説明

ホスフィチル化方法

活性化物質の存在下におけるホスフィチル化剤でのアルコールまたはチオールのホスフィチル化方法を提供する。該活性化物質は、式1(式中、pは、0または1〜4の整数であり、各々の場合のRは置換基である)を有する。好ましくは、X7はOであり、pは0である。該活性化物質を、一般的には、有機塩基との塩錯体として用いる。好ましいアルコールまたはチオールには、ヌクレオシドおよびオリゴヌクレオチドが含まれる。該方法は、特に、ホスホロアミダイトの合成に適している。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、アルコールまたはチオールのホスフィチル化(phosphitylation)、特に、ヌクレオシドホスホロアミダイトを形成するためのヌクレオシドのホスフィチル化の方法に関する。
【0002】
合成オリゴヌクレオチドは、遺伝的疾患およびウイルス疾患の検出に重要な診断用手段である。更に、オリゴヌクレオチドおよび修飾オリゴヌクレオチドは、遺伝子発現またはタンパク質機能を阻害する治療的候補として興味がもたれている。サイトメガロウイルス(CMV)の処置用のオリゴヌクレオチド類似体のFDA承認、およびいくつか他のオリゴヌクレオチド類似体が現在臨床試験中であるので、治療的候補として用いるためのオリゴヌクレオチドの大規模合成は、ますます重要になってきている。各々の臨床試験には、キログラム量の精製オリゴヌクレオチド類似体が必要である。
【0003】
オリゴヌクレオチドの製造に現在用いられている主な方法は、ホスホロアミダイトアプローチである。一層多量のオリゴヌクレオチドへの増加する需要は、対応して、ホスホロアミダイト化合物への需要を増加させている。ホスホロアミダイト化合物は、一般的には、活性化物質の存在下におけるホスフィチル化剤でのヌクレオシドのホスフィチル化によって製造される。最も一般的に用いられる活性化物質は、求核的活性化物質1H−テトラゾールである。しかしながら、1H−テトラゾールは爆発性であるので、大規模合成で用いるには危険でありうる。
【0004】
オリゴヌクレオチドを診断的および治療的使用に一層容易に利用可能にするためには、ホスフィチル化を促進し、副生成物を増加させることなく用いることができる非爆発性活性化物質が必要である。
【0005】
本発明により、活性化物質の存在下におけるホスフィチル化剤でのアルコールまたはチオールのホスフィチル化方法であって、該活性化物質が式1を有することを特徴とする方法を提供する。
【0006】
【化1】

【0007】
式1において、pは、0または1〜4の整数である。各々の場合のRは、置換基、好ましくは、各々独立して、ハロ、置換されたまたは未置換の脂肪族基、−NR12、−OR3、−OC(O)R3、−C(O)OR3、シアノ、置換されたまたは未置換のアリール、置換されたまたは未置換のヘテロ環、−CHO、−COR3、−NHCOR3、置換されたまたは未置換のアラルキル、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフルオロメチルおよびトリクロロメチル)または−SR3である。好ましくは、Rは、ハロ、置換されたまたは未置換の脂肪族基、−NR12、−OR3、−OC(O)R3、−C(O)OR3またはシアノである。或いは、2個の隣接したR基は、それらが結合している炭素原子と一緒に、6員の飽和環または不飽和環、好ましくは、芳香環を形成する。R1およびR2は、各々独立して、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアリール基、置換されたまたは未置換のアラルキル基であり;またはそれらが結合している窒素と一緒に、ヘテロ環基を形成する。R3は、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアリール基、または置換されたまたは未置換のアラルキル基である。Xは、OまたはSである。好ましくは、XはOである。XがOであり、pが0であるのが、特に好適である。
【0008】
好ましくは、式1の化合物は、有機塩基との塩錯体として用いられる。
多くの態様において、アルコールまたはチオールは、フリーのヒドロキシ基またはチオール基を含むヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドであり、それには、ヘキソースのような、天然のヌクレオシドペントース類および非天然のヌクレオシド糖類を含むヌクレオシドおよびオリゴヌクレオチドが含まれる。アルコールまたはチオールが、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである場合、それは、しばしば、保護されたデオキシリボヌクレオシド、保護されたリボヌクレオシド、保護されたオリゴデオキシリボヌクレオチド、保護されたオリゴリボヌクレオチド、または、デオキシリボヌクレオチド部分とリボヌクレオチド部分の混合体を有する保護されたオリゴヌクレオチドであり、そして、各々は、フリーの3’−または5’−、好ましくは3’−ヒドロキシ基またはチオール基、特に好ましくは3’−ヒドロキシ基を、有している。
【0009】
本発明の方法によってホスフィチル化することができるアルコールおよびチオールには、式2
