説明

ボイラ

【課題】 特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することにある。
【解決手段】 燃料を燃焼させるバーナ2と、このバーナ2により生成されたガスが流通するガス流路3に水管8を配設した熱交換器4と、前記ガス中に含まれる水蒸気と一酸化炭素とから水素を生成する変成触媒11を含む変成器5と、この変成器5にて生成された水素により前記熱交換器4を通過したガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒6とを備えたことを特徴とする。また、前記変成器5の前記ガス流路3における配置位置が前記変成触媒11の好適反応温度域とされることを特徴とする。さらに、前記変成器5が前記熱交換器4の構成部材に前記変成触媒11を付着させて構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラなどのボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の比較的容量の小さいNOx発生源に対しても、環境への関心が高まり、低NOx化が求められている。
【0003】
これに対して、出願人は、NOx発生の抑制を排出CO値の低減に優先するように燃焼ガス温度を抑制して生成NOx値を所定値以下とする低NOx化ステップを行い、その後に前記低NOx化ステップからの排出CO値を所定値以下とする低CO化ステップを行う低NOx燃焼方法を提案している(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術によれば、10ppmを下回る低NOx化が可能となるが、5ppmを下回る低NOx化を実現することは難しい。これは、燃焼の特性により、5ppm以上のNOxの生成が避けられないことによる。
【0004】
そして、近年低NOx化の要求が一層高まっている。こうした低NOx化における課題は、つぎの通りである。
(1)5ppmを下回る低NOx化
(2)低空気比燃焼による省エネルギ化
【0005】
前記(1)の5ppmを下回る低NOx化を実現するには、尿素などの脱硝剤による脱硝装置を採用することにより可能であるが、身近に存在しない脱硝剤を用意し、管理する必要がある。また、尿素などの脱硝剤を用いた場合は、脱硝剤を噴霧するノズルに結晶が析出し、詰まるなどの問題がある。
【0006】
また、前記(2)の低空気比燃焼を行う場合、例えば、限りなく零に近い低O2の燃焼を行うと、一酸化炭素の発生量が多量となったり、安定した燃焼制御が困難である。
【0007】
【特許文献3】特開2004−125378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、請求項1に記載の発明のボイラは、バーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路を有する熱交換器と、前記ガス中に含まれる水蒸気と一酸化炭素とから水素を生成する変成触媒を含む変成器と、この変成器にて生成された水素により前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒とを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、前記バーナにより生成されるガス中に含まれる水蒸気と一酸化炭素とを用いて生成される水素を利用してNOxを還元するので、特別な脱硝剤を必要とすることなく、5ppm以下の低NOx化を実現できる。また、空気比を限りなく零に近い値にすることなく、空気比1.05〜1.10(酸素濃度1〜2%相当)程度の燃焼で前記低NOx化を実現できるので、比較的低い空気比により省エネルギーを実現でき
、かつ燃焼制御を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明のボイラは、請求項1において、前記変成器の前記ガス流路における配置位置が前記変成触媒の好適反応温度域とされることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記変成器は、使用する触媒の種類などによって水素を効率的に生成する上での好適な位置に配置されるので、前記変成器による効率的な水素の生成が行える。
【0013】
請求項3に記載の発明のボイラは、請求項1または請求項2において、前記変成器が前記熱交換器の構成部材に前記変成触媒を付着させて構成されることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記変成器のための特別な部材を必要としないので、前記変成器の構成、ひいてはボイラの構成を簡素化できるという効果を奏する。
【0015】
