説明

ホログラムシート

【課題】
ホログラムを用いたホログラムシートにおいて、その真正性を高めるために、照明光と同一の波長のホログラム再生像を再生するホログラムとは異なり、照明光とは異なる波長のホログラム再生をする新規なホログラムシートを提供する。
【解決手段】
ホログラム形成層上にレリーフホログラム形成層及び蛍光層を設け、蛍光体を励起する光で照明して、可視光領域にある、その蛍光発光の色調によるレリーフホログラム再生像をも目視にて判定可能とし、その偽造防止性を高めたホログラムシートとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホログラムシート、特に、体積ホログラムの背後に、レリーフホログラム形成層及び蛍光層を設けた蛍光発光型のホログラムシートに関するものである。
ここで、「蛍光層の発光によって再生されるレリーフホログラム再生像が、透過型ホログラムを再生する照明光となっている」とは、体積ホログラムとして、透過型ホログラムを記録する際の、「参照光」と「物体光」のうち、この「参照光」を、その「蛍光層の発光によって再生されるレリーフホログラム再生像」そのものとしたことを意味する。
以下、「レリーフホログラム形成層や、蛍光層によって再生される「再生像」」を「レリーフホログラム再生像」とし、「透過型ホログラムや反射型ホログラムである、体積ホログラムによって再生される「再生像」」を、単に、「ホログラム再生像」もしくは、「体積ホログラム再生像」とし、それらの「再生像」を区別する。
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0002】
(主なる用途)
本発明のホログラムシートの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術・工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムシートであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0003】
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0004】
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
【0005】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムシートが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
【0006】
また、特許文献2の記載にあるように、ホログラムとして、その製造に高度な技術を要する体積ホログラムを用い、白色光下においても立体感のあるホログラム再生像を視認することにより、その真偽判定を行う偽造防止技術も提案されている。
このような体積ホログラムは、それ自体が透明性を有するとともに、また、波長域の広い白色光源による照明において所定の波長(単波長に近い。)の光のみを反射して、その反射光によるホログラム再生像を出現させるものである。
しかし、この体積ホログラムも、その波長選択性によって、白色光のような広い波長域に渡って光の強度を有する照明光の中から、非常に狭い波長域の光のみを干渉させ、その光の強度のみでホログラム再生像を出現させるため、そのホログラム再生像の「明るさ」が、照明光の「明るさ」の1/10以下となってしまい、ホログラム再生像を明確に視認した上で真正性判定を行うという目的には不十分であるという欠点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2007−90538号公報
【特許文献2】特開平10−97171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、体積ホログラム形成層の背後に、レリーフホログラム形成層及び蛍光層を設け、その蛍光層の蛍光発光により体積ホログラムを「照明」し、「明るさ」の十分なホログラム再生像を出現させることで、このホログラム再生像による真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができるホログラムシートを提供することである。さらに、このようなホログラムシートはこれまでに存在しないため、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムシートの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及び、ホログラムレリーフを有するレリーフホログラム形成層が設けられ、さらに、その上に、前記ホログラムレリーフに追従して蛍光層が設けられていることを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及び、ホログラムレリーフを有するレリーフホログラム形成層が設けられ、さらに、その上に、前記ホログラムレリーフに追従して蛍光層が設けられていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、ホログラム再生像を明確に判定可能な、ホログラムシートを提供する。
本発明のホログラムシートの第2の態様は、
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラムを記録したものであることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムシートによれば、
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラムを記録したものであることを特徴とする第1の態様に記載のホログラムシートを提供することができ、通常照明光の下では、その照明側から何らのホログラム再生像も視認することができないが、所定の波長の光を照射することにより、初めてホログラム再生像を視認可能となる意外性や偽造防止性に優れる、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートの第3の態様は、
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラム、及び、反射型ホログラムを多重記録したものであることを特徴とするものである。
上記第3の態様のホログラムシートによれば、
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラム、及び、反射型ホログラムを多重記録したものであることを特徴とする第1の態様に記載のホログラムシートを提供することができ、通常照明光の下では、その照明側から通常の反射型体積ホログラム再生像のみを視認することができ、所定の波長の光を照射することにより、さらに、レリーフホログラム再生像、及び、透過型の体積ホログラム再生像をも視認可能となる意匠性や偽造防止性に優れる、ホログラムシートを提供することができる。
【0010】
本発明のホログラムシートの第4の態様は、
前記蛍光層の発光によって再生されるレリーフホログラム再生像が、前記透過型ホログラムを再生する照明光となり、前記透過型ホログラムのホログラム再生像を出現させるものであることを特徴とするものである。
上記第4の態様のホログラムシートによれば、
前記蛍光層の発光によって再生されるレリーフホログラム再生像が、前記透過型ホログラムを再生する照明光となり、前記透過型ホログラムのホログラム再生像を出現させるものであることを特徴とする第2または3に記載のホログラムシートを提供することができ、所定の波長の光を照射した際に、レリーフホログラム再生像に加えて、より鮮明な透過型ホログラム再生像を得ることが可能な、ホログラムシートを提供することができる。
本発明のホログラムシートは、透明基材の上に、体積ホログラム形成層、及び、ホログラムレリーフを有するレリーフホログラム形成層が設けられ、さらに、その上に、前記ホログラムレリーフに追従して蛍光層が設けられているものであり、また、その体積ホログラム形成層に、透過型ホログラムを記録、さらには、反射型ホログラムを重ねて記録したものである。
そして、体積ホログラム形成層の背後に設けた蛍光層の蛍光発光波長と、体積ホログラム形成層に記録した透過型ホログラムの「選択する波長」とを実質的に同調させておくことにより、蛍光層を発光させたときに、その透過型ホログラムのホログラム再生像の明るさを向上させ、そのホログラム再生像の隅々までを確実に視認できるようにするものである。
さらには、そのホログラムレリーフに追従して設けられた蛍光層が発光することにより、蛍光発光の波長のレリーフホログラム再生像が発現し、その「レリーフホログラム再生像そのものを『参照光』として記録している透過型ホログラム」を、その「レリーフホログラム再生像」が、再び「『参照光』として照明する」ことにより、その「透過型ホログラム」から、鮮明、且つ、明るいホログラム再生像を出現させるという高い偽造防止性を有するものである。
体積ホログラムが形成された体積ホログラム形成層は、フォトポリマーフィルム等の透明なフィルムそのものを、体積ホログラムを有する「体積ホログラム形成層」とする方法、または、透明基材の少なくともその一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラムを有する「体積ホログラム形成層」を設けた積層体とする方法により得られる。
前者の方法においては、体積ホログラム形成層は、透明な材料又は、透明なフィルムで構成される。
【0011】
本発明のホログラムシートは、後者の方法を用い、その透明基材として、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートを製造する際の処理や、各種加工機の搬送用ガイドロールとの接触に対する耐磨耗性等が高く、それらの処理や、加工に適した耐溶剤性、耐熱性及び耐摩耗性等を有する、透明基材を用いることが好ましい。
その加工方法にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
本発明に用いられる体積ホログラムは、そのホログラム形成層の層中に、種々の屈折率のパターンとして、そのホログラム画像を形成する(ホログラム記録ともいう。ホログラム形成層は、ホログラム記録用媒体にホログラム画像を形成した際の記録層を意味する。)、いわゆる、位相ホログラムであって、この体積ホログラムが透過型ホログラムである場合には、その体積ホログラム形成層に光をあて、これを透過させるとき、光の位相は、「屈折率のパターン」により変調され、その先においてホログラム再生像を観察することができる。
ホログラム画像として画像化される「物体」(一般的には、3次元物体、もしくは2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであれば、「光学系」であっても、別途作成したホログラムからの「ホログラム再生像」であってもよい。)は、レーザー等が発振するコヒーレントな光によって照明され、そして感光性の記録用媒体が、この「物体」から反射(発散)された光を受けるように配置される。「物体」上の各点は記録媒体の全体に対して光を反射し、また記録用媒体上の各点は「物体」全体からの光を受け入れる。この反射(発散)された光束は「物体光」といわれている。
同時に、コヒーレントな光の一部は「物体」をバイパスし(「物体」を避けて通るという意味。)、反射鏡等により、記録用媒体に向けられる。この光束は「参照光」といわれている。
記録用媒体上に記録されるものは、媒体上に当たった「参照光」と「物体光」との相互作用で生ずる「干渉パターン」であり、この記録が、「ホログラム」となる。
「ホログラム」には、このような光学的記録方法によるものの他に、電子線描画装置を用いた直接描画タイプのものや、空間変調器を用いた電子的表示タイプのものなどがある。
本発明のホログラムを形成する段階においては、いずれの方法も適宜使用することができ、以下、「ホログラム」と記載する場合は、これらのものが適宜含まれるものとする。
この記録用媒体、すなわち、記録されたホログラムが、所定の手段で照明され、適切に観察されるとき、その照明用光源からの光は、「物体」から記録用媒体にもともと到達した波面を再生するように、そのホログラムにより回折され、それにより、ホログラムは、観察者に対して、「物体」の虚像を、記録媒体という「窓」を通して、完全な遠近差をもつ3次元の「物体」を見たように、認識させる。
【0012】
このホログラム記録及び再生の原理を以下に、説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトポリマー等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面である物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
【0013】
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
【0014】
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
【0015】
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明に用いられる「透過型ホログラム」は、「参照光」と「物体光」を同一の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ同じ方向に進行するようにして形成したホログラムであって、形成層自体を透明なものとすることにより、その「位相分布」のみを記録として残したものである。
この時の「参照光」を、単純な平行光以外のもの、すなわち、別途作成したレリーフホログラムのレリーフホログラム再生像や、空間変調器による電子的ホログラム再生像等を用いる場合には、レリーフホログラム等が記録媒体に近接し過ぎて「物体光」を遮蔽してしまう不具合を解消するため、適宜なレンズ系を用いて、これらのホログラム再生像を、その記録面に結像する方法を用いる。
いずれにしても、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、「物体光」と「参照光」とが対称な角度で入射する場合には、ほぼ垂直なフリンジとなる。そして、その「物体光」と「参照光」とが非対称な角度で入射する場合には、そのフリンジは、記録用媒体の面に対して、やや傾いたものとなる。
また、本発明に用いられる反射型ホログラムは、「参照光」と「物体光」を反対の側から記録用媒体中に入射させ、両者がほぼ反対方向に進行するようにして形成したホログラム、いわゆる、「リップマンホログラム」である。(以下、体積ホログラムであって、反射型ホログラムとしたものを「リップマンホログラム」ともいう。)
この場合において、記録媒体中の「物体光」と「参照光」との相互作用は、屈折率の変化する材料の屈折率変化という「フリンジ(干渉縞)」を形成するが、このフリンジは、記録用媒体の面に対して、ほぼ平行な面となる。
【0016】
このリップマンホログラムを再生するとき、これらの各フリンジは入射光を観察者に向けて反射する「鏡」として作用し、それで、このリップマンホログラムは、「透過」よりもむしろ「反射」で観察される。
このように形成された「ホログラム」は、「波長感度」が甚だ高いため(波長選択性のこと。特定の波長にのみ作用するという意味。)、その再生には、「白色光」を用いることができるものである。
すなわち、ホログラムを記録した際の光源に用いた波長の光をあらかじめ準備してその光で再生しなくとも、容易に得られる、広い波長領域を持つ光(例えば、波長範囲が可視光線波長[400nm〜800nm]をカバーするような太陽光や、ハロゲンランプ光など。)を、その再生光として用いたとしても、その「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長の光(「ホログラム記録に用いた波長」以外の波長成分という意味。)は、ほとんど位相変化を受けずそのまま透過し、「ホログラム記録に用いた波長」の光(該当する波長成分という意味。)のみ反射して、その光の像(該当する波長成分により作られる、リップマンホログラム再生像)を、視認することができる。
体積ホログラムの記録方法及び、その再生方法は、図1を参照。
図1では、(1)で透過型ホログラムを作成する方法を示し、また、この(1)を反射型ホログラムの第1ステップとして(反射型ホログラム作成においては、この(1)がマスターホログラムとなる。)、(2)による第2ステップにおいて、反射型ホログラムを作成する方法を示している。そして、(3)において、反射型ホログラムすなわち、リップマンホログラムの再生方法を示している。
また、図示していないが、図1中の(1)の記録の際、物体を記録材料に近接して設置し、物体とは反対の方向から記録材料を透過して物体を照明するように参照光を投射すると、1ステップでリップマンホログラムを作成することができる。
さらには、図1中の(1)の段階において、「参照光」を「レリーフホログラム再生像」とする場合には、「レリーフホログラム」を記録材料に近接して平行に配置することとなるが、そうすると物体光まで、この「レリーフホログラム」を通過してしまうため、「レリーフホログラム」を物体光を遮らない距離まで記録媒体から遠ざけ、この間に凸レンズを配置して、凸レンズによる「レリーフホログラム再生像」の実像を記録媒体上に結像させるものとする。(図示せず。)
【0017】
ホログラムの原理で作製される「ホログラフ鏡」は、「反射型ホログラム」のもっとも簡単なものである。これは、2つのコヒーレントな平面波を、記録用媒体に対して反対の方向から投射し、記録用媒体中でその2つのコヒーレントな平面波が交差する、ホログラムである。これは単一のレーザー光を分割し記録用媒体の所で両光を合体させるか、あるいは分割しないレーザー光を、記録用媒体を通して、その後ろの「平面鏡」上に投射することにより作ることができる。これにより均一な間隔のフリンジの「一組」が形成され、投射された2つの光間の鈍角の2等分線に対して平行に配列され、三角関数の強度を有することになる。
