説明

ホログラム記録媒体およびこれを用いたホログラム記録方法

【課題】(1)信号光の0次光成分を利用してサーボを行う場合には情報の記録再生に用いる装置のサーボ専用の光源を不要とすることができ、(2)また、反射型の記録媒体の場合には波長選択層を設けなくても反射層の乱反射に起因するノイズを抑制できるホログラム記録媒体を提供すること。
【解決手段】信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたことを特徴とするホログラム記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラム記録媒体およびこれを用いたホログラム記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィを利用して記録媒体に情報を記録するホログラム記録は、ホログラム記録は、信号光と参照光とを記録媒体に照射し、このときに形成される干渉縞を記録媒体に書き込むことにより行われる。このようなホログラム記録に用いられる記録媒体には、基板表面にサーボピットパターンが設けられ、その上に反射層、記録層をこの順に設けた反射型の記録媒体がある。
しかし、このような反射型記録媒体では、基板上にサーボピットパターンが設けられているため反射層の反射面が完全にはフラットではない。このため、情報の記録再生時に照射される光が反射層によって乱反射し、これがノイズの発生を招いてしまう。
【0003】
このような記録媒体の反射層からの乱反射を防止し、再生像に乗ってしまうノイズの量を削減するために、透明基板と、記録層と、透明基板と記録層との間に設けられ、第一の波長の光(サーボ光)を透過し、第二の波長の光(情報の記録再生に用いる光)を反射するフィルタ層(波長選択層)とからなる記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。この記録媒体では、フィルタ層によってサーボに必要なサーボ光を透過できる一方で、情報の記録再生に必要な光は反射されるため上述したようなノイズの発生を抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−265472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、サーボ専用の光源を別途用いる必要があり、記録再生装置のコストが高くなるという欠点がある。加えて、反射層の乱反射に起因するノイズ低減のために記録媒体に波長選択層を設けなければならず、記録媒体の製造コストが高くなる。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、(1)信号光の0次光成分を利用してサーボを行う場合には情報の記録再生に用いる装置のサーボ専用の光源を不要とすることができ、(2)また、反射型の記録媒体の場合には波長選択層を設けなくても反射層の乱反射に起因するノイズを抑制できるホログラム記録媒体提供することを課題とする。
また、本発明は、(3)従来よりもより簡素化・単純化された構成の記録再生装置での情報の記録等が可能なホログラム記録方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、
前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたことを特徴とするホログラム記録媒体である。
【0006】
このように、本発明の記録媒体では反射トラックが、記録層の信号光が入射する側に設けられているため、情報の記録や再生時に、信号光の0次光成分をこの反射トラックの反射面にほぼ対応するように信号光を照射すれば、反射トラックにより反射された信号光の0次光成分をサーボ信号光として利用できると共に、信号光の0次光成分以外の成分(高次光成分)により反射トラックの周囲の記録層に情報の記録を行うことができる。
また、本発明の記録媒体が、記録層の信号光が入射する側と反対側に反射層を設けた構成(反射型の記録媒体)の場合には、基板表面等にサーボピットパターンを設ける必要が無いために反射層の反射面をフラットにすることができる。このため情報の記録再生時に照射される光が反射層まで到達しても、反射層によって乱反射されることがない。
【0007】
<2>
前記情報の記録が、
光を照射する光源と、前記光源から照射される光を少なくとも前記信号光に変換する空間変調器と、前記空間変調器により変換された前記信号光を前記記録層に焦点が合うように収束させて照射する対物レンズとを少なくとも備え、
前記空間変調器および前記対物レンズを、前記信号光の少なくとも前記対物レンズと前記記録層との間の光軸が前記記録層の厚み方向と平行となるように配置された光学系を利用して行われ、
前記反射トラックが、前記記録層の平面方向に対して帯状に設けられ、且つ、下式(1)を満たすことを特徴とする<1>に記載のホログラム記録媒体である。
・式(1) λ/2≦d≦100λf/L
〔式(1)中、dは前記反射トラックの幅を表し、λは前記光源から照射される光の波長を表し、fは前記対物レンズの焦点距離を表し、Lは前記空間変調器における、前記信号光の光軸と直交する方向の幅を表す。
【0008】
このように、帯状の反射トラックの幅を所定の範囲内とすることにより、信号光のうち、情報の記録に必要な成分のみを過不足無く記録層に照射することができる。
