説明

ボイラ水系処理剤、及び、ボイラ水系処理方法

【課題】ボイラ本体は勿論、蒸気復水系の設備に対しても防食効果が得られるボイラ水系処理剤およびボイラ水系処理方法を提供する。
【解決手段】没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを含有するボイラ水系処理剤およびボイラ水系処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ水系に添加する、復水系の防食効果に優れたボイラ水系処理剤、及び、ボイラ水系処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ設備の防食のためにボイラ水系に添加する防食剤については従来から様々な技術があり、本発明者等も幾つかの提案(特開平03−277790公報(特許文献1)、特開平05−302185公報(特許文献2)等)を行ってきた。
【0003】
しかし、これら防食剤は通常はボイラ給水に対して添加されるために、ボイラの蒸気復水系の設備にはこれら従来の防食剤は到達せず、従ってこのようなボイラの復水系設備の防食対策が必要となっていた。
【特許文献1】特開平03−277790公報
【特許文献2】特開平05−302185公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ボイラ本体は勿論、蒸気復水系の設備に対しても防食効果が得られるボイラ水系処理剤およびボイラ水系処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のボイラ水系処理剤は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを含有することを特徴とする。
【0006】
本発明のボイラ水系処理方法は請求項2に記載の通り、没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを処理対象水系に添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のボイラ水系処理剤によれば、没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを有しており、これら薬剤の相乗効果により、ボイラ本体は勿論、蒸気復水系の設備に対しても防食効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のボイラ水系処理剤を構成する没食子酸及び/またはその塩、および、ジエチルヒドロキシルアミンは、いずれも単独でボイラ用脱酸素剤として用いられており、例えば、給水中に導入することにより、給水系やボイラ内部の水の脱酸素が行われ、効果的な防食効果が得られる。
【0009】
本発明のボイラ水系処理剤は、しかしながら、没食子酸及び/またはその塩、および、ジエチルヒドロキシルアミンの、これら2剤の相乗効果により、蒸気復水系の設備に対しても強力な防食効果が得られる。
【0010】
このような本発明のボイラ水系処理剤において、没食子酸を用いても、没食子酸塩を用いても、あるいは、これらの両者を用いてもよく、没食子酸塩を用いるときには、通常は金属塩やアンモニウム塩を用い、金属塩としては具体的にはナトリウム塩、カリウム塩等を単独で、または混合して用いることができる。
【0011】
上記のような没食子酸及び/またはその塩、および、ジエチルヒドロキシルアミンとは、重量比で100:1〜100:200となるように対象水系に添加することにより高い効果が得られるため好ましい。さらに好ましい範囲は100:10〜100:100である。
【0012】
さらに、没食子酸及び/またはその塩、および、ジエチルヒドロキシルアミンとは対象水系での濃度が合計で1mg/L以上、また200mg/L以下となるように添加することが好ましい。1mg/L未満であると十分な効果が得られない場合があり、また、200mg/Lを越えて添加してもその添加量に見合った効果が得られない。より好ましい添加量は、10mg/L以上、また100mg/L以下である。
【0013】
これらはそのまま適切な濃度となるように対象水系に添加しても良く、場合により予め水などの溶剤に溶解した液剤として、必要時にその溶液を対象水系に添加しても良い。
【0014】
本発明に係るボイラ水系処理剤は、没食子酸及び/またはその塩及び、ジエチルヒドロキシルアミン以上以外にも、ボイラ水系処理剤の効果を高め、あるいは、他の効果を付与するものとして通常、配合される他の成分を適量含んでいても良い。
【0015】
このような他の成分として、例えば、他の防食剤、スケール防止剤、復水処理剤、pH調整剤等、具体的には、亜硝酸塩、亜鉛塩、錫塩、モリブデン酸又はその塩、ヒドラジン、カルボヒドラジド、メチルエチルケトオキシム、タンニン、リグニン、リグニンスルホン酸、糖類、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩、オキシカルボン酸又はその塩、燐酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸又はその塩、ホスホノブタントリカルボン酸又はその塩、アクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、リン酸系重合体、イタコン酸系重合体、イソブチレン系重合体、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、アミノメチルプロパノール、オクタデシルアミン、モルホリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの一種又は二種以上を挙げることができる。
【0016】
本発明に係るボイラ水系処理剤は通常は給水系に添加するが、必要に応じてボイラ本体に直接添加しても良い。
【実施例】
【0017】
以下に本発明のボイラ水系処理剤の実施例について具体的に説明する。
【0018】
ボイラ補給水としては、つくば市水道水をカチオン交換樹脂によりカチオンをナトリウムイオンとした軟化水(「つくば市軟化水」と云う。)を用いた。また、試験に用いた試験装置の構成図を図1に示す。
【0019】
図中aがボイラ、bは熱交換器、cは凝縮水ピット、dは加熱用ヒータ、eは給水タンク、及び、fは薬液タンクであり、薬液及び給水はポンプを用いてボイラに供給され、ボイラからの蒸気は熱交換器bで凝縮され、凝縮水は凝縮水ピットcに供給される。
【0020】
運転条件は、蒸気発生量(凝縮水量に等しい)は2400g/h(このときの凝縮水量は2400mL/h)、ブロー量は240g/hとし、1日8時間運転し、16時間停止。停止中は蒸気バルブを閉じ、凝縮水ピットには凝縮水が満水状態で、かつ、気相なしの、密閉状態で保持されるようにした。
【0021】
ボイラ給水に対して表1に示す量(給水1リットル当たりのmg量)で、没食子酸、及び、ジエチルヒドロキシルアミンを供給した。
【0022】
【表1】

【0023】
このとき凝縮水ピットに40mm×15mm×2mmの軟鋼製及び銅製のテストピースを浸漬し、上記条件で3日間試験後、各テストピースの腐食速度(mg/dm2/日:mdd)を測定した。その結果を表1に併せて示した。
【0024】
表1の結果から、没食子酸、及び、ジエチルヒドロキシルアミンを含有する本発明に係るボイラ水系処理剤が、蒸気復水系において、没食子酸あるいはジエチルヒドロキシルアミンの単独添加と比べて、鉄及び銅に対して遙かに高い防食性を発揮できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
ボイラ水系に添加する、復水系の防食効果に優れたボイラ水系処理剤、及び、ボイラ水系処理方法に関し、ボイラ本体は勿論、蒸気復水系の設備に対しても高い防食効果が得られるので、ボイラ防食用途に好適に用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の蒸気及び復水系の防食方法を実施するための試験装置の構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを含有することを特徴とするボイラ水系処理剤。
【請求項2】
没食子酸及び/またはその塩と、ジエチルヒドロキシルアミンとを処理対象水系に添加することを特徴とするボイラ水系処理方法。

【図1】
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