請求項4に記載の発明のボイラは、請求項3において、前記構成部材が前記熱交換器の水管に装着のフィンであることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明による効果に加えて、前記フィンの枚数などを調整することにより、前記変成器の水素生成能力の調整を容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、特別な脱硝剤を必要とすることなく、かつ比較的低い空気比にて、5ppmを下回る低NOx化が可能なボイラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態のボイラは、燃料を燃焼させるバーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路に水管を配設した熱交換器と、前記ガス中に含まれる水蒸気と一酸化炭素とから水素を生成する変成触媒を含む変成器と、この変成器にて生成の水素の存在下において前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒とを備えたことを特徴としている。
【0019】
この実施の形態においては、前記バーナにより燃料と燃焼空気とが混合されて燃焼する。このバーナの燃焼により生成されたガス(以下、燃焼ガスと称する。この燃焼ガスは、燃焼反応中のガスと燃焼反応が完了したガスとを含む概念である。)は、前記水管にて吸熱され、その温度は下流へゆくに従い低下する。燃焼ガス中に含まれる水蒸気(以下、単に蒸気という。)と一酸化炭素とから前記変成器にて水素が生成される。生成された水素は、前記還元触媒へと流れる。そして、この還元触媒において、生成された水素により、燃焼ガス中に含まれるNOxを還元し、排出NOx量を低減する。この低減量は、燃焼ガス中に含まれるNOx量に対する水素供給量により調整することができる。
【0020】
ここで、前記実施の形態の各構成要素について説明する。前記バーナは、好ましくは、予混合バーナとするが、先混合バーナとすることができる。このバーナには、13A,LPG等のガス燃料と燃焼空気とが供給され、好ましくは、前記バーナが安定燃焼可能という条件で、空気比を小さくする。具体的には、前記バーナを特許第3221582号公報に記載のような全一次空気式の予混合バーナとする場合、空気比を安定燃焼が可能で、燃焼制御が容易な1.05〜1.10とする。
【0021】
前記熱交換器は、缶体と称することができ、好ましくは、上,下ヘッダ間に多数の水管群を配した構成とするが、これに限定されるものではない。この熱交換器は、好ましくは、前記水管群により燃焼反応中の燃焼ガス(火炎と称することができる。)を冷却することにより燃焼温度を抑制して生成NOxを低減するものとする。こうすることで、前記変成器で生成する水素の量を低減することができる。
【0022】
前記熱交換器は、一対の水管壁間に多数の水管群を配設した所謂角型の缶体,または丸型の缶体とすることができる。角型のものは、矩形缶体内のガス流路に多数本の水管を縦方向(燃焼ガス流れ方向)に配列したものであり、例えば特許第3221582号公報に示される。丸型のものは丸型缶体内に円周方向に沿って形成されたガス流路に沿って多数本の水管を縦方向に配列したもので、例えば、特開2006−183927号公報,特開2004−197970号公報に示される。
【0023】
前記熱交換器は、ボイラを蒸気ボイラとする場合は、前記水管により蒸気を生成するように構成され、温水ボイラ(温水器)とする場合は、前記水管により温水を生成するように構成される。
【0024】
前記変成器は、燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素と蒸気とから変成触媒を用いて水素を生成する機能を有する。一酸化炭素と蒸気とから水素を生成する反応は、つぎの反応式(1)で表現される。なお、前記変成器にて生成される水素量は、燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素濃度に依存するため、燃焼ガス中の一酸化炭素の量を調整することで調整可能である。燃焼ガスは、好ましくは、その組成を一酸化炭素量がNOxと同じか、数十ppm過剰であるものとするが、これに限定されるものではない。
(1) CO+H2O→H2+CO2
【0025】
前記変成器は、好ましくは、前記熱交換器の構成部材に変成触媒を担持させ(付着させ)て構成される。前記構成部材としては、好ましくは、前記熱交換器を構成する水管に装着したフィンとする。このフィンの形状は、特に限定されないが、好ましくは、環状または螺旋状のフィンとする。前記フィン表面には、前記変成触媒を塗布するなどして付着させる。
【0026】
