説明

ホログラム記録媒体、ホログラム記録装置、プログラム、露光装置及び画像形成装置

【課題】複数の半導体発光素子を有する基板上に配置されたホログラム記録層にホログラムを記録する際に、半導体発光素子の光起電力を利用して、半導体発光素子毎にホログラムの記録条件を設定することができるホログラム記録媒体、ホログラム記録装置等を提供する。
【解決手段】複数の半導体発光素子を有する基板、基板上に配置されたホログラム記録層、及び半導体発光素子の一対の電極の各々から引き出された複数の端子を有するホログラム記録媒体を用いる。ホログラム記録装置は、ホログラム記録媒体を保持する保持手段と、複数の端子と電気的に接続されて半導体発光素子に発生した光起電力を測定する測定手段と、ホログラム記録層にホログラムを記録する記録手段と、測定された光起電力の値に基づいてホログラムを記録する記録条件を取得すると共に、取得された記録条件に基づいてホログラムが記録されるように各手段を駆動制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録媒体、ホログラム記録装置、プログラム、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホログラフィを利用して情報が記録される情報記録層を備えた光情報記録媒体に対して情報を記録するための光情報記録装置が記載されている。また、前記光情報記録媒体として、情報光および記録用参照光の位置決めのための情報が記録される位置決め領域を備えたものを用い、更に、前記位置決め領域に記録された情報を用いて、前記光情報記録媒体に対する情報光および記録用参照光の位置を制御する位置制御手段を備えたことを特徴とする光情報記録装置が開示されている(請求項2)。
【0003】
特許文献2には、ホログラム記録媒体に参照光を照射して発生される再生光を光電変換して再生画像データを読み取るホログラム再生装置であって、前記再生画像データから特徴量を抽出する抽出手段と、前記参照光の光強度を変化させる光強度可変手段と、前記抽出された特徴量に基づいて前記光強度可変手段を制御し、前記再生光の光強度を所定の範囲内とする制御を行う光強度制御手段と、を具備することを特徴とするホログラム再生装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、記録データに応じて変調された信号光と前記信号光と光源を同一とする参照光とを干渉させてホログラム記録媒体の記録層にホログラムを記録するホログラム記録装置であって、前記信号光を発生させるための信号光パターンを表示する信号光空間光変調部と、前記参照光を発生させるための参照光パターンを表示する参照光空間光変調部と、前記信号光空間光変調部に表示する信号光パターンの態様および前記参照光空間光変調部に表示する参照光パターンの態様を制御するとともに前記信号光と前記参照光との光エネルギーを制御する制御部と、前記ホログラム記録媒体の温度を検出する温度検出器と、を備え、前記制御部は、記録後の前記ホログラムに前記参照光を照射したときに発生する回折光の回折効率が所定の値となるように、記録時点における前記ホログラム記録媒体の温度に応じて、予め設定された光エネルギーを前記ホログラム記録媒体に照射することを特徴とするホログラム記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−311937号公報
【特許文献2】特開2006−154039号公報
【特許文献3】特開2008−097704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の半導体発光素子を有する基板上に配置されたホログラム記録層に対応するホログラムを記録する際に、半導体発光素子の光起電力を利用して、半導体発光素子毎にホログラムの記録条件を設定することができるホログラム記録媒体、ホログラム記録装置、及びプログラムを提供することを目的とする。また、本発明は、これらホログラム記録媒体、ホログラム記録装置、又はプログラムを用いて記録されたホログラムを有する露光装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の半導体発光素子を有する基板と、前記基板上に配置されたホログラム記録層と、少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定するように当該半導体発光素子の一対の電極の各々から引き出された複数の端子と、を有するホログラム記録媒体である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のホログラム記録媒体を保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたホログラム記録媒体の前記複数の端子と電気的に接続されて、前記少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定する測定手段と、信号光を照射する信号光照射手段と参照光を照射する参照光照射手段とを備え、前記ホログラム記録層に信号光と参照光とを照射して、前記ホログラム記録層に複数のホログラムを記録する記録手段と、前記測定手段で測定された光起電力の値に基づいて前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する複数のホログラムを記録する記録条件を取得すると共に、取得された記録条件に基づいて前記複数のホログラムが記録されるように、前記保持手段、前記測定手段、前記信号光照射手段、及び前記参照光照射手段の各々を駆動制御する制御手段と、を有するホログラム記録装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記制御手段が、前記参照光照射手段から前記少なくとも1つの半導体発光素子に対し参照光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、前記測定手段で測定される光起電力の値が増加するように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出することにより当該半導体発光素子に対応するホログラムを記録する記録条件を取得する、請求項2に記載のホログラム記録装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記前記測定手段で測定される光起電力の値が最大となるように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出する、請求項3に記載のホログラム記録装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記制御手段が、前記記録手段によりホログラムを記録し、前記記録手段により記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた参照光または信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、前記測定手段で測定された光起電力の値及び予め取得された光起電力と回折効率との関係に基づいて、前記記録されたホログラムの回折効率を取得し、取得された回折効率に基づいて、予め定めた回折効率を有するホログラムが記録されるようにホログラムを追記する記録条件を取得する、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のホログラム記録装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定する、請求項5に記載のホログラム記録装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のホログラム記録媒体を保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたホログラム記録媒体の前記複数の端子と電気的に接続されて、前記少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定する測定手段と、信号光を照射する信号光照射手段と参照光を照射する参照光照射手段とを備え、前記ホログラム記録層に信号光と参照光とを照射して、前記ホログラム記録層に複数のホログラムを記録する記録手段と、を備えたホログラム記録装置を制御するプログラムであって、コンピュータを、前記測定手段で測定された光起電力の値を取得する第1の取得手段、前記測定手段で測定された光起電力の値に基づいて前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する複数のホログラムを記録する記録条件を取得する第2の取得手段、取得された記録条件に基づいて前記複数のホログラムが記録されるように、前記保持手段、前記測定手段、前記信号光照射手段、及び前記参照光照射手段の各々を駆動制御する制御手段、として機能させるプログラムである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記参照光照射手段から前記少なくとも1つの半導体発光素子に対し参照光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、前記測定手段で測定される光起電力の値が増加するように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出することにより当該半導体発光素子に対応するホログラムを記録する記録条件を取得する、請求項7に記載のプログラムである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、前記前記測定手段で測定される光起電力の値が最大となるように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出する、請求項8に記載のプログラムである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、前記記録手段によりホログラムを記録し、前記記録手段により記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた参照光または信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、前記測定手段で測定された光起電力の値及び予め取得された光起電力と回折効率との関係に基づいて、前記記録されたホログラムの回折効率を取得し、取得された回折効率に基づいて、予め定めた回折効率を有するホログラムが記録されるようにホログラムを追記する記録条件を取得する、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のプログラムである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、複数の半導体発光素子を有する基板と、前記基板上に配置されたホログラム記録層と、少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定するように当該半導体発光素子の一対の電極の各々から引き出された複数の端子と、を有し、被露光面に前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する集光点列が形成されるように、請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載のホログラム記録装置により前記ホログラム記録層に複数のホログラムが記録された、露光装置である。
【0018】
