説明

ホイールホルダ

【課題】ホイールを搬送する作業が円滑に行われるホイールホルダを提供する。
【解決手段】クレーン20に連結されてホイール3a、3b、3cを保持するホイールホルダ30であって、クレーン20に連結されるベースフレーム31と、このベースフレーム31から突出してホイール3a、3b、3cを載せる対のフォーク40と、ベースフレーム31からホイール3a、3b、3cの回転中心より上方にあってホイール3a、3b、3cの側部4に沿って略水平方向に引き出される対の拡張アーム60と、この各拡張アーム60からホイール3a、3b、3cの外周部に沿って略水平方向に引き出される対の係合アーム50とを備え、係合アーム50はL字状のフック部50aを備え、この各係合アーム50のフック部50aがホイール3a、3b、3cの他方の側部5を抱え込む構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機などのホイールを交換するときに、クレーンを介してホイールを搬送するホイールホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホイールホルダとして、空港等に配備されるホイール交換用車両に搭載されるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
これについて説明すると、図10は、航空機などのホイールを交換するときに用いられるホイール交換用車両である。このホイール交換用車両は、その荷台1にクレーン2を備えている。このクレーン2は、ホイール3を保持するホイールホルダaと、このホイールホルダaを昇降させる昇降装置bとから構成されている。
【0004】
上記の昇降装置bは、シリンダ4とリンク機構5とからなり、シリンダ4の伸縮によってリンク機構5を変形させて、ホイールホルダaを昇降させるようにしている。例えば、図示する状態からシリンダ4を伸ばすと、リンク機構5の右辺部分が持ち上がってホイールホルダaが上昇する。また、シリンダ4を縮めると、リンク機構5の右辺部分が下がってホイールホルダaが下降する。
【0005】
図11にも示すように、上記のホイールホルダaは、そのフレーム7を、クレーンアーム6を介してリンク機構5に連結される。フレーム7の下部には、一対の積載ローラ8、8が回転自在に取り付けられ、これら一対の積載ローラ8、8の上にホイール3が載せられる。
【0006】
ホイールホルダaは、フレーム7の上方に押し付け機構fが設けられている。この押し付け機構fは、ホイールホルダaの幅方向中央部でホイール3の最上部近傍に一つ設けられており、ホイール3をフレーム7に取り付けられたガイド部14、15に押し付けて、このホイール3を垂直な状態に保つためのものである。この押し付け機構fは、筒部材9と、この筒部材9に摺動自在に挿入したロッド10と、筒部材9の上面に固定したラチェット機構11とから構成されている。
【0007】
上記のロッド10は、その一端にフック12を形成し、その他端にグリップ13を固定している。また、このロッド10の上側面には、図示していない複数の溝を等間隔に形成している。
【0008】
上記のラチェット機構11は、ロッド10の軸線方向の位置を調節するとともに、このロッド10の動きを規制するためのものである。このラチェット機構11は、その下方から図示していない爪部を突出させるとともに、その爪部を上記ロッド10に形成した溝に挿入するようにしている。
【0009】
爪部を溝に挿入した状態で、ロッド10を図面左方向、すなわちフック12をホイール3に押し付ける方向に動かすと、爪部が溝から外れて隣の溝に入るようにしている。一方、ロッド10を反対方向、すなわちフック12をホイール3から離す方向にロッド10を動かそうとした場合には、爪部の動きが規制されて、この爪部が溝から抜けないようにしている。したがって、この場合には、ロッド10の図面右方向への移動が規制される。ただし、図示していない解除ボタンを押すと、フック12をホイール3から離す方向にロッド10を動かす場合でも、爪部が溝から外れるようにしている。つまり、解除ボタンを押さない限り、フック12がホイール3から離れないようにしている。
【0010】
