ステップS66)及びEN≧ENth(ステップS67)の少なくとも一方を満たす場合、第2判別部50は、第2分割条件を満たすとして、第2分割処理が必要であると判別する(ステップS69)。なぜならば、パス要素上に多数の線素72が形成される可能性が高いからである。
【0095】
なお、閾値PLth及び/又は閾値ENthは、固定値であってもよいし、印刷機24の出力解像度に応じて変更してもよい。
【0096】
ステップS70において、第2判別部50は、すべてのパス要素の指定が完了したか否かを判別する。完了していないと判別された場合、ステップS64に戻って、ステップS64〜S69を順次繰り返す。このように、分割要否判別部46は、破線パターン70の形状に基づいて、破線パターン70を複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する(ステップS6)。
【0097】
図3に戻って、ステップS7において、分割処理が必要でない場合、すなわち、上記した第1分割条件及び第2分割条件のいずれも満たさない場合には、ページ記述データDpを、変更せずそのまま出力インタフェース34を通じて出力する(ステップS9)。
【0098】
ステップS8において、オペレータ置換部42は、オペレータ群の分割・置換処理を実行する。分割・置換処理に先立ち、記述条件決定部52は、分割要否判別部46による判別結果に応じて、サブ破線パターンを記述するための記述条件を決定する。具体的には、各サブ破線パターンに沿ったパスの始点、終点及び形状のみならず、破線形状パラメータ(破線配列及び破線フェーズ)をそれぞれ決定する。その後、オペレータ置換部42は、分割条件設定部40(記述条件決定部52)から取得した前記記述条件を用いて、ページ記述データDp中の破線パターン70を記述するオペレータ群を、複数のサブ破線パターンを記述する複数のオペレータ群に置換する。
【0099】
ここでは、ページ記述データDp、Dp’の具体的なソースコードの置換例についての説明を割愛する。その代わり、第1分割処理の実行後における破線パターン70の描画過程について、図12A〜図13Bを参照しながら説明する。
【0100】
図12Aにおいて、始点100から終点102までのカレントパス104を設定する。このカレントパス104の形状は、図7Bに示すパス要素78の形状と一致する。すなわち、始点100の位置は始点82(図7B参照)の位置と一致するとともに、終点102の位置は中間点84(同参照)の位置と一致する。
【0101】
図12Bにおいて、適切な破線形状パラメータを用いてカレントパス104をストロークすることで、複数の線素72及び複数の隙間74で構成されるサブ破線パターン106が描画される。
【0102】
図13Aにおいて、始点108から終点110までのカレントパス112を設定する。このカレントパス112の形状は、図7Bに示すパス要素80の形状と一致する。すなわち、始点108の位置は中間点84(図7B参照)の位置と一致するとともに、終点110の位置は終点86(同参照)の位置と一致する。
【0103】
図13Bにおいて、適切な破線形状パラメータを用いてカレントパス112をストロークすることで、複数の線素72及び複数の隙間74で構成されるサブ破線パターン114が描画される。
【0104】
サブ破線パターン106、114を適切に結合することにより、破線パターン70(図7A参照)と略一致する破線パターン116を形成可能である。特に、サブ破線パターン114の「破線フェーズ」を適切に設定することで、サブ破線パターン106の終端とサブ破線パターン114の始端との接合部118は、継ぎ目なく再現可能である。
【0105】
図14は、パス76の別の分割例を表す概略説明図である。本図は、第1分割処理及び第2分割処理の両方の分割処理を実行した後におけるパス76の分割結果を模式的に表す。
【0106】
パス76は、パス要素78、80が結合してなる。パス要素78は、中間点120の位置でさらに2等分されている。すなわち、パス要素78は、三次ベジェ曲線で表記されるパス要素122と、三次ベジェ曲線で表記されるパス要素124とが結合してなる。パス要素122の全長は、パス要素124の全長と一致(=PL1/2)し、PL1/2<PLth(図10のステップS66参照)の関係を満たしている。
【0107】
なお、第2分割処理において、図14例のように等分割でなくてもよいし、3つ以上のパス要素に分割してもよい。また、パス76(又は、パス要素78、80)の長さに応じて分割数を種々変更してもよい。さらに、破線パターン70を形成する線素72を避けて、隙間74の位置で順次結合するように分割することで、継ぎ目における線素72の長さの誤差変動を防止できる。
【0108】
図3に戻って、ステップS9において、オペレータ置換部42により破線パターン70が複数のサブ破線パターン106、114に分割されたページ記述データDp’を、出力インタフェース34を通じて出力する。
【0109】
このようにして、図1に示すように、ページ記述データ処理装置14に入力されたページ記述データDpは、そのまま(Dp)又はパス構築オペレータ置換処理が施された後(Dp’)、RIP16側に供給される。
【0110】
その結果、サブ破線パターン106(図12B参照)の描画後、サブ破線パターン114(図13B参照)を描画することで、破線パターン70と同等の破線パターン116(図7A、図13B参照)が得られる。そして、特定の破線パターンを含むページ記述データDpであっても安定して出力することができる。
【0111】
以上のように、破線パターン70の形状に基づいて、破線パターン70を複数のサブ破線パターン106、114に分割するか否かを判別する分割要否判別部46と、破線パターン70(特定描画オブジェクト)を記述するオペレータ群を、複数のサブ破線パターン106、114をそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部42とを設けたので、RIP16によるラスタライズ処理の過程で、破線パターン70を構成する線素72及び隙間74の繰り返し数を減らすことで演算誤差の累積を抑制し、パス76の終点86近傍において線素72が不定に発生する現象を未然に防止可能である。これにより、破線パターンを含む印刷データに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できる。
