ホログラム判定装置
【課題】リップマン型ホログラムの偽造品を容易、且つ確度高く判定する。
【解決手段】筐体による遮光空間内の底部に判定対象のホログラムが配される。光源21、22は、側面板に取り付けられ、駆動される。光源21,22からの光がホログラムに対して再生照明光Pr1,Pr2として照射される。両再生照明光が記録参照光の波長λとほぼ等しい波長成分を含む。Pr1,Pr2は、入射面内で、法線に対して対称の入射角θrefでホログラムに対して入射される。θrefは、記録参照光の入射角と等しい入射角である。Pr1が照射されると、再生光Lが回折され、立体画像が再生される。Pr2が照射されても立体画像が再生されない。エンボス型ホログラム(偽造品)に対しては、Pr1、Pr2の何れにおいても、ホログラムが再生できる。Pr2を照射した場合に、再生光が回折されるか否かによって、ホログラムの真贋の判定を行うことができる。
【解決手段】筐体による遮光空間内の底部に判定対象のホログラムが配される。光源21、22は、側面板に取り付けられ、駆動される。光源21,22からの光がホログラムに対して再生照明光Pr1,Pr2として照射される。両再生照明光が記録参照光の波長λとほぼ等しい波長成分を含む。Pr1,Pr2は、入射面内で、法線に対して対称の入射角θrefでホログラムに対して入射される。θrefは、記録参照光の入射角と等しい入射角である。Pr1が照射されると、再生光Lが回折され、立体画像が再生される。Pr2が照射されても立体画像が再生されない。エンボス型ホログラム(偽造品)に対しては、Pr1、Pr2の何れにおいても、ホログラムが再生できる。Pr2を照射した場合に、再生光が回折されるか否かによって、ホログラムの真贋の判定を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号光(物体光)と参照光の干渉縞が記録されたリップマン型ホログラムの真贋を判定するホログラム判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、目視で3次元的に画像が見え、作成が困難であり、複製が困難であるため、物品の真正性や真贋判定が求められる、いわゆるセキュリティ分野で多く用いられている。例えばクレジットカード、身分証明書、商品券等の金券等の偽造防止用として使用されている。現状では、表面凹凸型のレインボーホログラムや電子ビームなどの描画による微細加工技術によって製造された、反射面(表面)の凹凸を利用したエンボスホログラムが多く使用されている。エンボス型ホログラムは、レリーフ型ホログラムとも呼ばれることがある。
【0003】
広く使われているエンボスホログラムであるが、広く普及したために製造装置も広く出回るようになり、偽造品の大量生産がされることがあった。エンボス方式の原理は、反射面の凹凸を利用しているため、精巧にホログラムを分解することで凹凸面を露出させ、その凹凸を転写する技術も偽造方法として用いられる。
【0004】
しかしながら、エンボス型ホログラムは、前述の凹凸を転写する技術が存在しているように、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉縞を記録材料内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。リップマン型ホログラムの制作方法としては、被写体にレーザーを照射する実写ホログラムと、多視点からの視差画像をもとに記録するホログラフィックステレオグラムとがある。
【0005】
リップマン型ホログラフィックステレオグラムを制作する過程は、概略的には、画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像は、撮像、またはコンピュータグラフィックスにより取得される。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の視差画像となるように変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0006】
このホログラムでは、例えば横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されている。このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0007】
上述したように、短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラフィックステレオグラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。さらに、記録方式において上下視差も入れることもできる。水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つホログラムは、FP(Full Parallax) 型のホログラムと称される。なお、FP型のホログラムでは、画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば球面状レンズによって矩形状の視差画像となるように変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が矩形状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。
【0008】
リップマン型ホログラムはホログラム情報が記録材料内部の屈折率の差として記録されているため、エンボス型ホログラムに比して偽造が困難で、クレジットカード、身分証明書等の真贋判定の用途に適している。実際に、エンボス型ホログラムの偽造の事件が発生している。今後は、リップマン型ホログラムがセキュリティ用途として使用されることが予想される。
【0009】
しかしながら、偽造を行っている人は、エンボス型ホログラムで行っていた偽造と同様に、なるべく見分けがつかないよう、且つ、安価にリップマン型ホログラムを偽造しようと様々な方法の試みを行っている。その一つとして、リップマンホログラムと同様の絵柄(画像コンテンツ)を、エンボス型ホログラムで作成する方法がある。この方法で作成されたエンボスホログラムは、ホログラムの知識がある人には十分見分けることが可能である場合が多いが、そうでない人には判定できないおそれがある。
【0010】
従来からホログラムの品質を目視で観察するために所定の角度で照明する装置や、ホログラムの真贋を判定するために所定の角度で照明して再生される光を受光素子で検出する装置が提案されている。
【0011】
例えば特許文献1には、入射する光とホログラムとの最適の角度を設定することによって、ホログラムを最適条件下で観察することを可能にした装置が記載されている。
特許文献2には、予め真偽判定用情報を参照光の角度に応じて異なって読取られるようにホログラムでカードに記憶し、 この情報を所定の角度の参照光で読取って真偽を判定
することが記載されている。
特許文献3には、ホログラムに対する測定光の入射方向を変更する入射方向変更手段が設けられた真贋判定装置が記載されている。
特許文献4には、光の点光源アレイが配置され、その中の任意の点光源が選択的に点灯可能に構成されているホログラム読取装置が記載されている。
特許文献5には、ホログラムの再生条件に一致した波長の光源による照明と、それとは異なる波長の全体を照明する光源とを備えるホログラムの真贋判定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭63−198075号公報
【特許文献2】特開昭62−093754号公報
【特許文献3】特開2001−307171号公報
【特許文献4】特開2007−147850号公報
【特許文献5】特開2002−333817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1乃至5に記載のものは、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとの判定を行うものではなかった。これらに記載のものは、主にエンボス型ホログラムの真贋の判定に使用されるもので、リップマン型ホログラムに類似させたエンボス型ホログラムの判定には、充分な性能が得られない問題があった。
【0014】
したがって、この発明の目的は、リップマンホログラムと同様の絵柄が記録されたエンボス型ホログラムを偽造ホログラムとして、確度が高く且つ容易に判定することが可能なホログラム判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、この発明は、筐体と、
筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
第1の光源と第2の光源は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含み、
第1および第2の光源のいずれか1つが、リップマン方式の再生条件を満たすθref に対して、入射面内で法線に対して対称のθref の角度で、再生照明光をホログラムへ入射させる光源であるホログラム判定装置である。
【0016】
この発明は、筐体と、
筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
第1の光源と第2の光源の一方は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含むホログラム判定装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、再生光波長と入射方向を切り替えることで、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとを容易に見分けることができる。この発明による判定装置を用いることで、ユーザは容易に、且つ、確度を高く、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとを見分けることができる。ホログラムメーカーは、製造しているホログラムの再生条件(波長、入射角度)に合わせた判定装置を製造し、ユーザに提供することによって、製造しているホログラムのセキュリティ性を高めることができる。商品の模造を防止したい商品メーカーは、ホログラムのユーザとして、商品にリップマン型ホログラムを貼付すると共に判定装置を導入することで、模造品を見分けられるほか、税関などの政府機関に取締りを依頼することができる。商品を購入する消費者ユーザは、模造品を容易に見分けることができる。
また最近、日本国特許庁発行「特許行政年次報告書2008年版」(181〜183ページ「コラム 新しいタイプの商標に関する調査研究」)に示されるように、日本以外の諸外国において、ホログラム商標を制度化する国もある。したがってリップマン型ホログラムのように、偽造されにくく模造品の判別が容易な方式のホログラムは、知的財産(商標)の観点から商品の価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図2】透過型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図3】エンボス型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図4】この発明による判定装置の第1の実施の形態の斜視図および断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態の判定動作の説明に用いる略線図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態の判定動作の説明に用いる略線図である。
