ペースト施肥機の薬液供給装置
【課題】ペースト肥料に薬液を混入して施すにあたり、肥料タンク内に余ったペースト肥料の再利用を可能にすると共に、条止めに拘わらずペースト肥料中の薬液濃度を均一にする。
【解決手段】施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク23内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズル24Aに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプ25Aを備える乗用田植機であって、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備え、該薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、条止めされたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。
【解決手段】施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク23内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズル24Aに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプ25Aを備える乗用田植機であって、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備え、該薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、条止めされたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト施肥機の薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト肥料を圃場に施肥するペースト施肥機が知られている。この種のペースト施肥機は、ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出する施肥ポンプとを備えている。通常、施肥ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、各条毎に吐出停止操作可能に構成されている。また、特許文献1に示されるように、肥料タンク内に撹拌手段を備えることにより、ペースト肥料の固化を防止するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように構成されるペースト施肥機では、農薬などの薬液が混合されたペースト肥料を肥料タンクに入れたり、或いは、肥料タンク内のペースト肥料に薬液を混合することにより、ペースト施肥装置を利用して薬液を同時に圃場に施すことが可能であるが、作業終了時に肥料タンク内にペースト肥料が余っている場合に、余ったペースト肥料を破棄しなければならず、資材の無駄が発生するという問題があった。つまり、薬液の混合を行っていない場合、余ったペースト肥料は回収して保存し、再利用が可能であるが、薬液が混合されたペースト肥料を回収して保存すると、薬液が混合されていないものと誤認して使用する惧れがあるため、安全上、破棄しているのが実状であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプとを備えるペースト施肥機であって、薬液を貯留する薬液タンクと、薬液タンク内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプとを備え、該薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、施肥ポンプよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。また、薬液ポンプは、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作(以下、条止め操作という。)に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたので、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】乗用田植機の全体側面図である。
【図2】乗用田植機の全体平面図である。
【図3】プランタケースの内部を示す側面図である。
【図4】リフタカムを示す側面図である。
【図5】作業機操作レバーの配置を示す斜視図である。
【図6】ペースト施肥装置の斜視図である。
【図7】側条用施肥ポンプの斜視図である。
【図8】施肥ポンプ用動力の伝動経路を示す説明図である。
【図9】条止め操作レバーの配置を示す斜視図である。
【図10】ペースト施肥装置及び薬液供給装置の配管を示す説明図である。
【図11】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図12】薬液吐出制御の制御手順を示すフローチャートである。
【図13】薬液撹拌制御の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用田植機(ペースト施肥機)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。植付作業機3には、前高後低状に傾斜した苗載台4が設けられ、ここに複数のマット苗が左右並列状に載置される。苗載台4に載置されたマット苗は、苗載台4の傾斜や縦送り機構5の送り作用により苗載台4の下端部に向けて移送される。苗載台4の下端部近傍には、植付爪を備える植付条数分(例えば、6条分)の植付機構6が設けられており、この植付機構6によってマット苗が分離され、圃場に植え付けられる。