請求項12に記載の発明は、前記測定手段で光起電力が測定される半導体発光素子は、被露光面に集光点列を形成しない半導体発光素子である、請求項11に記載の露光装置である。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項11又は請求項12に記載の露光装置を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、複数の半導体発光素子を有する基板上に配置されたホログラム記録層に対応するホログラムを記録する際に、半導体発光素子の光起電力を利用して、半導体発光素子毎にホログラムの記録条件を設定することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、複数の半導体発光素子を有する基板上に配置されたホログラム記録層に対応するホログラムを記録する際に、半導体発光素子の光起電力を利用して、半導体発光素子毎にホログラムの記録条件を設定することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、半導体発光素子に発生した光起電力の増減から半導体発光素子の位置を検出することができ、参照光の照射位置等のホログラムの記録条件を設定することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を備えない場合に比べて、半導体発光素子の位置をより正確に検出することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、半導体発光素子に発生した光起電力の値から対応するホログラムの回折効率を取得することができ、ホログラムを追記する場合の記録条件を設定することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を備えない場合に比べて、ホログラムの回折効率をより正確に求めることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、複数の半導体発光素子を有する基板上に配置されたホログラム記録層に対応するホログラムを記録する際に、半導体発光素子の光起電力を利用して、半導体発光素子毎にホログラムの記録条件を設定することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、半導体発光素子に発生した光起電力の増減から半導体発光素子の位置を検出することができ、参照光の照射位置等のホログラムの記録条件を設定することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、本構成を備えない場合に比べて、半導体発光素子の位置をより正確に検出することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、半導体発光素子に発生した光起電力の値から対応するホログラムの回折効率を取得することができ、ホログラムを追記する場合の記録条件を設定することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、本構成を備えない場合に比べて、より簡便な構成及び方法で露光装置を製造することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明によれば、被露光面に集光点列を形成する半導体発光素子に対応するホログラムについて、記録条件を設定する際の不要露光を回避できる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、本構成を備えない場合に比べて、より簡便な構成及び方法で画像形成装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】LPHの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。
【図3】(A)及び(B)はLPHのホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。
【図4】(A)及び(B)はLPHのホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す概略図である。
【図6】参照光を照射する光学系を移動させる移動機構を示す概略図である。
【図7】図5に示すホログラム記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るLPHの構成の一例を示す模式的な平面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置に保持されたLPHの構成の一例を示す模式的な平面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置に保持されたLPHの構成の他の一例を示す模式的な平面図である。
【図11】ホログラム記録処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】(A)はLEDチップの配列を部分的に示す平面図であり、(B)はLEDチップの配列の不具合を説明する平面図である。
【図13】ホログラム記録条件設定処理を実行するための処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】位置検出専用のLEDを有するLEDチップが配列されたLEDアレイの部分構成を示す平面図である。
【図15】ホログラム記録処理の他の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図16】信号光の照射により記録されたホログラムから回折光が再生される様子を示す模式図である
【図17】回折効率調整処理を実行するための処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】ホログラムの追記により目標回折効率が達成される様子を示すグラフである。
【図19】参照光の照射により記録されたホログラムから回折光が再生される様子を示す模式図である
【図20】ホログラムの追記により目標回折効率が達成される様子を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0035】
<画像形成装置>
まず、本発明の実施の形態に係るLED方式の露光装置を搭載した画像形成装置について説明する。電子写真方式で画像を形成する複写機、プリンタ等では、感光体ドラムに潜像を書き込む露光装置として、従来の光走査方式の露光装置に代わり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置が主流になりつつある。LED方式の露光装置では、走査光学系は不要であり、光走査方式に比べて大幅に小型化される。また、ポリゴンミラーを駆動する駆動モータも不要であり、機械的なノイズが発生しないという利点もある。
【0036】
LED方式の露光装置は、LEDプリントヘッドと称され、LPHと略称されている。従来のLPHは、長尺状の基板上に複数のLEDが配列されたLEDアレイと、複数のロッドレンズが配列されたレンズアレイと、を備えている。LEDアレイには、例えば1インチ当り1200画素(ドット)と、主走査方向の画素数に対応して複数のLEDが配列されている。従来、レンズアレイには、セルフォック(登録商標)などの屈折率分布型のロッドレンズが用いられている。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。
【0037】
近時、ロッドレンズに代えて「ホログラム素子」を用いたLPHが検討されている。本実施の形態に係る画像形成装置は、以下に説明する通り、「ホログラム素子アレイ」を備えたLPHを備えている。ロッドレンズを用いたLPHでは、レンズアレイ端面から結像点までの光路長(作動距離)は数mm程度と短く、感光体ドラムの周囲における露光装置の占有割合が大きくなる。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPHは、ロッドレンズを用いたLPHよりも作動距離が長くなる。このため、感光体ドラムの周囲が混み合わず、全体として画像形成装置が小型化される。
【0038】
また、一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、ホログラム素子アレイを備えたLPHは、ホログラム素子の入射角選択性及び波長選択性が高く、「ロッドレンズを用いたLPH」に比べると、感光体ドラム上に微小スポットを形成し易い。
【0039】
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0040】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、「画像形成ユニット11」と総称する。
【0041】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0042】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態では、LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。また、LEDアレイ上には、複数のLEDに対応する複数のホログラム素子がアレイ状に配列されている。
【0043】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0044】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0045】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0046】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0047】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0048】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
次に、LEDプリントヘッド(LPH)の構成について説明する。
(LPHの主要構成)
図2はLPHの部分的構成の一例を示す分解斜視図である。図2に示すように、LPH14は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。複数のホログラム素子54の各々は、複数のLED50の各々に対応して設けられている。
【0049】
複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に配列されている。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔(LEDピッチ)が予め定めた間隔となるように配列されている。複数のLED50が配列されたLEDチップ53は、長尺状のLED基板58上に実装されている。複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように配置されると共に、副走査方向に予め定めた間隔ずらして千鳥状に配置されている。
【0050】
図2に示す例では、4個のLEDチップ53が、副走査方向においてA列とB列の2列に分けて配列されている。A列にはLEDチップ53AとLEDチップ53Aとが互いに隣接するように配置され、B列には、LEDチップ53BとLEDチップ53Bとが互いに隣接するように配置されている。A列のLEDチップ53A及びLEDチップ53Aと、B列のLEDチップ53B及びLEDチップ53Bとは、副走査方向に並ばないように主走査方向にずらして(即ち、千鳥状に)配置されている。
【0051】
なお、以下では、各々を区別する必要がない場合には、各LEDチップを「LEDチップ53」と総称する。また、A列とB列とに区別する場合には、A列に配置されたLEDチップ53を「LEDチップ53A」と称し、B列に配置されたLEDチップ53を「LEDチップ53B」と称する。
【0052】
また、図2に示す例では、4個のLEDチップ53の各々には、9個のLED50が予め定めた間隔で一次元状に配列されている。そして、4個のLEDチップ53の各々は、LED50の配列方向が主走査方向を向くように配置されている。図2に示す例では、A列とB列の2列に配列された合計36個のLED50(LED50〜5036)が図示されている。
【0053】
なお、以下では、各々を区別する必要がない場合には、複数のLED50〜5036を「LED50」と総称する。また、A列とB列とに区別する場合には、A列に配置されたLED50を「LED50A」と称し、B列に配置されたLED50を「LED50B」と称する。A列に配置されたLED50AとB列に配置されたLED50Bとは、副走査方向に予め定めた間隔だけ離間されている。A列とB列との間隔は、LED50の主走査方向の間隔と略同じ間隔又は数倍(1倍〜9倍)程度の間隔とされている。
【0054】
