説明

ホーン取付構造

【課題】ホーン音圧を確保すると共に車体前部のデザインの制約を低減することができる安価なホーン取付構造を提供すること。
【解決手段】フロントバンパ2とフロントバンパ2の上方に配されたグリル開口部31を設けたフロントグリル3とを有する自動車の車体前部に、警音を発生するホーン4を取付けてなるホーン取付構造1。ホーン4は、フロントグリル31の後方に配設されている。ホーン取付構造1は、フロントグリル3の後面32からホーン4の外周に向かって後方に配設された音圧反射カバー5を有している。音圧反射カバー5は、ラジエータサポートシール6の一部、フロントグリル3の一部、及びフロントバンパ2の一部の少なくとも一つによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体前部に、警音を発生するホーンを取付けてなるホーン取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部には、警音を発生するホーンが取付けてある(特許文献1参照)。自動車用のホーンは、車両法規(道路運送車両の保安基準第43条)により、93〜112dBの音圧が必要とされている。このホーン音圧を確保するために、ホーンの前方を閉塞しないよう、フロントグリルのグリル開口部からホーンが充分に露見するようにしてある。例えば、前面視においてホーンがグリル開口部から露見する面積の割合であるホーン開口率が50%以上となるようにする。
【0003】
しかし、グリル開口部を大きくしてホーン開口率50%を確保しようすると、フロントグリルのデザインの制約が生じ、所望のデザインを行うことが困難となる場合がある。
一方、ホーン自体の音圧を大きくしようとすると、ホーンの大型化、高コスト化につながるおそれがある。また、ホーン音圧向上のためだけに特別な構成を追加することも、製造コストの点で不利となる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−34737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ホーン音圧を確保すると共に車体前部のデザインの制約を低減することができる安価なホーン取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フロントバンパと該フロントバンパの上方に配されたグリル開口部を設けたフロントグリルとを有する自動車の車体前部に、警音を発生するホーンを取付けてなるホーン取付構造において、
上記ホーンは、上記フロントグリルの後方に配設されており、
上記ホーン取付構造は、上記フロントグリルの後面から上記ホーンの外周に向かって配設された音圧反射カバーを有しており、
該音圧反射カバーは、エンジンからの熱風がラジエータの前方へ回り込むことを防止すると共に該ラジエータの露見を防ぐためのラジエータサポートシールの一部、上記フロントグリルの一部、及び上記フロントバンパの一部の少なくとも一つによって構成されていることを特徴とするホーン取付構造にある(請求項1)。
【0007】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ホーンは、上記グリル開口部を設けたフロントグリルの後方に配される。そして、フロントグリルの後面から上記ホーンの外周に向かって上記音圧反射カバーが配設されている。そのため、上記ホーンから発生した警音は、上記音圧反射カバーによって拡散を防止されつつ、フロントグリルへ導かれる。それ故、車両前方において、充分なホーン音圧を確保することができる。
【0008】
また、これにより、ホーン開口率が小さくなっても、充分なホーン音圧を確保することができる。それ故、上記フロントグリルのグリル開口部を小さくすることが可能となり、フロントグリルのデザインの制約を低減することができる。
また、上記音圧反射カバーは、上記ラジエータサポートシールの一部、上記フロントグリルの一部、及び上記フロントバンパの一部の少なくとも一つによって構成されている。そのため、上記音圧反射カバーとして特に新たな部材を追加することなく、上述のごとくホーン音圧を向上させることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができ、安価なホーン取付構造を得ることができる。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、ホーン音圧を確保すると共に車体前部のデザインの制約を低減することができる安価なホーン取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明(請求項1)において、上記ホーンと上記音圧反射カバーとの間隔は、8〜30mmとすることができる。この場合には、ホーン音圧の確保及び省スペース化を図ると共にホーンと音圧反射カバーとの干渉を防止することができる。
【0011】
また、上記音圧反射カバーは、前面視における上記ホーンの全周に相当する位置に配設してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上下左右への警音の拡散を効果的に防止し、ホーン音圧を確保することができる。
【0012】
また、上記音圧反射カバーは、上記ホーンの後方にも配設してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記ホーンから後方へ向かった警音についても前方へ反射することにより、ホーン音圧の向上を図ることができる。
【0013】
