ホウ素化合物を用いて得られる疎水性高分子のナノ構造体
【課題】未修飾の多糖で単層カーボンナノチューブ等の疎水性高分子をラッピングした複合体を連結することによってシート状のナノ構造体に組織化する技術を開発する。
【解決手段】あらかじめ疎水性高分子をβ-1,3-グルカンでラッピングしておき、次いでその多糖間をホウ素化合物(水酸基と反応し得るB(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有する)により架橋・連結することでシート状の構造体を得る。β-1,3-グルカンとしてシゾフィランが効果的に使用される。
【解決手段】あらかじめ疎水性高分子をβ-1,3-グルカンでラッピングしておき、次いでその多糖間をホウ素化合物(水酸基と反応し得るB(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有する)により架橋・連結することでシート状の構造体を得る。β-1,3-グルカンとしてシゾフィランが効果的に使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブや導電性高分子のごとき疎水性高分子をシート状など規則的なナノ構造体(ナノメートルサイズの構造体)に組織化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブや導電性高分子などの疎水性高分子は、規則的な構造体に組織化することにより新たな用途が期待される。例えば、カーボンナノチューブは高いキャリア輸送能を有し、剛直な構造を持つ1次元ナノワイヤーである。それゆえにカーボンナノチューブは分子機械の基礎パーツとして用いるには最適なナノ材料の一つである。しかしながら、カーボンナノチューブは非常に強い凝集性を示し、実際に分子機械としてそれぞれのカーボンナノチューブを規則的に配列させるのは困難を伴う。他にも各種の導電性高分子など高付加価値を有する疎水性高分子は多数あるが、それらの機能を発揮させるためには分散化、薄膜化、シート状、階層化などそれぞれの特性に応じた規則的な形状を具現化することが重要である。
【0003】
これまでに本発明者らは、カーボンナノチューブを天然多糖のシゾフィラン(SPG)と複合化させることに成功している。この研究により、非常に凝集しやすいカーボンナノチューブの凝集を防ぎつつ、単一なファイバーとして安定化させることに成功している。
【非特許文献1】M. Numata, M.Asai, K. Kaneko, T. Hasegawa, K. Sakurai, and S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc.,127, 5875 ( 2005). その成果の発展として、カーボンナノチューブや導電性高分子から成る新規な構造体、例えば、シート状の規則的なナノ構造体の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、天然で得られる多糖と疎水性高分子の複合体を連結することによって、ナノ構造体に組織化する簡易な新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
B(OH)2から成る部位(Bはホウ素原子を表す)がOH基(水酸基)と結合することはよく知られている(非特許文献2−5)。例えば、図1aにはB(OH)2基(ボロン酸基)を有するボロン酸化合物が、糖と混合することによってB(OH)2基とcis位の2つのOH基(ジオール基)との間に脱水反応を起こし、糖とボロン酸の間に共有結合が形成される様子を模式的に示している。また、図1bには、ホウ酸イオンが、やはり糖鎖のグルコースのようなジオールに対してB(OH)2から成る部位が脱水反応を起こして共有結合が形成される様子を模式的に示している(非特許文献6)。
【非特許文献2】Y. Kanekiyo,Y. Ono, K. Inoue, M. Sano, S. Shinkai, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 557(1999).
【非特許文献3】Y. Kanekiyo,K. Inoue, Y. Ono, M. Sano, S. Shinkai, D-N. Reinhoubt, J. Chem. Soc., PerkinTrans. 2, 2719 (1999).
【非特許文献4】L. K. Mohler,A. W. Czarnik, J. Am. Chem. Soc., 115, 2998 (1993).
【非特許文献5】T- D. James,K. R. A. S. Sandanayake, S. Shinkai, Angew. Chem. Int. Ed, 35, 1910 (1996).
【非特許文献6】T. Ishii, H.Ono, carbohydrate research, 2004, volume 321, pp257-260
【0006】
本発明に従えば、分子構造として、水酸基と反応し得るB(OH)2基から成る反応性部位を2つ以上有するホウ素化合物を用いて、疎水性高分子の周りを多糖がらせん状にラッピングした状態の多糖/疎水性高分子複合体を互いに架橋・連結する。すなわち、ホウ素化合物の1つのB(OH)2部位が複合体表面に存在する多糖の2つのOH基(ジオール)と反応するとともに、残りのB(OH)2部位が別の多糖/疎水性高分子複合体の糖のジオールと反応することにより、それらの複合体が架橋・連結されて、多糖/疎水性高分子複合体が2次元的に配列されたシート状のナノ構造体が得られる(図2の模式図参照)。
【発明の効果】
【0007】
本発明により多糖/疎水性高分子複合体を2次元配列させる利点は、多糖に側鎖修飾などを行うことなく簡単な手法で配列させることができる点である。また、シゾフィランに代表される多糖は、導電性高分子など様々な化合物を内部に取り組むことが報告されているが、それらの複合体を二次元的に配列することにより新しい機能性材料の開発にも応用できる可能性を有する。また、架橋剤(ホウ素化合物)を変えることにより用いる架橋剤の分子長に応じて疎水性高分子間の距離の制御も可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において架橋剤として用いられるホウ素化合物の好ましい例は、複数のB(OH)2基を有するボロン酸化合物、特に、一般式:(HO)2B−L−B(OH)2で示されるジボロン酸化合物である。ここで式中リンカーに相当するLは芳香族炭化水素基など種々の基を含む原子団を表す。本発明で使用されるのに特に好適なジボロン酸化合物として、図8に示す1,4−フェニレン-ビス-ボロン酸や図10に示す4,4’−ビフェニル-ジボロン酸が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0009】
さらに、Lに相当する部位に種々の複素環化合物や重合性モノマー/オリゴマーなどの高機能性分子の骨格を導入することにより、ボロン酸化合物が疎水性高分子の架橋材としてだけでなく、包接多糖を経由して疎水性高分子にジボロン酸化合物が有する機能を付与することも可能となる。例えば、図14に示したポルフィリン骨格をもつ化学構造のボロン酸化合物(P-1)〔5,10,15,20−テトラキス(4−ボロニルフェニル)ポルフィリン〕は紫外・可視領域の光吸収能を有し、図18に示したオリゴチオフェン構造をもつジボロン酸化合物(C-1)〔ピリジニウム,4,4’−{2,5−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−1,4−フェニレン}ビス〔1−(ベンジル−4−ボロン酸)メチル〕ブロミド(1:2)〕は架橋後にチオフェン部位を重合させることなどが可能である。
【0010】
本発明において架橋剤として用いられるホウ素化合物には、四ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸などのホウ酸、およびそれらの塩であって、B(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有するものも含まれる。ここで、B(OH)2から成る反応性部位は、上述したようなボロン酸化合物におけるようにそれぞれがB(OH)2基として複数個存在する場合のみならず、共通のホウ素原子を介してB(OH)2部位として複数個形成するものでよい。例えば、図1bに関して既述したように、四ホウ酸ナトリウム(ほう砂)に代表される四ホウ酸塩は、水中で四ホウ酸イオン、すなわち、単一のホウ素原子を介して2つのB(OH)2部位を形成して、それぞれが糖鎖のcis−ジオールと脱水縮合して糖鎖間を架橋・連結するように機能する。このように、四ホウ酸塩は、本発明で用いられるのに好適なホウ素化合物の1例である。