【0009】
<3>
前記反射トラックの幅dが、10λf/Lよりも小さいことを特徴とする<2>に記載のホログラム記録媒体である。
このように、帯状の反射トラックの幅の上限値をさらに所定値以下に制限することにより、信号光の0次光成分の記録層への染み出しを防止することができる。
【0010】
<4>
信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたホログラム記録媒体を用い、
前記信号光の光軸と前記参照光の光軸とが、前記反射トラックの反射面と直交すると共に同軸上に位置し、且つ、前記信号光の0次光成分が前記サーボ信号光として利用されることを特徴とするホログラム記録方法である。
このように、本発明のホログラム記録方法では、信号光の光軸と参照光の光軸とが、ホログラム記録媒体の反射トラックの反射面と直交し、且つ、双方の光軸が同軸上に位置することにより、記録層に入射する光の光軸と、反射トラックから反射される光軸とが全て同軸上に位置するため、異なる機能・役割を有する光の光軸毎にレンズ等の光学部品やCCDカメラ等の光学素子を配置する必要性が無くなる。
【発明の効果】
【0011】
以上に説明したように本発明によれば、本発明は、(1)信号光の0次光成分を利用してサーボを行う場合には情報の記録再生に用いる装置のサーボ専用の光源を不要とすることができ、(2)また、反射型の記録媒体の場合には波長選択層を設けなくても反射層の乱反射に起因するノイズを抑制できるホログラム記録媒体、および、(3)従来よりもより簡素化・単純化された構成の記録再生装置での情報の記録等が可能なホログラム記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のホログラム記録媒体(以下、「記録媒体」と称す場合がある)は、信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたことを特徴とする。
本発明の記録媒体は、反射トラックが、記録層の信号光が入射する側に設けられているため、情報の記録及び/または再生時に、信号光の0次光成分をこの反射トラックの反射面にほぼ対応するように信号光を照射すれば、反射トラックにより反射された信号光の0次光成分をサーボ信号光として利用することによりサーボを行うことができる。このため、サーボ専用の光源を不要とすることができる。
また、本発明の記録媒体が、記録層に対して信号光が入射する側と反対側に反射層を設けた構成(反射型の記録媒体)の場合には、基板表面等にサーボピットパターンを設ける必要が無いために反射層の反射面をフラットにすることができる。それゆえ、反射層でノイズとなる乱反射が発生せず、乱反射を防止するために波長選択層を設ける必要がない。
なお、本発明の記録媒体が、信号光の0次光成分をサーボ信号光として利用して情報の記録再生を行う反射型の記録媒体である場合には、記録再生装置の構成をより簡素化・単純化でき、例えば、DVD等の光ディスク用の記録再生に利用されるようなより光学系(いわゆる無限光学系)も採用できる。
【0013】
一方、ホログラム記録においては高記録密度の達成も重要な課題であり、例えば、特開2000−66566号公報には、データの欠落を抑えて、信号光の画像エッジ部分(0次光成分を除く部分)を高密度で記録再生するために、記録媒体と、この記録媒体に信号光を照射する光源との間に、信号光の0次光成分は遮断し、一部に信号光の少なくとも一方向の空間周波数成分を透過させる光透過部を形成した遮光体を配置して記録再生を行う方法が提案されている。
このような遮光体を用いる方法では、信号光の光軸および記録媒体の2者間のアライメントのみならず、信号光の光軸、記録媒体に加えて遮光体の3者間のアライメントが要求されるため、高い精度が要求される。
しかしながら、本発明では、反射トラックの周囲の記録層に0次光成分を除いた信号光(高次光成分)が照射されるため、遮光体を用いることなく高密度で情報の記録や再生が可能である。
【0014】
−ホログラム記録媒体の構成−
次に、本発明の記録媒体の構成や、用いる材料についてより詳細に説明する。
本発明の記録媒体においては、記録層は、基板(あるいは基体)上に設けられていることが好ましい。
この場合、記録層と基板との間に反射層を設けた反射型の記録媒体とすることもできるし、反射層を設けない透過型の記録媒体とすることもできる。なお、反射型の記録媒体の場合には基板の両面に反射層および記録層を設けた両面記録が可能なタイプであってもよい。また、透過型の記録媒体の場合には、基板として、少なくとも参照光に対する透過性を有する材料からなるものが用いられる。
また、記録層を保護する保護層を、記録層の基板が設けられた側の面と反対側の面上に設けることができる。なお、保護層が、基板であってもよい(すなわち、1対の基板間に記録層が挟持された構成)。加えて、基板と、反射層や記録層、あるいは、反射層、記録層、保護層の各々の層の間の接着性等を確保する等の目的で必要に応じて中間層を設けることもできる。
【0015】
なお、いずれの層構成においても、記録層に対して、信号光が入射する側に反射トラックが設けられる。
