説明

ペースト状薬味ねぎ及びその製造方法

【課題】 従来、ペースト状ねぎまたは葱ペースト調味料などにおいて、粗砕による微細な組織片と液状物とを分離させないようにすると共に、ねぎ薬味としての特有の香味を維持させて各種食品のねぎ薬味として使用できるようにすること。
【解決手段】 本発明に係るペースト状薬味ねぎは、生ねぎを主成分素材とし、これに適宜の副成分素材を加えて全体をペースト状に加工すると共に、該ペースト状にした固形物と液体とが分離しないように所要量の食用高分子多糖類を添加させたものであって、主成分素材及び副成分素材を破砕してペースト状に加工した時に、必然的に固形物と液体とが生ずるが、これらが添加した食用高分子多糖類によって分離しないようになるのであり、各種食品の薬味として分包して添付しても、ペースト状が維持されているのでその取り出しが容易になり、しかもねぎ薬味としての特有の香味を維持させることができ、美味しく賞味できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、納豆、豆腐(冷や奴)、鍋物、ラーメン・うどん・そば等のインスタント麺類、または焼き肉など各種食品を食する際に簡易に薬味として使用できるペースト状薬味ねぎ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生のねぎ類は、食品の薬味として多岐に渡って使用されており、その多くは、食品を食する際に、その都度、生ねぎを小さくスライスまたは刻んで「きざみねぎ」として使用している。ところで、生ねぎをその都度刻んで薬味にすることは、意外に厄介で面倒な作業であると共に、例えば、納豆やインスタント食品を食する際にも、生ねぎの薬味を添えることで美味しくしかも栄養価も増大させることができるのであるが、実際には刻んだ生ねぎの香味・風味を損なわないように、機械的に速やかに分包することが極めて困難であることから、これら食品には添付されていないのが実情である。
【0003】
そこで、最近、ペースト状生ねぎ及びその製法が公知になっている。その公知例の1つは、生ねぎを裁断して得られ、浸出した粘稠な多糖類中に、3mm以下の微細な組織片が分散しているペースト状の生ねぎであり、好ましくは調味料及び/又は青とうがらし、芥子、こしょう等の香辛料を添加するというものであり、その製造方法は、生ねぎを粗く切断し、底部に回転カッターを設けた容器に装入し、500〜50000rpmで30秒〜5分間回転させて得られるというものである(特許文献1参照)。
【0004】
また、もう一つの公知例としては、葱の白身部分とニンニクとワサビを粗砕処理してペースト状にし、塩、食用油とアスコルビン酸ナトリウム、糖類、アルコール類、増粘材等を加えて練り状にしたものであり、その粗砕処理は、底部に回転刃を設けたシャープな高速カッター容器で葱を0.5〜3mmのペースト状にし、別工程でニンニク、ワサビは約0.3〜2mmのペースト状にするというものである(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−275605号公報
【特許文献2】特開2004−321188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたペースト状生ねぎは、その生ねぎを回転カッターで破砕した時に、ねぎに含まれている粘稠な多糖類のペクチンが液状で浸出し、該液状のペクチン中に微細な組織片が分散(浮遊)する状態でペースト状になっているものであるが、ねぎに含まれているペクチンだけでは粘性が低く、全体としてペースト状といっても微細な組織片と液状のペクチン(多糖類)とが経時によって分離してしまい、長期に渡ってペースト状を維持できず、例えば、納豆などの食品用に小分けした袋に詰めて薬味として添付した場合、その薬味を使用するために袋の一部を切り開いて中のペースト状生ねぎを取り出そうとした時に、分離した液状物だけが先に出てしまい微細な組織片が袋の内部に付着した状態になって取り出し難く、分包薬味としての実質的な役割を果たさないという問題点を有する。
【0007】
また、前記特許文献2に記載された葱ペースト調味料は、葱の白身部分を使用することと、添加物として、塩、食用油、糖類、アルコール類、還元水飴その他多数の物質を加えることにより、ねぎ本来の特有の香味成分が失われて、特に、食用油及び還元水飴を添加することにより、粗砕した組織片と液状物との分離がなくペースト状は維持できるが、ねぎ薬味としての特有の香味が発揮できない状態になってしまっている。
【0008】
