説明

ホログラフィック記録可能フィルム内に2種類の異なるパターンを有する安全要素および製造方法ならびに読み取り装置

本発明は、平面的な第1パターン(2)がホログラムという形で形成され、その際、この第1パターンの中には、第1パターンが中断され、とくにバーコードの第2パターン(4)を形成する、第1パターンとは異なった部分領域(3)が形成されているホログラフィック記録可能フィルムによるホログラフィック安全要素(1)と、このような安全要素を有するセキュリティドキュメントおよび/または有価証券、その製造方法および読み取り方法、ならびにその読み取り方法を実施する装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録可能フィルムに平面的な第1のパターンが第1のホログラムという形で形成されているホログラフィック記録可能フィルムによるホログラフィック安全要素と、このような安全要素を有するセキュリティドキュメントおよび/または有価証券、およびその製造方法と読み取り方法、ならびにその読み取り方法のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全要素は、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の偽造またはコピーを防ぐ役割がある。安全要素には、例えば、シリアル番号、識別番号、バイオメトリックデータなどといった個別データもしばしば用いられる。これらのものは、平明な文章または絵の形で準備されるか、あるいは光学的にコーディングされたり、機械での読み取りが可能なように準備したりすることができる。最後に挙げた例では、機械による読取り信頼性の高いものとして、いわゆるバーコードが知られている。
【0003】
ホログラムを製造する場合の基本的な手順は、例えば、文献EP0896260A2(特許文献1)で説明されている。以下にその主な特徴を簡単に説明する。まず、マスターホログラムを使ってホログラフィマスターを作成する。次に、このホログラフィマスターをホログラフィク記録可能フィルムの後部に、例えば平坦面が接触した状態で位置決めする。ホログラフィマスターとは反対側のホログラフィック記録可能フィルム面に、レーザーなどのコヒーレント光が照射される。一般的には、レーザーの波長および入射角は、ホログラフィマスターによって再現されるホログラフィックパターンに応じて決定される。コヒーレント光はホログラフィック記録可能フィルムを通過した後、ホログラフィマスターによって屈折または反射させられる。その際、入射光による干渉によってホログラムが再現され、ホログラフィック記録可能フィルムの光化学過程を介して、ホログラフィック記録可能フィルムの中に表示、保存される。
【0004】
文献US2005/0188576A1(特許文献2)より、ホログラムとして形成したバーコードが知られている。
【0005】
ホログラフィックパターンまたは画像を他のホログラフィックパターンまたは非ホログラフィクパターンと重ね合わせる方法は、該当するパターンを別々の転写箔層に順次製造してから、それらを互いに積み重ねるというのが一般的である。この方法はコストと時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0896260A2
【特許文献2】US2005/0188576A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の基本的な技術課題は、ホログラフィによる第1パターンが第2パターンをも有し、これが簡単かつ迅速に製造可能であるような安全要素を示すことである。
【0008】
定義
安全要素は、少なくともひとつのセキュリティ特性を有する構成ユニットである。安全要素は、貼り付けなどの方法によって、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券と接続可能な独立した構成ユニットであり、しかしまた、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券に統合された構成部品でもあり得る。前者の例としては、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の上に貼り付け可能なビザがある。後者の例としては、ラミネートなどにより紙幣や証明書に統合されたホログラムがある。
【0009】
セキュリティ特性とは、単純なコピーとは逆に、製造や複製が非常に困難である構造、または無許可に製造したり、複製したりすることのできない構造を言う。本出願の枠内においては、第1および第2パターンがセキュリティ特性を有するか、セキュリティ特性によって形成される。