【0009】
植付機構6は、図3に示すようなプランタケース7の後端部に設けられている。各プランタケース7は、それぞれ2条分の植付機構6を備えると共に、チェン伝動機構からなる植付動力伝動経路8を介して2条分の植付機構6に動力を伝動するようになっている。また、植付動力伝動経路8には、植付用条止めクラッチ9が介設されており、該植付用条止めクラッチ9を切り操作することにより、2条分の植付けが条止めされるようになっている。尚、植付用条止めクラッチ9を切る際には、対応する条の縦送りクラッチ10が切られ、対応する2条分の縦送り機構5も停止されるようになっている。
【0010】
植付作業機3は、走行機体1と昇降リンク機構2との間に介設される作業機昇降用油圧シリンダ11の油圧伸縮動作に応じて昇降される。作業機昇降用油圧シリンダ11は、作業機昇降制御バルブ12の切換操作に応じて伸縮動作されるようになっている。作業機昇降制御バルブ12は、バルブ操作軸の回転角に応じて油路の切換えを行うロータリバルブであり、その操作領域には、ポンプ油路をシリンダ油路に連通させる手動操作用の上昇ポジションと、シリンダ油路を閉じる手動操作用の固定ポジションと、シリンダ油路をタンク油路に連通させる手動操作・自動昇降兼用の下降ポジションと、ポンプ油路、シリンダ油路及びタンク油路を連通させる自動昇降用のアンダーラップポジションと、ポンプ油路をシリンダ油路に連通させる自動昇降用の上昇ポジションとを連続的に備えている。
【0011】
図4に示すように、作業機昇降制御バルブ12の近傍には、リフタカムモータ13の駆動に応じて回動するリフタカム14が設けられている。リフタカム14は、バルブ操作軸に設けられるバルブ操作板15に係合して作業機昇降制御バルブ12を切換操作すると共に、クラッチ作動部材16に係合して植付クラッチ17や施肥クラッチ18(図7参照)を入切操作するカム部材であり、リフタカムモータ13の駆動に応じて「上げ」、「固定」、「下げ(油圧自動)」、「植付(油圧自動)」の4ポジションに移動制御される。
【0012】
リフタカム14のポジションが「上げ」の場合は、バルブ操作板15を介して作業機昇降制御バルブ12を上昇ポジションとし、リフタカム14のポジションが「固定」の場合は、バルブ操作板15を介して作業機昇降制御バルブ12を固定ポジションとするが、リフタカム14のポジションが「下げ(油圧自動)」又は「植付(油圧自動)」の場合は、バルブ操作板15の回動を許容する。この状態では、植付作業機3の感知フロート19に連繋されたバルブ操作板15が、感知フロート19の上下変位に応じて回動することにより、作業機昇降制御バルブ12の自動的な切換えが行われる。これにより、植付状態(作業機下降状態)においては、感知フロート19の上下変位にもとづいて植付作業機3を自動的に昇降動作させる自動昇降状態となり、植付苗の植付深さが一定に保たれることになる。
【0013】
また、リフタカム14は、ポジションが「上げ」、「固定」、「下げ(油圧自動)」の場合は、クラッチ作動部材16を切り位置に保持するが、ポジションが「植付(油圧自動)」の場合は、クラッチ作動部材16を入り位置とし、植付クラッチ17及び施肥クラッチ18を入り状態に切換える。
【0014】
図5に示すように、ステアリングハンドル20の近傍には、作業機操作レバー21が設けられている。本実施形態の作業機操作レバー21は、作業機昇降操作具(上下操作)及びマーカ操作具(前後操作)に兼用されており、手を離した状態では中立位置に自動復帰するように弾機(図示せず)で付勢されている。尚、作業機操作レバー21によるマーカ操作については、説明を省略する。
【0015】
作業機操作レバー21による植付作業機3の昇降操作は、リフタカムモータ13の駆動によるリフタカム14のポジション制御に基づいて行われる。例えば、植付作業時において、リフタカム14のポジションが「固定」のときに、作業機操作レバー21を下げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「下げ(油圧自動)」のときに、作業機操作レバー21を下げ操作すると、リフタカム14が「植付(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「植付(油圧自動)」のときに、作業機操作レバー21を上げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「下げ固定」のときに、作業機操作レバー21を上げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動されると共に、作業機最上げ後に、「固定」のポジションに移動される。
【0016】
図6及び図7に示すように、乗用田植機には、ペースト施肥装置22が設けられている。ペースト施肥装置22は、走行機体1側に設けられる肥料タンク23と、植付作業機3側に設けられる施肥ノズル24と、肥料タンク23内のペースト肥料を施肥ノズル24に送る施肥ポンプ25と、施肥ポンプ25から施肥ノズル24に至るペースト肥料流路でペースト肥料の詰まりを検知する詰まり検出センサ26とを備えて構成されている。肥料タンク23は、2つ備えており、機体前部の左右両側に振分け状に配置されている。
【0017】
