説明

ホログラム転写箔、及びその製造方法

【課題】
美麗で高輝度の金属光沢ホログラム又は透明ホログラムの光回折効果が得られ、また、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写できるホログラム転写箔を提供する。
【解決手段】
水溶性の基材11、接着層19、透明反射層16、ホログラム層15及び膨潤性の印刷層18が順次積層されてなり、印刷層へ膨潤化液を塗布し、液体上に浮かべ、塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体の一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、基材を被転写体表面から除去する液圧転写方法に用いることを特徴とし、透明反射層17が酸化チタン薄膜、印刷層が高輝度インキの印刷層であることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、しかる後、上記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、さらに基材を被転写体表面から除去するる液圧転写方法に用いるホログラム転写箔に関し、さらに詳しくは、前記基材と、該基材の一方の面に接着層、透明反射層、ホログラム層、及び印刷層が順次積層されてなり、前記基材が水溶性であり、前記接着層がフィラーを含み、前記印刷層が膨潤性であるホログラム転写箔に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PVA」は「ポリビニルアルコール」、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「スタンパ」は「金型」、「UV」は「紫外線」、「カールフィット法」は「大日本印刷社、登録商標、曲面液圧転写方法」、の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のホログラム転写箔を用いて、平面及び/又は曲面へ液圧転写した成形品の主なる用途としては、成形品の被転写面が曲面、不規則形状面等の非平面であつても任意のホログラムを転写できるので、プラスチック製掛時計ケース、テレビ、ラジオのキャビネットなど電気製品、家具、ステショナリー、日用品等などのものである。
しかしながら、被転写面が平面及び/又は曲面や不規則形状面などの非平面を有するものにホログラムを転写する用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)美麗で高輝度で、特異な高意匠性を有し、また製造の困難性もあり、セキュリティ性の優れるホログラムは、ホログラム転写箔やホログラムラベルとして、多くのものに転写や貼着されている。従来、ホログラム転写箔は、真空成膜法で金属の薄膜を全面に形成して反射層とした金属光沢のホログラムが知られている。しかしながら、金属反射層では銀色などの金属光沢で極めて明るいホログラムが提供されているが、成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面へ転写すると、ホログラム効果が減じて、外観が著しく劣化し、時には全くホログラムが観察できなくなるという問題があった。
従って、ホログラム転写箔は、金属光沢ホログラム又は透明ホログラムの光回折効果が得られ、また、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写できるホログラム転写箔が求められている。
【0005】
(先行技術)従来、ホログラム転写箔は、真空成膜法で金属薄膜の全面反射層を設けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該ホログラム転写箔は平面にしか転写することが出来ず、仮に成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面へ転写すると、反射層面にヒビ割れ(クラック)やムラが入ったりして、光が乱反射してホログラムが白化したりして、ホログラム効果が減じて、外観が著しく劣化し、時には全くホログラムが観察できなくなってしまう。
さらに、本出願人は、接着層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、しかる後、上記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、さらに基材を被転写体表面から除去する曲面印刷方法(以下、カールフィット法という)を開示している(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、転写するのは多色印刷層であり、ホログラムの転写についての記載や示唆はない。
さらにまた、本出願人は、反射層として高輝度インキ層を用いたもの、及び透明反射層と高輝度インキ層を併用したものを開示している(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、反射層として高輝度インキ層のみを用いたものでは、実用上支障は少ないものの金属反射層並みの光回折効果が得られず、また、透明反射層と高輝度インキ層を併用したものについては、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写についての記載はなく、特許文献2〜3の欠点を解消して、本発明に至ったものである。
【0006】
【特許文献1】特許第2877968号公報
【特許文献2】特開昭54−33115号公報
【特許文献3】特開2003−285599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、美麗で高輝度の金属光沢ホログラム又は透明ホログラムの光回折効果が得られ、また、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写できるホログラム転写箔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
請求項1の発明に係わるホログラム転写箔は、印刷層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、しかる後、前記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、さらに基材を被転写体表面から除去するる液圧転写方法に用いるホログラム転写箔であって、前記基材と、該基材の一方の面に接着層、透明反射層、ホログラム層、及び印刷層が順次積層されてなり、前記基材が水溶性であり、前記接着層がフィラーを含み、前記印刷層が膨潤性であるように、したものである。
請求項2の発明に係わるホログラム転写箔は、上記透明反射層が酸化チタン薄膜であるように、したものである。
請求項3の発明に係わるホログラム転写箔は、上記印刷層が少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含む高輝度インキの印刷層であるように、したものである。
請求項4の発明に係わるホログラム転写箔の製造方法は、(1)予備転写箔基材と、該予備転写箔基材の一方の面に離型層、ホログラム層及び透明反射層を有する予備転写箔を準備する工程と、(2)該予備転写箔の透明反射層面と別途用意した基材とをドライラミネート法で積層する工程と、(3)しかる後に、予備転写箔基材及び離型層を剥離し除去する工程と、(4)露出したホログラム層面へ印刷層を設ける工程と、からなるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、ホログラムの光回折効果が得られ、また、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写できるホログラム転写箔が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、よりよい光回折効果の透明ホログラムが得られるホログラム転写箔が提供される。