以上のように、ホイールホルダaは、ロッド10を左方向に動かして、フック12をホイール3に押し付けると、フレーム7に設けたガイド部14、15とフック12とによってホイール3が挟みつけられる。そして、このようにホイール3が挟みつけられている限り、ホイール3がホイールホルダaから外れることはない。また、ホイール3を取り外す場合には、解除ボタンを押して、フック12をホイール3から離す方向にロッド10を動かす。このようにすれば、ホイールホルダaからホイール3を取り外すことができる。
【特許文献1】特開2003−19918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来のホイールホルダaにあっては、フレーム7の上方に押し付け機構fが設けられているため、ホイールホルダaの上下方向の寸法(高さ)が大きくなり、クレーン7が作動する搬送時にホイールホルダaが航空機の翼などに干渉する可能性が増すという問題点があった。
【0012】
また、ホイール3を取り外す場合には、爪部が溝から外れるように解除ボタンを押し続けて、フック12をホイール3から離す方向にロッド10を動かす必要があり、作業者の操作が煩雑になるという問題点があった。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ホイールを搬送する作業が円滑に行われるホイールホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、クレーンに連結されてホイールを保持するホイールホルダであって、クレーンに連結されるベースフレームと、このベースフレームから突出してホイールを載せる対のフォークと、ベースフレームからホイールの回転中心より上方にあってホイールの一方の側部に沿って略水平方向に引き出される対の拡張アームと、この各拡張アームからホイールの外周部に沿って略水平方向に引き出される対の係合アームとを備え、この各係合アームはL字状のフック部を備え、各係合アームのフック部がホイールの他方の側部を抱え込む構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ホイールホルダがホイールを保持する際に、各拡張アームを引き出すストロークと、各係合アームを引き出すストロークとをそれぞれ調節することにより、大きさの異なるホイールをガタツキなく保持することができる。
【0016】
ホイールホルダは、対の係合アームがホイールの側部を抱え込む構成としたため、上下方向の寸法(高さ)が小さく抑えられ、ホイールホルダのクレーンに対する上方の連結部がホイールの側部に対峙するように配置される。これにより、ホイールホルダの部位がホイールより上方に突出することが回避され、クレーンが作動する搬送時にホイールホルダが航空機の翼などに干渉することが防止され、この搬送作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示すクレーンとホイールホルダの側面図。
【図2】同じくホイールホルダの正面図。
【図3】同じくホイールホルダの側面図。
【図4】同じくホイールホルダの平面図。
【図5】同じく拡張アームの断面図と正面図。
【図6】同じくホイールホルダの動作を示す正面図と側面図と平面図。
【図7】同じくホイールホルダの動作を示す正面図と側面図と平面図。
【図8】同じくホイールホルダの動作を示す正面図と側面図と平面図。
【図9】同じくホイールホルダの動作を示す正面図と側面図と平面図。
【図10】従来例を示すホイール交換用車両の正面図。
【図11】同じくホイールホルダの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、ホイール交換用車両に搭載される、クレーン20とホイールホルダ30を示す側面図である。このホイール交換用車両は、空港などに配備されるものであり、航空機のホイールを交換するときに、航空機の脚部から取り外されたホイールを荷台に載せるとともに、整備済みのホイールを脚部に取り付ける交換作業に用いられる。
【0020】
図1にて、19はホイール交換用車両の荷台フレームである。この荷台フレーム19上にクレーン20が設置される。
【0021】