【図7】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの再生波長に対する回折効率の一例を示すグラフである。
【図8】この発明による判定装置の第2の実施の形態の斜視図および断面図である。
【図9】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの再生波長に対する回折効率の一例、並びに光源の発光スペクトルを示すグラフである。
【図10】ホログラム方式と再生照明光の波長との関係を示す略線図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態におけるホログラム方式と再生照明光の波長との関係を示す略線図である。
【図12】この発明による判定装置の第2の実施の形態に対して受光部を付加した構成を示す斜視図および断面図である。
【図13】この発明の光源の駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。
【図14】この発明の光源の駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。
【図15】この発明の光源の駆動方法の第2の例のタイミングチャートである。
【図16】この発明による判定装置における判定に対する援助方法を考慮した構成の斜視図および断面図である。
【図17】図16に示す構成の動作説明のために使用するタイミングチャートである。
【図18】図16に示す構成の電気的構成を示すブロック図である。
【図19】この発明による判定装置に使用するスイッチの一例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施の形態>
<2.第2の実施の形態>
<3.光源の駆動方法>
<4.変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0020】
この発明の概要について説明する。リップマン型ホログラムでは、記録時の像の光(物体光)の進行方向と、記録時の参照光の進行方向と、ホログラム記録材料との位置関係(角度関係)によって、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)が定まる。この位置関係と記録レーザの波長によって、ホログラム記録材料内の屈折率変化の状態が決定される。エンボス型ホログラムにおいても、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)は、同じくホログラフィの原理によって定まるが、反射面の凹凸形状によって光の干渉条件が決定されるため、再生時の光の波長や位置関係(角度関係)が記録時とは異なる条件であっても、像が再生されることがある。さらに、光の波長が違っても再生できることは、レインボーホログラムの名称の由縁でもある。
【0021】
そこで、この発明の第1の実施の形態では、再生時に入射すべき再生照明光とホログラム材料との位置関係(角度関係)を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定する。さらに、この発明の第2の実施の形態では、再生時に入射すべき再生照明光の波長を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定する。
【0022】
<1.第1の実施の形態>
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムについて」
第1の実施の形態は、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定するものである。図1は、リップマン型ホログラムの一般的に説明するものである。
【0023】
ホログラムを作成する場合、図1Aに示すように、ホログラム(記録前では、ホログラム記録媒体であるが、ホログラム記録媒体もホログラムと称する)1に対してレーザ光をビームスプリッタで分離した一方のレーザ光(以下、記録参照光と称する)Rrefが入射
角θrefでもって入射する。分離した他方のレーザ光が物体に照射され、物体からの反射
光(以下、物体光と称する)Iがホログラム1に照射される。記録参照光Rrefと物体光
Iとが干渉し、ホログラム1上には、干渉縞が記録される。
【0024】
ホログラム1は、銀塩、重クロム酸ゼラチン、有機化合物を用いたフォトポリマー材料等の感光性の記録材料である。リップマン型ホログラムの場合、光の干渉縞が記録材料内の屈折率の差として記録される。
【0025】
このように記録されたリップマン型ホログラムは、図1Bに示すように、再生時に記録参照光と同じ光(以下、再生照明光と称する)Prをホログラム1に照射することによって、再生光Lが回折される。または、図1Cに示すように、ホログラム1に対して共役再生照明光CPrをホログラム1に照射することによって、再生光Lが回折される。
【0026】
このように、図1Aに示すような記録条件で記録されたリップマン型ホログラムは、図1Bに示される再生条件か、または図1Cに示される共役再生条件によって再生される。すなわち、特定の方向から入射する再生照明光でのみ再生される。つまり、「厚いホログラム」の回折理論の中でも、反射型であるリップマン方式だけが、照明光と同じ側に再生光を反射させることができる。
【0027】
エンボス型ホログラムの原理について、図2を参照して説明する。「薄いホログラム」で生じる回折理論によって、エンボス型ホログラムの記録条件と再生条件を原理的に説明できる。「薄いホログラム」の回折理論に従うホログラムは透過型ホログラムであり、回折によって反射する機能は無い。
【0028】
ホログラムを作成する場合、図2Aに示すように、透過型ホログラム1’に対して記録参照光Rrefが入射する。物体光Iがホログラム1’に照射される。記録参照光Rrefと物体光Iとが干渉し、透過型ホログラム1’上には、干渉縞が記録される。
【0029】
このように、図2Aに示すような記録条件で記録された透過型ホログラム1’は、図2Bに示される再生条件か、または図2Cに示される共役再生条件によって再生される。
【0030】
エンボス型ホログラムでは、図3に示すように、レインボーホログラムなどと同様に、反射層2を備えることで反射型のホログラムとなる。この反射層2は、凹凸のある面、または、記録材料の中間層や反対面に設けられる。
【0031】
この反射層2を備えているホログラムでは、透過型ホログラム1’の再生条件とは異なる条件であっても、像が再生されることがある。例えば、図3Aに示すように、再生照明光Prのみならず、鏡面関係にある再生照明光Pr’によって、像が再生される(再生光L)。この再生照明光Pr’は「薄いホログラム」の回折理論に従う透過型ホログラムとしての再生照明光に相当するものである。さらに、図3Bに示すように、鏡面関係にある再生照明光によって、像が再生され(鏡面関係による共役再生光CL’)ると共に、共役再生照明光CPrによって、像が再生される(共役再生光CL)。このように、反射層を備えているエンボス型ホログラムにおいては、反射型リップマン方式のように、特定の方向の再生照明光でのみ像が再生されるだけでなく、2方向以上の再生照明光でそれぞれ像が再生される条件が存在する。つまり、再生照明光と同じ方向に再生光を反射するホログラムであっても、リップマン型ホログラムと反射層を備えているエンボス型ホログラムとを比較した場合、ホログラムの回折理論に基づいた異なる特徴が存在する。
【0032】
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの判定」
この発明は、エンボス型ホログラムによるリップマン型ホログラムの偽造品を判定することを目的とする。図4に示すように、この発明の第1の実施の形態による判定装置は、矩形の上面板10と、その両側から垂直に下方に延びる、同一の形状の側面板11および12によって構成された筐体を有する。筐体は、光源からの再生照明光に対して環境光などの外光がホログラムに当たらないように、外光を遮光または低減するように囲う構造を有する。3面以上に側面板を配しても良い。上面板10および側面板11,12は、非透過性の合成樹脂、金属等の材料からなる。
このようにして、これら上面板10および側面板11,12によって構成される筐体は被判定対象のホログラムに対して不要光の照射を低減させる。特にこの発明では、上述のように特定の方向から入射する再生照明光によって「像が再生される(再生条件が満たされる)」と「像が再生されない(再生条件が満たされない)」とを判別することが技術の特徴であるので、光源(光源21,22)以外の光が照射されることによって、本来見えるはずの無い再生像が再生されてしまうことは、真贋の誤判定につながる。そこで、筐体は光源からの光だけが真贋の判定に作用するように、環境光などの外光を遮光または低減する。
【0033】
上面板10、側面板11および12により形成される空間内の底部に判定対象のホログラムが配される。真正品のリップマン型ホログラムをホログラムHと表記し、エンボス型ホログラムの構成の偽造品をホログラムH’と表記する。ホログラムの再生画像の一例として、文字の「A」が図示されている。上面板10に対して凸レンズ等の拡大用のレンズ13が取り付けられ、側面板11および12のそれぞれの対向する面に第1の光源21および第2の光源22が取り付けられている。光源21および22は、側面板11および12の等しい位置に取り付けられ、図示しない光源駆動回路によって駆動される。光源21,22からの光がホログラムH/H’に対して再生照明光Pr1,Pr2として照射される。
【0034】
再生照明光Pr1,Pr2は、真正品であるリップマン型ホログラムの記録参照光の波長λとほぼ等しい波長成分を含む。例えば記録参照光の波長が緑色とされ、再生照明光Pr1,Pr2の波長も同様に緑色とされる。例えば緑色を発光する1または複数のLED(Light Emitting Diode)によって光源21および22が構成されている。光源の発光素子はLEDに限らず、LED以外のレーザ等の光源を光源21および22として使用しても良い。さらに、再生照明光Pr1,Pr2は、入射面内で、法線に対して対称の入射角θrefでホログラムに対して入射される。すなわち、再生照明光Pr1とPr2の入射方向
は、ホログラムの法線方向を基準にそれぞれθrefと−θrefの関係をなしている。なお、θrefは真正品であるリップマン型ホログラムの再生参照光の入射角度であり、この実施
例では記録参照光の入射角と等しい入射角である。光源21および22は、一方のみが点灯するように交互に点灯される。
【0035】
図5Aに示すように、真正品であるリップマン型ホログラムHに対して、再生条件を満たす、一方の再生照明光Pr1が照射されると、再生光Lが回折され、立体画像が再生される。しかしながら、図5Bに示すように、他方の再生照明光Pr2が照射された場合には、再生光が回折されず、立体画像が再生されない。
【0036】
エンボス型ホログラム(偽造品)H’に対して、順番に再生照明光を照射した場合を図6に示す。光源21による再生照明光Pr1をホログラムH’に照射した場合(図6A)、並びに光源22による再生照明光Pr2をホログラムH’に照射した場合(図6B)の何れにおいても、再生光Lが回折され、ホログラムが再生できる。このように、再生照明光Pr2を照射した場合に、再生光が回折されるか否かによって、ホログラムの真贋の判定を行うことができる。