【0010】
ひとつのパターンは、例えば、互いに並べて配置されている多数のパターンユニットもしくはピクセルから構成されている。あるパターンのパターンユニットまたはピクセルは互いに配分され、一般的には二次元で所定の方法により相互に横並びに配置されており、全体的に見ると、イラスト、シンボル、ロゴ、書体(文字、数字、英数字)、またはコード(バーコードなど)となる。しかし、パターンは、個々のピクセルによるものではなく、物体光と参照光との干渉によって生じる古典的なホログラムでも可能である。
【0011】
本発明の枠内において、第1パターンは、第1パターンを中断する欠損箇所を一部の領域に有しているが、そのことによって、パターンとしての適性が損なわれることはない。本発明においては、このような欠損箇所の側で、第1パターンとは異なる第2のパターンを形成することができる。その際、第1のデジタル状態が欠損箇所によって生じ、第2のデジタル状態が欠損箇所と欠損箇所との間の部分、すなわち第1パターンに関して欠損していない箇所によって生じる。この点で、第1パターンと第2パターンとは、欠損していない部分において重なり合っている。というのも、この部分は、第2パターンにとってはデジタル状態を形成しているものであり、さらに第1パターンでもあるからである。第2パターンの欠損箇所は、パターンの範囲内またはピクセルの中で分割することができる。
【0012】
セキュリティドキュメントおよび/または有価証券としては、次のような例が挙げられる。すなわち、身分証明書、パスポート、IDカード、入場認可証、ビザ、制御文字、チケット、免許証、車検証、紙幣、小切手、郵便切手、クレジットカード、ICカードおよび粘着ラベル(例えば製品偽造防止のため)などである。このようなセキュリティドキュメントおよび/または有価証券は、基板、印刷層および選択的に透明シートを有している。担体である基板の上に、情報、イラスト、パターン、その他同様のものを記録した印刷層が取り付けられている。基板の材料としては、紙および/またはプラスチックをベースとするあらゆる標準的な素材が考えられる。
【0013】
バーコードは、一般的には平面的なパターン構造であり、そのパターンはある文字列をコード化したものである。本質的に、一次元バーコードと二次元バーコードとに区別される。一次元またはリニアバーコードには、2種類の幅をもつコードとしてCode 2/5Industrial、Code 2/5 Interleaved(ITF)、Code2/5 3Bars Matrix、Code 39、Code 39 Extendedがあり、数種類の幅をもつコードとしてCode 93、Extended Code 93、Code 128、EAN 13、UPC Version A、UPC VersionE、Codabarがある。 二次元コードはスタック式とマトリックス式に区別される。スタック式コードには、Code 49、Code 16K、Codablock(A、F、256)、IPC−2D、Supercode、PDF 417、Micro PDF、Color Ultra Code、Ultra Codeがある。マトリックス式コードには、Array Tag、Aztec、Code 1、Code(S)、CP Code、Data Matrix、DataStrip、Dot Code A、MaxiCode、QR Code、MiniCode、SmartCode、Snowflake Code、AccuCode (3−DI)、Vericodeがある。RSS−14はリニアコードとスタック式コードとを組み合わせたものである。
【0014】
バーコードエレメントは、バーコードのコーディングシステムの中で、ひとつの記号に対してコード化を行うバーコードの部分領域である。バーコードエレメントはバーまたはピクセルとも呼ばれ、後者は二次元バーコードの場合に用いられる。一般的に、バーコードは二進法を用いてコーディングされており、従って、ひとつのバーコードエレメントは「0」または「1」をコーディングしている。これは、そのバーコードエレメントがオンまたはオフのどちらかであることによる。本発明においては、第2パターンの欠損箇所と欠損箇所のない部分とにそれぞれの状態が割り当てられている。それぞれのバーコードに応じて、様々なバーコードエレメントの連続からまず2値の記号列が形成され、次にこの記号列は、例えば英数字の記号列など、別の記号列に変換することができる。
【0015】