クレーン20は、昇降ポスト21と、この昇降ポスト21に対して上下方向に揺動するリンク機構25と、このリンク機構25の先端部に設けられる先端ポスト28と、この先端ポスト28に対してホイールホルダ30を支持するクレーンアーム29とを備える。
【0022】
昇降ポスト21は、垂直軸O21まわりに回動し、リンク機構25を旋回可能に支持している。
【0023】
リンク機構25は、上下のリンクアーム26、27を備え、このリンクアーム26、27の両端が昇降ポスト21と先端ポスト28に対して回動可能に連結されている。昇降ポスト21と先端ポスト28の間には図示しない油圧シリンダが設けられ、この油圧シリンダが伸縮作動することにより、リンク機構25が図中矢印で示すように上下方向に揺動し、ホイールホルダ30が上下方向に移動するようになっている。
【0024】
クレーンアーム29は、その基端部が先端ポスト28に回動可能に連結され、垂直軸O28まわりに回動可能に支持される。これにより、クレーン20の格納時に、リンク機構25とクレーンアーム29が互いに沿うように折り畳まれる。
【0025】
クレーンアーム29の先端部29aには、ホイールホルダ30のベースフレーム31がピン22を介して垂直軸まわりに回動可能に連結される。これにより、クレーン20及びホイールホルダ30の格納時にベースフレーム31がクレーンアーム29に沿うように折り畳まれる。
【0026】
クレーンアーム29の下側にはステー23が設けられる。図1に示すように、ベースフレーム31がクレーンアーム29に直交するように展開した状態にて、直線状に延びたステー(支持棒)23がベースフレーム31の下部ブラケット32に着脱可能なピン24を介して連結されることにより、クレーンアーム29に対するベースフレーム31の姿勢が支持される。クレーン20の格納時に、ステー23はクレーンアーム29の下面に沿って折り畳まれる。
【0027】
下部ブラケット32はベースフレーム31の下部にピン33を介して回動可能に連結される。ベースフレーム31は上部のピン22と下部のピン33によって垂直軸まわりに回動可能に支持されている。
【0028】
クレーン20は、以上のように構成され、ホイールホルダ30を三次元方向に移動する。航空機のホイールを交換する作業時に、ホイールホルダ30に航空機の脚部から取り外されたホイールを荷台へと運ぶとともに、整備済みのホイールを荷台から航空機の脚部へと運ぶようになっている。
【0029】
図2はホイールホルダ30の正面図であり、図3は側面図であり、図4は上方から見た平面図である。図中、3a、3b、3cは、航空機のホイールであり、航空機の大きさに応じてそれぞれ異なる外径(タイヤ径)d1、d2、d3を有している。ホイール3a、3b、3cは、航空機の車軸に連結される金属製のホイールディスクと、このホイールディスクの外周部に嵌められるゴム製のタイヤ等によって構成される。なお、ホイール3a、3b、3cの外径(タイヤ径)d1、d2、d3は、例えば1000〜1500mm程度の寸法である。図2において、O1、O2、O3は、ホイール3a、3b、3cの回転中心軸である。
【0030】
ホイールホルダ30は、前述したようにクレーン20(図1参照)に連結されるベースフレーム31と、ベースフレーム31から突出する対のフォーク40(図1、図3参照)とを備え、各フォーク40に渡ってホイール3a、3b、3cを載せるようになっている。
【0031】
ベースフレーム31は、水平方向に延びる上フレーム31a(図4参照)、下フレーム31b(図2参照)と、垂直方向に延びる左右フレーム31c、31dとを有する、四角形の枠状に形成される。
【0032】
上フレーム31aの中央部にブラケット34が結合され、このブラケット34の上に前述した上部のピン22が突出される。このピン22がホイールホルダ30のクレーン20に対する上方の連結部となる。
【0033】
下フレーム31bの中央部にブラケット35が結合され、このブラケット35の上に前述した下部のピン33が突出される。このピン33がホイールホルダ30のクレーン20に対する下方の連結部となる。
【0034】
対のフォーク40は、ベースフレーム31の角部から水平方向に延び、下フレーム31bと左右フレーム31c、31dとの交差部から突出される。
