説明

ボス部を備えた物品の製造方法、及び物品

【課題】板状部材に無理な変形を強いることなく高さ寸法を大きくすることができるボス部を備えた物品の製造方法を提供する。
【解決手段】ボス部を一体に備えてなる物品を製造するための方法であって、板金素材につぶし加工を施して環状の薄肉部u2を形成するとともに、その薄肉部の内側に増肉部を作りだし、その増肉部にバーリング加工を施して筒部u3を形成し、その筒部と薄肉部との間に存在する増肉部の塑性変形を利用して絞り上げ加工によりカップ状の突起p11を設け、筒部の内周にねじ溝p13を刻設してねじ孔p12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボス部を備えた物品の製造方法、及びボス部を備えた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボス部を備えた板状部材を形成するために、板状部材にバーリング加工及びタップ加工を施すものが種々知られている(例えば、特許文献1を参照)。より具体的には、板状部材にバーリング加工を行ってフランジ部を形成した後、フランジ部の内周にタップ加工を施し、ねじ孔を形成するものである。
【0003】
このように、バーリング加工によってフランジ部を形成するにあたっては、次のような一定の限界があった。すなわち、フランジ部の突出寸法を長くしようとすると、板状部材に無理な変形を強いることとなり、板状部材に亀裂等が入る可能性があった。そのため、ボス部を備えた板状部材と、このボス部を介して取り付けられる他の部材との間の距離を一定以上長くすることが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005‐324273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためのもので、板状部材に無理な変形を強いることなく高さ寸法を大きくすることができるボス部を備えた物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係るボス部を備えた物品の製造方法は、ボス部を一体に備えてなる物品を製造するための方法であって、板金素材につぶし加工を施して環状の薄肉部を形成するとともに、その薄肉部の内側に増肉部を作りだし、その増肉部にバーリング加工を施して筒部を形成し、その筒部と前記薄肉部との間に存在する増肉部の塑性変形を利用して絞り上げ加工によりカップ状の突起を設け、前記筒部の内周にねじ溝を刻設してねじ孔を形成することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、バーリング加工を施して通常の長さ程度の筒部を形成した後に、増肉部の存在を利用してその筒部の外側を絞り上げ加工するため、板状部材に無理な変形を強いることがなく、筒部の突出寸法よりもボス部全体の高さ寸法を無理なく大きくすることが可能となる。
【0008】
前記物品が単一の部材から構成されている場合は、前記ボス部が前記部材に一体に形成されていることが好ましい。この場合の単一の部材とは、外見上一つの物体として認識し得る部材であって、塑性変形が可能なものであればどのようなものでもよく、たとえば、単一金属あるいは合金等の金属素材を一定の形状に成形してなるものだけでなく、クラッドやメッキ等の複数の金属素材を積層あるいは混在させて一定の形状に成形してなるもの、あるいは、金属素材と非金属素材とを混在させて一定の形状に成形してなるもの等が含まれる。
【0009】
一方、前記物品が複数の部材から構成されている場合は、前記ボス部が前記部材の少なくとも一部と一体に形成されていることが好ましい。この場合の複数の部材とは、外見上複数の物体として認識し得る部材であって、少なくともボス部が形成される部材については塑性変形が可能なものであればよい。ボス部が形成されない部材については、塑性変形が可能であるか否かを問わず、あらゆる材料で作られたものを含む。
【0010】
このような製造方法でつくられる物品としては、部材の一部にボス部を一体に形成してなるものであって、前記ボス部が、部材の一部を絞り上げ加工により一面側に膨出させてなる突起と、この突起の先端壁の一部をバーリング加工により突起内方側に突出させてなり内周にねじ溝を刻設してなる筒部とを具備してなり、前記筒部の突出寸法が前記突起の膨出寸法よりも小さく設定してあることを特徴とするものが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、板状部材に無理な変形を強いることなく高さ寸法を大きくすることができるボス部を備えた物品の製造方法、及びその方法により作られた物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態である物品の斜視図。
