説明

ホログラフィック記憶媒体およびその製造方法およびホログラフィック記憶デバイス

【課題】記憶されたホログラフィック情報への温度変動の影響を減少させる方法を提供すること。
【解決手段】ホログラフィック記憶媒体、ホログラフィック記憶媒体の製造方法、および記憶媒体を含むホログラフィック記憶デバイスを提供する。一実施形態において、ホログラフィック記憶媒体は、(1)第1の基板がプラスチックである間隔をおいて配置された第1および第2の基板(205,210))、および(2)前記第1および第2の基板間に配置されたホトポリマーコア(215)を含み、このホトポリマーコアは、前記第1および第2の基板および前記ホトポリマーコアが温度変化に実質的に等方的に応答するように協動するような熱膨張係数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージデバイス(記憶装置)に係り、特に、強化された温度動作範囲を有するホログラフィックストレージのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化された情報システムの開発をサーポートする技術は、主に焦点が当てられている領域である。データの光学的記憶は、過去数年間においてこれらの技術における光が当たっていたものの1つであった。例えば、コンパクトディスクが音楽の記録のための市場を支配し、そして今、文章、画像および音を組合せ得るマルチメディアリリースのための標準的媒体である。コンパクトディスクは、約640メガバイトを保持でき、これは、ダブルスペースでタイプされた文章の300,000頁または1時間15分の高忠実度(high-fidelity )の音楽を収容できる。しかし、情報記憶装置の開発は、記憶容量の増大を求めて続けられている。
【0003】
この開発の一部として、ホグラフィック記憶を使用するページワイズ(page-wise )メモリシステムが、従来のメモリデバイスの代替物として提案されてきた。1頁のデータを記憶するページワイズメモリシステムは、完全な二次元表現の記憶および読み出しに関係する。典型的には、記録または「書き込み(writing)」光は、データを表す暗い領域および透明領域の二次元アレイを通る。そして、ホログラフィックシステムは、データを三次元に記憶し、ページのホログラフィック表現が、記憶媒体にインプリントされた(imprinted)変化する屈折率のパターンとして生じる。
【0004】
ホログラフィックデータ記憶は、典型的には、記録されたデータページの角度帯域幅(angular bandwidth )により生じたピリオドに比例する間隔でチルト角を変化させるグレーティングの分布(distribution)からなる。復元または「読み出し」光は、グレーティングに関してよく定義された入射角(ブラッグ角(Bragg angle))で回折する。ホログラフィックシステムに関する背景情報は、D. Psaltis 等による、Scientific American, November (1995) によるHolographicMemories に示されている。
【0005】
ホトポリマー(photopolymer)材料は、高密度ホログラフィックデータ記憶のための魅力のある記録媒体の候補として考えられている。これらは、低コストであり、容易に処理され、高い感光性(photosensitivity)で大きなインデックスコントラストを有するように設計され得る。このクラスの材料は、高密度アプリケーションに必要とされるダイナミックレンジ、メディア厚さ、光学品質および寸法安定性(dimensional stability )で製造され得る。これは、Lisa Dhar 等による、"Recording Media That Exhibit High Dynamic Range for Holographic Storage", Optics Letters, Volume 24, P.487 (1999)に開示されている。これらの材料の欠点の1つの領域は、それらのかなり大きな熱膨張係数であり、これは、温度変化で材料の寸法変化を生じる。
【0006】
ホログラフィック記録のためのポリマー材料は、典型的には、高い光品質を保証するために、2つの基板間にサンドイッチされる。現在、ガラス基板は、ポリマー材料をサンドイッチするために使用される。ガラス基板中のポリマーの温度変動により生じる寸法変化は、変動が、厚さ(基板の面に直角)の方向に主に生じるような異方性を示す。これは、ポリマー材料が、横(基板の面に平行)方向にしかっりした基板により束縛されており、厚さ方向への移動のみが許容されているために生じる。