例えば、基板上に反射層と、記録層と、保護層とがこの順に積層された反射型の記録媒体の場合、反射トラックは、記録層と保護層との界面や、保護層表面、あるいは、保護層内部に設けることができる。また、基板上に記録層と、保護層とがこの順に積層され、情報の記録再生に際しては、信号光が記録媒体の保護層が設けられた側の面から照射される透過型の記録媒体の場合、反射トラックは、記録層と保護層との界面や、保護層表面、あるいは、保護層内部に設けることができる。
【0016】
図1および図2は、本発明の記録媒体の一例を示す模式断面図であり、図1および図2中、10、11は記録媒体、20は基板、22は反射層、24は記録層、26は保護層、28A、28Bは反射トラックを示す。
ここで、図1に示す記録媒体10は、基板20の片面に反射層22、記録層24、および保護層26がこの順に積層され、記録層24および保護層26の界面に反射トラック28Aが配置された構成を有し、信号光は、記録媒体10の保護層26が設けられた面から入射する。また、図2に示す記録媒体11は、基板20の片面に反射層22、記録層24、および保護層26がこの順に積層され、保護層26の表面に反射トラック28Bが配置された構成を有し、信号光は、記録媒体11の保護層26が設けられた面から入射する。
【0017】
ホログラム記録媒体の形状としては特に限定されず、記録層が一定の厚みで2次元的に形成されているものであればディスク状、シート状、テープ状、ドラム状等、任意の形態を選択することができる。
しかしながら、既存の光記録媒体の製造技術や、記録再生システムを容易に利用できる点から、従来の光記録媒体に利用されているようなセンター部に穴を設けた円盤状であることが好ましい。
【0018】
(記録層)
記録層には、光の照射により情報の記録や再生が可能な公知のホログラム記録用の記録材料が利用でき、例えば、光を照射した際に透過率や屈折率が変化する材料や、体積収縮膨張等による凹凸変化が起こる材料などが利用できる。
なお、材料選択枝の幅の広さ等の観点からは、光を照射することにより屈折率が変化する光屈折率変化材料を用いることが好ましく、任意の形状に加工することが容易であることや、感応波長の調節が容易であることなどから、有機系の光屈折率変化材料を用いることが好ましい。
【0019】
記録層の膜厚は、実用上は3μm〜2mmの範囲内であることが好ましく、記録層に記録される干渉縞の間隔と、記録層の膜厚との関係により決定されるホログラム記録媒体のタイプにより、更に以下のような範囲内であることがより好ましい。
【0020】
すなわち、本発明のホログラム記録媒体が平面ホログラム(記録層に記録される干渉縞の間隔に比べて、記録層の膜厚が薄いか同程度の場合)の場合には、膜厚は3μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜20μmの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
一方、本発明のホログラム記録媒体が、体積ホログラム(記録層に記録される干渉縞の間隔に比べて、記録層の膜厚が同程度から数倍以上の場合)の場合には、膜厚は100μm〜2mmの範囲内であることが好ましく、250μm〜1mmの範囲内であることがより好ましい。
【0022】
−光屈折率変化材料−
次に、本発明のホログラム記録媒体に用いることができる光屈折率変化材料について詳細に説明する。本発明のホログラム記録媒体に用いることができる光屈折率変化材料は、光を照射することにより屈折率が変化する材料であれば特に限定されず、公知の材料を利用することができる。
例えば、無機材料では、チタン酸バリウムやニオブ酸リチウム、ケイ酸ビスマスなどの無機強誘電体結晶などを挙げることができる。しかしながら、本発明においては、形状加工の容易さや感応波長の調整が容易などの点から、有機材料系の光屈折率変化材料を用いることがより好ましい。さらに、本発明においては、屈折率を変化させる場合に外部電場が不要である光異性化基を含む高分子材料や低分子材料を用いることが好適である。
【0023】
なお、光源として比較的安価な半導体レーザが利用でき、他の光学素子等とも組み合わせて利用できることから、情報の記録/再生に用いる光としては、その波長が350から800nmの範囲内、より望ましくは、400から650nmの範囲内であることが望ましい。このため、本発明に用いられる光屈折率変化材料は、この波長域に応答して屈折率が変化する材料であることが好適である。
【0024】
次に、本発明において用いることができる有機材料系の光屈折率変化材料についてより詳細に説明する。
有機材料系の光屈折率変化材料としては、光を照射することにより、異性化反応を示す部分構造(例えば、シス−トランス異性や、シン−アンチ異性等)を含み、この部分構造の異性化により屈折率変化を引き起こす有機材料を用いることができる。
【0025】
本発明においては、光屈折率変化材料が、光照射によりシス−トランス異性化が起こるアゾベンゼン骨格(アゾ基の両端にベンゼン環を設けた構造)を含むことが好ましい。このようなアゾベンゼン骨格のシス−トランス異性化反応を以下の異性化反応例1に示す。
【0026】
【化1】

【0027】