【0010】
【化2】

【0011】
を有する化合物が含まる。ここで、Aは、
【0012】
【化3】

【0013】
であり、ここにおいて、各々の場合のX1は、独立して、−O−または−S−である。好ましくは、X1は、全ての場合に−O−である。各々の場合のX2は、独立して、−O−、−S−、−CH2−または−(CH22−である。好ましくは、X2は、全ての場合に−O−である。各々の場合のX3は、独立して、OまたはSである。より好ましい態様において、X1およびX2は各々、全ての場合に−O−である。R4は、アルコール保護基またはチオール保護基である。好ましくは、R4は、酸に不安定な保護基である。各々の場合のR5は、独立して、−H、−F、−OR6、−NR78、−SR9、またはメチルまたはアリルなどの置換されたまたは未置換の脂肪族基である。各々の場合のR10は、独立して、リン保護基、一般的には、オリゴヌクレオチド合成に用いられる開裂可能なリン保護基、好ましくは、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアリール基、または置換されたまたは未置換のアラルキル基であって、式−CH2CH2CN、−CH2CH2CN、−CH2CH2−Si(CH3265、−CH2CH2−S(O)2−CH2CH3、−CH2CH2−C64−NO2、−CH2CH2−Si(CH3265、−CH2CH2−S(O)2−CH2CH3または−CH2CH2−C64−NO2のような基である。各々の場合のR6は、独立して、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基(例えば、メチル、エチル、メトキシエチルまたはアリル)、置換されたまたは未置換のアリール基、置換されたまたは未置換のアラルキル基、アルコール保護基、特に、塩基に不安定な基またはシリル保護基、または−(CH2q−NR1112である。各々の場合のR7およびR8は、各々独立して、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、またはアミン保護基である。或いは、それらが結合している窒素と一緒になったR7およびR8は、ヘテロ環基である。各々の場合のR9は、独立して、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、またはチオール保護基である。R11およびR12は、各々独立して、−H、置換されたまたは未置換のアリール基、置換されたまたは未置換のヘテロアリール基、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアラルキル基、置換されたまたは未置換のヘテロアラルキル基、またはアミン保護基である。或いは、それらが結合している窒素と一緒になったR11およびR12は、ヘテロ環基を形成する。qは、1〜約6の整数である。sは、0または正の整数である。好ましくは、sは、0、1または2、最も好ましくは、0である。Bは、各々独立して、−H、天然のまたは非天然の核酸塩基、保護された核酸塩基、保護された天然のまたは非天然の核酸塩基、ヘテロ環または保護されたヘテロ環である。
【0014】
ヌクレオシド塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルのような天然に存在する塩基、および7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、5−プロピニルシトシン、5−プロピニルウラシル、7−デアザアデニン、7−デアザ−8−アザアデニン、7−デアザ−6−オキソプリン、6−オキソプリン、3−デアザアデノシン、2−オキソ−5−メチルピリミジン、2−オキソ−4−メチルチオ−5−メチルピリミジン、2−チオカルボニル−4−オキソ−5−メチルピリミジン、4−オキソ−5−メチルピリミジン、2−アミノプリン、5−フルオロウラシル、2,6−ジアミノプリン、8−アミノプリン、4−トリアゾロ−5−メチルチミン、4−トリアゾロ−5−メチルウラシルおよびヒポキサンチンのような修飾塩基が含まれる。
【0015】
保護されたヌクレオシド塩基は、その塩基の反応性官能基が保護されているヌクレオシド塩基である。同様に、保護されたヘテロ環は、そのヘテロ環の反応性置換基が保護されているヘテロ環である。典型的には、ヌクレオシド塩基またはヘテロ環は、アミドまたはカルバメートのようなアミン保護基で保護することができるアミン基を有する。例えば、アデニンおよびシトシンのアミン基は、典型的には、ベンゾイル保護基で保護され、そしてグアニンのアミン基は、典型的には、イソブチリル基、4−イソプロピルフェノキシアセチル基またはt−ブチルフェノキシアセチル基で保護される。しかしながら、ホルムアミジンのような他の保護スキームを用いてもよい。例えば、速い脱保護には、アデニンおよびグアニンのアミン基は、フェノキシアセチル基で保護され、そしてシトシンのアミン基は、イソブチリル基またはアセチル基で保護される。核酸塩基またはヘテロ環の保護基の除去条件は、用いられる保護基に依存するであろう。アミド保護基が用いられる場合、それは、濃水酸化アンモニウム溶液、n−メチルアミン溶液、または水酸化アンモニウム中のt−ブチルアミン溶液などの塩基溶液でオリゴヌクレオチドを処理することによって除去することができる。