【図2】図1における一部を省略して示す模式的なA−A線断面図。
【図3】同実施形態の分解斜視図。
【図4】同実施形態における物品の製造工程を示す断面図。
【図5】同実施形態における物品の製造工程を示す断面図。
【図6】図1におけるVの一部を切断した部分拡大斜視図。
【図7】同実施形態におけるボス部の製造工程を示す断面図。
【図8】同実施形態におけるボス部の製造工程を示す断面図。
【図9】同実施形態におけるボス部の製造工程を示す断面図。
【図10】同実施形態におけるボス部の製造工程を示す断面図。
【図11】同実施形態におけるボス部の製造工程を示す斜視図。
【図12】図2におけるVIの部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
【0014】
この実施形態は、本発明を電子機器の筐体用部品であるノートパソコンのキーボード形成用の上面盤Jに適用した場合のものであり、説明の都合上、図1〜図12では内面側が上を向くように描いてある。
【0015】
この上面盤Jは、それぞれが単品プレス加工により作られた形状の異なる複数枚の板状部材、すなわち、外部に表出する表側の板状部材1aと、この表側の板状部材1aの裏側に添接される中間の板状部材1bと、この中間の板状部材1bの裏面側に添接される裏側の板状部材1cとが重ね合わされた状態で接着層sを介して接合されてなる。前記各板状部材1a、1b、1cは金属製のもので具体的には、鉄、アルミ、銅、ステンレス、チタン、マグネシウムなどが用いられる。
【0016】
この上面盤Jは、局所的な特異形状部分である複数のボス部p1とキーボード形成用の領域r1を構成するための厚肉部p2とを有している。しかして、この上面盤Jは、キーボード形成用の領域r1と、この領域r1を囲むフレームプレート形成用の領域r2とを具備している。そして、前記接着層sが板状部材1の接合面全域に亘ってとぎれることなく略一定の厚さで存在している。
【0017】
ボス部p1は、取付のための部分であって中間の板状部材1bにより形成されており、中間の板状部材1bを表側の板状部材1aに接着した状態で筐体の内方に突出する形態をなしている。換言すれば、上面盤Jを構成する板状部材の一部である中間の板状部材1bにボス部p1を一体に形成してなる物品である上面盤Jは、前記ボス部p1が、中間の板状部材1bを絞り上げ加工により一面側、すなわち上面盤Jの裏面側に膨出させてなる突起p11と、この突起p11の先端壁p14の一部をバーリング加工により突起p11内方側に突出させてなり内周にねじ溝p13を刻設してなる筒部u3とを具備してなり、前記筒部u3の突出寸法s1が前記突起p11の膨出寸法s2よりも小さく設定してあるとともに、前記筒部u3の内径寸法は、前記突起p11の内径寸法よりも小さく設定してある。ボス部p1は、前記中間の板状部材1bを単品プレス加工により作る際にこの板状部材1bに一体に形成されるボス部形成用の突起p11を主体に構成されたもので、その突起p11の先端部分のねじ孔p12にタップ加工を施してねじ溝p13を形成したうえで前記中間の板状部材1bを表側の板状部材1aに接着することにより作られている。突起p11は内部に空洞p111を有したものでこの空洞p111は表側の板状部材1aにより塞がれている。換言すると、上面盤Jは、ボス部p1により中空化した部分を有したものとなっている。すなわち、物品たるノートパソコンのキーボード形成用の上面盤Jが複数の板状部材1a、1b、1cから構成されており、前記ボス部p1が前記板状部材1a、1b、1cのうちの一部、すなわち前記中間の板状部材1bと一体に形成されているものである。
【0018】
厚肉部p2は、主として強度を変化させるための部分であって、表側の板状部材1aの裏面に中間の板状部材1bと裏側の板状部材1cとを重ね合わせて接着することにより作られている。裏側の板状部材1cはキーボード形成用の領域r1に対応させた形状をなしており、中間の板状部材1bはキーボード形成用の領域r1とフレームプレート形成用の領域r2とを合わせた形状をなしている。そのため、キーボード形成用の領域r1は表側、中間、裏側の三枚の板状部材1a、1b、1cにより構成され、一方、フレームプレート形成用の領域は表側、中間の二枚の板状部材1a、1bにより構成されている。その結果、キーボード形成用の領域r1は、フレームプレート形成用の領域r2と比べて裏側の板状部材1cの厚み分だけ厚み寸法が大きくなっている。したがって、この上面盤Jは、前記板状部材の重ね合わせ枚数が相互に異なり、且つ厚みも異なる複数の領域を備えている。
