説明

ホイールリムのリークテスト装置

【課題】 リークテスト装置を小型化、単純化でき、ワークのサイズ変更に伴う装置の段取りが必要でなく、構成部品へのアクセスも容易なホイールリムのリークテスト装置の提供。
【解決手段】(1) 検査ステージ11と、検査ステージへホイールリムを搬入・搬出するためのワーク搬送用の汎用ロボット31、32と、を備え、
検査ステージ11は、
固定テーブル12と、
ホイールリムに上方から接近して固定テーブルとの間にホイールリムを挟持してホイールリム内空間を密閉する上下動蓋14を有する上クランプ機構13と、
を備えているホイールリムのリークテスト装置。
(2) ホイールリム内空間の一部を占める中子15を、上クランプ機構の上下動蓋14に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムとディスクとの溶接型ホイールの製造システムにおけるホイールリムのリークテスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホイール製造システムでは、たとえば実開昭62−172528号公報に示されているように、リムの溶接部のリークテスト工程、リムのバルブ穴あけ工程、バルブ穴コイン工程、ディスク・リム仮嵌入工程、ディスク・リム本嵌入工程の順に行われ、各工程は別々のステーションで行われ、各ステーション間のワーク(仮嵌入前はリム、仮嵌入以後はディスク・リム)の搬送はトランスファーフィーダまたはローラーコンベアで行われていた。
【特許文献1】実開昭62−172528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のホイール製造システムのリークテスト装置には、つぎの問題がある。
(イ)リークテスト装置が、ワークの搬入ステージ、アイドルステージ(ワークの仮置きステージ)、検査ステージ(リークテスト実行ステージ)、ワークの搬出ステージを有しており、ワーク(ホイールリム)のリークテスト装置における搬送に専用トランスファーフィーダを用いているため、リークテスト装置が大きくなり複雑化する。その結果、装置の設置スペースが大きい。
(ロ)ワークのサイズが変わる毎に、トランスファーフィーダーの搬送高さ、クランプ幅の調整(段取り)が必要となり、その段取りをラインを一時停止させて行うので、生産性が低下する。
(ハ)リークテスト装置のワーク搬送・検査のための構成部品がフレームに囲まれているため構成部品に不具合が生じても構成部品へのアクセスが容易でなく、部品交換やメンテナンスがしにくい。
【0004】
本発明の目的は、リークテスト装置を小型化、単純化でき、ワークのサイズ変更に伴う装置の段取りが必要でなく、構成部品へのアクセスも容易なホイールリムのリークテスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 検査ステージと、検査ステージへホイールリムを搬入・搬出するためのワーク搬送用の汎用ロボットと、を備え、
前記検査ステージは、
固定テーブルと、
ホイールリムに上方から接近して固定テーブルとの間にホイールリムを挟持してホイールリム内空間を密閉する上下動蓋を有する上クランプ機構と、
を備えているホイールリムのリークテスト装置。
(2) ホイールリム内空間の一部を占める中子を、上クランプ機構の上下動蓋に取り付けた(1)記載のホイールリムのリークテスト装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)のホイールリムのリークテスト装置によれば、検査ステージへのホイールリムの搬入・搬出手段を、専用トランスファーフィーダーから、汎用ロボットに変えたので、リークテスト装置を小型化、単純化することができる。
汎用ロボットによるワーク搬送では、搬送高さ、クランプ幅の調整(段取り)が必要でなく、汎用ロボットの入力値の選択だけで済むので、装置の段取りレスとなる。
また、検査ステージのまわりから専用トランスファーフィーダーやトランスファーフィーダーのフレームがなくなるので、検査ステージの構成部品へのアクセスが容易になり、メンテナンスが容易である。
上記(2)のホイールリムのリークテスト装置によれば、中子を、上クランプ機構の上下動蓋に取り付けたので、検査ステージへのワークの搬入・搬出が容易になり、かつ時間短縮もできる。もしも、テーブル側に中子を取り付けた場合には、検査ステージへのワークの搬入・搬出時に、中子とワークとの干渉を避けるために、テーブルの昇降が必要となるが、本発明では検査ステージへのワークの搬入・搬出時に、テーブルの昇降が不要になるため、その分、本発明では、検査ステージへのワークの搬入・搬出が容易になり、かつ、時間短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のホイールリムのリークテスト装置を、図1〜図3を参照して、説明する。図4〜図6はトランスファーフィーダによってワークを検査ステージに搬入、搬出する場合の比較例(従来技術ではない)である。比較例は、本発明に含まれない。
【0008】
図3に示すように、本発明のホイールリムのリークテスト装置10は、検査ステージ11と、検査ステージ11へホイールリム30を搬入・搬出するためのワーク搬送用の汎用ロボット31、32(ロボット31が搬入用、ロボット32が搬出用)と、を備えている。検査ステージ11へホイールリム30を搬入・搬出するのに汎用ロボット31、32が用いられ、トランスファーフィーダーによる検査ステージへのホイールリムの搬入・搬出は廃止されている。