【0016】
アミン、ヒドロキシおよびチオールの保護基は、当業者に知られている。アミン保護基の例については、その内容が本明細書中にそのまま援用される、Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis (1991), John Wiley & Sons, Inc. の309〜405頁を参照されたい。好ましくは、アミンは、アミドまたはカルバメートとして保護される。ヒドロキシ保護基の例については、その内容が本明細書中にそのまま援用される同上の10〜142頁を参照されたい。用いることができる保護基の例には、シリル基、特に、トリアルキル、例えば、トリ(C1-4アルキル)シリル基が含まれる。好ましいシリル保護基は、t−ブチルジメチルシリル基である。好ましいヒドロキシ保護基は、t−ブチルジメチルシリル基である。チオール保護基の例については、その内容が本明細書中にそのまま援用される同上の277〜308頁を参照されたい。
【0017】
酸に不安定な保護基は、ブレンステッド酸またはルイス酸とその基を接触させることによって除去することができる保護基である。酸に不安定な保護基は、当業者に知られている。一般的な酸に不安定な保護基の例には、置換されたまたは未置換のトリチル基(同上の60〜62頁)、置換されたまたは未置換のテトラヒドロピラニル基(同上の31〜34頁)、置換されたまたは未置換のテトラヒドロフラニル基(同上の36〜37頁)またはピキシル基(同上の65頁)が含まれる。トリチル基は、一般的には、アルコキシ基などの電子供与性置換基によって置換されている。好ましい酸に不安定な保護基は、置換されたまたは未置換のトリチル、例えば、4,4’−ジメトキシトリチル(以下、「DMT」)である。
【0018】
塩基に不安定な保護基は、ブレンステッド塩基またはルイス塩基とその基を接触させることによって除去することができる保護基である。塩基に不安定な保護基は、当業者に知られている。一般的な塩基に不安定な保護基の例には、アセチル基、ベンゾイル基およびピバロイル基のようなカルボニル化合物が含まれる。
【0019】
式2は、天然の形、すなわち与えられたアルコールのヌクレオシド立体配置(D−異性体)によって表されているが、本発明が、対応する合成のまたは非天然のアルコールの立体配置(L−異性体)、および双方の立体配置の混合物に等しく適用できるということは理解されるであろう。
【0020】
本発明の方法で用いることができるホスフィチル化剤は、一般的には、一般化学式
13−X6−PX45
を有し、式中、R13は、リン保護基、一般的には、オリゴヌクレオチド合成に用いられる開裂可能なリン保護基、例えば、置換されたまたは未置換の脂肪族基またはアラルキル基であって、メチル基、−CH2CH2−Si(CH3265、−CH2CH2−S(O)2−CH2CH3、−CH2CH2−C64−NO2のようなもの、好ましくは、式−CH2CH2CNの基;置換されたまたは未置換の芳香族基であって、フェニルまたは置換フェニルのようなもの、例えば、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ニトロフェニル基または4−ニトロフェニル基であり;X6は、OまたはS、好ましくは、Oであり;X4およびX5は、同じであってよいしまたは異なっていてよくハロ(一般的にはブロモまたはクロロ)等の脱離基、または−NR1415であり、ここにおいて、R14およびR15は、各々独立して、アルキル基、好ましくは、C1-6アルキル基であり、またはR14およびR15は接合し、それらが結合しているNと一緒に5〜7員環を形成する。一般的には、X4およびX5の少なくとも一つは、式−NR1415の基である。最も好ましくは、X4およびX5は同じであり、X4およびX5双方が−N[CH(CH322基であるのが特に好適である。特に、X6がOであり、そしてR13が−CH2CH2CNであるのが好適である。
【0021】
本発明の方法は、特に、ホスホロアミダイト、特に、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドのホスホロアミダイトの製造に適している。
好ましいホスフィチル化剤の例には、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(一般的には、「テトラホス(tetraphos)」として知られる)、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダイト、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトラエチルホスホロジアミダイト、ビス(N,N−ジイソプロピルアミノ)−2−メチルトリフルオロアセチルアミノエトキシホスフィン、ビス(N,N−ジイソプロピルアミノ)−2−ジフェニルメチルシリルエトキシホスフィンおよびO−β−シアノエチル−ビス(N−モルホリノ)ホスホロジアミダイトが含まれる。
【0022】
本発明による方法は、しばしば、0℃〜約50℃の範囲内の温度で、好ましくは、約15℃〜約30℃のような周囲温度で行われる。
好都合には、実質的に無水の反応条件を用いる。
