説明

ホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体

【課題】記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、保存安定性に優れた、ホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】イソシアネート基を有する化合物、イソシアネート反応性官能基を有する化合物、重合性モノマー、光重合開始剤、及び、希土類系触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録媒体用組成物及びそれを用いたホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体のさらなる大容量化、高密度化に向けて、光の干渉による光強度分布に応じて記録層の屈折率を変化させ、ホログラムとして情報を記録するホログラム方式の光記録媒体が開発されている。
中でも、干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上、又は1μm以上程度の膜厚を有する)ホログラムを体積型ホログラムという。なお、膜厚が大きい方が膜厚方向に記録を行えるために、高密度での記録が可能である。公知の体積型ホログラム記録材料の例としては、湿式処理や漂白処理が不要なライトワンス形式があり、その組成としては、樹脂マトリックスに光活性化合物を相溶させたものが一般的である。例えば、樹脂マトリックスに、光活性化合物として、ラジカル重合やカチオン重合可能なモノマーを組み合わせたフォトポリマー方式が挙げられる(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
ホログラム記録における情報の記録時、物体光及び参照光が照射されると、記録層には明部と暗部からなる干渉縞が形成される。例えば、光活性化合物がラジカル重合性化合物である場合、明部では光重合開始剤が光を吸収し、ラジカル活性種となりラジカル重合性化合物の重合が起こる。ラジカル重合が進むと、明部と暗部にラジカル重合性化合物の濃度勾配が生じる。この濃度勾配によってラジカル重合性化合物の、暗部から明部への拡散が生じ、明部と暗部は異なる化学種により構成され、異なる屈折率を持つようになる。ホログラム記録媒体は、この屈折率差を情報として保持する。
【0004】
フォトポリマー方式は、高回折効率と乾式処理を両立でき得る実用的で有望な方式であるが、記録に際して高い感度、十分な回折効率、高S/N比を有し、高い多重度を達成する組成が求められており、さらにホログラム記録媒体の安定性や信頼性に優れるものが望まれている。それらを達成するためにホログラム記録用組成物の組成やホログラム記録媒体の製法について種々検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献3には、三次元架橋マトリックス(樹脂マトリックス)構造中の鎖長・構造を最適化することにより、マトリックスポリマー及び書き込みモノマー(光活性化合物)の適合性を犠牲にすることなく、ホログラムのより優れたコントラスト比及び改善された明るさを可能にすることが記載されている。
ここで、樹脂マトリックスとしてポリウレタン樹脂等を採用する場合、マトリックスポリマーの生成を促進するために、ジラウリン酸ジブチル錫等の錫(Sn)系の硬化触媒が用いられることが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−352303号公報
【特許文献2】特開2005−43862号公報
【特許文献3】特開2010−84147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の引用文献3に記載のホログラム記録媒体では、記録波長付近に吸収極大を有する増感色素を添加しているため、十分に膜厚が厚いホログラム記録媒体では記録波長に対する透過率が低くなってしまい、厚みに対して十分な回折効率を得ることができないという課題があった。また当該ホログラム記録媒体では保存安定性が十分でないという課題があった。
【0008】
さらに、本発明者等の検討によれば、特許文献1及び特許文献3のように、マトリックス硬化触媒として錫(Sn)系の硬化触媒を用いた場合、ホログラム記録媒体の保存中にホログラム記録媒体の記録特性が悪化し、保存安定性(シェルフライフ)が低下することが判明した。
以上に鑑み、本発明の課題は、記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、保存安定性に優れたホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を行なった結果、硬化触媒として、ランタン(La)系触媒やプラセオジム(Pr)系触媒などの希土類系触媒を用いることにより、記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、さらにホログラム記録媒体とした際に濁りが生じることがない、ホログラム記録媒体用組成物とできることを見出した。
本発明の要旨は、イソシアネート基を有する化合物、イソシアネート反応性官能基を有する化合物、重合性モノマー、光重合開始剤、及び希土類系触媒を含有することを特徴とするホログラム記録媒体用組成物に存する。
【0010】
前記希土類系触媒が、ランタノイド系触媒であることが好ましく、前記ランタノイド系触媒が、ランタン系触媒及び/又はプラセオジム系触媒であることが好ましい。前記重合性モノマーが、ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
本発明の別の要旨は、記録層に上述のホログラム記録媒体用組成物を用いたことを特徴とするホログラム記録媒体に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明の新規な触媒を用いることにより、ホログラム記録媒体組成物を用いた記録層の保存安定性を優れるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1及び実施例2、並びに比較例1の保存安定性試験における、M/#残存率と感度残存率を示した図である。
【図2】実施例1及び実施例2、並びに比較例1において、ホログラム記録に用いた装置の構成の概要を示す模式図であり、(a)図は装置全体を示す図、(b)図はLEDユニットの表面を示す図、(c)図はLEDの配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に例示する物や方法等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
1.ホログラム記録媒体用組成物
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、
(1)イソシアネート基を有する化合物(以下、「成分(1)」と記載することがある。)、
(2)イソシアネート反応性官能基を有する化合物(以下、「成分(2)」と記載することがある。)、
(3)重合性モノマー(以下、「成分(3)」と記載することがある。)、
(4)光重合開始剤(以下、「成分(4)」と記載することがある。)、
(5)希土類系触媒(以下、「成分(5)」と記載することがある。)を含有することを特徴とする。
【0014】
以下、それぞれについて説明する。
1−1.イソシアネート基を有する化合物
イソシアネート基を有する化合物は、後述の硬化触媒(成分(5))の存在下で、イソシアネート反応性官能基を有する化合物(成分(2))と反応し、樹脂マトリックスを構成する。
【0015】
イソシアネート基を有する化合物の分子内のイソシアネート基の割合は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは47質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。下限は、通常0.1質量%であり、好ましくは1質量%である。イソシアネート基の割合が上記の上限値より多い場合には、ホログラム記録媒体とした際に濁りが生じやすくなり、光学的均一性を乱す場合がある。また、上記割合が低いと樹脂マトリックスの硬度やガラス転移温度が低くなり、記録が不安定になったり、消失する場合がある。本発明におけるイソシアネート基の割合は、使用するイソシアネート基を有する化合物の全体の中のイソシアネート基の割合を示す。
イソシアネート基を有する化合物に占めるイソシアネート基の割合は次式から求められる。
【0016】
42(イソシアネート基の分子量)×イソシアネート基の数/イソシアネート基を有する化合物の分子量×100
イソシアネート基を有する化合物の種類に特に制限はなく、例えば芳香族、芳香脂肪族、脂肪族、又は脂環式の骨格を有し得る。また、イソシアネート基を有する化合物は分子内にイソシアネート基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び分子内に3つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物、又は分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び分子内に2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物で得られる三次元架橋マトリックスによれば、優れた記録保持性を有する記録層を得ることができる。