【0035】
各フォーク40どうしの間隔は、最も小さいホイール3aの外径d1(図1、図3参照)より小さく設定され、各フォーク40に渡って載せられるホイール3aが各フォーク40間から落ちないようになっている。
【0036】
フォーク40には、円筒状の積載ローラ41が回転可能に取り付けられる。ホイール3aが積載ローラ41に転接することによって、各フォーク40に渡って円滑に載せられるようになっている。
【0037】
フォーク40には、折り畳み式の脚42が取り付けられる。対の脚42は、リンク43を介して連動し、図3に示すように、ホイール3aより下方に突出するように引き出された状態にて接地し、ホイールホルダ30を支持するようになっている。
【0038】
ホイールホルダ30は、ベースフレーム31に対してホイール3aの回転中心軸O1(回転中心)より上方にあってホイール3aの一方の側部4に沿うようにホイール3aの回転中心軸O1に対して直交する略水平方向に引き出される対の拡張アーム60と、各拡張アーム60に対してホイール3aの外周部に沿うようにホイール3aの回転中心軸O1に対して平行な略水平方向に引き出される対の係合アーム50とを備え、図4に示すように、各係合アーム50はL字状のフック部50aを備え、このフック部50aがホイール3aの外周縁部(タイヤの肩部)及びホイール3aの他方の側部5を抱え込むように構成される。
【0039】
図5の(a)は拡張アーム60を側方から見た断面図、(b)は下方から見た平面図、(c)は前方から見た正面図である。
【0040】
拡張アーム60は、ベースフレーム31に固定される円筒状のガイドスリーブ61と、このガイドスリーブ61に摺動可能に挿入される円柱状のロッド62とを備え、ロッド62がガイドスリーブ61に対して回動可能に支持されるとともに、ロッド62がガイドスリーブ61に対してその軸方向に移動することにより拡縮作動する。
【0041】
拡張アーム60は、ロッド62に刻まれたラック63と、ガイドスリーブ61に取り付けられてラック63に係合するラチェット64とを備える。
【0042】
ラック63は、その軸方向に並ぶ多数の歯山によって構成される。この歯山は、ロッド62の軸方向に対して直交する方向に延び、ロッド62の軸方向について所定のピッチにて並ぶように形成される。
【0043】
ラチェット64は、バネ板によって形成され、複数のボルト65を介してガイドスリーブ61に締結される。
【0044】
ラチェット64は、ラック63に係合する爪部64aを有する。図5の(a)において、ロッド62が右方向に押されると、爪部64aが撓んでラック63を乗り越え、ロッド62がガイドスリーブ61に対して移動する。図5の(a)において、ロッド62が左方向に押されると、爪部64aがラック63に噛み合い、ロッド62がガイドスリーブ61に対して移動することを係止する。
【0045】
拡張アーム60は、ラチェット64がラック63に噛み合うロッド62の回動位置に係止する拡張アーム回動係止機構59を備える。
【0046】
拡張アーム回動係止機構59は、ロッド62に形成された軸方向に延びる軸溝66と、この軸溝66に係合するピン67とによって構成される。
【0047】
図5の(a)に示すように、ピン67が軸溝66に係合した拡張アーム回動係止機構59の作動状態では、ロッド62に形成されたラック63がラチェット64と噛み合う位置に係止され、ロッド62がガイドスリーブ61に差し込まれる動きは止められない一方、ロッド62がガイドスリーブ61から引き出される動きが止められる。
【0048】
拡張アーム60は、拡張アーム回動係止機構59の作動を解除し、ガイドスリーブ61に対するロッド62の移動を自由にする拡張アーム回動係止解除機構58を備える。
【0049】
拡張アーム回動係止解除機構58として、ピン67が軸溝66に対して出没可能に取り付けられ、ピン67を軸溝66に係合する方向に付勢する図示しないバネが設けられるとともに、ピン67に操作部68が連結される。ピン67は、ガイドスリーブ61の半径方向に摺動可能に支持され、操作部68を引っ張ることにより、バネに抗して軸溝66から外れるようになっている。
【0050】