ホログラムは、例えば平面あるいは平坦な部分を有し、そこには顕微鏡でしか見ることのできない、または人間の目では知覚できないような表面構造が作られている。いわゆるボリュームホログラムの場合には、屈折率や吸収のバリエーションによって、光干渉パターンがホログラフィ素材の容積の中に保存される。ホログラムは、この表面構造があることにより、読み取り角度域を様々に変えて見た場合に、様々な像や視覚的特徴または視覚パターンあるいは色を示す。その際、像やパターンにこのような違いが現れる場合もあれば、例えば色や明るさだけに現れる場合もある。また、視覚的な変動性は、照明の入射角および/または照明の色にも左右される。
【0016】
極座標系、すなわち幅角(Breitenwinkel)と経線角(Meridianwinkel)において、ひとつの基本ベクトルを中心とする立体角は規定の読み取り角度域と呼ばれ、バーコードを正確に検知するためには、この角度域から原点を見なければならない。このとき、その原点とは観察される各バーコードエレメントである。立体角はπ/2よりも小さく、π/4より小さいのが好ましい。さらに好ましいのはπ/8よりも小さく、もっとも好ましいのはπ/16よりも小さい場合である。
【0017】
極座標系、すなわち幅角(Breitenwinkel)と経線角(Meridianwinkel)において、ひとつの基本ベクトルを中心とする立体角は規定の入射角度域と呼ばれ、バーコードを正確に検知するためには、この角度域から原点を照射しなければならない。このとき、その原点とは各バーコードエレメントである。立体角はπ/2よりも小さく、π/4より小さいのが好ましい。さらに好ましいのはπ/8よりも小さく、もっとも好ましいのはπ/16よりも小さい場合である。
【0018】
空間光変調装置は、光の強度を変調することによって、ほぼ平坦な対象物を二次元に空間分解して照らすことができる。この場合に関係しているのが、DMD(Digital Micromirror Device)チップ、LCD(Liquid Crystal Display)トランスミッションディスプレイ、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)ディスプレイである。これらのディスプレイは同様に、多数のピクセルによって構成されており、それぞれのピクセルが他のピクセルとは無関係にオンまたはオフになったりすることができ(その中間の状態も可能である)、従って、ピクセルを適切に制御することによりパターンまたは象を投影することが可能である。自在な制御が可能であるため、例えば、様々な安全要素のための個別化されたバーコード形式など、様々な像やパターンを連続して次々に生成することも問題なくできる。しかし、空間光変調装置は、もっとも広い意味で、様々な強度の光もしくは強度を変調した光をホログラフィック記録可能フィルムに照射する個々の構造物であるといえる。マスクやプリントフィルムあるいは印刷されたシートもこれに属しており、これらは露光される二次元のパターンに応じて、部分的に透明であるものや、部分的に透明度が少ないか、透明でないものがある。
【0019】
ひとつのコードまたはパターンが、人や物の大きな総体における一個人または物にとって、あるいは人や物の集団にとって唯一である場合、そのコードやパターンは個別化していることになる。ある国の住民全体で、あるグループを個別化するコードとしては、居住地である町が例に挙げられる。一人の人間を個別化しているコードとしては、身分証明書の番号などがある。すべての紙幣の中で、ある紙幣の集団を個別化しているコードは、価数である。ひとつの紙幣を個別化しているのは通し番号である。個別化していないコードまたはパターンの例は、ワッペン、印章、国章などがある。
【0020】
本発明において、ホログラフィック記録可能フィルムは、一般的に感光性樹脂によって作られる。適当な感光性樹脂としては、Bayer社 (PhenoStorなど)、DuPont社 (Omnidex)、Fudan-Techsun社、日本ペイント社の感光性樹脂が例として挙げられる。使用可能なホログラフィック記録可能フィルムの厚さは、例えば、0.1〜100μmの範囲であり、好ましくは1〜15μm、屈折率変調が0.01〜1.0の場合は10μmなどである。
【0021】
以下、本発明の基本的特徴および好ましい実施形態について、詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
技術的問題を解決するために、本発明は、ホログラフィック記録可能フィルムの中に平面的な第1パターンが第1ホログラムという形で形成されているホログラフィック安全要素を提示する。その際、第1パターンには、この第1パターンを中断している部分領域が形成されており、その部分領域が第1パターンとは異なる第2のパターンを形成している。
【発明の効果】
【0023】