従って、従来公知のペースト状生ねぎまたは葱ペースト調味料については、粗砕による微細な組織片と液状物とを分離させないようにして分包薬味としての役割を果たし、しかも、ねぎ薬味としての特有の香味を維持させて各種食品のねぎ薬味として使用できるようにすることに解決課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する具体的手段として本発明に係るペースト状薬味ねぎは、生ねぎを主成分素材とし、これに適宜の副成分素材を加えて全体をペースト状に加工すると共に、該ペースト状にした固形物と液体とが分離しないように所要量の食用高分子多糖類を添加させたものであること、並びに、ペースト状薬味ねぎの製造方法は、生ねぎの主成分素材を重量比率で70%以上と、副成分素材を重量比で30%以下とをそれぞれ長さ1〜10mm程度に切断する工程と、切断した素材を、殺菌液に少なくとも5分間浸漬して殺菌する工程と、殺菌を完了した素材を水で洗浄して殺菌液を除去または排除し水切りする工程と、洗浄した素材を破砕または粉砕器に投入すると共に、所要量の食用高分子多糖類を添加してペースト状にする工程とからなること、を最も主要な特徴とする。
【0010】
この発明のペースト状薬味ねぎにおいて、主成分素材を重量比で少なくとも70%にしたこと;食用高分子多糖類の添加量は、重量比で0.1〜1.0%であること;及び主成分の生ねぎ素材は、長ネギを必須とし、これに万能ねぎ、玉ねぎ、わけぎ、エシャロット等のねぎ類の一種または二種以上を付加すること、副成分素材は、大根の葉、青じその葉、セロリ、小松菜、ニンニクの茎、パセリ、キャベツ、ブロッコリ等の野菜類の葉や茎の一種または二種以上であること;を付加的な要件として含むものである。
【0011】
また、この発明のペースト状薬味ねぎの製造方法においては、殺菌液は、次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液であること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るペースト状薬味ねぎは、所要量(重量比で0.1〜1.0%)の食用高分子多糖類を添加させたことによって、生ねぎを主成分素材とし、これに適宜の副成分素材を加えてペースト状に加工した時に、必然的に固形物と液体とが生ずるが、これらが添加した食用高分子多糖類によって長期に渡って分離しないようになるのであり、各種食品の薬味として分包して添付しても、ペースト状が維持されているのでその取り出しが容易になり、しかもねぎ薬味としての特有の香味を維持させることができ、美味しく賞味できるという優れた効果を奏する。
また、本発明で得られたペースト状薬味ねぎは、密封包装(分包も含む)することによって本来の香味・風味を損なうことなく長期間(7日以上)に渡って保存可能である。
更に、この種のペースト状薬味ねぎについて、従来、ねぎ素材の繊維は多くしかも強靱であって、小包装に分包する際、シール部に繊維が咬み込んで不完全なシールになってしまっていた不都合な点を、本発明で得られたペースト状薬味ねぎは、素材の繊維を細かく破砕したので、仮にその繊維がシール部に咬み込んでもシール漏れすることなく分包包装することを可能にしたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
まず、本発明のペースト状薬味ねぎは、生ねぎを主成分素材とするものであり、生ねぎとしては、長ネギを必須素材とし、これに適宜万能ねぎ、分葱(わけぎ)、玉ねぎ、エシャロット等のねぎ類の一種または二種以上を所要量混ぜて使用することができる。そして、これに適宜の副成分素材を加えるものであるが、その副成分素材としては、例えば、大根の葉の部分、青じその葉、セロリ、小松菜、ニンニクの茎、パセリ、キャベツ、ブロッコリ等のミネラルや栄養素を多く含んだ野菜類の葉や茎等を使用することができる。この場合に主成分素材は重量比率で少なくとも70%を占め、副成分素材は30%以下に抑えるようにして、ねぎ本来の香味を損なわないようにする。
【0014】
これら主成分素材と副成分素材とを一緒にして、例えば、ミキサー又はジューサー等の破砕または粉砕器を用いて全体を細かく破砕してペースト状に加工すると共に、該ペースト状に破砕した素材の固形物(組織片)と液体とが分離しないように所要量の食用高分子多糖類を添加させるものである。因みに、粉砕した素材固形物は全体的に略1.0mm以下であった。
【0015】
