説明

ボックスの内張部材

【課題】小物入れなどのボックス内に収納された物の落下を防止することができ、かつ、そのボックスに対して容易に着脱することができる、ボックスの内張部材を提供すること。
【解決手段】内張部材1は、1枚の金属の薄板が屈曲されることにより、下板部14、上板部15および奥板部16を有する断面略コ字状に形成されている。下板部14の手前側(車室側)の端部は、底板部9から持ち上がり、底板部9の手前側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲して、底板部9の手前側下方で手前側に折り返され、その折り返された部分がロアパネル5の正面に当接している。これにより、下板部14の手前側の端部には、底板部9の手前側の端部からボックス2外へと膨出した形状の堰部17が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室に設けられるボックスの内張部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前席の前方(車室の最前部)には、インストルメントパネル(ダッシュボード)が車幅方向の全幅にわたって設けられている。インストルメントパネルには、速度計、距離計および燃料計などの計器類、カーオーディオ、エアコンディショナの吹き出し口、スイッチ類や数枚の硬貨を収容可能なコインケースなどが装着される。
【0003】
インストルメントパネルの空きスペースに、小物入れが設けられることがある。たとえば、インストルメントパネルの中央部には、カーオーディオまたはカーナビゲーションシステムなどを装着可能なスペースが確保されているが、そのスペースよりも薄いカーオーディオなどが装着された場合に、残りの空きスペースに小物入れが設けられることがある。また、運転席の前方の空きスペースに、煙草の箱を収容可能な程度のサイズの小物入れが予め設けられていることがある。
【0004】
この小物入れにおいて、前席側(車両の後方)が開放されたボックスからなる簡素な構成を採用したものがある。簡素な構成のため、小物入れを設けることによる大幅なコストアップを回避することができる。また、前席側が開放されているので、運転中の運転者からも小物入れへのアクセスが容易であるという利便性もある。その反面、急発進時や急な上り坂を走行中に、小物入れ内で小物が滑り、小物入れから小物が落下するおそれがある。
【0005】
そこで、小物入れに小物の落下を防止するための落下防止ガードを設けることが提案されている。この落下防止ガードは、小物入れの開口近傍の底面に粘着剤により固定される2つの支持部材と、下端が開放端となる略C字状をなし、各下端部が支持部材に連結されたガード部材とを備えている。ガード部材は、常には起立した状態であり、小物の出し入れの妨げとならないように、起立した状態から倒伏可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3046960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の提案に係る落下防止ガードは、小物入れの底面に粘着剤で固定されるので、小物入れに対して容易に着脱することはできない。小物入れに落下防止ガードを取り付けた後は、たとえば、小物入れ内を清掃する際に落下防止ガードが邪魔になっても、落下防止ガードを小物入れから容易に取り外すことができない。また、支持部材を小物入れの底面から剥がすと、その底面に粘着剤が残り、見栄えが悪くなる。
【0008】
本発明の目的は、小物入れなどのボックス内に収納された物の落下を防止することができ、かつ、そのボックスに対して容易に着脱することができる、ボックスの内張部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、自動車の車室側が開放されたボックスに装着される内張部材において、1枚の板が屈曲されて形成され、前記ボックスの底面に接する下板部と、前記下板部に対向し、前記ボックスの天面に接する上板部と、前記下板部および前記上板部の奥側の各端縁間を接続する奥板部とを備え、前記下板部の車室側の端部は、前記ボックスの前記底面から持ち上がり、当該底面の車室側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲していることを特徴とする。
【0010】
この内張部材は、1枚の板が屈曲されることにより、下板部、上板部および奥板部を有する断面略コ字状に形成されている。そのため、内張部材は、下板部および上板部の車室側(ボックスの手前側)の各端部が互いに離間する方向の復元力を有している。
【0011】
