説明

ホトマスク製造方法

【目的】 高精度の位相シフタパターンを容易に形成する。
【構成】 マスク基板11上に位相シフト層13となる塗布シリコン酸化膜を回転塗布する。レジスト14を回転塗布する。続いて、所定パターンを電子線露光で形成する。このレジスト14のパターンをマスクとして、平行平板型リアクティブ・イオン・スパッタリング装置を用いて、塗布シリコン酸化膜を280nmの膜厚だけドライエッチングにより除去する。この除去した膜厚は位相シフト層13の全膜厚の70%に相当する。続いて、残った塗布シリコン酸化膜を緩衝弗酸溶液を使用してウエットエッチングにより除去する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はホトリソグラフィで使用するためのホトマスクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原画パターンの描かれたホトマスクを照明系で照射しマスク上のパターンをウェハー上に転写する投影露光装置を用いて、転写されるパターンの微細化が求められている。この微細化を実現する方法として、たとえば特開昭62−50811号公報や、特開昭62−59296号公報等に記載されているような、露光光に位相差を与えるホトマスクを用いる方法が知られている。これらで提案されているマスクは、図3に示すように、マスク基板1上に転写すべきパターンの原画となる遮光部2を設け、さらに遮光部2をはさむ両側の透明部の一方の上に露光光の位相を変化させる層(以下位相シフト層3という)を設けている。
【0003】図3に示した構造の位相シフトマスクの製作にあたっては、まず遮光部2のパターンを形成した後に、位相シフト層3のパターンを遮光部2のパターンに合わせて形成する工程が必要となる。この透明膜パターンである位相シフト層3を形成するのは、ドライエッチングを用いる方法とウエットエッチングを用いる方法とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の位相シフトマスクの構成では、位相シフトマスク製作の際の位相シフト層3のパターンを加工するために、既に述べたように、ドライエッチング法とウエットエッチングを用いる方法とがある。
【0005】図4(a)にドライエッチングにより透明膜パターンを形成した場合、図4(b)にウエットエッチングによりパターンを形成した場合のマスクの断面構造をそれぞれ示す。
【0006】いずれの方法でも、位相シフト層3は、レジストパターン4をマスクとしてエッチングをすることで形成している。ドライエッチングにより、位相シフタ層3を形成しようとすると、ドライエッチングに対するマスク基板1と位相シフト層3の間のエッチング選択比(エッチングレート比)が低いことが問題となる。
【0007】たとえば、位相シフト層3としてもっともよく用いられる塗布シリコン酸化膜(SOG;Spin On Glass)の石英基板に対するドライエッチングの選択比がせいぜい1.5程度である。これは、石英基板と塗布シリコン酸化膜の主成分がともにSiO2であるためである。マスク基板1面内のエッチング均一性やローディング効果であるパターンの粗密によりエッチングレートに差が生じる等の影響を考慮して、オーバーエッチングを行うと、基板がエッチングされてしまう。位相シフト層3は、透過光の位相を反転させるように正確に形成する必要があり、このようにマスク基板1がエッチングされると、位相シフトマスクを用いても解像度を向上させる効果が実現できない。
【0008】このようなマスク基板1のエッチングを避けるために、エッチングストッパ層をマスク基板1と遮光部2の間に形成することが検討されている。しかし、エッチングストッパ層を形成すると、露光時に、露光光がエッチングストッパ層で吸収されたり、多重干渉効果が生じて光透過率が変化してしまう。また、エッチングストッパ層を形成する工程が増えるので、パーティクルが発生するという問題がある。ドライエッチング法を用いると、ドライエッチングは真空プロセスであるため、ドライエッチング前にマスク基板1に付着したパーティクルがシフタ欠陥になる。さらに、エッチング中にパーティクルが発生することにより、マスク欠陥が増加するという問題があった。
【0009】ウエットエッチング法を用いると、塗布シリコン酸化膜の石英基板に対する緩衝弗酸溶液(BHF)によるウエットエッチングの選択比は5〜6程度となる。したがって、ウエットエッチングにより位相シフト層3をエッチングした場合、マスク基板1がエッチングされるという問題は避けられる。しかし、ウエットエッチングは等方的なエッチングであるため、図4(b)に示すように、加工される位相シフト層3の断面形状が傾きを持ち、レジストパターン4の端から内側にエッチングされる。このため、位相シフタ層3のパターンの寸法制御が困難であり、図3(b)に示すように位相シフタ層3のパターン端が光透過部にかかってしまうというような問題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために本発明のホトマスクの製造方法は、光透過性の半導体基板上に形成される遮光部の上層あるいは下層に、露光光の位相を制御するための透明膜を、最初にその50%以上95%以下の膜厚をドライエッチし、残りの膜厚をウエットエッチすることによって所定のパターンに形成する。
【0011】
【作用】本発明のように位相シフタ層をドライエッチングとウエットエッチングとを組み合わせて形成することにより、高精度の位相シフタパターンを容易に形成することができる。
