説明

ホログラム形成ユニット付き印刷機

【課題】 印刷済みのシート表面に簡易型のホログラムをインラインで形成出来る枚葉印刷機を得る。
【解決手段】 印刷済みのシート(7)に後加工を施すために、印刷ユニット(1)に続いてニスユニット(7)が設けられ、このニスユニット(7)は紫外線硬化型のニスをシート(7)の表面に塗布し、このニスユニット(7)に続いてホログラム形成ユニット(15)が連結され、このホログラム形成ユニット(15)は予めホログラム面が形成されたキャスティングフイルム(17)を送給する機構(18)を有しており、この送給機構(18)は印刷速度に同期してプラスチックフイルム(17)を圧胴(16)の外周近傍に導き、この圧胴(16)に対して接離可能に制御されるローラー対(22)、(23)によりキャスティングフイルム(17)のホログラム面がシート(7)に圧接され、ローラー対(22)、(23)の間で紫外線照射手段(24)が圧胴(16)に向けて紫外線を制御可能に照射するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枚葉印刷機に関し、特に、ホログラム面をインラインで形成できるホログラム形成ユニット付き印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷済みのシートには、その表面を保護するとともに、光沢を与え、かつ、高級感を付与するために、各種の追加加工がなされる。その一例として、ニスコーターユニットをいわゆるインラインで備えた枚葉印刷機により、印刷に引き続いてシート表面にニスを塗布することが行われてきた。
【0003】
近時は、これに加え、より一層印刷物の付加価値を高める目的で、シート表面の全部又は一部の任意の個所にホログラムを形成して欲しいという要請がある。ホログラム技術は、一般的には干渉縞により光の回折を生じさせるものであり、紙幣や認証カードのように金属蒸着技術を利用した本格的なものが先行して開発された。けれども、このような干渉縞の代わりに、シート表面に微細な凹凸を形成しておき、これによって光の回折を生じさせることも可能であり、表面レリーフホログラム(エンボス法ともいう。)として知られている。
【0004】
このようないわば簡易型のホログラム形成技術の一つとして、印刷済みのシートに紫外線硬化型のニスを塗布し、そのニスがまだ十分に硬化し終えないうちにその表面に微細な凹凸模様を形成して硬化させ、この微細な凹凸により虹状の乱反射を生じさせ、これにより印刷物表面の審美的効果を高めることが考えられる。より具体的に言うと、微細な凹凸表面を有するキャスティングフイルム(換言すると、型フイルムである。)を用意しておき、シート表面に塗布された紫外線硬化型ニスに対してこのキャスティングフイルムを圧接/ニス硬化/剥離させるのである。
【0005】
このような簡易型のホログラム形成技術を枚葉印刷機によりインラインで実行するためには、多色印刷及びそれに引き続くニス塗布の後、極めて効率良く上記の工程を実行できる構成としなければならない。
【0006】
【特許文献1】特開平7―5798号公報
【特許文献2】特開平7―186258号公報
【特許文献3】特開2002−293048号公報
【0007】
特開平7―5798号公報にあっては、印刷シート表面の絵柄を透視出来るレリーフホログラムの構成が開示されている。
また、特開平7―186258号公報では、印刷物の表面に熱可塑性樹脂を塗布しておき、金属蒸着技術によりホログラム面を形成した耐熱フイルムをこの樹脂面に加熱状態で圧着し、冷却の後剥離させ、印刷物側にホログラムを転写形成する技術が開示されている。しかしながら、この技術は加熱工程を含むため、迅速な印刷には適していない。
更に、特開2002−293048号公報にあっては、長尺のプラスチックフイルムを利用して、印刷済みのシート表面に紫外線硬化型塗料を当接させた後、紫外線を照射して硬化させ、シートを剥離させる技術が開示されている。けれども、この技術は、紫外線硬化型塗料をシートに塗布して光沢を付与するに止まり、ホログラム効果には言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされ、印刷済みのシート表面に簡易型のホログラム面をインラインで形成できる進歩した枚葉印刷機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そしてこのために、本発明に係る印刷機にあっては、紫外線硬化型のニスをシート(7)の表面に塗布するニスユニット(8)に引き続いてホログラム形成ユニット(15)が連結されており、このホログラム形成ユニット(15)は予めホログラム面が形成されたキャスティングフイルム(17)を送給する機構(18)を有し、このキャスティングフイルム(17)は送給機構(18)により印刷速度に同期して圧胴(16)の外周近傍に導かれ、キャスティングフイルム(17)のホログラム面が圧胴(16)に対して接離可能に制御されるローラー対(22)、(23)によってシート(7)に圧接され、このローラー対(22)、(23)の間で紫外線照射手段(24)が圧胴(16)に向けて紫外線を制御可能に照射するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