また、光屈折率変化材料が高分子材料である場合には、アゾベンゼン骨格等を含む光異性化基(当該光異性化基とは、光を照射することにより、異性化反応を示す基を意味する)が側鎖部分に含まれていることが好ましい。このような高分子材料は、主鎖の構造と側鎖の構造とに分けて、多様な分子設計が可能であるため、吸収係数のみならず、感応波長域や、応答速度、記録保持性等のホログラム記録に必要な種々の物性を高いレベルで所望の値に調整することが容易であるというメリットがある。例えば、側鎖に、光異性化基に加えて、ビフェニル誘導体等の液晶性の線状メソゲン基を導入した場合には、光異性化基の光照射による配向変化を増強・固定化することができるため、吸収ロスを抑制することができる。
なお、アゾベンゼン骨格等を含む高分子材料として好適な例としては、特願2004−150801号公報、特願2004−113463号公報、特願2004−163889号公報、特願2004−83716号公報、特願2004−81670号公報、特願2004−135949号公報、特願2004−135950号公報、特願2004−81610号公報に記載の高分子材料が挙げられる。
以下に、本発明に用いられる光屈折率変化材料の一例として、アゾベンゼン骨格等を含む光異性化基が側鎖部分に含まれる高分子(以下、アゾポリマー(1)と称す場合がある)の構造式の一例を以下に示す。なお、以下の構造式においてnは1以上の整数を意味する。
【0028】
【化2】

【0029】
また、アゾベンゼン骨格を含むもの以外にも光屈折率変化材料としては、ジアリールエテン類を含む材料が利用できる。ジアリールエテン類はフォトクロミズムを示す。これはフルギドなどと同じく変換が光のみで起こる6π電子環状反応である。ジアリールエテン類はスチルベン類の一種であると言える。ジアリールエテン類のフォトクロミズムはトランス−シス異性化であり、その特徴は熱安定性および繰返し耐久性が高いことである。以下に代表的なジアリールエテン類の化学構造式の一例とその異性化反応例(異性化反応例2)とを示す。
【0030】
【化3】

【0031】
例えば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリメチルメタクリレート(PMMA)などにジアリールエテンを分散させた材料を記録層として形成したホログラム記録媒体では、波長が500nm付近の光を照射すると無色になり、波長が360nm付近の光を照射すると発色する。この吸収の変化を利用してホログラム記録を行うことができる。
【0032】
また、スピロピランを含む材料も光屈折率変化材料として利用できる。研究報告が最も多いフォトクロミック化合物はスピロピラン類である。スピロピラン類は一部実用化されているものもあり、最も期待されている化合物の一つである。以下に代表的なスピロピラン類の化学構造式の一例とその異性化反応例(異性化反応例3)とを示す。
【0033】
【化4】

【0034】
スピロピラン類は、光により青色を呈しコントラストが良好である。スピロピラン類を含む高分子材料は、一般に、紫外光で無色から発色をする、発色速度が速い、暗所に放置した時の消色は遅いといった特徴があり、このような特徴を有するスピロピラン類は本発明のホログラム記録媒体に用いる光屈折率変化材料として利用することができる。
【0035】
また、その他にもウラニン、エリトロシンB、エオシンYなどに代表されるキサンテン系色素を挙げることができる。以下に代表的なキサテン系色素の一例であるウラニンの化学構造式とその異性化反応例(異性化反応例4)とを示す。キサテン系色素を用いた場合には比較的強度の弱い光を用いてもホログラム記録媒体に対して情報を記録することができる。また、キサンテン系色素を用いてホログラム記録媒体を作製する場合には、例えば、PVAやPMMAなどにキサンテン系色素を分散させた材料を利用することができる。
【0036】
【化5】

【0037】
さらに、フルギドを含む材料も光屈折率変化材料として利用できる。以下に代表的なキフルキドの化学構造式の一例とその異性化反応例(異性化反応例5)とを示す。なお、フルキドは波長365nmの紫外線により発色し、波長515nmや532nmなどのグリーンの光により異性化するため、この特性を利用してホログラム記録媒体に適用することができる。
【0038】
【化6】

【0039】
なお、本発明に用いられる光屈折率変化材料が、アゾベンゼン骨格を有する材料以外のフォトクロミック化合物を含む高分子材料である場合、好適な例としては、特願2004−81666号公報に記載の材料が上げられる。さらに、他の光屈折率変化材料としては、特願2003−298936号公報、特願2003−300059号公報、特願2003−300057号公報、特願2004−88790号公報、特願2004−91983号公報に記載の材料を好ましく挙げることができる。
【0040】
−その他の成分(バインダー等)−
また、記録層には、必要に応じて、その他の成分、例えばバインダー樹脂を用いてもよい。
このようなバインダー樹脂としては、例えば、光学特性に優れたポリメタクリレート(PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)などが利用可能である。また、下記の構造式(1)に示すような側鎖にシアノビフェニルを持つポリエステル材料もバインダー樹脂として好適である。
【0041】
【化7】

【0042】