【0011】
本発明で用いられるのに好ましい多糖は、β−1,3−グルカンであり、シゾフィラン、スクレログルカン、レンチナン、パーキマン、グリホラン、カードランなどの慣用名で知られた各種のβ−1,3−グルカンを用いることができる。これらは、主鎖がβ−結合(β−D−結合)により結合したグルカンで、側鎖の頻度が異なる天然の多糖である。このうち、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは側鎖の頻度が33〜40%と適量であり、水溶性で利用し易いことから好ましく、特にシゾフィラン(SPG)は筋肉内注射剤として20年以上の使用実績があり安全性も確認されている点から好適である。
【0012】
本発明の原理は、各種の疎水性高分子を用いてナノ構造体を得るのに適用される。本発明において用いられるのに好ましい疎水性高分子として、カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブ(SWNT)、または導電性高分子、例えば、ポリフェニレンエチニレン(PPE)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンもしくはこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の構造体は、比較的簡便な方法で調製することができる。すなわち、如上の疎水性高分子の溶液(水溶液)に、超音波照射などの強力な混合条件下に、シゾフィラン等のβ−1,3−グルカンの溶液(溶媒としてDMSOなどの極性溶媒を用いる)を添加し、適当時間(例えば、1日間)室温下に静置した後、遠心分離などによって精製することにより、疎水性高分子がβ−1,3−グルカン分子の内部の疎水性空間に取り込まれ、らせん状のβ−1,3−グルカンにラッピングされた状態の複合体が得られる。このようにして、β−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体が形成されることについては本発明者らは既に報告している(非特許文献1,7−9)。このようにして得られた複合体に、如上のホウ素化合物(水溶液)を添加し、室温下に適当時間(例えば7日間)静置することにより、既述のように、ホウ素化合物により多糖(β−1,3−グルカン)の糖鎖間が架橋・連結されて、β−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体が2次元的に配列されたナノ構造体が得られる(後述の実施例参照)。
【非特許文献7】C. Li, M.Numata, M. Takeuti, S. Shinkai, Angew. Chem., 117, 2 (2005)
【非特許文献8】C. Li, M.Numata, T. Hasegawa, K. Sakurai, S. Shinkai, Chem. Lett., 34, 1354 (2005).
【非特許文献9】C. Li, M. Numata, A.-H. Bae, K. Sakurai, S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc.,127, 4548 (2005).
【実施例1】
【0014】
SWNTとSPGの複合化 複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製を行った。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(100μL, 5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min.,8×103rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.77であった。四ホウ酸ナトリウム水溶液(0.5mg/mL, pH=9.31)を加え、7日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した(R-1)。またCUR(カードラン)とSWNTの複合体のTEM観察を行うため、次のようにCUR/SWNT複合体の調製を行った。CUR/DMSO(5mg/mL)100μLを超音波照射しながら精製済みcut-SWNT水溶液( 500μL)に混合した。遠心分離により複合体のみを取り出した。複合体溶液にホウ酸ナトリウム水溶液( pH= 9.81)を加え1日間静置した(R-2〜3)。SPGと四ホウ酸ナトリウム水溶液を混合し、これを室温条件下で静置した溶液もリファレンスとして調製した(R-4〜5)。またモノボロン酸であるパラメチルボロン酸とSPG/SWNTを混合したサンプルも調製した(R-6〜8)。表1に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0015】
【表1】
【実施例2】
【0016】
TEM観察 サンプル溶液をTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図4の観察結果、リファレンス溶液R以外のサンプルからシート状の像が多数確認された。シートを形成しているサンプルの中でも溶液中のホウ酸ナトリウムの量が少ない3に特に秩序良く配列した様なシートが多数見られた(図 4f, 4g)。また、R-1にはSWNTが無秩序に凝集したような像のみが見られた。この結果からSWNT-SPGがホウ酸によってシート状に架橋されている可能性が考えられる。この結果は、3ではSPG側鎖の結合サイトの存在量よりもホウ酸の存在量が少ないため結合サイトに均一にホウ酸が結合しやすくなったためであると考えられる。CUR/SWNT複合体に四ホウ酸ナトリウムを混合したサンプルからはSPG/SWNT複合体に四ホウ酸ナトリウムを混合したサンプルにはほとんど見られなかったSWNTがシートを形成せずに存在するというモルフォロジーが主として確認された(図4i)。また、極くまれにシートを形成しているようなモルフォロジーも確認された。これらの結果からCURの4位と5位の水酸基と相互作用しにくいのではあるが多少は相互作用しているということが考えられる。CURの4, 5位でもジオール化するのかもしれないが、CURの4, 5位ではヒドロキシル基がトランスについているので相互作用しにくく、このような違いが現れたと考えられる。SPGとホウ酸ナトリウムを混合したリファレンスサンプル(R-4〜5)からは観察の結果、シート状のモルフォロジーが確認されたが、どれも折り曲がったような像や1次元状に剛直に配列しているようなモルフォロジーとは言いがたい像が得られた。SPG内にSWNTが存在することによって得られる剛直姓が規則的なシートを形成するために必要であるということが考えられる。モノボロン酸化合物とSPG/SWNTを混合したリファレンス溶液からは、どのサンプルも黒い塊やSWNTがバンドル化したようなモルフォロジーが主として観察された。つまり、モノボロン酸ではシートが確認されず、ジボロン酸化合物ではシートが確認されたことから、糖との結合サイトが2つ以上あることがシート形成で必要であると判明した。
【実施例3】
【0017】
HR-TEM観察 図5の結果から2μm四方以上の大きさのシートが多数確認され、TEM観察で見られていたファイバーが架橋されているような像の回折パターンを観察したところ、広範囲に渡って規則的な回折パターンが見られた。この結果から、ほぼ結晶に近い構造体を形成しているという知見が得られた。また、EDX-TEM観察からシート内に四ホウ酸のカウンターであるナトリウムの存在が確認できた。
【実施例4】
【0018】