【0023】
多数の態様において、本発明の方法は、窒素またはアルゴンの雰囲気のような不活性雰囲気下で行われる。
本発明による方法は、好都合には、ヌクレオシドホスホロアミダイトを生成するために用いられる。したがって、本発明の好ましい側面は、式
【0024】
【化4】

【0025】
を有する化合物の製造方法であって、式
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R4は、前に定義の通りであり、好ましくは、ジメトキシトリチル基であり、そしてR5は、前に定義の通りである)
を有する化合物と、式
NCCH2CH2O−P(N(R1622
(式中、R16は、C1-6アルキル基、好ましくは、イソプロピル基である)
を有する化合物とを、活性化物質であって、式
【0028】
【化6】

【0029】
を有する化合物を含む活性化物質および有機塩基の存在下において反応させることを含む方法を含む。
多数の態様において、活性化物質は、アルコールに対して化学量論的モル比または化学量論より少ないモル比で用いられ、約0.4:1〜1:1、特に、約0.5:1〜0.75:1の活性化物質対アルコールのモル比が好適である。
【0030】
ホスフィチル化剤は、しばしば、アルコールに対して化学量論的モル比でまたは過剰に用いられ、約1:1〜3:1、特に、約1:1〜1.5:1のホスフィチル化剤対アルコールのモル比が好適である。
【0031】
有機塩基の存在下において、本発明で用いられる活性化物質は、特に、ホスフィチル化に典型的に用いられる有機溶媒に充分な溶解度を有する。活性化物質および有機塩基の濃度は、関係する溶媒中の活性化物質の溶解度まででありうる。好ましい態様において、活性化物質および有機塩基は、約0.01M〜約2M、例えば、約0.05M〜約0.5Mの濃度範囲で存在する。一般的には、活性化物質および有機塩基は、約0.1M〜約0.25Mのような、0.25Mまでの濃度で存在する。より好ましい態様において、活性化物質および有機塩基は、同じモル濃度で存在する。若干の態様において、有機溶媒は、ジクロロメタンのような塩化炭素である。好ましい態様において、有機溶媒はアセトニトリルを含む。別の好ましい態様において、有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのような有機アミドを含む。
【0032】
有機塩基は、pH7においてプロトンを受容する性質を有する有機化合物である。好ましい有機塩基は、第二級アミン類、第三級アミン類またはアザヘテロ環化合物であり、それらは各々、一つ以上の置換基で置換されていてよいしまたは未置換であってよい。非プロトン性有機塩基は、プロトンを受容する前のその化学構造中に、水素結合プロトンを有していない有機塩基である。第三級アミン類および非プロトン性アザヘテロ環化合物などの非プロトン性有機塩基は、好ましくは、本明細書中に記載の式1の化合物と共に用いられて、ホスフィチル化反応を促進する。
【0033】
本明細書中で用いられるアザヘテロ環化合物は、芳香環中に1個以上の窒素原子を有するヘテロアリール基、および非芳香環系中に少なくとも1個の窒素原子を有するヘテロ脂環基を含む。好ましくは、アザヘテロアリール化合物は、芳香環中に1〜3個の窒素を含む5員または6員の芳香環を有する。好ましくは、アザヘテロ脂環化合物は、一般的には、環中に1個または2個の窒素を含む、5員環または6員環である。好ましいアザヘテロ環化合物は、有機塩基である。有機塩基であるアザヘテロ環化合物の例には、ピリミジン類、1−アルキルピラゾール類、特に、1−(C1-4アルキル)ピラゾール類、1−アリールピラゾール類、1−ベンジルピラゾール類、ピラジン類、N−アルキルプリン類、特に、N−(C1-4アルキル)プリン類、N−アリールプリン類、N−ベンジルプリン類、N−アルキルピロール類、特に、N−(C1-4アルキル)ピロール類、N−アリールピロール類、N−ベンジルピロール類、ピリジン類、N−アルキルイミダゾール類、特に、N−(C1-4アルキル)イミダゾール類、N−アリールイミダゾール類、特に、N−フェニルイミダゾール類、N−ベンジルイミダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、キノキサリン類、キナゾリン類、N−アルキルインドール類、特に、N−(C1-4アルキル)インドール類、N−アリールインドール類、N−ベンジルインドール類、N−アルキルベンズイミダゾール類、特に、N−(C1-4アルキル)ベンズイミダゾール類、N−アリールベンズイミダゾール類、N−ベンジルベンズイミダゾール類、トリアジン、チアゾール、1−アルキル−7−アザインドール類、特に、1−(C1-4アルキル)−7−アザインドール類、1−アリール−7−アザインドール類、1−ベンジル−7−アザインドール類、ピロリジン類、モルホリン類、ピペリジン類およびピペラジン類が含まれる。特に好ましいアザヘテロ環化合物は、ピリジンおよび3−メチルピリジンなどのピリジン類、およびN−メチルイミダゾールなどのN−(C1-4アルキル)イミダゾール類である。
【0034】