この鈍角が、「180度」であり、2つの投射した光の波面が媒体の面に対して直角であるならば、各フリンジは媒体の面に対して平行となる。
そして、この鈍角が、「180度以下」であるか、または2つの光が媒体の面に対して直角でないときは、反射性のフリンジは媒体の面に関して鋭角に傾いて形成される。 ホログラフ鏡はその反射効率、屈折率変調、および反射光の分光帯域と分光特性などにより特性化される。
「反射ホログラム」を形成する実質的に水平なフリンジは、「透過型ホログラム」を形成する垂直なフリンジよりも、記録することが困雌である。
その第1の理由は、より高い解像性、すなわち、単位長さ当りに、より多数のフリンジが必要であって、フリンジの間隔は非常に小さくなる。「反射型ホログラム」は「透過型ホロクラム」よりも単位長さ当り約3倍〜約6倍多いフリンジを必要とする。
その第2の理由は、記録用媒体の収縮に対する水平なフリンジの敏感性である。露光中の記録用媒体の収縮はフリンジの消失を招き、もし収縮がひどいときはホログラムの形成が妨げられる。これは「透過型ホログラム」の場合とは対照的なものであり、「透過型ホログラム」では収縮はほとんど影響がないか、あるいはフリンジが媒体の面に対して直角ならば影響がなく、フリンジが媒体の面から45度以上傾いているときに、比較的僅かな画像の歪みを生ずるだけである。
この第2の理由からは、再生画像の信頼性の高い、透過型ホログラムを真正性判定に使用することは好ましい。
【0018】
以上の体積ホログラムを形成する、体積ホログラム形成層には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムがある。
銀塩写真乳剤としては、高感度及び、高解像度が求められる。
フォトレジストには、ポジ型フォトレジストと、ネガ型フォトレジストをいずれも用い得る。
フォトポリマー材料としては、架橋型フォトポリマー、ラジカル重合型フォトポリマー、カチオン重合型フォトポリマー、化学増幅型フォトポリマー、ナノ粒子分散系フォトポリマー等を用いることができ、その取り扱い適正は、特に優れる。
フォトクロミック材料は、光や熱等の特定の環境下において、その色調が変化するため、その意匠性はさらに高いものとなる。
重クロム酸ゼラチンは、その屈折率変調の高さ(すなわち、高い回折効率、帯域幅対応性)から、「反射ホログラム」の製作に選ばれる材料である。但し、重クロム酸ゼラチンは保存性に課題があり、「反射ホログラム」形成後に、湿式処理を必要とする。このため、この材料はホログラム記録の直前に新たに調製しなければならず、あるいは、予備硬化させたゼラチンを使用しなければならず、画像の再生効率を低下させる。
湿式処理は、ホログラム形成に際し、付加的工程をもち込むことになり、そして処理中に材料が膨潤し、ついで収縮する際に寸法的な変化を生じやすい。これらの寸法的な変化はフリンジの間隔に影響する。従って、重クロム酸ゼラチンによって高品質の「反射ホログラム」を作製することは、時間がかかり、かつ、困難である。
いくつかの処理工程を必要とする、銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンに対して、1回処理工程のみを必要とする固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、好適である。
【0019】
フォトポリマー材料の例としては、固体の光重合性組成物であって、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物が挙げられる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であるが、単独で、又は、互に組合せて使用することができ、例えば、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリビニルエステル、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、エポキシ化物、ポリアミド等、並びに、それらの混合物を使用できる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル等を用いることができる。
光開始剤としは、遊離ラジカル発生付加重合開始剤等を使用することができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤を有する、光重合性組成物を用いることができる。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーが挙げられる。
コヒーレント光による露光によって、このモノマーは、未露光域とは異なる屈折率とレオロジー的性質をもつ、高分子量のフォトポリマーを形成するように(光)重合する。この高分子量のフォトポリマーは実質的に固体ではあるが、各成分は電離放射線による一様、且つ、全面に渡る露光、または、高温度で熱処理することで「定着」されるまでは、コヒーレント光による露光中、および、露光後も、内部拡散をする。
【0020】
このフォトポリマーは、その厚さと屈折率変調とにより決定される、所定の中心波長、及び、波長領域(分散帯域)をもつ光を反射する。そこで、その厚さは、用途、および、光学系の光学的な要請、すなわち使用中にホログラムを照明(再生)するのに用いる光の帯域幅、に対して一致させられる。一般的に狭い帯域幅用の応用には、比較的厚いフォトポリマーが選ばれ、広い帯域幅用の応用には比較的薄いフォトポリマーが選ばれる。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
「実質的に固体」とは塗布された皮膜が、溶剤を除去した後に、一般的に固体材料の有している諸特性(例えば寸法安定性)を有していることを意味している。
フッ素含有ポリマー中のフッ素の存在は、一般に、フォトポリマーの屈折率を低下させ、これによりホログラム画像化後のフォトポリマーにおいて、増加した(「より大きな」という意味。)屈折率変調が達成される。屈折率変調は、フッ素含有量の増加とともに増大するが、フォトポリマーに不透明化を起こさせないためには、そのフッ素の存在量は限定される。
従って、フッ素の含有量は、その効果が、1%のような低レベルにあっても達成されるものの、代表的には、10〜20%の範囲内とされる。フッ素の含有量は、用途に応じた屈折率変調を達成するために調整可能である。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入する。例えば、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などが使用できる。
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類等を用いることができる。
以上のフッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなる、光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、大きな屈折率変調を有するため、高い透明性と、鮮明なホログラムの再生を必要とする、本発明のホログラムシートに好適である。
【0021】
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、特定波長の光に感光してラジカル重合性化合物を重合させる光ラジカル重合開始剤系、及び上記特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光してカチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
この光重合性組成物は、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光等の光とは別の波長の光を照射することによりリップマンホログラムが記録される。レーザー光等の光の照射(以下、第1露光)によってラジカル重合性化合物を重合させた後、カチオン重合性化合物は、その次に行う全面露光(以下、後露光)によって組成物中の光カチオン重合開始剤系を分解させて発生するブレンステッド酸あるいはルイス酸によってカチオン重合するものである。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル等が例示される。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が例示される。
【0022】
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明体積ホログラムとする場合には、シアニン系色素が好ましい。
シアニン系色素は、一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより、体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
このような無色透明性は、本発明のホログラムシートに、接着剤層を付加して、ホログラムラベルとしたり、さらに、透明基材と体積ホログラム形成層との間に剥離層を挿入してホログラム転写箔として、被貼着体や被転写体に、貼着または転写した際に、そのホログラムラベルやそのホログラム転写層を通して、被貼着体や被転写体上のデザインや顔写真を確認する際に好適である。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。
その体積ホログラム形成層の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmである。もちろん、この厚さは薄い方がコスト面や、透明性を確保するためには有利であるが、10μm未満では、十分な光選択性が得られず、また、鮮明なホログラム再生像を得ることが困難である。
しかし、100μmを超えると、コスト面で不利となるだけでなく、その熱変形によるホログラム再生像の歪みが顕著となり、また、その加工適性も劣化する。
【0023】
以上の方法は、樹脂を担持するための透明基材を介することなく、直接樹脂から形成することができるため、あらかじめ透明基材に樹脂をコーティングしておく工程を不要とすることも可能で、この場合には、コスト面及び、管理面において優れるものとなる。
本発明の方法、すなわち、透明基材の一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラムを形成するための「体積ホログラム形成層」を設けた積層体とする方法においては、体積ホログラム形成層は、光重合性組成物の塗布液(例えば、固形分15〜25%)を、透明基材が、1枚毎のシート状であればバーコート、スピンコート、又はディッピング等により塗布形成され、また、透明基材、がロール状の長尺の状態で塗布するのであれば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布する。体積ホログラム形成層は塗布液に合わせた乾燥ないし硬化の手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、一例として、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とするとよく、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必須成分および任意成分をそのまま、もしくは必要に応じてメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機を使用して混合することにより調製される。
【0024】
この光重合性組成物は、その透明性を維持しつ、鮮明な体積ホログラムを再生でき、且つ、高い破断強度、小さい破断伸度、さらには、高い鉛筆硬度を有するため、高い透明性と、引張り耐性や耐摩耗性等の強靭な物理特性などの高い信頼性を必要とする偽造防止用途に、好適である。
光重合性組成物そのものからなるシートや、フィルム、さらには、透明基材上にコーティングした光重合性組成物、すなわち、体積ホログラム形成層に、上記した方法を用いて体積ホログラムを形成することができる。
体積ホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を上記したような、いわゆる、体積ホログラムの原理でホログラムを記録したものであり、例えば、フレネルホログラムなどのレーザー再生ホログラム、イメージホログラム及び白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などとすることができる。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
ここで、本発明のホログラムシートを観察する者に、このホログラムシートが通常の単なるリップマンホログラムであると思わせるために、自然光下では視認できない透過型ホログラム(選択された特定の波長による反射光が存在しないことを意味する。)に加えて、それらの観察者が自然光下で目視にて鑑賞可能な反射型ホログラム、すなわち、リップマンホログラム(選択的波長による反射光が生じ、ホログラム再生像を出現させることを意味する。)を、少なくとも1種類は、多重記録しておくことが必須である(隠しホログラムである透過型ホログラムの記録に重ねて、反射型ホログラムを記録するという意味。)。
この際、透過型ホログラムの再生効率(ホログラムとして、回折格子を記録した際の回折効率に相当する。)を反射型ホログラムの再生効率よりも小さくすることが、その透過型ホログラムの隠し効果を高める上で、好適である。
【0025】
体積ホログラム形成層は、いわゆる「ホログラフィー露光装置」による所定の波長範囲のレーザー光等の光を使用し、ラジカル重合性化合物を重合させてその内部に干渉縞が記録される。この段階で、記録された干渉縞による回折光が得られ、体積ホログラムが形成されるが、体積ホログラム形成層として、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料を用いた場合には、未反応のまま残っているカチオン重合性化合物を更に重合させるために、後露光として光カチオン重合開始剤系の感光する光(例えば波長200〜800nm)を全面照射して体積ホログラムを固定化するとよい。なお、後露光の前に体積ホログラム形成層を熱や赤外線で処理することで回折効率、回折光のピーク波長、半値巾などを変化させることもできる。
体積ホログラムを形成した体積ホログラム形成層は、そのホログラムを形成したときに使用したレーザー等の光源波長(これが、上記した「参照光」や、「物体光」となる。)によって、その「層」の中に、フリンジ(干渉縞)を「屈折率の部分的な変化(屈折率変調)」という形で、「3次元的」に記録したもの(フリンジ全体が立体的構造となるという意味。)である。
【0026】
このフリンジは、上記したホログラム形成時に使用した光源波長で照明したときにのみ、「干渉現象」を発生し、観察者の目に視認可能となる反射再生像(体積ホログラム再生像)を出現させる。
しかしながら、このフリンジを、上記の波長以外の光で照明したときは、上記した「干渉現象」が発生せず、わずかな散乱現象が生じるのみで、その光はそのまま透過することになる。
例えれば、可視光線領域内である、発振波長442nmの固体レーザー(HeCdレーザー。)を用いて体積ホログラムを形成し、体積ホログラム形成層とすると、その体積ホログラム形成層に、488nmや、520nm等の可視光線領域に別の発光波長を有する光源の光を投射しても、体積ホログラムを再生せず、しかも、反射光をも発生しない(シートと空気との界面でのわずかな界面反射は存在するが、フリンジによる反射光は発生しない。)。
このことは、体積ホログラム形成層の背後に設けた蛍光層が発光し、その蛍光層によって定まる波長の光がこの体積ホログラム形成層を透過しても、その波長が、上記した442nmと異なる場合には、何らの干渉現象も発生せず、結果として、何らのホログラム再生像も現れないこととなる。
従って、この蛍光層の蛍光発光波長は、透過型体積ホログラムの記録波長と実質的に同一(実際の記録波長に対して、±5%以内を意味する。)、もしくは、この記録波長を含む波長域を有するものとする。
【0027】
また、体積ホログラムは、照明光の照明角度を最適値(再生時に最適な照明角度は、ホログラム形成時の「参照光」と記録用媒体とが成す角度となる。)とは異なるものとすることでも、上記したフリンジの干渉現象が低下するため、蛍光層内の蛍光体から比較的全方向へ発する「蛍光」の内、この「参照光」と記録媒体とが成す角度と、実質的に同一の角度で入射する「蛍光」が選択的に干渉現象を強く受け、互いに強め合って、ホログラム再生像を再生することとなる。これは、体積ホログラム形成層によって、蛍光発光する光の方向をも選択されることを意味する。
さらには、蛍光層を「発光させる」所定の波長の光については、その蛍光層に入射する角度になんらの制限も無いことから、体積ホログラム形成層側から、その体積ホログラム形成層平面に対して浅い角度で入射させ、その反射角度が観察者の目の方向に向かないようにすることも可能であるし、蛍光層の背後からやはり浅い角度で蛍光層を照明することにより、その照明光源そのもの嵩張って、観察の障害となることを防止することも可能となる。
これらの体積ホログラムを形成する際に用いられる光源としては、可視光波長領域にあるコヒーレントな光を発振(発光)するものであれば、いずれも用いることができるが、例えば、ガスレーザーとして、HeNeレーザーLGシリーズ(発振(発光)波長は、594nm、633nm、0.5mW〜30mW)、HeNeレーザーLHシリーズ(同、594nm、604nm、612nm、633nm、0.3mW〜4.0mW)、アルゴンレーザー(同、488nm、514nm、40mW)、HeCdレーザーIKシリーズ(同、442nm、20mW〜200mW)、窒素/色素レーザーGL−301、窒素/色素レーザーGL−302(同、360nm〜990nmから選択可能。)等、