ホログラム形成ユニット(15)においては、印刷速度に同期した状態でローラー対(22)、(23)によるキャスティングフイルム(17)のホログラム面の転写、紫外線照射手段(24)によるニスの硬化、そして、送給機構(18)によって送給されるキャスティングフイルム(17)と圧胴(16)によって搬送されるシート(7)の剥離が効率良く遂行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
オフセット印刷技術による印刷ユニット(1)において、シート(7)に多色刷が行われた後、ニスユニット(8)において紫外線硬化型のニスが塗布される。
ニスユニット(8)に引き続いてホログラム形成ユニット(15)が連結されており、予めホログラム面が形成されたキャスティングフイルム(17)を印刷速度に同期して送給する機構(18)が設けられている。
キャスティングフイルム(17)のホログラム面は、圧胴(16)に対して接離可能に制御されるローラー対(22)、(23)によりシート(7)のニス面に圧接され、型押し転写が行われる。
ローラー対(22)、(23)の間で紫外線照射手段(24)が紫外線をニス面に照射し、既にホログラムが転写されたニス面を硬化させる。
そして最後に、送給機構(18)によって送給されるキャスティングフイルム(17)と、圧胴(16)によって搬送されるシート(7)とは剥離されて、シート(7)の表面には紫外線硬化型のニスによるホログラム面が転写形成される。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るホログラム形成ユニット付き印刷機の一実施例につき詳細に説明する。
図1は、枚葉印刷機の概念的側面図であり、印刷ユニット(1)(図示のものは、多数のユニットのうちの一つである。)はオフセット印刷技術によるもので、版胴(2)、ブランケット胴(3)及び圧胴(4)を有し、インキ装置(5)及び湿し水装置(6)からそれぞれインキ及び湿し水が版胴(2)の版面に供給され、一旦ブランケット胴(3)に絵柄が転写された後、圧胴(4)によって搬送されるシート(7)(図3)に多色刷が施される。
【0013】
印刷ユニット(1)に引き続いてニスユニット(8)が設けられており、印刷済みのシート(7)の全部又は一部の所要個所に紫外線硬化型のニスを塗布する。なお、このような紫外線硬化型のニス自体については、前記した従来技術等によって既に公知である。
ニスユニット(8)のドクターチャンバー(9)にはニスが貯溜されており、ニス着けローラー(10)を経由してニス版胴(11)の版面に供給される。そして、印刷ユニット(1)の圧胴(4)から渡し胴(12)に移送され、圧胴(13)によって搬送される印刷済みのシート(7)に紫外線硬化型のニスが塗布される。
【0014】
渡し胴(14)によってニスユニット(8)と連結されたホログラム形成ユニット(15)については図2にも拡大して図示されており、シート(7)は渡し胴(14)からホログラム形成ユニット(15)の圧胴(16)に移送され、更に図示しない排紙部(図面の左側に位置する。)に搬送される。言い換えると、多数の胴群から成るシート搬送系統を通過していく中で、シート(7)に印刷、ニス塗布、そしてホログラム面の形成が一定のタクトタイムで行われていく。
【0015】
ホログラム形成ユニット(15)においては、予めホログラム面(図3に示す。)が形成されたキャスティングフイルム(17)の送給機構(18)が圧胴(16)の外周に向けて設けられている。
ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フイルムの表面に、例えば金属蒸着技術やレーザー加工を利用してホログラム面を形成する技術は既に知られており、ロール状のキャスティングフイルム(17)は一旦ストック部(19)に準備された後、一群の送給機構(18)にかけ回され、前後端が熱圧着装置(20)によって接着されてエンドレス状にされ、連続使用される。なお、このようにホログラム形成ユニット(15)にキャスティングフイルム(17)のストック部(19)と熱圧着装置(20)を設けることとしたのは、このキャスティングフイルム(17)の耐久性(言わば耐刷枚数)を考慮して迅速な交換を可能にするためである。