複数のLEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。或いは、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)を備えた複数のLEDチップ53を、長尺状のLED基板58上に実装してもよい。例えば、複数のLEDチップ53の各々では、複数のLED50と、複数のLED50の各々を駆動する駆動回路(回路部)と、が同じ基板上に形成されている。この場合、基板としては、一般に、半導体基板が用いられる。
【0055】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、LED50の「発光光軸」は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。LED50は「点光源」ではないが、以下では、LED50が配置される位置を「発光点」と称する。ここで「発光光軸」とは、LED50の発光領域から射出される拡散光の中心線である。LED50を発光点とみなす場合には、「発光光軸」の延びる方向はLED基板58の法線方向と一致する。
【0056】
なお、上記では、複数のLED50が配列されたLEDチップ53を千鳥状に配置したLEDアレイ52について説明したが、LEDアレイの形態はこれに限定されるものではない。LEDアレイ52としては、種々の形態のLEDアレイを用いてもよい。例えば、LEDチップ53の単位ではなく、複数のLED50がLED基板58上に直接配列されたLEDアレイを用いてもよい。複数のLEDチップ53の配列方法も千鳥状に限定されるものではない。複数のLEDチップ53は、直列に配置してもよく、ランダムに配置してもよい。また、副走査方向に2個以上配置してもよい。
【0057】
LEDアレイ52としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップ(図示せず)が、各SLEDが主走査方向に並ぶように、複数個に配列されて構成されたSLEDアレイを用いてもよい。SLEDアレイは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDアレイを用いることで、LED基板58上での配線数が少なくて済む。
【0058】
本実施の形態では、SLEDが配列されたSLEDチップを用い、複数のSLEDチップが配列されたSLEDアレイを用いる。以下では、「LED」に代えて「SLED」を用いる場合でも「LED50」と称する。また、SLEDチップも「LEDチップ53」と称する。また、SLEDアレイも「LEDアレイ52」と称する。
【0059】
LEDチップ53が配列されたLED基板58上には、ホログラム記録層60が配置されている。ホログラム素子アレイ56は、このホログラム記録層60内に形成されている。LED基板58とホログラム記録層60とは密着している必要はなく、空気層や透明樹脂層などを介して予め定めた距離だけ離間されていてもよい。例えば、ホログラム記録層60は、LED基板58から予め定めた高さだけ離間された位置に、図示しない保持部材により保持されていてもよい。
【0060】
ホログラム記録層60には、複数のLED50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子54が記録されている。図2に示す部分には、36個のLED50〜5036の各々に対応して、36個のホログラム素子54〜5436が、予め定めた位置及び形状で形成されている。なお、各々を区別する必要がない場合には、複数のホログラム素子54〜5436を「ホログラム素子54」と総称する。なお、ホログラム素子54の形状及び配置については後述する。
【0061】
換言すれば、複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54側に光を射出するように、発光面をホログラム記録層60の表面側に向けて、LED基板58上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、対応するホログラム素子54の中心(例えば、円錐台の対称軸)付近を通り、LED基板58と直交する方向を向いている。上記の通り、LED50の発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。
【0062】
ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の中心の主走査方向の間隔が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、ほぼ同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が複数形成されている。また、互いに隣接する2つのホログラム素子54が異なる形状を有していてもよい。
【0063】
ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。
【0064】
なお、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。
【0065】
また、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。なお、露光装置として説明する場合には、結像位置(焦点面)を「被露光面」と称する。
【0066】
また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着を防止する。
【0067】
(ホログラム素子の形状及び配置)
ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラムと称される体積ホログラムである。上述した通り、ホログラム素子は、入射角選択性及び波長選択性が高く、回折光の出射角度(回折角)を高精度で制御して、微小スポットを形成する。回折角の精度はホログラムの厚さが厚いほど高くなる。
【0068】
ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を一方の底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、一方の底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。
【0069】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。このように大きなホログラム素子54を用いることで、約4cmの作動距離において、約40μm(半値幅で約30μm)のスポットサイズφが実現される。
【0070】
上記の通り、ホログラム素子54の各々は、大きな「ホログラム径r」を有しており、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。
【0071】
(LPHの動作−ホログラムの再生−)
次に、LPHの動作(即ち、ホログラムの再生)について説明する。
図3(A)及び(B)はLPHのホログラムが再生されて回折光が生成される様子を示す図である。インコヒーレント光源であるLED50を発光させると、LED50から射出される発光光は、発散して拡がることが知られている。この現象は「ランバーシアン配光」と称される。同じくインコヒーレント光源である電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。LED50から射出された拡散光(インコヒーレント光)の一部は、発光点からホログラム径まで拡がる拡散光の光路を通る。LED50の発光により、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。
【0072】
図2に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えたLPH14では、複数のLED50〜5036の各々から射出された各光は、対応するホログラム素子54〜5436のいずれかに入射する。ホログラム素子54〜5436の各々は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54〜5436の各々で生成された各回折光は、拡散光の光路を避けて、その光軸が発光光軸と予め定めた角度θを成す方向に射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0073】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54〜5436の各々は、対応するLED50〜5036の各々から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12の表面に結像させる光学部材として機能する。感光体ドラム12の表面には、各回折光による微小なスポット62〜6236が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜6236を「スポット62」と総称する。
【0074】
図3(A)及び(B)に示す通り、本実施の形態では、A列に配置されたLED50AとB列に配置されたLED50Bの各々に対応して、複数のホログラム素子54が記録されている。例えば、信号光の光軸と参照光の光軸とが予め定めた角度θで交差するように、信号光と参照光とを照射して複数のホログラム素子54を記録しておくと、ホログラム素子54を再生する際には、発光光軸と角度θを成す方向に回折光が射出される。なお、ホログラムの記録方法については後述する。
【0075】
図3(A)に示すように、LED50Aを発光させると、LED50Aから射出された光は、ホログラム素子54Aにより発光光軸と角度θを成す方向に回折され、感光体ドラム12の表面12Aに結像されてスポット62Aを形成する。同様に、図3(B)に示すように、LED50Bから射出された光は、対応するホログラム素子54Bにより発光光軸と角度θを成す方向に回折され、感光体ドラム12の表面12Aに結像されて、スポット62Aと共に主走査方向に並ぶスポット62Bを形成する。
【0076】
なお、図3(A)及び(B)では、回折に使用されるホログラム素子に格子模様を付すと共に、回折に使用されないホログラム素子に斜線を付すことで、両者を区別している。例えば、図3(A)に示すA列のLED50Aを発光させた場合には、格子模様が付されたホログラム素子54Aで回折され、図3(B)に示すB列のLED50Bを発光させた場合には、格子模様が付されたホログラム素子54Bで回折される。
【0077】
複数のLED50は、発光強度のばらつきを有する。また、LED50の副走査方向の位置(A列か、B列か)に応じて、対応するホログラム素子54の位置及び形状は異なるものとなる。しかしながら、本実施の形態では、後述する通り、LED50毎に対応するホログラム素子54の記録条件が設定され、設定された記録条件に従ってホログラム素子54が記録される。従って、複数のLED50の発光強度のばらつきや副走査方向における位置に拘わらず、感光体ドラム12の表面に形成される複数のスポット62の光量(即ち、回折光強度)が均一化される。
【0078】
例えば、A列に配置されたLED50Aに対応するか、B列に配置されたLED50Bに対応するかに拘わらず、対応するホログラム素子54により形成されるスポット62の光量は略一定となる。また、A列のLEDチップ53Aが斜めに配置され、LED50AがA列上に配置されていない場合でも、対応するホログラム素子54により形成されるスポット62の光量は略一定となる。
【0079】
なお、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて数千個のLED50が配列されている。例えば、SLEDアレイを例に説明すると、58個のSLEDチップが、SLEDが主走査方向に沿って並ぶように直列に配列されてSLEDアレイが構成されている。SLEDチップの各々には、128個のSLEDが1インチあたりのスポット数が1200個となる間隔で配列されている。
【0080】
換算すると、1インチ当たり1200画素(ドット)の解像度を有する画像形成装置では、7424個のSLEDが21μmの間隔で配列されている。これら7424個のSLEDに対応して、感光体ドラム12上には7424個のスポット62が主走査方向に一列に並ぶように形成される。本実施の形態によれば、これら数千個のスポット62の光量が均一化される。