この場合に使用される食用高分子多糖類は、例えば、「ネオソフトXC」(登録商標、太陽化学株式会社製)であって、所要量とは0.1〜1.0%である。この「ネオソフトXC」は、食品添加物のキサンタンガムであって、桿菌のXanthomonas campestrisを発酵させて得られた高分子多糖類キサンタンガムであって、低濃度の使用で高い粘性を得ることができ、温度を変えずに単に機械的衝動によりゾルとゲルとが互いに可逆的に変換する性質を有し、熱、酸、塩に対して安定であり、食塩を加えることにより粘度が上昇し、冷凍、解凍の操作によっても粘度は安定し、水及び熱湯に溶け、分散・乳化する安定な親水性コロイドを作る性質を有するものであり、他の種々の多糖類も併せて種々実験した結果、この「ネオソフトXC」が長期に渡って最も安定した状態を示し適していることが解ったのである。
【実施例1】
【0016】
実際に製造する方法・工程について説明すると、一例として主成分素材は長ネギと玉ねぎを使用し、副成分素材として大根の葉を使用する。これらの素材における外部の固い皮の部分と、長ネギの場合は青い部分の上部は所要長さにわたって除去し、大根の葉も黄色く変色している部分は除去し、これら素材に付着している土・泥等をきれいに洗浄し水切りをしてから、つまり、食せる状態にしてから、
イ.重量比率で長ネギ40%、玉ねぎ30%、大根の葉30%を、それぞれ長さ1〜3mm程度に切断する工程と、
ロ.切断した素材を、殺菌液、例えば、次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液に少なくとも5分間浸漬して殺菌する工程と、
ハ.殺菌を完了した素材を水で良く洗浄して、素材に付着している殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム)をほぼ除去または排除し水切りする工程と、
ニ.洗浄した素材を破砕または粉砕器に投入すると共に、重量比で0.2%の食用高分子多糖類(ネオソフトXC)を添加してペースト状にする工程と、
によってペースト状薬味ねぎを製造するものである。
【0017】
このようにして製造されたペースト状薬味ねぎは、素材が全体として略1mm以下に破砕され食用高分子多糖類の存在によって粘性のあるペースト状を呈し、これを所要の容器に充填して又は分包器にかけて、例えば、1袋に5〜6g宛充填して密封し分包する。分包されたペースト状薬味ねぎは、例えば、80℃で3分間低温殺菌する。他の容量の大きな容器に充填した時には、もう少し長い時間で低温殺菌する。そして、10日後に菌検査した結果、一般細菌は1g中に30以下で、大腸菌は陰性であった。
【実施例2】
【0018】
他のもう一つの例について述べると、使用される素材はきれいに洗浄し水切りをすることは共通している。そして、主成分素材として長ねぎと、分葱(わけぎ)とを使用し、副成分素材としてセロリと、小松菜を使用した。
イ.重量比率で長ネギ50%、分葱(わけぎ)30%、セロリ10%、小松菜10%を、それぞれ長さ1〜5mm程度に切断する工程と、
ロ.切断した素材を、殺菌液、例えば、次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液に少なくとも5分間浸漬して殺菌する工程と、
ハ.殺菌を完了した素材を水で良く洗浄して、素材に付着している殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム)をほぼ除去または排除し水切りする工程と、
ニ.洗浄した素材を破砕または粉砕器に投入すると共に、重量比で0.6%の食用高分子多糖類(ネオソフトXC)を添加してペースト状にする工程と、
によってペースト状薬味ねぎを製造するものである。
【0019】
このように製造されたペースト状薬味ねぎは、前記実施例と同様であって、同様に所要の容器に充填したり又は分包器にかけて分包したりできると共に、やはり80℃で所要時間の低温殺菌するものである。
【実施例3】
【0020】
更に他の実施例について述べる。主成分素材として長ねぎと、万能ねぎとを使用し、副成分素材として大根の葉と、ニンニクの茎を使用した。これら使用される素材はきれいに洗浄し水切りをすることは前記実施例と共通している。
イ.重量比率で長ネギ40%、万能ねぎ30%、大根の葉20%、ニンニクの茎10%を、それぞれ長さ1〜10mm程度に切断する工程と、
ロ.切断した素材を、殺菌液、例えば、次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液に少なくとも5分間浸漬して殺菌する工程と、
ハ.殺菌を完了した素材を水で良く洗浄して、素材に付着している殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム)をほぼ除去または排除し水切りする工程と、