【0007】
この異方性温度応答は、異方性温度応答の影響より約3倍大きいデータ復元の忠実性(fidelity)への負の影響を生じる。この振る舞いは、ホログラフィックデータ記憶媒体としての材料の使用の許容可能な動作温度範囲を深刻に制限する。異方性温度影響に関する背景情報は、Lisa Dhar 等による"Temperature-Induced Changes in Photopolymer Volume Holograms", Applied Physics Letter, Volume 73 No. 10, 1337 (1998) に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この技術分野において必要とされているものは、記憶されたホログラフィック情報への温度変動の影響を減少させる方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の上述した欠点を解決するために、本発明は、ホログラフィック記憶媒体、ホログラフィック記憶媒体の製造方法、および記憶媒体を含むホログラフィック記憶デバイスを提供する。一実施形態において、ホログラフィック記憶媒体は、(1)第1および第2の間隔をおいて配置された基板、第1の基板はプラスチックである、および(2)第1と第2の基板間に配置され、第1および第2の基板とホトポリマーコアが温度変化に実質的に等方的に応答するように協同するような熱膨張係数を有するホトポリマーコアを含む。
【0010】
本発明は、ホログラフィック記憶媒体のうちの少なくとも1つの基板の寸法の安定性が、必ずしも望ましくなく、コアと少なくとも1つの基板との間の機械的コンパティビリティが、熱膨張が等方性になりかつより小さい光学的影響を有するようになることにより重要であることを認識した。
【0011】
本発明の目的のために、「実質的に等方的に応答する」という用語は、ホログラフィック記憶媒体を構成するために使用される材料のブラッグ角シフト(Bragg Angle Shifts)に対する動作限界を、熱膨張が超えないと言うことを意味する。当業者は、ブラッグ角シフトをよく知っている。代替的に、応答は実質的に等方性でない可能性があるが、異方性の程度は、強化された動作温度範囲が、許容できない書き込みまたは読み出しエラーを生じることなしに保たれるようなものである。上述した影響は、単一のホログラム並びに何れかの現在または将来において開発される多重化技法を使用してボリュームにおいて多重化されたホログラムに対して記述されている。例えば、角度多重化(angle multiplexing)、波長多重化(wavelength multiplexing)、位相相関多重化(phase correlation multiplexing)、アパーチャ多重化(aperture multiplexing)、シフト多重化(shift multiplexing)、および位相コード多重化(phase code multiplexing)である。
【0012】
また、ホトポリマーコアは、異方性材料並びに光活性モノマー系を含む。光活性モノマー系は、光の入射でポリマー化するモノマーを含む系である。光活性モノマー系は、記録メカニズムとしてポリマー化を使用するホトポリマーにおいて使用され、この技術分野における当業者によく知られている。
【0013】
本発明の一実施形態において、ホトポリマーコアの熱膨張係数は、第1の基板の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある。関連する実施形態において、ホトポリマーコアの熱膨張係数は、第2の基板の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある。
【0014】
本発明の一実施形態において、第2の基板はプラスチックである。例示されかつ説明される一実施形態において、第2の基板は、これはそうである必要はないが、第1の基板と同じ材料からなり、同じ横方向寸法を有する。本発明の他の実施形態において、第1および第2の基板を形成する材料は、異なってもよいしまたは同じでもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、ポリマーコアの熱膨張係数の光学的影響は、波長に依存する。本発明の別の実施形態において、ホトポリマーコアの熱膨張係数の光学的影響は、読み出しレーザの波長を調節することにより補償され得る。これは、熱膨張または収縮により生じる光学的変動をさらに補償するために、調節可能レーザーが使用されることを可能にする。
【0016】