第三級アミン類は、3個の炭素原子に、しばしば、3個のアリール基、一般的には、フェニル基および/またはアルキル基に、一般的には、3個のアルキル基に結合している窒素原子を有する有機塩基であって、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類を含めたものである。更に、第三級アミン類は、窒素原子が非プロトン性であるアザヘテロ環基でありうる。アザヘテロ環基である第三級アミン類は、好適である。アザヘテロ環第三級アミン類の例は、N−アルキルピロリジン類、N−アリールピロリジン類、N−アルキルピロール類、N−アリールピロール類、N−アルキルモルホリン類、N−アリールモルホリン類、N−アルキルピペリジン類、N−アリールピペリジン類、N,N−ジアルキルピペラジン類、N,N−ジアリールピペラジン類、N−アルキル−N−アリールピペラジン類、キヌクリジン類、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン類および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン類である。第三級アミン類は、アザヘテロアリール化合物またはアザヘテロ脂環化合物でもありうる。
【0035】
第二級アミン類は、1個の水素におよび2個の炭素原子に結合した窒素を含む有機塩基である。一般的には、その窒素原子は、2個のアルキル基またはアリール基に結合しているか、またはアザヘテロ環式基の一部分を形成している。第二級アミン化合物の例には、ジエチルアミンおよびジイソプロピルアミンが含まれる。
【0036】
特に好ましい有機塩基には、ピリジン、3−メチルピリジンおよびN−メチルイミダゾールが含まれる。
脂肪族基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、アザヘテロアリール基およびヘテロ脂環基に対する適した置換基には、アリール基、ハロゲン化アリール基、アルキル基、ハロゲン化アルキル(例えば、トリフルオロメチルおよびトリクロロメチル)、脂肪族エーテル類、芳香族エーテル類、ベンジル、置換ベンジル、ハロゲン類、特に、クロロ基およびフルオロ基、シアノ、ニトロ、−S−(脂肪族基または置換脂肪族基)および−S−(芳香族または置換芳香族)が含まれる。
【0037】
本明細書中で用いられる脂肪族基は、完全に飽和しているか、または1個以上の非共役二重結合を含有している直鎖または分岐状のC1−C18炭化水素;または完全に飽和しているまたは1個以上の非共役二重結合を含有している環状C3−C18炭化水素を含む。アルキル基は、完全に飽和している直鎖または分岐状のC1−C8炭化水素またはC3−C8環状炭化水素である。好ましくは、脂肪族基はアルキル基である。
【0038】
アリール基は、炭素環式芳香環系(例えば、フェニル)、および1個以上の炭素環式芳香族炭化水素に縮合した炭素環式芳香環系(例えば、ナフチルおよびアントラセニル)または1個以上の非芳香環に縮合した芳香環系(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル)を含む。
【0039】
本明細書中で用いられるヘテロ環式基は、ヘテロアリール基およびヘテロ脂環基を含む。本明細書中で用いられるヘテロアリール基は、硫黄、窒素または酸素より選択される1個以上のヘテロ原子を芳香環中に有する芳香環系を含む。好ましくは、ヘテロアリール基は、1〜4個のヘテロ原子を有する5員または6員の環系である。本明細書中で用いられるヘテロ脂環基は、好ましくは、5〜6個の原子を有し且つ窒素、酸素および硫黄より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む非芳香環系である。ヘテロ環式基の例には、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチエニル、アゼチジニル、テトラヒドロフリル、ジオキサニルおよびジオキセパニル、チエニル、ピリジル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、インダゾリル、フラン類、ピロール類、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類、ピリミジン類、ピラジン類、チアゾール類、イソオキサゾール類、イソチアゾール類、テトラゾール類、オキサジアゾール類、ベンゾ(b)チエニル、ベンズイミダゾール、インドール、テトラヒドロインドール、アザインドール、インダゾール、キノリン、イミダゾピリジン、プリン、ピロロ[2,3−d]ピリミジンおよびピラゾロ[3,4−d]ピリミジンが含まれる。
【0040】
本明細書中で用いられるアラルキル基は、アルキル基によってある部分に連結している芳香族置換基である。好ましいアラルキル基には、ベンジル基が含まれる。
本明細書中で用いられるヘテロアラルキル基は、アルキル基によってある部分に連結しているヘテロアリール置換基である。
【0041】
本発明を、次の実施例により、制限されることなく詳しく説明する。
実施例1
サッカリンのN−メチルイミダゾール塩を、次の手順によって製造した。サッカリンを、アセトニトリル中に懸濁させ、そしてその懸濁液に、サッカリンに対して1.1当量のN−メチルイミダゾールを滴下した。反応混合物を減圧下で濃縮して、結晶性塩を形成させ、それを、エーテルかまたはヘキサンで洗浄して、N−メチルイミダゾールおよびアセトニトリルの痕跡を除去した。