【0081】
(LPHの作製−ホログラムの記録−)
次に、ホログラムを記録する工程について説明する。
図4(A)及び(B)はホログラムが記録される様子、即ち、LPH14の未記録のホログラム記録層60Aにホログラム素子54が形成される様子を示す模式図である。ここでは、感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0082】
A列に配置されたLED50AとB列に配置されたLED50Bとは、副走査方向に予め定めた間隔だけ離間されている。ここで、記録光学系を固定配置してホログラムを記録した場合、即ち、信号光を照射する光学系と参照光を照射する光学系とを固定された関係で配置してホログラムを記録した場合には、ホログラム素子54Aの回折光による結像位置は、ホログラム素子54Bの回折光による結像位置よりも感光体12に近くなる。これでは、複数のスポット62は主走査方向に一列に配列されない。
【0083】
本実施の形態では、図4(A)及び(B)に示すように、ホログラム素子54Aとホログラム素子54Bとを記録する際に、「同じ信号光」を用いることで、感光体ドラム12の表面12Aにおいて主走査方向に一列に配列される複数のスポット62を形成している。ここで「同じ信号光」とは、照射角度、収束角度、及び収束位置が同じ信号光を意味している。
【0084】
具体的には、表面12A上の予め定めた集光点(スポット62)に向って予め定めた角度で収束する回折光の光路を通るコヒーレント光を、信号光として用いる。回折光の光路を通るコヒーレント光は、LED50Aの発光光軸及びLED50Bの発光光軸と角度θで交差する光軸を有する。即ち、回折光の光軸と信号光の光軸とを一致させ、信号光の光軸と参照光の光軸とが予め定めた角度θで交差するように、信号光と参照光とを照射する。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0085】
ホログラム素子54Aを記録する場合には、図4(A)に示すように、LED50Aの発光光軸と角度θで交差する光軸を有し且つ上記回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、LED50A(発光点)からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。
【0086】
ホログラム素子54Bを記録する場合には、図4(B)に示すように、LED50Bの発光光軸と角度θで交差する光軸を有し且つ上記回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、LED50B(発光点)からホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。
【0087】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し同じ側から照射される。本実施の形態では、LED基板58が配置される側とは反対側から信号光と参照光とを照射する「位相共役記録」を前提としている。即ち、ホログラム記録層60AをLEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けた後に、矢印で図示したように、LED基板58が配置される側とは反対側から、信号光と参照光とをホログラム記録層60Aに照射してホログラムを記録する。
【0088】
信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。LED基板58上に取り付けられたホログラム記録層60Aに、複数のホログラム素子54が記録されることで、LPH14が作製される。
【0089】
図4(A)及び(B)に示すように、「同じ信号光」を用いたことで、ホログラム素子54Aを記録する場合の信号光及び参照光の重なりと、ホログラム素子54Bを記録する場合の信号光及び参照光の重なりとは、副走査方向での位置及び形状が相違している。従って、信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)も相違している。換言すれば、ホログラム素子54Aとホログラム素子54Bとは異なるホログラムであり、通常は回折効率も異なる。本実施の形態では、回折光強度が均一化されるように、ホログラム素子54Aとホログラム素子54Bとを記録する。その具体的な方法については後述する。
【0090】
<ホログラム記録装置>
次に、ホログラム記録装置について説明する。
【0091】
(ホログラム記録装置の構成)
まず、ホログラム記録装置の構成を説明する。
図5は本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す概略図である。図5に示すように、このホログラム記録装置には、コヒーレント光であるレーザ光を発振するレーザ光源100が設けられている。
【0092】
レーザ光源100の光出射側には、開閉可能に構成されたシャッタ102、互いに直交する直線偏光成分に1/2波長の位相差を付与する1/2波長板104、予め定めた方向の偏光だけを透過すると共にそれ以外の偏光を反射する偏光ビームスプリッタ106が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。シャッタ102は、後述するシャッタ駆動部に接続されている。シャッタ102は、シャッタ駆動部により矢印B方向に駆動されて、レーザ光の光路に挿入された状態(閉状態)又は光路から退避させられた状態(開状態)となる。
【0093】
偏光ビームスプリッタ106の光反射側には、反射されたレーザ光を吸収する光吸収体(図示せず)が配置されている。一方、偏光ビームスプリッタ106の光透過側には、一対のレンズ108、110が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。一対のレンズ108、110は、2枚のレンズを焦点位置が一致するように組み合わせたものであり、レーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダとして機能する。レンズ108、110の焦点面には、ピンホール(微小開口)112aを備えた空間フィルタ112が配置されている。
【0094】
レンズ110の光出射側には、透過したレーザ光を反射して光路を予め定めた角度だけ折り曲げるミラー114が配置されている。この例では、入射光の光路は、ミラー114により90°だけ折り曲げられる。ミラー114の光反射側には、1/2波長板116、レーザ光を二光波に分岐するための偏光ビームスプリッタ118が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。レーザ光の光路は、偏光ビームスプリッタ118により、信号光光路と参照光光路とに分岐される。
【0095】
偏光ビームスプリッタ118の光透過側(即ち、信号光光路側)には、1/2波長板120、ミラー122、レーザ光が通過する予め定めた径の開口を備えた遮光板であるアパーチャ124が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。この例では、1/2波長板120を透過したレーザ光の光路は、ミラー122により90°だけ折り曲げられて、アパーチャ124に入射する。
【0096】
アパーチャ124の光透過側には、一対のレンズ126、128、開閉可能に構成されたシャッタ129、レーザ光を反射して光路を予め定めた角度だけ折り曲げるミラー130、記録時に信号光をLPH14(詳しくは、未記録のホログラム記録層60A)に照射するレンズ134、LPH14を予め定めた位置に保持するステージ136が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。シャッタ129は、シャッタ駆動部204により矢印D方向に駆動されて、閉状態又は開状態となる。
【0097】
ステージ136は、後述するステージ駆動部206に接続されている。ステージ136は、ステージ駆動部206により駆動されて、矢印E方向、矢印F方向、及び矢印G方向に移動する。矢印G方向は、紙面と直交する方向(即ち、図面の奥行き方向)であり、ステージ136は三次元空間を移動する。位置計測時には、ステージ136は、予め定めた計測位置にLPH14を保持する。また、ホログラムの記録時には、ステージ136は、予め定めた記録位置にLPH14を保持する。
【0098】
偏光ビームスプリッタ118の光反射側には、一対のレンズ140、142が、この順序でレーザ光の光路上に配置されている。一対のレンズ140、142は、2枚のレンズを焦点位置が一致するように組み合わせたものである。レンズ140、142の焦点面には、ピンホール(微小開口)144aを備えた空間フィルタ144が配置されている。レンズ142の光出射側には、開閉可能に構成されたシャッタ145、参照光をLPH14に照射するレンズ146が配置されている。シャッタ145は、シャッタ駆動部204により矢印C方向に駆動されて、閉状態又は開状態となる。
【0099】
図6は参照光を照射する光学系を移動させる移動機構を示す概略図である。レンズ146は、レンズ用ステージ132に保持されている。レンズ用ステージ132は、後述するレンズ駆動部208に接続されている。レンズ用ステージ132は、レンズ駆動部208により駆動されて、矢印H方向、矢印I方向、及び矢印J方向に移動する。矢印J方向は、紙面と直交する方向(即ち、図面の奥行き方向)であり、レンズ用ステージ132は三次元空間を移動する。レンズ用ステージ132の近傍には、レンズ用ステージ132の位置を検出するために、位置センサ等のステージ位置検出手段148が配置されている。
【0100】
LPH14を保持するステージ136には、後述する光起電力測定部210が設けられている。光起電力測定部210は、LPH14のLED50にレンズ146を介して参照光を照射したときに、消灯状態にあるLED50に発生した光起電力を測定する。位置計測時には、光起電力測定部210でLED50の光起電力を測定しながら、レンズ駆動部208によりレンズ用ステージ132を駆動して、光起電力が最大となる位置にレンズ146を移動させる。
【0101】
ステージ位置検出手段148により、移動後のレンズ用ステージ132の位置を検出することで、LED50(発光点)の位置を計測する。また、移動後のレンズ用ステージ132の位置を、ホログラムの記録条件(記録時の参照光レンズの位置)として記憶しておく。ホログラムの記録時には、レンズ用ステージ132を記憶した位置に移動させて、予め定めた位置にレンズ146を保持する。
【0102】
(ホログラム記録装置の電気的構成)
次に、上記装置の電気的構成について説明する。
図7は図5に示すホログラム記録装置の電気的構成を示すブロック図である。ホログラム記録装置は、図7に示すように、制御部200、レーザ光源100を駆動するレーザ駆動部(駆動回路)202、シャッタ102、129、145の各々を開閉駆動するシャッタ駆動部204、ステージ136を駆動するステージ駆動部206、レンズ146(参照光用レンズ)を保持するレンズ用ステージ132を駆動するレンズ駆動部208、LED50に発生した光起電力を測定する光起電力測定部210、レンズ用ステージ132の位置を検出するステージ位置検出手段148、及びユーザの操作を受け付けると共にユーザに各種情報を表示する操作表示部214が接続されている。
【0103】
制御部200は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。即ち、制御部200は、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)200A、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)200B、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)200C、各種情報を記憶する不揮発性メモリ200D、及び入出力インターフェース(I/O)200Eを備えている。CPU200A、ROM200B、RAM200C、不揮発性メモリ200D、及びI/O200Eの各々は、バス200Fを介して接続されている。
【0104】