なお、構造式(1)中、nは1以上の整数を表す。このポリエステル材料は、ホログラム記録媒体に情報を記録/再生する際に利用する一般的な光の波長域において透過性を有する。また、光異性化基を有する光応答性高分子と併用する場合には、光異性化基の異性化に追随して複屈折が誘起できるため、光応答性高分子の高感度化に有効である。なお、当該併用とは、光異性化基を有する光応答性高分子と、構造式(1)で示されるポリエステルの物理的な混合のみならず、化学的な混合、すなわち、構造式(1)で示される繰り返し単位が、光異性化基を有する(高分子系の)光応答性高分子に含まれる(共重合体を形成している)場合も含まれる。
【0043】
−記録層の形成−
記録層の形成は、記録層材料として用いられる材料に応じて適宜公知の方法を利用でき、例えば、記録層を構成する材料を溶解させた塗布液を用いるスプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等の液相成膜や、蒸着法等を利用することができる。
【0044】
(基板/基体)
基板や基体としては、表面が平滑なものであれば各種の材料を任意に選択して使用することができる。例えば、金属、セラミックス、樹脂、紙等を用いることができる。また、その形状も特に限定されない。なお、既存の光記録媒体の製造技術や、記録再生システムを容易に利用できる点から、従来の光記録媒体に利用されているようなセンター部に穴を設けた円盤状の平坦な基板を用いることが好ましい。
【0045】
このような基板材料としては、具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
なお、基板表面には、一般的にトラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表す凹凸(プリグルーブ)が形成されるが、本発明においては、反射トラックが記録層の信号光が入射する側に設けられるため、基板が記録層に対して信号光が入射する側に設けられる場合を除いてはこのようなプリグルーブの形成は不要である。
【0046】
また、記録や再生に際し、基板を介して記録層に光を照射する場合には、使用する光(記録光および再生光)の波長域を透過する材料を用いる。この場合、使用する光の波長域(レーザー光の場合は、強度が極大となる波長域近傍)の透過率が90%以上であることが好ましい。
【0047】
なお、基板表面に反射層を設ける場合には、基板表面には平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、0.01μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0048】
(反射層)
反射層としては、レーザー光の反射率が70%以上である光反射性物質から構成されていることが好ましく、このような光反射性物質としては、例えば、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alあるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agあるいはこれらの合金である。
【0049】
反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。反射層の層厚は、一般的には10nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。
【0050】
(保護層)
保護層としては、記録層を通常の使用環境下において、機械的、物理的、化学的に保護できる材料および厚みからなるものであれば、公知の材料を用いることができる。例えば、一般的には、透明な樹脂や、SiO等の透明な無機材料を挙げることができる。
なお、記録や再生に際し、保護層を介して記録層に光を照射する場合には、使用する光の波長域を透過する材料を用いる。この場合、使用する光の波長域(レーザー光の場合は、強度が極大となる波長域近傍)の透過率が90%以上であることが好ましい。なお、これは、接着性向上等の目的で、記録層の光が入射する側の面に設けられる中間層についても同様である。
【0051】
保護層は、樹脂からなる場合には、予めシート状に形成されたポリカーボネートや三酢酸セルロース等からなる樹脂フィルムを用いることができ、この樹脂フィルムを記録層上に貼り合わせることにより保護層を形成する。貼り合わせに際しては、接着強度を確保するために熱硬化型やUV硬化型の接着剤を介して貼り合わせ、熱処理やUV照射により接着剤を硬化させることが好ましい。なお、保護層として用いられる樹脂フィルムの厚みは、記録層を保護できるのであれば特に限定されないが、実用上は30μm〜200μmの範囲が好ましく、50μm〜150μmの範囲がより好ましい。
あるいは、このような樹脂フィルムの代わりに、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を塗布形成することにより保護層を形成することもできる。
【0052】
また、保護層が、SiO、MgF、SnO、Si等の透明なセラミックスやガラス材料からなる場合には、スパッタリング法やゾルゲル法等を利用して保護層を形成することができる。なお、保護層として形成される透明無機材料の厚みは記録層を保護できるのであれば特に限定されないが、実用上は0.1μm〜100μmの範囲が好ましく、1μm〜20μmの範囲がより好ましい。
【0053】
(反射トラック)