本発明の重要なエレメントは、第1パターンと第2パターンとがひとつのホログラフィック記録可能フィルムの中に形成されていることである。このことによって、例えば、二重露光などにより、同時あるいは連続的に製造することができるようになり、製造が簡便化する。さらに、両方のパターンは物理的に相互に統合され、簡単には分離できないため、不正操作に対する安全性が高くなる。発明に基づく安全要素は、様々な方法および幾つかの変更例によって製造することが可能であり、そのために、以下の実施形態が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】国章を例とする第1パターン(2)を有する安全要素(1)を示す。
【図1b】パターン(2)〜(4)が配置されるホログラフィック記録可能フィルム(5)を示す基板(6)断面図を示す。
【図2】空間光変調装置(8)により、ホログラフィック記録可能フィルム(5)に照射されるUV光源(7)を示す。
【図3】図2における光源(7)がレーザ(10)の場合を示す。
【図4】図3において、空間光変調装置(8)が挿入された場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第2パターンはバーコードであるのが好ましい。基本的には、あらゆる周知のバーコードが使用可能であり、使用可能なバーコードの例は別記にリストアップされている。第2パターンは、とくに個別化する情報をコーディングすることができるため、個別のパターンにすることができる。
【0026】
第1パターンは、基本的に任意の性格のものである。そのため、例えば、ピクセルから構成されていない実際のホログラムにすることができる。
【0027】
第1パターンは、ワッペンや国章などの非個別的なパターンが好ましい。
【0028】
第1ホログラムは、角度マルチプレックス・ホログラムおよび/または波長マルチプレックス・ホログラムが考えられる。角度マルチプレックス・ホログラムの場合、規定または特定された入射角域で光が照射された場合および/または規定または特定の読み取り角度域で観察あるいは撮影した場合にのみ、ホログラフィック記録可能フィルムに保存された第1パターンが再現される。入射角域または読み取り角度域が様々に異なる場合には、異なる第1パターンが復元される。波長マルチプレックス・ホログラムの場合、規定または特定された狭い範囲の波長(色)で光が照射された場合および/または読み取られた場合にのみ、ホログラフィック記録可能フィルムに保存された第1パターンが再現される。さらに、波長マルチプレックスと角度マルチプレックスとを組み合わせることも可能である。
【0029】
第2パターンは非ホログラフィック・パターンとすることができ、このパターンは、目に見える形で素材に組み込まれる。その一方で、第2パターンは、第2のホログラムを形成するホログラフィックパターンにもすることができる。後者の場合に関係するのは、角度マルチプレックス・ホログラムおよび/または波長マルチプレックス・ホログラムである。
【0030】
発明に基づく安全要素は、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の製造に使用される。その際、安全要素はセキュリティドキュメントおよび/または有価証券の上または中に取り付けられるか、その上あるいはその中に形成される。セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の上に取り付ける場合は、例えば、貼り付けなどによって行うことができる。セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の中に取り付ける場合は、例えば、ラミネートなどの方法によって行うことができる。セキュリティドキュメントおよび/または有価証券の中に形成する場合は、例えば、特許文献DE102004053367A1に従って行うことができ、この場合、ホログラフィック記録可能フィルムは基板の容積内に配置されている。従って、本発明は、発明に基づく安全要素を有するセキュリティドキュメントおよび/または有価証券にも関する。
【0031】
本発明は、さらに発明に基づく安全要素の様々な変更例による製造方法にも関している。一般的に、発明に基づく手順は以下の段階を有している。a) 情報がある記号列に変換される、b) 段階a)の記号列がバーコードなどのパターンに変換される、c) 段階b)のバーコードが空間光変調装置用の変調信号に変換されるか、空間光変調装置の中で変換される、d) ホログラフィック記録可能フィルムが、(場合により、段階c) の信号によって変調された)空間光変調装置の介入によって、部分的に露光され、その際、ホログラフィック記録可能フィルムの露光した部分領域によって第2パターンが形成される、e) 段階d)の露光したホログラフィック記録可能フィルムは、ホログラフィマスターを介して露光を受け、その際、第1パターンは第2パターンの露光された部分領域外に形成されるか、および/または第2パターンの露光された部分領域内に画像濃度を薄められて形成される。最後に述べた選択肢では、両方のパターンそれぞれの屈折効果の負担によって、使用可能な屈折率変調が分かれる。