内張部材を奥板部が奥側となるようにボックスに嵌め込むと、その復元力により、下板部および上板部がそれぞれボックスの底面および天面に当接し、内張部材がボックス内に保持される。これにより、内張部材のボックスへの装着が達成される。また、ボックスに内張部材が装着された状態から、下板部および上板部の車室側の各端部を復元力に抗して互いに近接させながら、内張部材を手前に引き出すことにより、ボックスから内張部材を取り外すことができる。このように、内張部材は、ボックスに対して容易に着脱することができる。よって、内張部材やボックスの内面が汚れたときには、内張部材をボックスから取り外して、その汚れた内面を容易に清掃することができる。
【0012】
そして、下板部の車室側の端部は、ボックスの底面から持ち上がり、当該底面の車室側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲している。言い換えると、下板部の車室側の端部には、ボックスの底面の車室側の端部からボックス外へと膨出した形状の堰部が形成されている。そのため、急発進時や急な上り坂を走行中に、下板部上に載置された物(ボックス内に収納された物)が滑り落ちることを防止できる。
【0013】
前記内張部材では、前記下板部に、当該下板部上に載置された物の移動に対して抵抗を付与するような加工が施されていることが好適である。
【0014】
このような内張部材では、下板部上に載置された物が滑り落ちることを一層防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内張部材は、1枚の板が屈曲されることにより形成されているので、ボックスに対して容易に着脱することができる。そして、下板部の車室側の端部は、ボックスの底面から持ち上がり、当該底面の車室側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲しているので、その端部が堰となって、下板部上に載置された物が滑り落ちることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る内張部材が装着されるボックスを備えたインストルメントパネルの正面図である。
【図2】図2は、図1に示すロアパネルの正面図である。
【図3】図3は、内張部材およびボックス(ロアパネル)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る内張部材が装着されるボックスを備えたインストルメントパネルの正面図である。
【0019】
内張部材1が装着されるボックス2は、自動車のインストルメントパネル3に設けられている。
【0020】
なお、以下において、運転席側から見たときを前後左右の基準とする。
【0021】
インストルメントパネル3は、自動車の前席の前方(車室の最前部)に、車幅方向の全幅にわたって設けられている。インストルメントパネル3には、運転席の前方において、ステアリングコラム4が挿通されている。そして、インストルメントパネル3には、ステアリングコラム4の両側方および下方を覆うように、ロアパネル5が取り付けられている。
【0022】
図2は、ロアパネルの正面図である。
【0023】
ロアパネル5は、樹脂成型品であり、車幅方向および上下方向に延びる板状をなしている。ロアパネル5には、その上端縁からステアリングコラム4の形状に応じたU字状に切り欠かれることにより、ステアリングコラム4が挿通されるコラム挿通切欠部6が形成されている。また、ロアパネル5には、コラム挿通切欠部6の右側の上端部に、スイッチ類や数枚の硬貨を収容可能なコインケースなどを装着するための複数の貫通孔7が形成されている。
【0024】
そして、ボックス2は、貫通孔7の下方において、前方に向かって窪む凹部として、ロアパネル5に一体的に形成されている。具体的には、ボックス2は、貫通孔7の下方に形成され、車幅方向に長い矩形状の開口8と、開口8の下縁から前方に延びる底板部9と、開口8の上縁から前方に延びる天板部10と、開口8の車幅方向の両側縁からそれぞれ前方に延びる側板部11と、底板部9、天板部10および両側板部11の各前端縁に接続され、底板部9、天板部10および両側板部11に取り囲まれる空間を前側から閉塞する背板部12とを有している。
【0025】
底板部9には、たとえば、前後方向および車幅方向と直交する方向に延びるH番線に対して5°の傾斜角で開口8側が上がるように傾斜している。天板部10は、ロアパネル5の成型金型の抜きのために、H番線に対して5°よりも大きな傾斜角で開口8側が上がるように傾斜している。また、両側板部11にも、抜き勾配がつけられており、ボックス2の内部空間は、H番線に直交する平面で切断したときの断面積が開口8側ほど広がっている。
【0026】
