説明

ページ記述データ生成方法、プログラム及びデータフォーマット

【課題】製版工程と印刷工程とが分離されている環境において、RIP処理ソフトウェアのバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できるページ記述データ生成方法、プログラム及びデータフォーマットを提供する。
【解決手段】製版画像データD2と、製版画像データD2に基づいてデジタル印刷機40に出力させる際のRIP処理の用に供される製版画像作成条件D1とを取得し、取得された製版画像データD2に基づいて校正機26に出力させる際のRIP処理の用に供される校正画像作成条件D3を取得し、取得された製版画像データD2及び校正画像作成条件D3に基づいてRIP処理により校正画像データD4を作成し、製版画像作成条件D1、製版画像データD2、校正画像作成条件D3及び校正画像データD4に基づいてページ記述データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製版画像データに基づいて出力装置に出力させる前に電子的な検版を行うためのページ記述データ生成方法、プログラム及びデータフォーマットに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、印刷製版の分野において、例えば初校時の印刷物と再校時の印刷物とを直接的に比較観察するような従来の検版方式ではなく、その出力過程で生成される中間物としてのデジタルデータ同士を様々な処理過程で比較演算することで、電子的に検版を行うデジタル検版が普及しつつある。初校時の画像データと再校時の画像データとを比較することにより、作業者の作業ミスに伴う修正誤り、修正忘れ、不要な修正等の有無を自動的に検査することができる。
【0003】
さらに、デジタルデータの利便性を活かすため、従来の検版の概念をさらに拡張させたデジタル検版に関する手法が種々提案されている。
【0004】
特許文献1には、異なる工程で作成された校正画像データと製版画像データとの間でデジタル検版を行う方法及び装置が開示されている。具体的には、製版画像データを校正時の解像度及びデータ形式と合わせるように変換して得られた画像データと、校正画像データとを比較検査することにより、作業者の手間を掛けることなく略同等の処理条件下での画像データ同士の比較検査を行うことができる。
【0005】
特許文献2には、デジタルデータのファイル名ではなく、品目、受注先、コンテンツのバージョン情報等の属性情報に基づいて比較基準・対象となる画像データを選択し、デジタル検版を行うシステム及び方法が開示されている。これにより、画像データの選択誤りを無くし、検版作業の履歴情報を適切に管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−117888号公報
【特許文献2】特開2006−106153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、印刷システムの各作業工程の分散化に伴い、製版工程と印刷工程とが分離され、それぞれ別個の作業場所で行われる環境が増加している。そうすると、個別の機器の更新時期、設備投資等の諸般の事情により、作業端末(コンピュータ)に搭載される基本・応用ソフトウェアに関し、同一の印刷システム内であっても新旧バージョンが並存する環境が生じる場合がある。
【0008】
特に、ページ記述言語(PDL)形式の画像データをビットマップ形式に展開するRIP処理に関しては、同一の画像作成条件を設定したにもかかわらず出力結果が異なる場合がある。この場合、上記デジタル検版により常に不合格の検査結果が得られることになり、このデジタル検版が適切に機能しなくなるおそれがある。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2記載の方法等では、RIP処理のソフトウェアバージョンの相違による出力結果の不一致について何ら考慮がなされていない。特に、製版工程と印刷工程とが分離されている場合には、同一のバージョンが搭載された作業端末が設置されていない場合も十分に想定され、特にこの問題は顕在化する。
【0010】
一方、上記した不都合を回避するために、RIP処理のソフトウェアバージョンに応じて検版の合格基準を緩和する方法も採り得るが、安定した画像品質を有する印刷を必ずしも保証することができない。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、製版工程と印刷工程とが分離されている環境において、RIP処理のソフトウェアバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できるページ記述データ生成方法、プログラム及びデータフォーマットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るページ記述データ生成方法は、製版画像データと、該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件とを取得し、取得された前記製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件を取得し、取得された前記製版画像データ及び前記校正画像作成条件に基づいてRIP処理により校正画像データを作成し、前記製版画像作成条件、前記製版画像データ、前記校正画像作成条件及び作成された前記校正画像データに基づいてページ記述データを生成することを特徴とする。