【0016】
多数のローラー群から成るキャスティングフイルム(17)の送給機構(18)は、印刷機本体からの駆動力を受けて、又は独自のモーター(図示しない。)により、印刷機の速度と同期してエンドレス状のキャスティングフイルム(17)を圧胴(16)の外周に導いていく。
なお、中途には、キャスティングフイルム(17)に付着する可能性のあるゴミを除去するために、エアージェット又はハケ等によるクリーニング手段(21)を設けるとよい。
【0017】
送給機構(18)のうち、特に圧胴(16)の外周近傍に設けられたローラー対(22)、(23)は、図示の如く接触位置(実線で示す。)、離間位置(鎖線で示す。)の2位置に接離制御されるようになっており、これらのローラー対(22)、(23)の間でキャスティングフイルム(17)がシート(7)に押し当てられる。
このようなローラー対(22)、(23)の接離制御は、胴入れ/胴抜きの例を引き合いに出すまでもなく、十分に知られている。
【0018】
ローラー対(22)、(23)の間で、紫外線照射手段(24)が圧胴(16)の外周に向けて設けられ、シャッター手段(25)が通光/遮断の制御を行うようになっている。制御された紫外線の照射によって、ホログラム面が型押しされたニス層(26)が硬化される。
【0019】
次に、上記構成の作用につき、図3の拡大断面説明図を参照しつつ説明する。
印刷ユニット(1)によって多色刷が施され、ニスユニット(8)によって所望個所に紫外線硬化型のニス層(26)が形成されたシート(7)は、ホログラム形成ユニット(15)の圧胴(16)の外周に到る。
そして、送給機構(18)によって導かれたキャスティングフイルム(17)のホログラム面がローラー対(22)、(23)の間でニス層(26)に圧接され、ホログラム面が転写される。
この後、紫外線照射手段(24)の前方のシャッター手段(25)が開かれると、ニス層(26)が硬化し、ホログラム面が強固なものとなる。そして、圧胴(16)の回転並びにキャスティングフイルム(17)の進行に伴い、キャスティングフイルム(17)はシート(7)から剥がされて、ホログラム面が型押しされたシート(7)が排紙部に進行していくのである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るホログラム形成ユニット付き印刷機によれば、印刷のタクトタイムに合わせてインラインで所望の個所にホログラム面が形成できるので、印刷物の付加価値を非常に効率よく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るホログラム形成ユニット付き印刷機の一実施例を示す概念的側面図である。
【図2】ホログラム形成ユニットを拡大図示した側面図である。
【図3】ホログラム面の転写形成を説明するための拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 印刷ユニット
7 シート
8 ニスユニット
11 ニス版胴
15 ホログラム形成ユニット
16 圧胴
17 キャスティングフイルム
18 送給機構
19 ストック部
20 熱圧着装置
22 ローラー対
23 ローラー対
24 紫外線照射手段
25 シャッター手段
26 ニス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷済みのシート(7)に後加工を施すために、印刷ユニット(1)に続いてニスユニット(8)が設けられ、該ニスユニット(8)は紫外線硬化型のニスをシート(7)の表面に塗布し、該ニスユニット(8)に続いてホログラム形成ユニット(15)が連結され、該ホログラム形成ユニット(15)は予めホログラム面が形成されたキャスティングフイルム(17)を送給する機構(18)を有しており、該送給機構(18)は印刷速度に同期してキャスティングフイルム(17)を圧胴(16)の外周近傍に導き、該圧胴(16)に対して接離可能に制御されるローラー対(22)、(23)によりキャスティングフイルム(17)のホログラム面がシート(7)に圧接され、ローラー対(22)、(23)の間で紫外線照射手段(24)が圧胴(16)に向けて紫外線を制御可能に照射する、ようにしたホログラム形成ユニット付印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−315229(P2006−315229A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138274(P2005−138274)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000145194)株式会社篠原鉄工所 (11)
【Fターム(参考)】