【0042】
実施例2
一連のヌクレオシドを、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイトと、活性化物質としてのサッカリンのN−メチルイミダゾール塩を用いてホスフィチル化した。
【0043】
一般的な方法:
適当なサイズのフラスコ中に、ヌクレオシド(1.5mmol)を加え、その固体を、20mLのピリジンで2回蒸留すること(ロータリーエバポレーター)によって共沸乾燥させた。そのフラスコをArでパージし、そして15mLのアセトニトリルをフラスコに加えた。その混合物を、室温で、透明な溶液が得られるまで撹拌した。混合物に、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイト(Tetraphos)を加えた後、サッカリンのN−メチルイミダゾール塩を加えた。混合物を室温で撹拌し、同時に、反応の終点について、HPLCによって反応を監視した。反応の終了後、混合物を30mLの酢酸エチルで希釈し、そして有機混合物を、2x25mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液および25mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させた。懸濁液を濾過し、そしてロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。残留物を真空下で乾燥させて、泡状物を生じた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例2
500mL丸底フラスコ中に、5’−DMT−N−Bz−2’−デオキシアデノシン(18.00g,27.37mmol)を加え、その固体を、2x200mLのトルエンの添加および蒸発(ロータリーエバポレーター)によって共沸乾燥させた。残留物を真空下で16時間乾燥させた。その残留物を、アルゴン雰囲気下においてアセトニトリル(180mL)中に溶解させ、そしてO−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(9.90g,32.84mmol)を加えた。その混合物を5分間撹拌し、そしてサッカリンのN−メチルイミダゾール塩固体(3.63g,13.69mmol)を加えた。その混合物を室温で撹拌し、同時に、HPLCによって反応を監視した。18時間後、それ以上の反応は認められなくなった。反応混合物に、酢酸エチル(200mL)を加え、そして有機溶液を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2x150mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させた。懸濁液を濾過し、そしてロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。残留物を真空下で16時間乾燥させて、白色泡状物を生じた。
【0046】
粗製収量:23.70g
HPLC:92.5%
その粗生成物(23.70g)を、シリカゲル(230g)カラムを用いたクロマトグラフィーによって処理した。カラムは、0.5%トリエチルアミンを含有する30%酢酸エチル/ヘキサンを用いて充填された。そのカラムを、2カラム容量の30%酢酸エチル/ヘキサンで洗浄した。粗生成物を充填し、そしてそのカラムを、2カラム容量の30%酢酸エチル/ヘキサン、2カラム容量の40%酢酸エチル/ヘキサン、2カラム容量の50%酢酸エチル/ヘキサン、そして最後に、3カラム容量の70%酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶離した。TLC(8:3の酢酸エチル:ヘキサン)によって生成物が検出された場合、画分を集めた。所望の生成物を含有する画分を一緒に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。残留物を真空下で16時間乾燥させて、白色泡状物を生じた。
【0047】
収量:17.55g(75%)
HPLC:97.5%
31P NMR:99.3%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化物質の存在下におけるホスフィチル化剤でのアルコールまたはチオールのホスフィチル化方法であって、該活性化物質が、式1
【化1】

(式中、pは、0または1〜4の整数であり、各々の場合のRは置換基であり、そしてX7は、OまたはSである)
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
7がOであり、pが0である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式1の化合物を、有機塩基との塩錯体として用いる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機塩基が、ピリジン、3−メチルピリジンおよびN−メチルイミダゾールから成る群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アルコールまたはチオールが、フリーのヒドロキシ基またはチオール基を含むヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