【0017】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアン酸、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸オクチル、ジイソシアン酸ブチル、ジイソシアン酸ヘキシル(HMDI)、イソホロジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン及び任意の所望の異性体含量を有するその混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフレチレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0018】
また、ウレタン、ウレア、カルボジイミエド、アクリルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレットジオン及び/又はイミノオキサジアジンジオン構造を有するイソシアネート誘導体の使用も可能である。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の中でも着色し難いため、脂肪族のものが好ましい。
【0019】
1−2.イソシアネート反応性官能基を有する化合物
本発明におけるイソシアネート反応性官能基を有する化合物とは、イソシアネート基を有する化合物との鎖延長反応に関与する活性水素(イソシアネート反応性官能基)を有する化合物のことである。イソシアネート反応性官能基としては例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。イソシアネート反応性官能基を有する化合物は分子内にイソシアネート反応性基を1つ有するものであってもよく、2つ以上を有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。なお、2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する場合には、1つの分子に含まれるイソシアネート反応性官能基は1種類であってもよく、また複数種類であってもよい。
【0020】
上述したように、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び3つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物、又は3つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物で得られる三次元架橋マトリックスによれば、優れた記録保持性を有する記録層を得ることができる。
【0021】
・水酸基を有する化合物
水酸基を有する化合物は1分子中に水酸基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上の水酸基を有するものが好ましい。その例として、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、又はこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;多官能ポリオキシブチレン;多官能ポリカプロラクトン;多官能ポリエステル;多官能ポリカーボネート;多官能ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
水酸基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均分子量で通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。下限値未満では、架橋密度が上がるために、樹脂マトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、上限値より大きいと、他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるために樹脂マトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
【0023】
・アミノ基を有する化合物
アミノ基を有する化合物は1分子中にアミノ基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のアミノ基を有するものが好ましい。その例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン;イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環族アミン;m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミンなどの芳香族アミン;等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0024】
アミノ基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均分子量で通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。下限値未満では、架橋密度が上
がるために、樹脂マトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、上限値より大きいと、他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるために樹脂マトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
【0025】
・メルカプト基を有する化合物
メルカプト基を有する化合物は1分子中にメルカプト基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のメルカプト基を有するものが好ましい。その例としては、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0026】
メルカプト基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均分子量で通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。下限値未満では、架橋密度が上がるために樹脂マトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、上限値より大きいと、他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるために樹脂マトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
【0027】
1−3.重合性モノマー
重合性モノマーとは後述の光重合開始剤によって重合され得る化合物をいう。本発明のホログラム記録媒体用組成物に使用される重合性モノマーの種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能である。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。これらは、何れを使用することもでき、また二種以上を併用してもよい。ただし、イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物がマトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
【0028】
・カチオン重合性モノマー
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和結合化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。上記のカチオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0029】
・アニオン重合性モノマー
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
炭化水素モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0030】
極性モノマーの例としては、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、ビニル
ケトン類、イソプロペニルケトン類、その他の極性モノマーなどが挙げられる。
上記例示のアニオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
・ラジカル重合性モノマー
ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類、スピロ環含有化合物等が挙げられる。上記例示のラジカル重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、本明細書において、メタクリル及びアクリルの総称を(メタ)アクリルと記載する。
