説明

ホログラムおよびホログラム形成方法

【課題】改善された特性を有するホログラムおよびホログラム形成方法を提供する。
【解決手段】ホログラムは、感光層を含み、少なくとも第1の波長を有する光源を用いてホログラム構造が形成されるホログラム層と、上記第1の波長を吸収し、第2の波長を有する光を放出するようになされた発光材料とを含む。ホログラム形成方法は、少なくとも第1の波長を有する光源に感光層の一部を露光して、該感光層にホログラム構造を形成することと、上記第1の波長を吸収し、第2の波長を有する光を放出するようになされた発光材料を選択することと、上記発光材料をホログラムに取り込むこととを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムおよびホログラム形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣、パスポート、身分証明書のような公文書、および他の私文書やクレジットカードが本物であるか偽物であるかを見分けるために、ホログラムが広く用いられている。また、ホログラムは、ブランド品を模造品から守るためにも用いられる。ホログラムの例は、例えば米国特許出願公開第2002/0191234号明細書に記載されたように、干渉フィルムが不均一に形成されたエンボスタイプのホログラムを含む。別の例は、干渉フィルムの屈折率が空間的に変化するボリュームタイプのホログラムを含む。セキュリティを向上させるために、ホログラム自身をそれらのコピーから保護することが重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
改善された特性を有するホログラムおよびホログラム形成方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、上記の課題は、独立請求項に記載された事項によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付図面は、発明の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、また本明細書に組み込まれてその一部をなす。図面は、本発明の実施形態を概略的に示し、説明とともに、その原理を説明する。発明の他の実施形態と、意図された利点の多くは、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるために、容易に評価されるであろう。図面の要素は、必ずしも相対的にスケーリングされているわけではない。同様の参照符号は、対応する同様の部分を指す。
【0006】
【図1】ホログラムを含む層スタックの概略的な断面図である。
【図2A】ホログラム層の概略的な断面図である。
【図2B】ホログラムの一例の平面図である。
【図3】ホログラム形成方法の一例を示す図である。
【図4】ホログラム形成方法のフローチャートである。
【図5】ホログラムを含む装置の実施形態を示す図である。
【図6】ホログラムを含むパッケージの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、その一部をなし、発明が実施されうる一実施形態を概略的に示す添付図面が参照される。この点について、「上」、「下」、「前」、「後」、「前部」、「後部」などの向きを示す用語は、図が描かれた向きを基準にして用いられる。実施形態の構成要素は様々な向きで配置されうるため、向きを示す用語は、概略的な説明の目的で用いられるのであって、全く限定的なものではない。請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、他の実施形態が実現可能であり、構造的または論理的な変更がなされうることが理解されるべきである。
【0008】
図1は、ホログラムラベルを形成しうる層スタックの例を示す。ホログラムラベルは、基板10に貼着または集積される。例えば、基板10は、識別されたりラベル付されたりする、ブランド品やセキュリティ文書などのアイテムでありうる。ホログラムラベルは、こうした基板に貼着または集積される。ラベルは、公知のまたは特別に開発された適切な接着剤によって形成される接着層11を含む。接着層11の上に、ブラックフィルム12が配置されうる。例えば、このブラックフィルムは、ラバータイプの接着フィルムのような公知の材料によって形成されうる。ブラックフィルムは、ホログラムラベルが反射ホログラムとして用いられる場合に、黒い背景とホログラム像との間のコントラストを大きくするために有用でありうる。当業者には明らかなように、ブラックフィルム12は省略されてもよい。ホログラム層14は、さらなる接着層13によってブラックフィルム12に貼着される。ホログラム層14の形成のときに、中間フィルム16が用いられてもよい。中間フィルム16は、米国特許5453340号明細書に記載された感光性組成物のようなホログラム材料で被覆された(coated)、ポリエステル(PET)フィルムのような公知の材料で形成される。ホログラム層14は、さらなる接着層15によって中間フィルム16に貼着されてもよいし、中間フィルム16の表面に被覆されて接着層15を省略してもよい。カバーフィルム18は、ホログラムを外的な影響から保護するのに用いられ、中間フィルム16の上に形成されうる。当業者には明らかなように、層スタックはさらなる層を含んでもよい。ホログラムのための典型的な層スタックは、接着層11と、続いてブラックフィルム12と、続いて接着層13と、ホログラム層14と、中間フィルム16と、カバーフィルム18とでありうる。
【0009】