【0013】
このように構成しているので、ページ記述データの受信側である装置は校正画像作成条件を取得可能であり、印刷しようとするRIP処理環境と同一の環境である前記装置上で、校正画像データの処理再現性を検査できる。さらに、前記装置は校正情報付製版データを介して比較対象となる校正画像データを取得可能であるので、製版工程と印刷工程とが分離されている環境において、RIP処理のソフトウェアバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できる。すなわち、従来の検版システムのように校正履歴の一致性を検査するのみならず、検版装置におけるRIP処理システムの画像再現評価を併せて行うので、検版に対する信頼性を一層高めることができる。
【0014】
また、前記校正画像作成条件は、RIP処理のソフトウェアバージョン情報又は画像処理条件であることが好ましい。これにより、ページ記述データの受信側である装置は、RIP処理による画像処理結果に直接影響を及ぼし得る画像作成条件を取得することができる。
【0015】
さらに、前記ソフトウェアバージョン情報は、全体又は前記ソフトウェアを構成する一部のライブラリのバージョン情報であることが好ましい。これにより、ソフトウェアバージョン情報に起因する画像処理結果への影響度を詳細に把握することができる。
【0016】
さらに、前記画像処理条件には、出力解像度、入力プロファイル、出力プロファイル、トーンカーブ、トラッピング、スクリーニング、又はオーバープリントの少なくとも1つの画像処理条件が含まれることが好ましい。
【0017】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、製版画像データと、該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件とを取得する手段、取得された該製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件を取得する手段、取得された前記製版画像データ及び前記校正画像作成条件に基づいてRIP処理により校正画像データを作成する手段、
前記製版画像データ、前記製版画像作成条件、前記校正画像作成条件及び作成された前記校正画像データに基づいてページ記述データを生成する手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るページ記述データフォーマットは、製版画像データと、該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件データと、該製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件データと、該校正画像作成条件データを用いて前記製版画像データをRIP処理して作成された校正画像データとが配置されていることを特徴とする。
【0019】
これにより、ページ記述データの受信側である装置は、印刷しようとするRIP処理環境と同一の環境である前記装置上で、校正画像データの再現シミュレーション及び比較検査を行うために必要なデータを一度に取得可能であり、製版工程と印刷工程とが分離されている環境において、RIP処理のソフトウェアバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るページ記述データ生成方法、プログラム及びページ記述データフォーマットによれば、製版画像作成条件、製版画像データ、校正画像作成条件及び校正画像データに基づいてページ記述データを生成するので、ページ記述データの受信側である装置は校正画像作成条件を取得可能であり、印刷しようとするRIP処理環境と同一の環境である前記装置上で、校正画像データの処理再現性を検査できる。さらに、前記装置は校正情報付製版データを介して比較対象となる校正画像データを取得可能であるので、製版工程と印刷工程とが分離されている環境において、RIP処理のソフトウェアバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できる。すなわち、従来の検版システムのように校正履歴の一致性を検査するのみならず、検版装置におけるRIP処理システムの画像再現評価を併せて行うので、検版に対する信頼性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係るページ記述データ生成方法が用いられる検版システムの概略説明図である。