【0032】
発明に基づく方法の中心は、ホログラフィック記録可能フィルムの二重露光にある。その場合、最初の露光(段階d)により、ホログラフィック記録可能フィルムの露光範囲で感光性樹脂が不可逆的に変化する。すなわち、次の露光(段階e)では、感光性樹脂がもはや感光性ではないか、または、例えば少なくとも10%低下した感光性を有する。これによって、最初の露光で感光された部分は、次の2回目の露光では欠損箇所を形成する。従って、最初の露光により、第1パターンの一部、すなわち欠損箇所が作られ、2度目の露光によって、第1パターンの欠損箇所以外の部分が形成される。このことから、欠損箇所のない第2パターンも同時に完成する。空間光変調装置を用いることによって、異なる安全要素のための異なる2つのパターンを変調により形成することができる。
【0033】
もっとも簡単な場合では、段階d)の最初の露光がUV光源を使って行われる。補強のために、ホログラフィック記録可能フィルムの後ろに簡単な鏡を取り付けることができる。このようにして生じる欠損箇所は非ホログラフィックであり、ホログラフィックの第1パターンは、段階e)の2度目の露光においてはもはや形成されない。
【0034】
欠損箇所もホログラフィックにしたい場合は、最初の露光をレーザーなどのコヒーレント光を用いて行う。その際、ホログラフィック記録可能フィルムの後ろには、鏡、ホログラフィックミラー、ホログラフィックすりガラススクリーン、または鏡、すりガラススクリーン、その他の描写図のマスターホログラムが配置されている。反射した光は通常の方法で入射光とともに干渉し、欠損箇所部分にホログラフィック構造を形成する。ホログラフィマスターの選択と調整により、ホログラフィック構造を角度マルチプレックス・ホログラムおよび/または波長マルチプレックス・ホログラムにすることができる。このことによって、例えば、特定の入射角域および/または読み取り角度域においてしか、欠損箇所を検知することはできなくなる。
【0035】
この製造方法のバリエーションにおいては、発明に基づく安全要素の特殊なバリエーションも作り出すことが可能である。この場合、第1パターンにおいては、第1の入射角域および/または読み取り角度域のもとで個別パターンを読み取ることができ、このとき、第2パターンは、第1パターンの個別パターンと同一のパターン(または、第1パターンがコーディングしている情報と同一の情報をコーディングしているパターン)である。しかし、第2パターンは、第1の入射角域および/または読み取り角度域とはまったく重なり合わないか、一部だけが重なり合っている第2の入射角域および/または読み取り角度域でしか読み取ることができない。第2パターンが波長マルチプレックス・ホログラムとして形成される場合も同様のことが当てはまる。
【0036】
基本的に、段階d)の最初の露光と段階e)の2度目の露光は連続して、または同時にも行うことができる。同時に行う場合、第2パターンを作成するための照射に対するホログラフィック記録可能フィルムの反応速度が、第1パターンを作成するための照射に対するホログラフィック記録可能フィルムの反応速度よりも速くなるように光の種類とその強度とを決定することが必要である。従って、最初の露光と2度目の露光の定義は、該当する露光の反応プロセスの順序に関係する。例えば、最初の露光を強度の高いUV光で行い、それと同時に2度目の露光を通常のレーザー光で行うことが可能である。ホログラフィックによる第2パターンの場合は、最初の露光をレーザー照射で行う。このときの使用レーザーから発せられた波長によるホログラフィック記録可能フィルムへの書き込み速度は、2度目の露光のレーザー波長によるホログラフィック記録可能フィルムへの書き込み速度よりも速く、例えば2倍およびそれ以上となる。強度の違いや書き込み速度、あるいはそれぞれの光に対するホログラフィック記録可能フィルムの反応速度の差が大きければ大きいほど、欠損箇所と第1パターンとの間のコントラストは大きくなり、その結果第1パターンと第2パターンとの間のコントラストも大きくなる。
【0037】