請求項3の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、より大きな曲面を有する被転写体でも、金属光沢ホログラムの光回折効果が得られるホログラム転写箔が提供される。
請求項3の本発明によれば、より高輝度なホログラムの光回折効果が得られるホログラム転写箔の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明のホログラム転写箔を製造するための予備転写箔の断面図である。
図2は、本発明のホログラム転写箔を製造を説明するための説明図である。
図3は、本発明の1実施例を示すホログラム転写箔の断面図である。
【0011】
(ホログラム転写箔)本発明のホログラム転写箔10は、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写する液圧転写方法(カールフィット法)に用いることができるもので、図3に示すように、基材11として水溶性の基材を用い、印刷層18が膨潤性の印刷層を用い、基材11の一方の面に、接着層19、透明反射層17、ホログラム層15及び印刷層18を設け、基材11/接着層19/透明反射層17/ホログラム層15/印刷層19の層構成とする。
【0012】
好ましくは、透明反射層17を耐熱性が高く、屈折率も高い酸化チタン薄膜を用いることで、例えば、成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面への転写され、被転写体の凹凸などのある非平面で伸縮が起きて、若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、より明るいホログラム像が観察される。透明反射層17として酸化チタン薄膜を用い、印刷層18として金属様光沢の高輝度インキを用いた印刷層を用いると金属様光沢ホログラムとなって、透明反射層17と高輝度インキ層18との相乗効果で明るい金属様光沢ホログラムとなり、例え若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、クラック部分の反射性はその下部の高輝度インキ層18の反射で代替され反射性が維持されているために、美麗、高輝度の意匠性及び/又はセキュリティ性に優れる金属様光沢ホログラムを観察できる。金属様光沢の高輝度インキとは、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含む高輝度インキである。さらに、表面や層間には別の層を設けてもよく、例えば、接着層19と透明反射層17との間へハードコート層14を設けたり、ホログラム層15と印刷層19のとの間へプライマ層16を設けたり、してもよい。
【0013】
(製造方法)本発明のホログラム転写箔の製造方法は、(1)予備転写箔基材と、該予備転写箔基材の一方の面に離型層、ホログラム層、透明反射層を有する、予備転写箔を準備する工程と、(2)該予備転写箔の透明反射層と、別途用意した基材とをドライラミネート法で積層する工程と、(3)しかる後に、予備転写箔基材を剥離し除去する工程、(4)露出したホログラム層面へ印刷層を設ける工程と、で製造する。該ホログラム転写箔10の透明反射層面へ、さらに他の層を設けてもよく、例えば、金属様光沢の高輝度インキを用いた印刷層を設けると、図4に示すような、請求項3の金属様光沢ホログラムを有するホログラム転写箔10が得られる。これは透明反射層17と高輝度インキ層18との相乗効果で明るい金属様光沢ホログラムとなり、例え若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、クラック部分の反射性はその下部の高輝度インキ層18の反射で代替され反射性が維持されているために、美麗、高輝度の意匠性及び/又はセキュリティ性に優れる金属様光沢ホログラムを観察できる。金属様光沢の高輝度インキとは、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含む高輝度インキである。
【0014】
(予備転写箔を用いる製造方法)予備転写箔40を用いずに、非平面への転写する液圧転写方法(カールフィット法)に用いるホログラム転写箔を製造することはできる。即ち、基材11へ直接ホログラム層15を形成し光回折効果を有する微細な凹凸レリーフを設け、透明反射層17を設け、印刷層18を設ければよい。しかしながら、レリーフの賦型は回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、ホログラム層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着するエンボス法で原版の凹凸レリーフ模様を複製し賦型するが、水溶性の基材11は柔軟性があり、特に水分を少しでも含むとより柔軟となって、エンボス法でのレリーフ賦型の際に、エンボス条件を厳しく、又は低速で行わねばならない。そこで、まず、通常の条件でもレリーフの賦型が充分にできる予備転写箔40を作成した後に、水溶性の基材11へホログラム層及び透明反射層を含む光回折効果層を転写することで製造する本発明のホログラム転写箔によって、成形品などの被転写面が曲面、不規則形状面の非平面への転写でき、転写箔されたホログラムは美麗で高輝度の金属光沢ホログラム又は透明ホログラムの光回折効果が得られるのである。
【0015】
本発明のホログラム転写箔10を用いて液圧転写方法(カールフィット法)で成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面へ転写した際に、非平面へ転写された着層19/透明反射層17/ホログラム層15/印刷層19の層は曲面に応じて伸縮を受けるが、上記の作用で反射性が維持されているために、明るい金属様光沢のホログラムを観察することができる。もちろん、被転写体の転写面が平面であってもよく、より良好に転写することができるので範囲内である。しかも、その製造についても、従来の真空成膜法による酸化チタン薄膜による透明反射層以外は、既存設備での印刷法により形成可能で、小ロット生産にも対応でき、低コストで生産することができる。
【0016】
(液圧転写方法)液圧転写方法(カールフィット法)とは、水圧などの液圧を利用する転写印刷方法で、(1)接着層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、(2)次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、(3)しかる後、上記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、(4)さらに上記基材を被転写体表面から除去する方法で、詳しくは、特開昭54−33115号公報で、曲面印刷方法として、本出願人が開示している。以下、製造工程に従って、材料面も含めて説明してゆく。
【0017】
(第1工程)予備転写箔40を準備する工程
まず、予備転写箔基材41の一方の面に離型層13、ホログラム層15及び透明反射層17、さらに必要に応じて、他の層を設けてもよく、ここではハードコート層14を設ける例を説明する。
【0018】
(基材)予備転写箔基材41としては、耐熱性、機械的強度、製造に耐える機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどがある。該基材は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0019】