【図2】本実施の形態に係る製版装置の構成ブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る校正情報付製版データファイルが有するページ記述データフォーマットの構造図である。
【図4】本実施の形態に係る検版装置の構成ブロック図である。
【図5】本実施の形態に係る検版システムを用いて適切な印刷物を得るためのフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係るデジタル検版方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るページ記述データ生成方法についてそれを実施する検版装置並びに検版システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るページ記述データ生成方法が用いられる検版システム10の概略説明図である。
【0024】
検版システム10は、製版サイト12と、印刷サイト14と、データベースサーバ16と、LAN18とを基本的に備える。
【0025】
製版サイト12は、LANハブ20と、編集装置22と、製版装置24と、校正機26とを備える。
【0026】
LANハブ20は、編集装置22と製版装置24とを有線又は無線により相互に接続する。
【0027】
編集装置22は、文字、図形、絵柄や写真等から構成されるカラー画像の配置をページ毎に編集が自在であり、ページ記述言語(以下、PDLという。)による電子原稿、例えば、4色(CMYK)や3色(RGB)のカラーチャンネルからなる8ビット画像データを生成する。
【0028】
ここで、PDLとは、印刷や表示等の出力単位である「ページ」内で文字、図形等の書式情報、位置情報、色情報(濃度情報を含む)等の画像情報を記述する言語である。例えば、PDF(Portable Document Formatの略で、ISO32000−1:2008に規定)、AdobeSystems社のPostScript(登録商標)やXPS(XML Paper Specification)等が知られている。
【0029】
校正情報付加装置としての製版装置24は、PDLによる電子原稿をビットマップ形式(ラスタ画像の一種)に展開し、所望の画像処理、例えば、色変換処理、画像拡縮処理や配置処理等を行い、校正機26の印刷方式に適した印刷信号に変換し、前記校正機26に前記印刷信号を送信する各機能を有している。
【0030】
校正機26は、入稿画像データを校正するための校正刷り28を得る出力装置である。校正機26として、後述するオフセット印刷機やデジタル印刷機と比較して解像度が低いDDCP(Direct Digital Color Proofer)、カラーレーザプリンタ(電子写真方式)やインクジェットプリンタ等が用いられる。
【0031】
印刷サイト14は、LANハブ30と、ワークステーション32と、画像処理装置34と、プレートセッタ36と、オフセット印刷機38と、デジタル印刷機40とを備える。
【0032】
LANハブ30は、ワークステーション32と画像処理装置34とを有線又は無線により相互に接続する。
【0033】
ワークステーション32は、後述する校正画像データと製版画像データとを比較検査する、いわゆるデジタル検版を行うことができる。また、大貼り、つけ合わせ編集、見当加減焼き、調子加減焼き等を行うことができる。さらに、画像処理装置34への出力指示ができる。
【0034】
画像処理装置34は、受信されたラスタ画像データをプレートセッタ36やデジタル印刷機40等の出力デバイスに適した印刷信号に変換する。また、画像処理装置34自体にRIP処理機能を別途搭載してもよい。
【0035】
プレートセッタ36は、画像処理装置34から供給されたCMYK印刷信号に基づいて図示しないプレートに対し直接的に画像を形成できる。オフセット印刷機38は、画像処理装置34から供給された印刷信号に基づいて図示しない各種メディアにカラー画像を印刷し、所望の印刷物42aを得る装置である。また、画像が形成された図示しないプレートを取り付け自在である。
【0036】
デジタル印刷機40は、画像処理装置34から供給された印刷信号に基づいて図示しない各種メディアにカラー画像を印刷し、所望の印刷物42bを得る装置である。デジタル印刷機40として、カラーレーザプリンタ、インクジェットプリンタ等が用いられる。
【0037】
データベースサーバ16は、製版画像データ(例えば、PDFファイル)やジョブチケット{例えば、JDF(Job Difinition Format)ファイル}の保存や管理等を行うためのサーバである。
【0038】
LAN18は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に基づいて構築されているネットワークである。製版サイト12と、印刷サイト14と、データベースサーバ16とは相互に接続されている。製版サイト12と印刷サイト14とは異なる作業場に設けられているので、製版サイト12内での製版工程と印刷サイト14内での印刷工程とがLAN18を介して行われる。