本実施形態の乗用田植機は、2種類の施肥を同時に行うように構成されている。一方の施肥は、植付条の側方に沿い、土中の比較的浅い層に流動性肥料を吐出する側条施肥であり、他方の施肥は、2列の植付条の中間位置で、土中の比較的深い層に流動性肥料を吐出する深層施肥である。そのため、乗用田植機は、側条用施肥ノズル24Aと深層用施肥ノズル24Bを別個に備えると共に、側条用施肥ポンプ25Aと深層用施肥ポンプ25Bも別個に備えている。深層用施肥ノズル24Bは、側条用施肥ノズル24Aよりも長尺に形成され、先端の吐出口を側条用施肥ノズル24Aよりも深い位置にセットして施肥作業を行う。尚、図1は、格納姿勢の側条用施肥ノズル24A及び深層用施肥ノズル24Bを示している。
【0018】
図7及び図8に示すように、各施肥ポンプ25A、25Bは、それぞれ、施肥条数分(例えば、側条施肥6条分、深層施肥3条分)の定容量ポンプ25aを並列状に組み込んでユニット化されており、施肥変速ケース(施肥量設定装置)27を介してトランスミッションケース28から伝動される動力で各ポンプ25aを駆動させる。つまり、施肥ポンプ25A、25Bの各ポンプ25aは、トランスミッションケース28の走行伝動系から分岐された動力で駆動し、車速に応じてペースト肥料の吐出量を増減させることにより、走行距離基準の施肥量を一定に保つようになっている。
【0019】
また、各施肥ポンプ25A、25Bは、施肥を条単位で停止させるための施肥用条止めクラッチ25bを備えており、植付用条止めクラッチ9が切り操作された際には、対応する条の施肥用条止めクラッチ25bを切って施肥も停止させることが要求される。また、植付用条止めクラッチ9が入りの状態であっても、対応する条の施肥用条止めクラッチ25bを切り、施肥のみを停止させる場合がある。例えば、肥料分が多い圃場においては、施肥量を抑えるために、施肥のみの条止めが行われることがある。尚、図7において、25cは、各施肥用条止めクラッチ25bを入切り操作する条止めアーム、25dは、条止めアーム25cに連繋される条止め操作ワイヤ、29は、各条の条止めを検出する条止め検出スイッチ、30は、施肥ポンプ25Aの入力軸回転を検出する施肥機回転検出センサである。
【0020】
図9に示すように、運転シート31の側方には、所定の条に対する植付けを入切させる植付用条止め操作レバー32と、所定の条に対する施肥を入切させる施肥用条止め操作レバー33とが配置されている。本実施形態では、3本の植付用条止め操作レバー32が前後操作自在に配置されており、1本目の植付用条止め操作レバー32Aは、運転シート31の左側近傍に配置され、左2条に対する植付けを入切させる。また、2本目の植付用条止め操作レバー32Bは、植付用条止め操作レバー32Aと運転シート31との間に配置され、中2条に対する植付けを入切させる。また、3本目の植付用条止め操作レバー32Cは、運転シート31の右側近傍に配置され、右2条に対する植付けを入切させる。尚、本実施形態の植付用条止め操作レバー32は、深層施肥用の条止め操作レバーに兼用されており、所定の条に対する植付けを入切すると、対応する条の深層施肥も入切されるようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、6本の施肥用条止め操作レバー33が前後操作自在に配置されており、各施肥用条止め操作レバー33は、対応する条の植付用条止め操作レバー32に並設され、その入切操作に応じて対応する条の側条施肥が1条単位で入切されるようになっている。つまり、各施肥用条止め操作レバー33は、側条用施肥ポンプ25の対応する条止めアーム25cに対し、それぞれ条止め操作ワイヤ25dを介して連繋されている。
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る薬液供給装置50について、図1、図2及び図10を参照して説明する。
【0023】
図1、図2及び図10に示すように、乗用田植機には、ペースト施肥装置22を利用して農薬などの薬液を同時に圃場に施す薬液供給装置50が設けられている。薬液供給装置50は、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備えている。薬液ポンプ52は、施肥条数分(側条施肥の6条分)のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させる。
【0024】
このようにすると、施肥ポンプ25Aよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク23内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。尚、図10において、Tは、施肥ポンプ25A、25Bに設けられるサブタンク、Dは、ドレンである。
【0025】
また、薬液ポンプ52は、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。例えば、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作を制御部53で判断すると共に、対応する条のポンプ部52aを駆動させる吐出モータ54を特定し、該吐出モータ54を停止させる。このようにすると、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。尚、薬液ポンプ52の各ポンプ部52aを機械的に施肥用条止めレバー33に連繋させても同様の作用効果が得られる。
【0026】
また、本実施形態の薬液供給装置50は、薬液タンク51内の薬液を撹拌する薬液撹拌手段を備えている。薬液撹拌手段は、薬液タンク51内に設けられる撹拌羽根55と、該撹拌羽根55を回転させる薬液撹拌モータ56とからなり、薬液タンク51内の薬液を撹拌することにより、薬剤成分の沈殿を防止することができる。
【0027】