また、上記ホーンの前面と上記フロントグリルの後面との間隔は、8〜30mmであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、グリル開口部からの警音の抜けが向上し、警音を車体前方へより確実に導くことができると共に、ホーンとフロントグリルとの干渉を防止することができる。
上記間隔が8mm未満の場合には、製造バラツキ、車両走行時の振動等により上記ホーンとフロントグリルとが干渉して、ホーンやフロントグリルに損傷を与えるおそれがある。一方、上記間隔が30mmを超える場合には、ホーンからの警音をフロントグリルを通して車体前方へ効率よく導くことが困難となるおそれがある。
【0014】
また、上記ホーン取付構造は、前面視において上記ホーンが上記グリル開口部から露見する面積の割合であるホーン開口率が35%以下であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、フロントグリルのデザインのバリエーションを充分に確保することができる。
上記ホーン開口率が35%を超える場合には、フロントグリルのデザインの制約が大きくなるおそれがある。
なお、ホーン音圧確保の観点から、例えば、ホーン開口率を10%以上とすることが好ましい。
【実施例】
【0015】
(実施例)
本発明の実施例にかかるホーン取付構造につき、図1〜図4を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例のホーン取付構造1は、フロントバンパ2と該フロントバンパ2の上方に配されたグリル開口部31を設けたフロントグリル3とを有する自動車の車体前部に、警音を発生するホーン4を取付けてなる。
【0016】
ホーン4は、図1〜図3に示すごとく、フロントグリル3の後方に配設されている。
ホーン取付構造1は、上記フロントグリル3の後面32から上記ホーン4の外周に向かって配設された音圧反射カバー5を有している。
該音圧反射カバー5は、ラジエータサポートシール6の一部、上記フロントグリル3の一部、及び上記フロントバンパ2の一部の少なくとも一つによって構成されている。本例においては、音圧反射カバー5は、ラジエータサポートシール6の一部とフロントバンパ2の一部とによって構成されている。
【0017】
上記ラジエータサポートシール6は、図3に示すごとく、エンジンからの熱風がラジエータ11の前方へ回り込むことを防止すると共に、ラジエータ11の露見を防いで見栄えを向上させるための部材である。即ち、ラジエータサポートシール6は、ラジエータ11を固定するラジエータサポート12の上面部とフロントグリル3の上面部との間の隙間を覆うように配されている。
【0018】
図4に示すごとく、上記音圧反射カバー5は、前面視におけるホーン4の全周に相当する位置に配設してある。また、図1、図2に示すごとく、音圧反射カバー5は、上記ホーン4の後方にも配設してある。
即ち、上記音圧反射カバー5は、ホーン4の上方、左方、右方、及び後方を覆うように形成されており、これらは上記ラジエータサポートシール6の一部により形成されている。また、上記ホーン4の下方においても、フロントバンパ2の一部をホーン4の前面位置にまで延ばすことにより、音圧反射カバー5を形成している。このように、上記音圧反射カバー5は、ラジエータサポートシール6或いはフロントバンパ2の一部として一体成形されている。
【0019】
また、図2に示すごとく、上記ホーン4は、背面に固定された取付部材42を介して、ラジエータサポート12に固定されている。そして、上記音圧反射カバー5は、取付部材42を挿通する開口部51を側方に設けてなる。
また、図1に示すごとく、上記フロントグリル3の上方にはフロントフード13が配置される。
【0020】
図1、図2に示すごとく、ホーン4の前面41とフロントグリル3との間隔d1は、約10mmである。また、ホーン4と音圧反射カバー5との間隔d2は、約10mmとしている。
上記ホーン取付構造1は、図4に示すごとく、前面視においてホーン4がグリル開口部31から露見する面積の割合であるホーン開口率が約16%である。
ここで、ホーン開口率は、以下のごとく定義される。即ち、前面視におけるホーン4の前面41の面積(図4の斜線のハッチング部分の面積)をS1とし、グリル開口部31からホーン4の前面41が見える部分の面積(図4のドットのハッチングの面積)をS2としたとき、上記ホーン開口率はS2/S1である。
【0021】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記ホーン4は、グリル開口部31を設けたフロントグリル3の後方に配される。そして、フロントグリル3の後面32からホーン4の外周に向かって、音圧反射カバー5が配設されている。そのため、上記ホーン4から発生した警音は、上記音圧反射カバー5によって拡散を防止されつつ、フロントグリル3へ導かれる。それ故、車両前方において、充分なホーン音圧、即ち車両法規を満足できるホーン音圧を確保することができる。
【0022】
また、これにより、ホーン開口率が小さくなっても、充分なホーン音圧を確保することができる。それ故、上記フロントグリル3のグリル開口部31を小さくすることが可能となり、フロントグリル3のデザインの制約を低減することができる。
即ち、本例のように、ホーン開口率を約16%とすることも可能となり、これにより、フロントグリル3のデザインのバリエーションを充分に確保することができる。
【0023】