本発明の一実施形態において、ホトポリマーコアの一部が、光活性モノマー系である。本発明の別の実施形態において、ホトポリマーコア全体が、光活性モノマー系である。
【0017】
本発明の一実施形態において、露光で、ホトポリマーコアまたはホトポリマーコアの一部をポリマー化する。しかし、相互作用の存在、程度または不存在を意味するコア内の化学的または構造的変化は、本発明の広い範囲内にある。
【0018】
本発明の一実施形態において、本発明は、以下のものを含むホログラフィックストレージデバイスを提供する。(1)コヒーレント光源。(2)前記コヒーレント光源から得られたオブジェクトビームおよびリファレンスビーム間の相互作用における変化を生じさせるホログラフィック多重化メカニズム。(3)前記相互作用から生じる干渉パターンを受け取りかつ記憶するホログラフィック記憶媒体であって、(A)プラスチックである第1および第2の間隔をおいて配置された基板、および(B)前記第1および第2の基板間に配置されたホトポリマーコアであって、前記第1および第2の基板および前記ホトポリマーコアが、温度変化に実質的に等方性に応答するように協動するような熱膨張係数を有するもの。
【0019】
本発明の目的のために、「相互作用の変化を生じさせる」という用語は、ホログラフィック多重化メカニズムが、相互作用におけるグレーティングのピリオドまたは位相の変化を生じさせることができることを意味する。勿論、しかし、相互作用に対する他のタイプの変化も、同様に、本発明の広い範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の原理により構成されるホログラフィックイメージを生成しかつキャピチャーするように構成された角度多重化を使用するホログラフィック記憶システムの一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の原理により構成されたホログラフィック記憶媒体に記憶されるホログラフィックデータページを再生成かつ復元するように構成されたホログラフィック記憶システムの一実施形態を示すブロック図。
【図3】図1のホログラフィック記憶デバイスにおいて使用されるホログラフィック記憶媒体の一実施形態を示す図。
【図4】異なるタイプのホログラフィック記憶媒体についての理論的温度応答を示す図。
【図5】2つのホログラフィック記憶媒体についての実験的な温度応答を示す図。
【図6】本発明の原理により構成されたホログラフィック記憶媒体を製造する方法の一実施形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、本発明の原理に従って構成されるホログラフィックイメージを作製しかつキャプチャーするように構成された角度多重化(angle multiplexing)を使用するホログラフィック記憶システム100の一実施形態のブロック図が示されている。図示された実施形態は、角度多重化を使用するが、他の実施形態は、波長多重化、位相相関多重化、アパーチャー多重化、シフト多重化および位相符号多重化のような他のホログラフィック多重化スキームまたはメカニズムを使用することができ、将来開発される技法も、本発明の広い範囲内にある。
【0022】
システム100は、通常のコンピュータ105および強化された温度動作範囲を有するホログラフィック記憶デバイス110を含む。ホログラフィック記憶デバイス110は、オブジェクトディスプレイ115、コヒーレント光源120、通常の光ステアリングメカニズム125、ホログラフィック記憶媒体130および制御ユニット135を含む。図1は、オブジェクトディスプレイ115上に表れるオブジェクトのホログラフィックイメージをホログラフィック記憶媒体130へ記憶し、または書き込むように構成されたホログラフィック記憶デバイス110を示す。
【0023】
図示された実施形態において、オブジェクトディスプレイ115は、コンピュータ105に結合されており、ホログラフィック記憶媒体130に記憶されるべきデジタル情報を受け取る。複数ビットのデジタルデータストリームは、アレイまたはデータページに配列され、オブジェクトディスプレイ115を使用して、システムに提供される。一実施形態において、オブジェクトディスプレイ115は、ホログラフィック記憶媒体130に記憶されまたは書き込まれるべき透明または不透明の正方形のパターンにより1または0を表す液晶ディスプレイ(LCD)スクリーンである。
【0024】
他の実施形態において、オブジェクトディスプレイ115は、何れかの空間−光変調器であり得る。当業者は、空間−光変調器の使用についてよく知っている。空間光変調器からの変調されたビームが、当業者によく知られた光学エレメントを使用して、ホログラフィック記憶媒体130へイメージ化され、フーリエ変換されまたはリレーされる。