【0009】
汎用ロボット31、32は、市販の、6自由度をもつ関節型ロボットである。汎用ロボット31、32の基台は固定であるが、ロボット手首は、ロボットアームが走査できる範囲で自由な位置、姿勢をとり得る。
汎用ロボット31、32の手首には、ロボットハンドとしてのグリップ(グリッパーともいう)が取り付けられ、グリップでワークを把持したり放したりする。
汎用ロボット31、32は制御装置に接続されており、汎用ロボット31、32の作動は制御装置によって制御される。
【0010】
図3では、検査ステージ11が2セット(11A、11B)設けれた場合を示している。ただし、検査ステージ11が1セットだけでもよい。
検査ステージ11が2セットある場合には、搬入用ロボット31が、ワーク供給位置33からワーク30を掴んで検査ステージ11Aに搬入し、ついでつぎのワーク30を掴んで検査ステージ11Bに搬入する。同様に、搬出用ロボット32が、検査ステージ11Aからワーク30を掴んでワーク搬出位置34に搬出し、ついで検査ステージ11Bからつぎのワーク30を掴んでワーク搬出位置34に搬出する。これによって、検出ステージ11にワーク30をパラレルに流すことができ、ライン効率を向上させることができる。
ワーク搬出位置34に搬出されたワーク30は、回転トランスファーでバルブ座面形成ステーション35、バルブ穴開けステーション36、バルブ穴コインステーション37に送られてバルブ穴を開けられ、且つ、コインされ、搬送ローラー38に送り出され、つぎのステーション(ディスク嵌合ステーション)に搬送される。
【0011】
検査ステージ11は、ホイールリム30の溶接部のリークテストを実行するステージであり、リークテストはたとえばヘリウムリークテストである(ただし、ヘリウムリークテスト以外でもよい)。
検査ステージ11は、搬入されたワーク(ホイールリム)30を載せる固定テーブル12と、ワーク30(ホイールリム)を上側から固定する上クランプ機構13を備えている。
【0012】
上クランプ機構13は、ホイールリム30に上方から接近して固定テーブル12との間にホイールリム30を挟持しホイールリム内空間を密閉する上下動蓋14を有する。
上下動蓋14はフレーム16から支持された上下駆動装置17(たとえば、エアシリンダ)の下端に取付けられて、上下動する。上下動蓋14にはホイールリム内空間を真空に引くための真空経路を開閉するバルブ18が取付けられているとともに、ホイールリム内空間を真空から大気圧に戻す経路を開閉するバルブ19が取付けられている。
上下動蓋14の下面には、ホイールリム30の上端と接触してホイールリム内空間をシールするシール材20(たとえば、ウレタンゴムの環状シート)が取付けられている。同様に、固定テーブル12の上面には、ホイールリム30の下端と接触してホイールリム内空間をシールするシール材21(たとえば、ウレタンゴムのシート)が取付けられている。
【0013】
ホイールリム内空間の一部を占める中子15は、上クランプ機構13の上下動蓋14に取り付けられている。中子は15は、ホイールリム内空間の一部を占めることにより、ヘリウムの検出精度を上げるとともに、ホイールリム内空間の真空、大気圧戻しの時間を短縮する。ヘリウムはホイールリムの外部から溶接部に吹き掛けられ、溶接部に欠陥があるとそれを通してホイールリム内部に吸引されるため、それをリークディテクタに導いて検出し欠陥の有無を判定する。
【0014】
図4〜図6は、リークテスト装置においてトランスファーフィーダーによりワークを搬送する比較例を示す。
比較例では、リークテスト装置100が、ワークの搬入ステージ101、アイドルステージ102(ワークの仮置きステージ)、検査ステージ103(リークテスト実行ステージ)、ワークの搬出ステージ104を有しており、ワーク105(ホイールリム)の検査ステージ103への搬入・搬出に専用トランスファーフィーダ106を用いている。
【0015】
専用トランスファーフィーダ106は、第1のフィーダー106A、第2のフィーダー106Bを備えている。第1のフィーダー106Aは、搬入ステージ101に搬入されたワーク105を把持して持ち上げ、ついで水平に移動させてアイドルステージ102に仮置きする。第2のフィーダー106Bは、アイドルステージ102のワーク105を検査ステージ103に搬入すると共に、検査ステージ103のワーク105を搬出ステージ104に搬出し、その後もとの位置にリターンする。専用トランスファーフィーダ106が第1のフィーダー106A、第2のフィーダー106Bを備えていて、第1のフィーダー106Aが上下方向と水平方向に移動し、第2のフィーダー106Bが水平方向に移動するため、リークテスト装置100が水平方向に大きくなり(長くなり)、構造が複雑化する。その結果、装置の設置スペースが大きい。
【0016】
検査ステージ103は、昇降する下テーブル107と、上下動する上クランパー108と、横方向クランパー109と、下テーブル107に固定された中子110を有する。第2のフィーダー106Bがワーク105を水平に移動させる時には、中子110とワーク105とが干渉しないように、中子110を取り付けた下テーブル107は下降している。リークテスト時には、下テーブル107は昇降駆動装置112によって上昇し、下テーブル107と上クランパー108とでワーク105を上下方向から挟んでクランプし、ワーク105内を密閉する。
【0017】
検査ステージ103の部品107、108、109、110およびトランスファーフィーダー106は、トランスファーフィーダーのフレーム111によって囲まれている。