【0019】
換言すれば、裏側の板状部材1cは、上面盤Jにおいて重ね合わせ枚数が相互に異なるとともに、厚みも異なる複数の領域を形成させるものであり、上面盤Jにおける強度的特性を変化させるための要素を少なくとも含んでいる。なお、表側の板状部材1aは、筐体の外面の一部を構成しており、外観を整えるための意匠面を形成する要素を少なくとも含んでいる。
【0020】
キーボード形成用の領域r1には、図示しないキーを収容するための複数のキー収容孔11が多数穿設されている。また、フレームプレート形成用の領域r2には図示しないトラックパッド及びクリックボタン表出用の窓12、スイッチボタンの表出用の孔13、及び、ヒンジに対応する切欠部14が形成されており、前記各ボス部p1はこの領域r2に設けられている。
【0021】
次いで、この上面盤Jの製造方法を説明する。
【0022】
この上面盤Jは、図4及び図5に示すように、単品プレス加工により作られた金属製の表側の板状部材1aに、異形状に別加工した中間の板状部材1b及び裏側の板状部材1cを重ね合わせ、それら板状部材1a、1b、1cをストローク制御機構を備えたプレス機による接着プレス加工に伴わせて接合することにより作られる。その過程で、前述したような局所的な特異形状部分であるボス部p1と厚肉部p2が同時に形成される。ここで、「接着プレス加工」とは、重ね合わせた複数枚の板状部材1a、1b、1cを接着させるために厚み方向に圧縮する加工全般を意味して命名した文言である。また、「単品プレス加工」とは、板金素材Uにプレス加工を施すことにより所定の形状をなす各板状部材1a、1b、1cを作る行為を意味しており、説明の便宜上、前記「接着プレス加工」と明確に区別するために命名した文言である。
【0023】
前記接着プレス加工は、板状部材1a、1b、1c間に介在させた接着層sの接着機能を少なくとも惹起させる加工であり、本実施形態においては、圧接力を加えつつ板状部材間に介在させた接着層sを熱により溶融させることにより行うものである。
【0024】
詳述すれば、単品プレス加工により裏面に接着層sを有した表側の板状部材1aと、接着層を有しない中間の板状部材1bと、表面に接着層sを有した裏側の板状部材1cとをそれぞれ製作する。しかる後に、それらの板状部材1a、1b、1cを重ねあわせたうえで、前記接着層sが溶融する程度の温間で接着プレス加工を施すことにより前記各板状部材1a、1b、1c同士を接合する。次いで、表側の板状部材1aの周縁部15にヘミング加工を施して上面盤Jの輪郭部分の仕上げを行うとともに、前記キー収容孔11、トラックパッド及びクリックボタン表出用の窓12、スイッチボタン表出用の孔13、及び、ヒンジに対応する切欠部14等に対して仕上げプレス加工である貼付シェービング加工を行う。貼付シェービング加工は、前記接着プレス加工を終えた後に不要部分stを切除するためのものである。前記不要部分stは、完成品の縁を構成すべき部位からはみ出た部分であり、この実施形態においては、例えば、図12に示すようにキー収容孔の内周縁からはみ出た部分stを意味している。はみ出た部分stには、板状部材の金属部分st1や接着層の部分st2あるいはその両方が含まれる。
【0025】
具体的には、完成品である上面盤Jのキー収容孔11の内径寸法m1よりも単品プレスにより形成される各板状部材1のキー収容孔11に相当する孔11´の内径寸法m2を若干小さくしている場合には、この貼付シェービング加工により接着層の部分st2だけでなく金属部分st1をも打ち抜くことになる。その際、プレス機の上型と下型とのクリアランスをゼロに近い状態に設定した上で冷却しつつ打ち抜くことによってキー収納孔11の内周が鏡面仕上げ状態となり製品の外観レベルにまで加工面を成形することができる。この貼付シェービング加工は、前記窓12や切欠部14に対しても同時に行うことができる。
【0026】
表側の板状部材1aに関する単品プレス加工は、打ち抜き加工を伴う通常のプレス加工技術を用いて行われる。
【0027】