【0025】
コヒーレント光源120は、光ステアリングメカニズム125に向けられた波長調節可能なレーザである。光ステアリングメカニズム125、角度多重化のためのホログラフィック多重化メカニズムは、ホログラフィック記憶媒体130へのビームの入射角度を変化させる。ホログラフィック記憶媒体130における同じ場所で多重化される各ホログラムは、異なる角度で記憶される。ホログラフィック記憶媒体130は、オブジェクトディスプレイ115からのオブジェクトビームと光ステアリングメカニズム125からのリファレンスビームとの間の相互作用から生じる干渉パターンを受け取りかつ記憶する。
【0026】
制御ユニット135は、コンピュータ105にも結合されており、書き込み光、スキャンされるべきオブジェクト、生成されるホログラフィックイメージの管理および記憶媒体のポジショニングの全ての側面を調整することにより、ホログラフィック記憶デバイス110の動作を管理する。当業者は、調節可能レーザの使用についてよく知っている。ホログラフィックシステムに関する背景情報は、D. Psaltis等による、Holographic Memories, Scientific American, November(1995) に示されている。
【0027】
一実施形態において、ホログラフィック記憶媒体130は、第1および第2の間隔をおいて配置されたプラスチック基板およびホトポリマーコアを含む(ホログラフィック記憶媒体の更なる詳細は図3を参照)。ホトポリマーコアは、第1の基板と第2の基板との間に配置され、第1および第2の基板の熱膨張係数とほぼ一致する熱膨張係数を有する。熱膨張係数を適切に一致させることは、ホログラフィック記憶媒体130が、動作温度の変化に実質的に等方的に応答することを可能にする。
【0028】
ホログラフィック記憶媒体130の実質的に等方性の変化は、記憶されたホログラフィックイメージが、拡張された動作温度範囲において許容可能な忠実性で復元されることを可能にする。この範囲は、等方性変化が異方性変化よりも小さいという事実により拡張される。また、等方性の変化、膨張または収縮は、読み出し波長の変化により補償され得る。
【0029】
図2において、本発明の原理に従って構成されたホログラフィック記憶媒体130に記憶されるホログラフィックデータページを再作成しかつ復元するように構成されたホログラフィック記憶システム101の一実施形態のブロック図を示す。システム101は、コンピュータ105および強化された温度動作範囲を有するホログラフィック記憶デバイス110を含む。ホログラフィック記憶デバイス110は、コヒーレント光源120、光ステアリングメカニズム125、ホログラフィック記憶媒体130、センサー140および制御ユニット135を含む。
【0030】
ホログラフィック記憶デバイス110は、ホログラフィック記憶媒体130中に記憶されたデータページのホログラフィックイメージを読み出すように構成されている。コヒーレント光源120は、読み出し光を、光ステアリングメカニズム125を通してホログラフィック記憶媒体130へ供給する波長調節可能なレーザである。読み出し光は、ホログラフィック記憶媒体130中に記憶された誘電体変調と干渉またはこれと回折し、デジタルデータページを復元する。
【0031】
異なるデータページが、光ステアリングメカニズム125を使用して、リファレンスビームの角度を変化させることによりアドレスされる。復元されたデジタルデータページは、同時に検出されるデータページ中の全てのビットと共にセンサー140にイメージ化される。当業者は、ホログラフィック記憶システム中のセンサー140のようなセンサーアレイまたは検出器ユニットの使用についてよく知っている。
【0032】
センサー140は、再作成されたホログラフィックデータページを更なる処理のためにコンピュータ105へ送る。典型的には、エラー訂正コードおよびチャネル変調コードが、デジタルデータを復元するために使用される。制御ユニット135は、コンピュータ105に結合されており、コヒーレント光源120の波長を調節することおよび光ステアリングメカニズム125を制御することのような、ホログラフィック記憶デバイス110についての記憶されたホログラフィックデータページを読み出す全ての側面を調整する。ホログラフィックシステム中のホログラフィックイメージを復元することに関する背景情報は、D. Psaltis等による、Holographic Memories, Scientific American, November (1995)に示されている。