SEM観察 次にTEM観察によって最も規則的なシート状の像が確認された各溶液のSEM観察を行い、TEMよりもマクロなモルフォロジーの観察を行った(図6)。各溶液をTEM基盤(支持膜なし)にキャストし、減圧下で乾燥を行った。このサンプルに対するSEM観察からシートが重なっているような像が確認された。このシートは切断SWNTの長さが数百ナノメートルである点とも大きさ的に一致していた。よってSEM観察からも各溶液中においてシートの形成が示された。SEM観察の結果、シート状の像がSWNTを含むどのサンプルからも確認された。SEM観察では大きさが2μm以上のシートが多数見られた。各溶液からシート状のような像が多数確認された。多くは何枚かのシートが重なっていたが、なかには、シートが重なっておらず単独で存在しているような像も見られた。
【実施例5】
【0019】
顕微ラマンスペクトル TEM、SEM観察から観察された大きさが500nm程度のシート内にSWNTが存在することの確認を行うために顕微ラマンスペクトル測定を行った。もしもSWNTが存在するならば、SWNTに由来するGバンドが確認されるはずである。測定サンプルは3をガラス基盤にキャストした。十分に乾燥を行った後、顕微ラマンスペクトル測定を行った。図7の測定の結果、Gバンド由来と思われる1600cm-1付近のピークが確認された。また、200cm-1付近にRBM由来と思われるピークも確認された。この結果から、TEM、SEM観察によって得られたシート状モルフォロジー内にSWNTの存在していることが示された。本研究では、切断SWNTとSPGの複合体に四ボロン酸ナトリウムを加えることにより切断SWNTとSPGの複合体の配列を行った。その結果、TEM、AFM観察によってシート状のモルフォロジーが確認され、ラマンスペクトル測定からSWNT由来のGバンド、RBMのピークが確認された。
【実施例6】
【0020】
ジボロン酸化合物 架橋剤として、四ホウ酸ナトリウムよりも分子長の長いジボロン酸化合物を用いて架橋実験を試みた。SWNTとSPGの複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製を行った。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(50μL, 5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min.,
8×103 rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.07であった。1,4−フェニレン−ビス−ボロン酸水溶液(図8、acetic acid/ sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH= 9.84)を加え、1日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した。表 2に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0021】
【表2】
【0022】
サンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図8の観察の結果、全てのサンプルから大きさが2μm四方以上のシート状の像が確認された。また、シート内にファイバーが配列したような像とモアレ縞が確認された。ただし、サンプル3はキャスト量が少ないためかもしれないが、あまりシートが見られなかった。この結果からSPG/SWNTがホウ酸化合物によってシート状に架橋されているものと考えられる。
【実施例7】
【0023】
溶液の調製 SWNTとSPGの複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製した。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(50μL、5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min., 8×103 rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.07であった。4,4’−ビフェニル-ジ-ボロン酸水溶液(図10、acetic acid/sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH=10.3)を加え、1日間、室温条件下で静置し、ジボロン酸化合物による糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体とホウ酸化合物のモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとしてジボロン酸化合物を含まないサンプル溶液も同時に調製した。表3に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0024】
【表3】
【0025】
生成したサンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図10の観察の結果、全てのサンプルから大きさが2μm四方以上のシート状の像が確認された。また、シート内にファイバーが配列したような像とモアレ縞が確認された。この結果からSPG/SWNTがホウ酸化合物によってシート状に架橋されているものと考えられる。
【実施例8】
【0026】
ジボロン酸化合物によるSPG/PPEの配列 SPG導電性高分子複合体をシート状に配列することは有機ディスプレイなど次世代の電子デバイスの進歩に必要となる。SPG/SWNTの四ホウ酸ナトリウムによる配列の発展として、SPGと複合化させたSPG/PPE複合体を四ホウ酸ナトリウムによって規則的に配列させた(図12)。
【実施例9】
【0027】
溶液の調製 PPEとSPGの複合化、複合体の精製は以下のように行った。1M(to monomer unit)SPG水溶液と1M PPE/DMSO溶液を混合し、水2200μLを加えSPGの巻き戻しを行った。これを室温条件下で一日間静置した。四ホウ酸ナトリウム水溶液(acetic
acid/ sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH=
9.46)を加え、1日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した。表4に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0028】
【表4】
【0029】
サンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図13の観察の結果、全てのサンプルからシート状の像が確認された。この結果からSPG/SWNT-がホウ酸によってシート状に架橋されている可能性が考えられる。切断したSWNTの長さは数百nmであることからすると長さ的にも1つのシートの長さはほぼ理論値と一致しているようである。
【実施例10】
【0030】
溶液の調製 ポルフィリンを分子骨格とする架橋剤5,10,15,20-tetrakis(4-boronylphenyl)
porphine(P-1と略記:図14、合成法:非特許文献10−12)によるSPG/SWNT複合体間の架橋を調べるため、P-1のDMSO溶液( 1 mgmL-1)を調製し、これに炭酸-重炭酸緩衝液(100mM, pH=10.0)を加えた。さらに実施例1で調製したSWNT-SPG複合体水溶液(pH=7.8)を加え、SPG側鎖グルコース間を結合した。表5に溶液の成分量を示した。なお、ボロン酸の有無によるSPGとの相互作用の違いを調べるためにボロン酸を含まないポルフィリンTPPS(5,10,15,20−tetraphenyl−21H,23H−porphine−p,p.,p..,p...-
tetrasulfonic acidtetrasodium salt hydrate)を加えたサンプルも作成した。
【非特許文献10】Arimori,S.; Takeuchi, M.; Shinkai, S. Chem.Lett., 1996, 1, 77,
【非特許文献11】Imada,T.; Murakami, H.; Shinkai, S. Chem. Commun., 1994, 13, 1557,
【非特許文献12】Toi, H.; Nagai, Y.; Aoyama, Y.;Kawabe, H.; Aizawa, K.; Ogoshi, H. Chem. Lett., 1993, 6, 1043.