また、上記音圧反射カバー5は、ラジエータサポートシール6の一部と、フロントバンパ2の一部とによって構成されている。そのため、音圧反射カバー5として特に新たな部材を追加することなく、上述のごとくホーン音圧を向上させることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができ、安価なホーン取付構造1を得ることができる。
【0024】
また、図4に示すごとく、音圧反射カバー5は、前面視におけるホーン4の全周に相当する位置に配設してあるため、上下左右への警音の拡散を効果的に防止し、ホーン音圧を確保することができる。
また、上記音圧反射カバー5は、ホーン4の後方にも配設してあるため、ホーン4から後方へ向かった警音についても前方へ反射することにより、ホーン音圧の向上を図ることができる。
【0025】
また、ホーン4の前面41とフロントグリル3との間隔d1は、約10mmである。これにより、グリル開口部31からの警音の抜けが向上し、警音を車体前方へより確実に導くことができると共に、ホーン4とフロントグリル3との干渉を防止することができる。
即ち、自動車走行時の振動等に起因する干渉によりホーン4やフロントグリル3に損傷を与えるおそれを排除することができると共に、ホーン4からの警音をフロントグリル3を通して前方へ効率よく導くことができる。
【0026】
また、ホーン4と音圧反射カバー31との間隔d2は、約10mmとしているため、ホーン音圧を確保すると共にホーン4と音圧反射カバー5との干渉を防止することができる。
【0027】
以上のごとく、本例によれば、ホーン音圧を確保すると共に車体前部のデザインの制約を低減することができる安価なホーン取付構造を提供することができる。
【0028】
(実験例)
本例は、図5に示すごとく、本発明のホーン取付構造によるホーン音圧の向上を評価した例である。
測定方法としては、車両法規(道路運送車両の保安基準第43条)に従い、自動車71の車体前部710から7m前方位置において、高さ0.5〜1.5mの間で測定器72を移動させつつホーン音圧を測定した。そして、その中の最大ホーン音圧を測定値として評価した。
この試験を、実施例に示した本発明のホーン取付構造と、比較例のホーン取付構造とについてそれぞれ行った。比較例のホーン取付構造は、実施例に示した音圧反射カバー5を設けていない構造であり、その他は実施例と同様である。
【0029】
上記の測定の結果、比較例のホーン取付構造の場合、ホーン音圧は約95dBであったのに対し、実施例のホーン取付構造の場合、ホーン音圧は約101dBとなり、約6dBの音圧向上を達成できた。
なお、車両法規としては、ホーン音圧は93〜112dBを満たす必要がある。
【0030】
上記の結果から、以下のことが考察される。即ち、比較例のホーン取付構造の場合には車両法規をかろうじて満足しているが、車両やホーンのバラツキ等によってホーン音圧が2〜3dB変動することを考慮すると、充分であるとはいえない。一方、実施例のホーン取付構造を採用することにより、ホーン音圧を向上することができ、上記のバラツキを考慮しても、車両法規を充分に満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例における、ホーン取付構造の縦断面図。
【図2】実施例における、ホーン取付構造の水平断面図。
【図3】実施例における、車体前部の平面説明図。
【図4】実施例における、車体前部の正面図。
【図5】実験例における、ホーン音圧の測定方法の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 ホーン取付構造
2 フロントバンパ
3 フロントグリル
31 グリル開口部
4 ホーン
5 音圧反射カバー
6 ラジエータサポートシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパと該フロントバンパの上方に配されたグリル開口部を設けたフロントグリルとを有する自動車の車体前部に、警音を発生するホーンを取付けてなるホーン取付構造において、
上記ホーンは、上記フロントグリルの後方に配設されており、
上記ホーン取付構造は、上記フロントグリルの後面から上記ホーンの外周に向かって配設された音圧反射カバーを有しており、
該音圧反射カバーは、エンジンからの熱風がラジエータの前方へ回り込むことを防止すると共に該ラジエータの露見を防ぐためのラジエータサポートシールの一部、上記フロントグリルの一部、及び上記フロントバンパの一部の少なくとも一つによって構成されていることを特徴とするホーン取付構造。
【請求項2】
請求項1において、上記音圧反射カバーは、前面視における上記ホーンの全周に相当する位置に配設してあることを特徴とするホーン取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記音圧反射カバーは、上記ホーンの後方にも配設してあることを特徴とするホーン取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記ホーンの前面と上記フロントグリルの後面との間隔は、8〜30mmであることを特徴とするホーン取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記ホーン取付構造は、前面視において上記ホーンが上記グリル開口部から露見する面積の割合であるホーン開口率が35%以下であることを特徴とするホーン取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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