【0033】
図3において、図1および2のホログラフィック記憶デバイス110において使用されるホログラフィック記憶媒体200の一実施形態の図が示されている。ホログラフィック記憶媒体200は、間隔をおいて配置された第1および第2の基板205,210、および基板間に配置されたホトポリマーコア215を含む。ホトポリマーコア215は、ホログラフィック記録の間に書き込まれる光干渉パターン220を含む。
【0034】
図示されている実施形態において、ホトポリマーコア215を光に曝すことにより、ホトポリマーコア215をポリマー化する。また、第1および第2の基板205,210およびホトポリマーコア215は、温度変化に実質的に等方的に応答するように協同する。
【0035】
別の実施形態において、ホトポリマーコア215は、第1の基板205の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある熱膨張係数を有する。関連する実施形態において、ホトポリマーコア215の熱膨張係数は、第2の基板210の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある。
【0036】
例示された実施形態において、ホトポリマーコア215の一部が、感光性モノマー系である。代替的な実施形態において、ホログラフィック記憶媒体200のコア内の相互作用の存在、程度または不存在が、光干渉パターン220を表現するまたは表すために使用され得る他の化学的または構造的変化により表現され得る。
【0037】
図3は、その読み出し特性が温度に依存する光干渉パターン220のいくつかの典型的な特性を示す。光干渉パターン220は、図3に示されているようにグレーティングピリオドΛにより特徴づけられ、光干渉パターン220が示す垂直からの偏差を示すチルト角Φにより特徴づけられる。また、ブラッグ角シフト
【数1】

は、ブラッグマッチングを得るために元の記録位置から入射読み出し光により必要とされる方向のシフトを示す。更なる参照として、Lisa Dhar 等による、"Temperature-induced changes in photopolymer volume holograms", AppliedPhysics letters, Volume 73, No. 10, p 1337 (1998) を参照のこと。当業者は、グレーティングピリオド、チルト角、ブラッグマッチングおよびブラッグ角シフトについてよく知っている。
【0038】
異方性温度応答は、これらのパラメータが変化しかつ再生成されるオブジェクトの許容可能な忠実度を維持する温度範囲を大幅に制限する。代替的に、本発明の図示された実施形態において示されている実質的に等方性の温度応答は、必要とされるブラッグシフトを減少させる。したがって、この特性は、強化された温度範囲について再生成されるオブジェクトの許容可能な忠実度を維持する。
【0039】
また、ホログラフィック記憶媒体200の温度応答は、実質的に等方性でない可能性があるが、異方性の程度は、強化された動作温度範囲が、許容できない書き込みまたは読み出しエラーを受けることなしに維持されるようなものであり得る。例示された実施形態において、ホトポリマーコア215の熱膨張係数の光学的影響は、レーザの波長を変化させることにより、中和され得る。これは、調節可能レーザが熱膨張または収縮により生じた光学的変動をさらに補償するように、図1および2のコヒーレント光源120として好都合に使用されることを可能にする。しかし、レーザの波長の変化は、記録または書き込みにおいて表れる光学的倍率の変化を生じさせる。この倍率の変化は、検出されるべきデータページの元の倍率を復元するように適切に修正され得る。
【0040】
一般に、第1および第2の基板205,210は、同じ材料または異なる材料を含み得る。例示された実施形態において、第2の基板210は、第1の基板205と同じ材料、プラスチックを含む。また、第2の基板210は、これはそのようにする必要はないが、第1の基板205と同じ横方向寸法を有する。
【0041】
図4において、異なるタイプのホログラフィック記憶媒体についての理論的温度応答を示すグラフ300が示されている。グラフ300は、第1、第2および第3の曲線305,310,315を含む。第1の曲線305は、2つのガラス基板間に配置された感光性コアを使用するホログラフィック記憶媒体についての温度応答を示す。この構造は、温度変動に対する許容できない異方性応答を示す。この第1の曲線305は、ブラッグ角シフトが、摂氏15度の温度上昇に対して、0.2度の示された許容可能な動作範囲の外側にあることを示す。このブラッグ角シフトの程度は、ストレージからオフジェクトを再生成するために読み出し光を使用するとき、許容できないレベルに忠実度を歪める。