最後に、本発明は、発明に基づく安全要素の読み取り方法(その際、第2パターンは視覚的に検知・評価される)、ならびにその方法を実行する装置に関している。後者は、第1パターンの再現に適した安全要素を照射する光源、安全要素を撮影するための空間分解能カメラ、ソフトウエア付き評価ユニットを有している。この評価ユニットは、コントラストにより形成された構造の空間分解能による検出によって第1パターンの欠損箇所を再現し、撮影された第1パターンから第2パターンを再現する。さらに、この評価ユニットはコーディングされた情報を解読し、必要に応じて、接続されたインターフェースにそれを出力するか、接続されたディスプレイに表示する。カメラに関しては、カラーCCDカメラが用いられるが、白黒CCDカメラでも可能である。このカメラの定義が、一般的に、像またはパターンを空間分解能によって二次元的に撮影する技術全般を含むことは明白である。例えば、このカメラは、一列に並んだセンサーによって一次元で分解しながら働くことができる。次に、安全要素が、カメラに対して平行ではなく、例えばセンサー列に対して直交する方向に相対運動することによって、二次元の空間分解が達成される。しかし、もっとも簡単な場合は、二次元で分解するセンサーマトリックスが使用される。
【実施例1】
【0038】
以下に、本発明を、実施例を用いて詳しく説明する。
【0039】
例1:発明に基づく安全要素
【0040】
図1aは、国章を例とする第1パターン2を有する安全要素1である。第1パターン2には、欠損箇所3が施されており、この欠損箇所3の全体で、バーコードを例とする第2パターン4を形成している。
【0041】
図1aと図1bとを比較的に観察してみると、第1パターン2も第2パターン4も、基板6上に配置されているホログラフィック記録可能フィルム5の中に形成されていることが分かる。
【実施例2】
【0042】
例2:非ホログラフィックによる第2パターンを有する安全要素の製造
【0043】
図2では、空間光変調装置8によって、(あらかじめ露光されていない)ホログラフィック記録可能フィルム5に照射されるUV光源7がある。空間光変調装置8は、信号によって変調されており、この信号が空間光変調装置8の一部を光透過性にし、他の部分を非透過性にする。このことによって、ホログラフィック記録可能フィルム5の上に、該当するホログラフィック記録可能フィルム5または安全要素1に配置されている第2パターン4が投影される。ホログラフィック記録可能フィルム5の後ろには、鏡9が配置されている。UV光源による露光の強度と所要時間は、ホログラフィック記録可能フィルムの感光性樹脂が露光終了後に次の露光には反応しない、すなわち次の露光では光化学反応を起こさないという条件つきで決定されている。露光が終了すると、完成した安全要素1の欠損箇所を形成する感光部分と、第1パターンを作るための2度目の露光に対してまだ反応性をもつ非感光部分とが形成されている。
【0044】
図3ではレーザー10があり、これがホログラフィック記録可能フィルム5にレーザー光を照射する。ホログラフィック記録可能フィルム5の後ろには、ホログラフィマスター11が配置されている。レーザー光は、ホログラフィマスター11によって屈折または反射され、入射してくるレーザー光と干渉する。これによって、ホログラムはホログラフィック記録可能フィルム5の中に保存されるが、保存されるのは以前に感光されなかった部分のみである。このようにして欠損部分の外部に第1パターン2が生じる。
【実施例3】
【0045】
例3:非ホログラフィックの第2パターンを有する安全要素の製造
【0046】
図4では、図3と同様の構成が示されている。しかし、この場合は、レーザー光の光路に空間光変調装置8が挿入されている。この構成によって、最初の露光は例2と同様に行われるが、この場合、本質的に違うのは、このバリエーションにおいて形成される欠損箇所がホログラフィックの欠損箇所であるという点にある。これ以外では、例2で説明したように2度目の露光が行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック記録可能フィルムの中に平面的な第1パターンが第1ホログラムという形で形成されているホログラフィック記録可能フィルム付きホログラフィック安全要素であって、前記第1パターンが中断され、前記第1パターンとは異なる第2パターンを形成する部分領域が前記第1パターンの中に作られている、ホログラフィック安全要素。
【請求項2】
前記第2パターンがバーコードである、請求項1に記載のホログラフィック安全要素。
【請求項3】
前記第1パターンが非個別化パターンであり、および/または前記第2パターンが個別化パターンである、請求項1または2に記載のホログラフィック安全要素。
【請求項4】
前記第1ホログラムが角度マルチプレックス・ホログラムおよび/または波長マルチプレックス・ホログラムである、請求項1〜3のひとつに記載のホログラフィック安全要素。
【請求項5】
前記第2パターンが非ホログラフィックパターンである、請求項1〜4のひとつに記載のホログラフィック安全要素。
【請求項6】