上記の中でも、ラジカル重合する際の立体障害の点から(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
【0032】
・重合性モノマーの分子量
本発明のホログラム記録媒体用組成物に用いる重合性モノマーは、通常分子量が80以上であり、好ましくは150以上、より好ましくは300以上である。また通常3000以下であり、好ましくは2500以下、より好ましくは2000以下である。分子量が小さすぎると、ホログラムの情報記録時の光照射の重合に伴う収縮率が大きくなってしまう可能性がある。また分子量が大きすぎると、ホログラム記録媒体用組成物を用いた記録層中での重合性モノマーの移動度が低く、拡散が起こりにくくなり、十分な回折効率が得られない場合がある。
【0033】
・重合性モノマーの屈折率
上記重合性モノマーは、ホログラム記録媒体への照射光波長(記録波長等)における屈折率が通常1.50以上、好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.55以上であり、通常1.80以下、好ましくは1.78以下である。屈折率が過度に小さいと回折効率が十分でなく、多重度が十分とならない場合がある。また、屈折率が過度に大きいとマトリックス樹脂との屈折率差が大きくなりすぎて散乱が大きくなることにより透過度が低下して、記録や再生に際してより大きなエネルギーを要することになる。なお、屈折率は短い波長で評価すると大きい値を示すが、短波長で相対的に大きい屈折率を示すサンプルは、長波長でも相対的に大きい屈折率を示し、その関係が逆転することはない。従って、記録波長以外の波長で屈折率を評価し、記録波長での屈折率を予測することも可能である。
【0034】
上記の屈性率の高い重合性モノマーとして、分子内にハロゲン原子(ヨウ素、塩素、臭素など)を有する化合物や複素原子(窒素、硫黄、酸素など)を有する化合物が好ましい。中でも複素環構造を有するものがより好ましい。
なお、これらの化合物は溶媒やマトリックスへの溶解性を確保するために、分子内に含まれる複素環構造中の複素原子は2個以下であることが好ましい。3個以上である場合には、溶解性が低下し、均一な記録層を得られなくなる可能性がある。また分子内の複素環の構造規則性が高いとスタッキングによる着色や溶解低下が起こる場合があることから、中でも2以上の環が縮合したヘテロアリール基であることがより好ましい。
【0035】
好ましい重合性モノマーの例として、特開2010−018606号公報に記載の、下記(式a)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化1】

【0037】
((式a)において、Aは置換基を有していてもよい環であり、
Arは置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合した(ヘテロ)アリール基であり、Rは水素又はメチル基であり、
nは1〜7の整数であり、
nが2以上の場合、複数のArは同一であっても異なっていてもよい。
但し、Aが芳香族複素環であり、かつ、Arが置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合したヘテロアリール基である場合には、A及びArの各々が連結している構造において、互いに直接連結している、A及びArの各々の構造中の部分構造は、ヘテロ原子を含まない。)
【0038】
上記(式a)で表される化合物としては、例えば、2−(1−チアンスレニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2−(2−ベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2−(4−ジベンゾフラニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2−(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、3−(3−ベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、3−(4−ジベンゾフラニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、3−(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−(1−チアンスレニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2、4−ビス(1−チアンスレニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2、4−ビス(2−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2、4−ビス(3−ベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2、4−ビス(4−ジベンゾフラニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、2、4−ビス(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−メチル−2、6−ビス(1−チアンスレニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−メチル−2、6−ビス(2−ベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−メチル−2、6−ビス(3−ベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−メチル−2、6−ビス(4−ジベンゾフラニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、4−メチル−2、6−ビス(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0039】
・重合性モノマーのモル吸光係数
上記重合性モノマーは、ホログラムの記録波長における、モル吸光係数が100L・mol−1・cm−1以下であることが好ましい。モル吸光係数が100L・mol−1・cm−1より大きいと、媒体の透過率が低くなってしまい、厚みに対して十分な回折効率を得ることができなくなってしまう可能性がある。
【0040】
1−4.光重合開始剤
光重合開始剤とは、光によって化学反応を起こすカチオン、アニオン、ラジカルを発生するものをいい、上述の重合性モノマーの重合に寄与する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、重合性モノマーの種類等に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、光重合開始剤として、少なくともオキシムエステル系光重合開始剤及び/又はホスフィンオキシド系光重合開始剤を1種以上用いる。
【0041】
光重合開始剤の全量に対して、オキシムエステル系光重合開始剤及び/又はホスフィンオキシド系光重合開始剤を0.003質量%以上用いることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。下限値以上とすることにより、本願発明の効果が得られやすくなる。
【0042】
・オキシムエステル系光重合開始剤
上記のオキシムエステル系光重合開始剤は、構造の一部に−C=N−O−を有していればよく、中でも記録感度が優れているため、下記(式d)又は(式f)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
((式d)中、Xは単結合;置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基−(CH=CH)―、置換基を有しても良いアルキニ
レン基―(C≡C)−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基;を表す。
【0045】
は芳香環及び/又はヘテロ芳香環を含む1価の有機基を表し、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR
33、−N(OR34)−CO−R35及び下記(式e)で表される基(R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表す。
【0046】
【化3】

【0047】
((式e)中、R30及びR31は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
は、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
【0048】
【化4】

【0049】
((式f)中、Rは、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜25のアルケニル基、炭素数3〜20のヘテロアリール基又は炭素数4〜25のヘテロアリールアルキル基;もしくはY又はZと結合し、環を形成する基を示す。
は、炭素数2〜20のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を示し、これらはいずれも置換基を有していてもよい。