図4に示すように、係合アーム50のフック部50aが水平方向に延びてホイール3aを抱え込む姿勢にある場合には、ピン67(図5参照)が軸溝66に係合し、係合アーム50の回動が不能になるとともに、ラチェット64がラック63に係合しており、拡張アーム60の拡張が不能となり、収縮のみが可能となる。
【0051】
図5の(a)に示す状態から、作業者が操作部68を引っ張ってピン67を軸溝66から抜き、グリップ部50bを回動する操作を行うと、ロッド62がガイドスリーブ61に対して回動し、ラチェット64がラック63から外れ、ロッド62の外周面に摺接する。これにより、ロッド62をガイドスリーブ61に差し込むとともに、ガイドスリーブ61から引き出すことが可能となり、拡張アーム60の拡縮が自由に行える。
【0052】
図2に示すように、係合アーム50が重力により垂下した格納姿勢にあると、ラチェット64がラック63から外れ、拡張アーム60の拡縮が自由に行える。
【0053】
図4に示すように、係合アーム50は、拡張アーム60の先端部に連結される円筒状のガイドスリーブ51と、このガイドスリーブ51に摺動可能に挿入される円柱状のロッド52とを備える。
【0054】
ガイドスリーブ51は、拡張アーム60のロッド62の先端部に略直交して結合される。
これにより、係合アーム50は、拡張アーム60に対して略直交する方向に移動するように支持される。
【0055】
係合アーム50は、ロッド52に刻まれたラック53と、ガイドスリーブ51に取り付けられてラック53に係合するラチェット54とを備える。
【0056】
一方、係合アーム50は、ホイール3a、3b、3cに対するフック部50aとして、ロッド52の先端部がL字状に曲折して形成される。フック部50aは、図4に示すように、水平方向に延びる状態にて、ホイール3a、3b、3cの外周縁部及び側部5に係合し、ホイール3a、3b、3cを抱え込むようになっており、さらに作業者に操作されるグリップ部50bとして、ロッド52の基端部がL字状に曲折して形成される。作業者は、グリップ部50bを持ってロッド52をガイドスリーブ51に対して回動させるとともに、ロッド52をガイドスリーブ51に対して軸方向に移動する操作を容易にしている。
【0057】
係合アーム50は、ラチェット54がラック53に噛み合うロッド52の回動位置に係止する係合アーム回動係止機構57(図2、図3参照)と、この係合アーム回動係止機構57の作動を解除してガイドスリーブ51に対するロッド52の移動を自由にする係合アーム回動係止解除機構56とが備えられ、これら係合アーム回動係止機構57と係合アーム回動係止解除機構56とは、前述した拡張アーム60に備えられる拡張アーム回動係止機構59と拡張アーム回動係止解除機構58と同様の構造を有する。
【0058】
係合アーム回動係止解除機構56は、図示しないピンがロッド52の図示しない軸溝に対して出没可能に取り付けられる。このピンは、ガイドスリーブ51の半径方向に摺動可能に支持され、図示しないバネによってロッド52の軸溝に係合する方向に付勢されており、ピンに連結された操作部48を引っ張ることにより、バネに抗してロッド52の軸溝から外れるようになっている。
【0059】
図4に示すように、係合アーム50のフック部50aが水平方向に延びてホイールを抱え込む姿勢にあると、係合アーム回動係止機構57のピンが図示しない軸溝に係合し、係合アーム50の回動が不能になるとともに、図示しないラチェットがラックに係合しているため、図4にて上方に突出する動作が不能となり、図4にて下方に引き込む動作のみが可能となる。
【0060】
図3に示すように、係合アーム50のロッド52が水平位置でフック部50aが垂下した格納姿勢にあると、係合アーム50の図示しないラチェットがラックから外れ、係合アーム50の突出、引き込み動作が自由に行える。
【0061】
次にホイールホルダ30の動作を説明する。図6〜9は、ホイールホルダ30がホイール3cを保持する際の動作を示している。図6〜9において、(a)はホイールホルダ30を側方から見た側面図、(b)は前方から見た正面図、(c)は上方から見た平面図である。
【0062】
図6は、ホイールホルダ30の格納状態を示している。各係合アーム50が重力により垂下し、各拡張アーム60が収縮している。
【0063】
