説明

ホットメルト接着剤

【課題】 糸曳きが少なく、耐熱性および熱安定性に優れ、広い温度領域で優れた接着強度を有するホットメルト接着剤を提供する。更に、そのようなホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品を提供する。
【解決手段】 (A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を含み、(A)と(B)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は13〜35重量部であるホットメルト接着剤である。(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含み、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含むホットメルト接着剤が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。更に、本発明は、そのホットメルト接着剤を用いて得られる紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下、「EEA」ともいう)等のエチレン系共重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、無定形ポリアルファオレフィン(以下、「APAO」ともいう)等のオレフィン系樹脂、スチレン系ブロック共重合体(例えば、スチレン−イソプレン−スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロックコポリマー(以下、「SBS」ともいう)及びそれらの水素添加物等の合成ゴム、及びポリウレタン等が汎用されている。
【0004】
これらのホットメルト接着剤のなかで、エチレン系共重合体をベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、製本及び包装等の紙加工分野や木工分野に利用されることが多い。
ホットメルト接着剤を塗布する場合、ホットメルトアプリケーターという専用の塗布装置が用いられることが多い。ホットメルトアプリケーターは吐出口であるノズルを有しており、ホットメルト接着剤は約120〜190℃に加熱され、ノズルの先端から吐出されて被着体に塗布される。
【0005】
ホットメルト接着剤を塗布する際、ノズルの先端から被着体までの間に、ホットメルト接着剤の糸状物が発生することがある。この糸状物は、ホットメルト接着剤の糸曳き性に起因するものであり、ノズルや被着体を汚してしまう。従って、糸曳きの少ないホットメルト接着剤の開発は、接着剤メーカーにとって重要な責務となっている。
【0006】
特許文献1及び2は、エチレン系共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤を開示する。
特許文献1は、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体をベース樹脂とするホットメルト接着剤に、中低圧法で得られたポリエチレンを配合することを開示する(特許文献1請求項1)。特許文献2は、包装、製本及び木工等に用いられるエチレン/C3〜C20のα−オレフィン共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤を開示する(特許文献2請求項1及び[0013]参照)。これらの両文献は、いずれも、ホットメルト接着剤の糸曳きを少なくすることを開示している。
【0007】
しかし、ホットメルト接着剤の糸曳きの低減への要求は、年々高くなっている。特に、ダンボールやカートン等の厚紙を扱うユーザーは、糸曳きに対する要求が厳しい。特許文献1及び2のホットメルト接着剤は、糸曳き性が小さくなってはいるが、ユーザーの高い要求性能を十分に、好ましくは完全に満足しているとは言えない。
さらに、ホットメルト接着剤には、糸曳きの低減だけではなく、耐熱性、熱安定性、広い温度領域での接着性も求められている。
このように、糸曳き性、耐熱性、熱安定性、広い温度領域での接着性の全てに優れたホットメルト接着剤の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−314716号公報
【特許文献2】特表2008−527067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、本発明の目的は、糸曳きが少なく、耐熱性および熱安定性に優れ、広い温度領域で優れた接着強度を有するホットメルト接着剤を提供することである。更に、そのようなホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ホットメルト接着剤を製造する際、特定のエチレン系共重合体をある一定の割合で配合すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明は、一の要旨において、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を含み、
(A)と(B)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体が13〜35重量部であるホットメルト接着剤を提供する。
【0011】
本発明は、一の態様において、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含み、
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含むホットメルト接着剤を提供する。
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、さらに、(B2)エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体を含むことが好ましい。
【0012】
本発明は、好ましい態様において、更に、(C)フィッシャートロプシュワックスを含むホットメルト接着剤を提供する。フィッシャートロプシュワックスの融点は、100℃〜120℃であることが好ましい。
本発明は、第二の要旨において、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を含み、
(A)と(B)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体が13〜35重量部である場合、
糸曳きが少なくなり、耐熱性及び熱安定性に優れ、広い温度領域で優れた接着強度を有する。
【0014】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体が(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含み、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体が(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含む場合、
さらに、糸曳きを少なくすることができ、耐熱性や熱安定性を高め、広い温度領域で優れた接着強度を維持することができる。
【0015】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体が、さらに、(B2)エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体を含む場合、
糸曳きがよりいっそう少なくなり、耐熱性や熱安定性、広い温度領域での接着強度がさらに優れる。
本発明に係るホットメルト接着剤は、さらに、(C)フィッシャートロプシュワックスを含む場合、耐熱性や高温度での接着強度に優れる。
【0016】
フィッシャートロプシュワックスは融点が100℃〜120℃である場合、ホットメルト接着剤は、よりいっそう耐熱性、高温度の接着強度に優れる。
本発明に係る紙製品は、上述のホットメルト接着剤を用いることで製造されるので、ホットメルト接着剤の糸状落下物が付着することがない。本発明の紙製品は、耐熱性に優れ、広い温度領域で接着強度に優れたホットメルト接着剤で組み立てられているので、冷凍庫で保管することもでき、冷凍庫で保管した後、常温で長期間放置することも可能である。ビール等の飲料を梱包するダンボール、カートン等の厚紙に特に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を必須成分として含む。