【0037】
<2.第2の実施の形態>
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの再生照明光の波長に対する回折効率」
ホログラムの厚みは、再生照明光の角度選択性および波長選択性に大きな影響を与えることが知られている。久保田敏弘著「ホログラフィ入門−原理と実際−」(1995年11月初版、朝倉書店)によれば、再生光の強度が最大になるところから最初に0になるまでの波長幅をΔλとした時、近似的に、波長幅Δλが下記の式によって表される。
【0038】
【数1】
【0039】
λ0: 記録波長で定まる再生波長
T: ホログラムの厚さ
dz: z軸方向の干渉縞の間隔
n: ホログラムの平均屈折率
θr: 参照光の入射角度である。
式内の符号(−)が透過型ホログラムに対応し、(+)がリップマン型ホログラムに対応している。
【0040】
実際のホログラムに対しては、再生光の強度が最大になる波長から最初に0 になるまでの理論による波長幅Δλと、現実のホログラムの再生光の強度が最大値の半分になる半値全幅の波長幅との相違をオーダー評価すると、両者が同じオーダーになることが知られている。
【0041】
これらの点から、反射型のリップマンホログラムでの波長幅Δλは、5〜20nm前後の値をとることが分かる。一例として、
λ0=532nm
T=10μm
n=1.52
θr=135度(=180度−45度)
とする。この場合、波長幅Δλ=9.88nm(約10nm)となる。
実際のリップマンホログラムでは、図7に示すように、半値全幅波長幅Δλ=12nm、最大回折効率90%の値が得られる。
【0042】
一方、透過型ホログラムでの波長幅Δλは、約150〜200nm以上の値をとることが分かる。一例として、
λ0=532nm
T=10μm
n=1.52
θr=45度
とする。この場合、波長幅Δλ=162.2nm(約160nm)となる。
【0043】
さらに、エンボス型ホログラムのような「薄いホログラム」では、ホログラムの厚さT
をより薄い値とみなすことができるので、波長幅Δλは、400〜800nmを越えるような値を取ることが分かる。
【0044】
このような広い波長幅Δλを持つと言うことは、可視光波長領域(380〜780nm)全域で回折が生じ、参照光の入射角度に対して、それぞれの波長に応じた方向へ再生光が生じていることを示す。すなわち、リップマン型ホログラムでは、再生波長から少しずれた波長の照明光で照明した場合、再生光が暗くなったり、見えなくなったりする。一方、エンボス型ホログラムでは、再生波長から少しずれた波長の照明光でも回折が生じ、さらに照明光の入射角度を調整することで、再生波長の再生光と同じ方向へ光を回折させることもできる。
【0045】
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの判定」
この発明の第2の実施の形態では、エンボス型ホログラムによる偽造品を判定することを目的として、波長の異なる第1および第2の光源でホログラムを照明する。第1の光源は、真正品であるリップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含む。第2の光源は、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含まない。第1および第2の光源は、交互または隣り合った順番で点灯されることが好ましい。
【0046】
図8に示すように、この発明の第2の実施の形態による判定装置は、矩形の上面板10と、その両側から垂直に下方に延びる、同一の形状の側面板11および12を有する。上面板10および側面板11,12は、合成樹脂、金属等の材料からなる。
【0047】
上面板10、側面板11および12により形成される空間内の底部に判定対象のホログラムH/H’が配置される。再生されるホログラムの画像として、文字の「A」が図示されている。上面板10に対して拡大用のレンズ13が取り付けられる。
【0048】
側面板11の内面からホログラムH/H’に対して再生照明光PrG1およびPrR1をそれぞれ発生する第1の光源31Gおよび第2の光源31Rがほぼ同一位置となるように近接して取り付けられる。光源31Gおよび31RのホログラムH/H’に対する入射角は、リップマン型ホログラムの角度に関する再生条件を満たしている。
【0049】
光源31Gは、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λ(例えばλ=535nm)の波長成分(例えばλ=525nm)を含む。一例として、緑色LEDが使用される。光源31Rは、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含まない。一例として、赤色LED(例えばλ=660nm)が使用される。
【0050】
図8に示す例は、第1の実施の形態と同様に、側面板12の内面からホログラムH/H’に対して再生照明光PrG2およびPrR2をそれぞれ発生する光源32Gおよび光源32Rがほぼ同一位置となるように近接して取り付けられる。光源32Gとして緑色LEDが使用される。光源32Rとして赤色LEDが使用される。光源32Gおよび32RのホログラムH/H’に対する入射角は、リップマン型ホログラムの角度に関する再生条件を満たしていない。しかしながら第1の実施の形態で示したように、例えば光源32Gはホログラムの法線方向を基準に対称の入射角θrefでホログラムに対して入射するように
することで、エンボス型ホログラムの角度に関する再生条件を満たすように配置することが可能である。
【0051】
図9Aは、前述した図7と同様に、実際のリップマン型ホログラムの回折効率を示している。リップマンホログラムでは、半値全幅波長幅Δλ=12nm、最大回折効率90%の値が得られる。図9Aには、さらに、半値全幅波長幅Δλの4倍の波長幅4Δλ、または6倍の波長幅6Δλが示されている。
【0052】
光源31G〜32Rとして使用されるLED光源の発光スペクトルの一例が図9Bに示される。青色のLEDの発光スペクトル41Bは、ピーク波長470nmであり、緑色のLEDの発光スペクトル41Gは、ピーク波長525nmであり、赤色のLEDの発光スペクトル41Rは、ピーク波長630nmである。なお図示しないが、標準の光D65やD50は可視光の波長領域とされる380〜780nmに広くなだらかな発光スペクトルを持ち、蛍光灯(F2,F7)や蛍光体を励起した光を混合する白色LEDの発光スペクトルは400〜750nmの中に幾つかの発光波長のピークを持っている。
【0053】
図9Aおよび図9Bから分かるように、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と、緑色LEDの発光スペクトル41Gとが重なり合う。一方、赤色LEDの発光スペクトル41Rは、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と重ならない。青色LEDの発光スペクトル41Bは、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と一部重なる。しかし、回折効率が最大となる波長付近では発光スペクトル41Bの中での相対発光強度は低い。
【0054】
実際のホログラムとLED光源とを使用した実験結果を図10に示す。照明条件は、ホログラム正面から観察した時に、なるべく再生光が明るく見えるように、照明光の入射角度はそれぞれの条件で調節している。リップマン型ホログラムの場合には、赤色LEDを使用すると、ホログラムが見えず、緑色LEDを使用すると、ホログラムが明るく見え、青色LEDを使用すると、ホログラムが暗く見える。エンボス型ホログラムムの場合には、赤色LED、緑色LED、青色LEDの何れを使用しても、ホログラムが見える。
なお、上述した例では、緑色LEDを使用しているが、記録参照光の波長を青色とすることで再生条件となる回折効率のスペクトルのピーク波長を青色としてホログラムを記録し、再生条件に適合した再生照明光として青色LEDを使用するようにしても良い。この場合、回折効率のスペクトル分布と赤色LEDの発光スペクトル41Rは、波長に対して離れた分布を持つことになり、再生光の「見える」「見えない」をより明確にすることができる。
【0055】
上述したように、回折効率が最大となるリップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、再生時の光源の発光スペクトルが含まれているか否かで、エンボス方式による偽造品を見分けることができる。さらに、ホログラムの回折理論と実験結果から、真正品であるリップマン型ホログラムの回折効率における波長幅(半値全幅)Δλの4倍の波長幅4Δλ、または6倍の波長幅6Δλを、回折効率がほとんど0になるまでの波長幅とみなすことができる。
【0056】
この波長幅(4Δλまたは6Δλ)の内部で、光源の相対発光強度が10%若しくは5%以下、より望ましくは、1%以下の強度とされる再生照明光を出射する光源を用いることが、この発明では望ましい。。この光源を使用する結果、リップマン型ホログラムが十分に暗く見え、エンボス型ホログラムでは、明るく見え、真正品と偽造品との判定を容易且つ正確に行うことができる。
【0057】
さらに、光源(緑色)32Gおよび光源(赤色)32Rを使用すると、判定の正確さをより高めることができる。すなわち、図11に示すように、リップマン型ホログラム(真正品)の場合には、角度に関する再生条件が満たされていないので、光源32Gによってホログラムが見えない。光源32Rは、波長に関する再生条件が満たされていないので、光源32Rによってホログラムが見えない。これに対して、エンボス型ホログラム(偽造品)の場合は、光源32Rおよび32Gの何れを使用しても、ホログラムが見える。つまり、エンボス型ホログラムでは、上述の角度に関する回折理論と波長に関する回折理論の両方の再生条件を満たす状態が存在する。このようにして、4個の光源31G,31R,32G,32Rを順番に発光させ、ホログラムが見えるか否かの結果を取得し、取得された結果からホログラムの真偽を判定することできる。
なお上記の実施例では、光源31Rの位置は、光源31Gとほぼ同一位置となるように取り付けるとしたが、この位置は適宜調整しても良い。それは上述のようにエンボス型ホログラムでは、リップマン型ホログラムの再生波長(回折効率が最大となる波長付近の領域)から波長がずれた再生照明光でも回折は生じるが、再生波長の再生光と同じ方向(例えばホログラム正面)へ光を回折させるためには、再生照明光の入射角度を調整することが望ましい。
例えば、リップマン型ホログラムの再生波長が緑色である時の再生照明光の入射角度がθrefであるとする。この場合は、再生照明光を赤色としてエンボス型ホログラムを照明
する場合は、入射角度がθrefより大なるθ、すなわちθ>θrefである位置に入射角度を調整すると、緑色に比べて波長の長い赤色ではホログラム正面へ光を回折させることに適している。
また光源31R、31Gと同様に、光源32Rの位置は、光源32Gとほぼ同一位置となるように取り付けるとしたが、赤色の再生照明光である光源32Gの入射角θがθ>θrefとなる位置に取り付けることが望ましい。
【0058】