は、置換基を有していてもよい、2個以上の環が縮合してなる、2価の芳香族炭化水素基、及び/又は芳香族複素基を示す。
Zは、置換基を有していてもよい芳香族基を示す。)
【0050】
上記の(式d)又は(式f)で示される化合物の中でも、ケトオキシム構造を有するものがより好ましい。具体例としては、9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバソール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン、1−[9−エチ
ル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバソール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)グルタル酸メチル、もしくは特開2010−8713号公報、特開2009−271502号公報に記載の化合物などが挙げられる。
【0051】
・その他の光重合開始剤
光重合開始剤として、上記オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を併用することができる。例えば、下記のカチオン光重合開始剤、アニオン光重合開始剤、及びラジカル光重合開始剤は、使用する重合性モノマーに対応するものであれば、何れを使用することもできる。これらは何れかを単独で、又は二種以上を併用してもよい。
【0052】
ただし、上述のマトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、ラジカル光重合開始剤を使用することが好ましい。中でも、ホスフィンオキシド化合物がより好ましい。
また、光重合開始剤としては特に記録波長におけるモル吸光係数が1000L・mol−1・cm−1以下である化合物がより好ましい。モル吸光係数が1000L・mol−1・cm−1より大きいと十分な回折効率を得られる量を混合した場合、記録波長におけるホログラム記録媒体の透過率が低下してしまう可能性がある。
【0053】
(カチオン光重合開始剤)
カチオン光重合開始剤は、公知のカチオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体例としては、SbF、BF、AsF、PF、CFSO、B(C等のアニオン成分と、ヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物が挙げられる。中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が好ましい。上記例示したカチオン光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
(アニオン光重合開始剤)
アニオン光重合開始剤は、公知のアニオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としてはアミン類等が挙げられる。アミン類の例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のアミノ基含有化合物、及びこれらの誘導体;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、及びその誘導体;等が挙げられる。上記例示したアニオン光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0055】
(ラジカル光重合開始剤)
ラジカル光重合開始剤は、公知のラジカル光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、ホスフィンオキシド化合物、アゾ化合物、アジド化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。上記例示したラジカル光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述したように、中でもホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0056】
ホスフィンオキシド化合物としては、本願発明の目的及び効果を損なわない限り、その種類に特に制限はないが、中でもアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
アシルホスフィンオキシド化合物の例としては、下記(式b)で示されるモノアシルホスフィンオキシド、又は下記(式c)で示されるジアシルホスフィンオキシドが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
【化5】

【0058】
((式b)中、Rは、炭素数1〜18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;、一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基;を表す。
【0059】
は、フェニル基;ナフチル基;ビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換さ
れている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基;炭素数1〜18のアルコキシ基;フェノキシ基;ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基;を示す。なお、R及びRはリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0060】
は、炭素数1〜18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O若しくはSを含有する5員若しくは6員の複素環の基;又は、下記(式b-1)で示
される基;である。
【0061】
【化6】

【0062】
((式b-1)中、Bは炭素数2〜8のアルキレン基もしくはシクロへキシレン基;非
置換又はハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されているフェニレン基又はビフェニレン基;を表す。R7'及びR8'は、上述の(式b)におけるR7及びRで説明したものと同様の基を示す。なお、(式b)で示される
分子中において、R7及びR7'、R及びR8'は同一であってもよく、また異なってい
てもよい。))
【0063】
【化7】

【0064】
((式c)中、R10は、炭素数1〜18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基、炭素数1〜18のアルコキシ基、もしくはフェノキシ基;ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、もしくはシクロヘキシルオキシ基;を示す。
【0065】
11及びR12は互いに独立に炭素数1〜18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もし
くはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基;を表す。)
【0066】
上記(式b)又は(式c)で示される化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルエトキシホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペンタ−1−イル)−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(2,4−ジペンチルオキシフェニル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
上記の中でも、優れた記録感度を得られるため、モノアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0067】
1−5.希土類系触媒
マトリックス硬化触媒として作用する希土類系触媒としては、希土類元素を含有する構造を有し、イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物の反応を促進するものが好適に用いられる。
【0068】
希土類元素は、周期表3A族に属するスカンジウム、イットリウム及びランタノイドに属するランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの17元素である。このうち、ホログラム記録媒体の保存安定性(シェルフライフ)の観点から、ランタノイドに属する元素を含有する触媒が好ましい。中でも、軽希土を含有する触媒が好ましく、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)を含有する触媒がさらに好ましい。
【0069】