また、該予備転写箔基材41は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材の厚さは、通常、2.5〜50μm程度が適用できるが、2.5〜12μmが好適で、4〜6μmが最適である。該予備転写箔基材41は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0020】
(離型層、剥離層)転写時の剥離性を向上させるために、離型層13を設け、必要に応じて、剥離層も設けてもよく、離型層13及び剥離層の両方を設けるとより転写性をより向上できる。
【0021】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、本発明ではメラミン系樹脂を用い、後述するホログラム層15と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。
【0022】
離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0023】
(剥離層)必要に応じて設ける剥離層としては、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂、ワックス、メラミン系樹脂等が例示でき、離型層13及び剥離層の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよく、この場合には、剥離層は転写後に保護層としての機能を合わせ持つ。
【0024】
(ホログラム層)ホログラム層15としては、無色または着色された透明または半透明なもので、単層であっても多層状であってもよく、凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂どうし、または熱硬化性樹脂同志の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。
電離放射線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0025】
また、好ましくは、ホログラム層15の材料としては、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と呼称する)、反応性シリコーン及びポリエチレンワックスを含むようにする。さらに好ましくは、(メタ)アクリレートオリゴマーも含ませて硬化させる。該組成物を塗布し乾燥して、ホログラム機能を発現する微細な凹凸レリーフを賦型した後に、電離放射線で硬化させればよい。電離放射線硬化性樹脂は架橋性樹脂ともいわれ、他の層でも同様である。
【0026】
(電離放射線硬化性樹脂組成物M)「電離放射線硬化性樹脂組成物M」としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示でき、実施例でも述べる。即ち、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物である。
【0027】
((メタ)アクリレートオリゴマー)(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、耐熱性のあるオリゴマーであればよく、例えば、日本合成化学社の商品名;紫光6630B、7510B、7630Bなどが例示できる。ホログラム層15に(メタ)アクリレートオリゴマーを含ませることで伸縮性が向上し、液圧転写方法(カールフィット法)で成形品などの非平面へ転写されたホログラム層15層は曲面に応じて伸縮を受け入れられる。しかしながら、透明反射層17の酸化チタン薄膜は伸縮性に乏しいが、例え若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、クラック部分の反射性はその下部の伸縮性のある高輝度インキ層18の反射で代替され反射性が維持されているために、明るい金属様光沢のホログラムを観察することができるのである。
【0028】
(ポリエチレンワックス)ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0029】
(反応性シリコーン)反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化するもので、アクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンで、該反応性シリコーンを含有させる質量基準での割合としては「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100に対して、0.1〜10部程度、好ましくは0.3〜5部である。この範囲未満ではレリーフの賦型時にプレススタンパとの剥離が不十分であり、プレススタンパの汚染を防止することが困難で賦型性が悪い。また、この範囲を超えてはホログラム層面への反射層の密着性が低く、ホログラム層と反射層との間で剥離し商品価値を失ってしまう。従来のシリコーンオイルの添加では、反射層との密着性が悪い。
【0030】
このように、ホログラム層15には、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませることで、レリーフの賦型性がよく光回折効果が高く、かつ、ハードコート機能を兼ねさせることができる。特にポリエチレンワックスを含有させることで、耐擦傷性(耐スクラッチ性)が著しく向上する。
【0031】
(1)電離放射線硬化前の塗布状態のホログラム層15の塗膜は指乾状態でべとつかず、ブロッキングせずに巻き取ることができるので、ロールツーロール加工ができる。(2)ホログラム層15へは反応性シリコーンを含ませると、塗布表面に集まりスタンパの凹凸からの剥離がよく賦型性が向上して、レリーフ構造を容易に賦型でき、賦型後には電離放射線で硬化すれば反応性シリコーンも硬化する。(3)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはホログラム層15が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被着体に設けられた画像を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。
【0032】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15は、上記の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませ、さらに必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。ホログラム層15の厚さとしては、通常は0.5μm〜20μm程度、好ましくは1μm〜10m程度であり、複数回の塗布でもよい。
【0033】
ホログラム層15は該ホログラム層15にホログラムや回折格子などの光回折機能を有するレリーフ構造を賦型した後に、電離放射線で硬化でき、電離放射線硬化後の23℃における破断伸度を5%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上とすることで、成形品の被転写面が曲面や不規則形状面等の非平面であつても液圧転写できる。5%未満では収縮時にヒビ割れたり白化したりする。5〜30%であると、非平面形状の凹凸が高くても追従してヒビ割れたり白化したりしない。
【0034】