ホログラム層は、例えば透過または反射ホログラムなどのボリュームホログラムを含みうる。具体的なホログラムの種類としては、リップマンホログラム、デニシュークホログラム、RGBホログラム、レインボーホログラム、コンピュータ生成またはデジタルホログラムなどである。
【0010】
図2Aは、ホログラム層14の一例の断面図である。ホログラム層14は、互いに異なる屈折率を有する領域によって画像、シンボルまたはデータが記録されるボリュームホログラムを含みうる。
【0011】
例えば、一般的に、ボリュームまたはリップマンタイプのホログラムは、コンテンツ制作ステップによって製造される。最初に、ホログラムで示される画像が、例えば画像をキャプチャし、画像をコンピュータグラフィック画像に変換し、取得された画像を編集することによって形成される。それから、複数のホログラムが単純なコピーのステップによって製造できるように、ホログラムマスタが製作される。ホログラムマスタを製造するために、画像の物体照明光と参照光との干渉縞が、製造レーザ光を用いて、連続的にホログラム層に記録される。例えば、100nm〜1000nm、特に200nm〜900nm、さらには特に300nm〜800nm、さらには400nm〜700nmの波長が、製造レーザ光に用いられる。マスタをコピーするために、別のホログラム層をマスタに接触させて、そこにコピーレーザ光を照射する。コピーレーザ光は、製造レーザ光と同じか、または異なるスペクトルを有しうる。ホログラムによって反射されたレーザ光と、(参照)レーザ光とは互いに干渉して、ホログラム層に干渉縞を形成する。このようにして、ホログラムはコピーされる。
【0012】
ホログラム層は、感光性材料からなり、電磁波放射を伴う照射によって屈折率の変化が起こる。感光性材料の例は、例えば米国特許7824822号明細書、米国特許7521155号明細書、米国特許5702846号明細書、および米国特許5453340号明細書において与えられる。ホログラム層は、(a)1または複数のラジカル重合性化合物、(b)1または複数のラジカル重合開始剤、(c)(a)以外の1または複数のカチオン重合性化合物、(d)1または複数のカチオン重合開始剤、および(e)任意でその他の構成要素のように、感光性組成物を含みうる。
【0013】
適当なラジカル重合性化合物(a)の例は、アクリル系モノマー、スチレン系モノマーおよび/またはビニル系モノマーである。具体的なモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、ジフェン酸(2−メタクリロキシエチル)モノエステル、ベンジルアクリレート、2,3−ジブロモフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、N−ビニルカルバゾール、2−(9−カルバゾリル)エチルアクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]ジブロモデシルチオ)エチルアクリレート、S−(1−ナフチルメチル)チオアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジフェン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、2,3−ナフタリンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、4,5−フェナントレンジカルボン酸(2−アクリロキシエチル)(3−アクリロキシプロピル−2−ヒドロキシ)ジエステル、ジブロムネオペンチルグリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,3−ビス[2−アクリロキシ−3−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)プロポキシ]ベンゼン、ジエチレンジチオグリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)スルホン、ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルホン、スチレンおよび2−ブロモスチレンである。上記の化合物のうちの複数を混合して用いることも可能であることが理解されるであろう。
【0014】
ラジカル重合に用いられる開始剤(b)は、各種のラジカル生成物質、例えばシアニンまたはジフェニルヨードニウムおよびジアリールヨードニウムの塩のような、ポリマー塩を含有する有機色素でありうる。具体的な例は、アンヒドロ−3,3’−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3’,9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3’,9−トリエチル−2,2’−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3’,9−トリエチル−2,2’−(4,5,4’,5’−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチル−2,2’−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3’−ジエチル−2,2’−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3’−カルボキシメチル−5’−クロロ−2,2’−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5’−ジフェニル−9−エチル−3,3’−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩である。ヨードニウム塩の具体的な例、例えばハライド、テトラフルオロボレートまたはヘキサフルオロホスフェートは、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−オクチロキシフェニル)フェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウム塩である。上記の化合物のうちの複数を混合して用いることも可能であることが理解されるであろう。