ランタン(La)を含有する触媒としては酢酸ランタン、炭酸ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、シュウ酸ランタン、リン酸ランタン、トリフルオロ酢酸ランタン、ステアリン酸ランタン、ナフテン酸ランタン、ネオデカン酸ランタン、2−エチルへキサン酸ランタン、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、クロラニル酸ランタン、塩化ランタン、ヨウ化ランタン、フッ化ランタン、臭化ランタン、酸化ランタン、水酸化ランタン、メトキシランタン、エトキシランタン、イソプロポキシランタン、ブトキシランタン、エチレンジアミン四酢酸ランタン、エチレンジアミン五酢酸ランタン、ニトリロ三酢酸ランタン、2,4−ペンタンジオナトランタン、3−メチルー2,4−ペンタンジオナトランタン、2,3-ペンタンジオナトランタン等が挙げられる。
【0070】
中でも樹脂マトリックスとの相溶性の面から有機化合物を配位子として有する化合物が好ましく、希土類元素と安定な錯体を形成する、キレート化合物を配位子として有する化合物がより好ましい。上記の硬化触媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
プラセオジム(Pr)を含有する触媒としては酢酸プラセオジム、炭酸プラセオジム、硝酸プラセオジム、硫酸プラセオジム、シュウ酸プラセオジム、リン酸プラセオジム、トリフルオロ酢酸プラセオジム、ステアリン酸プラセオジム、ナフテン酸プラセオジム、ネオデカン酸プラセオジム、2−エチルへキサン酸プラセオジム、トリフルオロメタンスル
ホン酸プラセオジム、クロラニル酸プラセオジム、塩化プラセオジム、ヨウ化プラセオジム、フッ化プラセオジム、臭化プラセオジム、酸化プラセオジム、水酸化プラセオジム、メトキシプラセオジム、エトキシプラセオジム、イソプロポキシプラセオジム、ブトキシプラセオジム、エチレンジアミン四酢酸プラセオジム、エチレンジアミン五酢酸プラセオジム、ニトリロ三酢酸プラセオジム、2,4−ペンタンジオナトプラセオジム、3−メチルー2,4−ペンタンジオナトプラセオジム、2,3-ペンタンジオナトプラセオジム等が挙げられる。
【0072】
中でも樹脂マトリックスとの相溶性の面から有機化合物を配位子として有する化合物が好ましく、希土類元素と安定な錯体を形成する、キレート化合物を配位子として有する化合物がより好ましい。上記の硬化触媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
1−6.その他
本発明におけるホログラム記録媒体用組成物は上述の成分(1)〜(5)を含むことを特徴とするが、本発明の主旨に反しない限り、その他の成分を含有することができる。
【0073】
・その他の触媒
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、反応速度の調整のために、前記のマトリックス硬化触媒とともに他の硬化触媒を用いることもできる。併用可能な触媒としては、本発明の主旨に反しない限り特に制限はないが、ビスマス系触媒や、構造の一部にアミノ基を有する化合物を使用することが好ましい。
【0074】
ビスマス系触媒の例としては、ビスマス元素を含有する触媒であって、イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物の反応を促進するルイス酸として働く化合物であれば特に制限はない。例えば、トリス(2−エチルヘキサナート)ビスマス、トリベンゾイルオキシビスマス、三酢酸ビスマス、トリス(ジメチルジオカルバミン酸)ビスマス、水酸化ビスマス、トリフェニルビスマス(V)ビス(トリクロロアレタート)、トリス(4−メチルフェニル)オキソビスマス(V)、トリフェニルビス(3−クロロベンゾイルオキシ)ビスマス(V)等が挙げられる。
【0075】
中でも触媒活性の面から3価のビスマス化合物が好ましく、カルボン酸ビスマス、一般式Bi(OCOR)(Rは直鎖、分岐のアルキル基、シクロアルキル基、あるいは置換または無置換の芳香族基)で表されるものがより好ましい。上記のビスマス系触媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0076】
構造の一部にアミノ基を有する化合物の例としては、トリエチルアミン(TEA)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン 1,3−ジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン(TMHMDA)、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン(PMDPTA)、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N’−ジメチルピペラジン(DMP)、N,−メチル、N’−(2ジメチルアミノ)−エチルピペラジン(TMNAEP)、N−メチルモルホリン(NMMO)、N・(N’,N’−ジメチルアミノエチル)−モルホリン(DMAEMO)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(BDMEE)、エチレングリコールビス(3−ジメチル)−アミノプロピルエーテル(TMEGDA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等のアミン化合物を挙げることができる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0077】
・その他の成分
その他の成分としては、ホログラム記録媒体の記録層を調製するための、溶媒、可塑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、接着促進剤などや、記録の反応制御のための、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤、増感剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分はいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0078】
その中でもレベリング剤を用いることが好ましい。レベリング剤はポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アミン塩、シリコン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、エステル化合物、ケトン化合物、フッ素化合物などがあげられる。これらの化合物はいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0079】
1−7.ホログラム記録媒体用組成物における各成分の組成比
本発明のホログラム記録媒体用組成物における各成分の使用量は、本発明の主旨に反しない限り任意であるが、各成分の割合は組成物の全質量を基準に以下の範囲であることが好ましい。成分(1)と成分(2)の使用量は、合計で通常0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。また通常99.9質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。この使用量が下限値未満では、記録層を形成することが困難となってしまう可能性がある。
【0080】
成分(1)のイソシアネート基数に対する成分(2)のイソシアネート反応性官能基数の比は0.1以上が好ましくは、より好ましくは0.5以上である。また通常2.0以下であり、好ましくは1.5以下である。この比率が大きすぎても小さすぎても、未反応の官能基が多く、保存安定性を失ってしまう場合がある。
成分(3)の使用量は通常0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。また通常80質量%以下であり、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。成分(3)の量が少なすぎると十分な回折効率を得られず、多すぎると記録層の相溶性が損なわれる可能性がある。
【0081】
成分(4)の使用量は通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。成分(4)の量が少なすぎると十分な記録感度が得られない可能性がある。
成分(5)の使用量は成分(1)及び成分(2)の反応速度を考慮して決定することが好ましく、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また0.005質量%以上用いることが好ましい。
【0082】
成分(1)〜(5)以外の、その他の成分の総量は、30質量%以下であればよく、15質量%以下が好ましく、5質量%がより好ましい。
1−8.ホログラム記録媒体用組成物の製造方法
本発明において、成分(1)〜(5)はどのような組み合わせ、順序で混合してもよく、またその際に、その他の成分を組み合わせて混合してもよい。
【0083】
例えば以下のような方法で得ることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
成分(2)及び成分(5)以外の全ての成分を混合し、A液とする。成分(2)と成分(5)を混合したものをB液とする。それぞれの液は脱水・脱気を行うことが好ましい。脱水・脱気を行わなかったり、不十分であると、媒体作成時に気泡が生成し、均一な記録層を得ることができないことがある。この脱水・脱気の際には各成分を損なわない限り、
加熱、減圧を行ってもよい。
【0084】