【0039】
図2は、本実施の形態に係る製版装置24の構成ブロック図である。
【0040】
製版装置24は、入稿データファイルF0を入力するI/F50と、該I/F50を介して入力された入稿データファイルF0等の各種データを記憶する記憶部52と、該記憶部52から供給された入稿データファイルF0に所望の製版処理を施して新たな製版データファイルF1を生成する製版処理部54と、該記憶部52から供給された製版データファイルF1のPDL形式画像データをビットマップ形式に展開するRIP56(ラスタイメージングプロセッサ)と、該RIP56により展開された画像データを校正機26に適した印刷信号(インクジェットプリンタの場合はインク射出制御データ)に変換するドライバ58と、該ドライバ58により変換された印刷信号を校正機26側に出力するI/F60とを備える。
【0041】
また、製版装置24は、製版データファイルF1に後述する校正情報を付加して校正情報付製版データファイルF2を生成する校正情報付加部62と、該校正情報付加部62から供給された校正情報付製版データファイルF2をデータベースサーバ16側に出力するI/F64とを備える。
【0042】
図3は、本実施の形態に係る校正情報付製版データファイルF2が有するページ記述データフォーマットの構造図である。
【0043】
校正情報付製版データファイルF2のデータ構造は、ヘッダ情報D0と、製版画像作成条件D1と、ページ記述データである製版画像データD2と、校正画像作成条件D3と、ラスタ画像データである校正画像データD4とから基本的に構成されている。
【0044】
ヘッダ情報D0には、そのファイルが準拠するファイル仕様のバージョン情報を特定する番号等の情報が格納されている。なお、説明の便宜のため、図2及び図4では、ヘッダ情報D0を省略している。
【0045】
製版画像作成情報D1には、出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像処理条件が格納されている。ここで、出力装置とは、図1に示すプレートセッタ36又はデジタル印刷機40に相当する。
【0046】
また、画像処理条件とは、画像データの処理結果に影響を与える種々の条件である。例えば、出力解像度、入力プロファイル、出力プロファイル、トーンカーブ、トラッピング、スクリーニング又はオーバープリントのうち少なくとも1つの画像処理条件が含まれる。
【0047】
製版画像データD2には、ページ記述データを構成するオブジェクトが格納されている。ページ記述データのような多量のデータは、主にストリームオブジェクトとして表現される。
【0048】
校正画像作成条件D3には、校正機26に校正刷り28を印刷させる際のRIP処理の用に供される画像処理条件のみならず、RIP56のソフトウェアバージョン情報がさらに格納されている。ここで、ソフトウェアバージョン情報とは、RIP処理機能を実装するソフトウェアの全体バージョン、各モジュールの個別バージョン、ライブラリの個別バージョンをいう。また、設定データファイル等の個別バージョンや、基本ソフトウェアのバージョンも含まれる。
【0049】
例えば、製版装置24に搭載される自社開発品のソフトウェアの全体バージョンV1.00.00は、第1〜第3の構成ライブラリから構成される。第1の構成ライブラリはRIPコアライブラリ、第2の構成ライブラリはPDF処理ライブラリ、第3の構成ライブラリはカラー画像処理ライブラリである。前記RIPコアライブラリはサードパーティ開発品の個別バージョンV2.5.00であり、前記PDF処理ライブラリはサードパーティ開発品の個別バージョンV9.1.00であり、カラー画像処理ライブラリは自社開発品の個別バージョンV2.1.02である。
【0050】
校正画像データD4は、ビットマップ形式画像データが格納されている。例えば、TIFF形式としてそのまま格納されている。なお、所定のフォーマットの画像データからヘッダ情報又はフッタ情報を削除し、RAW形式データとして格納してもよい。
【0051】
以下、本明細書中において「校正情報」とは、校正画像作成条件D3及び校正画像データD4をいう。
【0052】
図4は、本実施の形態に係る検版装置としてのワークステーション32の構成ブロック図である。
【0053】
ワークステーション32は、データベースサーバ16から供給された校正情報付製版データファイルF2を入力するI/F70と、該I/F70を介して入力された校正情報付製版データファイルF2から校正情報を取得する校正情報抽出部72と、該校正情報抽出部72から供給されたPDL形式画像データをビットマップ形式に展開するRIP74と、該RIP74により展開されたビットマップ形式画像データを画像処理装置34側に出力するI/F76とを備える。
【0054】