薬液撹拌モータ56は、常時回転させてもよいが、植付作業状態(植付クラッチ入り状態又は油圧自動状態)でのみ回転させてもよい。また、薬液撹拌モータ56は、一方向に回転させてもよいが、所定時間毎に回転方向を切り換えるようにしてもよい。このようにすると、薬液の撹拌効率を高めることができる。
【0028】
次に、制御部53の入出力及び処理手順について、図11〜図13を参照して説明する。
【0029】
制御部53は、マイコンなどを用いて構成される制御装置であって、図11に示すように、制御部53の入力側には、前述した条止め検出スイッチ29や施肥機回転検出センサ30に加え、薬液タンク51内の薬液残量を検出する薬液残量センサ57、ペースト肥料に対する薬液の供給量を設定する供給量設定ダイヤル58などが接続される一方、出力側には、前述した複数の吐出モータ54や薬液撹拌モータ56が接続されている。
【0030】
図12は、制御部53が実行する薬液吐出制御の処理手順を示すフローチャートであり、該制御では、まず、植付作業状態であるか否かを判断する(S11)。本実施形態では、植付クラッチ入り状態又は油圧自動状態のとき、植付作業状態であると判断する。この判断結果がYESの場合は、予め設定される設定吐出量テーブルを参照し、供給量設定ダイヤル58のダイヤル位置に対応する設定吐出量を読み込んだ後(S12)、施肥機回転数(施肥機回転センサ30の検出値)に基づく補正吐出量1の計算を行う(S13)。施肥機回転数に基づく補正吐出量の計算は、施肥量に応じて薬液供給量を増減させるためのものであり、例えば、施肥回転数が基準回転数の1/2である場合、薬液吐出量が設定吐出量の1/2となるような補正吐出量を計算する。そして、補正吐出量を計算したら、補正吐出量に基づいて設定吐出量を補正すると共に(S14)、補正された設定吐出量(吐出モータ回転数)となるように吐出モータ54を駆動制御する(S15)。このとき、施肥が条止めされた条の吐出モータ54を制御対象から除外し、駆動停止状態とすることにより、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【0031】
図13は、制御部53が実行する薬液撹拌制御の処理手順を示すフローチャートであり、該制御では、まず、薬液残量センサ57の検出値に基づいて薬液タンク51内に薬液があることを確認した後(S21)、回転方向フラグが「正転」であるか否かを判断する(S22)。この判断結果がYESの場合は、モータ出力時間が「0」であるか否かを判断する(S23)。モータ出力時間が「0」の場合は、薬液撹拌モータ56の駆動を停止すると共に(S24)、回転方向フラグに「逆転」をセットし(S25)、モータ出力時間に所定のタイマ時間をセットする(S26)。回転方向フラグに「逆転」がセットされ、かつ、モータ出力時間に所定のタイマ時間がセットされた場合は、ステップS27の判断結果がNOとなり、その判断結果に応じて薬液撹拌モータ56を逆転駆動させる(S28)。
【0032】
薬液撹拌モータ56の逆転駆動状態でモータ出力時間が「0」になると、ステップS27の判断結果がYESとなり、その判断結果に応じて薬液撹拌モータ56の駆動を停止すると共に(S29)、回転方向フラグに「正転」をセットし(S30)、モータ出力時間に所定のタイマ時間をセットする(S31)。回転方向フラグに「正転」がセットされ、かつ、モータ出力時間に所定のタイマ時間がセットされた場合は、ステップS23の判断結果がNOとなるので、薬液撹拌モータ56を正転駆動させる(S32)。以上の繰り返しにより、薬液撹拌モータ56の回転方向が所定時間毎に切り換えられる。
【0033】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ペースト肥料が貯留される肥料タンク23と、施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク23内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズル24Aに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプ25Aとを備える乗用田植機であって、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備え、該薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、条止めされたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。このようにすると、施肥ポンプ25Aよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク23内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。また、薬液ポンプ52は、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたので、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【0034】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲を逸脱しなければ、任意の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 走行機体
3 植付作業機
22 ペースト施肥装置
23 肥料タンク
24 施肥ノズル
25 施肥ポンプ
50 薬液供給装置
51 薬液タンク
52 薬液ポンプ
53 制御部