A液及びB液の混合は成形直前に行う。この際、従来法による混合技術を用いることも可能である。A液及びB液の混合時には、残留ガスの除去のために、必要に応じて脱気を行ってもよい。さらにA液とB液はそれぞれ、又は混合後に異物、不純物を取り除くために、ろ過工程を経ることが好ましく、それぞれの液を別々にろ過することがより好ましい。また、成分(1)’として、過剰の成分(1)と成分(2)の反応による、イソシアネート官能性プレポリマーを使用することもできる。さらに成分(2)’として過剰の成分(2)と成分(1)の反応による、イソシアネート反応性プレポリマーを使用することもできる。
【0085】
1−9.光重合開始剤とマトリックス硬化触媒の好ましい組み合わせ
本発明において、光重合開始剤と、マトリックス硬化触媒とは、任意に組み合わせることができる。オキシムエステル系光重合開始剤単体、若しくはオキシムエステル系光重合開始剤及びホスフィンオキシド化合物と、希土類系触媒との組み合わせが好ましく、より好ましくは、オキシムエステル系光重合開始剤単体、若しくはオキシムエステル系光重合開始剤及びホスフィンオキシド化合物と、ランタン系触媒及び/又はプラセオジム系触媒との組み合わせである。
【0086】
2.本発明のホログラム記録媒体について
本発明のホログラム記録媒体は、記録層と、必要に応じて、更に支持体やその他の層を備える。通常、ホログラム記録媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されてホログラム記録媒体を構成する。ただし、記録層又はその他の層が、媒体に必要な強度や耐久性を有する場合には、ホログラム記録媒体は支持体を有していなくてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、好ましくは本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される。
【0087】
2−1.記録層
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される層であり、情報が記録される層である。情報は通常、ホログラムとして記録される。後述の記録方法の項に詳述するとおり、該記録層中に含まれる重合性モノマーは、ホログラム記録などによってその一部が重合等の化学的な変化を生じるものである。従って、記録後のホログラム記録媒体においては、重合性モノマーの一部が消費され、重合体など反応後の化合物として存在する。
【0088】
記録層の厚みには特に制限は無く、記録方法等を考慮して適宜定めればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下の範囲である。記録層が薄すぎると、ホログラム記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が低くなり、多重記録の度合いが低くなる場合がある。また、記録層が厚すぎると、記録層全体を均一に成形することが困難であり、各ホログラムの回折効率が均一で且つS/N比の高い多重記録が難しくなる場合がある。
また、情報の記録、再生の際の露光による記録層の収縮率が0.25%以下であることが好ましい。
【0089】
2−2.支持体
支持体は、媒体に必要な強度及び耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。また、支持体の形状にも制限は無いが、通常は平板状又はフィルム状に形成される。また、支持体を構成する材料にも制限は無
く、透明であっても不透明であってもよい。支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロース等の有機材料;ガラス、シリコン、石英等の無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン、ガラス等が好ましく、特に、ポリカーボネート、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
【0090】
一方、支持体の材料として不透明なものを挙げると、アルミニウム等の金属;前記の透明支持体上に金、銀、アルミニウム等の金属、又は、フッ化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の誘電体をコーティングしたものなどが挙げられる。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.05mm以上、1mm以下の範囲とすることが好ましい。支持体が薄過ぎるとホログラム記録媒体の機械的強度が不足し、基板が反る場合があり、厚過ぎると光の透過量が減りさらにコストが高くなる場合がある。
【0091】
また、支持体の表面に表面処理を施してもよい。この表面処理は、通常、支持体と記録層との接着性を向上させるためになされる。表面処理の例としては、支持体にコロナ放電処理を施したり、支持体上に予め下塗り層を形成したりすることが挙げられる。ここで、下塗り層の組成物としては、ハロゲン化フェノール、又は部分的に加水分解された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0092】
更に、表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。その例としては、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属を素材とする反射コート層を形成する反射コート処理;フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を形成する誘電体コート処理等が挙げられる。また、これらの層は、単層で形成してもよく、2層以上を形成してもよい。
また、これらの表面処理は、基板の気体や水分の透過性を制御する目的で設けても良い。例えば記録層を挟む支持体にも気体や水分の透過性を抑制する働きを持たせることによりより一層媒体の信頼性を向上させうる。
【0093】
また、支持体は、本発明のホログラム記録媒体の記録層の上側及び下側の何れか一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光など)を透過させるように、透明に構成する。
また、記録層の片側又は両側に支持体を有するホログラム記録媒体の場合、透過型又は反射型のホログラムが記録可能である。また、記録層の片側に反射特性を有する支持体を用いる場合は、反射型のホログラムが記録可能である。
【0094】
更に、支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。この場合のパターニング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、後述する反射層にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
【0095】
2−3.保護層
保護層は、記録層の酸素や水分による保存安定性の劣化等の影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
保護層の形成位置は、特に制限はなく、例えば記録層表面や、記録層と支持体との間に形成してもよく、また支持体の外表面側に形成してもよい。また支持体と他の層との間に形成してもよい。
【0096】
2−4.反射層
反射層は、ホログラム記録媒体を反射型に構成する際に形成される。反射型のホログラム記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ましい。
反射層としては、公知のものを任意に適用することができ、例えば金属の薄膜等を用いることができる。
【0097】
2−5.反射防止膜
透過型及び反射型の何れのホログラム記録媒体についても、物体光及び読み出し光が入射及び出射する側や、あるいは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
反射防止膜としては、公知のものを任意に用いることができる。
【0098】
2−6.ホログラム記録媒体の製造方法
本発明のホログラム記録媒体の製造方法に制限は無い。例えば、無溶剤で支持体上に本発明のホログラム記録媒体用組成物を塗布し、記録層を形成して製造することできる。この際、塗布方法としては任意の方法を使用することができる。具体例を挙げると、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップ法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、及びドクターロールコート法などが挙げられる。また、記録層の形成に際し、特に膜厚の厚い記録層を形成する場合、型に入れて成型する方法や、離型フィルム上に塗工して型を打ち抜く方法を用いることもできる。また、本発明のホログラム記録媒体用組成物と溶剤又は添加剤とを混合して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥して記録層を形成して製造しても良い。この場合も塗布方法としては任意の方法を使用することができ、例えば、上述したのと同様の方法を採用することができる。
【0099】