【0031】
【表5】
【0032】
UV-visおよびCDスペクトル測定 SPGと架橋剤P-1の相互作用を確認するため、SPG間の架橋を実施例1と同じ条件化で行った後、UV-visスペクトルおよびCDスペクトルを
光学パス長:1cm、温度:室温, [P-1]=16.2μM、溶媒:H2O/DMSO
(8914:1(v/v))、pH:9.9の条件で測定した。図15の測定結果から、P−1のソーレー帯極大吸収波長である428 nm付近にSPG-SWNTの量に依存した誘起CDが確認された。この結果から、確かにSPGとP-1は相互作用していることが明らかとなった。
【0033】
TEM観察およびEDX-TEM観察 架橋後のSPG/SWNTファイバーの規則的な配列をモルフォロジーの面から確認するため、調製した溶液のTEM観察を行った。
図16のTEM観察の結果、四ホウ酸ナトリウムを架橋剤として用いたサンプルと同じようにシート状の像が確認され、さらにシート状モルフォロジー内に規則構造を示唆するモアレ縞が観察された。また、HR-TEM観察によってファイバーの規則的な配列が確認され確かにSWNTが配列していることが示唆された。さらに、TEM観察で見られたシート状モルフォロジーにEDX-TEM観察を行ったところ、溶液中に存在する化合物の中で架橋剤P-1のみが含む窒素元素の存在が確認された。このことから確かにシート状モルフォロジー内に架橋剤P-1が存在していることが明らかとなった。
【0034】
架橋剤によって形成されたシート状会合体の偏光顕微鏡観察 P-1によって架橋を行ったサンプル溶液をガラスプレートに滴下し減圧条件下で乾燥を行った後、偏光顕微鏡観察を行った。図17に示す偏光顕微鏡観察の結果、偏光子を挿入した場合にも光学的異方性を持つ会合体が多数観察された。
【実施例11】
【0035】
溶液の調製 ジボロン酸化合物としてPyridinium, 4,4'−{2,5−bis(2,2'−bithiophen−5−yl)−1,4−phenylene}bis [1−(benzyl−4−boronic acid)methyl]−bromide (1:2)(C−1と略記、化学構造:図18、合成参考文献:非特許文献13−15、1H-NMRによる同定:表6)を用いるSPG/SWNT複合体間の架橋を検討するため、C-1/DMSO溶液(0.1mg/mL)を調製し、炭酸−重炭酸緩衝液(100mM, pH= 9.95)を加えた。これに実施例1で調製したSWNT-SPG複合体水溶液を加え、SPG側鎖間の結合を試みた。表7に溶液の成分量を示す。
【非特許文献13】K.Takahashi,T.Nihira, Bull.Chem.Soc.Jpn, 1992, 65, 1855
【非特許文献14】R-M.Chen,T-Y.Lue, Tetrahedron, 1998, 54, 119
【非特許文献15】J.N.Camara,J.T.Suri, F.E.Cappuccio, R.A.Wessling, B.Singaram, Tetrahedron Lett., 2002, 43,1139
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
UV-visおよびCDスペクトル測定 分光学的にSPGとボロン酸が相互作用していることの確認を行った。図19の結果からSPG-SWNTの量に依存した誘起CDが確認された。また、確認された誘起CDは複数の誘起CD同士が重なったような形状であった。現在のところ、単一分子分散状態のC-1およびC-1会合種とSPGとの相互作用により、このような形状のCDスペクトルパターンが得られたものと考えられる。
【0039】
TEM観察 調製した溶液をTEMグリッド(カーボン支持膜なし)にキャストしてTEM観察を行った。図20の結果、C-1を含む全てのサンプルからモアレ縞を示すシート状のモルフォロジーが主として観察された。また、SWNT-SPG複合体を含まないサンプルからはC-1が凝集したような像のみが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
例えば、導電性高分子複合体をシート状に配列することにより、有機ディスプレイなど次世代電子デバイスの材料として期待される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】本発明の原理となるボロン酸化合物の反応特性を示す。
【図1b】本発明の原理となる四ホウ酸イオンの反応特性を示す。
【図2】本発明の概念図を示す。
【図3】ジボロン酸化合物による多糖/SWNTs複合体の架橋概念図を示す。
【図4】ジボロン酸化合物架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図5】ジボロン酸化合物架橋サンプルのHR-TEM像例およびEDX-TEM 観察例を示す。
【図6】ジボロン酸化合物架橋サンプルのSEM像例を示す。
【図7】ジボロン酸化合物架橋サンプルの顕微ラマンスペクトル例を示す。
【図8】1,4-フェニレン-ビス-ボロン酸の構造を示す。
【図9】1,4-フェニレン-ビス-ボロン酸架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図10】4,4’-ビフェニル-ジ-ボロン酸の構造を示す。
【図11】4,4’-ビフェニル-ジ-ボロン酸架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図12】多糖/導電性高分子複合体の架橋概念図を示す。
【図13】多糖/導電性高分子複合体の四ホウ酸ナトリウムによる架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図14】ボロン酸化合物P−1の化学構造を示す。
【図15】P−1架橋SPG/SWNT複合体のa.UV-vis図例, b.CD, c.蛍光スペクトル図例(λex=390nm)を示す。
【図16】P−1架橋SPG/SWNT複合体のa.TEM像例、b.EDXスペクトル図例を示す。
【図17】P−1架橋SPG/SWNT複合体の偏光顕微鏡像例(a.偏光子なし、b. 偏光子あり)を示す。
【図18】ジボロン酸化合物C-1の化学構造を示す。
【図19】C−1架橋SPG/SWNT複合体のa.CDスペクトル図例、b. UV-vis,スペクトル図例を示す。
【図20】C−1架橋SPG/SWNT複合体のTEM像例を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブや導電性高分子のごとき疎水性高分子をシート状など規則的なナノ構造体(ナノメートルサイズの構造体)に組織化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブや導電性高分子などの疎水性高分子は、規則的な構造体に組織化することにより新たな用途が期待される。例えば、カーボンナノチューブは高いキャリア輸送能を有し、剛直な構造を持つ1次元ナノワイヤーである。それゆえにカーボンナノチューブは分子機械の基礎パーツとして用いるには最適なナノ材料の一つである。しかしながら、カーボンナノチューブは非常に強い凝集性を示し、実際に分子機械としてそれぞれのカーボンナノチューブを規則的に配列させるのは困難を伴う。他にも各種の導電性高分子など高付加価値を有する疎水性高分子は多数あるが、それらの機能を発揮させるためには分散化、薄膜化、シート状、階層化などそれぞれの特性に応じた規則的な形状を具現化することが重要である。
【0003】
これまでに本発明者らは、カーボンナノチューブを天然多糖のシゾフィラン(SPG)と複合化させることに成功している。この研究により、非常に凝集しやすいカーボンナノチューブの凝集を防ぎつつ、単一なファイバーとして安定化させることに成功している。
【非特許文献1】M. Numata, M.Asai, K. Kaneko, T. Hasegawa, K. Sakurai, and S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc.,127, 5875 ( 2005). その成果の発展として、カーボンナノチューブや導電性高分子から成る新規な構造体、例えば、シート状の規則的なナノ構造体の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、天然で得られる多糖と疎水性高分子の複合体を連結することによって、ナノ構造体に組織化する簡易な新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
B(OH)2から成る部位(Bはホウ素原子を表す)がOH基(水酸基)と結合することはよく知られている(非特許文献2−5)。例えば、図1aにはB(OH)2基(ボロン酸基)を有するボロン酸化合物が、糖と混合することによってB(OH)2基とcis位の2つのOH基(ジオール基)との間に脱水反応を起こし、糖とボロン酸の間に共有結合が形成される様子を模式的に示している。また、図1bには、ホウ酸イオンが、やはり糖鎖のグルコースのようなジオールに対してB(OH)2から成る部位が脱水反応を起こして共有結合が形成される様子を模式的に示している(非特許文献6)。
【非特許文献2】Y. Kanekiyo,Y. Ono, K. Inoue, M. Sano, S. Shinkai, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 557(1999).
