説明

ホスフィン化合物及び該ホスフィン化合物と遷移金属化合物からなる触媒

【課題】 高選択性及び高活性を示すアリールアミン合成、ビアリール合成、及び置換スチレン誘導体合成等に有用な触媒を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物及び遷移金属化合物からなる触媒を用いる。
【化1】


(式中、R,Rは、各々独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基を表す。また、Mは、置換基を有していても良い直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキレン基、又は−CHCH−O−CHCH−基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホスフィン化合物に関するものである。更に詳しくは、各種の反応の触媒となる遷移金属錯体触媒中の配位子として有用なホスフィン化合物、及び該ホスフィン化合物と遷移金属化合物からなる芳香族アミン、ビアリール、置換スチレン誘導体合成用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パラジウム等の遷移金属錯体は、各種反応の触媒となることが知られている(例えば、辻二郎著 Palladium Reagents and Catalysts,1995年)。遷移金属錯体は遷移金属化合物と配位子からなる化合物であるが、配位子は触媒反応の活性及び選択性を制御する上で極めて重要な役割を有している。これまでに炭素−炭素(又はヘテロ元素)結合反応で報告されている配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(例えば、特許文献1,非特許文献1参照)、ジアルキルホスフィノ基が置換したフェロセン誘導体(例えば、特許文献2,非特許文献2参照)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−1,1’−ビフェニル誘導体(例えば、特許文献3参照)等のリン系配位子、1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウム塩等(例えば、非特許文献3参照)のカルベン系配位子が知られている。
【0003】
一方、炭素−炭素(又はヘテロ元素)結合反応以外の反応で、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(通称、BINAP)、6,6’位がある連結基を通して結合した1,1’−ビフェニル構造の二座配位子が、不斉合成反応(特に不斉水素化反応)の配位子として報告されている(例えば、特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−139742号公報
【特許文献2】特開2000−247990号公報
【特許文献3】US2002/156295号公報
【特許文献4】特許4167899号公報
【特許文献5】特開2000−154156号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society,122(17),4020−4028(2000)
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society,130,6586−6596(2008)
【非特許文献3】Angew. Chem. Int.Ed., 46,2768−2813(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トリ(tert−ブチル)ホスフィンを配位子とする遷移金属触媒は、極めて高活性であることが知られているものの、トリ(tert−ブチル)ホスフィン自身が酸素で容易に酸化される特徴を有していることから扱いづらい欠点をもっている。一方、その他の配位子は、比較的酸素に安定であるものの、反応活性がトリ(tert−ブチル)ホスフィンを配位子とする遷移金属触媒より低活性である欠点を有していた。特に、トリアリールアミン類、中でもアリールクロライド原料からのトリアリールアミン類の合成、及びビフェニル化合物の合成の際には、空気中及び酸素に安定で、且つ高活性な触媒の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、6,6’位同士が結合することにより環構造を形成したビフェニル系単座配位子である上記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が遷移金属錯体の配位子として極めて優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物及び該ホスフィン化合物と遷移金属化合物からなる触媒に関するものである。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R,Rは、各々独立して水素原子、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Rは、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基を表す。また、Mは、置換基を有していても良い直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキレン基、又は−CHCH−O−CHCH−基を表す。)
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0011】
上記一般式(1)のR,Rである直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基は特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、2−エチルヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数1〜10のアルキル基等を挙げることができる。
【0012】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−へプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0013】
アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0014】
置換若しくは無置換のフェニル基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、あるいは縮合したナフチル基等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)のRは、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基であり、例えば、R,Rで例示した置換基を例示することができる。中でも嵩高く、電子供与性の置換基であるtert−ブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基が高い触媒活性を有する点でより好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表されるホスフィン化合物は、6,6’位が−O−M−O−を経由して環を形成した新規ホスフィン化合物である。