こうした前記変成触媒を付着させたフィンを前記変成器として用いることにより、前記変成触媒を付着させるための特別な基材を必要としないので、変成器の構成を簡素化できる。また、前記フィンの枚数、フィンの間隔を調整することにより、前記変成器の性能の調整を容易に行うことができる。また、前記変成器を前記熱交換器内に配置するので、省スペース化において効果が大きい。前記変成触媒を付着させる構成部材としては、前記熱交換器を構成する水管とすることもでき、また前記構成部材を前記水管おおよび前記フィンとすることもできる。
【0027】
前記変成触媒としては、例えばFe23,Cr23の混合物を用いることができる。この場合において、前記変成器を前記熱交換器のガス流路の前記ガス流路の320〜400℃の温度領域を有する部分に設置する。また、前記変成触媒としてCuO,ZnO,Al23の混合物を用いることができる。この場合において、前記変成器を前記熱交換器のガス流路の中に組み込む場合は、180〜250℃の温度領域を有する部分に設置する。
【0028】
前記還元触媒は、水素の存在下、または水素と一酸化炭素の存在下において前記燃焼ガス中の窒素酸化物を還元する機能を有する触媒であり、好ましくは、貴金属を用いたCO酸化触媒とする。
【0029】
前記還元触媒による窒素酸化物の還元反応は、つぎの反応式(2)(3)で表現される

(2) 2NO+2H2→2H2O+N2
(3) 2NO+H2→H2O+N2
【0030】
前記CO酸化触媒は、通気性を有する基材に触媒活性物質を担持した構成とすることができる。前記基材としては、ステンレスなどの金属,セラミックが用いられ、燃焼ガスとの接触面積を広くするような表面処理が施される。触媒活性物質としては、一般的に白金が用いられるが、実施に応じて、白金に代表される貴金属(Ag,Au,Rh,Ru,Pt,Pd)または金属酸化物を用いることができる。
【実施例1】
【0031】
以下、この発明の実施例1のボイラ1を図面に基づいて説明する。図1は、同実施例1の概略構成図であり、図2は、同実施例1の要部拡大断面の説明図である。前記ボイラ1は、蒸気ボイラであって、バーナ2と、このバーナ2による燃焼により生成される燃焼ガスが流通する燃焼ガス流路3を形成した角型(直方体形状)の熱交換器としての缶体4と、前記燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素と蒸気とから水素を生成する変成器5と、この変成器5にて生成の水素の存在下で窒素酸化物を還元する還元触媒6とを主要部として備える。
【0032】
前記バーナ2は、メタンからなる燃料と燃焼空気とを上流側でほぼ完全に予混合する特許第3221582号公報に記載のバーナと同様の予混合バーナとし、前記燃焼ガス流路3の上流側端部に設けている。このバーナ2の空気比は、省エネルギー,安定燃焼および燃焼制御の容易化の為、1.05(酸素濃度で、1%に相当)としている。
【0033】
前記缶体4は、上部ヘッダ,下部ヘッダ(図示省略)と水管壁(略して図示)7,7との間に前記燃焼ガス流路3を形成し、前記両ヘッダ間に多数の水管8群を設けている。前記水管8群における上流側の水管群は、燃焼反応中の燃焼ガスを冷却することにより燃焼温度を抑制して生成NOxを低減する位置に配設されている。この水管8群の配置と前記バーナ2の空気比1.05での燃焼により、前記燃焼ガス流路3の燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物濃度は、約40ppm程度となっている。また、燃焼の結果、燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素と蒸気との含有量は、たとえばそれぞれ約50ppm,約15%である。
【0034】
前記変成器5は、燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素と水蒸気とから水素を生成する機能を有する。この変成器5は、前記缶体4の構成部材であって、図2に示すように、基材としてのフィン9,9,…と、この各フィン9の表面に塗布された変成触媒11とから主構成される。前記各フィン9は、前記水管8群の下流域に設けた所定本数の水管8,8,…に装着されている。この水管8,8,…は、前記基材のフィン9を支持する支持部材として機能している。
【0035】
前記変成触媒11としては、Fe23およびCr23の混合物を用いている。そして、前記変成触媒11の機能を効果的に発揮させるために、前記変成器5を前記燃焼ガス流路3中の320〜400℃の温度領域を有する部分に配設している。
【0036】
この実施例1においては、前記各フィン9の厚みを約1mmとし,前記各水管8の厚みを約3.2mmとし、前記変成触媒11の厚みを約10ミクロンとしたフィン9,9,…を有する10本の水管8,8,…により、前記変成器5を構成している。
【0037】
前記還元触媒6は、前記缶体4の排ガス出口(前記燃焼ガス流路3の終端)12に接続の排ガス通路13に設けている。この還元触媒6は、水素と一酸化炭素の存在下において燃焼ガス中の窒素酸化物を還元するCO酸化触媒である。