(破断伸度)ホログラム層の収縮性を破断伸度で表し、該ホログラム層の破断伸度(%)の測定方法は、23℃55%RHの条件下でUV硬化後樹脂層を24時間以上放置した後、株式会社オリエンテックテンシロン万能試験機RTA−100を用いデータ処理は、テンシロン多機能型データ処理TYPE MP−100/200S Ver.44を用い測定を行なった。試料幅10mm、チャック間距離50mm、RANGEは50%、荷重は100kgの条件で、引っ張り速度10mm/minで引っ張り、破断伸度は、引っ張り時の破断または亀裂が入ったときの破断点伸びの自長に対する伸び率とした。ホログラム層の破断伸度の測定では、ホログラム層単独膜を作成するのは難しいため、25μm剥離PETに10μmのホログラム層を形成し、メタルハライドランプにて積算露光量250mjで露光した後に剥離して試料とした。
【0035】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0036】
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画装置を用いてパターン作製する電子線描画法をなどが適用できる。
【0037】
(レリーフの賦型)ホログラム層15面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0038】
(レリーフの硬化)ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層15)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。
【0039】
(レリーフの絵柄)ホログラム層15の絵柄は、特に限定されないが、個別の絵柄でも、擬似連続絵柄でもよい。擬似連続絵柄はプレス型を作成する際に、小さなレリーフ版の複数を、精度よく突合せてつなぎ目を目立たなくしたり、つなぎ目を樹脂で埋めたりすればよい。このように、擬似連続絵柄とすることで、できるだけ大きな面積、又は好ましくは全面とすることもできる。個別の絵柄の場合には絵柄と絵柄に同調した見当合わせマークを形成しておき、被着体の所望の位置へ転写すればよい。
【0040】
(透明反射層)ホログラム層15に設けた光回折パターン(レリーフ構造で、ホログラム効果を持つ)面に、透明反射層17を設けることにより、ホログラムの再生像及び/又は回折格子が明瞭に視認できるようになる。透明反射層17は、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が挙げられる。好ましくは、耐熱性及び屈折率差の大きい点で酸化チタン(TiO2)である。
【0041】
透明金属化合物の形成は、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。必要に応じて、ホログラム層15面をコロナ処理などの易接着処理を行ってから形成するのが好ましい。
【0042】
(ハードコート層)ハードコート層14としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、ポリエチレンワックスを含むようにする。該電離放射線硬化性樹脂としては、好ましくは、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を用い、ポリエチレンワックスを含ませて、塗布し乾燥して電離放射線で硬化させて、電離放射線硬化樹脂とすればよい。
【0043】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では電離放射線硬化性樹脂組成物Mと呼称する)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示できる。ハードコート層14もホログラム層15と同様に、23℃における破断伸度を5%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上とすることで、成形品の被転写面が曲面や不規則形状面等の非平面であつても液圧転写できる。5%未満では収縮時にヒビ割れたり白化したりする。5〜30%であると、非平面形状の凹凸が高くても追従してヒビ割れたり白化したりしない。
【0044】
(ポリエチレンワックス)ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0045】
(ハードコート層の形成)ハードコート層14の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂に必要に応じて、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、電離放射線で反応(硬化)させればよい。ハードコート層14へポリエチレンワックスを添加してもよく、添加すればより表面耐久性を向上させることができる。
【0046】
(ハードコート層の厚味)ハードコート層14の厚さは通常、1〜5μm程度であり、該ハードコート層14のを設けることで、後述するフィラー入り接着層19とともに、転写後には最表面となって、耐久性を高まるので、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、化学的機械的な外力から保護する。
【0047】
(第2工程)ドライラミネート法で積層する工程
次に、図2に示すように、予備転写箔40の透明反射層面又はハードコート層14とを設けた場合にはハードコート層14面と、別途用意した基材11とをドライラミネート法で積層する。図2(A)は基材11で、図2(B)は予備転写箔40(図1と同じであるが、判りやすくするために上下逆に記載)であり、この両者を積層する。
【0048】
(基材)基材11としては、転写時に液体上で十分膨潤し、かつホログラム加工適性を有し、さらに転写性、すなわち被転写体の曲面に対し、充分にまつわりつく性質を有するものが用いられる。例えば、デキストリン、ゼラチン、にかわ、力ティン、セラツク、アラビアゴム、澱粉、蛋白、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと一無水マレイン酸の共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸の共重合体、ポリビニルピロドリン、あるいはセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルローセ、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ソーダなどが単独でまたは混合して用いられる。上記基材11は10〜100μ、好ましくは20〜60μの厚さのものが適用される。転写の行なわれる液体には水を用いることが最も実用的であり、従つて、この場合、上記薄膜フィルムには水溶性フィルムを用いることが望ましい。水溶性フィルムの好ましい例としては、上記のうち、澱粉系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリビニルアルコールど澱粉との混合系からなるフィルム、あるいは上記材料を紙、不織布、各種多孔質フィルムなどの液体浸透性のあるベースにコーティングしたフィルムあるいはラミネートしたフィルムが挙げられる。
【0049】
(ドライラミネーション法)基材11と予備転写箔40の透明反射層面又はハードコート層14とを設けた場合にはハードコート層14面とをドライラミネーション法で積層する。ドライラミネーション法とは、溶媒へ分散または溶解した接着剤を塗布し乾燥させて、貼り合せ基材を重ねて積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。また、ノンソルベントラミネーション法でもよく、該ノンソルベントラミネーション法とは、溶媒へ分散または溶解せずに接着剤自身を塗布し乾燥させて、貼り合せ基材を重ねて積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。