固体レーザーとして、ルビーレーザー(同、694nm、パルスレーザー)、小型CWレーザー(Nd:YAG、Nd:YLF、Nd:YVO4レーザー)Direct(同、405nm、445nm、447nm、473nm、488nm、638nm、643nm、647nm、655nm、690nm、785nm)、小型CWレーザー(同)Crystal(同、473nm、523nm、527nm、532nm、542nm、555nm、561nm、593nm、657nm、660nm、671nm)、波長変換レーザーOptiシリーズ(同、488nm、589nm)、TOL90色素レーザー(同、420nm〜900nmから選択可能。)等、
半導体レーザーとして、SWL−7513H(同、633nm、660nm、8mW〜20mW)、FK LA−100(同、457nm、1W)、LDM(同、405nm、440nm、473nm、532nm、635nm、665nm、690nm、10mW〜200mW)等を用いることができる。
【0028】
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、蛍光発光する放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが好ましく、例えば、蛍光層の厚さを薄いものとしたり(光の進行方向において、蛍光の発光点となる蛍光層に含まれる蛍光体の位置を揃えるという意味。)、蛍光波長の幅を狭くすることが望ましい(干渉現象を生じない波長の光は、そのまま、ホログラム再生像にとってノイズもしくは迷光となるため。)。さらに、蛍光体(以下、発光体ともいう。)を励起する励起光源の照明領域も小さい形状であることが好ましく、スポット形状等が特に好適である。
また、蛍光体(発光体)を励起する励起光と、蛍光波長(発光波長)との波長差は大きい方が望ましく、さらに、観察時、その励起光をフィルタリングして発光光のみを増幅することも有効である。
励起光源として、紫外線、可視光線、電子線、X線等のエネルギー及び場合に応じて、赤外線エネルギーを放射可能な光源を用いて、蛍光発光等をさせることができるが、ホログラム観察用さらには、ホログラム認証用に用いるためには、蛍光体に応じた光源を用いる必要があり、所定の強度、波長、さらには照明スポットのサイズを有する紫外線光源、可視光光源、場合により赤外光源を用いる。
蛍光層は、レリーフホログラム形成層のホログラムレリーフに追従して設けられており、その発光により、さらに言及すれば、その蛍光層に含まれる蛍光体から個々に、照明光源の波長とは異なる波長の蛍光が発現する。
すなわち、ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差をレリーフ形状に現しているが、この位相差を有するレリーフ形状に追従して(沿って)蛍光層が設けられることにより、蛍光層が発する蛍光が、上記位相差を有して(含んで)発することになる。
【0029】
これは、レリーフホログラムを再生する場合に生じるホイヘンスの2次波に対し、本発明のホログラムシートの場合において、この2次波に相当するものが、レリーフホログラム形成層のホログラムレリーフ面に追従するように配された蛍光体(もしくは、蛍光物質とも呼ぶ。蛍光層の中に含まれている。)の蛍光発光であり、この発光がその役目を担い、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフが有する位相差を含んで発光光を観察者側に発するものである。
この発光する光(以下、発光光ともいう。)が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、所定の方向に所定のホログラム再生像を発現する。
但し、このホログラムレリーフに追従して設けられた蛍光層が、体積ホログラム形成層に近接している場合には、すなわち、体積ホログラム形成層上に設けられたレリーフホログラム形成層の厚さが薄い場合には、この干渉現象がまだ十分には発現しないまま、体積ホログラム形成層に入射することとなり、体積ホログラム形成層に対する、単なる平坦な照明光源として機能することとなる。
しかし、その干渉現象は、体積ホログラム形成層を通過しつつ発現するため、本発明のホログラムシートから十分な距離を置いて観察している観察者においては、その干渉現象の結果であるレリーフホログラム再生像を視認することができる。
すなわち、この場合には、蛍光層の発光による、平坦な照明光による透過型ホログラム再生像と、上記したレリーフホログラム再生像の両方を視認できるものとなる。
これに対して、このホログラムレリーフに追従して設けられた蛍光層が、体積ホログラム形成層から比較的大きい距離をおいている場合には、すなわち、体積ホログラム形成層上に設けられたレリーフホログラム形成層の厚さが厚い場合には、この干渉現象がこのレリーフホログラム形成層内において十分に発現し、ここでレリーフホログラム再生像をほぼ形成した後に、体積ホログラム形成層に入射することとなり、「レリーフホログラム再生像」が体積ホログラム形成層に対する「参照光」として、機能することとなる。
ここで、近接しているとは、1.0μm〜10μmを意味し、比較的大きい距離とは、50μm〜500μmを意味する。
【0030】
いずれにしても、蛍光体に応じた光源による照明により、体積ホログラム形成層上のレリーフホログラム形成層上に設けられた蛍光層から、さらに言及すれば、その蛍光層に含まれる蛍光体から個々に、照明光源の波長とは異なる波長の蛍光等が発現する。その蛍光発光等が、照明光源とは異なる波長(蛍光波長、もしくは、蛍光発光波長ともいう。)を有することから、体積ホログラム形成層による正反射光(0次回折光)方向や、照明光波長(励起光波長)による回折方向とは異なる方向、すなわち、蛍光波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。
但し、この蛍光層の厚さが、不均一にレリーフホログラム形成層上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する蛍光発光強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、蛍光層を、レリーフホログラム形成層上に均一な厚さで形成して、レリーフホログラム形成層上のどの位置からも(すなわち、ホログラムレリーフのどの位置からも)、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図り、また、レリーフホログラム再生像をも鮮明なものとすることができる。
本発明のホログラムシートの照明光(励起光)として、可視光以外の紫外光や赤外光を使用した場合は、その光は観察者には見えず、あたかも照明光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、例え、照明光が、時間的・空間的なコヒーレント性を有していても、結果として、励起・蛍光というプロセスを経て発光するものであるため、その発光時の空間的なホログラムの位相を含んではいるとはいえ、その発光光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像や、レリーフホログラム再生像は通常のレーザー再生ホログラムのレーザー光照明による再生像よりその回折効率はやや低く、且つ、やや不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光をビーム形状で観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、上記したような、やや低回折効率、且つ、やや不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、蛍光体の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、照明光回折角度と蛍光光回折角度の差を大きくし、さらには、蛍光層を薄くして、蛍光層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。
【0031】
さらには、時間的なコヒーレント性を発現するため、光源として10-15sec以下のパルスレーザーで励起して、パルスとパルスの時間的間隔を蛍光発光時間である10-7sec以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの励起パルスによって生じた一つの蛍光発光の発光面が、次の励起パルスによって生じた蛍光発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの蛍光発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFするストロボ状の光源を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
蛍光層に含まれる蛍光体は、紫外線、電子線、X線などのエネルギーを吸収して可視光線として放出する物質であり、例えば、母体となるセラミックス結晶にEu やCe などの発光を担う金属イオンが微量添加した材料等がある。この場合、発光に寄与するは金属イオンであり、外から加えられたエネルギー(紫外線、電子線、X線などや、もちろん可視光線、赤外線等のエネルギー。)を吸収して励起され、その後基底状態に戻る時に発光する。ホスト結晶の格子は金属イオンを取り囲むことによりイオンを化学的に安定化させたり、結晶場や配位環境を整えることにより発光色や発光強度を制御する働きをする。
本発明は、これらの蛍光発光の内、ストークスシフト(Stokes shift)によって可視光領域の発光を起こす蛍光体材料を用いる。もちろん、赤外線の励起による可視光領域の発光を起こすものも用いることができる。
本発明は、ホログラムの照明光源の波長とは異なる波長でホログラムを再生するものであり、例えば、紫外線で照明し、緑色のホログラムを視認することもできるため、観察者の目には、あたかも、通常用いられる緑色の照明光源の無いところに、体積ホログラム再生像や、レリーフホログラム再生像だけが光輝き、空中に浮いているように見え、意匠性にも優れるものとなる。
【0032】
もちろん、ホログラムを再生可能な光源の波長域が非常に狭いことに起因して、その特定の波長域を知りうる者のみがホログラム再生を果たすことができ、真正性判定用に有用なものとなる。また、上記したストークスシフトの値を知りうる者のみがホログラム再生像の色調を予測でき、その再生波長に調整したバンドパスフィルターを通して覗いて、そのバンドパスフィルターを通過できるホログラムのみが、真正であると判定することもできる。
また、このバンドパスフィルターを通過する角度(回折角度)も、そのストークスシフト量に依存し、やはり、その値を知りうる者のみがその所定の角度で判定を行うことができる。
さらに、蛍光体を複数含めることにより、この再生像は複数の角度に異なる色調で現れることになり、意匠性の面でも、真正性判定の面でもより優れたものとなる。
蛍光発光の原理は、図2に示すジャブロンスキー図にあるように、蛍光体(蛍光色素、蛍光顔料、蛍光染料等を含む。)の基底状態(S0:一重項状態)から光吸収によって第一(S1)、第二(S2)、第三励起状態(S3)・・・のどれかの振動状態に励起された発光体が、無放射過程で非常に速やかに緩和してS1の電子励起状態に移るか、あるいは項間交差によって三重項状態(T1、T2)へ移る。S1の最低振動状態になった蛍光体は、無放射過程によるか蛍光を発して基底状態に戻る。三重項状態になった分子は、無放射過程によるか、リン光を発して基底状態に戻る。
一重項同士の遷移は瞬間的に起こるため、蛍光の半減期は10-4sec以下と短いものである。遷移に要する時間は、10-15secで励起が起こり、その後10-9〜10-7secで蛍光発光が起こるとされている。
一方、三重項から一重項への遷移はスピン変化禁止により禁制遷移となり自発的放出が起こりにくいので、リン光の半減期は大きく、秒単位のものもある。
基底状態に戻る際に光を発するか否か、光の強度が強いか弱いか、蛍光寿命が長いか短いかは、その蛍光体物質の分子構造や分子の置かれた環境に大きく依存する。
【0033】
蛍光体材料の放出光の波長分布を蛍光スペクトルといい、蛍光スペクトルは蛍光の波長に対し相対的な蛍光強度をプロットして作成される。(実際の蛍光スペクトル測定では、波長と 強度が一定に維持された励起光を光源として用い、 蛍光体を取り扱う場合は、放出スペクトルのことを蛍光スペクトルと呼ぶ。)蛍光スペクトルに示される波長(エネルギー)は一次励起状態の最低振動エネルギー準位から基底状態の優先的な振動エネルギー準位までのエネルギー差と等しくなる。
蛍光の振幅が励起状態と基底状態の振幅構造と類似しているなら、最も長波長側の励起の振幅と鏡像関係となり、理論上、蛍光色素が吸収した光エネルギーの波長と蛍光として放出する波長は同じになる。しかし実際にはほとんどの蛍光色素の蛍光スペクトルは長波長(低エネルギー)側にシフトする。励起スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長間の差はストークスシフトと呼ばれ、この波長差は、蛍光放出以前の励起状態の際に放出されたエネルギーが熱エネルギーに変換されたために生じる。
ストークスシフトは蛍光の感度おいて非常に重要であり、蛍光を検出する際、励起光の影響を受けないためバックグラウンドを低くすることができる。
入射光の波長と強度を一定にした場合(例えば、光源として制御されたレーザー光を使用した場合)、放出される蛍光は蛍光物質の量と正比例する。従って、蛍光の強度を一定とするためには、レリーフホログラム形成層上に形成する蛍光層の中の蛍光体の量を一定とする必要がある。もちろん、蛍光体の濃度が高い場合には、サチレーションをおこし直線性が失われて一定の強度となったり、蛍光体間の距離が極めて接近し、表面付近だけが励起され、放出蛍光が吸収されてしまうため、本発明の目的である蛍光光の干渉性を十分得るためには、蛍光層の厚さ方向に蛍光体が分散して多く存在するよりも、レリーフホログラム形成層面近傍にのみ均一に存在する方が、より高い干渉現象を生じるため、蛍光体の粒径の1〜10倍、さらには1〜3倍とすることが望ましい。蛍光体が染料であり、蛍光層を形成する樹脂に溶解している場合には、その樹脂層を薄く抑える必要がある。
【0034】
また、蛍光体によっては、放出される蛍光強度(輝度)が異なり、蛍光強度はそのまま感度に影響を与えるため蛍光体の蛍光強度は非常に重要な要素となる。蛍光強度は蛍光体の以下の2つの特性に依存し、
・光の吸収効率(吸光係数)
・励起光と蛍光の変換効率(量子収率)
蛍光強度は蛍光体の吸光係数(ε)と量子収率(φ)に比例するため、以下の式で表される。
・蛍光強度(輝度) ∝ 吸光係数(ε)×量子収率(φ)
ここで、蛍光体の吸光係数とは蛍光体に吸収される特定波長の光量を意味し、モル吸光係数は光路1 cmあたりの1M(1モル)蛍光色素溶液の光学濃度として定義される。有用な蛍光体では、このモル吸光係数が10,000以上を示す。励起光と蛍光の変換効率(量子収率)は以下の式から得ることができる。
・φ = 放出された光子数 / 吸収された光子数
ここで、量子収率(φ)は “0” (非蛍光性物質)から “1” (効率100%)までの値をとる。蛍光体の量子収率を示す例として、フルオレセイン(φ=0.9)およびCy5(φ=0.3)がある。通常の量子収率(φ)の測定には、吸収スペクトルのピーク波長が用いられる。
【0035】
フルオレセイン(ε=70,000、φ=0.9) とCy5(ε=200,000、φ=0.3)は極めて高い輝度を持っており、これらの蛍光体は量子収率と吸光係数は非常に異なっているが、蛍光強度は同等となる。
したがって、蛍光体を評価する場合は、吸光係数と量子収率をあわせて考慮する必要がある。蛍光強度は入射光の強さにも影響を受け、理論上、入射光量を上げていくと励起さ
れる蛍光体が増加し、同時に放出される光量(光子数、あるいは基底状態まで落ちていく 電子数)が増加し、蛍光強度の上昇として観察される。しかし 実際には、入射光量を上げすぎてしまうと全ての蛍光体が常時励起状態となり、蛍光破壊が起こり蛍光強度が減衰あるいは消失して蛍光強度との相関性が失われる等の現象が発生するため、入射光量を適切に定める必要がある。
さらに、蛍光体の量子収率や励起スペクトルおよび蛍光スペクトルは 環境条件、すなわち、環境温度、イオン濃度、PH、励起光の強度、樹脂等との共有結合、非共有結合性の相互作用(インターカレーション効果等。)などから影響を受けるため、これら環境条件を考慮して励起光波長や、蛍光光を認識しやすくするための光学フィルター(ロウパスフィルター、ハイパスフィルターや、バンドパスフィルター等。)を必要に応じ、設定する必要がある場合もある。
【0036】
また、もう1つの環境効果として光によるフォトブリーチングがある。励起状態にある蛍光体は基底状態に比べて化学的に活性化されているため、破壊されやすくなり、低頻度ではあるが、例えば、「励起蛍光色素分子」が化学反応を進行し、最終的に低蛍光性の構造になりことがある。この化学反応の進行は個々の蛍光体のフォトブリーチングに対する感受性や化学的な環境、励起光の強度、励起光の照射時間、観察や認証のための光学スキャンの繰り返し数等に依存するため、目的に応じた設定が必要となる。
光源として制御可能なレーザー光を使用するなど、入射光の波長と強度を一定にした場合、放出される蛍光(光子数)は蛍光体の量と正比例する。蛍光体が極めて高濃度である場合は、シグナル応答が非線形になる。
一定量の蛍光体から放出される光子数は、励起/放出サイク ルを繰り返せば増幅できる。励起光強度と蛍光体濃度が一定の場合は、放出光の総量は照射時間(蛍光色素等に励起光を照射している期間)に比例する。励起/放出サイクルの時間よりも照射時間が長ければ、蛍光体は励起/放出サイクルを何回も繰り返す。蛍光強度(放出光子数)の測定は、どのような受光素子でも測定可能である。