反射トラックは、反射層と同様の材料を用いて蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティング等により形成することができる。記録媒体平面方向の反射トラックの形状については特に限定されず、従来と同様とすることができるが、例えば、図3に示すような形状が挙げられる。図3は本発明の記録媒体の反射トラックの形状を示す概略模式図であり、記録媒体平面方向における反射トラックの形状を示したものである。図3中、30は記録媒体、32は反射トラックを示す。
【0054】
反射トラックは部材上に直接設けてもよいが、部材表面に案内溝(グルーブ)を設けて、このグルーブ内に設けてもよい。また、反射トラックの反射面は、信号光の入射方向と直交するように配置されることが好ましい。
【0055】
(記録媒体の製造方法)
次に、上述したような構成を有する本発明のホログラム記録媒体の製造方法について説明する。
本発明のホログラム記録媒体が平面ホログラムである場合には、上述したように各層に用いる材料に応じて基板上に記録層等を順次積層することにより作製することができる。
例えば、基板上に記録層と保護層とを設けた構成からなるホログラム記録媒体の作製過程の主要な流れを例に挙げて簡潔に説明する。まず、ポリカーボネート基板に、高分子材料からなる光屈折率変化材料を溶媒に溶かした塗布溶液を用いてスピンコーティング法により所望の膜厚が得られるように記録層を形成し、十分に乾燥させる。次に、この記録層上にUV硬化型の接着剤をスピンコーティング法により均一に塗布した後、記録層と保護層形成用の三酢酸セルロース樹脂フィルムとを貼り合わせる。その後、UV光を照射して接着剤を固化させることにより、保護層/記録層/基板の構成からなるホログラム記録媒体を得ることができる。
なお、反射トラックは、例えば、記録層を形成した後、記録層と保護層とを貼り合わせる前に、記録層表面(あるいは、保護層の記録層と貼り合わせる面)にAl蒸着等により反射トラックを形成してもよいし、記録層と保護層とを貼り合わせた後に、保護層表面に同様にして反射トラックを形成してもよい。
【0056】
また、本発明のホログラム記録媒体が体積ホログラムである場合には、記録層を射出成形や、ホットプレスにより形成することができ、具体的には以下のようにして作製することができる。
【0057】
まず、射出成形を利用する場合には、例えば、以下のようにしてホログラム記録媒体を作製することができる。まず、射出成形により記録層となるディスク状の成形物を作製する。次に、このディスク状の成形物を1対のディスク状の透明基板で挟持してホットプレスにより貼り合わせ、ホットメルト接着する。
なお、射出成形工程では、原料である樹脂(少なくとも光屈折率変化材料を含む樹脂)を加熱溶融し、溶融樹脂を成形金型内に射出して、ディスク状に成形する。射出成形機としては、原料の可塑化機能と射出機能とが一体化されたインライン方式の射出成形機、可塑化機能と射出機能を分離させたプリプランジャー方式の射出成形機の何れも用いることができる。射出成形の条件等は、出射圧力1000〜3000kg/cm、出射速度5〜30mm/secとすることが好ましい。
また、ホットプレス工程では、射出成形工程で得られた板状の成形物を、1対のディスク状の透明基板で挟持して、真空下でホットプレスする。
【0058】
このようにして作製されるホログラム記録媒体は、基板上に記録層を成膜するのではなく、射出成形で別個独立に形成するので、記録層の厚膜化が容易で且つ大量生産にも適している。また、ホットプレスにより記録層を透明基板と貼り合わせるので、射出成形による成形物の残留歪みが均一化され、記録層を厚膜化しても、光吸収や散乱の影響で記録特性が損なわれることがない。
なお、反射トラックは、例えば、射出成形工程で得られた板状の成形物(記録層)の表面(媒体とした場合に信号光が入射する面)にAl蒸着等により反射トラックを形成してもよいし、記録媒体の透明基板が設けられた側の面から信号光が入射する場合には、記録媒体の透明基板側の面に同様にして反射トラックを形成してもよい。
【0059】
一方、ホットプレスを利用する場合には、例えば、以下のようにしてホログラム記録媒体を作製することができる。まず、テフロン(登録商標)シート等の離型性の高い基板(押圧部材)で粉末状の樹脂(少なくとも光屈折率変化材料を含む樹脂)を挟み込み、この状態で真空下でホットプレスして、記録層を直接成形する。
【0060】
なお、ホットプレス工程においては、真空ホットプレスを行うことが好ましい。この場合、1対の押圧部材間に粉末状の樹脂を試料として装填する。次に、気泡の発生を防止するために0.1MPa程度の減圧下とした状態で、所定の温度まで徐々に昇温し、押圧部材を介して試料を加圧する。この際の過熱温度は樹脂材料のガラス転移温度(Tg)以上の温度とし、プレス圧力は0.01〜0.1t/cmとするのが好ましい。所定時間、熱間加圧を行った後、加熱及び加圧を停止し、試料を室温まで冷却した後に取り出す。
【0061】
このような、ホットプレスを実施することにより、一対の押圧部材に挟まれた樹脂材料が加熱溶融され、これが冷却されて板状の記録層が得られる。最後に押圧部材を取り除くことで、光記録媒体が得られる。例えば、記録層をアゾポリマーで構成する場合、アゾポリマーはTgが約50℃と低いので、約70℃に加熱してホットプレスを行うことで、容易に記録層を所望の厚さに成形することができる。また、ホットプレスでは残留歪みは発生しない。
なお、必要に応じて、この記録層からなるホログラム記録媒体の耐傷性、耐湿性を高める等の目的で、保護層等を設けてもよい