【0050】
(接着層)ドライラミネーション法、またはノンソルベントラミネーション法で用いる接着層19の接着剤として、熱、紫外線、電子線などの電離放射線で硬化する接着剤が適用できる。熱硬化接着剤としては、具体的には、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ−テルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エボキシ系接着剤、ゴム系接着剤などが適用できるが、2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
【0051】
該2液硬化型ポリウレタン系接着剤としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる2液型ポリウレタン系樹脂を使用することができる。
【0052】
このように、基材11との積層に用いる接着層19を、破断伸度のある接着剤、好ましくはポリウレタン系接着剤を用い、かつ、前述のように、ホログラム層15の樹脂は破断伸度のある樹脂組成にして伸縮性を高めることで、成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面等の非平面に追従性を持たせることができる。ポリウレタン系接着剤の接着層19も、ホログラム層15と同様に、23℃における破断伸度を5%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上とすることで、成形品の被転写面が曲面や不規則形状面等の非平面であつても、その表面へ追従するので液圧転写できる。
【0053】
(ポリエチレンワックス)さらに、接着層19は被転写体へ水圧転写した際には、最表面となるので、耐久性を高めるために、フィラーを添加するのが好ましく、該フィラーとしては特に限定されないが、好ましくは滑性のよいポリエチレンワックスである。ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。ポリエチレンワックスの添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0054】
フィラー入り接着層19、またハードコート層14を設けた場合にはハードコート層14とフィラー入り接着層19とが転写後には最表面となって、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、化学的機械的な外力から保護する。
【0055】
ドライラミネーション法では、これらを主成分とする接着剤組成物を有機溶媒へ溶解または分散し、これを、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、キスコーティング、ワイヤーバーコーティング、コンマコーティング、などのコーティング法で塗布し、溶剤などを乾燥して、接着層19を形成することができる。好ましくは、ロールコーティング、グラビアコーティング法である。
【0056】
該接着層19の膜厚としては、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmである。該接着層19を形成したら直ちに、貼り合せる材料を積層した後に、30〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで接着する。接着剤の塗布面は、基材11でも、透明反射層17面でもよい。
【0057】
(第3工程)予備転写箔基材41を剥離し除去する工程
ドライラミネーション法で積層した後に、エージングし接着剤が硬化した後に、予備転写箔基材41を剥離すればよい。即ち、図2(A)の基材11と、図2(B)の予備転写箔40(図1と同じであるが、判りやすくするために上下逆に記載)とを積層した後に、予備転写箔基材41を剥離し除去したのが、図2(C)の本発明のホログラム転写箔10である。該ホログラム転写箔10を用いれば、液圧転写方法(カールフィット法)で成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面へ転写することができる。
【0058】
予備転写箔基材41の剥離方法は公知の方法でよく、予備転写箔基材41のみを機械的に引っ張り剥離すればよい。なお、離型層13の1部が予備転写箔基材41側に残る場合もあるが、剥離に支障はなく、本発明の範囲内である。
【0059】
(第4工程)露出したホログラム層15面へ印刷層18を設ける工程
(印刷層)印刷層18は、転写する直前に印刷層18を膨潤させうる溶剤を含む液(膨潤化液という)で膨潤性のある印刷層18とするために、印刷層18のバインダとして膨潤性のバインダを用いる。ホログラム層15面へ接着力向上のためプライマ層16を設けた後に、印刷層19を形成してもよい。印刷層19は透明でも不透明でもよく、好ましくは着色であり、着色した印刷層18を設けるとホログラムなどの光回折像が観察しやすくなる。特に好ましくは金属様光沢の高輝度インキを用いたメタリック調印刷層であり、透明反射層17として酸化チタン薄膜と金属様光沢の高輝度インキを用いた印刷層18を用いると、金属薄膜反射層を用いずに、金属様光沢ホログラムとすることができる。透明反射層17と高輝度インキによる印刷層18との相乗効果で明るい金属様光沢ホログラムとなり、例え若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、クラック部分の反射性はその下部の高輝度インキによる印刷層18の反射で代替され反射性が維持されているために、美麗、高輝度の意匠性及び/又はセキュリティ性に優れる金属様光沢ホログラムを観察できる。
【0060】
(高輝度インキ層)金属様光沢の高輝度インキとは、少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含む高輝度インキである。従来の金属光沢を付与する印刷インキがあったが、該インキはアルミニウムペーストやアルミニウム粉等の金属顔料を用いた、シルバーまたはゴールド等のメタリック調印刷インキである。アルミニウムペーストには、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプがあるが、いずれを用いても、真空薄膜法の金属薄膜の金属光沢には、はるかに及ばなかった。さらにまた、蒸着アルミニウム薄膜を粉砕した粉末を用いたインキがあったが、表面処理が異なり分散性が悪く、十分な高輝度が得られなかった。
【0061】
該高輝度インキによる印刷層18は、印刷法なので部分的に設けてもよく、既存の印刷設備で安価に製造することができる。金属薄膜片とバインダとからなる高輝度インキによる印刷層18をホログラム層15面へ印刷することで、よりメタリック調の高輝度を発揮でき、光回折画像の反射層とする。また、意匠性が高く、かつ、目視で容易に真偽が判定できてセキュリティ性も高まり、小ロット生産にも対応でき、また、コストも低くできるという著しい効果を発揮する。また、高輝度インキによる印刷層18は印刷法なので、他の印刷層があればこの印刷絵柄に同調させて、高輝度インキ層を設けることが容易である。印刷絵柄と同調するように設けることで、より一層意匠効果が高まる。部分的とは、文字、数字、記号、イラスト、模様、写真などのすべての絵柄が使用できる。
【0062】
また、従来の真空蒸着法で形成したアルミニウムの金属薄膜は、十分な金属光沢が得られる。しかしながら、意匠的に高めるために、部分的なアルミニウムの金属薄膜を設けるには、一旦、真空成膜法でアルミニウム金属薄膜を全面に設けた後に、別工程で、レジストを印刷しエッチングするので、コストが非常に高く、また、製造工程が多くなって小ロット生産に向かない。しかも、高温や曲げられると、白化するという欠点がある。