【0112】
また、印刷しようとするページ記述データDpに基づいて、プリンタ20や表示装置等で校正画像(プルーフ18等)を出力する前に、本実施の形態に係るページ記述データ処理方法を用いてもよい。これにより、校正時のRIP処理による破線パターン70の描画結果と、出力時(刷版又は印刷)のRIP処理による破線パターン70の描画結果とが略一致する。すなわち、特定の破線パターン70を含むページ記述データDpに対してラスタライズ処理を行う際に生じ得る印刷不具合を防止できる。特に、印刷物26を生産する過程で複数のRIP処理工程を経る場合には、可能な限り上流の工程で、本実施の形態に係るページ記述データ処理方法を用いることが好ましい。
【0113】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0114】
本実施の形態ではPDFを中心に説明したが、ページ記述言語はこれに限定されることはない。例えば、AdobeSystems社のPostScript(登録商標)やXPS(XML Paper Specification)等に対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0115】
10…出版システム 12…DTPコンピュータ
14…ページ記述データ処理装置 16…RIP
18…プルーフ 20…プリンタ
22…プレートセッタ 24…印刷機
26…印刷物 36…構造解析部
38…描画オブジェクト識別部 40…分割条件設定部
42…オペレータ置換部 44…破線形状推定部
46…分割要否判別部 48…第1判別部
50…第2判別部 52…記述条件決定部
54…第2要否判別部 56…第2分割部
60、62、78、80、122、124…パス要素
70、116…破線パターン 72…線素
74…隙間 76…パス
82、100、108…始点 84、120…中間点
86、102、110…終点 104、112…カレントパス
106、114…サブ破線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する特定描画オブジェクト識別部と、
前記特定描画オブジェクト識別部により前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部と、
前記分割要否判別部により分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部と
を有することを特徴とするページ記述データ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のページ記述データ処理装置において、
前記分割要否判別部は、前記破線パターンに沿ったパスが複数のパス要素で構成される場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することを特徴とするページ記述データ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のページ記述データ処理装置において、
前記分割要否判別部は、前記破線パターンに沿ったパスの長さが第1の閾値を超えた場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することを特徴とするページ記述データ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のページ記述データ処理装置において、
前記分割要否判別部は、前記破線パターンを形成する線素の数が第2の閾値を超えた場合、前記破線パターンの分割を要すると判別することを特徴とするページ記述データ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のページ記述データ処理装置において、
前記オペレータ置換部は、前記破線パターンを形成する線素の隙間の位置で順次結合する前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換することを特徴とするページ記述データ処理装置。
【請求項6】
入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する識別ステップと、
前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する判別ステップと、
分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換する置換ステップと
を備えることを特徴とするページ記述データ処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
入力されたページ記述データの中から、破線パターンを描画する特定描画オブジェクトの有無を識別する特定描画オブジェクト識別部、
前記特定描画オブジェクト識別部により前記特定描画オブジェクトがあると識別された場合に、前記破線パターンの形状に基づいて、該破線パターンを複数のサブ破線パターンに分割するか否かを判別する分割要否判別部、
前記分割要否判別部により分割を要すると判別された場合に、前記特定描画オブジェクトを記述するオペレータ群を、前記複数のサブ破線パターンをそれぞれ記述する複数のオペレータ群に置換するオペレータ置換部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
印刷しようとするページ記述データに基づいて校正画像を出力する校正ステップと、
請求項6記載のページ記述データ処理方法を用いて、前記校正ステップの実行前に前記ページ記述データを処理する処理ステップと
を備えることを特徴とする印刷物生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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