54 吐出モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト施肥機の薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト肥料を圃場に施肥するペースト施肥機が知られている。この種のペースト施肥機は、ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出する施肥ポンプとを備えている。通常、施肥ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、各条毎に吐出停止操作可能に構成されている。また、特許文献1に示されるように、肥料タンク内に撹拌手段を備えることにより、ペースト肥料の固化を防止するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように構成されるペースト施肥機では、農薬などの薬液が混合されたペースト肥料を肥料タンクに入れたり、或いは、肥料タンク内のペースト肥料に薬液を混合することにより、ペースト施肥装置を利用して薬液を同時に圃場に施すことが可能であるが、作業終了時に肥料タンク内にペースト肥料が余っている場合に、余ったペースト肥料を破棄しなければならず、資材の無駄が発生するという問題があった。つまり、薬液の混合を行っていない場合、余ったペースト肥料は回収して保存し、再利用が可能であるが、薬液が混合されたペースト肥料を回収して保存すると、薬液が混合されていないものと誤認して使用する惧れがあるため、安全上、破棄しているのが実状であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプとを備えるペースト施肥機であって、薬液を貯留する薬液タンクと、薬液タンク内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプとを備え、該薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、施肥ポンプよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。また、薬液ポンプは、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作(以下、条止め操作という。)に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたので、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】乗用田植機の全体側面図である。
【図2】乗用田植機の全体平面図である。
【図3】プランタケースの内部を示す側面図である。
【図4】リフタカムを示す側面図である。
【図5】作業機操作レバーの配置を示す斜視図である。
【図6】ペースト施肥装置の斜視図である。
【図7】側条用施肥ポンプの斜視図である。
【図8】施肥ポンプ用動力の伝動経路を示す説明図である。
【図9】条止め操作レバーの配置を示す斜視図である。
【図10】ペースト施肥装置及び薬液供給装置の配管を示す説明図である。
【図11】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図12】薬液吐出制御の制御手順を示すフローチャートである。
【図13】薬液撹拌制御の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は乗用田植機(ペースト施肥機)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。植付作業機3には、前高後低状に傾斜した苗載台4が設けられ、ここに複数のマット苗が左右並列状に載置される。苗載台4に載置されたマット苗は、苗載台4の傾斜や縦送り機構5の送り作用により苗載台4の下端部に向けて移送される。苗載台4の下端部近傍には、植付爪を備える植付条数分(例えば、6条分)の植付機構6が設けられており、この植付機構6によってマット苗が分離され、圃場に植え付けられる。
【0009】
植付機構6は、図3に示すようなプランタケース7の後端部に設けられている。各プランタケース7は、それぞれ2条分の植付機構6を備えると共に、チェン伝動機構からなる植付動力伝動経路8を介して2条分の植付機構6に動力を伝動するようになっている。また、植付動力伝動経路8には、植付用条止めクラッチ9が介設されており、該植付用条止めクラッチ9を切り操作することにより、2条分の植付けが条止めされるようになっている。尚、植付用条止めクラッチ9を切る際には、対応する条の縦送りクラッチ10が切られ、対応する2条分の縦送り機構5も停止されるようになっている。
【0010】
植付作業機3は、走行機体1と昇降リンク機構2との間に介設される作業機昇降用油圧シリンダ11の油圧伸縮動作に応じて昇降される。作業機昇降用油圧シリンダ11は、作業機昇降制御バルブ12の切換操作に応じて伸縮動作されるようになっている。作業機昇降制御バルブ12は、バルブ操作軸の回転角に応じて油路の切換えを行うロータリバルブであり、その操作領域には、ポンプ油路をシリンダ油路に連通させる手動操作用の上昇ポジションと、シリンダ油路を閉じる手動操作用の固定ポジションと、シリンダ油路をタンク油路に連通させる手動操作・自動昇降兼用の下降ポジションと、ポンプ油路、シリンダ油路及びタンク油路を連通させる自動昇降用のアンダーラップポジションと、ポンプ油路をシリンダ油路に連通させる自動昇降用の上昇ポジションとを連続的に備えている。
【0011】
図4に示すように、作業機昇降制御バルブ12の近傍には、リフタカムモータ13の駆動に応じて回動するリフタカム14が設けられている。リフタカム14は、バルブ操作軸に設けられるバルブ操作板15に係合して作業機昇降制御バルブ12を切換操作すると共に、クラッチ作動部材16に係合して植付クラッチ17や施肥クラッチ18(図7参照)を入切操作するカム部材であり、リフタカムモータ13の駆動に応じて「上げ」、「固定」、「下げ(油圧自動)」、「植付(油圧自動)」の4ポジションに移動制御される。