低強度光を測定する場合は、 増幅機構を持つ光電子増幅管(Photo multiplier tube:PMT) が有効である。PMTに十分なエネルギーを持つ光が入射すると、 陰極から電子が放出され、電子は電流として増幅される。これら受光素子の電流は、入射光の強度に比例し、蛍光強度は通常、任意単位で表示される(例rfu:rela−tive fluorescence unites:相対蛍光単位)。
【0037】
蛍光体は、一般的に、蛍光体原料を焼成する固相反応法により、製造される。この固相反応法では原料混合物を高い温度で焼成するため、得られる焼成ケーキは、蛍光体粒子が硬く凝集したものとなることが多い。そのため、通常は、蛍光体の製造の際には例えばボールミル、乳鉢等による粉砕工程を行うが、このときの蛍光体粒子の表面の損傷を抑制する方法として、流動式反応器装置を用いて、実質的に単分散の蛍光体−前駆体粒子を、流動する気体中に浮遊させて焼成することにより、凝集していない実質的に単分散の蛍光性粒子を製造する。この方法によれば、1μm未満の大きさの蛍光性粒子を製造することができる。
また、例えば、ZnGa24:Mn蛍光体を製造するに際し、焼成を行なう前の蛍光体原料を湿式沈殿法により調製することにより、低温での焼成が可能となり、蛍光体粒子の凝集を抑制することができる。
また、例えば、アルカリ土類アルミン酸塩系、またはアルカリ土類珪酸塩系の母体結晶を有する蛍光体の製造方法に関し、Srを含む蛍光体原料として硝酸ストロンチウムを用い、原料混合液又は懸濁液を所望の粒径となるよう液滴化し、これを焼成する方法がある。これにより、極めて脆い性質を有する蛍光体が得られ、容易に微小なサイズへ粉砕することができる。
蛍光体原料としては、製造しようとする蛍光体を構成する元素(以下、「蛍光体構
成元素」ともいう。)を含有する化合物を用いることができる。その例を挙げると、蛍光体構成元素を含有する、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。蛍光体原料の選択に際しては、得られる蛍光体への反応性等を考慮して選択することが好ましい。さらに、蛍光体を構成する各蛍光体構成元素に対応し、蛍光体原料は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、蛍光体の各蛍光体原料中に含まれる不純物としては、蛍光体の特性に悪影響を与えない限りにおいて、特に限定されない。
各蛍光体原料の重量メジアン径としては、通常0.01μm以上、0.5μm以下である。このために、蛍光体原料の種類によっては予めジェットミル等の乾式粉砕機で粉砕を行っても良い。これにより、各蛍光体原料の原料混合物中での均一分散化を図り、かつ、蛍光体原料の表面積増大による原料混合物の固相反応性を高めることができ、不純物相の生成を抑えることが可能となる。
【0038】
例えば、Baを含む蛍光体原料の具体例としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、Ba(NO32、BaSO4、Ba(C24)・22O、Ba(OCOCH32、BaCl2等が挙げられる。
Caを含む蛍光体原料の具体例としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO32・4H2O、CaSO4・2H2O、Ca(C24)・H2O、Ca(OCOCH32・H2O、無水CaCl2(但し、水和物であってもよい。)等が挙げられる。
Srを含む蛍光体原料の具体例としては、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO32、SrSO4、Sr(C24)・H2O、Sr(OCOCH32・0.5H2O、SrCl2等が挙げられる。
Znを含む蛍光体原料の具体例としては、ZnO、Zn(C24)・2H2O、ZnSO4・7H2O等が挙げられる。
Mgを含む蛍光体原料の具体例としては、MgCO3、MgO、MgSO4、Mg(C24)・2H2O等が挙げられる。
Siを含む蛍光体原料の具体例としては、SiO2、H4SiO4、Si(OCOCH34等が挙げられる。
Euを含む蛍光体原料の具体例としては、Eu23、Eu2(SO43、Eu2(C243、EuCl2、EuCl3、Eu(NO33・6H2O等が挙げられる。
Sm、Tm及びYbを含む各蛍光体原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm及びYbに置き換えた化合物が挙げられる。
【0039】
Mnを含む蛍光体原料の具体例としては、MnO、MnO2、Mn23、MnF2、MnCl2、MnBr2、Mn(NO32・6H2O、MnCO3、MnCr24等が挙げられる。
Crを含む蛍光体原料の具体例としては、Cr23、CrF3(水和物であってもよい)、CrCl3、CrBr3・6H2O、Cr(NO32・9H2O、(NH42CrO4等が挙げられる。
Tbを含む蛍光体原料の具体例としては、Tb47、TbCl3(水和物を含む。)、TbF3、Tb(NO33・nH2O、Tb2(SiO43、Tb2(C243・10H2O等が挙げられる。また、他の蛍光体原料(例えば、Eu源)とTb源とを共沈させてから用いることもできる。
Prを含む蛍光体原料の具体例としては、Pr23、PrCl3、PrF3、Pr(NO3362O、Pr2(SiO43、Pr2(C243・10H2O等が挙げられる。
Ceを含む蛍光体原料の具体例としては、CeO2、CeCl3、Ce2(CO33・5H2O、CeF3、Ce(NO33・6H2O等が挙げられる。
Luを含む蛍光体原料の具体例としては、Lu23、LuCl3、LuF3(水和物であってもよい)、Lu(NO33(水和物であってもよい)等が挙げられる。
Laを含む蛍光体原料の具体例としては、La23、LaCl372O、La2(CO33・H2O、LaF3、La(NO33・6H2O、La2(SO43等が挙げられる。
Gdを含む蛍光体原料の具体例としては、Gd23、GdCl3・6H2O、Gd(NO33・5H2O、Gd2(SO43・8H2O、GdF3等が挙げられる。
【0040】
Geを含む蛍光体原料の具体例としては、GeO2、Ge(OH)4、Ge(OCOCH34、GeCl4等が挙げられる。
Gaを含む蛍光体原料の具体例としては、Ga23、Ga(OH)3、Ga(NO33・nH2O、Ga2(SO43、GaCl3等が挙げられる。
Alを含む蛍光体原料の具体例としてはα−Al23、γ−Al23等のAl23、Al(OH)3、AlOOH、Al(NO33・9H2O、Al2(SO43、AlCl3等が挙げられる。
Pを含む蛍光体原料の具体例としては、P25、Ba3(PO42、Sr3(PO42、(NH43PO4等が挙げられる。
Bを含む蛍光体原料の具体例としては、B23、H3BO3等が挙げられる。
なお、上記に例示した原料は、必要に応じて共沈させてから用いてもよい。
さらに、N元素、O元素及びハロゲン元素等に対応する蛍光体原料は、通常、上記各蛍光体構成元素の蛍光体原料のアニオン成分として、又は焼成雰囲気中に含有される成分として、蛍光体製造時に供給される。
蛍光体原料を混合して原料混合物を調製してから、原料混合物を所定温度、雰囲気下で焼成する。この際、混合は十分に行うことが好ましい。
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)として挙げた手法を用いることができる。また、これらの各種条件については、例えば、ボールミルにおいて2種の粒径の異なるボールを混合して用いる等の条件を選択可能である

【0041】
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒又は水などの溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、蛍光体原料の物性に応じて、湿式又は乾式のいずれかを選択することができる。
また、ハロゲン化物、窒化物等の酸化・吸湿し易い原料を用いる場合には、例えばアルゴンガス、窒素ガス等の不活性気体を充填し、水分管理されたグローブボックス内でミキサー混合する。
また、混合・粉砕時に、粒径を揃える等の目的で、蛍光体原料を篩いにかけても良い。この場合、各種市販の篩いを用いることが可能であるが、金属メッシュのものよりもナイロンメッシュ等の樹脂製のものを用いる方が、不純物混入防止の点で好ましい。
焼成工程では、得られた原料混合物を焼成することにより焼成物を得る。得られた焼成物は、通常、その組成は目的とする蛍光体のものとなっているが、その粒子は焼結して焼成ケーキとなっている。
【0042】
さらに、焼成において、焼成炉中の耐熱容器の数が多い場合には、例えば、上記の昇温速度を遅めにする等、各耐熱容器への熱の伝わり具合を均等にすることが、ムラなく焼成するためには好ましい。
焼成工程における焼成温度、圧力、雰囲気等の焼成条件は、製造しようとする蛍光体そ
れぞれに応じて適切な条件を設定することが好ましい。
さらに、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は、発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために、必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行なってもよい。
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下「表面処理物質」とも称する。)の例としては、例えば、有機化合物、無機化合物、ガラス材料等を挙げることができる。 有機化合物の例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
無機化合物の例としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。なお、燐酸リチウム、燐酸ナトリウム、及び燐酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、塩酸バリウム、塩酸カルシウム、及び塩酸ストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いることもできる。中でも、燐酸ナトリウムと硝酸カルシウムとを組み合わせて用いることが好ましい。また、蛍光体表面にバリウム、カルシウム、ストロンチウムが存在する場合には燐酸ナトリウム等の燐酸塩のみを用いても表面処理を行なうことができる。
【0043】
ガラス材料の例としてはホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。 これらの表面処理物質は、何れか1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
表面処理を施した蛍光体は、これらの表面処理物質を有することになるが、その表面処理物質の存在態様としては、例えば下記のものが挙げられる。
(i)表面処理物質が連続膜を構成して、蛍光体の表面を被覆する態様。
(ii)表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより、蛍光体の表面を被覆する態様。
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量、若しくは被覆量は、蛍光体の重量に対して、0.1重量%以上、また、30重量%以下、好ましくは15重量%以下であることが望ましい。蛍光体に対する表面処理物質量の量が多過ぎると、蛍光体の発光特性が損なわれる場合があり、少な過ぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られない場合がある。
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば、以下に説明するような、金属酸化物(
酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、更にアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を30分間静置した後、蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、150℃で2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着さ
せる方法、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法、金属化合物の粒子を付着させる方法等を用いることができる。
蛍光体の結晶構造の例を挙げると、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu等のオルソシリケート系結晶構造、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のガーネット系結晶構造、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu等のアパタイト系結晶構造、M3Si6122:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等の窒化物系結晶構造などが挙げられる。中でも、オルソシリケート系結晶構造又はガーネット系結晶構造が好ましい。
【0044】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、さらには515nm以上であることが好ましく、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、さらには535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する可能性がある。
また、緑色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常10nm以上、通常130nm以下であり、用途に応じて適宜調整することが好ましい。この半値幅FWHMが狭過ぎると発光強度が低下する場合があり、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
また、緑色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は、通常1μm程度である。
緑色蛍光体の具体例を挙げると、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
【0045】
また、その他の緑色蛍光体としては、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)624:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、M3Si694:Eu、M3Si6122:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0046】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種のみを使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(橙色ないし赤色蛍光体)
該橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Euで表わされるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Y,La,Gd,Lu)22S:Euで表わされるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
また、赤色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常1nm〜50nmの範囲である

また、赤色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のもの
であり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
【0047】
更に、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW28:Eu、LiW28:Eu,Sm、Eu229、Eu229:Nb、Eu229:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Eu、LiY9(SiO462:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO46(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0048】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)22S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)22S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu又は(La,Y)22S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。
なお、橙色ないし赤色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0049】
(青色蛍光体)
青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、青色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常20nm〜80nmの範囲である。