【非特許文献3】Y. Kanekiyo,K. Inoue, Y. Ono, M. Sano, S. Shinkai, D-N. Reinhoubt, J. Chem. Soc., PerkinTrans. 2, 2719 (1999).
【非特許文献4】L. K. Mohler,A. W. Czarnik, J. Am. Chem. Soc., 115, 2998 (1993).
【非特許文献5】T- D. James,K. R. A. S. Sandanayake, S. Shinkai, Angew. Chem. Int. Ed, 35, 1910 (1996).
【非特許文献6】T. Ishii, H.Ono, carbohydrate research, 2004, volume 321, pp257-260
【0006】
本発明に従えば、分子構造として、水酸基と反応し得るB(OH)2基から成る反応性部位を2つ以上有するホウ素化合物を用いて、疎水性高分子の周りを多糖がらせん状にラッピングした状態の多糖/疎水性高分子複合体を互いに架橋・連結する。すなわち、ホウ素化合物の1つのB(OH)2部位が複合体表面に存在する多糖の2つのOH基(ジオール)と反応するとともに、残りのB(OH)2部位が別の多糖/疎水性高分子複合体の糖のジオールと反応することにより、それらの複合体が架橋・連結されて、多糖/疎水性高分子複合体が2次元的に配列されたシート状のナノ構造体が得られる(図2の模式図参照)。
【発明の効果】
【0007】
本発明により多糖/疎水性高分子複合体を2次元配列させる利点は、多糖に側鎖修飾などを行うことなく簡単な手法で配列させることができる点である。また、シゾフィランに代表される多糖は、導電性高分子など様々な化合物を内部に取り組むことが報告されているが、それらの複合体を二次元的に配列することにより新しい機能性材料の開発にも応用できる可能性を有する。また、架橋剤(ホウ素化合物)を変えることにより用いる架橋剤の分子長に応じて疎水性高分子間の距離の制御も可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において架橋剤として用いられるホウ素化合物の好ましい例は、複数のB(OH)2基を有するボロン酸化合物、特に、一般式:(HO)2B−L−B(OH)2で示されるジボロン酸化合物である。ここで式中リンカーに相当するLは芳香族炭化水素基など種々の基を含む原子団を表す。本発明で使用されるのに特に好適なジボロン酸化合物として、図8に示す1,4−フェニレン-ビス-ボロン酸や図10に示す4,4’−ビフェニル-ジボロン酸が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0009】
さらに、Lに相当する部位に種々の複素環化合物や重合性モノマー/オリゴマーなどの高機能性分子の骨格を導入することにより、ボロン酸化合物が疎水性高分子の架橋材としてだけでなく、包接多糖を経由して疎水性高分子にジボロン酸化合物が有する機能を付与することも可能となる。例えば、図14に示したポルフィリン骨格をもつ化学構造のボロン酸化合物(P-1)〔5,10,15,20−テトラキス(4−ボロニルフェニル)ポルフィリン〕は紫外・可視領域の光吸収能を有し、図18に示したオリゴチオフェン構造をもつジボロン酸化合物(C-1)〔ピリジニウム,4,4’−{2,5−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−1,4−フェニレン}ビス〔1−(ベンジル−4−ボロン酸)メチル〕ブロミド(1:2)〕は架橋後にチオフェン部位を重合させることなどが可能である。
【0010】
本発明において架橋剤として用いられるホウ素化合物には、四ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸などのホウ酸、およびそれらの塩であって、B(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有するものも含まれる。ここで、B(OH)2から成る反応性部位は、上述したようなボロン酸化合物におけるようにそれぞれがB(OH)2基として複数個存在する場合のみならず、共通のホウ素原子を介してB(OH)2部位として複数個形成するものでよい。例えば、図1bに関して既述したように、四ホウ酸ナトリウム(ほう砂)に代表される四ホウ酸塩は、水中で四ホウ酸イオン、すなわち、単一のホウ素原子を介して2つのB(OH)2部位を形成して、それぞれが糖鎖のcis−ジオールと脱水縮合して糖鎖間を架橋・連結するように機能する。このように、四ホウ酸塩は、本発明で用いられるのに好適なホウ素化合物の1例である。
【0011】
本発明で用いられるのに好ましい多糖は、β−1,3−グルカンであり、シゾフィラン、スクレログルカン、レンチナン、パーキマン、グリホラン、カードランなどの慣用名で知られた各種のβ−1,3−グルカンを用いることができる。これらは、主鎖がβ−結合(β−D−結合)により結合したグルカンで、側鎖の頻度が異なる天然の多糖である。このうち、シゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは側鎖の頻度が33〜40%と適量であり、水溶性で利用し易いことから好ましく、特にシゾフィラン(SPG)は筋肉内注射剤として20年以上の使用実績があり安全性も確認されている点から好適である。
【0012】
本発明の原理は、各種の疎水性高分子を用いてナノ構造体を得るのに適用される。本発明において用いられるのに好ましい疎水性高分子として、カーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブ(SWNT)、または導電性高分子、例えば、ポリフェニレンエチニレン(PPE)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンもしくはこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の構造体は、比較的簡便な方法で調製することができる。すなわち、如上の疎水性高分子の溶液(水溶液)に、超音波照射などの強力な混合条件下に、シゾフィラン等のβ−1,3−グルカンの溶液(溶媒としてDMSOなどの極性溶媒を用いる)を添加し、適当時間(例えば、1日間)室温下に静置した後、遠心分離などによって精製することにより、疎水性高分子がβ−1,3−グルカン分子の内部の疎水性空間に取り込まれ、らせん状のβ−1,3−グルカンにラッピングされた状態の複合体が得られる。このようにして、β−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体が形成されることについては本発明者らは既に報告している(非特許文献1,7−9)。このようにして得られた複合体に、如上のホウ素化合物(水溶液)を添加し、室温下に適当時間(例えば7日間)静置することにより、既述のように、ホウ素化合物により多糖(β−1,3−グルカン)の糖鎖間が架橋・連結されて、β−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体が2次元的に配列されたナノ構造体が得られる(後述の実施例参照)。
【非特許文献7】C. Li, M.Numata, M. Takeuti, S. Shinkai, Angew. Chem., 117, 2 (2005)
【非特許文献8】C. Li, M.Numata, T. Hasegawa, K. Sakurai, S. Shinkai, Chem. Lett., 34, 1354 (2005).