【0012】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】図1は本発明に係るホトマスクの製造工程を示す工程図である。ここでは、マスク基板11として石英基板、遮光部12としてクロム膜、位相シフト層13として塗布シリコン酸化膜、レジスト14としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。
【0014】図1に示すように、マスク基板11上に遮光部12のクロム膜が蒸着されたものを用いる。クロム膜のパターンはよく知られた通常のホトマスク製造プロセスにより製造する。このマスク基板11上に位相シフト層13となる塗布シリコン酸化膜を膜厚が400nmとなるように回転塗布し、250℃で熱処理を施す。さらに、電子線レジスト14を膜厚が500nmとなるように回転塗布し、170℃で熱処理を行なう。続いて、所定パターンを30μC/cm2の露光量で電子線露光を行なった後、メチルイソブチルケトン(MIBK)を用いて3分間のスプレー現像をしてレジスト14のパターンを形成する(図1(a))。さらに、このレジスト14のパターンをマスクとして、トリフロロメタン(CHF3)と酸素との4:1の混合ガスを使用して、平行平板型リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)装置を用いて塗布シリコン酸化膜を280nmの膜厚だけドライエッチングにより除去する(図1(b))。この除去した膜厚は位相シフト層13の全膜厚の70%に相当する。続いて、残った塗布シリコン酸化膜を緩衝弗酸(BHF)溶液によるウエットエッチングにより除去する(図1(c))。さらに、レジスト14を硫酸・過酸化水素に漬けることにより除去して、位相シフトマスクが形成される。
【0015】上記実施例では、位相シフタ層13の全膜厚の70%をドライエッチングによりエッチングした。しかしドライエッチングの割合は、この例に限られるものでなく、ドライエッチングの割合は50%〜95%の範囲内であればよい。ドライエッチングの割合が50%未満であれば、その後のウエットエッチにより位相シフタ層13のパターンが台形形状に近くなり、位相シフタ層13の寸法の制御が困難になる。また、ドライエッチングの割合が95%を越えた場合、ドライエッチングの面内均一性、ローディング効果等によるエッチング量のばらつきが生じやすくなり、石英基板がエッチングされてしまう。
【0016】ドライエッチングにより位相シフタ層13のパターンを加工した場合、エッチング面が荒れ、露光時の光が散乱する。このため、位相シフタ層13のパターンでの光の透過率が低下してしまう。しかし、本実施例ではエッチングの最終段に選択性が高く、等方的なウエットエッチングを行っているため、位相シフタ層13をエッチングで形成した後の表面荒れは全く見られなかった。
【0017】また、ドライエッチングを用いてホトマスクを製造する場合、エッチング前あるいはエッチング中にマスク基板に付着したパーティクルは、ドライエッチングが異方的なエッチングであるために位相シフタ層13にそのまま残ってしまい欠陥となる。しかし、本実施例のマスク製造方法は、ドライエッチングの後ウエットエッチングを行っているため、図2に示すように、位相シフタ層13上にパーティクル15が残っていたとしても、まずその露出している部分16がドライエッチングで除去され、つぎにパーティクル15直下の部分を含めてウエットエッチングにより除かれる。これにより、ドライエッチングだけでは位相シフタ層13上のパーティクル15によって誘起されるシフタ欠陥が、ドライエッチングとウエットエッチングとを併用することで除去される。このため本実施例の方法は位相シフトマスクの欠陥低減という意味からも効果が大きい。
【0018】このようにして形成したホトマスクを用いて、露光波長365nm、開口数(NA)0.5の1/5縮小投影露光装置を用いてシリコンウェハ上にパターン転写を行なった。その結果、従来この装置では解像できる孤立線の最小寸法はウェハ上で0.5μmであったものが、本発明の方法によるマスクを用いることにより0.35μmの孤立線を形成することができた。また、ドライエッチングのみでシフタパターン形成を行った場合に比べて、本実施例の方法ではマスク欠陥を1/3に低減できた。
【0019】
【発明の効果】本発明のホトマスク製造方法を用いることにより、高精度で欠陥密度の低い位相シフトマスクを簡単な工程で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホトマスクの製造方法を示すホトマスクの工程順断面図
【図2】ドライエッチング時にパーティクルが存在したホトマスクの断面図
【図3】従来の位相シフトマスク構造を示す断面図
【図4】従来のホトマスク製造方法により製造された位相シフトマスクの断面図
【符号の説明】
11 マスク基板
12 遮光部
13 位相シフト層
14 レジスト
15 パーティクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】光透過性の半導体基板上に形成される遮光部の上層あるいは下層に、露光光の位相を制御するための透明膜を、最初にその50%以上95%以下の膜厚をドライエッチし、残りの膜厚をウエットエッチすることによって所定のパターンに形成することを特徴とするホトマスク製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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