また、制御部200は、ハードディスク等の各種情報を記憶する外部記憶装置、入出力ポート、通信インターフェース、及び各種ドライブを備えていてもよい。CPU200Aは、プログラムをROM200B又は外部記憶装置等の記憶装置から読み出し、RAM200Cにロードする。そしてRAM200Cをワークエリアとして使用し、ロードされたプログラムを実行する。なお、後述する各種「プログラム」は、ROM200B又は外部記憶装置に記憶されている。また、スポット62の位置座標等も、ROM200B又は外部記憶装置等の記憶装置に予め設計値として記憶されている。
【0105】
レーザ駆動部202、シャッタ駆動部204、ステージ駆動部206、レンズ駆動部208、光起電力測定部210、ステージ位置検出手段148、及び操作表示部214の各部は、制御部200のI/O200Eに接続されている。制御部200は、制御信号により、レーザ駆動部202、シャッタ駆動部204、ステージ駆動部206、レンズ駆動部208、光起電力測定部210、及び操作表示部214の各部を制御する。また、制御部200は、光起電力測定部210で測定された測定値(測定信号)を取得し、ステージ位置検出手段148から検出信号を取得する。
【0106】
なお、ステージ136に保持されるLPH14のLED基板58には、駆動回路(図示せず)が実装されている。ステージ駆動部206は、この駆動回路に電気的に接続されて、LED基板58上に形成された各LED50を駆動する。また、ステージ136に保持されるLPH14からは、LED50に発生した光起電力を測定するための複数の端子(図示せず)が引き出されている。光起電力測定部210は、この複数の端子に電気的に接続されて光起電力を測定し、測定値を出力する。光起電力の測定に関しては次に詳しく説明する。
【0107】
(光起電力の測定)
ここで、光起電力を測定するための構成について説明する。
図8は本発明の実施の形態に係るLPHの構成の一例を示す模式的な平面図である。図8に示すように、LPH14は、LED基板58上に、複数のLED50(ダイオードとして図示)を備えたLEDアレイ52を有している。この例では、LED50からLED50mnまでのmn個のLEDが、主走査方向に沿って配列されている。また、LED基板58上には、複数のLED50の各々を点灯駆動する駆動回路が搭載されている。なお、光起電力の測定時には、複数のLED50の各々は消灯状態とされる。
【0108】
半導体発光素子であるLED50には、光照射により光起電力が発生する。LEDアレイ52の測定対象となるLED50には、複数の端子70が接続されている。LED50に発生した光起電力を測定するために、LED50のアノード電極側に接続された端子70Aと、LED50のカソード電極側に接続された端子70Bとが、LED50から引き出されている。この例では、LEDアレイ52の両端に在るLED50に、一対の端子70が接続されている。LEDアレイ52の一端に在るLED50には、一対の端子70(70A、70B)が接続されている。また、LEDアレイ52の他端に在るLED50mnには、一対の端子70(70A、70B)が接続されている。
【0109】
図9は本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置に保持されたLPHの構成の一例を示す模式的な平面図である。図8に示すLPH14は、位置計測時及びホログラム記録時には、ホログラム記録装置のステージ136により、予め定めた位置に保持される。ステージ136には、測定対象となるLED50の数や配置に応じて、光起電力測定部210が設けられている。
【0110】
光起電力測定部210は、一対の端子70(70A、70B)の各々に対応した一対のスイッチ72(72A、72B)と、一対の端子70間の電圧(光起電力)を測定する電圧計74とを備えている。一対のスイッチ72は、LPH14がステージ136に取り付けられたときにオン状態となる。これにより、一対の端子70の各々が電圧計74と接続されて、電圧計74を含む閉回路を構成する。電圧計74により測定された光起電力の値(測定信号)は、アナログ/デジタル変換等されて制御部200に出力される。
【0111】
この例では、LED50の一対の端子70(70A、70B)に応じて、一対のスイッチ72(72A、72B)と電圧計74とを備えた光起電力測定部210が設けられている。また、LED50mnの一対の端子70(70A、70B)に応じて、一対のスイッチ72(72A、72B)と電圧計74とを備えた光起電力測定部210が設けられている。光起電力測定部210でLED50の光起電力が測定され、測定信号が制御部200に出力される。光起電力測定部210でLED50mnの光起電力が測定され、測定信号が制御部200に出力される。
【0112】
上記では、LEDアレイ52の両端に在るLED50の光起電力を測定する例について説明したが、これに限定される訳ではない。図10は本発明の実施の形態に係るホログラム記録装置に保持されたLPHの構成の他の一例を示す模式的な平面図である。図10に示すように、LEDアレイ52が複数のLEDチップ53を配列して構成されている場合には、複数のLEDチップ53の各々について、LEDチップ53の両端に在るLED50の光起電力を測定してもよい。ステージ136には、測定対象となるLED50の数や配置に応じて、複数の光起電力測定部210が設けられる。
【0113】
この例では、LPH14は、x個のLEDチップ53〜53を有している。LEDチップ53〜53の各々の両端に在るLED50の光起電力を測定するために、測定対象のLED50の各々から一対の端子が引き出されている。ステージ136には、1つのLEDチップ53当たり2個の光起電力測定部210が設けられ、合計y(=2x)個の光起電力測定部210〜210が設けられている。例えば、LEDチップ53に対しては光起電力測定部210及び210が設けられ、・・・LEDチップ53に対しては光起電力測定部210y-1及び210が設けられている。
【0114】
図10に示す例では、ステージ136には、複数の光起電力測定部210以外に、接続切替手段76が設けられている。接続切替手段76は、複数の光起電力測定部210(210〜210)の各々に接続されている。接続切替手段76は、特定のLED50の光起電力を測定する光起電力測定部210に接続するように、複数の光起電力測定部210との接続状態を切り替える。そして、特定のLED50の光起電力の測定値を、測定信号として制御部200に出力する。接続切替手段76は、ソフトウェアとして構成してもよく、スイッチ等のハードウェアとして構成してもよい。
【0115】
なお、上記では、LED50の位置ずれを生じる単位で、両端のLED50の位置を特定するために、LEDアレイ52の両端に在るLED50の光起電力を測定する例、LEDチップ53の両端に在るLED50の光起電力を測定する例について説明したが、測定対象となるLEDの位置はこれに限定される訳ではない。例えば、両端と中央、1つおき、2つおき等、予め定めた規則の下で一部のLED50の光起電力を測定してもよい。或いは、全部のLED50の光起電力を測定してもよい。
【0116】
(ホログラムの記録動作)
次に、図5〜図7を参照して、上記ホログラム記録装置の記録動作について説明する。ホログラムの記録時には、シャッタ102、シャッタ129、及びシャッタ145の各々は、シャッタ駆動部204により駆動されて「開状態」とされている。レーザ駆動部202により駆動されて、レーザ光源100から予め定めた波長のレーザ光が発振する。レーザ光源100から発振されたレーザ光は、1/2波長板104を通過して互いに直交する直線偏光成分に1/2波長の位相差が付与され、偏光ビームスプリッタ106に入射する。偏光ビームスプリッタ106は、例えば、P偏光及びS偏光の一方を透過し、他方を反射する。
【0117】
偏光ビームスプリッタ106を透過した予め定めた方向の偏光は、ビームエキスパンダとして機能する一対のレンズ108、110によりビーム径が拡大される。レンズ108、110の焦点面に配置された空間フィルタ112は、ピンホール112aを通過できない一部のレーザ光を遮断する。ピンホール112aを通過したレーザ光は、レンズ110で平行光化され、ミラー114で反射されてレーザ光の光路が90°折り曲げられる。
【0118】
ミラー114で反射されたレーザ光は、1/2波長板116を通過して、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118を透過したレーザ光は、1/2波長板120を通過して、ミラー122で反射され、アパーチャ124により開口径に応じた予め定めたビーム径とされる。ステージ駆動部206によりステージ136が駆動されて、LPH14はステージ136によって予め定めた記録位置に保持されている。アパーチャ124を通過したレーザ光は、一対のレンズ126、128でリレーされ、ミラー130で予め定めた方向に反射される。ミラー130で反射されたレーザ光は、レンズ134で集光されて、LPH14に信号光として照射される。
【0119】
一方、偏光ビームスプリッタ118で反射されたレーザ光は、一対のレンズ140、142によりリレーされる。レンズ140、142の焦点面に配置された空間フィルタ144は、ピンホール144aを通過できない一部のレーザ光を遮断する。レンズ駆動部208によりレンズ用ステージ132が駆動されて、レンズ146はレンズ用ステージ132によって予め定めた位置に保持されている。ピンホール144aを通過したレーザ光は、レンズ142で平行光化され、レンズ146で集光されて、LPH14に参照光として照射される。
【0120】
上記の通り、信号光と参照光とは、同じレーザ光源100から発振されたレーザ光を分岐して生成される。これら信号光と参照光とは、LPH14の同じ位置に同時に且つ同じ側から照射される。これによって、LPH14のホログラム記録層60A内で信号光と参照光とが干渉して、干渉パターンがホログラムとして記録される。なお、LPH14の同じ位置とは、1つのホログラム(干渉縞)を記録するのに必要な範囲で同じ位置という意味である。
【0121】
(位置計測時の概略動作)
次に、図5〜図10を参照して、上記ホログラム記録装置の位置計測時の動作について簡単に説明する。位置計測時には、シャッタ駆動部204により駆動されて、シャッタ102、シャッタ145は「開状態」とされ、シャッタ129は「閉状態」とされている。ホログラムの記録時と同様に、レーザ光源100から発振されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。
【0122】
偏光ビームスプリッタ118を透過したレーザ光は、1/2波長板120、ミラー122、アパーチャ124、一対のレンズ126、128の各々を通過して、ミラー130に入射する前に「閉状態」のシャッタ129で遮断される。従って、位置計測時には、LPH14に信号光は照射されない。
【0123】
一方、偏光ビームスプリッタ118で反射されたレーザ光は、一対のレンズ140、142によりリレーされる。空間フィルタ144は、ピンホール144aを通過できない一部のレーザ光を遮断する。レンズ駆動部208によりレンズ用ステージ132が駆動されて、レンズ146はレンズ用ステージ132によって、予め定めた計測位置(初期位置)に保持されている。ピンホール144aを通過したレーザ光は、レンズ142で平行光化され、レンズ146で集光されて、LPH14に参照光として照射される。
【0124】
上記の通り、位置計測時には、ステージ136に保持されたLPH14に参照光だけが照射される。LPH14の消灯状態にあるLED50に、レンズ146を介して参照光が照射される。参照光の照射によりLED50に発生した光起電力が測定される。位置計測時には、光起電力測定部210でLED50の光起電力を計測しながら、レンズ駆動部208によりレンズ用ステージ132を駆動して、光起電力が最大となる位置にレンズ146を移動させる。ステージ位置検出手段148により、移動後のレンズ用ステージ132の位置を検出することで、LED50の位置を特定する。
【0125】
LED50の位置を特定する他の方法としては、位置計測時にレンズ140と空間フィルタ144との間にパワーメータ等の光検出器を参照光の光路上に挿入し、LED50を点灯して光検出器で検出される光強度からLED50の位置を特定する方法がある。この方法では、ホログラムの記録時には、参照光の光路から光検出器を退避させなければならない。
【0126】