【0038】
前記CO酸化触媒は、通気性を有する基材(図示省略)に触媒活性物質(図示省略)を担持した構成としている。前記基材としては、ステンレスを用い、燃焼ガスとの接触面積を広くするような表面処理を施している。触媒活性物質としては、白金を用いている。
【0039】
つぎに、前記実施例1の動作を説明する。図1において、燃料と燃焼空気とが混合された状態で、押し込み型送風機(図示省略)により前記バーナ2へ供給される。前記バーナ2において、燃焼が行われ、生成された燃焼ガスは、前記各水管8を加熱しながら、前記燃焼ガス流路3を前記排ガス出口12へ向けて流れる。燃焼ガスは、前記各水管8を加熱して蒸気を生成するとともに、吸熱により燃焼温度が抑制され、所定量、例えば約40ppmのNOxを含むガスとなる。燃焼ガスは、前記各水管8による吸熱により、その温度が下流へゆくに従い低下する。この燃焼ガス中には、前記バーナ2の燃焼と前記水管8群の冷却により生成された一酸化炭素と蒸気とが、それぞれ約50ppm,約15%程度含まれている。
【0040】
そして、前記変成器5において、蒸気と一酸化炭素の存在下で、前記変成触媒5の機能により水素が生成される。この反応は、つぎの式で表現される。
(1) CO+H2O→H2+CO2
【0041】
前記変成器5にて生成の水素は、前記還元触媒6へ流入する。この還元触媒6において、燃焼ガス中に含まれる窒素酸化物をつぎの反応式により還元し、排出NOx量を低減する。
(2) 2NO+2H2→2H2O+N2
(3) 2NO+H2→H2O+N2
【0042】
前記NOx低減量は、燃焼ガス中に含まれる一酸化炭素および蒸気の量と、前記変成触媒11の量とにより決まる。燃焼ガスの組成は、前記缶体、前記バーナおよび酸素濃度により、異なるため、各条件下での濃度の変動幅からあらかじめ変成触媒の量を決定する。
【0043】
この実施例1によれば、燃焼ガス中に含まれる蒸気と一酸化炭素とを用いて水素を生成し、この水素を利用してNOxを還元するので、特別な脱硝剤を必要とすることなく、簡易に5ppm以下の超NOxを実現できる。また、前記バーナ2の空気比を1.05(酸素濃度1%)程度の低空気比としているので、省エネルギ-を実現できるとともに、前記バーナ2を安定的に燃焼させることができ、前記バーナ2の燃焼制御を容易に行うことができる。
【0044】
また、この実施例1によれば、前記変成器5の変成触媒11を塗布する基材として前記各フィン9を用いているので、前記変成器5の構造を簡素化できるとともに、前記変成器5が前記缶体4の燃焼ガス流路3内に組み込まれて、燃焼ガスが水素を生成するための熱源として利用されているので、設備全体の小型化が可能となる。さらに、前記変成器5を水素変成に最適温度となる前記缶体4の燃焼ガス流路3の温度領域に配置しているので、前記変成器5による効率的な水素の生成が行える。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施例1のボイラの概略構成図である。
【図2】同実施例1の要部拡大断面の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ボイラ
2 バーナ
3 燃焼ガス流路(ガス流路)
4 缶体(熱交換器)
5 変成器
6 還元触媒
8 水管
9 フィン
11 変成触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、このバーナにより生成されたガスが流通するガス流路を有する熱交換器と、前記ガス中に含まれる水蒸気と一酸化炭素とから水素を生成する変成触媒を含む変成器と、この変成器にて生成された水素により前記熱交換器を通過したガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒とを備えたことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記変成器の前記ガス流路における配置位置が前記変成触媒の好適反応温度域とされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項3】
前記変成器が前記熱交換器の構成部材に前記変成触媒を付着させて構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記構成部材が前記熱交換器の水管に装着のフィンであることを特徴とする請求項3に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−82610(P2008−82610A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262243(P2006−262243)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】