【0015】
感光性組成物の構成要素(c)は、1または複数のカチオン重合性化合物である。その例は、グリシジル系化合物、エポキシドまたはビニル系化合物である。具体的なモノマーは、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコール、グリコールジグリシジルエーテル、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、およびビニルグリシジルエーテルである。上記の化合物の組み合わせも可能である。
【0016】
感光性組成物の構成要素(d)は、カチオン重合の開始剤である。ここでの適当な化合物は、分解されるとブレンステッド酸またはルイス酸を生じるもの、例えばジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、鉄アレン塩などである。ジアリールヨードニウム塩の例は、ヨードニウム化合物のテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネートである。トリアリールスルホニウム塩の例は、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートおよびヘキサフルオロアンチモネートのスルホニウム、またはトリフェニルスルホニウム化合物、例えば4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムである。上記の化合物のうちの複数の組み合わせも可能である。
【0017】
感光性組成物は、任意で、例えばシクロヘキサン、ハロゲン炭化水素、芳香族、アルコールまたはこれらの溶媒の1または複数の混合物のような、ケトン、エステル、エーテル、ジオキサン、炭化水素などの有機溶媒を含みうる。無溶媒の感光性高分子化合物を用いることも可能である。さらなる添加物としては、結合剤、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤および/または共重合体がありうる。さらなる例は、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、およびヒ化ガリウムを含む。ホログラム材料の典型的な層厚は10nm〜1mm、特に100nm〜100μm、さらには特に1μm〜50μmである。
【0018】
例えば、ホログラム層は、光の照射によって露光された部分でモノマー粒子が重合した感光性ポリマーを含む。モノマー粒子がさらに重合すると、それらは露光された部分へと移動する。このようにして、モノマー粒子の濃度が場所によって変化する。結果として、屈折率の変化が生じる。その後、紫外線または可視光線が感光性ポリマーの表面全体に照射されると、モノマー粒子は完全に重合する。このようにして、一種の“定着ステップ”が実行される。光硬化した感光性ポリマーの屈折率は投射された光によって異なるため、参照光および物体照明光の間の干渉によって生じる干渉縞(明暗)は、屈折率の変化として記録されうる。
【0019】
図2Aは、そのようにして製造されたホログラム層14の一例を示す。この断面図からわかるように、第1の屈折率を有する部分21は、第2の屈折率を有する領域22と交互に配置される。屈折率は、典型的には1.48〜1.53の範囲にあり、率の変化は典型的には0.03〜0.04の範囲にある。さらに、ホログラムは、発光材料を含む。発光材料23は、空間波長を有する光を吸収するようになされている。特に、発光材料23は、ホログラムを製作するのに用いられた波長を有する吸収するようになされていてもよい。一般的に、ホログラムを製作するのに用いられた波長は、ホログラムの最小構造特徴サイズを決定する。例えば、最小構造特徴サイズは、理論的には波長の分数に等しく、分数はホログラムを形成するのに用いられた幾何学的形状依存する。以下で説明されるように、コピーするときの条件がホログラムの製作のときの条件と同じか近いものであれば、構造は同じように再生産される。従って、発光材料によって吸収される波長と、ホログラムの最小構造特徴サイズとの間には、関連性がある。
【0020】
発光材料は、さらに、第2の波長、またはさらなる波長を有する光を放出するようになされてもよい。例えば、第2の波長は、第1の波長と同じであってもよい。そうではなく、これも以下で説明されるように、発光材料23は、第1の波長とは異なる波長を有する光を放出してもよい。図2Aに示されるように、発光材料23は、ホログラム層14に組み込まれうる。例えば、発光材料23は、ホログラム層14と同じ深さで存在し、発光材料23を取り除こうとした場合にはホログラムが破壊されるようにしてあってもよい。または、当業者には明らかなように、発光材料は、ホログラム層14とは異なる層に配置されてもよい。例えば、発光材料は、他の層11,12,13,15,16および18のいずれかに組み込まれてもよい。発光材料の例は、以下のものを含む。