本実施の形態では、ステージ136側に設けた光起電力測定部210により、LED50に発生した光起電力を測定するので、光検出器の挿入・退避を行う駆動機構が不要である。即ち、他の方法と比較した場合に、より簡便な装置構成及び方法によってLED50の位置が特定される。なお、レンズ146を移動させるためのレンズ駆動機構は、いずれの方法においても必要である。
【0127】
<第1の実施の形態>
(ホログラム記録処理)
次に、第1の実施の形態に係るホログラム記録処理について説明する。
本実施の形態では、複数のLED50について光起電力を測定し、この測定値に基づいて各LED50の位置を特定する。そして、位置が特定された複数のLED50の各々に対応して、感光体ドラム12上でスポット62が主走査方向に一列に並ぶように、ホログラム記録層60Aに複数のホログラム素子54が形成される。
【0128】
図11はホログラム記録処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理ルーチンは、制御部200のCPU200Aによって実行される。また、この処理ルーチンは、未記録のホログラム記録層60Aを有するLPH14がホログラム記録装置のステージ136に保持された状態で、操作表示部214から開始指示を受け付けた場合に開始される。
【0129】
まず、ステップ100で、光起電力の測定値に基づいて、LED50に発生する光起電力が最大となるレンズ用ステージ132の位置等、複数のLED50に対応する複数のホログラム素子54を記録するホログラム記録条件を設定する「ホログラム記録条件設定処理」を実行する。ホログラム記録条件は、制御部200のROM200B等の記憶装置に記憶される。なお、「ホログラム記録条件」及び「ホログラム記録条件設定処理」の詳細については後述する。
【0130】
次に、ステップ102で、設定されたホログラム記録条件を記憶装置から読み出す。
【0131】
次に、ステップ104で、LPH14を最初のホログラムを記録する位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。この制御信号に応じて、ステージ駆動部206によりステージ136が駆動され、LPH14が図示した記録位置に保持される。ここでの記録位置は、最初のホログラムに対応したLED50に参照光が集光する位置である。
【0132】
次に、ステップ106で、最初のホログラムを記録するための制御信号を、レンズ駆動部208、レーザ駆動部202及びシャッタ駆動部204に入力する。この制御信号に応じて、レンズ用ステージ132と共にレンズ146が移動されて、LPH14に設計された信号光及び参照光を照射するように光学系が配置される。なお、ここでは、信号光を照射するための光学系は固定配置されており、参照光を照射するための光学系だけを移動させる。
【0133】
そして、シャッタ102、シャッタ129、及びシャッタ145の各々は、シャッタ駆動部204により駆動されて「開状態」とされる。また、レーザ光源100がレーザ駆動部202により点灯駆動されて、レーザ光が発振する。レーザ光源100からレーザ光が発振されると、上述した通り、ホログラムの記録動作が実施されて、設計された信号光及び参照光で最初のホログラムが記録される。なお、ホログラムの記録終了後には、シャッタ102がシャッタ駆動部204により駆動されて「閉状態」とされ、レーザ駆動部202により駆動されてレーザ光源100が消灯する。
【0134】
次に、ステップ108で、LPH14を次のホログラムを記録する位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。この制御信号に応じて、ステージ駆動部206によりステージ136が駆動され、LPH14が図示した記録位置に保持される。ここでの記録位置は、次のホログラムに対応したLED50に参照光が集光する位置である。
【0135】
次に、ステップ110で、次のホログラムを記録するための制御信号を、レンズ駆動部208、レーザ駆動部202及びシャッタ駆動部204に入力する。この制御信号に応じて各部が駆動され、ホログラムの記録動作が実施されて、信号光及び参照光の照射により次のホログラムが記録される。なお、ホログラムの記録終了後には、シャッタ102が「閉状態」とされ、レーザ光源100が消灯する。
【0136】
次に、ステップ112で、他に記録するホログラムがあるか否かを判断する。ここで肯定判定の場合には、ステップ108に戻って次のホログラムを記録する。一方、ここで否定判定の場合には、全部のLED50についてホログラムが記録されたものとしてルーチンを終了する。この処理ルーチンの実行により、LPH14の複数のLED50の各々に対応して、ホログラム記録層60Aに複数のホログラム素子54が順次記録される。
【0137】
なお、上記ではLPH14の単位で計測・記録の動作を行う例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、LEDチップ53の単位で計測・記録の動作を行ってもよい。或いは、個々のLED50毎に計測・記録の動作を行ってもよい。
【0138】
(LEDの位置計測)
次に、LED50の位置を計測する意義について説明する。
図12(A)はLEDチップの配列を部分的に示す平面図であり、図12(B)はLEDチップの配列の不具合を説明する平面図である。本実施の形態では、LPH14は、複数のLED50が1次元状に配列された複数のLEDチップ53を有するLEDアレイ52を備えている。図12(A)に示すように、複数のLEDチップ53は、理想的には、主走査方向に並ぶように配置されると共に、副走査方向に予め定めた間隔ずらしてA列及びB列の二列に亘って千鳥状に配置されている。
【0139】
しかしながら、図12(B)に示すように、LEDチップ53が主走査方向に対し斜めに配置される等、LEDチップ53の配列及びその位置合せの不具合(アライメントずれ)を生じる場合がある。この場合、LED50の位置が、一点鎖線で示すA列又はB列の本来の位置から副走査方向にずれる。例えば、LEDチップ53A上のLED50の位置は、LEDチップ53Aが傾斜することで、A列の本来の位置から図面下側にずれる。この結果、LEDアレイ52内において、複数のLED50の位置にばらつきが発生する。
【0140】
複数のホログラム素子54は、複数のLED50の各々に対応して記録される。従って、ホログラム素子54を記録する場合には、複数のLED50の各々の位置を計測し、LED50の位置に応じて参照光を照射する必要がある。また、感光体ドラム12上でスポット(集光点)62が主走査方向に一列に並ぶように、LED(発光点)50とスポット(集光点)62とが対応付けられる。発光点と集光点との位置関係から、LED50に対応するホログラム素子54を記録するための「ホログラム記録条件」が求められる。即ち、「ホログラム記録条件」とは、レーザ光の照射位置、照射角度、拡がり角度、収束角度等、信号光及び参照光の設計値である。
【0141】
(ホログラム記録条件設定処理)
次に、図11のステップ100で実行される「ホログラム記録条件設定処理」について説明する。ここでは、図12(A)に示す複数のLEDチップ53を有するLEDアレイ52について処理を行う場合について説明する。複数のLEDチップ53の各々について、LEDチップ53の両端のLED50の光起電力を測定し、測定対象のLED50の位置を計測する。この例では、LED50、LED50、LED5010、LED5018、LED5019、LED5027、LED5028、LED5036の順に、光起電力を測定して位置計測を行う。
【0142】
図13は「ホログラム記録条件設定処理(プログラム)」を実行するための処理ルーチンを示すフローチャートである。まず、ステップ200で、位置計測のためにLPH14を計測位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。この制御信号に応じて、ステージ駆動部206によりステージ136が駆動され、LPH14が計測位置に保持される。ここでは、LED50に参照光が照射される位置に、LPH14を移動させて保持する。
【0143】
次に、ステップ202で、計測対象のLED50に参照光を照射するための制御信号を、レーザ駆動部202、シャッタ駆動部204の各々に入力する。この制御信号に応じて、シャッタ駆動部204によりシャッタ102、シャッタ145は「開状態」とされ、シャッタ129は「閉状態」とされる。また、レーザ駆動部202によりレーザ光源100からレーザ光が発振されて、計測対象であるLED50に参照光が照射される。なお、信号光はシャッタ129により遮断される。
【0144】
次に、ステップ204で、計測対象のLED50の光起電力を測定するための制御信号を、レンズ駆動部208及び光起電力測定部210に入力する。この制御信号に応じて、光起電力測定部210の測定信号が、予め定めた間隔で取得される。レンズ駆動部208は、光起電力測定部210の測定信号に応じて、レンズ146を保持するレンズ用ステージ132を移動する。位置計測時には、光起電力測定部210でLED50の光起電力を測定しながら、光起電力がより大きくなる位置にレンズ用ステージ132を移動させる。例えば、光起電力が最大となる位置にレンズ用ステージ132を移動させる。
【0145】
次に、ステップ206で、ステージ位置検出手段148は、移動後のレンズ用ステージ132の位置を検出する。レンズ用ステージ132の位置を表す検出信号が、ステージ位置検出手段148から取得される。即ち、参照光を照射するレンズ146の位置が取得される。
【0146】
次に、ステップ208で、移動後のステージ132の位置(即ち、参照光を照射するレンズ146の位置)を、ホログラムの記録条件として、計測対象のLED50に対応付けてROM200B等の記憶装置に記憶する。
【0147】
次に、ステップ210で、移動後のステージ132の位置(即ち、参照光を照射するレンズ146の位置)に基づいて、LED50(発光点)の位置を算出する。これにより、発光点の位置が計測される。計測されたLED50の位置は、ホログラムの記録条件として、計測対象のLED50に対応付けてROM200B等の記憶装置に記憶される。
【0148】
なお、光起電力が最大となる位置では、レンズ146により参照光がLED50に集光されている。従って、発光点の位置がより正確に計測される。
【0149】
次に、ステップ212で、LED(発光点)50とスポット(集光点)62とが対応付けられ、発光点と集光点との位置関係に基づいて、LED50に対応するホログラム素子54を記録するための「ホログラム記録条件」が設定される。なお、「ホログラム記録条件」の設定については後述する。
【0150】
次に、ステップ214で、次に計測するLEDがあるか否かを判断する。ここで肯定判定の場合には、ステップ200に戻ってLPH14を次の計測位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。この制御信号に応じて、ステージ駆動部206によりステージ136が駆動され、LPH14が次の計測位置に保持される。
【0151】
本実施の形態では、LED50の次に計測対象となるのはLED50である。従って、LED50に参照光が照射される位置に、LPH14を移動させて保持する。一方、ステップ214で否定判定の場合には、計測対象となる全部のLED50について位置計測が行われたものとしてルーチンを終了する。
【0152】
(ホログラム記録条件の設定)
上記の通り、ステージ位置検出手段148の検出信号に基づいて、計測対象のLED50(発光点)の位置が計測される。k番目のLED50の位置は、XYZの三次元(空間)座標系中の座標(Xk,Yk,0)として特定される。ここで、X軸方向は主走査方向と一致し、Y軸方向は副走査方向と一致し、Z軸方向はLED50の光軸方向と一致する。従って、この座標は、LPH14上でのホログラム素子54の記録位置(正確には、参照光の収束位置)に対応する。
【0153】
なお、LPH14のLED基板58の一角が、原点(0,0,0)と仮定する。この仮定の下では、LPH14がLED50の計測位置に保持された状態(Z=0の状態)は、空間座標系のZ軸方向においては、ホログラムの記録時にLPH14がステージ136上に配置された状態(図9、図10参照)、又はLPH14が感光体ドラム12の周りに露光装置として配置された状態に相当する(図1参照)。
【0154】