次に、図7に示すように、各拡張アーム60を拡張した状態とする。この状態でホイール3cを所定の位置に載せる。このとき、各拡張アーム60のラチェット64(図5参照)がラック63から外れており、(c)図に矢印で示すようにロッド62の押し込みと引き出しの両方が可能であり、各ロッド62の引き出し量を調整して、各係合アーム50の間隔がホイール3cの外径より拡げられる。
【0064】
次に、図8に示すように各係合アーム50を(b)図に矢印で示すようにロッド52が水平位置となるまで回動させ、ホイール3cの外周部に沿うように延びた状態にする。このとき、各拡張アーム60の拡張アーム回動係止機構59が作動し、各係合アーム50の各拡張アーム60まわりの回動が係止される。この状態にて、各拡張アーム60のロッド62を押し込んで、各係合アーム50をホイール3cの外周部に近接するように配置する。このとき、各拡張アーム60のラチェット64がラック63に噛み合い、ロッド62の押し込みを可能とするが、ロッド62の引き出しができないよう係止している。また、各係合アーム50のフック部50aが重力により垂下した姿勢にあり、係合アーム50のラチェット54がロッド52のラック53から外れ(図4参照)、係合アーム50の突出、引き込み動作が自由に行える。
【0065】
次に、図9に示すように各係合アーム50を(a)図に矢印で示すように各係合アーム50をロッド52の軸回りにフック部50aが略水平方向となるまで回動させる。このとき、各係合アーム50の係合アーム回動係止機構57が作動し、各係合アーム50のロッド52まわりの回動が係止される。そして、(c)図に矢印で示すようにロッド52を引き込み、フック部50aが略水平方向に延びてホイール3cの外周縁部及び側部5を抱え込むように保持した状態とする。この状態にて、係合アーム50のロッド52を引き込んで、各係合アーム50のフック部50aをホイール3cの外周縁部に当接させる。このとき、各係合アーム50のラチェット54がロッド52のラック53に噛み合い、ロッド52の引き込みを可能するが、ロッド52の突出はできないよう係止している。
【0066】
このようにして、ホイールホルダ30は、各拡張アーム60が回動した後に押し込まれ、続いて各係合アーム50が回動した後に引き込まれることにより、各フック部50aがホイール3cの外周縁部を抱え込むようにしてホイール3cを保持する。これにより、ホイール3cがホイールホルダ30から脱落することなく、クレーン20を介してホイール交換用車両の荷台へと搬送される。
【0067】
ホイールホルダ30に保持されたホイール3cをホイールホルダ30上から降ろす場合、係合アーム回動係止解除機構56を操作して係合アーム50を格納し、拡張アーム回動係止解除機構58を操作して拡張アーム60を格納する。これにより、係合アーム50がホイール3cから外れ、ホイール3cをホイールホルダ30上から降ろすことが可能になる。これまではホイール3cを例として説明したが、ホイール3a、ホイール3bも同様の手順で実施できることは言うまでもない。
【0068】
以上のように、本実施形態では、クレーン20に連結されてホイール3a、3b、3cを保持するホイールホルダ30であって、クレーン20に連結されるベースフレーム31と、このベースフレーム31から突出してホイール3a、3b、3cを載せる対のフォーク40と、ベースフレーム31からホイール3a、3b、3cの回転中心より上方にあってホイール3a、3b、3cの側部4に沿って略水平方向に引き出される対の拡張アーム60と、この各拡張アーム60からホイール3a、3b、3cの外周部に沿って略水平方向に引き出される対の係合アーム50とを備え、係合アーム50はL字状のフック部50aを備え、この各係合アーム50のフック部50aがホイール3a、3b、3cの他方の側部5を抱え込む構成とした。
【0069】
上記構成に基づき、ホイールホルダ30がホイール3a、3b、3cを保持する際に、各拡張アーム60を引き出すストロークと、各係合アーム50を引き出すストロークとをそれぞれ調節することにより、大きさの異なるホイール3a、3b、3cをガタツキなく保持することができる。
【0070】