また、溶剤に制限はないが、通常は、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与え、樹脂基板等の支持体を侵さないものを使用することが好ましい。溶剤の例を挙げると、アセトン、メチルエチルケトン、等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、等のアルコール系溶剤;ジアセトンアルコール、等のケトンアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;テトラフルオロプロパノール、等のパーフルオロアルキルアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;n−ヘキサン、等の鎖状炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。なお、溶剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、溶剤の使用量に制限は無い。ただし、塗布効率、取り扱い性の面から、固形分濃度1%〜1000重量%程度の塗布液を調製することが好ましい。
【0100】
さらに、本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(1)及び(2)からなる樹脂マトリックスが熱可塑性の場合は、例えば射出成形法、シート成形法、ホットプレス法などによって本発明のホログラム記録媒体用組成物を成形する。また、本発明の成分(1)及び(2)からなる樹脂マトリックスが揮発性成分の少ない(光)熱硬化性の場合は、例えば反応射出成形法、液体射出成形法によって本発明の光反応組成物を成形して、記録層を製造することができる。この場合、成形体が十分な厚み、剛性、強度などを有するならば、当該成形体をそのままホログラム記録媒体とすることができる。
【0101】
また、ホログラム記録媒体の製造方法としては、例えば、熱により融解したホログラム
記録媒体用組成物を支持体に塗布し、冷却して固化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、熱重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、光重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法なども挙げられる。
【0102】
このようにして製造されたホログラム記録媒体は、自立型スラブ又はディスクの形態をとることができ、三次元画像表示装置、回折光学素子、大容量メモリ等に使用できる。
【0103】
2−7.情報の記録・再生方法
本発明のホログラム記録媒体に対する情報の書き込み(記録)及び読み出し(再生)は、何れも光の照射によって行なわれる。
先ず、情報の記録時には、重合性モノマーの化学変化、すなわち、その重合及び濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。
例えば、情報を体積ホログラムとして記録する場合には、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の重合性モノマーの重合及び濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録される。
【0104】
一方、記録層に記録された体積ホログラムを再生する場合は、所定の再生光(通常は、参照光)を記録層に照射する。照射された再生光は前記干渉縞に応じて回折を生じる。この回折光は前記記録層と同様の情報を含むものであるので、前記回折光を適当な検出手段によって読み取ることにより、記録層に記録された情報の再生を行なうことができる。尚、物体光、再生光及び参照光の波長領域はそれぞれの用途に応じて任意であり、可視光領域でも紫外領域でも構わない。これらの光の中でも好適なものとしては、例えば、ルビー、ガラス、Nd−YAG、Nd−YVO等の固体レーザ;GaAs、InGaAs、GaN等のダイオードレーザ;ヘリウム−ネオン、アルゴン、クリプトン、エキシマ、CO等の気体レーザ;色素を有するダイレーザ等の、単色性と指向性に優れたレーザ等が挙げられる。
【0105】
また、物体光、再生光及び参照光の照射量には何れも制限は無く、記録及び再生が可能な範囲であればその照射量は任意である。但し、極端に少ない場合には重合性モノマーの化学変化が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない可能性があり、逆に極端に多い場合は、記録層の成分(本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分)が劣化を生じる可能性がある。従って、物体光、再生光及び参照光は、記録層の形成に用いた本発明のホログラム記録媒体用組成物の組成や、光開始剤の種類、及び配合量等に合わせて、通常0.1J/cm以上、20J/cm以下の範囲で照射する。
また、ホログラム記録方式としては、偏光コリニアホログラム記録方式、参照光入射角多重型ホログラム記録方式等があるが、本発明のホログラム記録媒体を記録媒体として使用する場合にはいずれの記録方式でも良好な記録品質を提供することが可能である。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
・ホログラム記録媒体用組成物の調製
ヘキサメチレンジイソシアネートアダクト体2.89gに、ジベンゾチオフェニルフェニルアクリレート(2、4−ビス(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート)0.22g、及び1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバソール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)グルタル酸メチル0.0
23gを溶解させ、A液とした。
【0107】
次に、分子量約1000のポリオキシプロピレングリコール4.10gに、硬化触媒として2,4−ペンタンジオナトランタン0.0014gを溶解させ、B液とした。
B液を減圧下で3時間脱気した後、A液とB液を混ぜ合わせて攪拌混合し、さらに数分間、真空で脱気した。
【0108】
・測定用サンプルの作製
続いて、厚さ500μmのスペーサーシートを2方の端にのせたスライドガラスに上に、真空脱気した上記混合液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で48時間加熱して測定用ホログラム記録媒体を作製した。この測定用サンプルは、カバーとしてのスライドガラス間に、厚さ500μmの記録層が形成されたものである。
このようにして得られたサンプルについてホログラム記録特性の評価を行った。評価の条件は次の通りである。
【0109】
[ホログラム記録]
得られたホログラム記録評価サンプルを使用し、以下に説明する手順でホログラム記録を実施した。
波長405nmの半導体レーザを用いて、ビーム1本あたりの露光パワー密度6.0mW/cmで図2に示す露光装置を使用して、二光束平面波のホログラム記録を行った。
媒体を−30°から30°まで1°おきに同一箇所に61多重記録し、その時の回折効率の平方根の合計をM/#(エムナンバー)とする。また上記の記録前後で記録波長での光透過率を測定した。以下、詳細に説明する。
【0110】
図2(a)は、ホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図であり、図2(b)はLEDユニットの表面を示す構成図であり、図2(c)は、LEDユニット表面のLEDの配列を示す構成図である。
図2(a)中、Sはホログラム記録媒体のサンプルを示し、M1〜M3は何れもミラーを示し、PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザ光源(波長405nm付近の光が得られるソニー製シングルモードレーザーダイオードを用いた(図2(a)中「L1」))を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザ光源を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。また、1はLEDユニットを示し、2はアームを示し、3は支柱を示す。
【0111】
通常の記録、再生の場合、LEDユニットは図2(a)の実線の位置にあり、一様露光の場合、破線で示すように、支柱3が回転して取り付けられたアーム2とLEDユニット1のLEDがサンプルSの記録部分の前面側に移動した後、LEDが一定時間点灯する。LED1Bは、図2(c)に示すように、LEDユニット表面1Aにさいころの5の目の様に配列されている。光源L1、L2、フォトディテクタPD1、PD2、LEDユニット1には電源が接続されている。
【0112】
図2(a)に示すように、波長405nmの光を偏光ビームスプリッタ(図中「PBS」)により分割し、2本のビームのなす角が37.0°になるように記録面上にて交差させた。このとき、2本のビームのなす角の2等分線が記録面に対して垂直になるようにし、更に、分割によって得られた2本のビームの電場ベクトルの振動面は、交差する2本のビームを含む平面と垂直になるようにして照射した。
【0113】
ホログラム記録後、He−Neレーザで波長633nmの光を得られるもの(メレスグリオ社製V05−LHP151:図中「L2」)を用いて、その光を記録面に対し29.