中間の板状部材1bに関する単品プレス加工は、打ち抜き加工を伴う通常のプレス加工技術に加えてボス部p1を形成するための特殊なプレス加工工程が加えられている。図6には、そのボス部p1の拡大図であり一部を切断して内部構造も示している。プレス加工によりボス部p1を成形するにはまず、図7に示すような中間の板状部材1bを構成する板金素材Uに、図8に示すようにつぶし加工を施して円環状の薄肉部u1を形成するとともに、その薄肉部u1の内側に増肉部u2を作りだす。しかる後に、図9に示すように、その増肉部u2にバーリング加工を施して筒部u3を形成し、その筒部u3と前記薄肉部u1との間に存在する増肉部u2の塑性変形を利用して絞り上げ加工により図10に示すようなカップ状の突起p11を設ける。そして、前記筒部u3の内周にタップ加工によりねじ溝p13を刻設してねじ孔p12を形成する。以上の工程を行うことにより、図11に示されるようなボス部p1を得ることができる。
【0028】
裏側の板状部材1cに関する単品プレス加工は、打ち抜き加工を伴う通常のプレス加工技術を用いて行われる。
【0029】
以上に述べたように、本実施形態に係るボス部p1を備える上面盤Jの製造方法は、板金素材Uにつぶし加工を施して環状の薄肉部u1を形成するとともに、その薄肉部u1の内側に増肉部u2を作りだし、その増肉部u2にバーリング加工を施して筒部u3を形成し、その筒部u3と前記薄肉部u1との間に存在する増肉部u2の塑性変形を利用して絞り上げ加工によりカップ状の突起p11を設け、前記筒部u3の内周にねじ溝p13を刻設してねじ孔p12を形成している。すなわち、バーリング加工を施して中間の板状部材1bに亀裂が入らない程度の高さを有する筒部u3を形成した後に、増肉部u2の存在を利用してその筒部u3の外側を絞り上げ加工するため、中間の板状部材1bに無理な変形を強いることがなく、筒部u3の突出寸法s1よりもボス部p1全体の高さ寸法を無理なく大きくすることが可能となる。すなわち、バーリング加工を施して筒部u3を形成した後に、その筒部u3の外側を絞り上げ加工するため、この絞り上げ加工によって前記筒部u3が中間の板状素材1bよりも厚さ方向に変位した位置に形成されることとなる。したがって、ボス部p1を備えた中間の板状部材1bと、このボス部p1を介して取り付けられる筐体との間の距離を、無理なく大きくすることが可能となる。
【0030】
また、板金素材Uにつぶし加工を施して増肉部u2を作り出し、その増肉部u2に絞り上げ加工を施しているので、この板金素材Uに亀裂等を生じさせることなく、深く絞り出すことができる。
【0031】
さらに、本実施形態にかかる上面盤Jの製造方法によれば、現在行われている低生産性・高コストのアルミ削り出し加工によって作られた上面盤の製造に比べて、安価なプレス加工によって背の高いボス部p1を形成することができるため、工数の大幅な増大を招くことなく種々の形態の物品を製造することが可能となる。すなわち、複雑な形状の板状部材1a、1b、1cを組み合わせることにより、一体加工に比べ、加工にかかるコストを大幅に削減できる。
【0032】
また、本実施形態にかかる上面盤Jの製造方法によれば、板金素材Uの強度を維持した上での軽量化、及び薄型化を図ることができるとともに、従来のようなアルミ削り出し加工の場合よりも、加工時の歪みを抑えることができる。また、表側の板状部材1aにはボス部p1に対応した凹凸が形成されないため、意匠面のデザイン性の自由度を高めることができる。
【0033】
本実施形態にかかる上面盤Jの多層部品の一部、例えば表側の板状部材1aを予めカラー化することにより、別工程での塗装等の後処理が不要となる。
【0034】
さらに、中間の板状部材1bとボス部p1とを一体化したことによって、部品点数の削減を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は以上に説明した各実施形態に限られないのはもちろんのことである。
【0036】
上述した実施形態においては、本発明をノートパソコンの筐体を構成する上面盤に適用した場合について説明したが、本発明はこのようなものに限らず種々の製品の部品に適用が可能である。たとえば、携帯電話の筐体を構成する操作部側上面盤及び表示部側上面盤、デジタルカメラの筐体を構成する前面盤及び後面盤、矩形状の携帯電話の筐体を構成する後面盤、携帯型ゲーム機の筐体を構成する前面盤及び後面盤、携帯型カーナビゲーションの筐体を構成する前面盤及び後面盤、その他、本発明に係る電子機器の筐体の一部を構成する物品としては、以上に説明したもののほか、デスクトップ用パソコン、スマートフォン又は携帯情報端末(PDA)など、種々のものを挙げることができる。また、本発明に係る物品は、電子機器に限らず、自動車や航空機の部品としても適用することが可能である。
【0037】