特定された位置情報は、制御部200に入力されて予め定めた記憶装置に記憶される。記憶された計測値は、必要に応じて読み出されて使用される。上記の通り、本実施の形態では、図12(A)に示すA列の第1のLEDチップ53Aから順に計測を開始する。まずチップ左端のLED50の位置(X,Y,0)を特定し、次にチップ右端のLED509の位置(X,Y,0)を特定する。LEDチップ53内では、複数個のLED50が予め定めた間隔で一列に配列されているので、両端のLED50の位置が定まれば、他のLEDの位置も計算により求められる。
【0155】
計測されたLED50の位置は、例えば、下記表1に示すテーブルで予め定めた記憶装置に記憶される。なお、本実施の形態では、LED50としてSLEDが用いられている。下記表1〜3においては「SLED50」と表記する。
【0156】
【表1】

【0157】
複数の発光点(LED50)は、複数の集光点(スポット62)の各々に対応付けられる。例えば、LED50に対しスポット62、LED50に対しスポット62というように、9個のLED50〜LED50の各々に対して9個のスポット62〜スポット62が対応付けられる。LED50(発光点)とスポット62(集光点)との対応関係は、例えば、下記表2に示すテーブルで予め定めた記憶装置に記憶される。
【0158】
【表2】

【0159】
或いは、表3に示すように、LED50の位置座標(X,Y,0)に対して、スポット62の位置座標(XS1,YS1,0)を対応付けるというように、LED50(発光点)の位置座標とスポット62(集光点)の位置座標との対応関係を、テーブルで記憶しておいてもよい。なお、スポット62の位置座標は、予め定めた記憶装置に予め設計値として記憶されている。
【0160】
【表3】

【0161】
次に、LED50に対応する複数のホログラム素子54の各々について、そのホログラムを記録するための記録条件を取得する。表3に示したように、スポット62の位置座標とLED50の位置座標との対応関係が決まると、スポット62に対応するLED50の位置座標に応じて、ホログラム素子54を形成する位置が特定される。また、スポット62及びLED50の位置座標から、LED50毎に、レーザ光の照射位置、照射角度、拡がり角度、収束角度等、信号光及び参照光が設計される。即ち、ホログラムの記録条件が取得される。
【0162】
(位置計測専用のLEDを設けた変形例)
次に、LEDアレイの変形例について説明する。
図14は位置計測専用のLEDを有するLEDチップが配列されたLEDアレイの部分構成を示す平面図である。図14に示すように、LEDアレイは、図12(A)に示すLEDアレイと同様に、複数のLED50が1次元状に配列された複数のLEDチップ53を有している。複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように配置されると共に、副走査方向に予め定めた間隔ずらしてA列及びB列の二列に亘って千鳥状に配置されている。
【0163】
図12(A)に示すLEDアレイ52では、LEDチップ53上に配列された複数のLED50の全部が、感光体ドラム12上に形成される複数のスポット62のいずれかに対応付けられて、感光体ドラム12を露光するために使用される。これに対し、図14に示すLEDアレイでは、LEDチップ53上に配列された複数のLED50の一部は、位置計測専用のLED50Dとされている。位置計測専用のLED50Dは、スポット62には対応付けられておらず、感光体ドラム12の露光には使用されない。また、LED50Dは位置計測専用であり、LED50Dに対応するホログラム素子54は記録されない。
【0164】
図14に示す例では、これら位置計測専用のLED50Dを用いて、露光に使用される複数のLED50の各位置を特定する。これにより、露光に使用されるLED50に対応するホログラム素子54について、ホログラム記録条件を設定する際の不要露光が回避される。
【0165】
位置計測専用のLED50Dは、例えば、LEDチップ53の両端に配置される。図14に示すLEDチップ53Aを例にして説明すると、LEDチップ53Aには11個のLEDが1次元状に配列されている。LEDチップ53Aの両端には、位置計測専用のLED50D及びLED50Dが配置されている。位置計測専用のLED50DとLED50Dとの間には、露光に使用される9個のLED50〜LED50が配置されている。
【0166】
<第2の実施の形態>
(ホログラム記録処理)
次に、第2の実施の形態に係るホログラム記録処理について説明する。
本実施の形態では、既に記録されたホログラム素子54に信号光又は参照光を照射して、ホログラム素子54により回折光を再生する。ホログラム素子54に対応するLED50について光起電力を測定し、この測定値に基づいてホログラム素子54の回折効率を算出する。算出された回折効率に基づいて、ホログラム素子54の追記条件が取得される。
【0167】
図15はホログラム記録処理の他の処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理ルーチンは、制御部200のCPU200Aによって実行される。なお、図15に示す処理ルーチンは、ホログラムを記録するステップの後に「回折効率調整処理」を実行する以外は、図11に示す処理ルーチンと同じステップで構成されている。このため同じステップには同じ符号を付して説明を簡略化する。
【0168】
まず、ステップ100で「ホログラム記録条件設定処理」を実行する。次に、ステップ102で、設定されたホログラム記録条件を記憶装置から読み出す。次に、ステップ104で、LPH14を最初のホログラムを記録する位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。次に、ステップ106で、最初のホログラムを記録するための制御信号を、レンズ駆動部208、レーザ駆動部202及びシャッタ駆動部204に入力する。この制御信号に応じて各部が駆動され、ホログラムの記録動作が実施されて最初のホログラムが記録される。
【0169】
ステップ106で最初のホログラムが記録されると、次にステップ114に進む。ステップ114では、算出された回折効率に基づいて、ホログラム素子54の追記条件を取得する「回折効率調整処理」を実行する。ステップ114で「回折効率調整処理」が終了すると、次にステップ108に進む。「回折効率調整処理」については後述する。
【0170】
次に、ステップ108で、LPH14を次のホログラムを記録する位置に移動するための制御信号を、ステージ駆動部206に入力する。次に、ステップ110で、次のホログラムを記録するための制御信号を、レンズ駆動部208、レーザ駆動部202及びシャッタ駆動部204に入力する。この制御信号に応じて各部が駆動され、ホログラムの記録動作が実施されて、次のホログラムが記録される。
【0171】
ステップ110で次のホログラムが記録されると、次にステップ116に進む。ステップ116では、算出された回折効率に基づいて、ホログラム素子54の追記条件を取得する「回折効率調整処理」を実行する。ステップ116で「回折効率調整処理」が終了すると、次にステップ112に進む。ステップ116の「回折効率調整処理」は、ステップ114の「回折効率調整処理」と同じ処理である。
【0172】
次に、ステップ112で、他に記録するホログラムがあるか否かを判断する。ここで肯定判定の場合には、ステップ108に戻って次のホログラムを記録する。一方、ステップ112で否定判定の場合には、全部のLED50についてホログラムが記録されたものとしてルーチンを終了する。
【0173】
(光起電力が生成する原理)
ここで、光起電力が生成する原理について説明する。
図16は信号光の照射により記録されたホログラムから回折光が再生される様子を示す模式図である。ホログラム記録層60にはホログラム素子54が記録されている。既に記録されたホログラム素子54に信号光を照射すると、太い矢印で図示した通り、ホログラム素子54によって回折光が再生される。再生された回折光は、ホログラム記録時の参照光に相当する光である。
【0174】
再生された回折光は、ホログラム素子54に対応するLED50に照射される。回折光が照射されたLED50に発生した光起電力を測定する。LED50に発生する光起電力は、再生される回折光の光強度に比例して増加する。再生される回折光の光強度は、ホログラム素子54の回折効率に比例して増加する。従って、LED50に発生する光起電力は、ホログラム素子54の回折効率に比例して増加する。
【0175】
(回折効率調整処理)
次に、図15のステップ114、ステップ116で実行される「回折効率調整処理」について説明する。上記の通り、LED50に発生する光起電力とホログラム素子54の回折効率とは比例関係にある。従って、光起電力と回折効率との関係に基づいて、光起電力の測定値から、既に記録されたホログラム素子54の回折効率が算出される。一方、感光体ドラム12の表面で得たい回折光強度は予め設定されている。設定された回折光強度に応じて、ホログラム素子54の「目標回折効率」が算出される。
【0176】
ホログラム記録後の回折効率が「目標回折効率」を下回る場合には、目標回折効率に到達するまで、繰り返しホログラムを追記する。これが「回折効率調整処理」である。図17は回折効率調整処理(プログラム)を実行するための処理ルーチンを示すフローチャートである。上述した通り、この処理ルーチンは、ホログラムの初回の記録が終了した後に開始される。記録されるホログラム素子54の全部に対し、即ち、露光に使用される全部のLED50に対して、下記の「回折効率調整処理」が実行される。
【0177】
まず、ステップ300で、計測対象のLED50に信号光を照射するための制御信号を、レーザ駆動部202、シャッタ駆動部204の各々に入力する。この制御信号に応じて、シャッタ駆動部204によりシャッタ102、シャッタ129は「開状態」とされ、シャッタ145は「閉状態」とされる。また、レーザ駆動部202によりレーザ光源100からレーザ光が発振されて、計測対象であるLED50に信号光が照射される。なお、参照光はシャッタ145により遮断される。
【0178】
次に、ステップ302で、計測対象のLED50の光起電力を測定するための制御信号を、光起電力測定部210に入力する。この制御信号に応じて、光起電力測定部210の測定信号が取得される。測定された光起電力から、ホログラム記録後の回折効率を算出する。なお、ホログラムの記録直後には、光起電力が最大となる位置にLPH14が保持されている。
【0179】
次に、ステップ304で、ホログラム記録後の回折効率と「目標回折効率」とを比較して、予め定めた「目標回折効率」に到達したか否かを判断する。ここで肯定判定の場合には、ルーチンを終了する。一方、ステップ214で否定判定の場合には、ステップ306に進む。
【0180】
次に、ステップ306では、ホログラムの追記により「目標回折効率」に到達するための、ホログラムの記録条件(追加露光条件)を設定する。設定されたホログラムの記録条件は、計測対象のLED50に対応付けてROM200B等の記憶装置に記憶される。
【0181】
次に、ステップ308では、設定された記録条件に従って追加露光を実施するための制御信号を、レーザ駆動部202及びシャッタ駆動部204に入力する。この制御信号に応じて、シャッタ102、シャッタ129、及びシャッタ145の各々は、シャッタ駆動部204により駆動されて「開状態」とされる。また、レーザ光源100がレーザ駆動部202により点灯駆動されて、レーザ光が発振する。信号光及び参照光の照射によりホログラムが追加露光される。
【0182】
なお、ホログラムの追加露光後には、シャッタ102がシャッタ駆動部204により駆動されて「閉状態」とされ、レーザ駆動部202により駆動されてレーザ光源100が消灯する。
【0183】
次に、ステップ310で、ホログラムの記録を終了するか否かを判断する。例えば、予め追加露光は1回限りと設定しておいてもよい。或いは、操作表示214によりユーザの指示を受け付け、受け付けた指示に応じてホログラムの記録を終了するか否かを判断してもよい。ここで肯定判定の場合には、ルーチンを終了する。一方、ステップ310で否定判定の場合には、ステップ300に戻って、ステップ300からステップ308までを繰り返す。
【0184】
図18はホログラムの追記により目標回折効率が達成される様子を示すグラフである。縦軸は光起電力を表し、単位は任意単位[a.u.]である。横軸はホログラムを記録した回数(モニタ回数)を表す。ここでは、光起電力が10[a.u.]の場合に「目標回折効率」が達成される。最初のホログラムの記録時(#1)には、光起電力が6[a.u.]であり、目標達成率は60%である。