図12に示すように、この発明の第2の実施の形態の変形例では、ホログラムからの回折光(再生光)を受光する受光素子(フォトディテクタ)34aおよび34bが上面板10に取り付けられる。受光素子34aおよび34bは、ホログラムの再生像の光を電気信号に変換し、図示しない判定回路に供給する。判定回路において、光源の切替時の受光素子34a、34bの受光光量の測定、比較がなされる。判定回路によって、回折光(再生光)の光量に基づいてホログラムの真贋の判定がなされる。判定回路の判定結果は、測定対象となるホログラムがリップマン型ホログラムであるかの確度を音声表示や画像・文字表示やランプ表示などによって、ユーザに通知される。
【0059】
受光素子の出力信号を利用することによって、目視に比して、ホログラムの知識の少ないユーザでも、音声表示や画像・文字表示やランプ表示などによって、判定結果を知ることができる。つまり、ユーザの知識の多少によって、判定基準がずれることなく、判定の再現性を高めることができる。なお、判定部からの指示信号によって、照明する再生光の波長と入射方向をそれぞれ切り替えるようにしても良い。
なお、受光素子34a、34bにおける受光光量の測定を行うに当たっては、単純に受光素子34a、34bからの電圧出力や電流出力を測定しても良いが、光源31G〜32Rに対して環境光などの外光の影響が考えられる。このような場合には、光源31G〜32Rからの出射光に対して人間の目に認識できない程度の高速な変調を行って、ホログラムを照明する。そして、受光素子34a、34bからの受光光量の信号を、光源の変調信号を参照信号としたロックインアンプで検出することで、外光などによる雑音の影響を低減することもできる。
【0060】
<3.光源の駆動方法>
以下、光源31G〜32Rの駆動方法の複数の例について説明する。図13は、駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。図13において、タイミングt0において、スイッチが操作される。スイッチは、図13Aに示すように、トグル型のスイッチ、または図13Bに示すように、トリガー型のスイッチの何れを使用しても良い。スイッチが押されると、光源31Gが所定時間例えば1秒間ON(点灯を意味する)する。光源31GがOFF(消灯を意味する)と同時に、光源31RがONする。光源31Gおよび31Rが順にONする期間が1サイクルである。3サイクルの動作がなされると、光源31G、31RがOFFを継続する。
【0061】
第1の例では、先ず、最初に光源(緑色LED)31Gが点灯している間に、リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの何れのホログラムも光るので、暗い環境でもホログラムの位置を認識できる。次に光源(赤色LED)31Rが点灯した瞬間、今まで見えていたホログラム再生像が消えれば「リップマン型ホログラム(真正品)」と判定でき、ホログラム再生像が見え続けていれば「エンボス型ホログラム(偽造品)」と明確に差を感じることができる。
【0062】
1回だけでなく複数回繰り返すことにより上述のプロセスを再確認することができる。このとき、1サイクルの時間が重要である。上述の例では、2秒で1サイクルとしたが、短すぎると、人間の目、脳神経の反応が追いつかず、反応できない。長すぎると、真贋判定プロセスに時間がかかりすぎて実用的ではない。一例として、視覚刺激反応平均時間を約200msと想定し、これ以上の時間を設定することが望ましい。すなわち、1サイクルの時間は、0.2秒〜10秒に設定することが好ましい。各光源は、0.1秒〜5秒、点灯される。
【0063】
図13のタイミングチャートに示すように、上述した光源の駆動方法の第1の例は、第1の実施の形態における光源(緑色LED)21および22に対しても適用できる。図14Aまたは図14Bに示すように、スイッチが押されてから、光源21が図14Cに示すように駆動され、光源22が図14Dに示すように駆動される。この場合も、人間の視覚反応時間を考慮し、また判定を迅速に行うために、1サイクルの時間は、0.2秒〜10秒に設定される。各LEDは、0.1秒〜5秒、点灯される。
【0064】
図12に示すように、受光素子34a,34bの出力信号を判定に使用する場合は、1サイクルの時間をより短くすることが可能である。
【0065】
さらに、光源の配置として対称に2個の光源を配置するのに限らず、片側に3個(3原色)の光源35B,35R,35Gを配置し、対向する片側に1個の緑色の光源36Gを配置する構成も可能である。このような配置の光源を駆動する駆動方法の第2の例について、図15のタイミングチャートを参照して説明する。
【0066】
図15Aに示すように、スイッチがタイミングt0で押されると、光源35B(図15B)と光源35R(図15C)とが交互にONされる。2サイクルのON/OFFが繰り返されると、光源35Bおよび35Rが消灯する。次に、光源35Gおよび36Gが交互にONする。2サイクルの動作がなされると、光源35G、36GがOFFとなる。
【0067】
第2の例では、青色光源35Bと赤色光源35Rが交互にONすると、リップマン型ホログラム(真正品)が明暗を繰り返す。次に、緑色光源35Gと緑色光源36Gが交互にONすると、リップマン型ホログラムが明暗を繰り返す。エンボス型ホログラム(偽造品)の場合には、光源がON/OFFされても、明暗が生じないで、常に見える状態となる。この相違によって、真贋を判定できる。
【0068】
「判定に対する援助方法」
上述したように、エンボス型ホログラムとリップマン型ホログラムとは、光源の切り替えと連動して、ホログラム再生像が見える/見えないで判定されている。判定する者がどのタイミングで判定したら良いか、直感的にわかりにくい場合がある。
【0069】
この問題を解決するために、図16に示すように、判定装置(例えば図8の構成)に対して液晶等の表示装置41および/またはスピーカ42が付加される。図17Aに示すように、タイミングt0においてスイッチがONされる。最初に図17Bおよび図17Cに示すように、光源31G、31Rが交互に駆動され、リップマン型ホログラムが光源の動作と同期して明暗に変化する。2サイクルの期間を経過すると、光源31G、31RがOFFし、図17Dおよび図17Eに示すように、光源32G、32Rが交互に駆動される。この期間では、リップマン型ホログラムのホログラム再生像が見えない。エンボス型ホログラムの場合では、常にホログラム再生像が見える。
【0070】
表示装置41および/またはスピーカ42は、図17FにおけるONの期間が駆動される。スピーカ42が駆動されると、「今見えていたらリップマン型ホログラムではありません」のメッセージが再生される。または、より直接的にリップマン型ホログラムに似せて偽造されたエンボス型ホログラムを区別するには、「今見えていれば贋物です」といったメッセージが再生される。必ずしも音声ではなく、わかりやすい機械音であっても良い。さらに、音や音声の代わりに、または音や音声に加えて、ONのタイミングで、表示装置41に、同内容の文字などが表示される。判定する者は、スピーカ42の音声、または表示装置41の表示によって判定を適切に行うことができる。
【0071】
図16に示す判定装置の電気的構成は、図18のブロック図によって表すことができる。リップマン型ホログラムの再生条件に一致した再生照明光を発生する緑色光源31Gを含む緑色光源部51Gが設けられる。赤色光源31Rを含む赤色光源部51R、緑色光源32Gを含む緑色光源部52G、赤色光源32Rを含む赤色光源部52Rが設けられる。これらの光源部は、光源切替制御部53によって、ON/OFFが制御される。
【0072】
光源切替制御部53に対して手動切替操作部54の出力信号が供給される。手動切替操作部54によって、ユーザの指示により、光源の自動発光切替を一時停止したり、光源の自動発光切替の時間間隔を変更したり、光源の点滅を手動で切り替えたりできる。さらに、装置全体の電源を供給する電源部55が備えられている。電源部55は、主電源の入切のほか、電池や外部電源から電源を供給する。光源切替制御部53によって表示部41およびスピーカ42のON/OFFが制御される。なお、音声や画像文字表示やランプの発光による表示以外に、振動モータなどによる振動によってユーザにタイミングを通知するようにしても良い。
【0073】
「スイッチの一例」
この発明においては、図19に示すような構成を有するスイッチを使用できる。筐体61が支持板63にスライド自在に嵌合され、支持板63にメカニカルスイッチ(例えばマイクロスイッチ)62が取付けられている。筐体61は、判定装置の上面板と一対の側面板によって構成される。支持部63は、中央部にホログラムを置くためのスペースを有する。このスペースの底部に被判定対象のホログラムがおかれる。図19Aに示すように、筐体61が上から押されていないと、スイッチ62がOFF状態である。
【0074】
支持部63の先端が例えば被判定対象のホログラム、またはホログラムが貼られた板面に押し付けられ、筐体61が上からスプリングのバネ力に抗して押される。図19Bに示すように、スイッチ62がON状態となる。スイッチのONによって、上述したように、真贋判定のプロセスが開始される。支持部63の先端が押し付けられた状態で、拡大用のレンズの焦点が被判定対象のホログラムに合うようになされているので、真贋判定の行為自体がスイッチを押すことになる。スイッチを押すための特別な動作は不要である。このようなスイッチを使用することによって、判定時以外では、スイッチがOFFし、電力消費を抑えることができる。
【0075】
なお、メカニカルなマイクロスイッチ62を内蔵した場合を示したが、これに限らず、透過、反射の各種光センサ、触れられることによって反応する振動センサ、音センサなど、本目的を実現するものであれば、様々なセンサを使用しても良い。
【0076】
<3.変形例>
以上、この発明を適用した具体的な実施形態について説明してきたが、この発明は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば光源としては、LED以外にレーザを使用できる。さらに、一つの白色光源に対して色フィルタの切替によって複数の光源を構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1・・・リップマン型ホログラム
1’・・・透過型ホログラム
10・・・上面板
11,12・・・側面板
13・・・拡大レンズ
21,22・・・再生照明光を発生する光源
31G,31R,32G,32R・・・再生照明光を発生する光源
34a、34b・・・受光素子
【技術分野】
【0001】
この発明は、信号光(物体光)と参照光の干渉縞が記録されたリップマン型ホログラムの真贋を判定するホログラム判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、目視で3次元的に画像が見え、作成が困難であり、複製が困難であるため、物品の真正性や真贋判定が求められる、いわゆるセキュリティ分野で多く用いられている。例えばクレジットカード、身分証明書、商品券等の金券等の偽造防止用として使用されている。現状では、表面凹凸型のレインボーホログラムや電子ビームなどの描画による微細加工技術によって製造された、反射面(表面)の凹凸を利用したエンボスホログラムが多く使用されている。エンボス型ホログラムは、レリーフ型ホログラムとも呼ばれることがある。
【0003】
広く使われているエンボスホログラムであるが、広く普及したために製造装置も広く出回るようになり、偽造品の大量生産がされることがあった。エンボス方式の原理は、反射面の凹凸を利用しているため、精巧にホログラムを分解することで凹凸面を露出させ、その凹凸を転写する技術も偽造方法として用いられる。
【0004】