【0021】
アルカリ、アルカリ土類または遷移元素の酸化物、酸化硫化物または酸化フッ化物、ランタノイド酸化物、ランタノイド酸化硫化物またはランタノイド酸化フッ化物を含みうる化合物。化合物は、任意で、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムを含む群から選択された少なくとも1つの追加の元素を含んでもよい。また、化合物は、任意で、主族元素または遷移元素の酸化物および/またはフッ化物から選択される少なくとも1つのドーパントを含んでもよい。上述のように、第2の波長は、第1の波長とは異なりうる。従って、ランタノイド化合物を含む、いわゆるストークスまたは反ストークス発光体が用いられてもよい。それらの例は、国際公開第00/60527号、国際公開第2008/000461号、米国特許第6802992号明細書、および米国特許6686074号明細書に記載されている。
【0022】
図2Bは、異なる屈折率を有する領域によってつくられる所定のパターンを示すホログラムの一例の平面図を示す。例えば、ホログラムを通常の照明条件で観察すると、発光材料は画像からは識別されないであろう。
【0023】
図3は、ホログラムの製造工程の一例を示す。ホログラムマスタ33が、上述のように感光性ポリマーを含みうるホログラム層31上に配置される。例えば、ホログラム層31は、10μm〜20μmの厚さを有しうる。感光性ポリマーは、適当なキャリアによって被覆されてもよい。ここで、所定の波長を有するレーザ光がマスタ33上に照射され、マスタ層のパターンがホログラム層31にコピーされる。より具体的には、レーザ光は、マスタに記録されたホログラムによって反射される。反射されたレーザ光とレーザ光(参照光)とは互いに干渉して、干渉縞を形成する。干渉縞は、感光性ポリマーの屈折率の変化として記録される。例えば、鋭い波長分散と高い出力を有する400nm〜700nmの範囲の波長を放射するレーザが、パターンをコピーするのに用いられうる。例えば、マスタ33は、複数の連続したコピー部分を得るために、ホログラム層31上で移動されてもよい。
【0024】
次に、現像(developing)ステップが実行され、ポリマーの残りの部分が重合される。この工程は、例えば、紫外線硬化樹脂を十分に硬化させる紫外線を照射することで実現されうる。もちろん、感光性ポリマー層の特性に応じて、他のいかなる硬化方法が用いられてもよい。その後、発光材料23がホログラム層31上に導入される。例えば、発光材料23は、熱転写法または熱再転写法によってホログラム層31上に導入されてもよい。例えば、発光材料は、熱転写シート32上に配置される。熱転写シート32はホログラム層31に接して配置され、層スタックに熱が加えられるとともに層スタックに圧力が加えられることで、発光材料はホログラム層31に取り込まれうる。結果として、フォトルミネセント材料23が、図2Aにも示されたように、ホログラム層31に含まれる。この例では、532nmで発光する、エルビウムドープされたCaSが、フォトルミネセント材料の一例として用いられる。一方、フォトルミネセント材料のさらなる例は、以下を含みうる。
【0025】
ZnSiO:Mn,As
GdS:Tb
S:Tb
Al12:Ce
Al12:Tb
ZnS:Cu,Al
ZnS:Cu,Au,Al
SiO:Tb
OS:Tb
(Al,Ga)12:Ce
(Al,Ga)12:Tb
InBO:Tb
(Ce,Tb)MgAl1119
BaMgAl1627:Eu(II),Mn(II)
Ce0.67Tb0.33MgAl1119:Ce,Tb
ZnSiO:Mn,Sb
LaPO:Ce,Tb
(La,Ce,Tb)PO:Ce,Tb
【0026】
発光材料は、感光性ポリマーを現像する前または後のステップで取り入れられる。従って、フォトルミネセント材料は、ホログラム層の面の一方または両方に隣接して配置される。その後、ホログラム層は、一般的に知られた処理によってさらなる層を適用することによってさらに処理される。次に、シート状の層スタックは、個々のホログラムラベルを分離するために切り分けられる。
【0027】
図4は、ホログラムを形成する方法を示す。図4に示されるように、方法は、感光層の一部を少なくとも第1の波長を有する光源に露光することと(S1)、発光材料を選択することと(S2)、発光材料が第1の波長を吸収して第2の波長を有する光を放出するようにし、発光材料をホログラムに組み込むことと(S3)を含む。
【0028】
図3から明らかなように、従来、ホログラムは、ホログラムを別のホログラム層にコピーすることによって容易に偽造されていた。ホログラム、例えばホログラム層またはホログラム層スタックの他のいずれかの層に発光材料を組み込むことによって、コピーのためにレーザ光が照射されると、発光材料が励起され、コピーのためのレーザ光を受けて発光する。結果として、ホログラム像は光りすぎるかぼんやりするかしてしまい、画像の転写は不可能になる。従って、無許可でのホログラムラベルのコピーまたは偽造が防止される。それゆえ、発光材料をホログラムに取り込むことによって、ホログラムのセキュリティレベルが著しく向上する。
【0029】
さらなる変形例によれば、ホログラムは、複数の波長を有するレーザ光を照射することによって製作されうる。この種のホログラムは、RGBホログラム(3つの波長を用いて製作される場合)、またはレインボーホログラム(多数の波長を用いて製作される場合)とも呼ばれる。この場合、それぞれが製作に用いられる波長のうちの特定の波長を吸収する複数の発光材料が選択されて、ホログラム、例えばホログラム層またはホログラム層スタックの他のいずれかの層に組み込まれうる。さらなる任意の構成として、製作に用いられる波長のうちの複数を吸収する発光材料が選択され、ホログラムに組み込まれてもよい。