9°の角度で照射し、回折された光をパワーメータ及びディテクタ(ニューポート社製2930−C、918−SL:図中「PD1」及び「PD2」)を用いて検出することにより、ホログラム記録が正しく行なわれているか否かを判定した。ホログラムの回折効率は、回折された光の強度の透過光強度と回折光強度の和に対する比で与えられる。
【0114】
(M/#の測定)
サンプルを光軸に対して動かす角度(二光束、すなわち図2(a)のミラーM1及びM2からの入射光が交わる点における内角の二等分線とサンプルからの法線とがなす角度)を−30°から30°まで1度刻みで61多重の記録を行い、得られた回折効率の平方根を多重記録全域にわたって合計したものをM/#とした。
【0115】
具体的には、実施例ごとに、始めに複数用意した光学記録媒体の1つを用いて、二光束が交わる点における内角の二等分線と媒体の法線がなす角度がゼロの状態で、回折効率が一定になるまで二光束すなわち図2(a)におけるミラーM1及びM2からの入射光、波長405nmを照射し、一定になった最小のエネルギーを測定する(この際、回折効率の評価はミラーM3からの光、波長633nmを用いて行なう)。
【0116】
次いで別のサンプルについて、先に求めた最少エネルギーの値を61多重記録の際の合計照射エネルギーの目安として、多重記録を行う。この際、照射エネルギーは記録回数に応じて適宜調整しながら、記録ごとの回折効率数%を維持するようにする。61多重記録後、引き続き図2(a)におけるミラーM1からの光(波長405nm)を照射し、角度−30°から30°までの回折効率を計測し、各角度の回折効率の平方根の合計(M/#)を求める。
【0117】
サンプルを変えて、記録初期の照射エネルギーの増減、合計照射エネルギーの増減など、照射エネルギー条件を変えた複数回の評価を行い、記録1回ごとに数%以上の回折効率を維持しつつ、61多重記録までに含有モノマーをほぼ消費しつくす(61多重記録までにM/#がほぼ平衡に達する)条件を模索し、M/#として最大値が得られるようにした。そして、得られた最大値をその媒体のM/#とした。
【0118】
(感度)
測定用のサンプルの感度は、上記M/#計測において、サンプルが示す最大M/#の80%に達するまでの平均感度を表すものであり、次のように算出される。
感度=(0.8×(M/#))/(I×ts×L)
ここで、Iは入射光強度(mW/cm)、tsはM/#が80%に達するまでの総露光時間(秒)、Lは記録層厚み(cm)である。
【0119】
(記録前光透過率、記録後光透過率)
光透過率はサンプルが何もない状態で光の強度を測定した後、サンプルを、光路にその板面を垂直にして置いて化学変化が起こらない程度の短い時間で再び光の強度を測定しその比を光透過率とした。記録後の場合、サンプルは光路に垂直にかつ回折が起こらない角度で記録した部分を光が通るように置いて測定した。波長は記録と同じ波長405nm、強度は6mW/cmとし、記録層の厚みは500μmとした。
【0120】
(保存安定性試験)
サンプルの保存安定性試験は、未記録サンプルを80℃で保存後に記録を行い、保存前と比較した。M/#及び感度は、保存前を100%とした残存率で評価した。この結果を、表1及び図1に示す。また、評価サンプルの記録前透過率は保存後と保存前の差で評価した。この結果を表1に示す。
【0121】
[実施例2]
実施例1の硬化触媒に代えて、2,4−ペンタンジオナトプラセオジムを硬化触媒として用いた以外は、実施例1と同様の方法でホログラム記録媒体用組成物を調整し、測定用サンプルを作製して、測定及び評価を行った。これらの結果を、表1及び図1に示す。
【0122】
[比較例1]
実施例1の硬化触媒に代えて、ジオクチル錫ジラウレート0.0007gを溶解させて用いた以外は、実施例1と同様の方法でホログラム記録用組成物を調整し、測定サンプルを作製して、測定及び評価を行った。これらの結果を、表1及び図1に示す。
[評価]
【0123】
【表1】

【0124】
上記表より、希土類系触媒、中でもランタノイド系触媒、特にランタン(La)系触媒、プラセオジム(Pr)系触媒を用いた場合に、保存安定性(M/♯の残存率、感度残存率、及び保存安定性試験前後の記録前透過率の差)に優れることが明らかである。
以上の結果から、本発明のホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体は、記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、保存安定性(シェルフライフ)に優れることが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のホログラム記録媒体用組成物及びそれを用いたホログラム記録材料は、ホログラム記録媒体等の用途に好適に使用される。
【符号の説明】
【0126】
1 LEDユニット
1A LEDユニットの表面
1B LED
2 アーム
3 支柱
S サンプル
M1,M2,M3 ミラー
PBS 偏光ビームスプリッタ
L1 記録光用レーザ光源
L2 再生光用レーザ光源
PD1,PD2 フォトディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有する化合物、
イソシアネート反応性官能基を有する化合物、
重合性モノマー、
光重合開始剤、
及び、希土類系触媒
を含有することを特徴とする、ホログラム記録媒体用組成物。
【請求項2】
前記希土類系触媒が、ランタノイド系触媒であることを特徴とする、請求項1に記載のホログラム記録媒体用組成物。
【請求項3】
前記ランタノイド系触媒が、ランタン系触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のホログラム記録媒体用組成物。
【請求項4】
前記ランタノイド系触媒が、プラセオジム系触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のホログラム記録媒体用組成物。
【請求項5】
前記重合性モノマーが、ラジカル重合性モノマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホログラム記録媒体用組成物。
【請求項6】
記録層に請求項1〜5のいずれか一項に記載のホログラム記録媒体用組成物を用いたことを特徴とする、ホログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50714(P2013−50714A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171275(P2012−171275)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】