【0012】
リフタカム14のポジションが「上げ」の場合は、バルブ操作板15を介して作業機昇降制御バルブ12を上昇ポジションとし、リフタカム14のポジションが「固定」の場合は、バルブ操作板15を介して作業機昇降制御バルブ12を固定ポジションとするが、リフタカム14のポジションが「下げ(油圧自動)」又は「植付(油圧自動)」の場合は、バルブ操作板15の回動を許容する。この状態では、植付作業機3の感知フロート19に連繋されたバルブ操作板15が、感知フロート19の上下変位に応じて回動することにより、作業機昇降制御バルブ12の自動的な切換えが行われる。これにより、植付状態(作業機下降状態)においては、感知フロート19の上下変位にもとづいて植付作業機3を自動的に昇降動作させる自動昇降状態となり、植付苗の植付深さが一定に保たれることになる。
【0013】
また、リフタカム14は、ポジションが「上げ」、「固定」、「下げ(油圧自動)」の場合は、クラッチ作動部材16を切り位置に保持するが、ポジションが「植付(油圧自動)」の場合は、クラッチ作動部材16を入り位置とし、植付クラッチ17及び施肥クラッチ18を入り状態に切換える。
【0014】
図5に示すように、ステアリングハンドル20の近傍には、作業機操作レバー21が設けられている。本実施形態の作業機操作レバー21は、作業機昇降操作具(上下操作)及びマーカ操作具(前後操作)に兼用されており、手を離した状態では中立位置に自動復帰するように弾機(図示せず)で付勢されている。尚、作業機操作レバー21によるマーカ操作については、説明を省略する。
【0015】
作業機操作レバー21による植付作業機3の昇降操作は、リフタカムモータ13の駆動によるリフタカム14のポジション制御に基づいて行われる。例えば、植付作業時において、リフタカム14のポジションが「固定」のときに、作業機操作レバー21を下げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「下げ(油圧自動)」のときに、作業機操作レバー21を下げ操作すると、リフタカム14が「植付(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「植付(油圧自動)」のときに、作業機操作レバー21を上げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動され、リフタカム14のポジションが「下げ固定」のときに、作業機操作レバー21を上げ操作すると、リフタカム14が「下げ(油圧自動)」のポジションに移動されると共に、作業機最上げ後に、「固定」のポジションに移動される。
【0016】
図6及び図7に示すように、乗用田植機には、ペースト施肥装置22が設けられている。ペースト施肥装置22は、走行機体1側に設けられる肥料タンク23と、植付作業機3側に設けられる施肥ノズル24と、肥料タンク23内のペースト肥料を施肥ノズル24に送る施肥ポンプ25と、施肥ポンプ25から施肥ノズル24に至るペースト肥料流路でペースト肥料の詰まりを検知する詰まり検出センサ26とを備えて構成されている。肥料タンク23は、2つ備えており、機体前部の左右両側に振分け状に配置されている。
【0017】
本実施形態の乗用田植機は、2種類の施肥を同時に行うように構成されている。一方の施肥は、植付条の側方に沿い、土中の比較的浅い層に流動性肥料を吐出する側条施肥であり、他方の施肥は、2列の植付条の中間位置で、土中の比較的深い層に流動性肥料を吐出する深層施肥である。そのため、乗用田植機は、側条用施肥ノズル24Aと深層用施肥ノズル24Bを別個に備えると共に、側条用施肥ポンプ25Aと深層用施肥ポンプ25Bも別個に備えている。深層用施肥ノズル24Bは、側条用施肥ノズル24Aよりも長尺に形成され、先端の吐出口を側条用施肥ノズル24Aよりも深い位置にセットして施肥作業を行う。尚、図1は、格納姿勢の側条用施肥ノズル24A及び深層用施肥ノズル24Bを示している。
【0018】
図7及び図8に示すように、各施肥ポンプ25A、25Bは、それぞれ、施肥条数分(例えば、側条施肥6条分、深層施肥3条分)の定容量ポンプ25aを並列状に組み込んでユニット化されており、施肥変速ケース(施肥量設定装置)27を介してトランスミッションケース28から伝動される動力で各ポンプ25aを駆動させる。つまり、施肥ポンプ25A、25Bの各ポンプ25aは、トランスミッションケース28の走行伝動系から分岐された動力で駆動し、車速に応じてペースト肥料の吐出量を増減させることにより、走行距離基準の施肥量を一定に保つようになっている。
【0019】
また、各施肥ポンプ25A、25Bは、施肥を条単位で停止させるための施肥用条止めクラッチ25bを備えており、植付用条止めクラッチ9が切り操作された際には、対応する条の施肥用条止めクラッチ25bを切って施肥も停止させることが要求される。また、植付用条止めクラッチ9が入りの状態であっても、対応する条の施肥用条止めクラッチ25bを切り、施肥のみを停止させる場合がある。例えば、肥料分が多い圃場においては、施肥量を抑えるために、施肥のみの条止めが行われることがある。尚、図7において、25cは、各施肥用条止めクラッチ25bを入切り操作する条止めアーム、25dは、条止めアーム25cに連繋される条止め操作ワイヤ、29は、各条の条止めを検出する条止め検出スイッチ、30は、施肥ポンプ25Aの入力軸回転を検出する施肥機回転検出センサである。
【0020】