ニ.洗浄した素材を破砕または粉砕器に投入すると共に、重量比で0.2%の食用高分子多糖類(ネオソフトXC)を添加してペースト状にする工程と、
によってペースト状薬味ねぎを製造するものである。
【0021】
このように製造されたペースト状薬味ねぎも、前記実施例1、2と略同様であって、同様に所要の容器に充填したり又は分包器にかけて分包したりできると共に、やはり80℃で所要時間の低温殺菌するものである。
そして、上記実施例2〜3により得られたペースト状薬味ねぎについても、実施例1と同様に、10日後に菌検査した結果は、一般細菌は1g中に30以下で、大腸菌は陰性であった。
【0022】
前記いずれの実施例においても、特に、食用高分子多糖類の添加量について具体的に示してあるが、使用される素材の含水量を考慮して増減されるものであり、種々実験の結果使用可能な量は重量比で0.1〜1.0%であって、0.1%以下であると、粘性が不十分で経時によって固液が分離する虞があり、1.0%を越えると粘性が高くなり過ぎて食品に添加した時に拡がり難いという取り扱い上の問題が生ずる。
【0023】
なお、素材の切断長さについて、実施例で1〜10mm迄を示してあるが、これに限定されず、例えば、20〜50mm程度であっても当然のこととして破砕できるのであり、その切断長さはペースト状に加工する破砕器の能力によって適宜選択されるのである。また、殺菌液についても、一例として次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液を示したが、これに限定されることなく、食品関係の殺菌に用いられる他の成分の殺菌液も使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
このように本発明に係るペースト状薬味ねぎは、所要量の食用高分子多糖類を添加することによって、固形物と液体とが分離しないで適度の粘性と品質とを長期間維持することができるのであり、ペースト状薬味ねぎの所要量を分包して薬味を必要とする各種食品に添付して使用できるばかりでなく、密封できる所要の容器に充填しておけば、各家庭において何時でも必要な量を簡単に取り出して使用できる、特に、高齢者が多くなってくる社会情勢を考慮した時に、高齢者にとって繊維質の多いねぎ素材を噛み砕いて食するのが困難になるが、ペースト状薬味ねぎとすることにより、その中に含まれる目の栄養源であるビタミンAを容易に摂取できるようになるので、その用途は広い範囲の食材に利用される可能性が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ねぎを主成分素材とし、これに適宜の副成分素材を加えて全体をペースト状に加工すると共に、該ペースト状にした固形物と液体とが分離しないように所要量の食用高分子多糖類を添加させたこと
を特徴とするペースト状薬味ねぎ。
【請求項2】
主成分素材を重量比で少なくとも70%にしたこと
を特徴とする請求項1に記載のペースト状薬味ねぎ。
【請求項3】
食用高分子多糖類の添加量は、重量比で0.1〜1.0%であること
を特徴とする請求項1に記載のペースト状薬味ねぎ。
【請求項4】
主成分の生ねぎ素材は、長ネギを必須とし、これに万能ねぎ、玉ねぎ、わけぎ、エシャロット等のねぎ類の一種または二種以上を付加すること、
副成分素材は、大根の葉、青じその葉、セロリ、小松菜、ニンニクの茎、パセリ、キャベツ、ブロッコリ等の野菜類の葉や茎の一種または二種以上であること
を特徴とする請求項1に記載のペースト状薬味ねぎ。
【請求項5】
生ねぎの主成分素材を重量比率で70%以上と、副成分素材を重量比で30%以下とをそれぞれ長さ1〜10mm程度に切断する工程と、
切断した素材を、殺菌液に少なくとも5分間浸漬して殺菌する工程と、
殺菌を完了した素材を水で洗浄して殺菌液を除去または排除し水切りする工程と、
洗浄した素材を破砕または粉砕器に投入すると共に、所要量の食用高分子多糖類を添加してペースト状にする工程とからなること
を特徴とするペースト状薬味ねぎの製造方法。
【請求項6】
殺菌液は、次亜塩素酸ナトリウム200ppm含有液であること
を特徴とする請求項5に記載のペースト状薬味ねぎの製造方法。

【公開番号】特開2006−204164(P2006−204164A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19515(P2005−19515)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(598176695)大山豆腐株式会社 (6)
【Fターム(参考)】