しかしながら、エンボス型ホログラムは、前述の凹凸を転写する技術が存在しているように、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉縞を記録材料内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。リップマン型ホログラムの制作方法としては、被写体にレーザーを照射する実写ホログラムと、多視点からの視差画像をもとに記録するホログラフィックステレオグラムとがある。
【0005】
リップマン型ホログラフィックステレオグラムを制作する過程は、概略的には、画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像は、撮像、またはコンピュータグラフィックスにより取得される。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の視差画像となるように変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0006】
このホログラムでは、例えば横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されている。このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0007】
上述したように、短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラフィックステレオグラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。さらに、記録方式において上下視差も入れることもできる。水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つホログラムは、FP(Full Parallax) 型のホログラムと称される。なお、FP型のホログラムでは、画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば球面状レンズによって矩形状の視差画像となるように変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が矩形状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。
【0008】
リップマン型ホログラムはホログラム情報が記録材料内部の屈折率の差として記録されているため、エンボス型ホログラムに比して偽造が困難で、クレジットカード、身分証明書等の真贋判定の用途に適している。実際に、エンボス型ホログラムの偽造の事件が発生している。今後は、リップマン型ホログラムがセキュリティ用途として使用されることが予想される。
【0009】
しかしながら、偽造を行っている人は、エンボス型ホログラムで行っていた偽造と同様に、なるべく見分けがつかないよう、且つ、安価にリップマン型ホログラムを偽造しようと様々な方法の試みを行っている。その一つとして、リップマンホログラムと同様の絵柄(画像コンテンツ)を、エンボス型ホログラムで作成する方法がある。この方法で作成されたエンボスホログラムは、ホログラムの知識がある人には十分見分けることが可能である場合が多いが、そうでない人には判定できないおそれがある。
【0010】
従来からホログラムの品質を目視で観察するために所定の角度で照明する装置や、ホログラムの真贋を判定するために所定の角度で照明して再生される光を受光素子で検出する装置が提案されている。
【0011】
例えば特許文献1には、入射する光とホログラムとの最適の角度を設定することによって、ホログラムを最適条件下で観察することを可能にした装置が記載されている。
特許文献2には、予め真偽判定用情報を参照光の角度に応じて異なって読取られるようにホログラムでカードに記憶し、 この情報を所定の角度の参照光で読取って真偽を判定
することが記載されている。
特許文献3には、ホログラムに対する測定光の入射方向を変更する入射方向変更手段が設けられた真贋判定装置が記載されている。
特許文献4には、光の点光源アレイが配置され、その中の任意の点光源が選択的に点灯可能に構成されているホログラム読取装置が記載されている。
特許文献5には、ホログラムの再生条件に一致した波長の光源による照明と、それとは異なる波長の全体を照明する光源とを備えるホログラムの真贋判定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭63−198075号公報
【特許文献2】特開昭62−093754号公報
【特許文献3】特開2001−307171号公報
【特許文献4】特開2007−147850号公報
【特許文献5】特開2002−333817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1乃至5に記載のものは、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとの判定を行うものではなかった。これらに記載のものは、主にエンボス型ホログラムの真贋の判定に使用されるもので、リップマン型ホログラムに類似させたエンボス型ホログラムの判定には、充分な性能が得られない問題があった。
【0014】
したがって、この発明の目的は、リップマンホログラムと同様の絵柄が記録されたエンボス型ホログラムを偽造ホログラムとして、確度が高く且つ容易に判定することが可能なホログラム判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、この発明は、筐体と、
筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
第1の光源と第2の光源は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含み、
第1および第2の光源のいずれか1つが、リップマン方式の再生条件を満たすθref に対して、入射面内で法線に対して対称のθref の角度で、再生照明光をホログラムへ入射させる光源であるホログラム判定装置である。
【0016】
この発明は、筐体と、
筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
第1の光源と第2の光源の一方は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含むホログラム判定装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、再生光波長と入射方向を切り替えることで、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとを容易に見分けることができる。この発明による判定装置を用いることで、ユーザは容易に、且つ、確度を高く、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムとを見分けることができる。ホログラムメーカーは、製造しているホログラムの再生条件(波長、入射角度)に合わせた判定装置を製造し、ユーザに提供することによって、製造しているホログラムのセキュリティ性を高めることができる。商品の模造を防止したい商品メーカーは、ホログラムのユーザとして、商品にリップマン型ホログラムを貼付すると共に判定装置を導入することで、模造品を見分けられるほか、税関などの政府機関に取締りを依頼することができる。商品を購入する消費者ユーザは、模造品を容易に見分けることができる。
また最近、日本国特許庁発行「特許行政年次報告書2008年版」(181〜183ページ「コラム 新しいタイプの商標に関する調査研究」)に示されるように、日本以外の諸外国において、ホログラム商標を制度化する国もある。したがってリップマン型ホログラムのように、偽造されにくく模造品の判別が容易な方式のホログラムは、知的財産(商標)の観点から商品の価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図2】透過型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図3】エンボス型ホログラムの記録および再生の説明に使用する略線図である。
【図4】この発明による判定装置の第1の実施の形態の斜視図および断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態の判定動作の説明に用いる略線図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態の判定動作の説明に用いる略線図である。
【図7】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの再生波長に対する回折効率の一例を示すグラフである。
【図8】この発明による判定装置の第2の実施の形態の斜視図および断面図である。
【図9】この発明を適用できるリップマン型ホログラムの再生波長に対する回折効率の一例、並びに光源の発光スペクトルを示すグラフである。
【図10】ホログラム方式と再生照明光の波長との関係を示す略線図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態におけるホログラム方式と再生照明光の波長との関係を示す略線図である。
【図12】この発明による判定装置の第2の実施の形態に対して受光部を付加した構成を示す斜視図および断面図である。
【図13】この発明の光源の駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。
【図14】この発明の光源の駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。
【図15】この発明の光源の駆動方法の第2の例のタイミングチャートである。
【図16】この発明による判定装置における判定に対する援助方法を考慮した構成の斜視図および断面図である。
【図17】図16に示す構成の動作説明のために使用するタイミングチャートである。
【図18】図16に示す構成の電気的構成を示すブロック図である。
【図19】この発明による判定装置に使用するスイッチの一例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施の形態>
<2.第2の実施の形態>
<3.光源の駆動方法>
<4.変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0020】
この発明の概要について説明する。リップマン型ホログラムでは、記録時の像の光(物体光)の進行方向と、記録時の参照光の進行方向と、ホログラム記録材料との位置関係(角度関係)によって、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)が定まる。この位置関係と記録レーザの波長によって、ホログラム記録材料内の屈折率変化の状態が決定される。エンボス型ホログラムにおいても、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)は、同じくホログラフィの原理によって定まるが、反射面の凹凸形状によって光の干渉条件が決定されるため、再生時の光の波長や位置関係(角度関係)が記録時とは異なる条件であっても、像が再生されることがある。さらに、光の波長が違っても再生できることは、レインボーホログラムの名称の由縁でもある。
【0021】