【非特許文献9】C. Li, M. Numata, A.-H. Bae, K. Sakurai, S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc.,127, 4548 (2005).
【実施例1】
【0014】
SWNTとSPGの複合化 複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製を行った。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(100μL, 5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min.,8×103rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.77であった。四ホウ酸ナトリウム水溶液(0.5mg/mL, pH=9.31)を加え、7日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した(R-1)。またCUR(カードラン)とSWNTの複合体のTEM観察を行うため、次のようにCUR/SWNT複合体の調製を行った。CUR/DMSO(5mg/mL)100μLを超音波照射しながら精製済みcut-SWNT水溶液( 500μL)に混合した。遠心分離により複合体のみを取り出した。複合体溶液にホウ酸ナトリウム水溶液( pH= 9.81)を加え1日間静置した(R-2〜3)。SPGと四ホウ酸ナトリウム水溶液を混合し、これを室温条件下で静置した溶液もリファレンスとして調製した(R-4〜5)。またモノボロン酸であるパラメチルボロン酸とSPG/SWNTを混合したサンプルも調製した(R-6〜8)。表1に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0015】
【表1】
【実施例2】
【0016】
TEM観察 サンプル溶液をTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図4の観察結果、リファレンス溶液R以外のサンプルからシート状の像が多数確認された。シートを形成しているサンプルの中でも溶液中のホウ酸ナトリウムの量が少ない3に特に秩序良く配列した様なシートが多数見られた(図 4f, 4g)。また、R-1にはSWNTが無秩序に凝集したような像のみが見られた。この結果からSWNT-SPGがホウ酸によってシート状に架橋されている可能性が考えられる。この結果は、3ではSPG側鎖の結合サイトの存在量よりもホウ酸の存在量が少ないため結合サイトに均一にホウ酸が結合しやすくなったためであると考えられる。CUR/SWNT複合体に四ホウ酸ナトリウムを混合したサンプルからはSPG/SWNT複合体に四ホウ酸ナトリウムを混合したサンプルにはほとんど見られなかったSWNTがシートを形成せずに存在するというモルフォロジーが主として確認された(図4i)。また、極くまれにシートを形成しているようなモルフォロジーも確認された。これらの結果からCURの4位と5位の水酸基と相互作用しにくいのではあるが多少は相互作用しているということが考えられる。CURの4, 5位でもジオール化するのかもしれないが、CURの4, 5位ではヒドロキシル基がトランスについているので相互作用しにくく、このような違いが現れたと考えられる。SPGとホウ酸ナトリウムを混合したリファレンスサンプル(R-4〜5)からは観察の結果、シート状のモルフォロジーが確認されたが、どれも折り曲がったような像や1次元状に剛直に配列しているようなモルフォロジーとは言いがたい像が得られた。SPG内にSWNTが存在することによって得られる剛直姓が規則的なシートを形成するために必要であるということが考えられる。モノボロン酸化合物とSPG/SWNTを混合したリファレンス溶液からは、どのサンプルも黒い塊やSWNTがバンドル化したようなモルフォロジーが主として観察された。つまり、モノボロン酸ではシートが確認されず、ジボロン酸化合物ではシートが確認されたことから、糖との結合サイトが2つ以上あることがシート形成で必要であると判明した。
【実施例3】
【0017】
HR-TEM観察 図5の結果から2μm四方以上の大きさのシートが多数確認され、TEM観察で見られていたファイバーが架橋されているような像の回折パターンを観察したところ、広範囲に渡って規則的な回折パターンが見られた。この結果から、ほぼ結晶に近い構造体を形成しているという知見が得られた。また、EDX-TEM観察からシート内に四ホウ酸のカウンターであるナトリウムの存在が確認できた。
【実施例4】
【0018】
SEM観察 次にTEM観察によって最も規則的なシート状の像が確認された各溶液のSEM観察を行い、TEMよりもマクロなモルフォロジーの観察を行った(図6)。各溶液をTEM基盤(支持膜なし)にキャストし、減圧下で乾燥を行った。このサンプルに対するSEM観察からシートが重なっているような像が確認された。このシートは切断SWNTの長さが数百ナノメートルである点とも大きさ的に一致していた。よってSEM観察からも各溶液中においてシートの形成が示された。SEM観察の結果、シート状の像がSWNTを含むどのサンプルからも確認された。SEM観察では大きさが2μm以上のシートが多数見られた。各溶液からシート状のような像が多数確認された。多くは何枚かのシートが重なっていたが、なかには、シートが重なっておらず単独で存在しているような像も見られた。
【実施例5】
【0019】
顕微ラマンスペクトル TEM、SEM観察から観察された大きさが500nm程度のシート内にSWNTが存在することの確認を行うために顕微ラマンスペクトル測定を行った。もしもSWNTが存在するならば、SWNTに由来するGバンドが確認されるはずである。測定サンプルは3をガラス基盤にキャストした。十分に乾燥を行った後、顕微ラマンスペクトル測定を行った。図7の測定の結果、Gバンド由来と思われる1600cm-1付近のピークが確認された。また、200cm-1付近にRBM由来と思われるピークも確認された。この結果から、TEM、SEM観察によって得られたシート状モルフォロジー内にSWNTの存在していることが示された。本研究では、切断SWNTとSPGの複合体に四ボロン酸ナトリウムを加えることにより切断SWNTとSPGの複合体の配列を行った。その結果、TEM、AFM観察によってシート状のモルフォロジーが確認され、ラマンスペクトル測定からSWNT由来のGバンド、RBMのピークが確認された。
【実施例6】
【0020】