【0062】
このようにして作製されるホログラム記録媒体は、基板上に記録層を成膜するのではなく、ホットプレスで別個独立に形成するので、記録層の厚膜化が容易である。また、ホットプレスにより記録層を成形するので、成形物の残留歪み等が発生せず、記録層を厚膜化しても、光吸収や散乱の影響で記録特性が損なわれることがない。
なお、反射トラックは、例えば、ホットプレス後に得られた板状の記録層の表面(媒体とした場合に信号光が入射する面)にAl蒸着等により反射トラックを形成することができる。
【0063】
<ホログラム記録方法>
次に、本発明のホログラム記録媒体を用いたホログラム記録方法について説明する。本発明のホログラム記録方法は、記録時には、信号光と参照光とを記録層の同一領域に同時に照射して記録する公知の方法が利用できる。また、再生時には、記録層の情報が記録された領域に参照光を照射して再生光(読み出し情報)を得る公知の方法が利用できる。
なお、本発明のホログラム記録方法においては、信号光の光軸と参照光の光軸とが、反射トラックの反射面と直交すると共に同軸上に位置し、且つ、前記信号光の0次光成分が前記サーボ信号光として利用されることが好ましい。
この場合、記録層に入射する光の光軸と、反射トラックから反射される光軸とが全て同軸上に位置するため 異なる機能役割を有する光の光軸毎にレンズ等の光学部品や光学素子を配置する必要性が無くなる。このため、従来よりもより簡素化・単純化された構成の記録再生装置によりホログラム記録媒体への情報の記録、および/または、記録された情報の再生を行うことができ、本発明においては、DVD等の光ディスク用の無限光学系を採用したような記録再生装置を利用することが好適である。
さらに、記録媒体として、反射型の記録媒体を用いれば、再生光および反射トラックから反射されたサーボ信号光の検出を1つの受光素子で行うこともできるため、記録再生装置の構成をより簡易化することができる。
【0064】
図4は本発明のホログラム記録方法に用いられる記録再生装置の一例を示す概略模式図であり、記録媒体として図1や図2に例示したような反射型の記録媒体を用いる無限光学系を採用した記録再生装置について示したものである。
図4中、100は記録再生装置、102は受光素子、104は光源、106はハーフミラー、108は平行光補正レンズ、110は空間光変調器、112は対物レンズ、116は光軸、200は反射型記録媒体を表す。
図4に示す記録再生装置100は、レーザーダイオード等の光源104と、光源104の光を照射する方向に反射面が斜めになるように配置されたハーフミラー106と、ハーフミラー106の反射面側に、光源104から照射され、ハーフミラー106によって反射された光の光軸116上に配置された平行光補正レンズ108、空間光変調器110および対物レンズ112と、ハーフミラー106の反射面と反対側の面で光軸116上に配置されたCCD等の受光素子102とから構成される。なお、平行光補正レンズ108、空間光変調器110および対物レンズ112は、ハーフミラー106の反射面側から離れる方向へと平行光補正レンズ108、空間光変調器110および対物レンズ112がこの順に配置されている。
また、情報の記録再生に際しては、対物レンズ112の空間光変調器110が設けられた側と反対側に、対物レンズ112の焦点が合う位置に記録層(図中不図示)が位置し、且つ、光軸116とその表面が直交するように反射型記録媒体200が配置される。
【0065】
ここで、情報の記録や再生は、光源104から照射された光が、ハーフミラー106により、反射型記録媒体200が配置された側に反射され、平行光補正レンズ108、空間光変調器110および対物レンズ112を通過して、反射型記録媒体200に照射されることにより行われる。
なお、光源104から照射された光は信号光と参照光とを兼ねるものであり、空間光変調器110を通過する際に、空間光変調器110の中央部分を通過する光を信号光とし、空間光変調器110の周囲部分を通過する光を参照光として利用する。すなわち、サーボ専用の光源が不要であるため装置構成が簡略化できる。このため、信号光と参照光との光軸は、図中の光軸116上に存在する。また、信号光の0次光成分も光軸116上に存在する。
【0066】
ここで、光源104から光が照射された際に、反射型記録媒体200の反射トラック(図中不図示)により反射された0次光成分は、対物レンズ112、空間光変調器110、平行光補正レンズ108、および、ハーフミラー106を通過して、受光素子102に入射するため、受光素子102によりトラッキング情報を得ることができる。
また、参照光のみを照射した場合、再生光も同様の経路を経て、受光素子102により検出し、情報を再生することができる。このため、トラッキング情報(反射型記録媒体200から反射された0次光成分)の受光と再生光とを同一の受光素子を用いて行うことができるため、装置構成が簡略化できる。
【0067】
なお、図4に例示したような記録再生方法では、同一の光軸上にサーボ信号光(信号光の0次光成分)と信号光とが共存するため、情報の記録や再生およびトラッキング情報の検出は、タイムシェアリングで行われる。
ここで、情報の記録時には空間光変調器110が記録しようとする情報に対応した表示となるが、トラッキング時には空間光変調器110は全面白表示であることが好ましい。