プレス加工の度合いを高め、工数の抑制により一層寄与するためには、前記全ての板状部材が、それぞれ単品プレス加工により作られた金属製のものであることが望ましい。なお、金属製の板状部材には、鋼板、アルミ板、ステンレス板、チタン板、ジュラルミン板、マグネシウム板などの単体素材金属板だけでなく、金属板を主体にし、その表面や裏面の全域に種々のコーティング層を有したものも含まれる。
【0038】
しかしながら、前記板状部材の少なくとも1枚が、非金属製のものであれば、非金属製の板状部材の特性を効果的に利用した部品を得ることができるものとなる。非金属製のものとしては、例えば樹脂製、ガラス製、木製、陶磁製、モルタル製又はコンクリート製のものなどを挙げることができる。
【0039】
具体的に例示すれば、種々の仕様に適用するには、前記複数枚の板状部材の少なくとも1枚に、強度的特性を変化させるための要素を含んだもの、質量分布を変化させるための要素を含んだもの、熱、電気、電磁波、音、光等を遮蔽するための遮蔽機能を有した要素を含んだもの、制振機能を有した要素を含んだもの、又は、外観を整えるための意匠面を形成する要素を含んだものなどを適用することが好ましい。ここで、「強度的特性」とは、強度に関する特性全般を意味し、具体的には、剛性、軟性、可撓性、靭性、弾性、ねじれ性、耐圧性などを挙げることができる。「要素」には、形態に係わるもの、材質に係わるもの、色彩に係わるもの、電気特性に係わるもの、耐熱性に係わるもの、塑性変形加工性に係わるもの、腐食性に係わるもの、時効変化特性に係わるもの、あるいは、これらを複合したものなどが含まれる。なお、形態には、形状、模様、構造などが含まれる。たとえば、表側の板状部材1a、中間の板状部材1b、裏側の板状部材1cからなる3ピース構造において、各板状部材1a、1b、1cにアルミ材を用いることにより放熱性を上げることができる。また、これらアルミ材を用いた板状部材1a、1b、1c間に断熱シートを入れることにより断熱性を上げることができる。
【0040】
このように、種々にわたる板状部材を使用目的に応じて選択し、これらを組み合わせることが好ましく、また、多層部材各々の材質を選択することにより、物品の軽量化や剛性アップを図ることができる。
【0041】
ボス部の形状は、円形に限られず、楕円その他の異形状であってもよい。また、ボス部の数も、複数に限られず、1つであってもよい。さらに、筒部の形成位置についても、先端壁の中央には限られない。
【0042】
薄肉部は、完全な環状に形成されるものに限られず、間欠的に形成されるものであってもよい。
【0043】
タップ加工は、ねじ溝を有さないボス部の形成後に別工程で行っていたが、バーリング加工により筒部を形成するのと同じ工程で行ってもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0045】
p1…ボス部
p11…突起
p12…ねじ孔
p13…ねじ溝
s1…突出寸法
s2…膨出寸法
U…板金素材
u1…薄肉部
u2…増肉部
u3…筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部を一体に備えてなる物品を製造するための方法であって、
板金素材につぶし加工を施して環状の薄肉部を形成するとともに、その薄肉部の内側に増肉部を作りだし、その増肉部にバーリング加工を施して筒部を形成し、その筒部と前記薄肉部との間に存在する増肉部の塑性変形を利用して絞り上げ加工によりカップ状の突起を設け、前記筒部の内周にねじ溝を刻設してねじ孔を形成することを特徴とするボス部を備えた物品の製造方法。
【請求項2】
物品が単一の部材から構成されており、前記ボス部が前記部材に一体に形成されている請求項1記載のボス部を備えた物品の製造方法。
【請求項3】
物品が複数の部材から構成されており、前記ボス部が前記部材の少なくとも一部と一体に形成されている請求項1記載のボス部を備えた物品の製造方法。
【請求項4】
部材の一部にボス部を一体に形成してなる物品であって、
前記ボス部が、部材の一部を絞り上げ加工により一面側に膨出させてなる突起と、この突起の先端壁の一部をバーリング加工により突起内方側に突出させてなり内周にねじ溝を刻設してなる筒部とを具備してなり、前記筒部の突出寸法が前記突起の膨出寸法よりも小さく設定してあることを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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