ホイールホルダ30は、対の係合アーム50がホイール3a、3b、3cの側部5を抱え込む構成としたため、上下方向の寸法(高さ)が小さく抑えられ、ホイールホルダ30のクレーン20に対する上方の連結部(ピン22)がホイール3a、3b、3cの側部4に対峙するように配置される。これにより、ホイールホルダ30の部位がホイール3a、3b、3cより上方に突出することが回避されるため、クレーン20が作動する搬送時にホイールホルダ30が航空機の翼などに干渉することが防止され、この搬送作業を円滑に行うことができる。
【0071】
本実施形態では、拡張アーム60は、ベースフレーム31に固定されるガイドスリーブ61と、このガイドスリーブ61に摺動可能に挿入されるロッド62と、このロッド62に刻まれたラック63と、このラック63に噛み合って拡張アーム60が拡張する動きを係止するラチェット64と、ガイドスリーブ61に対するロッド62の回動を係止してラチェット64をラック63に係合させるように作動する拡張アーム回動係止機構59と、この拡張アーム回動係止機構59の作動を解除してラチェット64がラック63から外れるようにガイドスリーブ61に対するロッド62の回動を自由にする拡張アーム回動係止解除機構58とを備える構成とした。
【0072】
上記構成に基づき、ロッド62の回動位置を変えることにより、拡張アーム60の拡縮作動(伸縮作動)が自由に行える状態と、拡張アーム60の収縮作動のみを許容する状態とに切り換えられ、拡張アーム60のストロークを容易に調節することができる。ロッド62の回動位置を変えるときにのみ、作業者が拡張アーム回動係止解除機構58の操作部68を引っ張る操作をすることで、係合アーム50をホイール把持位置側へと回動させることができる作動及び拡張アーム60のストローク調節を、操作部68を引っ張るだけで可能としたため、それらの操作が少なくて済むといった特徴を持つものである。
【0073】
本実施形態では、係合アーム50のロッド52が略水平に延びる保持姿勢にあるときにラチェット64が拡張アーム60のロッド62に形成されたラック63に係合し、係合アーム50が重力により垂下した格納姿勢にあるときにラチェット64がラック63から外れる構成とした。
【0074】
上記構成に基づき、係合アーム50が格納姿勢にあると、ラチェット64がラック63から外れ、拡張アーム60の拡縮作動が自由に行える。一方、ロッド62の回動位置を変えて係合アーム50が保持姿勢に切り換えられると、ラチェット64がラック63に係合し、拡張アーム60の収縮作動のみが許容される。これにより、作業者が拡張アーム60のストロークを容易に調節することができる。
【0075】
本実施形態では、係合アーム50は、ベースフレーム31に固定されるガイドスリーブ51と、このガイドスリーブ51に摺動可能に挿入されるロッド52と、このロッド52に刻まれたラック53と、このラック53に噛み合って係合アーム50が拡張する動きを係止するラチェット54と、ガイドスリーブ51に対するロッド52の回動を係止してラチェット54をラック53に係合させるように作動する係合アーム回動係止機構57と、この係合アーム回動係止機構57の作動を解除してラチェット54がラック53から外れるようにガイドスリーブ51に対するロッド52の回動を自由にする係合アーム回動係止解除機構56とを備える構成とした。
【0076】
上記構成に基づき、ロッド52の回動位置を変えることにより、係合アーム50の拡縮作動(伸縮作動)が自由に行える状態と、係合アーム50の収縮作動のみを許容する状態とに切り換えられ、係合アーム50のストロークを容易に調節することができる。ロッド52の回動位置を変えるときにのみ、作業者が係合アーム回動係止解除機構56の操作部48を引っ張る操作をすればよく、作業者が操作部48を引っ張る操作が少なくて済み、係合アーム50のストロークを容易に調節することができる。
【0077】
本実施形態では、係合アーム50が略水平に延びる保持姿勢にあるときにラチェット54がラック53に係合し、係合アーム50が重力によりフック部50aが垂下した格納姿勢にあるときにラチェット54がラック53から外れる構成とした。
【0078】