そこで、この発明の第1の実施の形態では、再生時に入射すべき再生照明光とホログラム材料との位置関係(角度関係)を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定する。さらに、この発明の第2の実施の形態では、再生時に入射すべき再生照明光の波長を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定する。
【0022】
<1.第1の実施の形態>
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムについて」
第1の実施の形態は、再生時に入射すべき再生光とホログラム材料との位置関係(角度関係)を用いて、リップマン型ホログラムとエンボス型ホログラムを判定するものである。図1は、リップマン型ホログラムの一般的に説明するものである。
【0023】
ホログラムを作成する場合、図1Aに示すように、ホログラム(記録前では、ホログラム記録媒体であるが、ホログラム記録媒体もホログラムと称する)1に対してレーザ光をビームスプリッタで分離した一方のレーザ光(以下、記録参照光と称する)Rrefが入射
角θrefでもって入射する。分離した他方のレーザ光が物体に照射され、物体からの反射
光(以下、物体光と称する)Iがホログラム1に照射される。記録参照光Rrefと物体光
Iとが干渉し、ホログラム1上には、干渉縞が記録される。
【0024】
ホログラム1は、銀塩、重クロム酸ゼラチン、有機化合物を用いたフォトポリマー材料等の感光性の記録材料である。リップマン型ホログラムの場合、光の干渉縞が記録材料内の屈折率の差として記録される。
【0025】
このように記録されたリップマン型ホログラムは、図1Bに示すように、再生時に記録参照光と同じ光(以下、再生照明光と称する)Prをホログラム1に照射することによって、再生光Lが回折される。または、図1Cに示すように、ホログラム1に対して共役再生照明光CPrをホログラム1に照射することによって、再生光Lが回折される。
【0026】
このように、図1Aに示すような記録条件で記録されたリップマン型ホログラムは、図1Bに示される再生条件か、または図1Cに示される共役再生条件によって再生される。すなわち、特定の方向から入射する再生照明光でのみ再生される。つまり、「厚いホログラム」の回折理論の中でも、反射型であるリップマン方式だけが、照明光と同じ側に再生光を反射させることができる。
【0027】
エンボス型ホログラムの原理について、図2を参照して説明する。「薄いホログラム」で生じる回折理論によって、エンボス型ホログラムの記録条件と再生条件を原理的に説明できる。「薄いホログラム」の回折理論に従うホログラムは透過型ホログラムであり、回折によって反射する機能は無い。
【0028】
ホログラムを作成する場合、図2Aに示すように、透過型ホログラム1’に対して記録参照光Rrefが入射する。物体光Iがホログラム1’に照射される。記録参照光Rrefと物体光Iとが干渉し、透過型ホログラム1’上には、干渉縞が記録される。
【0029】
このように、図2Aに示すような記録条件で記録された透過型ホログラム1’は、図2Bに示される再生条件か、または図2Cに示される共役再生条件によって再生される。
【0030】
エンボス型ホログラムでは、図3に示すように、レインボーホログラムなどと同様に、反射層2を備えることで反射型のホログラムとなる。この反射層2は、凹凸のある面、または、記録材料の中間層や反対面に設けられる。
【0031】
この反射層2を備えているホログラムでは、透過型ホログラム1’の再生条件とは異なる条件であっても、像が再生されることがある。例えば、図3Aに示すように、再生照明光Prのみならず、鏡面関係にある再生照明光Pr’によって、像が再生される(再生光L)。この再生照明光Pr’は「薄いホログラム」の回折理論に従う透過型ホログラムとしての再生照明光に相当するものである。さらに、図3Bに示すように、鏡面関係にある再生照明光によって、像が再生され(鏡面関係による共役再生光CL’)ると共に、共役再生照明光CPrによって、像が再生される(共役再生光CL)。このように、反射層を備えているエンボス型ホログラムにおいては、反射型リップマン方式のように、特定の方向の再生照明光でのみ像が再生されるだけでなく、2方向以上の再生照明光でそれぞれ像が再生される条件が存在する。つまり、再生照明光と同じ方向に再生光を反射するホログラムであっても、リップマン型ホログラムと反射層を備えているエンボス型ホログラムとを比較した場合、ホログラムの回折理論に基づいた異なる特徴が存在する。
【0032】
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの判定」
この発明は、エンボス型ホログラムによるリップマン型ホログラムの偽造品を判定することを目的とする。図4に示すように、この発明の第1の実施の形態による判定装置は、矩形の上面板10と、その両側から垂直に下方に延びる、同一の形状の側面板11および12によって構成された筐体を有する。筐体は、光源からの再生照明光に対して環境光などの外光がホログラムに当たらないように、外光を遮光または低減するように囲う構造を有する。3面以上に側面板を配しても良い。上面板10および側面板11,12は、非透過性の合成樹脂、金属等の材料からなる。
このようにして、これら上面板10および側面板11,12によって構成される筐体は被判定対象のホログラムに対して不要光の照射を低減させる。特にこの発明では、上述のように特定の方向から入射する再生照明光によって「像が再生される(再生条件が満たされる)」と「像が再生されない(再生条件が満たされない)」とを判別することが技術の特徴であるので、光源(光源21,22)以外の光が照射されることによって、本来見えるはずの無い再生像が再生されてしまうことは、真贋の誤判定につながる。そこで、筐体は光源からの光だけが真贋の判定に作用するように、環境光などの外光を遮光または低減する。
【0033】
上面板10、側面板11および12により形成される空間内の底部に判定対象のホログラムが配される。真正品のリップマン型ホログラムをホログラムHと表記し、エンボス型ホログラムの構成の偽造品をホログラムH’と表記する。ホログラムの再生画像の一例として、文字の「A」が図示されている。上面板10に対して凸レンズ等の拡大用のレンズ13が取り付けられ、側面板11および12のそれぞれの対向する面に第1の光源21および第2の光源22が取り付けられている。光源21および22は、側面板11および12の等しい位置に取り付けられ、図示しない光源駆動回路によって駆動される。光源21,22からの光がホログラムH/H’に対して再生照明光Pr1,Pr2として照射される。
【0034】
再生照明光Pr1,Pr2は、真正品であるリップマン型ホログラムの記録参照光の波長λとほぼ等しい波長成分を含む。例えば記録参照光の波長が緑色とされ、再生照明光Pr1,Pr2の波長も同様に緑色とされる。例えば緑色を発光する1または複数のLED(Light Emitting Diode)によって光源21および22が構成されている。光源の発光素子はLEDに限らず、LED以外のレーザ等の光源を光源21および22として使用しても良い。さらに、再生照明光Pr1,Pr2は、入射面内で、法線に対して対称の入射角θrefでホログラムに対して入射される。すなわち、再生照明光Pr1とPr2の入射方向
は、ホログラムの法線方向を基準にそれぞれθrefと−θrefの関係をなしている。なお、θrefは真正品であるリップマン型ホログラムの再生参照光の入射角度であり、この実施
例では記録参照光の入射角と等しい入射角である。光源21および22は、一方のみが点灯するように交互に点灯される。
【0035】
図5Aに示すように、真正品であるリップマン型ホログラムHに対して、再生条件を満たす、一方の再生照明光Pr1が照射されると、再生光Lが回折され、立体画像が再生される。しかしながら、図5Bに示すように、他方の再生照明光Pr2が照射された場合には、再生光が回折されず、立体画像が再生されない。
【0036】
エンボス型ホログラム(偽造品)H’に対して、順番に再生照明光を照射した場合を図6に示す。光源21による再生照明光Pr1をホログラムH’に照射した場合(図6A)、並びに光源22による再生照明光Pr2をホログラムH’に照射した場合(図6B)の何れにおいても、再生光Lが回折され、ホログラムが再生できる。このように、再生照明光Pr2を照射した場合に、再生光が回折されるか否かによって、ホログラムの真贋の判定を行うことができる。
【0037】
<2.第2の実施の形態>
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの再生照明光の波長に対する回折効率」
ホログラムの厚みは、再生照明光の角度選択性および波長選択性に大きな影響を与えることが知られている。久保田敏弘著「ホログラフィ入門−原理と実際−」(1995年11月初版、朝倉書店)によれば、再生光の強度が最大になるところから最初に0になるまでの波長幅をΔλとした時、近似的に、波長幅Δλが下記の式によって表される。
【0038】
【数1】
【0039】
λ0: 記録波長で定まる再生波長
T: ホログラムの厚さ
dz: z軸方向の干渉縞の間隔
n: ホログラムの平均屈折率
θr: 参照光の入射角度である。
式内の符号(−)が透過型ホログラムに対応し、(+)がリップマン型ホログラムに対応している。
【0040】
実際のホログラムに対しては、再生光の強度が最大になる波長から最初に0 になるまでの理論による波長幅Δλと、現実のホログラムの再生光の強度が最大値の半分になる半値全幅の波長幅との相違をオーダー評価すると、両者が同じオーダーになることが知られている。
【0041】
これらの点から、反射型のリップマンホログラムでの波長幅Δλは、5〜20nm前後の値をとることが分かる。一例として、
λ0=532nm
T=10μm
n=1.52
θr=135度(=180度−45度)
とする。この場合、波長幅Δλ=9.88nm(約10nm)となる。
実際のリップマンホログラムでは、図7に示すように、半値全幅波長幅Δλ=12nm、最大回折効率90%の値が得られる。
【0042】
一方、透過型ホログラムでの波長幅Δλは、約150〜200nm以上の値をとることが分かる。一例として、
λ0=532nm
T=10μm
n=1.52
θr=45度
とする。この場合、波長幅Δλ=162.2nm(約160nm)となる。
【0043】
さらに、エンボス型ホログラムのような「薄いホログラム」では、ホログラムの厚さT
をより薄い値とみなすことができるので、波長幅Δλは、400〜800nmを越えるような値を取ることが分かる。
【0044】
このような広い波長幅Δλを持つと言うことは、可視光波長領域(380〜780nm)全域で回折が生じ、参照光の入射角度に対して、それぞれの波長に応じた方向へ再生光が生じていることを示す。すなわち、リップマン型ホログラムでは、再生波長から少しずれた波長の照明光で照明した場合、再生光が暗くなったり、見えなくなったりする。一方、エンボス型ホログラムでは、再生波長から少しずれた波長の照明光でも回折が生じ、さらに照明光の入射角度を調整することで、再生波長の再生光と同じ方向へ光を回折させることもできる。
【0045】
「リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの判定」
この発明の第2の実施の形態では、エンボス型ホログラムによる偽造品を判定することを目的として、波長の異なる第1および第2の光源でホログラムを照明する。第1の光源は、真正品であるリップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含む。第2の光源は、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含まない。第1および第2の光源は、交互または隣り合った順番で点灯されることが好ましい。