また、青色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表わされるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO43(Cl,F):Euで表わされるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行う(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0050】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al24:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO46・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si382SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSi9Al19ON31:Eu、EuSi9Al19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体、La1-xCexAl(Si6-zAlz)(N10-zOz)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1-x-yCexCayAl(Si6-zAlz)(N10-zOz)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0051】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)2SiO \f14:Euを含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Sr)3MgSi28:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO46(Cl,F)2:Eu又はBa3MgSi28:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu又は(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
なお、青色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、黄色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常60nm〜200nmの範囲である。
また、黄色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、メジアン径D50は通常1μm程度である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
【0052】
特に、RE3M512:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やMa3Mb2Mc312:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2MdO4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mdは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSi(N,O)3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa24:Eu、(Ca,Sr)Ga24:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)24:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のsialon構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1-a-bEuaMnb)2(BO31-p(PO4)pX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表わす。a、b、及びpは、各々、0.001≦a≦0.3、0≦b≦0.3、0≦p≦0.2を満たす数を表わす。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0053】
さらには、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体やビススチリルビフェニル誘導体(紫外線励起400〜450nm蛍光発光)等を用いることもできる。
特に、ナノ蛍光体:Siナノ蛍光体、ZnSナノ蛍光体、YAG:Ceナノ蛍光体、LaPO4:Lnナノ蛍光体、色素ドープシリカナノ蛍光体、半導体ナノ粒子、CdSe−ZnS量子ドット等は、その粒径がホログラムレリーフのレリーフ周期よりはるかに小さいため、そのレリーフ面上へ均一に形成でき、かつ、形成厚さも制御しやすいため特に好適である。半導体薄膜の極微細加工により形成する場合は、高精度且つ、極薄膜で形成可能であり、発光光の波形や、強度を制御して、その干渉性を向上させることができる。
蛍光性半導体量子ドットにおいては、中心核(コア)は、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造をしている。この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特徴を持つ。この量子ドットの周囲に生体高分子を配置したものは、生体高分子特有の反応基を有するため、この反応基を利用して蛍光体を特異的に配置させることが可能である。
紫外線発光蛍光体としては、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻る時に発する蛍光スペクトルのピークが、青、緑、赤等の波長域にあるものである。そして、このような紫外線発光蛍光体としては、例えばCa259 Cl:Eu2+,CaWO4 ,ZnO:Zn,Zn2 SiO4 :Mn、Y22 S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu、Y23 :Eu,Gd22 S:Tb,La22S:Tb,Y3 Al512:Ce等があり、これらを単体として使用するか、またはこれらを数種、適当な割合で混合して使用する。
これらは、蛍光スペクトルのピークを、青、赤、緑の波長領域以外に有するものである。また、インキ中の紫外線蛍光発光体の重量率は、読み取りヘッドの受光素子による蛍光の検知が可能であればよい。
一方、赤外線発光蛍光体としては、波長λ1の励起光を受けて、波長λ2の可視光を発光する特性を有し、λ1=λ2かつλ1>λ2なる性質を有するものがある。そして、このような赤外線発光蛍光体としては、例えば組成が YF3 :Yb,Er,ZnS:CuCO等がある。
【0054】
具体的例として、BASF社製ルモゲンFVヴァイオレット570(ナフタルイミド:374nm→413nm)、ルモゲンFイエロー083(ペリレン:励起波長476nm→発光波長490nm:以下同じ。)、ルモゲンFオレンジ(ペリレン:525nm→539nm)、ルモゲンFレッド305(ペリレン:578nm→613nm)等、
デイグロ社製蛍光顔料:グロプリルT/GTシリーズ、ACTシリーズ、Z/ZQシリーズ、GPLシリーズ、LHYシリーズ、蛍光染料:ダイブライトD−818ロアノークイエロー、D−784アルパータイエロー、D−208アパツチイエロー、D−288チェロキーレツド、D−688コロラドレツド、D−298コロンビアブルー等、
シンロイヒ社製蛍光顔料:シンロイヒカラーFZ−2000シリーズ(FZ−2001RED等)、FZ-2800シリーズ(FZ−2808Blue等)、SX−100シリーズ(SX−104Orange等)、SX−1000シリーズ(SX−1004Orange、SX−1005Lemon Yellow、SX−1007Pink、SX−1037Magenta:平均粒径1.0μm以下)、SW−10シリーズ(SW−11Red Orange、SW−12NGreen、SW−13Red、SW−14NOrange、SW−15N Lemon Yellow、SW−16N Orange Yellow、SW−07Cerise、SW−17Pink、SW−27Rose、SW−37Rubine、SW−47Violet、SW−28Blue:平均粒径1.0μm以下)、SPシリーズ、SF−3000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−5000シリーズ(超微粒子タイプ)、SF−8000シリーズ(超微粒子タイプ)、ルミライトナノRY202(粒径30nm、365〜370nm→619nm)等、
【0055】
モリテッククス社製:蛍光粒子(グリーン:468nm→508nm)G25(粒径0.03μm)、G40(粒径0.04μm)、G50(粒径0.05μm)、G75(粒径0.07μm)、G85(粒径0.09μm)、G100(粒径0.10μm)、G140(粒径0.14μm)、G200(粒径0.20μm)、G250(粒径0.25μm)、G300(粒径0.30μm)、G400(粒径0.40μm)、G450(粒径0.45μm)、G500(粒径0.50μm)、
蛍光粒子(グリーン:360nm→530nm)34−1(平均粒径3.0μm)、
蛍光粒子(ブルー:365nm→447nm)B50(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B150(粒径0.14μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)、
蛍光粒子(レッド:542nm→612nm)B50(粒径0.05μm)、B60(粒径0.05μm)、B100(粒径0.10μm)、B160(粒径0.16μm)、B200(粒径0.20μm)、B300(粒径0.30μm)、B400(粒径0.40μm)、B500(粒径0.50μm)等、
テールナビ社製 紫外線励起蛍光顔料UVP−1(発光波長421nm)、UVB−1(発光波長453nm)、UVG−2(発光波長517nm)、UVR−2(発光波長626nm)、可視光励起蛍光顔料LMS−570(450〜520nm→570nm)、LMS−560(450〜467nm→560nm)、LMS−550(450〜465nm→550nm)、LMS−540(450〜465nm→540nm)等、
【0056】
イントロジェン社製Qdot525ナノクリスタル(350〜488nm→525nm)、Qdot565ナノクリスタル(350〜488nm→565nm)、Qdot585ナノクリスタル(350〜488nm→585nm)、Qdot605ナノクリスタル(350〜488nm→605nm)、Qdot625ナノクリスタル(350〜488nm→625nm)、Qdot655ナノクリスタル(350〜488nm→655nm)、Qdot705ナノクリスタル(350〜488nm→705nm)、Qdot800ナノクリスタル(350〜488nm→800nm)等、
エヴィデントテクノロジーズ社製エヴィドット:CdSe/ZnSコアシェルエヴィドット(平均粒径7.2〜9.6nmで発光波長490nm〜620nm)等、
日本カンタムデザイン社製量子ドット:カルボキシル基タイプ、アミノ基タイプ:直径3.0nm〜直径8.3nmで発光波長530nm〜620nm等を好適に用いることができる。
蛍光層は、蛍光体を樹脂に混入させたり、溶剤(若しくは水)に分散させたりした蛍光インキを、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、ノズルコート方式さらにはインクジェット方式等でレリーフホログラム形成層上に形成することができる。
蛍光層の厚さは、0.1μm〜10.0μmとし、好適には、0.5μm〜5.0μmとする。
蛍光層の厚さが、0.1μm未満であると、十分な蛍光発光量が得られ難く、10.0μmを超えると、上記した蛍光層内の蛍光発光「点」の位置のばらつきが大きくなり、レリーフホログラム再生像のみならず、体積ホログラム再生像までもが不鮮明となる。
【0057】
ここで、体積ホログラム形成層上に設けるレリーフホログラム形成層について説明する。
レリーフホログラム形成層に用いられる透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができ、これらの樹脂材料を用いてホログラム形成層を形成するには、感光性樹脂材料にレリーフホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸(ホログラムレリーフを意味する。)を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
レリーフホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状(ホログラムレリーフの形状)で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0058】
レリーフホログラム形成層に設ける微細な凹凸(ホログラムレリーフの形状)を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。
また、カラーホログラム画像を、回折格子線からなる回折格子画素(同一の回折格子線からなる単一回折格子エリアの最小単位。これら画素から回折光としてでてくる光の集合が一つのカラーホログラム画像を形成する。)に要素分解し、所定の画素のサイズ、格子線ピッチ、格子線角度をその各要素に割り当てて再現するという画像処理方法を用いて形成することも可能である。
凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.01μm〜0.5μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
【0059】
ホログラムレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパとも呼ばれる。)として用い、上記レリーフホログラム形成層上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜層を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とする。
レリーフホログラム形成層の厚さは、上記したように、その目的に応じて、近接しているとは、1.0μm〜10μm(体積ホログラム形成層とレリーフホログラム形成層とを近接させる場合。)、または、50μm〜500μm(体積ホログラム形成層とレリーフホログラム形成層との距離を比較的大きい距離とする場合。)とする。
そのいずれの場合にも、高い厚さ精度が必要とされるため、特に「比較的大きい距離」とする場合には、高い厚さ精度を有する25μm〜350μm透明フィルムをラミネートし、その上にレリーフホログラム形成層を設けてもよい。
【0060】
本発明のホログラムシートは、透明基材、体積ホログラム形成層、レリーフホログラム形成層、及び前記ホログラムレリーフに追従して設けられた蛍光層の4層構成からなり、この透明基材側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光をあててた場合、上記した体積ホログラムの波長選択性により、そのホログラム再生像は、その選択された、非常に狭い波長域の光でしか再生されないため(もちろん、その光の干渉効果により「光の強度」が強められる部分を生じるが。)、そのホログラム再生像の明るさは、照明光の明るさよりかなり小さいものとなり、ホログラム再生像によって真正性を判定するにはやや不十分と言わざるを得ないものであるが、蛍光層に適する波長(紫外線等。)の照明光を、透明基材側、もしくは、蛍光層側からあてることで、蛍光層から所定の波長(域)の光が発生し、この光が体積ホログラムの照明光となって、明るいホログラム再生像を再生するものである。
従って、体積ホログラム形成層には、透過型ホログラムや、反射型ホログラムを記録して用いることができるが、蛍光発光の進行方向に沿って干渉現象を生じ、その先にホログラム再生像を出現させる、透過型ホログラムを記録する方が設計しやすく、この場合には、さらに、透明基材側からの自然光等の照明において、透明基材側からは何らのホログラム再生像をも視認することができないため、単なる透明シートとしか観察されず(所望の印刷等を施しておれば、単なる印刷シートと観察される。)、偽造防止性の高いものとなる。
また、体積ホログラム形成層に上記した透過型ホログラムを記録した上で、さらに、反射型ホログラムを多重記録しておくと、透明基材側からの観察において、反射型ホログラムの再生像を視認可能となり、観察者に、単なるリップマンホログラムシートと認識させ、透過型ホログラムの存在をより隠ぺいすることが可能となる。
もちろん、このホログラムシートの蛍光層を発光させると、その反射型ホログラムの再生像とは、異なる方向に透過型ホログラムの再生像が現れるため、意匠性と偽造防止性をさらに高めることができるものである。
【0061】
この目的のために、反射型ホログラムの再生波長と、透過型ホログラムの再生波長を異なるものとするとともに、その再生角度も異なるものとする。この際の波長差は、50nm以上とし、好適には、100nm以上とする。再生波長を異なるものとすることは、上記したフリンジの周期を異なるものとすることを意味し、体積ホログラム形成層内におけるそれぞれのフリンジ間の不要な干渉を低減することができる。
そして、再生角度差は、10度〜40度とする。この差が40度を超えると、一方の観察角度がホログラムシート面に近いものとなるため、観察するのに不便となる。
このようにして形成したホログラムシートは、その蛍光層上に適宜な粘着層もしくは、接着層を設けて、「ラベル」とし、適宜な被貼着体に貼付して用いることもできる。
また、透明基材と体積ホログラム形成層との間に適宜な剥離層を設け、さらに、蛍光層上に接着層を設けて「転写箔」とし、適宜な被転写体に転写して用いることも好適である。
さらには、本発明のホログラムシートの各層に適宜、所望のデザインの印刷等を施し、その意匠性や偽造防止性を高めることも好適である。