フリーの3’−ヒドロキシ基を含むヌクレオシドをホスフィチル化する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ホスフィチル化剤が、一般化学式
13−X6−PX45
(式中、R13はリン保護基であり、X6は、OまたはSであり、X4およびX5は、同じであってよいしまたは異なっていてよく、脱離基である)
を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
13が、置換されたまたは未置換の脂肪族基またはアラルキル基、または置換されたまたは未置換の芳香族基であり、X6がOであり、そしてX4およびX5が、各々独立して、−NR1415であり、ここにおいて、R14およびR15は、各々独立して、C1-6アルキル基であり、またはR14およびR15は接合し、それらが結合しているNと一緒に5〜7員環を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ホスフィチル化剤が、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダイト、O−β−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトラエチルホスホロジアミダイト、ビス(N,N−ジイソプロピルアミノ)−2−メチルトリフルオロアセチルアミノエトキシホスフィン、ビス(N,N−ジイソプロピルアミノ)−2−ジフェニルメチルシリルエトキシホスフィンおよびO−β−シアノエチル−ビス(N−モルホリノ)ホスホロジアミダイトから成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】

【化2】

を有する化合物の製造方法であって、式
【化3】

を有する化合物と、式
NCCH2CH2O−P(N(R1622
を有する化合物とを、活性化物質であって、式
【化4】

を有する化合物を含む活性化物質および有機塩基の存在下において反応させることを含む方法。ここにおいて、R4はアルコール保護基であり;R5は、−H、−F、−OR6、−NR78、−SR9、またはメチル若しくはアリルのような置換されたまたは未置換の脂肪族基であり;各々の場合のR6は、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアリール基、置換されたまたは未置換のアラルキル基、アルコール保護基、または−(CH2q−NR1112であり;R7およびR8は、各々独立して、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、またはアミン保護基であり、またはそれらが結合している窒素と一緒になったR7およびR8はヘテロ環基であり;R9は、−H、置換されたまたは未置換の脂肪族基、またはチオール保護基であり;R11およびR12は、各々独立して、−H、置換されたまたは未置換のアリール基、置換されたまたは未置換のヘテロアリール基、置換されたまたは未置換の脂肪族基、置換されたまたは未置換のアラルキル基、置換されたまたは未置換のヘテロアラルキル基、またはアミン保護基であり、またはそれらが結合している窒素と一緒になったR11およびR12はヘテロ環基を形成し;qは、1〜約6の整数であり;Bは、−H、天然のまたは非天然の核酸塩基、保護された核酸塩基、保護された天然のまたは非天然の核酸塩基、ヘテロ環または保護されたヘテロ環であり;そしてR16は、C1-6アルキル基、好ましくは、イソプロピル基である。
【請求項11】
有機塩基が、ピリジン、3−メチルピリジンおよびN−メチルイミダゾールから成る群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
5が、H、OMeまたはOCH2CH2OMeである、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
4が、酸に不安定な保護基であり、そしてR5がOR6であり、ここにおいて、R6が、塩基に不安定な保護基またはシリル保護基である、請求項10または請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508081(P2006−508081A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544427(P2004−544427)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004312
【国際公開番号】WO2004/035599
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(502449299)アベシア・バイオテクノロジー・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】