【0063】
(高輝度インキ)透明反射層16、及び高輝度インキ層18の2層とすることで、明るいホログラム層15からの光回折画像が視認できるようになる。該高輝度インキとしては、金属蒸着膜に匹敵する金属光沢を有する高輝度インキで、金属蒸着膜細片の表面を有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で処理して、インキ中への分散性を向上させて、インキ塗膜の金属光沢を高輝度としたものである。該インキは、有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、またはセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片、バインダ、添加剤、及び溶剤からなり、必要に応じてグラビアインキ、スクリーンインキ、又はフレキソインキ化すればよい。
【0064】
金属蒸着膜細片の金属としては、アルミニウムが適用できるが、必要に応じて、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等も使用できる。金属蒸着膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.08μmであり、インキ中に分散させた金属蒸着膜細片の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。大きさが、この範囲未満の場合はインキ塗膜の輝度が不十分となり、この範囲を超えると、グラビア版のセルに入りにくく、またスクリーン版が目詰まりし易く、印刷塗膜の光沢が低下する。
【0065】
金属蒸着膜細片は、まず、ポリエステルフィルム/剥離層/蒸着膜/表面の酸化防止トップコート層からなる蒸着フィルムを作成する。剥離層、トップコート層は、特に限定されないが、例えば、セルロース誘導体、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレンなどが適用できる。上記蒸着フィルムを、溶剤中に浸積して、金属蒸着膜を剥離、撹拌、濾別、乾燥して、金属蒸着膜細片を得る。該金属蒸着膜細片を温度10〜35℃、30分程度、撹拌しながら、有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、又はセルロース誘導体溶液を加え、金属蒸着膜細片の表面に有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体を吸着させて、金属蒸着膜細片の表面処理を行う。セルロース誘導体としては、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等が適用できる。セルロース誘導体の添加量は、金属がアルミニウムの場合は、蒸着膜細片に対して1〜20質量%が好ましい。
【0066】
(バインダ)該表面処理の後、金属蒸着膜細片を分離、又は金属蒸着膜細片スラリーをそのまま、バインダ及び溶剤へ配合、分散させてインキ化する。該バインダとしては、膨潤性のバインダを用いる。バインダとしては、転写する直前に印刷層18を膨潤させうる溶剤を含む液(膨潤化液という)で膨潤性の接着層で、該接着層に対して親和性の有る樹脂が適用できる。例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体、スチレン並びにその誘導体、酢酸ビニル等のビニルエステル単量体、アリルアルコールおよびアリルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン類、マレイン酸又はフマル酸等の不飽和カルボン酸類、上記の不飽和カルボン酸類のエステル誘導体、同ニトリル誘導体又は同酸アミド誘導体、上記の不飽和カルボン酸類の酸アミド誘導体のN−メチロール誘導体及び同N−アルキルメチロールエーテル誘導体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグ)リシジルエーテル、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、2−ヒドロキシエチルーアクリレート又はーメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルーアクリレート又はーメタクリレート、エチレングリコ−ルーモノアクリレート又はーモタノメタクリレート、エチレングリコールージアクリレート又はーモノメタクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン、Tertθ−ブチルアミノエチルメタクリレート、多価アルコールのモノアリルエーテル等の如き単量体の単独重合体ないし共重合体類等の熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、フタル酸ジアリル系樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン系樹脂等の如き熱硬化性樹脂又はそれらの変性樹脂若しくは初期縮合物が例示できる。
【0067】
また、通常のインキは、ロールミル、ボールミルなどで混練して、顔料た添加剤をサブミクロンまで微粒子化し高度に分散させて、印刷適性を持たせる。しかしながら、本発明で使用する高輝度インキは、混練工程を必要とせず、攪拌機で混合するだけでよく分散し、金属光沢が損なわれない。即ち、高輝度の金属光沢を発現させるためには、金属蒸着膜細片の大きさが5〜25μm程度が必要で、上記混練工程を行うと金属光沢が極端に低下してしまう。
【0068】
(高輝度インキ印刷)以上のようにして得られたインキを、公知のグラビア印刷、スクリーン印刷、又はフレキソ印刷で、文字、記号、数字、図形、イラストなどの所要の絵柄を製版して、印刷し、乾燥、必要に応じて硬化すればよい。
【0069】
(膨潤化液)該膨潤化液とは、印刷層18を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液が用いられるが、該溶剤は印刷層18を溶解させず、液体上で転写が行なわれるまでに蒸発せず、さらに被転写体表面を浸蝕したり、被転写体が塗料により下塗りされている時には、この塗料に接する転写時にこの塗料を急激に溶解させないものであることが望ましい。
【0070】
このような溶剤の例としては、公知のもの例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等、或いはこれらの混合液であるガソリン、石油ベンジン、ミネラルスピリット、石油ナフタ等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、トリク的レエチレン、パークロルエチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲソ化炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等の一価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、イソホロン等のケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコール−モノ−メチルエーテル、エチレングリコール−モノ−エチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−メチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−ジ−ブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール−モノ−メチルエーテル−アセテート、エチレングリコール−モノ−エチルエーテル−アセテート、ジエチレングリコール−モノ−メチルエーテル−アセテート、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテル−アセテート、ジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテル−アセテート等の酢酸エステル類、酪酸エステル類、等のエステル類、ニトロ炭化水素類、ニトリル類、アミン類、その他アセタール類、酸類、フラン類等が単独或いは混合溶剤として使用される。