【0017】
置換基Mは、置換基を有していても良い直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキレン基、又は−CHCH−O−CHCH−基を表す。置換基を有していても良い直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキレン基としては、具体的に、メチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基等の直鎖状のアルキレン基、及び2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル基、ヘキサン−2,5−ジイル基、2,3−メチレンジオキシブタン−1,4−ジイル基等の分岐状のアルキレン基が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)で表されるホスフィン化合物は、遷移金属化合物と組み合わせることにより、各種のアリールアミン合成、ビアリール合成、置換スチレン誘導体等の炭素−炭素結合反応、炭素−ヘテロ元素結合反応の触媒として非常に有効である。中でも下記L1〜L14に記載したホスフィン化合物が、触媒活性の面でより好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
以下に、本発明の化合物の製造法について説明する。
【0021】
例えば、特開2004−10583号公報に従い、3−ブロモアニソールから2−ヨード−3−ブロモ−アニソールを合成し、2−メトキシフェニルボロン酸との鈴木−宮浦カップリングを行うことにより、2−ブロモ−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニルを合成する。次に、n−ブチルリチウム/クロロジアルキルホスフィン(又はクロロジアリールホスフィン)で処理することにより、2−ジアルキルホスフィノ(又はジアリールホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニルを合成することができる。その後、三臭化ホウ素で処理することにより、メチル基を脱保護し、引き続き、所望のジブロモアルカン、ビス(2−クロロエチル)エーテル等と反応させることにより、一般式(1)で表されるホスフィン化合物を合成することができる。
【0022】
このようにして得られた一般式(1)で表されるホスフィン化合物は、配位子として遷移金属化合物と組み合わせることにより、各種反応の触媒となる。例えば、ハロゲン化アリールとアミンからアリールアミンの合成、ハロゲン化アリールとアリールボロン試薬等とのカップリングによるビアリールの合成、又はハロゲン化アリールとオレフィン類との反応による置換スチレン類の合成等の反応を挙げることができる。これらの反応において、ハロゲン化アリールの代わりにアリールスルホネートを用いることもできる。
【0023】
これらの触媒反応の条件は特に限定されるものではないが、遷移金属化合物はハロゲン化アリール等の基質に対して0.001〜10モル%、配位子は遷移金属化合物に対して0.8〜5.0モル%を用い、反応に不活性な溶媒中(例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非極性溶媒等)、反応温度20〜160℃、反応時間0.5〜48時間、窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で通常行われる。
【0024】
遷移金属化合物として特に制限はないが、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価パラジウム化合物類、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート等の2価パラジウム化合物類、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物類等が挙げられる。また、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケルジクロライド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケルジクロライド、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケルジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等のニッケル化合物が挙げられる。中でも活性・選択性の観点から、パラジウム化合物が好ましい。
【0025】
一般式(1)で表されるホスフィン化合物は、C点群の軸不斉を有しているため、(R)体又は(S)体の光学活性体が存在する。上記ホスフィン化合物を反応に使用する際には、ラセミ体であっても、いずれか一方の光学活性体であっても構わない。
【0026】
また、一般式(1)で表されるホスフィン化合物は、公知の方法によりポリスチレン等に固定化、又はマイクロカプセル化(例えば、特開2002−253972号公報)により高分子担体に固定化しても構わない。また、シリカゲル等の無機担体にシランカップリング剤を用いて固定化したものを使用しても構わない(例えば、Journal of American Chemical Society,125,4688−4689(2003))。
【発明の効果】
【0027】
本発明のホスフィン化合物は、パラジウム等の遷移金属化合物に対して優れた配位子となり、アリールアミン合成、ビアリール合成、置換スチレン誘導体合成等の各種触媒反応において、高選択性及び高活性を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】化合物AのH−NMRチャート(CDCl)を示す。
【図2】化合物BのH−NMRチャート(acetone−d)を示す。
【図3】化合物CのH−NMRチャート(CDCl)を示す。
【図4】化合物DのH−NMRチャート(Methanol−d)を示す。
【図5】化合物L3のH−NMRチャート(CDCl)を示す。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に解説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、H−NMR測定、及びFDMS測定により行った。H−NMR測定はバリアン社製 Gemini200、FDMS測定は日立製作所製 M−80Bを使用して実施した。
【0030】
【化3】