【発明の効果】
【0062】
本発明のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及び、ホログラムレリーフを有するレリーフホログラム形成層が設けられ、さらに、その上に、前記ホログラムレリーフに追従して蛍光層が設けられていることを特徴とするホログラムシートが提供され、その蛍光層の蛍光発光により体積ホログラムを「照明」し、「明るさ」の十分なホログラム再生像を出現させることで、このホログラム再生像による真正性判定を容易、且つ、確実なものとすることができるホログラムシートを提供できる。さらに、このようなホログラムシートはこれまでに存在しないため、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】は、体積ホログラムの記録方法及び、再生方法を示す図である。
【図2】は、ジャブロンスキー図である。
【図3】は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの断面図である。
【図4】は、本発明の一実施例を判定するプロセスである。
【図5】は、本発明の別の実施例を判定するプロセスである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートAを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図3参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
【0065】
(体積ホログラム形成層)上記した透明基材1の上に体積ホログラム形成層2を設ける。(図3参照。)
体積ホログラム形成層2には、各種の透明な材料又は、透明なフィルムが用いられる。
すなわち、銀塩写真乳剤、重クロム酸ゼラチン、フォトレジスト、フォトポリマー材料、無機材料からなるフォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料等及び、それらの材料からなるフィルムを用い得る。
銀塩写真乳剤としては、高感度、高解像度が求められ、超微粒子銀塩や、金―カルコゲン増感や、還元増感を施した材料等が用い得る。
フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストとして、ノボラック−DNQ系、又は、化学増幅型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストとして、光架橋型フォトレジスト、又は、光重合型フォトレジスト等を用いることができる。
銀塩写真乳剤、或いは、重クロム酸ゼラチンは、処理工程が多く煩雑であるが、固体光重合性材料、すなわち、フォトポリマー材料は、処理工程が1回のみであるため、好適である。
これは、1工程で、固体の光重合性フィルムから、安定な高解像度のホログラムを作成することができ、ホログラフ情報をもつコヒーレントな光源に対する1回の露光により、「屈折率変調を固定化した画像」が得られることを意味する。このようにして形成されたホログラムは、光に対するその後の均一な露光によっても破壊されることなく、むしろ定着されまたは強化される。
【0066】
フォトポリマー材料は、熱可塑性重合体結合剤、付加重合可能なエチレン系不飽和単量体、及び、不飽和単量体の重合を活性化する光開始剤からなる、屈折率変調を有する光重合性組成物を用いる。
熱可塑性重合体結合剤は、溶媒可溶性の熱可塑性重合体であり、単独で、又は、組合せて使用する。具体的には、
;アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、例えば、ポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、
;ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル;エチレン/酢酸ビニル共重合体、
;飽和及び不飽和ポリウレタン、
;ブタジェン及びイソプレン重合体及び共重合体、
;エポキシ化物、例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物、
;ポリアミド、例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアシツクアミド、
;セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート、
;セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、並びにエチルセルロース;ポリカーボネート等、
並びに、
;ポリビニルアセタール、例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール等。
特に好適には、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びプレポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸(C2〜C4)アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等、並びに、それらの混合物である。
【0067】
さらに、ポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びに、ポリビニルペンデル、及び、それらの混合物を含むこともできる。
エチレン系不飽和単量体は、単一の単量体として、又は、組合せて使用することができる単量体として、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−A−ジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸−ジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼン・フォールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、並びにアクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル等、を用いることができる。
【0068】
この単量体が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「単量体配向型系」と称することができる。
この単量体配向型系に好適な単量体は、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−A−ジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ヒスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、である。
そして、エチレン系不飽和カルバゾール単量体;アクリル酸2−ナフチル;アクリル酸インタクロロフエ=ル;ビスフェノール−Aジアクリレート;アクリル酸2−(2−ブチロキシ)エチル; 並びに、N−フェニルマレイミドのような第2の固体単量体と混合して使用してもよい。
また、予め形成された重合体材料(プレポリマーを意味する。)が、置換又は非置換フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフトキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素、臭素、よりなる群から選択される、1つ又はそれ以上の部分を含有する場合には、これらを含む光重合性組成物は、いわば「結合剤配向型系」と称することができる。
【0069】
この系に使用される単量体には、フェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチロキシ、3つまでの芳香族環を有するヘテロ芳香族、塩素及び臭素よりなる群からとられる部分を含まないものを使用する。
「結合剤配向型系」に好適な単量体は、付加重合することができ、100℃より高い沸点を有する液体、エチレン系不飽和化合物である。単一の単量体としてか又は他の単量体と組合せて使用することができるこの型の適当な単量体は、次のものを含む。
すなわち、アクリル酸一ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソーホルニル、1,5−ベンタンジオールジアクリレート、N、N´−エチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールノアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロノぐンジオール・クアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレー)、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロ−−ルプロJRントリメタクリレート、1,5−ベンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸パーフロロオクチル、メタクリル酸フロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノン等。
【0070】
上記のエチレン系不飽和単量体の外、少なくとも300の分子量を有する、1種又はそれ以上の遊離ラジカル開始型、連鎖生長性、付加重合可能、エチレン系不飽和化合物も含有することができる。
また、単量体は、2〜15の炭素原子のアルキレングリコール又は1〜10のエーテル結合のポリアルキレンエーテルグリコールから製造されるアルキレン又はポリアルキレングリコールジアクリレート、並びに、末端結合として存在する時、複数の付加重合可能なエチレン結合を有するものであってもよい。
さらに、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリフールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロノンのトリアクリレートエステル、等である。また、同じ型の第2の固体単量体、例えば、N−ビニルカプロラクタムと混合して使用してよい。
光開始剤として適当な、遊離ラジカル発生付加重合開始剤は、共役炭素環状環系中2つの環内炭素原子を有する化合物である置換又は非置換多核キノン、例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−三級−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファースルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、を含む。
【0071】
また、ベンゾイン、ピパロイン、アシロインエーテル、例えば、ベンゾインメチル及びエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、及び、α−フェニルベンゾインを含む、α−炭化水素置換芳香族アシロインを含んでもよい。
さらに好適な光開始剤には、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体;1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ヒス(0−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルー:並びに、1H−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−3,4−・ジメトキシフェニル−2量体(そのおのおのは、典型的には水素ドナー、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾールと共に使用される)を挙げることができる。
フォトポリマー材料としては、さらに、フッ素含有ポリマー、付加重合可能なエチレン性不飽和モノマー、及び、光開始剤からなり、画像化(光記録)されたとき、0.001よりも大きな屈折率変調を有する、光重合性組成物を用いることができる。これには、さらに、可塑剤を含めてもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、テトラフルオロエチレンまたはへキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーとビニルアセテートとから作られたポリマーを用いることができ、他のモノマーを含むこともできる。例えば、10〜20%のフッ素を含有しているものを使用する。
使用されるフッ素含有ポリマーは、フォトポリマーのその他の各成分と両立し得るフッ素含有ポリマーであり、塗布されたときに実質的に固体の透明な皮膜を作るものである。
フッ素は、フッ素含有ポリマーを構成する他のモノマーとフッ素含有モノマーとを共重合するか、または、フッ素含有ポリマーとの反応により導入し、フッ素含有ポリマーが、アルコール、または、酸置換基のような官能基を含むとき、フッ素を導入するためには縮合、アセタール化、ケタール化、またはエステル化反応などを使用する。
【0072】
フッ素含有ポリマーには、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルアセタール/ブチラール、またはプレポリマー類あるいはこれらの混合物と、フッ素化モノマーとのポリマー類を含む。例えば、フッ素含有ポリマーは、ビニルアセテートとフッ素化モノマーとのポリマーとすることができ、必要に応じ、このポリマーのアセテート置換基は、加水分解によりとり除き、フッ素化したポリ(ビニルアルコール)誘導体を得ることもできる。このフッ素化ポリ(ビニルアルコール)は、例えば、ブチルアルデヒドと縮合させ、フッ素化したポリ(ビニルブチラール)誘導体にすることができる。
フッ素化したポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)など、または、これらの混合物も同じ方法で作ることができる。フッ素化モノマーは、テトラフルオロエチレン、および/または、へキサフルオロプロピレンのような、過フッ素化モノマーが好適であるが、ビニルフロライドまたはビニリデンフロライドのような、その他のモノマーも特定の用途のために選定することができる。
必要に応じ、他のモノマー類も存在させることができる。例えば、フォトポリマーの溶解性、接着性、柔軟性、または硬さなどのような、化学的、もしくは、物理的諸性質を調整するために、モノマー混合物中にエチルビニルエーテルを混在させることができる。このようなフォトポリマーは通常のフリーラジカル重合法を用いて製造される。
フッ素化したフッ素含有ポリマーは、また適切に置換されているポリマーと、フッ素化された化合物との反応により作ることもできる。ヒドロキシルまたはカルボキシル基のような、潜在的な反応位置をもったポリマーは、フッ素化された化合物との反応によりフッ素化されたフッ素含有ポリマーに変換することができる。例えば、フッ素化されたポリ(ビニルブチラール)は、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルアルデヒドと、ポリ(ビニルアルコール)の縮合により調製することができる。カルボキシル酸を含むポリマー類はフッ素化したアルコール類でエステル化することができ;ポリ(ビニルアルコール)、部分ケン化されたポリ(ビニルアセテート)、またはフッ素化されたモノマーとビニルアセテートとのポリマー類の部分ケン化またはケン化されたものなどのような、ヒドロキシル基含有のポリマー類は、フッ素化されたカルボキシル酸によりエステル化することができる。
【0073】
フルオロオレフィン類は標準的なグラフト化技術を用いて、適切に置換されているポリマー上にグラフト化することができる。ビニルエステル、少なくとも、1つのフッ素化されたモノマー、および、得られるポリマーの物理的性質を調整するための任意の他のモノマーとのポリマーが好ましい。
一般に、フッ素含有量が低下するとその効果も減少するから、フッ素含有ポリマーは少なくとも10%のフッ素を含有するようにされる。しかしながら、フッ素含有量が余りにも高すぎると、得られるフォトポリマーは不透明となる傾向があり、体積ホログラム形成層の調製のためには有用でない。さらには、窓用フィルムとして用いる場合に、再接着用の糊との接着性が著しく低下する。従って、好ましいフッ素含有ポリマーは、10〜20%のフッ素含有量を有している。
フッ素含有ポリマーのビニルエステル成分としては、ビニルアセテートが特に好ましいが、他のビニルエステルおよび類似の結果を与える構造的に関連した化合物も、これに加えて、またはビニルアセテートの代りに選定することができる。例えば、ビニルピバレート、ビニルプロピオネート、ビニルステアレート、ビニルアルコール、または、n−ブチルビニルエーテルなどを選ぶことができる。テトラフルオロエチレン、または、へキサフルオロプロピレンのような過フッ素化モノマー類は、フッ素化モノマー成分として特に有用であると認められているが、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、フルオロオレフィン類、フロロアルキルアクレリートおよびメタアクリレートなどのようなその他の化合物も、特定の用途のためには選ぶことができる。
【0074】
フッ素化されていない対応物よりも、フッ素化されているフッ素含有ポリマーを選ぶことは屈折率変調を劇的に増加させ、それでホログラムの回折効率も増加させる。
例えば、他のすべての成分を同じにして、ポリビニルアセテートによって達成されるのは約0.025〜0、031の範囲の値であるのに反して、ビニルアセテート/過フッ素化物モノマーのフォトポリマーの使用では0.040を超え、0.076の高い屈折率変調の値が達成される。