【0071】
また、上記溶剤には、上記溶剤に対して親和性の有る樹脂を添加してもよい。該樹脂としては、公知のもの、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン系樹脂などが例示できる。また、天然樹脂、ロジン及びその誘導体、セルロース誘導体、天然又は合成ゴム、石油樹脂等の樹脂を5〜6鍾量%程度添加した膨潤化液を用いると、粘度調整が容易で、塗布方法を選ばずインキの保持時間が長く、転写時間を長くとれる等の効果が得られる。
【0072】
(液圧転写方法)液圧転写方法は、「カールフィット法」(大日本印刷社、登録商標、曲面液圧転写方法)と呼ぶ転写方法で、(1)接着層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、(2)次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、(3)しかる後、上記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、(4)さらに上記基材を被転写体表面から除去する方法で、詳しくは、特開昭54−33115号公報で、曲面印刷方法として、本出願人が開示している。
【0073】
(液圧転写第1工程)接着層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布する工程
本発明のホログラム転写箔10は枚葉であつても、あるいは連続加工による巻取状であつてもよい。膨潤は液圧転写する直前にホログラム転写箔10の印刷層18面へ前述の膨潤化液を塗布して膨潤させる。塗布手段としては、グラビアコート、オフセットグラビアコート、ロールコート、バーコート、スプレーコートなどが適用でき、膨潤化液の塗布量は2〜30g/m2程度であり、好ましくは3〜15g/m2である。また、膨潤化液は印刷層18を溶解させず、液体上で転写が行なわれるまでに蒸発せず、さらに被転写体表面を浸蝕したり、被転写体が塗料により下塗りされている時には、この塗料に接する転写時にこの塗料を急激に溶解させないものであることが望ましい。
【0074】
(液圧転写第2工程)次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべる工程
膨潤化液で活性化の後、ホログラム転写箔10を液体上に浮かべる。この時、枚葉状のものを一枚ずつ浮かべることもできるし、巻取状の場合には、液体を一方向に流しながら連続的に浮かべることができる他、枚葉状に切断した後、液体上に浮かべることができる。液体上に浮かべるには印刷層18面を上に向け、ホログラム転写箔10を構成する基材11と液面との間に気泡がはいらないようにし、かつホログラム転写箔10にしわが寄らないようにすることが転写印刷を良好に行なう上で要求される。
【0075】
(液圧転写第3工程)しかる後、上記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出す工程
液圧転写はホログラム転写箔10の印刷層18面の上方から被転写体である成形品を下降させて、その一部ないし全部を液面下に沈降させて行ない、ホログラム転写箔10と被転写体との間に気泡を入れないように行う。この操作は自動的に、あるいは手作業によつて行なうことができる。
【0076】
(液圧転写第4工程)さらに上記基材を被転写体表面から除去する工程
転写後、被転写体に付着した基材11を十分膨潤させて、ホログラム転写箔10の印刷層18を被転写体表面に固着させると共に基材11を除去する。これに要する時間は種々の条件により適宜決定される。転写の行なわれる液体は基材11の性質により適当な温度に調整される。例えば、液体として水を使い、基材11として澱粉系フィルム(商品名、オブラート)を使つた場合、水温は40〜50℃程度てあることが望ましい。また、上記の例示の如く澱粉系フィルムを使う場合、基材11除去の際にはその溶解を促進させるためにアミラーゼ等を2〜4%程度添加しておくことが好ましい。次に、印刷層18が充分被転写体表面に固着し・さらに薄膜フィルムを除去した後、被転写体を液体内より取り出し、さらに被転写体表面を十分に清浄にした後、乾燥させる。ここで基材11を除去するには、任意の手段を適用できる。たとえば被転写体表面より基材11を剥離させる方法、さらには溶解除去する方法などである。水溶性フィルムを使用した場合には、水を用いて被転写体をシャワー洗浄することが最も能率的で好ましい方法である。これにより付着した基材11が完全に除去されると共に、転写の際に生ずる汚れも洗浄される。この時、水温は用いた基材11の性質などによつても異なるが、一般に15〜60℃が適当であり、また、洗浄時間は1〜10分程度である。また、液体上に浮かべる工程から、被転写体を下降させた後に液体内より取り出す工程までに、基材11が溶解し除去されてしまう場合もあるが、この場合には基材を被転写体表面から除去する工程は省略できる。
【0077】
このようにして、液圧転写方法(カールフィット法)が行なわれ、曲面を有する被転写体でも、金属光沢又は透明ホログラムの光回折効果が得られる。また、転写完了後、必要に応じて、スプレー法、浸漬法あるいは電着法などの手段により表面の艶状態を調整し、かつ表面物性向上を計る為に下塗りや塗料系と同じ樹脂を上塗りしてもよい。
【0078】
(成形品)被転写体である成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面へ転写でき、また平面であってもよい。成形品としては特に限定されないが、例えば、木材、金属、タイル、又はアクリル系樹脂、ポリカーボネイト、ABS樹脂などのプラスチックなどの単独体や、これらの複合体でもよい。また、被転写体は液圧転写する前に、洗浄や下塗りなどの前処理を施しておくことが転写を良好に行なう上で好ましい。
【0079】
(ホログラム転写箔)このように、本発明のホログラム転写箔10は、液圧転写方法(カールフィット法)で成形品などの被転写面が曲面や不規則形状面の非平面へ追従して転写することができる。好ましくは、ハードコート層14(設けた場合)、接着層19及びホログラム層15を伸縮性(破断伸度)のある層にすることで、より追従性を高めることができる。なお、印刷層18は膨潤性であり充分な伸縮性(破断伸度)を持っている。透明反射層17は伸縮性(破断伸度)が低いが、例え若干のひび割れ(クラック)が入っても透明で目立たず、クラック部分の反射性はその下部の高輝度インキの印刷層18の反射で代替され反射性が維持されているために、美麗、高輝度の意匠性及び/又はセキュリティ性に優れる金属様光沢ホログラムを観察できる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0081】
(実施例1)予備転写箔基材41として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該予備転写箔基材41の一方の面へ、グラビアコート法で、TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名)塗工液を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