【0042】
第2の曲線310は、図3のホログラフィック記憶媒体200についての温度応答を示す。ここで、ホトポリマーコア215および第1および第2の基板205,210は、実質的に等方性の温度応答を生じる。例示された実施形態において、ホログラフィック記憶媒体200は、摂氏15度の同じ温度上昇に対して約0.1度のブラッグ角シフトを生じる実質的に等方性の応答を有する。このブラッグ角シフトは、許容可能な動作範囲全体の約1/2である。しかし、このシフトは、許容可能な範囲の下側半分において生じると思われ、これにより許容可能な範囲を有効に減少させる。
【0043】
第3の曲線315は、波長調節が使用されるときの図3のホログラフィック記憶媒体についての温度応答を示す。読み出し光の波長調節は、図示されているように、第2の曲線310を許容可能な動作範囲の中心に有効に再配置する。この温度応答を再配置または調節する能力は、ストレージからオブジェクトを再生成するための許容可能な忠実度の温度範囲を実際に拡張すると思われる。
【0044】
当業者は、本発明が、約0.1度のまたはいずれか他の絶対的な値のブラッグ角シフトに限定されないと分かるべきである。本発明は、波長調節を使用することも要求されない。他の実施形態は、同じまたは異なるタイプの感光性コアを使用し、より広い動作温度範囲およびより大きな書き込みおよび読み出し信頼性を生じる異なるブラッグ角シフトを生じ得る。
【0045】
図5において、2つのホログラフィック記憶媒体についての実験的温度応答を示すグラフ350が示されている。グラフ350は、第1および第2の曲線360,370を含む。第1の曲線360は、1ミリメートルの厚さの2つのガラス基板間に収容された250マイクロメートルの厚さのホトポリマー層を使用するホログラフィック記憶媒体についての温度応答を示す。第2の曲線370は、500マイクロメートルの厚さの2つのポリカーボネート基板間に収容された250マイクロメートルの厚さのホトポリマー層を使用するホログラフィック記憶媒体についての温度応答を示す。
【0046】
ブラッグデチューニング(Bragg detuning)レベルのシフトが、ホログラムの記録における温度より摂氏約6.7度高い温度において測定された。プラスチック基板(第2の曲線370)に収容されたホトポリマーについてのシフト範囲が、ガラス基板(第1の曲線360)に収容されたホトポリマー材料のシフト範囲より約2のべき乗小さいことが観察され得る。実験の詳細は、Lisa Dhar 等による"Temperature-induced changes in photopolymer volume holograms", Applied Physics letters, Volume 73, No. 10, p 1337 (1998) に示されており、これは、図5のデータを得るために使用されたものと同様の実験的セットアップを使用する。
【0047】
図6において、本発明の原理により構成されたホログラフィック記憶媒体を製造する方法400の一実施形態のフローチャートが示されている。方法400は、ステップ405において、第1および第2の基板として使用するための許容可能なプラスチックの選択でスタートする。ステップ405は、コアとして使用するための適切なホトポリマーの選択も含む。
【0048】
一実施形態において、ステップ405は、第1および第2の基板およびホトポリマーコアが、温度変化に実質的に当方的に応答するように協同するような熱膨張係数を有するホトポリマーコアを選択することを含む。第2の実施形態において、ホトポリマーコアは、第1の基板の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある熱膨張係数を有する。第3実施形態において、ホトポリマーコアは、第2の基板の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にある熱膨張係数をさらに有する。
【0049】
ステップ410において、第1および第2のプラスチック基板は、意図されるホログラフィック記憶媒体およびホログラフィック記憶デバイスに対する適切な厚さおよび形状を有するように形成される。そして、ホトポリマーコアは、ステップ415において、2つの基板間に形成される。方法400は、ステップ420において終了し、ここで、ホログラフィック記憶媒体は、適切にテストされかつパッケージされる。