【0046】
図8に示すように、この発明の第2の実施の形態による判定装置は、矩形の上面板10と、その両側から垂直に下方に延びる、同一の形状の側面板11および12を有する。上面板10および側面板11,12は、合成樹脂、金属等の材料からなる。
【0047】
上面板10、側面板11および12により形成される空間内の底部に判定対象のホログラムH/H’が配置される。再生されるホログラムの画像として、文字の「A」が図示されている。上面板10に対して拡大用のレンズ13が取り付けられる。
【0048】
側面板11の内面からホログラムH/H’に対して再生照明光PrG1およびPrR1をそれぞれ発生する第1の光源31Gおよび第2の光源31Rがほぼ同一位置となるように近接して取り付けられる。光源31Gおよび31RのホログラムH/H’に対する入射角は、リップマン型ホログラムの角度に関する再生条件を満たしている。
【0049】
光源31Gは、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λ(例えばλ=535nm)の波長成分(例えばλ=525nm)を含む。一例として、緑色LEDが使用される。光源31Rは、リップマン型ホログラムに関する再生条件を満たす波長λの波長成分を含まない。一例として、赤色LED(例えばλ=660nm)が使用される。
【0050】
図8に示す例は、第1の実施の形態と同様に、側面板12の内面からホログラムH/H’に対して再生照明光PrG2およびPrR2をそれぞれ発生する光源32Gおよび光源32Rがほぼ同一位置となるように近接して取り付けられる。光源32Gとして緑色LEDが使用される。光源32Rとして赤色LEDが使用される。光源32Gおよび32RのホログラムH/H’に対する入射角は、リップマン型ホログラムの角度に関する再生条件を満たしていない。しかしながら第1の実施の形態で示したように、例えば光源32Gはホログラムの法線方向を基準に対称の入射角θrefでホログラムに対して入射するように
することで、エンボス型ホログラムの角度に関する再生条件を満たすように配置することが可能である。
【0051】
図9Aは、前述した図7と同様に、実際のリップマン型ホログラムの回折効率を示している。リップマンホログラムでは、半値全幅波長幅Δλ=12nm、最大回折効率90%の値が得られる。図9Aには、さらに、半値全幅波長幅Δλの4倍の波長幅4Δλ、または6倍の波長幅6Δλが示されている。
【0052】
光源31G〜32Rとして使用されるLED光源の発光スペクトルの一例が図9Bに示される。青色のLEDの発光スペクトル41Bは、ピーク波長470nmであり、緑色のLEDの発光スペクトル41Gは、ピーク波長525nmであり、赤色のLEDの発光スペクトル41Rは、ピーク波長630nmである。なお図示しないが、標準の光D65やD50は可視光の波長領域とされる380〜780nmに広くなだらかな発光スペクトルを持ち、蛍光灯(F2,F7)や蛍光体を励起した光を混合する白色LEDの発光スペクトルは400〜750nmの中に幾つかの発光波長のピークを持っている。
【0053】
図9Aおよび図9Bから分かるように、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と、緑色LEDの発光スペクトル41Gとが重なり合う。一方、赤色LEDの発光スペクトル41Rは、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と重ならない。青色LEDの発光スペクトル41Bは、リップマン型ホログラムの回折効率が最大となる波長付近と一部重なる。しかし、回折効率が最大となる波長付近では発光スペクトル41Bの中での相対発光強度は低い。
【0054】
実際のホログラムとLED光源とを使用した実験結果を図10に示す。照明条件は、ホログラム正面から観察した時に、なるべく再生光が明るく見えるように、照明光の入射角度はそれぞれの条件で調節している。リップマン型ホログラムの場合には、赤色LEDを使用すると、ホログラムが見えず、緑色LEDを使用すると、ホログラムが明るく見え、青色LEDを使用すると、ホログラムが暗く見える。エンボス型ホログラムムの場合には、赤色LED、緑色LED、青色LEDの何れを使用しても、ホログラムが見える。
なお、上述した例では、緑色LEDを使用しているが、記録参照光の波長を青色とすることで再生条件となる回折効率のスペクトルのピーク波長を青色としてホログラムを記録し、再生条件に適合した再生照明光として青色LEDを使用するようにしても良い。この場合、回折効率のスペクトル分布と赤色LEDの発光スペクトル41Rは、波長に対して離れた分布を持つことになり、再生光の「見える」「見えない」をより明確にすることができる。
【0055】
上述したように、回折効率が最大となるリップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、再生時の光源の発光スペクトルが含まれているか否かで、エンボス方式による偽造品を見分けることができる。さらに、ホログラムの回折理論と実験結果から、真正品であるリップマン型ホログラムの回折効率における波長幅(半値全幅)Δλの4倍の波長幅4Δλ、または6倍の波長幅6Δλを、回折効率がほとんど0になるまでの波長幅とみなすことができる。
【0056】
この波長幅(4Δλまたは6Δλ)の内部で、光源の相対発光強度が10%若しくは5%以下、より望ましくは、1%以下の強度とされる再生照明光を出射する光源を用いることが、この発明では望ましい。。この光源を使用する結果、リップマン型ホログラムが十分に暗く見え、エンボス型ホログラムでは、明るく見え、真正品と偽造品との判定を容易且つ正確に行うことができる。
【0057】
さらに、光源(緑色)32Gおよび光源(赤色)32Rを使用すると、判定の正確さをより高めることができる。すなわち、図11に示すように、リップマン型ホログラム(真正品)の場合には、角度に関する再生条件が満たされていないので、光源32Gによってホログラムが見えない。光源32Rは、波長に関する再生条件が満たされていないので、光源32Rによってホログラムが見えない。これに対して、エンボス型ホログラム(偽造品)の場合は、光源32Rおよび32Gの何れを使用しても、ホログラムが見える。つまり、エンボス型ホログラムでは、上述の角度に関する回折理論と波長に関する回折理論の両方の再生条件を満たす状態が存在する。このようにして、4個の光源31G,31R,32G,32Rを順番に発光させ、ホログラムが見えるか否かの結果を取得し、取得された結果からホログラムの真偽を判定することできる。
なお上記の実施例では、光源31Rの位置は、光源31Gとほぼ同一位置となるように取り付けるとしたが、この位置は適宜調整しても良い。それは上述のようにエンボス型ホログラムでは、リップマン型ホログラムの再生波長(回折効率が最大となる波長付近の領域)から波長がずれた再生照明光でも回折は生じるが、再生波長の再生光と同じ方向(例えばホログラム正面)へ光を回折させるためには、再生照明光の入射角度を調整することが望ましい。
例えば、リップマン型ホログラムの再生波長が緑色である時の再生照明光の入射角度がθrefであるとする。この場合は、再生照明光を赤色としてエンボス型ホログラムを照明
する場合は、入射角度がθrefより大なるθ、すなわちθ>θrefである位置に入射角度を調整すると、緑色に比べて波長の長い赤色ではホログラム正面へ光を回折させることに適している。
また光源31R、31Gと同様に、光源32Rの位置は、光源32Gとほぼ同一位置となるように取り付けるとしたが、赤色の再生照明光である光源32Gの入射角θがθ>θrefとなる位置に取り付けることが望ましい。
【0058】
図12に示すように、この発明の第2の実施の形態の変形例では、ホログラムからの回折光(再生光)を受光する受光素子(フォトディテクタ)34aおよび34bが上面板10に取り付けられる。受光素子34aおよび34bは、ホログラムの再生像の光を電気信号に変換し、図示しない判定回路に供給する。判定回路において、光源の切替時の受光素子34a、34bの受光光量の測定、比較がなされる。判定回路によって、回折光(再生光)の光量に基づいてホログラムの真贋の判定がなされる。判定回路の判定結果は、測定対象となるホログラムがリップマン型ホログラムであるかの確度を音声表示や画像・文字表示やランプ表示などによって、ユーザに通知される。
【0059】
受光素子の出力信号を利用することによって、目視に比して、ホログラムの知識の少ないユーザでも、音声表示や画像・文字表示やランプ表示などによって、判定結果を知ることができる。つまり、ユーザの知識の多少によって、判定基準がずれることなく、判定の再現性を高めることができる。なお、判定部からの指示信号によって、照明する再生光の波長と入射方向をそれぞれ切り替えるようにしても良い。
なお、受光素子34a、34bにおける受光光量の測定を行うに当たっては、単純に受光素子34a、34bからの電圧出力や電流出力を測定しても良いが、光源31G〜32Rに対して環境光などの外光の影響が考えられる。このような場合には、光源31G〜32Rからの出射光に対して人間の目に認識できない程度の高速な変調を行って、ホログラムを照明する。そして、受光素子34a、34bからの受光光量の信号を、光源の変調信号を参照信号としたロックインアンプで検出することで、外光などによる雑音の影響を低減することもできる。
【0060】
<3.光源の駆動方法>
以下、光源31G〜32Rの駆動方法の複数の例について説明する。図13は、駆動方法の第1の例のタイミングチャートである。図13において、タイミングt0において、スイッチが操作される。スイッチは、図13Aに示すように、トグル型のスイッチ、または図13Bに示すように、トリガー型のスイッチの何れを使用しても良い。スイッチが押されると、光源31Gが所定時間例えば1秒間ON(点灯を意味する)する。光源31GがOFF(消灯を意味する)と同時に、光源31RがONする。光源31Gおよび31Rが順にONする期間が1サイクルである。3サイクルの動作がなされると、光源31G、31RがOFFを継続する。
【0061】
第1の例では、先ず、最初に光源(緑色LED)31Gが点灯している間に、リップマン型ホログラムおよびエンボス型ホログラムの何れのホログラムも光るので、暗い環境でもホログラムの位置を認識できる。次に光源(赤色LED)31Rが点灯した瞬間、今まで見えていたホログラム再生像が消えれば「リップマン型ホログラム(真正品)」と判定でき、ホログラム再生像が見え続けていれば「エンボス型ホログラム(偽造品)」と明確に差を感じることができる。
【0062】
1回だけでなく複数回繰り返すことにより上述のプロセスを再確認することができる。このとき、1サイクルの時間が重要である。上述の例では、2秒で1サイクルとしたが、短すぎると、人間の目、脳神経の反応が追いつかず、反応できない。長すぎると、真贋判定プロセスに時間がかかりすぎて実用的ではない。一例として、視覚刺激反応平均時間を約200msと想定し、これ以上の時間を設定することが望ましい。すなわち、1サイクルの時間は、0.2秒〜10秒に設定することが好ましい。各光源は、0.1秒〜5秒、点灯される。
【0063】