フッ素化フッ素含有ポリマーは、全フッ素含有ポリマーの1部分だけに選択することができる。この場合、フッ素含有ポリマーのフッ素化されていない対応物は、2つのフッ素含有ポリマーが互いに両立し、そして塗布用溶剤および他のフォトポリマー成分とも両立し、そしてフォトポリマーの透明性、機械的諸性質などを不当に犠牲としないならば、その他の成分として選択することができる。
フォトポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み、これはフリーラジカルで開始される重合し得るもので、100℃以上の沸点を有し、塗布溶剤および選ばれたフッ素含有ポリマーと両立し得るものである。このモノマーは通常末端位置に不飽和性基を含んでいる。一般に液体のモノマーが選定されるが、固体のモノマーが実質的に固体のフォトポリマー組成物中で内部拡散し得るならば、固体のモノマーも1個または数個の液体モノマーと組み合わせて用いることができる。
【0075】
モノマーは、付加重合をすることができかつ100℃以上の沸点をもつ液体の、エチレン性不飽和化合物であり、これは3個までの芳香環;塩素;および臭素を含む、置換または未置換のフェニル、ビフェニル、フェノキシ、ナフチル、ナフチルオキシ、およびヘテロ芳香基、よりなる群から選ばれた1個または数個の部分を含んでいる。モノマーはこのような部分を少なくとも1つ含み、またモノマーが液体でとどまるならば、同一または異なるこのような部分を2個またはそれ以上含むことができる。低級アルキル、アルキオキシ、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、カルボキシ、カルボニルイミド、シアノ、クロロ、ブロモまたはこれらの組み合わせのような置換基を、モノマーが液体モノマーにとどまり、かつ光重合性層中で拡散し得るならば存在させることができる。
代表的な液体モノマーには、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、2− (p−クロロフェノキシ)エチルアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレ−1−、2− (1−ブチルオキシ)エチルアクリレート、0−ビフェニルメタアクリレート、0−フェニルアクリレート、およびこれらの混合物などが含まれる。
モノマーは、通常、液体であるが、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーのような、1個または数個のエチレン性不飽和固体モノマーと混合して使用することもできる。
【0076】
カルバゾール部分の窒素原子に結合したビニル基を含んだ、エチレン性不飽和カルバゾールモノマーは代表的に固体である。このタイプの好適なモノマーには、N−ビニルカルバゾールと3、6−ジプロモー9−ビニルカルバゾールとが含まれる。特に好ましいエチレン性不飽和モノマーの混合物は、N−ビニルカルバゾールと液体モノマーの1個または数個、特に2−フェノキシエチルアクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、またはこれらの混合物などとの組み合わせからなるものである。
フォトポリマーを架橋化(光重合)するときは、組成物中に2個または数個の末端エチレン性不飽和基を含む、多官能性モノマーの少なくとも1つを5%まで加えることができる。この多官能性モノマーは、組成物の他の成分と両立し得るものでなければならず、また好ましくは液体である。多官能性モノマーには、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリルオキシエチル)エーテル、エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびその他が含まれる。エトキシレートビスフェノール−Aジアクリレートは、特に好ましい。
光開始剤系は、電離放射線により活性化されたときに、フリーラジカルを直接に与える1個または数個の化合物からなるものである。「電離放射線」は、モノマー材料の重合を開始するのに必要な、フリーラジカルを生成させるような活性な放射線を意味している。
【0077】
この系はまた複数の化合物から構成されることもでき、その1つは別の化合物、または増感剤が放射線により活性化された後に、フリーラジカルを生ずるものである。
有用な開始剤系は、種々の増感剤を含んでいてもよく、多数のフリーラジカル生成化合物を利用できる。特に色素を含むレドックス系、例えばローズベンガル/2−ジブチルアミノエタノールを用いることもできる。光還元性色素および還元剤、オギサジン、およびキノン系の各色素、色素−オウ酸塩コンブレックス、色素増感されたアジニウム塩、およびトリクロロメチルトリアジンなどを、光重合を開始させるために用いることができる。
好ましい光開始剤系は、可視光線用増感剤で増感され、連鎖移転剤または水素供与剤、およびこれらの混合物をもった、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーである。 これには、2−(0−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー;1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(0−クロロフェニル’)−4,4’5,5’−テトラフェニル;およびIH−イミダゾール、2,5−ビス(0−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル〕−タイマーなどが含まれ、それぞれ代表的に水素供与体とともに用いられる。
増感剤には、ビス(p−ジアルキルアミノベンジリジン)ケトン類、および、アリーリチンアリールケトン類が含まれる。
水素供与体の適当なものには、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−1−リアゾール−3−チオール、およびその他が含まれる。
N−ビニルカルバゾールモノマーを含む組成物に対して好ましい、この他の水素供与体は、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール、 IH−1,2、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、1−ドデカンチオール、およびこれらの混合物などである。
【0078】
その他の成分として、フォトポリマー組成物に一般に添加されるその他の各成分はフォトポリマーの物理的特性を変えるだめのものである。このような成分には可塑剤、熱安定剤、光学的増白剤、紫外線安定剤、接着性変更剤、塗布助剤、および剥離剤などが含まれる。
可塑剤は、フォトポリマーの接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の物理的緒特性を変えるために存在させられる。可塑剤には、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセパケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、イソゾロビルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ポリ(プロピレングリコール)、トリ酪酸グリセリル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、スペリン酸・ノブチル、燐酸トリブチル、燐酸トリス(2−エチルヘキシル)、などが含まれる。
有用な熱安定剤には、ハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、ベータナフトール、塩化第一銅、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、レジン酸銅、ナフチルアミン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、フロラニール、およびクロルアニールなどが含まれる。ジニトロソダイマー類もまた有用である。
塗布助剤として、非イオン性界面活性剤を光重合性組成物に加えることができる。好ましい塗布助剤は、フッ素化された非イオン性活性剤である。
有用な光学増白剤は、7−(4’−クロロ−6′−ジエチルアミノ−1’,3’,5’−トリアジン−4′イル)アミノ3−フェニルクマリンである。さらに、紫外線吸収材料を適宜用いることができる。
【0079】
また、透明な樹脂、すなわち、光重合性組成物としては、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、及び、カチオン重合性化合物を重合させる光カチオン重合開始剤系からなる感光性材料が用いられる。
カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が終始比較的低粘度の組成物中で行なわれるように室温液状のものが用いられる。そのようなカチオン重合性化合物としてはジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が用いられる。
ラジカル重合性化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は上記カチオン重合性化合物のそれよりも大きく、好ましくは0.02以上大きいとよく、小さいと屈折率変調が不十分となり好ましくない。ラジカル重合性化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等が用いられる。
【0080】
光ラジカル重合開始剤系は、体積ホログラム作製のための第1露光によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させる開始剤系であればよく、また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いる。
光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明な体積ホログラムとする場合にはシアニン系色素が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することにより体積ホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムが得られる。
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3'−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2'チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3',9−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3',9−トリエチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3'−カルボキシメチル−2,2'−チアカルボシアニン・ヨウ素塩等が例示される。
【0081】
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、ジアリールヨードニウム類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム類としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム等が例示される。また、2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
光カチオン重合開始剤系は、第1露光に対しては低感光性で、第1露光とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系とするとよく、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類あるいは鉄アレン錯体類等を挙げることができる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウム類のテトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩およびヘキサフルオロアンチモネート塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0082】
光重合性組成物には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色剤などを併用してよい。バインダー樹脂は、体積ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖または主鎖にカチオン重合性基などの反応性を有していても良い。
その体積ホログラム形成層2の厚さは、10μm〜100μmとする。好適には、20μm〜50μmとする。
透明基材1に、透明な樹脂をコーティングして、体積ホログラム形成層2を設ける場合には、体積ホログラム形成層2は、光重合性組成物の塗布液を、バーコート、スピンコート、又はディッピング等、または、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、又はコンマコート等により塗布し、形成する。体積ホログラム形成層2は、乾燥ないし硬化手段を用いて固化される。
その光重合性組成物としては、組成物全体に対してカチオン重合性化合物を10〜50%、ラジカル重合性化合物を40〜70%、光ラジカル重合開始剤系を1〜5%、及び、光カチオン重合開始剤系を1〜5%とし、全量を100%となるように配合する。
光重合性組成物は、必要に応じて、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、セロソルブ系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等と配合し、冷暗所にて、高速撹拌機で混合し調製する。
【0083】
上記の樹脂材料を用い、キャスティング法や、ダイコート法等を用いて、体積ホログラム形成層2を透明基材1上に設けることもできる。
これらの体積ホログラム形成層2に、適宜な光学系を用いて、体積ホログラムである、透過型ホログラムや、反射型ホログラムを記録する。(図1参照。)
または、その両方を多重記録する。(図示せず。)
以下に、その方法を説明する。
まず、ホログラム画像として画像化される「物体」を準備する。
「物体」としては、彫刻や模型等の実在する、3次元物体(高名な作者のものであれば、その意匠性は非常に高いものとなる。)、もしくは、絵画やブランドデザイン等の2次元物体が用いられる。もしくは、「物体光」を与え得るものであって、空間変調器等のような電子的にセル変換が可能な光学素子を用いた光学系によって、記録用媒体面に投影されるような「光の像」であってもよい。
もちろん、あらかじめ作成した「ホログラム」からの「レリーフホログラム再生像やホログラム再生像」(立体的な光の像となる。)を用いることもできる。
この「物体」を、所定の波長を選択した、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー、各種色素レーザー等のコヒーレント光を用いて照明し、図1中の(1)のような光学系を準備し、透過型ホログラムを記録する。
もしくは、適宜なホログラム記録用のフォトレジストに、同様な光学系を準備し、マスターホログラムを記録し、現像処理する。
次いで、このマスターホログラムを図1中の(2)のような光学系を用いて、「物体」の体積ホログラムを、上記で使用した光源を再度用いて、体積ホログラム形成層2に反射型ホログラムを記録する。
【0084】
透過型ホログラムに図1中の(1)で用いた参照光と同一の照明を行うと、その参照光が透過した方向からの観察により、体積ホログラム形成層2を通して、その向こう側に「物体」の像、すなわち、透過型ホログラム再生像を視認することができる。この「物体」の像から観察者の目の方向へ向かう角度が、「再生角度」である。(図示せず。)
また反射型ホログラムの場合には、図1中の(3)のように、参照光を用いずとも、その波長選択性により、所定の波長でのみ再生された「物体」の像、すなわち反射型ホログラム再生像を視認することができる。(図1参照。)この場合の「再生角度」も同様である。
以上の方法を用いる際、「物体」を2つ準備し、2つの光源(第1の波長、及び第2の波長を有する2つのレーザー光源)を用いて、それぞれ体積ホログラム形成に各々、角度を変えて記録して、2つの体積ホログラムを多重記録することができる。
もちろん、図1中の(1)と(2)を同一の体積ホログラム形成層2に記録し、透過型ホログラムと反射型ホログラムを多重記録することも可能である。
このときに用いる体積ホログラム形成層2は、例えば、2つの光源に感度を持つように、2種類の増感剤を含めたものとする。
また、体積ホログラム形成層2を単層として、その一つの層に多重記録するのみならず、体積ホログラム形成層2を多層として、それぞれの層に、それぞれのフォトポリマーを用い、それぞれの体積ホログラムを記録することも、個々のホログラム再生像の鮮明度を高めるため好適である。
2つの体積ホログラムを多重記録した場合には、2つの観察方向に、各々の「物体」像を見ることができる。(図示せず。)
ホログラムとしては、レーザー再生ホログラム、白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子、複合回折格子で構成されるホログラムや、マシンリーダブルホログラムなどを 適宜、記録することができる。
体積ホログラムは、上記のようにして記録した透明基材1と体積ホログラム形成層2の積層体の体積ホログラム形成層2上に、まだ体積ホログラムを記録していない透明基材1と体積ホログラム形成層2の積層体の体積ホログラム形成層2面を密着させて重ねたものに(インデックスマッチング液等をその間に挿入してもよい。)、適宜なレーザー光を照射する方法により、大量に複製することができる。(図示せず。)