また、ワークステーション32は、校正情報抽出部72により抽出された校正画像作成条件D3と生成された出力画像作成条件D1(詳細は後述する)とを照合する作成条件照合部78と、該作成条件照合部78による照合結果を参照して画像比較の要否を判定する画像比較要否判定部80と、該画像比較要否判定部80による判定結果に基づいて、校正情報抽出部72により取得された校正画像データD4と前記RIP74により再び展開された校正再現画像データD4’とを比較検査する画像比較検査部82と、該画像比較検査部82による検査結果が不合格である場合はその旨を警告する警告部84とを備える。
【0055】
さらに、CPU等で構成される図示しない制御部は、この画像処理に関するすべての制御を行う。すなわち、ワークステーション32内部の各構成要素の制御(例えば、RIP74での画像処理)のみならず、I/F76を介して画像処理装置34にビットマップ形式画像データを送信する制御等も含まれる。
【0056】
本実施の形態に係るワークステーション32は以上のように構成され、上述した各画像処理機能は、基本プログラム(オペレーティングシステム)上で動作する応用プログラムを用いて実現することができる。
【0057】
この実施形態に係る検版システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る検版システム10を用いて適切な印刷物42a(又は42b)を得るためのフローチャートである。
【0059】
製版サイト12内での作業工程はステップS1〜S3から構成されている。各ステップについて、主に図2を参照しながら説明する。
【0060】
先ず、電子原稿のWeb入稿を行う(ステップS1)。クライアントにより図示しない端末装置から入稿された入稿データファイルF0は、図1に示すLAN18、LANハブ20を介して編集装置22に供給される。
【0061】
次いで、入稿データファイルF0の編集又は校正を行う(ステップS2)。作業者は、編集装置22を用いて、入稿データファイルF0の編集やジョブ登録等の作業を行った後、入稿データファイルF0を製版装置24に転送する。すると、入稿データファイルF0は、LANハブ20(図1参照)、I/F50の順に供給され、記憶部52に一時的に記憶される。
【0062】
校正作業による結果を踏まえ、入稿データファイルF0のデータ内容を修正すると、製版処理部54により適宜処理され、製版データファイルF1として記憶部52により再び記憶される。
【0063】
製版データファイルF1の一部である製版画像データD2(ページ記述データ)と校正画像作成条件D3とがRIP56によりそれぞれ8ビットのCMYKマップ形式(デバイス依存の画像データ)に展開され、ドライバ58により印刷信号(インク射出制御データ)に変換され、I/F60を介して校正機26に供給される。その後、校正機26により校正刷り28が印刷される。
【0064】
作業者は、その校正刷り28を目視し、修正誤り等がないか否かを確認する。校正作業が完了すると、製版データファイルF1のデータ内容が確定する。
【0065】
次いで、校正情報付製版データファイルF2のアップロードを行う(ステップS3)。
【0066】
作業者が校正完了の指示をすると、校正情報付加部62により、製版データファイルF1に対して校正画像作成条件D3及び校正画像データD4が付加されて、校正情報付製版データファイルF2が生成される。
【0067】
その後、校正情報付製版データファイルF2は、I/F64を介し、図1に示すLANハブ20に供給され、LAN18を経由し、製版サイト12外のデータベースサーバ16にアップロードされる。
【0068】
ここまでが製版サイト12内での作業工程であり、図5に示す以下のステップS4〜S8から構成される作業工程は印刷サイト14内で行われる。各ステップについて、主に図4を参照しながら説明する。
【0069】
先ず、校正情報付製版データファイルF2のダウンロードを行う(ステップS4)。作業者による印刷工程への移行指示に従って、校正情報付製版データファイルF2は、印刷サイト14外のデータベースサーバ16(図1参照)から供給され、LAN18、LANハブ30、ワークステーション32のI/F70を介して校正情報抽出部72に供給される。その後、校正情報抽出部72により製版画像作成条件D1、製版画像データD2、校正画像作成条件D3及び校正画像データD4の各種データがそれぞれ抽出される。
【0070】
次いで、デジタル検版を行う(ステップS5)。ここで、デジタル検版とは電子的な検版を意味し、本実施の形態においては、製版装置24のRIP56により作成された校正画像データD4と、ワークステーション32のRIP74により作成された校正再現画像データD4’との比較検査を行うことである。詳細は後述する。
【0071】
次いで、版が一致するか否かの判定を行う(ステップS6)。ここで、版の一致とは、最終的に印刷される印刷物42a(又は42b)の印刷不具合が起こらない程度に一致することを意味する。作業者は、作業効率と印刷品質とを比較考量して、版の一致に関する判定基準を種々設けることができる。
【0072】