【0030】
図5は、上記のようなホログラム41を含む装置の一例として携帯電話40を示す。例えば、かかる装置は、コンピュータ、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、MP3プレーヤ、腕時計、カメラ、ノートブック型端末その他の携帯型電子機器を含みうる。装置は、メモリカートやバッテリのような電気的な付属部品を含んでもよい。携帯電話40は、ディスプレイ42およびキーパッド43のような通常の構成要素をさらに含みうる。なお、携帯電話は一例として示されているにすぎない。当業者には明らかなように、装置は、上記のような様々な他の電子機器によって実現されうる。ホログラムは、装置に装着または貼着されうる。例えば、ホログラム41は、それがホログラム41を破壊しなければ取り除けないように、装置40に貼着されてもよい。
【0031】
図6は、上記のようなホログラム51を含むパッケージ50を示す。例えば、パッケージ50は、電子機器または装置のパッケージでありうる。あるいは、パッケージ50は、特定の薬品、または例えばコーヒー、チョコレート、煙草その他のような任意のコンシューマプロダクトのようなブランド製品のパッケージであってもよい。パッケージ50の形状は、一例として示されているにすぎない。当業者には明らかなように、パッケージ50は、パッケージされる製品によって、任意の形状をとりうる。パッケージ50は、例えば錠剤やピルを包装するためのブリスターを含みうる。
【0032】
本発明の実施形態が以上で説明されたが、さらに別の実施形態が実現可能であることは明らかである。例えば、他の実施形態は、請求の範囲に記載された特徴のいずれかの部分的組み合わせ、および上記で説明された例の要素のいずれかの部分的組み合わせを含みうる。従って、本発明の精神および技術的範囲は、ここで説明された実施形態に限定されることはない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層を含み、少なくとも第1の波長を有する光源を用いてホログラム構造が形成されるホログラム層と、
前記第1の波長を吸収し、第2の波長を有する光を放出するようになされた発光材料とを備えるホログラム。
【請求項2】
前記第1の波長は前記第2の波長に等しい、請求項1に記載のホログラム。
【請求項3】
前記発光材料は前記ホログラム層に含まれる、請求項1に記載のホログラム。
【請求項4】
前記ホログラム構造は、互いに異なる屈折率を有する領域を含む、請求項1に記載のホログラム。
【請求項5】
少なくとも第3の波長を有する光源を用いて前記ホログラム層に形成される追加のホログラム構造と、
前記第3の波長を吸収し、第4の波長を有する光を放出するようになされた追加の発光材料とをさらに備える、請求項1に記載のホログラム。
【請求項6】
少なくとも第3の波長を有する光源を用いて前記ホログラム層に形成される追加のホログラム構造をさらに備え、
前記発光材料は、さらに、前記第3の波長を吸収し、第4の波長を有する光を放出するようになされる、請求項1に記載のホログラム。
【請求項7】
少なくとも第1の波長を有する光源に感光層の一部を露光して、該感光層にホログラム構造を形成することと、
前記第1の波長を吸収し、第2の波長を有する光を放出するようになされた発光材料を選択することと、
前記発光材料をホログラムに取り込むこととを含む、ホログラム形成方法。
【請求項8】
前記露光された感光層を現像することをさらに含み、
前記発光材料は、前記露光された感光層を現像した後に前記感光層に取り込まれる、請求項7に記載のホログラム形成方法。
【請求項9】
前記発光材料は、熱転写法によって前記感光層に取り込まれる、請求項8に記載のホログラム形成方法。
【請求項10】
前記感光層の露光された部分のために、前記感光層に異なる屈折率を有する部分が形成される、請求項7に記載のホログラム形成方法。
【請求項11】
少なくとも第3の波長を有する光源に前記感光層を露光して追加のホログラム構造を形成することと、
前記第3の波長を吸収し、第4の波長を有する光を放出するようになされた追加の発光材料を選択することと、
前記追加の発光材料を前記ホログラムに取り込むこととをさらに含む、請求項7に記載のホログラム形成方法。
【請求項12】
少なくとも第3の波長を有する光源に前記感光層を露光して追加のホログラム構造を形成することをさらに含み、
さらに前記第3の波長を吸収し、第4の波長を有する光を放出する前記発光材料を選択する、請求項7に記載のホログラム形成方法。
【請求項13】
請求項1に記載のホログラムを備える装置。
【請求項14】
前記装置は、携帯電子機器である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1に記載のホログラムを備えるパッケージ。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11888(P2013−11888A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137801(P2012−137801)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(595044111)ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
【Fターム(参考)】