上記構成に基づき、係合アーム50が格納姿勢にあると、ラチェット54がラック53から外れ、係合アーム50の拡縮作動が自由に行える。一方、ロッド52の回動位置を変えて係合アーム50が保持姿勢に切り換えられると、ラチェット54がラック53に係合し、係合アーム50の収縮作動のみが許容される。これにより、係合アーム50のストロークを容易に調節することができる。
【0079】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0080】
3a〜3c ホイール
4、5 ホイールの側部
20 クレーン
21 昇降ポスト
30 ホイールホルダ
31 ベースフレーム
40 フォーク
48 操作部
50 係合アーム
51 ガイドスリーブ
52 ロッド
53 ラック
54 ラチェット
56 係合アーム回動係止解除機構
57 係合アーム回動係止機構
58 拡張アーム回動係止解除機構
59 拡張アーム回動係止機構
60 拡張アーム
61 ガイドスリーブ
62 ロッド
63 ラック
64 ラチェット
68 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに連結されてホイールを保持するホイールホルダであって、
前記クレーンに連結されるベースフレームと、
このベースフレームから突出して前記ホイールを載せる対のフォークと、
前記ベースフレームから前記ホイールの回転中心より上方にあって前記ホイールの一方の側部に沿って略水平方向に引き出される対の拡張アームと、
この各拡張アームから前記ホイールの外周部に沿って略水平方向に引き出される対の係合アームと、を備え、
この各係合アームはL字状のフック部を備え、
前記各係合アームのフック部が前記ホイールの他方の側部を抱え込む構成としたことを特徴とするホイールホルダ。
【請求項2】
前記拡張アームは、
前記ベースフレームに固定されるガイドスリーブと、
このガイドスリーブに摺動可能に挿入されるロッドと、
このロッドに刻まれたラックと、
このラックに噛み合って拡張アームが拡張する動きを係止するラチェットと、
前記ガイドスリーブに対する前記ロッドの回動を係止して前記ラチェットを前記ラックに係合させるように作動する拡張アーム回動係止機構と、
この拡張アーム回動係止機構の作動を解除して前記ラチェットが前記ラックから外れるように前記ガイドスリーブに対する前記ロッドの回動を自由にする拡張アーム回動係止解除機構と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のホイールホルダ。
【請求項3】
前記係合アームが略水平に延びる保持姿勢にあるときに前記ラチェットが前記ラックに係合し、
前記係合アームが重力により垂下した格納姿勢にあるときに前記ラチェットが前記ラックから外れる構成としたことを特徴とする請求項2に記載のホイールホルダ。
【請求項4】
前記係合アームは、
前記ベースフレームに固定されるガイドスリーブと、
このガイドスリーブに摺動可能に挿入されるロッドと、
このロッドに刻まれたラックと、
このラックに噛み合って前記係合アームが拡張する動きを係止するラチェットと、
前記ガイドスリーブに対する前記ロッドの回動を係止して前記ラチェットを前記ラックに係合させるように作動する係合アーム回動係止機構と、
この係合アーム回動係止機構の作動を解除して前記ラチェットが前記ラックから外れるように前記ガイドスリーブに対する前記ロッドの回動を自由にする係合アーム回動係止解除機構と、を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のホイールホルダ。
【請求項5】
前記係合アームが略水平に延びる保持姿勢にあるときに前記ラチェットが前記ラックに係合し、
前記係合アームが重力により垂下した格納姿勢にあるときに前記ラチェットが前記ラックから外れる構成としたことを特徴とする請求項4に記載のホイールホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171735(P2012−171735A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34658(P2011−34658)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】