【0085】
(レリーフホログラム形成層)
上記した体積ホログラム形成層2上に、レリーフホログラム形成層3を設ける。
レリーフホログラム形成層3を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。(図2参照。)
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いてレリーフホログラム形成層3を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0086】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
レリーフホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を、ホログラムレリーフ、すなわち、凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、レリーフホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。また、レリーフ面にレリーフホログラム画像の凹凸とは異なる周期、形状の凹凸が存在すると、それはレリーフホログラムもしくは回折格子の再現もしくは再生時のノイズとなり、画像を不鮮明にする要因となる。
【0087】
ホログラムレリーフのレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記レリーフホログラム形成層3上に、もしくは、下記する蛍光層4上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するレリーフホログラムパターン(一つのレリーフホログラム再生像を発現するホログラムレリーフを、一つのレリーフホログラムパターンという。)は、単独でも、複数でもよい。また、ホログラムレリーフを形成する領域の形も、単独領域としても、複数領域としてもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。
透明基材1上のレリーフホログラム形成層3をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明な基材1全体を加熱するのではなく、レリーフホログラム形成層3面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。通常60℃〜110℃に加熱する。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
【0088】
(蛍光層)上記したレリーフホログラム形成層3上に、蛍光層4を形成して、本発明のホログラムシートAとする。(図3参照。)
この蛍光層4は、蛍光体を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型の蛍光インキや、水又は溶剤に蛍光体を分散した溶媒分散型の蛍光インキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、レリーフホログラム形成層3上に、そのホログラムレリーフに接して追従するように形成する。
樹脂分散型の蛍光インキは、上記した蛍光体を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
この場合、レリーフホログラム形成層3との密着性の高いものを選定する。
蛍光層の厚さは、0.1μm〜10.0μmとし、好適には、0.5μm〜5.0μmとする。
そして、その厚さの精度は、所定の厚さに対して±5%以内、好ましくは、±3%以内とする。
厚さのばらつきが、±5%を超えると、蛍光層4の蛍光発光によって再生されるレリーフホログラム再生像が不鮮明となり、ホログラム再生像もまた不鮮明となる。
溶媒分散型の蛍光インキは、樹脂成分を含まず、蛍光体と溶媒のみであるため、樹脂分散型より蛍光体を高密度に充填することができ、結果として、蛍光層4の厚さを効率的に薄くすることができる。
溶媒としては、水やアルコール系溶剤、若しくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、粒子系の小さい蛍光体を分散保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等によりレリーフホログラム形成層3上に設けることができる。
【0089】
本発明のホログラムシートAに、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光をあててた場合、体積ホログラムの波長選択性により、そのホログラム再生像の明るさはやや不十分なものとなるが(図示せず。)、蛍光層4に適する波長(紫外線等。)の照明光を、透明基材1側、もしくは、蛍光層4側からあてることで、蛍光層4から所定の波長(域)の光が発生し、この光が、レリーフホログラム再生像を出現させ、また、体積ホログラムの参照光となって、明るいホログラム再生像を再生するものである。(図示せず。)
そして、このホログラムシートAに透過型ホログラムを記録した場合には、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光5をあててた場合、透明基材1側には何らの再生像も現れない(図5の6の状態。)が、このこのホログラムシートAに、蛍光層4に適する波長(紫外線等。)の照明光7を、透明基材1側からあてることで、蛍光層4から所定の波長(域)の光が発生し、この光がレリーフホログラム再生像8「蛍光1」を再生し、且つ、透過型体積ホログラムの参照光となって、明るい透過型ホログラムの再生像9「蛍光2」を再生するものである。(図4参照。)
もしくは、このホログラムシートAに透過型ホログラムに加えて、反射型ホログラムを多重に記録した場合には、この透明基材1側から自然光や蛍光灯の一般的な照明光10をあててた場合、透明基材1側には反射型ホログラムの再生像11「蛍光」が現れ、あたかも、リップマンホログラムシートのように視認される。
そして、このホログラムシートAに、蛍光層4に適する波長(紫外線等。)の照明光12を、透明基材1側からあてると、蛍光層4から所定の波長(域)の光が発生し、この光がレリーフホログラム再生像13「蛍光1」を再生し、且つ、透過型体積ホログラムの参照光となって、明るいホログラム再生像14「蛍光2」を再生するものである。(図5参照。)
そして、レリーフホログラム形成層3が厚く、蛍光層4と体積ホログラム形成層2との距離が比較的大きい場合には、蛍光層4の発光により再生されるレリーフホログラム再生像が、体積ホログラム形成層2に形成されている透過型ホログラムをその参照光となって照明し、蛍光層4を発光させないで、単に蛍光層発光波長と同一波長の光源を用いて照明した場合(ホログラム再生像そのものが出現しないか、もしくは非常に歪んだ像が現れる。)とは、「全く異なる」、鮮明なホログラム再生像が出現し、高い偽造防止性を提供する。(図示せず。)
【0090】
(実施例1)
透明基材1として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、膜厚20μmのフォトポリマー(体積ホログラム形成層2)が積層され、その上に保護フィルムとして、厚さ23μmポリエチレンテレフタレートフイルムが積層されたフォトポリマー(デュポン社製「HRF705」)を用い、
透過型ホログラムとして、クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、図1中の(1)のような光学系を用いて、30mm×40mmサイズの「絵画モチーフ2」を透過型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影した。
この時、露光強度2.0mWにて、記録角度(図1(1)の参照光の角度。「物体」である「絵画モチーフ」は、そのシート面の垂線方向に対しその参照光と対称の方向にある。)を体積ホログラム形成層2に対して、(そのシート面の垂線方向に対し)20度とし、50mJ/cm2の露光量となるように照射した後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、更に120℃で120分間加熱処理し、その後、上記保護フィルムを剥離して、透明基材1と、体積ホログラム形成層2が積層されている、厚さ70μmのシートを作製した。(図3参照。)回折効率は、50%とした。
この体積ホログラム形成層2上に、メラミン樹脂からなるレリーフホログラム形成層3を5.0μm厚さで形成した後、レーザ光学系を用いて撮影した30mm×40mmサイズの「絵画モチーフ1」のホログラムレリーフを備えたNi原版を用意し、上記したレリーフホログラム形成層3に、そのNi原版のレリーフ面を合わせて、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m・原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m水冷式、圧力2トン/m、複製速度10m/分)にてそのホログラムレリーフをレリーフホログラム形成層3上に形成した。(図3参照。)
【0091】
そして、そのレリーフホログラム形成層3上に、そのホログラムレリーフに追従するように、下記組成の樹脂分散型蛍光インキをグラビアコーティング方式により、コーティングし乾燥して、蛍光層3を5.0μm厚さで形成し、
・<蛍光インキ組成物>
テールナビ社製 紫外線励起蛍光顔料UVR−2 10質量部
アクリル樹脂 10質量部
メチルエチルケトン 40質量部
酢酸エチル 40質量部
本発明の実施例1のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
このホログラムシートAを透明基材1側から室内蛍光灯5をあてて観察したが、何らの像も視認できなかった。(図5の6の状態。)
さらに、このホログラムシートAを365nm波長の光源7(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明したところ、この紫外線は目視では見えず、赤色のレリーフホログラム再生像8「絵画モチーフ1:蛍光1」、及び、透過型ホログラムの再生像であるホログラム再生像9「絵画モチーフ2:蛍光2」を確認することができ、二つの赤色の再生像のみが空間に浮いているように見え、意匠性に優れるものであった。(図4参照。)
このホログラムシートAを6cm角に切り出し、パスポートに貼付して、ブラックライト蛍光管40W照明(照明形状を小さくするため、3mmφ穴を持つカバー装着。)したところ、赤色のホログラム再生像を認識することができた。(図示せず。)
【0092】
(実施例2)
クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、2ステップ法を用いて、30mm×40mmサイズの「第1の絵画モチーフ2」を第1のホログラム:透過型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から2mmの位置として撮影したことに加え、アルゴンレーザー(発光波長488nm)を光源とし、2ステップ法を用いて、30mm×40mmサイズの「第2の絵画モチーフ」を第2のホログラム:反射型ホログラムとし、その結像位置を、記録面から4mmの位置として、さらに、露光強度2.0mWにて、記録角度を、そのシート面の垂線方向に対して、10度とし、10mJ/cm2の露光量となるように照射して、回折効率50とし、多重記録(二重記録)したこと、及びレリーフホログラム形成層3に、30mm×40mmサイズの「第1の絵画モチーフ1」のホログラムレリーフを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
実施例2のホログラムシートAを、実施例1と同様に評価したところ、このホログラムシートAを透明基材1側から室内蛍光灯10をあてて観察したとき、緑色の反射型ホログラム再生像11「第2の絵画モチーフ」:蛍光」を視認でき、単なるリップマンホログラムシートと判断した。(図5参照。)
さらに、観察環境を暗くして、このホログラムシートAを365nm波長の光源12(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明したところ、この紫外線は目視では見えず、赤色のレリーフホログラム再生像13「第1の絵画モチーフ1:蛍光1」、及び、透過型ホログラムの再生像であるホログラム再生像14「第1の絵画モチーフ2:蛍光2」を確認することができ、二つの赤色の再生像のみが空間に浮いているように見え、意匠性に優れるものであったこと(図5参照。)、以外は実施例1と同様に良好な結果を得た。
【0093】
(実施例3)
実施例1において、参照光として平行光を用いた体積ホログラム形成層2上に、メラミン樹脂からなる100μm厚さのレリーフホログラム形成層3を形成した後、回折角度40度の単純回折格子であるホログラムレリーフをレリーフホログラム形成層3上に形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
実施例3のホログラムシートAを、実施例1と同様に評価したところ、365nm波長の光源7(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)の照明によって、赤色の「平行光」がレリーフホログラム再生像8として現れ(図示せず。)、且つ、透過型ホログラムの再生像であるホログラム再生像9「絵画モチーフ2:蛍光2」がより明るく鮮明に確認することができたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。(図4参照。)
【0094】
(実施例4)
実施例1において、あらかじめ、クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とし、30mm×40mmサイズの「絵画モチーフ1」のホログラムレリーフ再生像を再生することのできるレリーフホログラムシートを準備して、このレリーフホログラムシートをクリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とする平行光で照明して得られるレリーフホログラムシートの発光面を、図1中の(1)の光学系に凸レンズ光学系を導入した方法により記録材料の手前100μmに結像するように設定して撮影したこと、及び、レリーフホログラム形成層3の厚さを100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のホログラムシートAを作製した。(図3参照。)
実施例4のホログラムシートAを、実施例1と同様に評価したところ、このホログラムシートAを365nm波長の光源7(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2)を用いて照明したところ、赤色のレリーフホログラム再生像8「第1の絵画モチーフ1:蛍光1」が現れ、且つ、透過型ホログラムの再生像であるホログラム再生像9「第1の絵画モチーフ2:蛍光2」がより鮮明に現れて、より正確に確認することができたこと(図4参照。)、さらには、クリプトンレーザー(発光波長647nm)を光源とする平行光にて、このホログラムシートAを照明しただけでは、なんらの「像」も現れなかったこと(図示せず。)、以外は実施例1と同様に良好な結果を得た。
従って、実施例4のホログラムシートAはより高い偽造防止性を有すると思われた。
(比較例)
レリーフホログラム形成層及び蛍光層を形成せず、ホログラムシートを形成し、比較例とした。
実施例1と同様に観察したところ、目視にて認識できるホログラム再生像を確認することはできなかった。
このことより、このホログラムシートが真正なものでなく、このパスポートが偽物であると判断できた。
【符号の説明】
【0095】
A ホログラムシート
1 透明基材
2 体積ホログラム形成層
3 レリーフホログラム形成層
4 蛍光層
5 観察状態の例示:可視光線(照明光)
6 同上 :再生像なし
7 同上 :紫外線(照明光)
8 同上 :赤色のレリーフホログラム再生像
9 同上 :赤色の透過型ホログラムの再生像
10 観察状態の例示:可視光線(照明光)
11 同上 :緑色の反射型ホログラムの再生像
12 同上 :紫外線(照明光)
13 同上 :赤色のレリーフホログラム再生像
14 同上 :赤色の透過型ホログラムの再生像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、体積ホログラム形成層、及び、ホログラムレリーフを有するレリーフホログラム形成層が設けられ、さらに、その上に、前記ホログラムレリーフに追従して蛍光層が設けられていることを特徴とするホログラムシート。

【請求項2】
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラムを記録したものであることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。
【請求項3】
前記体積ホログラム形成層が透過型ホログラム、及び、反射型ホログラムを多重記録したものであることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。

【請求項4】
前記蛍光層の発光によって再生されるレリーフホログラム再生像が、前記透過型ホログラムを再生する照明光となり、前記透過型ホログラムのホログラム再生像を出現させるものであることを特徴とする請求項2または3に記載のホログラムシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242409(P2012−242409A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108923(P2011−108923)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】