図13のタイミングチャートに示すように、上述した光源の駆動方法の第1の例は、第1の実施の形態における光源(緑色LED)21および22に対しても適用できる。図14Aまたは図14Bに示すように、スイッチが押されてから、光源21が図14Cに示すように駆動され、光源22が図14Dに示すように駆動される。この場合も、人間の視覚反応時間を考慮し、また判定を迅速に行うために、1サイクルの時間は、0.2秒〜10秒に設定される。各LEDは、0.1秒〜5秒、点灯される。
【0064】
図12に示すように、受光素子34a,34bの出力信号を判定に使用する場合は、1サイクルの時間をより短くすることが可能である。
【0065】
さらに、光源の配置として対称に2個の光源を配置するのに限らず、片側に3個(3原色)の光源35B,35R,35Gを配置し、対向する片側に1個の緑色の光源36Gを配置する構成も可能である。このような配置の光源を駆動する駆動方法の第2の例について、図15のタイミングチャートを参照して説明する。
【0066】
図15Aに示すように、スイッチがタイミングt0で押されると、光源35B(図15B)と光源35R(図15C)とが交互にONされる。2サイクルのON/OFFが繰り返されると、光源35Bおよび35Rが消灯する。次に、光源35Gおよび36Gが交互にONする。2サイクルの動作がなされると、光源35G、36GがOFFとなる。
【0067】
第2の例では、青色光源35Bと赤色光源35Rが交互にONすると、リップマン型ホログラム(真正品)が明暗を繰り返す。次に、緑色光源35Gと緑色光源36Gが交互にONすると、リップマン型ホログラムが明暗を繰り返す。エンボス型ホログラム(偽造品)の場合には、光源がON/OFFされても、明暗が生じないで、常に見える状態となる。この相違によって、真贋を判定できる。
【0068】
「判定に対する援助方法」
上述したように、エンボス型ホログラムとリップマン型ホログラムとは、光源の切り替えと連動して、ホログラム再生像が見える/見えないで判定されている。判定する者がどのタイミングで判定したら良いか、直感的にわかりにくい場合がある。
【0069】
この問題を解決するために、図16に示すように、判定装置(例えば図8の構成)に対して液晶等の表示装置41および/またはスピーカ42が付加される。図17Aに示すように、タイミングt0においてスイッチがONされる。最初に図17Bおよび図17Cに示すように、光源31G、31Rが交互に駆動され、リップマン型ホログラムが光源の動作と同期して明暗に変化する。2サイクルの期間を経過すると、光源31G、31RがOFFし、図17Dおよび図17Eに示すように、光源32G、32Rが交互に駆動される。この期間では、リップマン型ホログラムのホログラム再生像が見えない。エンボス型ホログラムの場合では、常にホログラム再生像が見える。
【0070】
表示装置41および/またはスピーカ42は、図17FにおけるONの期間が駆動される。スピーカ42が駆動されると、「今見えていたらリップマン型ホログラムではありません」のメッセージが再生される。または、より直接的にリップマン型ホログラムに似せて偽造されたエンボス型ホログラムを区別するには、「今見えていれば贋物です」といったメッセージが再生される。必ずしも音声ではなく、わかりやすい機械音であっても良い。さらに、音や音声の代わりに、または音や音声に加えて、ONのタイミングで、表示装置41に、同内容の文字などが表示される。判定する者は、スピーカ42の音声、または表示装置41の表示によって判定を適切に行うことができる。
【0071】
図16に示す判定装置の電気的構成は、図18のブロック図によって表すことができる。リップマン型ホログラムの再生条件に一致した再生照明光を発生する緑色光源31Gを含む緑色光源部51Gが設けられる。赤色光源31Rを含む赤色光源部51R、緑色光源32Gを含む緑色光源部52G、赤色光源32Rを含む赤色光源部52Rが設けられる。これらの光源部は、光源切替制御部53によって、ON/OFFが制御される。
【0072】
光源切替制御部53に対して手動切替操作部54の出力信号が供給される。手動切替操作部54によって、ユーザの指示により、光源の自動発光切替を一時停止したり、光源の自動発光切替の時間間隔を変更したり、光源の点滅を手動で切り替えたりできる。さらに、装置全体の電源を供給する電源部55が備えられている。電源部55は、主電源の入切のほか、電池や外部電源から電源を供給する。光源切替制御部53によって表示部41およびスピーカ42のON/OFFが制御される。なお、音声や画像文字表示やランプの発光による表示以外に、振動モータなどによる振動によってユーザにタイミングを通知するようにしても良い。
【0073】
「スイッチの一例」
この発明においては、図19に示すような構成を有するスイッチを使用できる。筐体61が支持板63にスライド自在に嵌合され、支持板63にメカニカルスイッチ(例えばマイクロスイッチ)62が取付けられている。筐体61は、判定装置の上面板と一対の側面板によって構成される。支持部63は、中央部にホログラムを置くためのスペースを有する。このスペースの底部に被判定対象のホログラムがおかれる。図19Aに示すように、筐体61が上から押されていないと、スイッチ62がOFF状態である。
【0074】
支持部63の先端が例えば被判定対象のホログラム、またはホログラムが貼られた板面に押し付けられ、筐体61が上からスプリングのバネ力に抗して押される。図19Bに示すように、スイッチ62がON状態となる。スイッチのONによって、上述したように、真贋判定のプロセスが開始される。支持部63の先端が押し付けられた状態で、拡大用のレンズの焦点が被判定対象のホログラムに合うようになされているので、真贋判定の行為自体がスイッチを押すことになる。スイッチを押すための特別な動作は不要である。このようなスイッチを使用することによって、判定時以外では、スイッチがOFFし、電力消費を抑えることができる。
【0075】
なお、メカニカルなマイクロスイッチ62を内蔵した場合を示したが、これに限らず、透過、反射の各種光センサ、触れられることによって反応する振動センサ、音センサなど、本目的を実現するものであれば、様々なセンサを使用しても良い。
【0076】
<3.変形例>
以上、この発明を適用した具体的な実施形態について説明してきたが、この発明は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば光源としては、LED以外にレーザを使用できる。さらに、一つの白色光源に対して色フィルタの切替によって複数の光源を構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1・・・リップマン型ホログラム
1’・・・透過型ホログラム
10・・・上面板
11,12・・・側面板
13・・・拡大レンズ
21,22・・・再生照明光を発生する光源
31G,31R,32G,32R・・・再生照明光を発生する光源
34a、34b・・・受光素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
上記筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
上記第1の光源と第2の光源は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含み、
上記第1および第2の光源のいずれか1つが、リップマン方式の再生条件を満たすθref に対して、入射面内で法線に対して対称のθref の角度で、上記再生照明光をホログラムへ入射させる光源であるホログラム判定装置。
【請求項2】
回折効率が最大となる上記リップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、上記第1および第2の光源の波長が含まれる請求項1記載のホログラム判定装置。
【請求項3】
筐体と、
上記筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
上記第1の光源と第2の光源の一方は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含むホログラム判定装置。
【請求項4】
回折効率が最大となる上記リップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、上記第1および第2の光源の一方の波長が含まれる請求項3記載のホログラム判定装置。
【請求項5】
上記第1および第2の光源が光源駆動部によって交互に、または隣り合った順番で点灯される請求項1または3記載のホログラム判定装置。
【請求項6】
スイッチが操作されると、上記第1および第2の光源の駆動が開始される請求項5記載のホログラム判定装置。
【請求項7】
上記第1および第2の光源の駆動と同期して判定の援助となる表示および/または音声を発生する請求項5記載のホログラム判定装置。
【請求項8】
上記第1および第2の光源による再生照明光によって上記ホログラムから反射される光を受光する受光素子を有し、上記受光素子の出力によって判定を行う請求項1または3記載のホログラム判定装置。
【請求項1】
筐体と、
上記筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
上記第1の光源と第2の光源は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含み、
上記第1および第2の光源のいずれか1つが、リップマン方式の再生条件を満たすθref に対して、入射面内で法線に対して対称のθref の角度で、上記再生照明光をホログラムへ入射させる光源であるホログラム判定装置。
【請求項2】
回折効率が最大となる上記リップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、上記第1および第2の光源の波長が含まれる請求項1記載のホログラム判定装置。
【請求項3】
筐体と、
上記筐体に取り付けられ、再生照明光を発生する第1および第2の光源とを備え、
上記第1の光源と第2の光源の一方は、リップマン型ホログラムの再生条件を満たす波長λの波長成分を含むホログラム判定装置。
【請求項4】
回折効率が最大となる上記リップマン型ホログラムの再生照明光の波長から回折効率が殆ど0になるまでの波長幅の内側に、上記第1および第2の光源の一方の波長が含まれる請求項3記載のホログラム判定装置。
【請求項5】
上記第1および第2の光源が光源駆動部によって交互に、または隣り合った順番で点灯される請求項1または3記載のホログラム判定装置。
【請求項6】
スイッチが操作されると、上記第1および第2の光源の駆動が開始される請求項5記載のホログラム判定装置。
【請求項7】
上記第1および第2の光源の駆動と同期して判定の援助となる表示および/または音声を発生する請求項5記載のホログラム判定装置。
【請求項8】
上記第1および第2の光源による再生照明光によって上記ホログラムから反射される光を受光する受光素子を有し、上記受光素子の出力によって判定を行う請求項1または3記載のホログラム判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−266647(P2010−266647A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117450(P2009−117450)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ (88)
【Fターム(参考)】
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