もし、版が一致しないと判定された場合は、作業者は、印刷サイト14内で、必要に応じて製版サイト12と連携してその原因を解析する。解析の結果その原因が特定できた場合は問題を解決し、その直前に遡って作業を繰り返す。その後、ステップS6において版が一致すると判定されるまで、原因の解析(ステップS8)とデジタル検版(ステップS5)とを繰り返す。
【0073】
もし、版が一致すると判定された場合は、検版検査は合格であると認定され、図1に示すプレートセッタ36、オフセット印刷機38又はデジタル印刷機40での出力作業を行う(ステップS7)。
【0074】
図4に示すように、校正情報抽出部72により抽出された製版データファイルF1は、RIP74によりRIP処理され、I/F76、LANハブ30(図1参照)を介し、画像処理装置34側に供給される。なお、前記RIP処理は、ワークステーション32の代わりに画像処理装置34で行うようにしてもよい。
【0075】
その後、供給されたビットマップ形式画像データは、画像処理装置34により所望の印刷信号(網点制御データ)に変換され、プレートセッタ36により図示しないプレートに直接印刷される。前記プレートが取り付けられたオフセット印刷機38により、各種メディアにカラー画像が印刷され、所望の印刷物42aが得られる。
【0076】
あるいは、供給されたビットマップ形式画像データは、画像処理装置34により所望の印刷信号(例えば、インク射出制御データ)に変換され、デジタル印刷機40によりカラー画像が印刷され、所望の印刷物42bが得られる。
【0077】
以上、本実施の形態に係る検版方法を用いて適切な印刷物42a(又は42b)を得るためのフローチャートについて説明した。次いで、ステップS5(図5参照)に示すデジタル検版方法を実現するための内部処理について、図6のフローチャートを参照しながら更に詳細に説明する。
【0078】
先ず、検版モードの設定を判別する(ステップS51)。作業者の操作によって、ワークステーション32の図示しない設定画面から検版モードが予め設定されている。本実施の形態では、「強制スキップ」、「自動判定」又は「強制検版」のいずれか1つの検版モードを選択できる。これにより、ユーザである作業者の要求に応えた検版を行うことができる。
【0079】
ここで、「強制スキップ」は、校正画像作成条件D3等の画像作成条件によらずデジタル検版を必ず行わない検版モードである。また、「強制検版」は、画像作成条件によらずデジタル検版を必ず行う検版モードである。さらに、「自動判定」は、画像作成条件に応じて必要があればデジタル検版を行う検版モードである。
【0080】
以下、「自動判定」の検版モードが選択された場合における内部処理を中心に説明を行う。
【0081】
次いで、製版画像データD1の画像作成条件の照合を行う(ステップS52)。先ず、校正情報抽出部72から供給された製版画像作成条件D1と、図示しない記憶部から供給された固有画像作成条件D1’とが出力画像作成条件D11として結合される。その後、結合された出力画像作成条件D11と、校正情報抽出部72から供給された校正画像作成条件D3とが作成条件照合部78に供給され、該作成条件照合部78により画像作成条件が照合される。
【0082】
この作成条件照合部78を設けることにより、出力画像作成条件D11と校正画像作成条件D3との差異を明確に把握することができる。そして、デジタル検版の要否を判定するために有用な情報を得ることができる。
【0083】
なお、製版画像作成条件D1及び校正画像作成条件D3には、出力解像度、入力プロファイル、出力プロファイル、トーンカーブ、トラッピング、スクリーニング又はオーバープリントのうち少なくとも1つの画像処理条件が含まれる。
【0084】
また、出力画像作成条件D11とは、出力装置(図1に示すプレートセッタ36又はデジタル印刷機40)に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件である。
【0085】
さらに、固有画像作成条件D1’とは、製版画像作成条件D1が有しないワークステーション32に固有の画像作成条件である。具体的には、ソフトウェアバージョン情報、例えば、全体バージョン、各モジュールの個別バージョン、ライブラリのバージョンである。また、ソフトウェアバージョンに紐付けされた設定データファイルの属性等である。
【0086】
画像作成条件の照合は、出力画像作成条件D11(製版画像作成条件D1及び固有画像作成条件D1’)と校正画像作成条件D3との間で行われる。ここで、すべての条件について照合してもよいが、例として画像作成時刻のように、パラメータ等が一致しない場合であっても画像処理結果に何ら影響を与えない画像作成条件も有する。そこで、画像処理結果に影響を与える画像作成条件のみを照合の対象とし、画像処理結果に影響を与えない画像作成条件の照合の対象としないことが好ましい。あるいは、すべての画像作成条件を照合するが、後述する画像データの比較検査の要否判断の際に、画像作成条件を選択的に適用又は除外してもよい。これにより、画像処理結果に影響を与えない画像作成条件の不一致による、実質的に無駄な検版を省略することができる。