尚、本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷却することで硬化し接着する接着剤をいう。
【0018】
本発明において「(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体」とは、エチレンと炭素数3〜20のオレフィンとの共重合体をいう。
「炭素数3〜20のオレフィン」としては、具体的に、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、イソブチレン、cis−2−ペンテン、trans−2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン及び2,3−ジメチル−2−ブテン等を例示できる。炭素数3〜10のオレフィンが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンであることがより好ましく、オクテンであることが特に好ましい。
【0019】
(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体として、例えば、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体、(A2)エチレン、プロピレン、1−ブテンとの共重合体、(A3)エチレンとプロピレンとの共重合体、(A4)エチレンとブテンとの共重合体等が挙げられる。
本発明では、特に、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含むことが好ましい。(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、市販品を使用することができる。
【0020】
(A1)エチレンとオクテンとの共重合体として、例えば、ダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
(A2)エチレン、プロピレン、1−ブテンとの共重合体として、例えば、エボニックデグサ社製のベストプラスト730(商品名)、ベストプラスト708(商品名)等を例示できる。
【0021】
(A3)エチレンとプロピレンとの共重合体として、例えば、イーストマンケミカル社製のEastoflex E1016PL-1等を例示できる。
(A4)エチレンとブテンとの共重合体として、例えば、三井石油化学社製のダフマーA4085等を例示できる。
このようなエチレンと炭素数3〜20のオレフィンとの共重合体は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明において、「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」とは、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルとの共重合体をいう。
【0023】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステル」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル及び酢酸アリル等のカルボン酸ビニル及びアリルエステル等を例示することができる。
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの双方を表す。
本発明にとっては、エチレン性二重結合を有するカルボン酸エステルが(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルであることが好ましく、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルであることが望ましい。
【0024】
「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」としては、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体、エチレンとカルボン酸アリルとの共重合体が挙げられる。
本発明では、「(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体」は、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体が好ましく、特に、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が最も望ましい。
エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体としては、エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、エチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体、エチレンとメタクリル酸ブチルとの共重合体等を例示できる。
【0025】
エチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。
本発明では、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含み、さらに(B2)エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体を含むことが特に好ましい。
【0026】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体の他に、その他のエチレン系重合体を含んでも良い。その他のエチレン系重合体として、例えば、エチレン/カルボン酸共重合体、エチレン/カルボン酸無水物共重合体等が挙げられる。
本発明では、「エチレン/カルボン酸共重合体」とは、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸との共重合体をいう。
【0027】
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸」とは、エチレン性二重結合とカルボキシル基を有する化合物であって、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。
エチレン/カルボン酸共重合体の具体例として、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンとメタクリル酸との共重合体を挙げられる。
【0028】
「エチレン/カルボン酸無水物共重合体」は、エチレンとエチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物との共重合体をいう。
「エチレン性二重結合を有するカルボン酸無水物」とは、2つのカルボキシル基が脱水縮合したカルボン酸無水物基を有する化合物であり、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されることはない。具体的には、例えば、無水マレイン酸等を例示することができる。
エチレン/カルボン酸無水物共重合体の具体例としては、エチレンと無水マレイン酸との共重合体が挙げられる。
【0029】
本発明では、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は13〜35重量部含まれる。
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、15〜30重量部含まれることがより好ましく、15〜20重量部含まれることが特に好ましい。