該離型層13面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名) 100質量部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、紫光7510B) 10質量部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−2445) 0.5質量部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5質量部
酢酸エチル 300質量部
次に、該層面へ、2光束干渉法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、コロナ処理を行い、厚さ50nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明反射層17とした。
該透明反射層17面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の塗布厚さが2μmになるように塗工し120℃で乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させてハードコート層14を形成して、予備転写箔40とした。
・<電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100質量部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、紫光7510B) 10質量部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 5質量部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70質量部
次に、上記予備転写箔40のハードコート層14面へ、下記の接着層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布厚さが4μmになるように塗工し、直ちに基材11として厚さ25μmのハイセロンCP300(日本合成化学社製、PVAフィルム商品名)をドライラミネーション法で重ね合わせ、50℃で1週間エージングして積層した。
・<接着層組成物>
タケラックA515(三井武田ケミカル社製、PU系接着剤商品名)100質量部
タケラックA50(三井武田ケミカル社製、硬化剤商品名) 20質量部
ポリエチレンワックス(平均粒径5μm、球状) 2質量部
溶媒(酢酸エチル:トルエン=1:1) 200質量部
エージング後に予備転写箔基材41と離型層13とを剥離し除去した。剥離されて露出した、レリーフの賦型されていないホログラム層15面へ、ポリエステル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の等量混合物を固形分が25質量%となるように溶媒で希釈してグラビア印刷法で印刷し乾燥してプライマ層16を形成し、該プライマ層16面へ、硝化綿系インキを用いて、乾燥後の厚さが1μmになるように、グラビア印刷法で印刷し乾燥して、膨潤性の接着層19を形成して、基材11/接着層19/ハードコート層14/透明反射層17/ホログラム層15/プライマ層16/印刷層18の層構成からなる実施例1のホログラム転写箔10を得た。
【0082】
(実施例2)剥離されて露出したレリーフの賦型されていないホログラム層15面へ、ファインラップスーパーメタリックシルバーインキ(大日本インキ化学工業社製、高輝度インキ商品名)を用いて、グラビア印刷法で、乾燥後の厚さが2μmになるように印刷して、高輝度インキからなる印刷層18を形成する以外は実施例1と同様にして、実施例2のホログラム転写箔10を得た。
【0083】
(評価方法)実施例1のホログラム転写箔10の印刷層18面へ、膨潤化液としてイソホロンをグラビア印刷法で3g/m2塗布し、次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして水面上に浮かべ、しかる後、上記塗布面に向つて上方から、被転写体としてアクリル樹脂製で丸みを有する携帯電話外側ケースを下降させてその全部を液面下に沈降させた後、被転写体を水中より取り出し、さらに基材としたPVAフィルムを被転写体表面から温水で除去したところ、携帯電話外側ケースの曲面を含んだ全面に、高輝度でキラキラ感があり、高意匠性の透明な回折格子効果が得られた。
実施例2のホログラム転写箔10では、膨潤化液としてシクロヘキサノンとグリコールモノエチルエーテルの等量混合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、携帯電話外側ケースの曲面を含んだ全面に、金属様光沢の高輝度でキラキラ感があり、高意匠性のホログラム(回折格子)効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のホログラム転写箔を製造するための予備転写箔の断面図である。
【図2】本発明のホログラム転写箔を製造を説明するための説明図である。
【図3】本発明の1実施例を示すホログラム転写箔の断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10:ホログラム転写箔
11:基材
13:離型層
14:ハードコート層
15:ホログラム層
16:プライマ層
17:透明反射層
18:印刷層
19:接着層
21:転写層
40:予備転写箔
41:予備転写箔基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層を膨潤させうる溶剤を含む膨潤化液を塗布し、次いで乾燥前に、前記塗布面を上にして液体上に浮かべ、しかる後、前記塗布面に向つて上方から曲面を有する被転写体を下降させてその一部ないし全部を液面下に沈降させた後、被転写体を液体内より取り出し、さらに基材を被転写体表面から除去するる液圧転写方法に用いるホログラム転写箔であって、前記基材と、該基材の一方の面に接着層、透明反射層、ホログラム層、及び印刷層が順次積層されてなり、前記基材が水溶性であり、前記接着層がフィラーを含み、前記印刷層が膨潤性であることを特徴とするホログラム転写箔。
【請求項2】
上記透明反射層が酸化チタン薄膜であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム転写箔。
【請求項3】
上記印刷層が少なくとも有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で表面処理した金属蒸着膜細片を含む高輝度インキの印刷層であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム転写箔。
【請求項4】
(1)予備転写箔基材と、該予備転写箔基材の一方の面に離型層、ホログラム層及び透明反射層を有する予備転写箔を準備する工程と、(2)該予備転写箔の透明反射層面と別途用意した基材とをドライラミネート法で積層する工程と、(3)しかる後に、予備転写箔基材及び離型層を剥離し除去する工程と、(4)露出したホログラム層面へ印刷層を設ける工程と、からなることを特徴とするホログラム転写箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−158142(P2008−158142A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345338(P2006−345338)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】