図9に示すように、運転シート31の側方には、所定の条に対する植付けを入切させる植付用条止め操作レバー32と、所定の条に対する施肥を入切させる施肥用条止め操作レバー33とが配置されている。本実施形態では、3本の植付用条止め操作レバー32が前後操作自在に配置されており、1本目の植付用条止め操作レバー32Aは、運転シート31の左側近傍に配置され、左2条に対する植付けを入切させる。また、2本目の植付用条止め操作レバー32Bは、植付用条止め操作レバー32Aと運転シート31との間に配置され、中2条に対する植付けを入切させる。また、3本目の植付用条止め操作レバー32Cは、運転シート31の右側近傍に配置され、右2条に対する植付けを入切させる。尚、本実施形態の植付用条止め操作レバー32は、深層施肥用の条止め操作レバーに兼用されており、所定の条に対する植付けを入切すると、対応する条の深層施肥も入切されるようになっている。
【0021】
また、本実施形態では、6本の施肥用条止め操作レバー33が前後操作自在に配置されており、各施肥用条止め操作レバー33は、対応する条の植付用条止め操作レバー32に並設され、その入切操作に応じて対応する条の側条施肥が1条単位で入切されるようになっている。つまり、各施肥用条止め操作レバー33は、側条用施肥ポンプ25の対応する条止めアーム25cに対し、それぞれ条止め操作ワイヤ25dを介して連繋されている。
【0022】
次に、本発明の一実施形態に係る薬液供給装置50について、図1、図2及び図10を参照して説明する。
【0023】
図1、図2及び図10に示すように、乗用田植機には、ペースト施肥装置22を利用して農薬などの薬液を同時に圃場に施す薬液供給装置50が設けられている。薬液供給装置50は、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備えている。薬液ポンプ52は、施肥条数分(側条施肥の6条分)のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させる。
【0024】
このようにすると、施肥ポンプ25Aよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク23内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。尚、図10において、Tは、施肥ポンプ25A、25Bに設けられるサブタンク、Dは、ドレンである。
【0025】
また、薬液ポンプ52は、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。例えば、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作を制御部53で判断すると共に、対応する条のポンプ部52aを駆動させる吐出モータ54を特定し、該吐出モータ54を停止させる。このようにすると、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。尚、薬液ポンプ52の各ポンプ部52aを機械的に施肥用条止めレバー33に連繋させても同様の作用効果が得られる。
【0026】
また、本実施形態の薬液供給装置50は、薬液タンク51内の薬液を撹拌する薬液撹拌手段を備えている。薬液撹拌手段は、薬液タンク51内に設けられる撹拌羽根55と、該撹拌羽根55を回転させる薬液撹拌モータ56とからなり、薬液タンク51内の薬液を撹拌することにより、薬剤成分の沈殿を防止することができる。
【0027】
薬液撹拌モータ56は、常時回転させてもよいが、植付作業状態(植付クラッチ入り状態又は油圧自動状態)でのみ回転させてもよい。また、薬液撹拌モータ56は、一方向に回転させてもよいが、所定時間毎に回転方向を切り換えるようにしてもよい。このようにすると、薬液の撹拌効率を高めることができる。
【0028】
次に、制御部53の入出力及び処理手順について、図11〜図13を参照して説明する。
【0029】
制御部53は、マイコンなどを用いて構成される制御装置であって、図11に示すように、制御部53の入力側には、前述した条止め検出スイッチ29や施肥機回転検出センサ30に加え、薬液タンク51内の薬液残量を検出する薬液残量センサ57、ペースト肥料に対する薬液の供給量を設定する供給量設定ダイヤル58などが接続される一方、出力側には、前述した複数の吐出モータ54や薬液撹拌モータ56が接続されている。
【0030】
図12は、制御部53が実行する薬液吐出制御の処理手順を示すフローチャートであり、該制御では、まず、植付作業状態であるか否かを判断する(S11)。本実施形態では、植付クラッチ入り状態又は油圧自動状態のとき、植付作業状態であると判断する。この判断結果がYESの場合は、予め設定される設定吐出量テーブルを参照し、供給量設定ダイヤル58のダイヤル位置に対応する設定吐出量を読み込んだ後(S12)、施肥機回転数(施肥機回転センサ30の検出値)に基づく補正吐出量1の計算を行う(S13)。施肥機回転数に基づく補正吐出量の計算は、施肥量に応じて薬液供給量を増減させるためのものであり、例えば、施肥回転数が基準回転数の1/2である場合、薬液吐出量が設定吐出量の1/2となるような補正吐出量を計算する。そして、補正吐出量を計算したら、補正吐出量に基づいて設定吐出量を補正すると共に(S14)、補正された設定吐出量(吐出モータ回転数)となるように吐出モータ54を駆動制御する(S15)。このとき、施肥が条止めされた条の吐出モータ54を制御対象から除外し、駆動停止状態とすることにより、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【0031】