【0185】
ホログラムの第1回追記時(#2)には、光起電力が8[a.u.]であり、目標達成率は80%である。ホログラムの第2回追記時(終了)には、光起電力が10[a.u.]であり、目標達成率は100%である。この通り、回折効率の計測とホログラムの追記とを繰り返し行うことで、光起電力が徐々に増加し「目標回折効率」が達成される。
【0186】
(参照光を照射する変形例)
上記では、信号光の照射により光起電力を発生させる場合について説明したが、参照光の照射により光起電力を発生させてもよい。図19は参照光の照射により記録されたホログラムから回折光が再生される様子を示す模式図である。ホログラム記録層60にはホログラム素子54が記録されている。既に記録されたホログラム素子54に参照光を照射すると、一部の参照光がホログラム素子54によって回折され、太い矢印で図示した通り、回折光が再生される。再生された回折光は、ホログラム記録時の信号光に相当する光である。
【0187】
回折されずにホログラム素子54を通過した参照光は、ホログラム素子54に対応するLED50に照射される。この参照光の照射によりLED50に発生した光起電力を測定する。LED50に発生する光起電力は、ホログラム素子54により再生される回折光の光強度に反比例して減少し、回折されずにホログラム素子54を通過した参照光に比例して増加する。再生される回折光の光強度は、ホログラム素子54の回折効率に比例して増加する。従って、LED50に発生する光起電力は、ホログラム素子54の回折効率に反比例して減少する。
【0188】
図20はホログラムの追記により目標回折効率が達成される様子を示すグラフである。縦軸は光起電力を表し、単位に任意単位[a.u.]である。横軸はホログラムを記録した回数(モニタ回数)を表す。ここでは、光起電力が0[a.u.]の場合に「目標回折効率」が達成される。最初のホログラムの記録時(#1)には、光起電力が4[a.u.]であり、目標達成率は60%である。
【0189】
ホログラムの第1回追記時(#2)には、光起電力が2[a.u.]であり、目標達成率は80%である。ホログラムの第2回追記時(終了)には、光起電力が略0[a.u.]であり、目標達成率は約100%である。この通り、回折効率の計測とホログラムの追記とを繰り返し行うことで、光起電力が徐々に減少し「目標回折効率」が達成される。
【0190】
以上の通り、参照光の照射により光起電力を発生させて「目標回折効率」が達成されたか否かを判断してもよい。この場合は、回折効率に反比例して減少する光起電力を計測することになる。一方、信号光の照射により光起電力を発生させて「目標回折効率」が達成されたか否かを判断する場合には、回折効率に比例して増加する光起電力を計測することになる。光起電力が増加して予め定めた値に飽和したとの判断の方が容易であり、信号光の照射により光起電力を発生させた方が、光起電力や目標達成率が正確に求められる。
【0191】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の半導体発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を防止することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0192】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。多重記録された複数のホログラムからは、別々の回折光がクロストークなく再生される。
【0193】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記露光装置を適用してもよい。
【0194】
また、上記の各実施の形態の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0195】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
62 スポット
70 端子
72 スイッチ
74 電圧計
76 接続切替手段
100 レーザ光源
102 シャッタ
104 1/2波長板
106 偏光ビームスプリッタ
108 レンズ
110 レンズ
112a ピンホール
112 空間フィルタ
114 ミラー
116 1/2波長板
118 偏光ビームスプリッタ
120 1/2波長板
122 ミラー
124 アパーチャ
126 レンズ
130 ミラー
132 レンズ用ステージ
134 レンズ
136 ステージ
140 レンズ
142 レンズ
144a ピンホール
144 空間フィルタ
146 レンズ
148 ステージ位置検出手段
202 レーザ駆動部
204 シャッタ駆動部
206 ステージ駆動部
208 レンズ駆動部
210 光起電力測定部
214 操作表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体発光素子を有する基板と、
前記基板上に配置されたホログラム記録層と、
少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定するように当該半導体発光素子の一対の電極の各々から引き出された複数の端子と、
を有するホログラム記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載のホログラム記録媒体を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されたホログラム記録媒体の前記複数の端子と電気的に接続されて、前記少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定する測定手段と、
信号光を照射する信号光照射手段と参照光を照射する参照光照射手段とを備え、前記ホログラム記録層に信号光と参照光とを照射して、前記ホログラム記録層に複数のホログラムを記録する記録手段と、
前記測定手段で測定された光起電力の値に基づいて前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する複数のホログラムを記録する記録条件を取得すると共に、取得された記録条件に基づいて前記複数のホログラムが記録されるように、前記保持手段、前記測定手段、前記信号光照射手段、及び前記参照光照射手段の各々を駆動制御する制御手段と、
を有するホログラム記録装置。
【請求項3】
前記制御手段が、
前記参照光照射手段から前記少なくとも1つの半導体発光素子に対し参照光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、
前記測定手段で測定される光起電力の値が増加するように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出することにより当該半導体発光素子に対応するホログラムを記録する記録条件を取得する、
請求項2に記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記前記測定手段で測定される光起電力の値が最大となるように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出する、請求項3に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記記録手段によりホログラムを記録し、
前記記録手段により記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた参照光または信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、
前記測定手段で測定された光起電力の値及び予め取得された光起電力と回折効率との関係に基づいて、前記記録されたホログラムの回折効率を取得し、
取得された回折効率に基づいて、予め定めた回折効率を有するホログラムが記録されるようにホログラムを追記する記録条件を取得する、
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のホログラム記録装置。
【請求項6】
前記記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定する、
請求項5に記載のホログラム記録装置。
【請求項7】
請求項1に記載のホログラム記録媒体を保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたホログラム記録媒体の前記複数の端子と電気的に接続されて、前記少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定する測定手段と、信号光を照射する信号光照射手段と参照光を照射する参照光照射手段とを備え、前記ホログラム記録層に信号光と参照光とを照射して、前記ホログラム記録層に複数のホログラムを記録する記録手段と、を備えたホログラム記録装置を制御するプログラムであって、
コンピュータを、
前記測定手段で測定された光起電力の値を取得する第1の取得手段、
前記測定手段で測定された光起電力の値に基づいて前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する複数のホログラムを記録する記録条件を取得する第2の取得手段、
取得された記録条件に基づいて前記複数のホログラムが記録されるように、前記保持手段、前記測定手段、前記信号光照射手段、及び前記参照光照射手段の各々を駆動制御する制御手段、
として機能させるプログラム。
【請求項8】
前記参照光照射手段から前記少なくとも1つの半導体発光素子に対し参照光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、
前記測定手段で測定される光起電力の値が増加するように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出することにより当該半導体発光素子に対応するホログラムを記録する記録条件を取得する、
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記前記測定手段で測定される光起電力の値が最大となるように前記参照光照射手段を駆動制御して、当該半導体発光素子の位置を検出する、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記記録手段によりホログラムを記録し、
前記記録手段により記録されたホログラムに対し当該ホログラムの記録に用いた参照光または信号光を照射して、前記測定手段により当該半導体発光素子に発生した光起電力を測定し、
前記測定手段で測定された光起電力の値及び予め取得された光起電力と回折効率との関係に基づいて、前記記録されたホログラムの回折効率を取得し、
取得された回折効率に基づいて、予め定めた回折効率を有するホログラムが記録されるようにホログラムを追記する記録条件を取得する、
請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
複数の半導体発光素子を有する基板と、
前記基板上に配置されたホログラム記録層と、
少なくとも1つの半導体発光素子に発生した光起電力を測定するように当該半導体発光素子の一対の電極の各々から引き出された複数の端子と、
を有し、
被露光面に前記複数の半導体発光素子の全部または一部に対応する集光点列が形成されるように、請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載のホログラム記録装置により前記ホログラム記録層に複数のホログラムが記録された、
露光装置。
【請求項12】
前記測定手段で光起電力が測定される半導体発光素子は、被露光面に集光点列を形成しない半導体発光素子である、請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の露光装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−54070(P2013−54070A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190082(P2011−190082)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】