ワーク105のサイズが変わると、トランスファーフィーダー106の搬送高さ、クランパー109の幅の調整(段取り)が必要となり、その段取りをラインを一時停止させて行う。
【0018】
つぎに、本発明のホイールリムのリークテスト装置の作用・効果を説明する。
本発明のホイールリムのリークテスト装置10では、検査ステージ11へのホイールリム30の搬入・搬出手段を、比較例の専用トランスファーフィーダー106から、汎用ロボット31、32に変えたので、リークテスト装置10を比較例装置に比べて小型化、単純化することができる。すなわち、本発明の装置では、比較例の装置に比べて、ワークの搬入ステージ101、アイドルステージ102、ワークの搬出ステージ104が不要となり、装置10を小型化することができる。また、専用トランスファーフィーダー106(106A、106B)も不要となり、かつ、テーブル12を固定テーブルとしたので、下テーブルの昇降装置が不要となり、装置10の構造を単純化することができる。また、ロボット31、32によるワーク搬入・搬出のため、検査ステージ11へのワーク30の位置を高精度に出すことができる。
【0019】
本発明では、検査ステージ11へのホイールリム30の搬入・搬出を汎用ロボット31、32で行うようにしたので、比較例のようにワークのサイズが変わったときに、搬送高さ、クランプ幅の調整(段取り)が必要でなく、汎用ロボット31、32の入力値の選択だけで済むので、装置10の段取りが不要になる。
また、検査ステージ11の周囲から、比較例の専用トランスファーフィーダー106やトランスファーフィーダーのフレーム111がなくなるので、検査ステージ11の構成部品12、13、14、15、17、18、19、20、21へのアクセスが容易になり、メンテナンスが容易である。これに対し、比較例では、検査ステージ103の部品107、108、109、110およびトランスファーフィーダー106は、トランスファーフィーダーのフレーム111によって囲まれているので、部品107、108、109、110およびトランスファーフィーダー106へのアクセスが非容易であり、メンテナンスが困難である。
【0020】
また、下テーブル107側に中子110を取り付けた比較例では、検査ステージ103へのワークの搬入・搬出時に、中子110とワークとの干渉を避けるための、下テーブル107の昇降が必要であるが、本発明のホイールリムのリークテスト装置10では、中子15を、上クランプ機構13の上下動蓋14に取り付けたので、ワーク30を検査ステージ11に横方向から搬入・搬出する際に、下テーブル12の昇降が不要になるため、検査ステージ11へのワーク30の搬入・搬出が容易になり、かつ、比較例の下テーブル107の昇降にかかっていた時間分、時間短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のホイールリムのリークテスト装置の検査ステージの正面図(図3のA−A視図)である。
【図2】本発明のホイールリムのリークテスト装置の検査ステージの側面図である。
【図3】本発明のホイールリムのリークテスト装置の平面図である。
【図4】比較例のホイールリムのリークテスト装置の正面図である。
【図5】比較例のホイールリムのリークテスト装置の側面図である。
【図6】比較例のホイールリムのリークテスト装置の平面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 本発明のホイールリムのリークテスト装置
11 検査ステージ
12 固定(下)テーブル
13 上クランプ機構
14 上下動蓋
15 中子
16 フレーム
17 上下動駆動装置
18、19 バルブ
20、21 シール材
30 ワーク(ホイールリム)
31 (搬入用)汎用ロボット
32 (搬出用)汎用ロボット
33 ワーク供給位置
34 ワーク搬出位置
35 バルブ座面形成ステーション
36 バルブ穴開けステーション
37 バルブ穴コインステーション
38 搬送ローラー
100 比較例のリークテスト装置
101 搬入ステージ
102 アイドルステージ
103 検査ステージ
104 搬出ステージ104
105 ワーク(ホイールリム)
106 専用トランスファーフィーダ
106A 第1のフィーダー
106B 第2のフィーダー
107 下テーブル
108 上クランパー
109 横方向クランパー
110 中子
111 フレーム
112 下テーブル昇降駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査ステージと、検査ステージへホイールリムを搬入・搬出するためのワーク搬送用の汎用ロボットと、を備え、
前記検査ステージは、
固定テーブルと、
ホイールリムに上方から接近して固定テーブルとの間にホイールリムを挟持してホイールリム内空間を密閉する上下動蓋を有する上クランプ機構と、
を備えているホイールリムのリークテスト装置。
【請求項2】
ホイールリム内空間の一部を占める中子を、上クランプ機構の上下動蓋に取り付けた請求項1記載のホイールリムのリークテスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62570(P2006−62570A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248944(P2004−248944)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】