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体が13〜35重量部含まれる場合、ホットメルト接着剤の糸曳きが低減され、耐熱性、熱安定性、広い温度領域での接着強度が維持される。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤は、さらに、(C)フィッシャートロプシュワックスを含むことが好ましい。(C)フィッシャートロプシュワックスとは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。代表的なフィッシャートロプシュワックスとして、サゾールH1(商品名)、サゾールH8(商品名)及びサゾールC80(商品名)を例示することができ、いずれもサゾールワックス社から市販されている。
本発明のホットメルト接着剤は、(C)フィッシャートロプシュワックスを含むことによって、耐熱性および熱安定性、さらには高温領域の接着強度に優れる。(C)フィッシャートロプシュワックスの融点は、100〜120℃であることが好ましい。フィッシャートロプシュワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度10℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0031】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤)、微粒子充填剤を例示することができる。
「粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0032】
そのような粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、上述の樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0033】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブY135(商品名)、アイマーブP125(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR231C(商品名)、ECR179EX(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0034】
「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、エチレン系共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、DNオイルKP−68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0035】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0036】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0037】
「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0038】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、ADEKAのアデカスタブAO−60(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)、JP−650(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。
【0039】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0040】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体、(C)フィッシャートロプシュワックス、更に必要に応じて上述の各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0041】
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とする紙製品を得ることができる限り、特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーP4メルター(商品名)、プロブルーP10メルター(商品名)等を例示することができる。
塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。
【0042】
ホットメルトアプリケーターで本発明のホットメルト接着剤を塗工する場合(ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗工する場合であっても)、ホットメルト接着剤の糸状物が殆ど吐出しなくなる。従って、被着体やアプリケーターが糸状物で汚れることがない。
本発明に係るホットメルト接着剤は、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙製品等に幅広く利用されるが、紙製品を製造するために好適に使用することができ、紙製品用ホットメルト接着剤として有用である。
【0043】
本発明に係る紙製品とは、上述のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品をいう。紙製品の種類については、上述のホットメルト接着剤を用いて製造される限り、特に限定されることはないが、具体的には、例えば、製本、カレンダー、ダンボール及びカートン等を例示できる。本発明のホットメルト接着剤の特性を考慮すると、本発明の紙製品として、ダンボール、カートン等の厚紙が特に有効である。
【0044】
本発明の主な態様を、以下に示す。
1.(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、(A)と(B)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は13〜35重量部であるホットメルト接着剤。
2.(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含み、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含む上記1に記載のホットメルト接着剤。
3.(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B2)エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体を更に含む上記2に記載のホットメルト接着剤。
4.(C)フィッシャートロプシュワックスを、更に含む上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
5.(C)フィッシャートロプシュワックスの融点は、100℃〜120℃である上記4に記載のホットメルト接着剤。
6.上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0046】
以下にホットメルト接着剤の原料、および配合、評価方法を記載する。
(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体
(A1)エチレン/オクテン共重合体(1−オクテン含量:35〜37重量%、メルトフローレート500g/10min、ダウ・ケミカル社製のAFFINITY GA1950(商品名))
(A2)プロピレン/エチレン/1−ブテンの共重合体(ガラス転移点−28℃、軟化点124℃、190℃溶融粘度2700mPa・s、エボニックデグサ社製のVESTPLAST703(商品名))
【0047】
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体
(B1)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(メタクリル酸メチル含量32重量%、メルトフローレート450g/10min、住友化学社製のアクリフト CM5022(商品名))
(B2)エチレン/アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量25重量%、メルトフローレート250g/10min、ダウ・ケミカル社製のNUC-6070(商品名))
(B3)エチレン/酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量28重量%、メルトフローレート18g/10min、東ソー社製のウルトラセン710(商品名))