【0031】
合成例1
(1)化合物Aの合成
50mlシュレンク管に、窒素雰囲気下、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン 3.01g(21.3mmol)、脱水テトラハイドロフラン 30mlを加えた後、反応液をドライアイス−メタノール浴で−78℃に冷却し、1.6Mのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液を12.6ml添加した。その後、同温度で30分、更に0℃で30分攪拌した(反応液A)。次に、100mlシュレンク管に、塩化亜鉛 2.86g(21.0mmol)とテトラハイドロフラン 50mlを加え、塩化亜鉛を溶解させた後(僅かに白濁している)、反応液を−78℃に冷却した。その後、1.6M tert−ブチルリチウム/ヘプタン溶液を27ml(42.9mmol)添加し、引き続き同温度で30分攪拌した(反応液B)。
【0032】
次に、300mlナス型フラスコに、先に調製した反応液Aを加え、反応液をドライアイス−メタノール浴で−78℃に冷却した。そこに、反応液Bを滴下し、更に同温度で30分及び0℃で2時間攪拌した。次に、3−メトキシアニソール 1.89g(10.2mmol)/テトラハイドロフラン 15mlからなる溶液を−78℃で加え、更に−30℃で14時間攪拌した。次に、同温度でヨウ素 17.69g(69.7mmol)/テトラハイドロフラン 60mlからなる溶液を加えた。その後、室温で1時間攪拌してから21%のチオ硫酸ナトリウム水溶液 85mlを加え、反応を終了させた。得られた反応液にクロロホルム 100mlを加え、有機層を抽出した。得られた有機層は、硫酸マグネシウムで乾燥の後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1体積比)にて精製した。目的の留分は、濃縮後、更にヘキサンで再結晶することにより1.3gの化合物Aを単離した。化合物の同定は、H−NMR(CDCl)により行った(図1参照)。
【0033】
(2)化合物Bの合成
50mlシュレンク管に、窒素雰囲気下、化合物A 1.21g(3.6mmol)、o−メトキシフェニルボロン酸 0.596g(3.942mmol)、20%炭酸ナトリウム水溶液 6.3g(12.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 0.182g(0.158mmol)及びジメトキシエタン 25mlを加えた後、90℃で48時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、クロロホルムを添加して有機層を抽出し、有機層を飽和食塩水で処理した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/酢酸エチル=10/1体積比)にて精製することにより、目的とする化合物Bを0.77g(収率66%,無色油状物)単離した。化合物の同定は、H−NMRにより行った(図2参照)。
【0034】
(3)化合物Cの合成
窒素雰囲気中、100mlシュレンク管に、化合物B 1.40g(4.78mmol)及びテトラハイドロフラン 25mlを加えた後、反応液を−78℃に冷却した。その反応液に、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6mol/l) 3.6mlを同温度で滴下・熟成し、更にクロロジシクロヘキシルホスフィン/テトラハイドロフラン溶液(11.7wt%溶液)を12.0ml(5.95mmol)滴下した。室温で一晩攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液 25mlを滴下して反応を終了させた。有機層を分液し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1体積比)にて精製することにより、無色結晶として化合物Cを880mg(収率45%)単離した。化合物の同定は、H−NMRにより行なった(図3参照)。
【0035】
実施例1(化合物L3の合成)
合成例1で得た化合物C 0.83g(2.0mmol)を脱水ジクロロメタン 18mlに溶かした後、反応液を−78℃に冷却した。次に、1mol/l 三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液 6.1ml(6.1mmol)をシリンジにて滴下し、同温度で1時間、更に室温で48時間攪拌した後、氷冷下、水 10mlを滴下して反応を終了させた。
【0036】
生成した沈殿を濾過・洗浄した後、得られた沈殿をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1体積比、引続きメタノール)で精製することにより、ジヒドロキシ体の化合物Dを白色粉末として590mg(収率76%)単離した。化合物の同定は、H−NMRにより行なった(図4参照)。
【0037】
次に、50mlナス型フラスコに、化合物D 560mg(1.47mmol)、炭酸カリウム 1.02g(7.38mmol)及びジメチルホルムアミド 15mlを窒素雰囲気下加え、室温下で30分間攪拌した。その後、1−ブロモ−4−クロロブタンをシリンジにて190μl滴下した後、同温度で24時間、更に60℃で47時間攪拌した。
【0038】
水 20mlを加えて反応を終了させ、ジエチルエーテル 30mlで抽出した。得られた有機層を常法処理した後、濃縮した。得られた残渣は、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=20/1体積比)で精製することにより、化合物L3を無色粉末として0.18g(収率28%)単離した。化合物の同定は、H−NMR(図5参照)及びFDMSにより行った。
【0039】
FDMS(m/e):436
【0040】
【化4】