【0087】
次いで、画像データの比較検査が必要か否かを判定する(ステップS53)。作成条件照合部78により得られた照合結果は、画像比較要否判定部80に供給される。画像作成条件のうち所定の条件において照合結果が一致しない場合は、比較検査が必要であると判定される。
【0088】
次いで、校正画像作成条件D3でRIP処理を行う(ステップS54)。校正情報抽出部72により抽出された製版画像データD2は、RIP74に供給され、RIP74により校正画像作成条件D3に基づいてRIP処理され、校正再現画像データD4’として画像比較検査部82に供給される。
【0089】
次いで、画像データの比較検査を行う(ステップS55)。
【0090】
校正情報抽出部72により抽出された校正画像データD4は、画像比較検査部82に供給され、既に供給された校正再現画像データD4’と比較される。比較対象である画像データの形式は両方ともラスタ画像であるから、各画素の値の比較演算が実行される。
【0091】
完全一致か否かの検査を行う場合は、各画像データの対応アドレス毎に両方の画素値が同一か否かを比較演算し、同一である(あるいは同一でない)画素の総数を計測する。
【0092】
また、完全一致とは別の検査基準として、両方の画素値の誤差に許容範囲を設けてその範囲内に収まるか否かで判定してもよい。さらに、テンプレートマッチング等の公知の画像処理を用いて、画像データ同士の相関が最大となる位置ずれ量を検出し、その位置ずれの補正をした状態で画素毎に画素値を比較演算することができる。このとき、デジタル検版の検査基準を明確にするため、画素値や位置ずれの許容誤差を予め定めておくことが好ましい。
【0093】
次いで、検査結果を判定する(ステップS56)。画素値が一致しない画素の総数が許容範囲内にあるか否か、位置ずれ量が許容範囲内にあるか否かについてそれぞれ判定される。少なくとも一方が(いずれも)許容範囲内にある場合は、検査結果が合格であると認定される。
【0094】
検査結果が合格である場合は、次工程である出力作業を許可し(ステップS57)、デジタル検版の工程を終了する。
【0095】
一方、検査結果が不合格である場合は、警告又はエラー(ステップS58)を行う。画像比較検査部82により警告部84に不合格の旨が通知され、該警告部84により警告等がなされる。例えば、ワークステーション32の図示しない表示部によりエラーメッセージが表示され、あるいは警告音を発せられる。
【0096】
また、校正画像データD4等を表示させる際、画素値の比較演算の結果が不一致と判定された箇所に視認可能なマークを別途付する等により、作業者への注意喚起を行うことができる。
【0097】
なお、ステップS51において「強制スキップ」の検版モードが選択された場合は、ステップS52〜S56がスキップされ、出力作業が許可される(ステップS57)。また、「強制検版」の検版モードが選択された場合は、検版作業の要否を判断することなく検版作業に移行する。すなわち、ステップS52及びS53はスキップされ、ステップS54以降は「自動判定」の場合と同様の内部処理が行われる。
【0098】
これにより、必要に応じて検版を行うことが可能であり、印刷完了までの所要時間を短縮することができる。
【0099】
以上のように、製版装置24は、製版画像データD2と、製版画像データD2に基づいてデジタル印刷機40に出力させる際のRIP処理の用に供される製版画像作成条件D1とを取得し、取得された製版画像データD2に基づいて校正機26に出力させる際のRIP処理の用に供される校正画像作成条件D3を取得し、取得された製版画像データD2及び校正画像作成条件D3に基づいてRIP処理により校正画像データD4を作成し、製版画像作成条件D1、製版画像データD2、校正画像作成条件D3及び校正画像データD4に基づいて校正情報付製版データF2を生成する。
【0100】
このように構成しているので、校正情報付製版データF2の受信側であるワークステーション32は校正画像作成条件D3を取得可能であり、印刷しようとするRIP処理環境と同一の環境であるワークステーション32上で、校正画像データD4の処理再現性を検査できる。さらに、ワークステーション32は校正情報付製版データF2を介して比較対象となる校正画像データを取得可能であるので、製版サイト12と印刷サイト14とが分離されている環境において、RIP処理のソフトウェアバージョンが異なる場合であっても、作成された画像データ同士を適切に検版できる。
【0101】
すなわち、従来の検版システムのように校正履歴の一致性を検査するのみならず、検版装置としてのワークステーション32におけるRIP処理システムの画像再現評価を併せて行うので、検版に対する信頼性を一層高めることができる。
【0102】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0103】