前記第2パターンが第2ホログラムを形成するホログラフィックパターンである、請求項1〜4のひとつに記載のホログラフィック安全要素。
【請求項7】
前記第2ホログラムが角度マルチプレックス・ホログラムおよび/または波長マルチプレックス・ホログラムである、請求項6に記載のホログラフィック安全要素。
【請求項8】
a) 情報がひとつの記号列に変換される、b) 段階a)の前記記号列がバーコードなどのパターンに変換される、c) 段階b)の前記バーコードが空間光変調装置用の変調信号に変換されるか、空間光変調装置の中で変換される、d) ホログラフィック記録可能フィルムが、前記空間光変調装置の介入によって部分領域において露光され、その際、前記ホログラフィック記録可能フィルムの露光した部分領域によって前記第2パターンが形成される、e) 段階d)で露光した前記ホログラフィック記録可能フィルムは、ホログラフィマスターを介して露光を受け、その際、前記第1パターンは前記第2パターンの露光された前記部分領域外に形成されるか、および/または第2パターンの露光された前記部分領域内に画像濃度を薄められて形成される、以上の工程段階によって得られる、請求項1〜7のひとつに記載の安全要素。
【請求項9】
露光した前記部分領域がホログラフィック領域であり、ホロフラフィックパターンを形成する、請求項8に記載の安全要素。
【請求項10】
安全要素がセキュリティドキュメントおよび/または有価証券の上または中に取り付けられるか、その上またはその中に形成される、セキュリティドキュメントおよび/または有価証券を製造するための、請求項1〜9のひとつに記載の安全要素の適用。
【請求項11】
請求項1〜9のひとつに記載の安全要素付きセキュリティドキュメントおよび/または有価証券。
【請求項12】
a) 情報がひとつの記号列に変換される、b) 段階a)の前記記号列がバーコードなどのパターンに変換される、c) 段階b)の前記バーコードが空間光変調装置用の変調信号に変換されるか、空間光変調装置の中で変換される、d) ホログラフィック記録可能フィルムが、前記空間光変調装置の介入によって部分領域において露光され、その際、前記ホログラフィック記録可能フィルムの露光した部分領域によって前記第2パターンが形成される、e) 段階d)で露光した前記ホログラフィック記録可能フィルムは、ホログラフィマスターを介して露光を受け、その際、前記第1パターンは前記第2パターンの露光された前記部分領域外に形成されるか、および/または第2パターンの露光された前記部分領域内に画像濃度を薄められて形成される、以上の工程段階による、請求項1〜9のひとつに記載の安全要素の製造方法、または請求項11に記載のセキュリティドキュメントおよびまたは有価証券の製造方法。
【請求項13】
段階d)において、露光させる光の照射光源に関して、好ましくはホログラフィック記録可能フィルムの後ろに配置された、鏡、ホログラフィックミラー、ホログラフィックすりガラススクリーンまたはホログラフィックすりガラススクリーンのホログラムによって露光が行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2パターンが視覚的に検知され、評価される、請求項1〜9のひとつに記載の安全要素の読み取り方法。
【請求項15】
前記第1パターンの再現に適した安全要素を照射する光源、安全要素を撮影するための空間分解能カメラ、前記カメラに接続されたソフトウエア付き評価ユニットを有し、この評価ユニットは、コントラストにより形成された構造の空間分解能による検出によって前記第1パターンの前記欠損箇所を再現し、撮影された前記第1パターンから前記第2パターンを再現し、それによってコーディングされた情報を解読し、必要に応じて、接続されたインターフェースにそれを出力するか、接続されたディスプレイに表示する、請求項14に記載の方法を実施するための装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−511192(P2010−511192A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538582(P2009−538582)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002054
【国際公開番号】WO2008/064643
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(507302243)ブンデスドルクレイ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Bundesdruckerei GmbH
【Fターム(参考)】