ジボロン酸化合物 架橋剤として、四ホウ酸ナトリウムよりも分子長の長いジボロン酸化合物を用いて架橋実験を試みた。SWNTとSPGの複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製を行った。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(50μL, 5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min.,
8×103 rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.07であった。1,4−フェニレン−ビス−ボロン酸水溶液(図8、acetic acid/ sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH= 9.84)を加え、1日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した。表 2に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0021】
【表2】
【0022】
サンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図8の観察の結果、全てのサンプルから大きさが2μm四方以上のシート状の像が確認された。また、シート内にファイバーが配列したような像とモアレ縞が確認された。ただし、サンプル3はキャスト量が少ないためかもしれないが、あまりシートが見られなかった。この結果からSPG/SWNTがホウ酸化合物によってシート状に架橋されているものと考えられる。
【実施例7】
【0023】
溶液の調製 SWNTとSPGの複合体は遠心分離(1500rpm, 60min.)によって精製した。SWNT/H2O(500μL)に対し、超音波照射を行いながらSPG/DMSO(50μL、5mg/mL)を一気に加えた。これを室温条件下で一日間静置した。上澄み溶液を取り出し、遠心分離(60min., 8×103 rpm)にて複合体を沈殿させ、上澄み溶液を取り除き、再び水に再分散させるという操作を3回行い、複合体のみを取り出した。なおこの時の複合体水溶液のpHは7.07であった。4,4’−ビフェニル-ジ-ボロン酸水溶液(図10、acetic acid/sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH=10.3)を加え、1日間、室温条件下で静置し、ジボロン酸化合物による糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体とホウ酸化合物のモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとしてジボロン酸化合物を含まないサンプル溶液も同時に調製した。表3に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0024】
【表3】
【0025】
生成したサンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図10の観察の結果、全てのサンプルから大きさが2μm四方以上のシート状の像が確認された。また、シート内にファイバーが配列したような像とモアレ縞が確認された。この結果からSPG/SWNTがホウ酸化合物によってシート状に架橋されているものと考えられる。
【実施例8】
【0026】
ジボロン酸化合物によるSPG/PPEの配列 SPG導電性高分子複合体をシート状に配列することは有機ディスプレイなど次世代の電子デバイスの進歩に必要となる。SPG/SWNTの四ホウ酸ナトリウムによる配列の発展として、SPGと複合化させたSPG/PPE複合体を四ホウ酸ナトリウムによって規則的に配列させた(図12)。
【実施例9】
【0027】
溶液の調製 PPEとSPGの複合化、複合体の精製は以下のように行った。1M(to monomer unit)SPG水溶液と1M PPE/DMSO溶液を混合し、水2200μLを加えSPGの巻き戻しを行った。これを室温条件下で一日間静置した。四ホウ酸ナトリウム水溶液(acetic
acid/ sodium acetate buffer)(0.5mg/mL, pH=
9.46)を加え、1日間、室温条件下で静置し、四ホウ酸ナトリウムによる糖鎖間の架橋を試みた。また、SPG/SWNT複合体と四ホウ酸ナトリウムのモル比の異なる3種類のサンプルを調製した。リファレンスとして四ホウ酸ナトリウムを含まないサンプル溶液も同時に調製した。表4に調製した溶液中の各成分量を記す。
【0028】
【表4】
【0029】
サンプル溶液の上澄みをTEMグリッド(支持膜なし)にキャストし減圧乾燥後、TEM観察を行った。図13の観察の結果、全てのサンプルからシート状の像が確認された。この結果からSPG/SWNT-がホウ酸によってシート状に架橋されている可能性が考えられる。切断したSWNTの長さは数百nmであることからすると長さ的にも1つのシートの長さはほぼ理論値と一致しているようである。
【実施例10】
【0030】
溶液の調製 ポルフィリンを分子骨格とする架橋剤5,10,15,20-tetrakis(4-boronylphenyl)
porphine(P-1と略記:図14、合成法:非特許文献10−12)によるSPG/SWNT複合体間の架橋を調べるため、P-1のDMSO溶液( 1 mgmL-1)を調製し、これに炭酸-重炭酸緩衝液(100mM, pH=10.0)を加えた。さらに実施例1で調製したSWNT-SPG複合体水溶液(pH=7.8)を加え、SPG側鎖グルコース間を結合した。表5に溶液の成分量を示した。なお、ボロン酸の有無によるSPGとの相互作用の違いを調べるためにボロン酸を含まないポルフィリンTPPS(5,10,15,20−tetraphenyl−21H,23H−porphine−p,p.,p..,p...-
tetrasulfonic acidtetrasodium salt hydrate)を加えたサンプルも作成した。
【非特許文献10】Arimori,S.; Takeuchi, M.; Shinkai, S. Chem.Lett., 1996, 1, 77,
【非特許文献11】Imada,T.; Murakami, H.; Shinkai, S. Chem. Commun., 1994, 13, 1557,
【非特許文献12】Toi, H.; Nagai, Y.; Aoyama, Y.;Kawabe, H.; Aizawa, K.; Ogoshi, H. Chem. Lett., 1993, 6, 1043.