例えば、本実施の形態に係る検版システム10の構成や、校正情報付製版データファイルF2のデータ構造については、図1及び図3に限定されることなく、種々の構成を採ることができる。
【0104】
また、本実施の形態では校正画像を出力させる手段として校正機26を用いているが、出力態様はこれに限られない。例えば、校正用モニタ(表示装置)により校正画像を表示させてもよく、これにより印刷材が不要となる。
【0105】
さらに、校正情報付製版データファイルF2を生成する前に校正画像データD4に対して可逆圧縮処理を施しておき、新たな校正画像データD4が格納された校正情報付製版データファイルF2を、校正情報抽出部72により抽出した後にワークステーション32が備える可逆展開処理手段により、元の校正画像データD4を復元することができる。このようにすれば取り扱うデータ量を削減可能であるので、ファイルデータの通信時間を短縮できるとともに、データベースサーバ16のデータメモリ所要量を軽減できる。
【符号の説明】
【0106】
10…検版システム 12…製版サイト
14…印刷サイト 24…製版装置
26…校正機 32…ワークステーション
38…オフセット印刷機 40…デジタル印刷機
56、74…RIP 62…校正情報付加部
72…校正情報抽出部 78…作成条件照合部
80…画像比較要否判定部 82…画像比較検査部
D1…製版画像作成条件 D2…製版画像データ
D3…校正画像作成条件 D4…校正画像データ
D1’…固有画像作成条件 D11…出力画像作成条件
F0…入稿データファイル F1…製版データファイル
F2…校正情報付製版データファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版画像データと、該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件とを取得するステップと、
取得された前記製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件を取得するステップと、
取得された前記製版画像データ及び前記校正画像作成条件に基づいてRIP処理により校正画像データを作成するステップと、
前記製版画像作成条件、前記製版画像データ、前記校正画像作成条件及び作成された前記校正画像データに基づいてページ記述データを生成するステップと
を備えることを特徴とするページ記述データ生成方法。
【請求項2】
請求項1記載のページ記述データ生成方法において、
前記校正画像作成条件は、RIP処理のソフトウェアバージョン情報又は画像処理条件である
ことを特徴とするページ記述データ生成方法。
【請求項3】
請求項2記載のページ記述データ生成方法において、
前記ソフトウェアバージョン情報は、全体又は前記ソフトウェアを構成する一部のライブラリのバージョン情報である
ことを特徴とするページ記述データ生成方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のページ記述データ生成方法において、
前記画像処理条件には、出力解像度、入力プロファイル、出力プロファイル、トーンカーブ、トラッピング、スクリーニング、又はオーバープリントの少なくとも1つの画像処理条件が含まれる
ことを特徴とするページ記述データ生成方法。
【請求項5】
コンピュータを、
製版画像データと、該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件とを取得する手段、
取得された該製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件を取得する手段、
取得された前記製版画像データ及び前記校正画像作成条件に基づいてRIP処理により校正画像データを作成する手段、
前記製版画像データ、前記製版画像作成条件、前記校正画像作成条件及び作成された前記校正画像データに基づいてページ記述データを生成する手段
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
製版画像データと、
該製版画像データに基づいて出力装置に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての製版画像作成条件データと、
該製版画像データに基づいて校正機に出力させる際のRIP処理の用に供される画像作成条件としての校正画像作成条件データと、
該校正画像作成条件データを用いて前記製版画像データをRIP処理して作成された校正画像データと
が配置されていることを特徴とするページ記述データフォーマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137972(P2011−137972A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297558(P2009−297558)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】