【0050】
当業者は、本発明は、上述した製造プロセスに限定されないことを分かるべきである。本発明の他の実施形態は、他の製造プロセスを使用することができ、上述したものに対して追加的なステップまたはこれより少ないステップを有することができる。
【0051】
要するに、本発明は、ホログラフィック記憶媒体の少なくとも1つの基板における寸法の安定性は、必ずしも望ましいものではなく、むしろ、熱膨張が実質的に当方的になり、したがって光学的影響がより少なくなるという点で、コアと少なくとも1つの基板との間の機械的コンパチビリティがより重要である。これは、媒体についてのより広い動作温度範囲およびより大きい書き込みおよび読み出しの信頼性を生じる。動作温度範囲は、典型的には、少なくとも読み出し光の波長調節の使用によりさらに拡張され得る。
【0052】
[発明の効果]
以上の説明により、本発明によれば、記憶されたホログラフィック情報への温度変動の影響を減少させる方法を提供することができる。
【0053】
特許請求の範囲の発明の要件の後に括弧で記載した番号がある場合は本発明の一実施例の態様関係を示すものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0054】
100,101 ホログラフィック記憶システム
105 コンピュータ
110 ホログラフィック記憶デバイス書き込み構成
115 オブジェクトディスプレイ
120 コヒーレント光源
125 光ステアリングメカニズム
130 ホログラフィック記憶媒体
135 制御ユニット
140 センサー
200 ホログラフィック記憶媒体
205 第1の基板
210 第2の基板
215 ホトポリマーコア
220 光干渉パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から得られたオブジェクトビームとリファレンスビームとの間の相互作用の変化を生じさせるホログラフィック多重化メカニズムと、
前記相互作用から生じた干渉パターンを受け取りかつ記憶するホログラフィック記憶媒体とを有し、
前記ホログラフィック記憶媒体は、間隔をおいて配置された両方共にプラスチックである第1および第2の基板と、前記第1および第2の基板間に配置されたホトポリマーコアとを有し、
前記ホトポリマーコアは、前記第1および第2の基板および前記ホトポリマーコアが、温度変化に実質的に当方的に応答するように協同するような熱膨張係数を有し、前記ホトポリマーコアの熱膨張の光学的影響が、コヒーレント光源の波長を調整し、前記波長の前記調整に応答して光学的倍率を変化させることにより補償されることを特徴とするホログラフィック記憶デバイス。
【請求項2】
前記ホトポリマーコアの熱膨張係数が、前記第1および第2の基板の熱膨張係数の約50%ないし約500%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック記憶デバイス。
【請求項3】
前記コヒーレント光源が、前記相互作用を再生成するために、前記干渉パターンと相互作用する読み出し光を生成することを特徴とする請求項1記載のホログラフィック記憶デバイス。
【請求項4】
前記ホログラフィック多重化メカニズムは、前記読み出し光が、前記干渉パターンと相互作用するようにさせることを特徴とする請求項3記載のホログラフィック記憶デバイス。
【請求項5】
前記ホトポリマーコアの一部が、感光性モノマー系であることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック記憶デバイス。
【請求項6】
前記ホログラフィック多重化メカニズムが、角度多重化、波長多重化、位相相関多重化、アパーチャー多重化、シフト多重化、および位相コード多重化からなるグループから選択された1つであることを特徴とする請求項1記載のホログラフィック記憶デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164412(P2012−164412A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47791(P2012−47791)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2001−153733(P2001−153733)の分割
【原出願日】平成13年5月23日(2001.5.23)
【出願人】(501182197)インフェイズ テクノロジーズ インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】