【0041】
なお、化合物L3のトルエン溶液(0.5wt%)を空気中、2日間室温で攪拌したが、31P−NMR上、酸化されたピークは検出されなかった。
【0042】
実施例2
200mlナス型フラスコに、窒素雰囲気下、ブロモベンゼン 6.24g(40mmol)、3−メチルジフェニルアミン 7.32g(40mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 4.99g(52mmol)、トルエン 45mlを添加した。次に、20mlシュレンク管中で、酢酸パラジウム 6.6mgと配位子として化合物L3 26mg(化合物L3/パラジウム=2/1モル比)、及びトルエン 5mlからなる混合物を60℃で30分加熱攪拌した溶液を調製した。その内、1.6ml(ブロモベンゼンに対してパラジウムは0.025mol%に相当する)を、シリンジにて先に調製した反応液に滴下し、100℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、水 25mlを加えて有機層を分離した。有機層は、トリフェニルアミンを内部標準とするガスクロマトグラフィー分析により、目的物である3−メチルトリフェニルアミンの収率及びターンオーバー数(生成物−mol/Pd−mol/hr)を分析した。結果を表1に示す。
【0043】
比較例1〜2
配位子を、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−1,1’−ビフェニル(特許文献3に記載)、2−2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(特許文献3に記載。別名、SPhosとも言う。)に代えて、実施例2に準じてアミノ化を行った。結果を表1に示す。
【0044】
実施例3(化合物L2の合成)
1−ブロモ−4−クロロブタンを1−ブロモ−3−クロロプロパンに代えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、化合物L2を123mg(収率19.8%)単離した。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例4
ブロモベンゼンをクロロベンゼン 4.48g(40mmol)に代えた以外は、実施例2と同様な反応を行った。分析の結果、3−メチルトリフェニルアミンの収率は29.4%であった。結果を表1に示す。
【0047】
実施例5
化合物L3を実施例3で合成した化合物L2に代え、実施例2に準じて反応を行った。ガスクロマトグラフィー分析の結果、3−メチルトリフェニルアミンの収率は52.2%であった。
【0048】
実施例6(4−メチル−1,1’−ビフェニルの合成)
100mlナス型フラスコに、クロロベンゼン 1.0g(8.93mmol)、4−トリルボロン酸 1.28g(9.41mmol)、ジメトキシエタン 20ml及び20wt%炭酸ナトリウム 14.1g(26.6mmol)を加えた。次に、20mlシュレンク管中で、酢酸パラジウム 6.6mgと配位子として化合物L3 26mg(化合物L3/パラジウム=2/1モル比)、及びトルエン 5mlからなる混合物を60℃で30分加熱攪拌した溶液を調製した。その内、1.6ml(ブロモベンゼンに対してパラジウムは0.16mol%に相当する)を、シリンジにて先に調製した反応液に滴下し、還流下で6時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、有機層を分液した。有機層をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、4−メチル−1,1’−ビフェニルの収率は99%以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物。
【化1】

(式中、R,Rは、各々独立して水素原子、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Rは、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基を表す。また、Mは、置換基を有していても良い直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8のアルキレン基、又は−CHCH−O−CHCH−基を表す。)
【請求項2】
Rが、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、1−アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載のホスフィン化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)において、2’位が水素原子であることを特徴とする請求項1乃至2に記載のホスフィン化合物。
【請求項4】
下記L1〜L14であることを特徴とする請求項1に記載のホスフィン化合物。
【化2】

【請求項5】
請求項1乃至4に記載のホスフィン化合物及び遷移金属化合物からなることを特徴とする芳香族アミン、ビアリール、及び置換スチレン誘導体合成用触媒。
【請求項6】
遷移金属化合物がパラジウム化合物であることを特徴とする請求項5に記載の芳香族アミン、ビアリール、及び置換スチレン誘導体合成用触媒。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の触媒を用いて、芳香族アミン、ビアリール、及び置換スチレン誘導体を合成する際に、その基質であるアリールハライドが、アリールクロライドであることを特徴とする芳香族アミン、ビアリール、及び置換スチレン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−265244(P2010−265244A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120104(P2009−120104)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】