図13は、制御部53が実行する薬液撹拌制御の処理手順を示すフローチャートであり、該制御では、まず、薬液残量センサ57の検出値に基づいて薬液タンク51内に薬液があることを確認した後(S21)、回転方向フラグが「正転」であるか否かを判断する(S22)。この判断結果がYESの場合は、モータ出力時間が「0」であるか否かを判断する(S23)。モータ出力時間が「0」の場合は、薬液撹拌モータ56の駆動を停止すると共に(S24)、回転方向フラグに「逆転」をセットし(S25)、モータ出力時間に所定のタイマ時間をセットする(S26)。回転方向フラグに「逆転」がセットされ、かつ、モータ出力時間に所定のタイマ時間がセットされた場合は、ステップS27の判断結果がNOとなり、その判断結果に応じて薬液撹拌モータ56を逆転駆動させる(S28)。
【0032】
薬液撹拌モータ56の逆転駆動状態でモータ出力時間が「0」になると、ステップS27の判断結果がYESとなり、その判断結果に応じて薬液撹拌モータ56の駆動を停止すると共に(S29)、回転方向フラグに「正転」をセットし(S30)、モータ出力時間に所定のタイマ時間をセットする(S31)。回転方向フラグに「正転」がセットされ、かつ、モータ出力時間に所定のタイマ時間がセットされた場合は、ステップS23の判断結果がNOとなるので、薬液撹拌モータ56を正転駆動させる(S32)。以上の繰り返しにより、薬液撹拌モータ56の回転方向が所定時間毎に切り換えられる。
【0033】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ペースト肥料が貯留される肥料タンク23と、施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク23内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズル24Aに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプ25Aとを備える乗用田植機であって、薬液を貯留する薬液タンク51と、薬液タンク51内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプ52とを備え、該薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、条止めされたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としてある。このようにすると、施肥ポンプ25Aよりも下流でペースト肥料流路に薬液を合流させることにより、肥料タンク23内に余ったペースト肥料の再利用が可能になる。しかも、薬液ポンプ52は、施肥条数分のポンプ部52aを持ち、薬液タンク51内の薬液を、施肥ポンプ25Aよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させるので、各条のペースト肥料流路におけるペースト肥料中の薬液濃度を高精度にコントロールすることができる。また、薬液ポンプ52は、施肥ポンプ25Aにおける各条毎の条止め操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたので、条止めされたペースト肥料流路に対して薬液供給を継続してしまう不都合が防止できる。
【0034】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲を逸脱しなければ、任意の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 走行機体
3 植付作業機
22 ペースト施肥装置
23 肥料タンク
24 施肥ノズル
25 施肥ポンプ
50 薬液供給装置
51 薬液タンク
52 薬液ポンプ
53 制御部
54 吐出モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、
施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプとを備えるペースト施肥機であって、
薬液を貯留する薬液タンクと、
薬液タンク内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプとを備え、
該薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたことを特徴とするペースト施肥機の薬液供給装置。
【請求項1】
ペースト肥料が貯留される肥料タンクと、
施肥条数分のポンプ部を持ち、肥料タンク内のペースト肥料を、各条に設けられる施肥ノズルに対して分配状に吐出すると共に、各条毎に吐出停止操作可能な施肥ポンプとを備えるペースト施肥機であって、
薬液を貯留する薬液タンクと、
薬液タンク内の薬液をペースト肥料流路に合流させる薬液ポンプとを備え、
該薬液ポンプは、施肥条数分のポンプ部を持ち、薬液タンク内の薬液を、施肥ポンプよりも下流で各条のペースト肥料流路に分配状に合流させると共に、施肥ポンプにおける各条毎の吐出停止操作に連動して、吐出停止されたペースト肥料流路に対する薬液供給を停止可能としたことを特徴とするペースト施肥機の薬液供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−97860(P2011−97860A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253870(P2009−253870)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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