【0031】
【表5】
【0032】
UV-visおよびCDスペクトル測定 SPGと架橋剤P-1の相互作用を確認するため、SPG間の架橋を実施例1と同じ条件化で行った後、UV-visスペクトルおよびCDスペクトルを
光学パス長:1cm、温度:室温, [P-1]=16.2μM、溶媒:H2O/DMSO
(8914:1(v/v))、pH:9.9の条件で測定した。図15の測定結果から、P−1のソーレー帯極大吸収波長である428 nm付近にSPG-SWNTの量に依存した誘起CDが確認された。この結果から、確かにSPGとP-1は相互作用していることが明らかとなった。
【0033】
TEM観察およびEDX-TEM観察 架橋後のSPG/SWNTファイバーの規則的な配列をモルフォロジーの面から確認するため、調製した溶液のTEM観察を行った。
図16のTEM観察の結果、四ホウ酸ナトリウムを架橋剤として用いたサンプルと同じようにシート状の像が確認され、さらにシート状モルフォロジー内に規則構造を示唆するモアレ縞が観察された。また、HR-TEM観察によってファイバーの規則的な配列が確認され確かにSWNTが配列していることが示唆された。さらに、TEM観察で見られたシート状モルフォロジーにEDX-TEM観察を行ったところ、溶液中に存在する化合物の中で架橋剤P-1のみが含む窒素元素の存在が確認された。このことから確かにシート状モルフォロジー内に架橋剤P-1が存在していることが明らかとなった。
【0034】
架橋剤によって形成されたシート状会合体の偏光顕微鏡観察 P-1によって架橋を行ったサンプル溶液をガラスプレートに滴下し減圧条件下で乾燥を行った後、偏光顕微鏡観察を行った。図17に示す偏光顕微鏡観察の結果、偏光子を挿入した場合にも光学的異方性を持つ会合体が多数観察された。
【実施例11】
【0035】
溶液の調製 ジボロン酸化合物としてPyridinium, 4,4'−{2,5−bis(2,2'−bithiophen−5−yl)−1,4−phenylene}bis [1−(benzyl−4−boronic acid)methyl]−bromide (1:2)(C−1と略記、化学構造:図18、合成参考文献:非特許文献13−15、1H-NMRによる同定:表6)を用いるSPG/SWNT複合体間の架橋を検討するため、C-1/DMSO溶液(0.1mg/mL)を調製し、炭酸−重炭酸緩衝液(100mM, pH= 9.95)を加えた。これに実施例1で調製したSWNT-SPG複合体水溶液を加え、SPG側鎖間の結合を試みた。表7に溶液の成分量を示す。
【非特許文献13】K.Takahashi,T.Nihira, Bull.Chem.Soc.Jpn, 1992, 65, 1855
【非特許文献14】R-M.Chen,T-Y.Lue, Tetrahedron, 1998, 54, 119
【非特許文献15】J.N.Camara,J.T.Suri, F.E.Cappuccio, R.A.Wessling, B.Singaram, Tetrahedron Lett., 2002, 43,1139
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
UV-visおよびCDスペクトル測定 分光学的にSPGとボロン酸が相互作用していることの確認を行った。図19の結果からSPG-SWNTの量に依存した誘起CDが確認された。また、確認された誘起CDは複数の誘起CD同士が重なったような形状であった。現在のところ、単一分子分散状態のC-1およびC-1会合種とSPGとの相互作用により、このような形状のCDスペクトルパターンが得られたものと考えられる。
【0039】
TEM観察 調製した溶液をTEMグリッド(カーボン支持膜なし)にキャストしてTEM観察を行った。図20の結果、C-1を含む全てのサンプルからモアレ縞を示すシート状のモルフォロジーが主として観察された。また、SWNT-SPG複合体を含まないサンプルからはC-1が凝集したような像のみが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
例えば、導電性高分子複合体をシート状に配列することにより、有機ディスプレイなど次世代電子デバイスの材料として期待される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】本発明の原理となるボロン酸化合物の反応特性を示す。
【図1b】本発明の原理となる四ホウ酸イオンの反応特性を示す。
【図2】本発明の概念図を示す。
【図3】ジボロン酸化合物による多糖/SWNTs複合体の架橋概念図を示す。
【図4】ジボロン酸化合物架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図5】ジボロン酸化合物架橋サンプルのHR-TEM像例およびEDX-TEM 観察例を示す。
【図6】ジボロン酸化合物架橋サンプルのSEM像例を示す。
【図7】ジボロン酸化合物架橋サンプルの顕微ラマンスペクトル例を示す。
【図8】1,4-フェニレン-ビス-ボロン酸の構造を示す。
【図9】1,4-フェニレン-ビス-ボロン酸架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図10】4,4’-ビフェニル-ジ-ボロン酸の構造を示す。
【図11】4,4’-ビフェニル-ジ-ボロン酸架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図12】多糖/導電性高分子複合体の架橋概念図を示す。
【図13】多糖/導電性高分子複合体の四ホウ酸ナトリウムによる架橋サンプルのTEM像例を示す。
【図14】ボロン酸化合物P−1の化学構造を示す。
【図15】P−1架橋SPG/SWNT複合体のa.UV-vis図例, b.CD, c.蛍光スペクトル図例(λex=390nm)を示す。
【図16】P−1架橋SPG/SWNT複合体のa.TEM像例、b.EDXスペクトル図例を示す。
【図17】P−1架橋SPG/SWNT複合体の偏光顕微鏡像例(a.偏光子なし、b. 偏光子あり)を示す。
【図18】ジボロン酸化合物C-1の化学構造を示す。
【図19】C−1架橋SPG/SWNT複合体のa.CDスペクトル図例、b. UV-vis,スペクトル図例を示す。
【図20】C−1架橋SPG/SWNT複合体のTEM像例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基と反応し得るB(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有するホウ素化合物によりβ−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体を架橋して成ることを特徴とするナノ構造体。
【請求項2】
疎水性高分子が単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項3】
疎水性高分子が導電性高分子であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項4】
β−1,3−グルカンがシゾフィランであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項5】
ホウ素化合物が四ホウ酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項6】
ホウ素化合物が1,4−フェニレン−ビス−ボロン酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項7】
ホウ素化合物が4,4’−ビフェニル−ジ−ボロン酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項8】
ホウ素化合物が5,10,15,20−テトラキス(4−ボロニルフェニル)ポルフィリンであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項9】
ホウ素化合物がピリジニウム,4,4’−{2,5−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−1,4−フェニレン}ビス[1−(ベンジル−4−ボロン酸)メチル]−ブロミド(1:2)であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項1】
水酸基と反応し得るB(OH)2から成る反応性部位を2つ以上有するホウ素化合物によりβ−1,3−グルカン/疎水性高分子複合体を架橋して成ることを特徴とするナノ構造体。
【請求項2】
疎水性高分子が単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項3】
疎水性高分子が導電性高分子であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項4】
β−1,3−グルカンがシゾフィランであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項5】
ホウ素化合物が四ホウ酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項6】
ホウ素化合物が1,4−フェニレン−ビス−ボロン酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項7】
ホウ素化合物が4,4’−ビフェニル−ジ−ボロン酸塩であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項8】
ホウ素化合物が5,10,15,20−テトラキス(4−ボロニルフェニル)ポルフィリンであることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【請求項9】
ホウ素化合物がピリジニウム,4,4’−{2,5−ビス(2,2’−ビチオフェン−5−イル)−1,4−フェニレン}ビス[1−(ベンジル−4−ボロン酸)メチル]−ブロミド(1:2)であることを特徴とする請求項1のナノ構造体。
【図1a】
【図1b】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図20】
【図1b】
【図8】
【図10】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図20】
【公開番号】特開2008−254165(P2008−254165A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59269(P2008−59269)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
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