【0068】
なお、反射型記録媒体として図3に例示したような、記録媒体の直径方向に幅を有する反射トラックにおいては、反射トラックの幅dは、具体的には下式(1)を満たすことが特に好ましい。
・式(1) λ/2≦d≦100λf/L
ここで、式(1)中、λは、光源104から照射される光(信号光)の波長、fは対物レンズ112の焦点距離、Lは空間光変調器110における信号光の光軸116と直交する方向の幅を表す。なお、Lは、より具体的には、信号光の光軸116と直交する断面が正方形における一辺の長さに相当する。
上記式(1)を満たせない場合には情報の記録が困難になる。反射トラックの幅dがλ/2を下回る場合には0次光が記録層に染み出し、結果としてSNRを劣化させてしまう。
また、反射トラックの幅dが100λf/Lを上回ると、信号光の必要なフーリエ周波数成分を記録層に照射することができず、結果としてSNRを劣化させる。より高SNRで信号を記録し読み取るには信号光のフーリエスペクトルを十分記録層に照射できるために、反射トラックの幅dの上限値は10λf/L以下であることが望ましい。
【0069】
なお、式(1)に示される関係式を満たすことによる同様の効果は、図3に示すように反射トラックが渦巻き状の帯として設けられる場合に限らず記録層の平面方向に対して帯状に設けられている場合においては、情報の記録に際して図4に示すような光学系のみならず、以下のような光学系においても適用可能である。
すなわち、光を照射する光源と、前記光源から照射される光を少なくとも前記信号光に変換する空間変調器と、前記空間変調器により変換された前記信号光を前記記録層に焦点が合うように収束させて照射する対物レンズとを少なくとも備え、前記空間変調器および前記対物レンズを、前記信号光の少なくとも前記対物レンズと前記記録層との間の光軸が前記記録層の厚み方向と平行となるように配置された光学系においても、式(1)の関係式が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の記録媒体の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の記録媒体の他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の記録媒体の反射トラックの形状を示す概略模式図である。
【図4】本発明のホログラム記録方法に用いられる記録再生装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0071】
10、11 記録媒体
20 基板
22 反射層
24 記録層
26 保護層
28A、28B 反射トラック
30 記録媒体
32 反射トラック
100 記録再生装置
102 受光素子
104 光源
106 ハーフミラー
108 平行光補正レンズ
110 空間光変調器
112 対物レンズ
116 光軸
200 反射型記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、
前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたことを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項2】
前記情報の記録が、
光を照射する光源と、前記光源から照射される光を少なくとも前記信号光に変換する空間変調器と、前記空間変調器により変換された前記信号光を前記記録層に焦点が合うように収束させて照射する対物レンズとを少なくとも備え、
前記空間変調器および前記対物レンズを、前記信号光の少なくとも前記対物レンズと前記記録層との間の光軸が前記記録層の厚み方向と平行となるように配置された光学系を利用して行われ、
前記反射トラックが、前記記録層の平面方向に対して帯状に設けられ、且つ、下式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録媒体。
・式(1) λ/2≦d≦100λf/L
〔式(1)中、dは前記反射トラックの幅を表し、λは前記光源から照射される光の波長を表し、fは前記対物レンズの焦点距離を表し、Lは前記空間変調器における、前記信号光の光軸と直交する方向の幅を表す。
【請求項3】
前記反射トラックの幅dが、10λf/Lよりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項4】
信号光と参照光とを同時に照射することにより情報が記録される記録層と、サーボ信号光を反射する反射トラックとを備え、前記反射トラックが、前記記録層に対して前記信号光が入射する側に設けられたホログラム記録媒体を用い、
前記信号光の光軸と前記参照光の光軸とが、前記反射トラックの反射面と直交すると共に同軸上に位置し、且つ、前記信号光の0次光成分が前記サーボ信号光として利用されることを特徴とするホログラム記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−140303(P2007−140303A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336351(P2005−336351)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】