【0048】
(C)フィッシャートロプシュワックス
(C1)フィッシャートロプシュワックス(融点108℃、針入度が2、サゾール社製のサゾールワックスH1(商品名))
融点は、発明の詳細に説明した方法で測定した。
(D)粘着付与樹脂
(D1)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(軟化点125℃、出光興産社製のアイマーブP125(商品名))
(E)安定化剤
(E1)テトラキス(メチレン−3−(3’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート)メタン(融点110〜130℃、ADEKA社製のアデカスタブ AO-60(商品名))
(E2)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(融点180℃、城北化学社製のJP-650(商品名))
【0049】
これらの成分を表1及び2に示す割合(重量部)で溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約145℃で約1時間かけて溶融混合して、実施例1〜5、及び比較例1〜5のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、耐熱性、接着性、熱安定性及び糸曳き性を、下記の方法を用いて評価した。
【0050】
耐熱性、接着性は、Kライナーダンボールにホットメルト接着剤を塗布してサンプルを得た。熱安定性は、ホットメルト接着剤を180℃雰囲気下で1週間保管し、粘度変化率及び炭化物の発生を確認した。糸曳き性は、180℃条件下でホットメルト接着剤の吐出状態を確認した。以下に各評価の概要について記載する。
【0051】
<耐熱性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム3秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせた。
(評価方法)
作製したサンプルを60℃雰囲気下で、応力方向に300g/25cm荷重を掛け、貼り合わせたサンプルが剥離するまでの時間を測定した。
◎ : 剥離時間が8時間より長い
○ : 剥離時間が5時間〜8時間
△ : 剥離時間が2時間以上で、5時間未満
× : 剥離時間が2時間未満
【0052】
<接着性>
(サンプル作製)
180℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Kライナーダンボールに、塗工量2g/m、セットタイム10秒、オープンタイム3秒、プレス圧1kg/25cmの条件でKライナーダンボールを貼り合わせた。
(評価方法)
作製したサンプル60℃、23℃、又は−10℃に設定した恒温槽中に24時間養生し、その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占めるKライナーダンボールの破壊の割合を材破率(材料が破壊された割合)とし、その状態を評価した。
◎ : 材破率が80%より高い
○ : 材破率が60%〜80%
△ : 材破率が40%以上で、60%未満
× : 材破率が40%未満
【0053】
<熱安定性>
(サンプル作製)
ホットメルト接着剤を70ccのガラス瓶に20g入れ、180℃恒温槽にて1週間保管し、1)粘度増減率、2)炭化物の発生について確認した。
(評価方法)
1)粘度増減率
粘度増減率は、ホットメルト接着剤の180℃での初期粘度に対し、1週間後のホットメルト接着剤の180℃での粘度が増減した割合である。
具体的には、以下の計算式にて求めた。
粘度増減率(%)=(180℃で1週間保管後の溶融粘度)×100/180℃での初期粘度)−100
◎ : 粘度増減率が5%未満
○ : 粘度増減率が5%〜10%
△ : 粘度増減率が10%より大きく、20%より小さい
× : 粘度増減率が20%以上
2)炭化物の発生
◎ : 炭化物なし
○ : 炭化物がわずかにあり
△ : 炭化物があり
× : 炭化物が著しい
【0054】
<糸曳き性>
ホットメルトガンの先端から20cm離れた被着体へホットメルト接着剤を垂直に間欠塗布した。ホットメルトガンと被着体との間の落下物の状態を目視にて観察し、糸曳き性を評価した。
(測定条件)
温度設定:タンク、ホース、及びノズル全て180℃
ノズル径:14/1000インチ
ノズル:1orifice(吐出口の数:1)、4orifice(吐出口の数:4)
塗出圧力:0.4MPa
塗出ショット数:1orificeは350ショット/5分間
4orificeは70ショット/1分間
◎ : 落下物の形状は粒状
○ : 落下物の形状は殆ど粒状であるが、わずかに糸状のものが混在
△ : 落下物の形状は、粒状と糸状が混在
× : 落下物の形状は糸状
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1に示すように、実施例1〜5のホットメルト接着剤は、(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を特定の割合で含むので、耐熱性、接着性、熱安定性及び糸曳き性のいずれにも優れ、その性能のバランスにも優れる。実施例1〜実施例3のホットメルト接着剤は、成分(B)が(B1)の他に、(B2)又は(B3)を含むので、耐熱性、接着性、熱安定性及び糸曳き性の全てについて◎という極めて優れた性能を示している。実施例のホットメルト接着剤は、紙加工分野、特にダンボールやカートン等の厚紙への塗布に有用である。
【0058】
これに対し、比較例1〜5のホットメルト接着剤は、表2に示されるように、耐熱性、接着性、熱安定性、糸曳き性のいずれかの性能が乏しい。
比較例1〜比較例3、比較例5のホットメルト接着剤は、実施例のホットメルト接着剤と比べ、成分(B)の割合が低い。成分(B)の割合が低い場合、ホットメルト接着剤の耐熱性は著しく低下することが表2から確認された。
比較例4のホットメルト接着剤は、実施例のホットメルト接着剤と比べ、成分(B)の割合が高い。成分(B)の割合が高くなることによって、ホットメルト接着剤の熱安定性は著しく低下することが表2から確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工分野、特にダンボール等の厚紙の製造に特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体及び(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
(A)と(B)の合計100重量部当たり、(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は13〜35重量部であるホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)エチレン/炭素数3〜20のオレフィン共重合体は、(A1)エチレンとオクテンとの共重合体を含み、
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B1)エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体を含む請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)エチレン/カルボン酸エステル共重合体は、(B2)エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体を更に含む請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(C)フィッシャートロプシュワックスを、更に含む請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて製造される紙製品。

【公開番号】特開2012−177009(P2012−177009A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39806(P2011−39806)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】