ロアパネル5の裏面には、補強のためのリブが13が格子状に形成されている。リブ13は、ボックス2の天板部10上にも形成されており、そのリブ13は、図3に示すように、ロアパネル5の裏面と天板部10の上面とに跨る側面視略三角形状をなしている。
【0027】
図3は、内張部材およびボックス(ロアパネル)の断面図である。
【0028】
図1,3に示すように、ボックス2には、内張部材1が装着される。内張部材1は、1枚のステンレス製の薄板を屈曲して断面略コ字状に形成されており、ボックス2の底面(底板部9の上面)9Aに沿って延びる下板部14と、下板部14に対向し、ボックス2の天面(天板部10の下面)10Aに沿って延びる上板部15と、下板部14および上板部15の奥側(前側)の各端縁間を接続する奥板部16とを一体的に備えている。
【0029】
図3に示すように、下板部14は、ボックス2の底板部9とほぼ同じ幅を有し、複数の凹凸が前後方向に繰り返される側面視波状に加工されている。下板部14の手前側(車室側)の端部は、底板部9から持ち上がり、底板部9の手前側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲して、底板部9の手前側下方で手前側に折り返され、その折り返された部分がロアパネル5の正面に当接している。これにより、下板部14の手前側の端部には、底板部9の手前側の端部からボックス2外へと膨出した形状の堰部17が形成されている。
【0030】
上板部15は、ボックス2の天板部10とほぼ同じ幅を有し、複数の凹凸が前後方向に繰り返される側面視波状に加工されている。上板部15の手前側の端部は、天板部10の手前側の端縁から突出して、手前側に膨らむように上方に湾曲し、天板部10の手前側上方で前側(奥側)に折り返されて、その折り返された部分がロアパネル5の正面に当接している。
【0031】
奥板部16は、ボックス2の背板部12とほぼ同じ幅および同じ高さを有し、背板部12と面接触する平板上に形成されている。
【0032】
このように、内張部材1は、1枚のステンレス製の薄板が屈曲されることにより、下板部14、上板部15および奥板部16を有する断面略コ字状に形成されている。そして、下板部14および上板部15がそれぞれボックス2の底面9Aおよび天面10Aに沿って延びることにより、内張部材1は、下板部14と上板部15との間の間隔が手前側ほど大きくなっている。言い換えれば、下板部14と奥板部16とがなす角度(屈曲角)および上板部15と奥板部16とがなす角度(屈曲角)を合計した角度が180°より大きくなっている。そのため、内張部材1は、下板部14および上板部15の手前側の各端部が互いに離間する方向の復元力を有している。
【0033】
内張部材1を奥板部16が奥側となるようにボックス2に嵌め込むと、その復元力により、下板部14および上板部15がそれぞれボックス2の底面9Aおよび天面10Aに当接し、内張部材1がボックス2内に保持される。これにより、内張部材1のボックス2への装着が達成される。また、ボックス2に内張部材1が装着された状態から、下板部14および上板部15の手前側の各端部を復元力に抗して互いに近接させながら、内張部材1を手前に引き出すことにより、ボックス2から内張部材1を取り外すことができる。このように、内張部材1は、ボックス2に対して容易に着脱することができる。よって、内張部材1やボックス2の内面が汚れたときには、内張部材1をボックス2から取り外して、その汚れた内面を容易に清掃することができる。
【0034】
そして、下板部14の手前側の端部には、堰部17が形成されている。そのため、急発進時や急な上り坂を走行中に、下板部14上に載置された物(ボックス2内に収納された物)が下板部14上を開口8に向かって滑っても、その物が開口8から滑り落ちることを堰部17により阻止することができる。
【0035】
また、下板部14が側面視波状に加工されているので、下板部14上に載置された物が前後方向に滑る際に、その物のエッジが凹凸に引っ掛かり、物の移動に対して抵抗となる。よって、下板部14上に載置された物が滑り落ちることを一層防止できる。
【0036】
さらに、下板部14および上板部15が側面視波状に加工されているので、運転者が膝を下板部14および/または上板部15にぶつけたときに、下板部14および/または上板部15が変形し、その変形により衝撃を吸収することができる。
【0037】
また、ボックス2の天板部10上にリブ13が形成されることにより、ロアパネル5の表面において、天板部10の手前側の端縁の上方の部分にヒケが生じていても、上板部15の手前側の端部が天板部10の手前側の端縁およびその上方の部分を覆うことにより、そのヒケを隠すことができる。その結果、ロアパネル5の見栄えをよくすることができる。
【0038】
また、下板部14の堰部17にある程度の大きさがあれば、堰部17の正面に自動車のメーカ名や車名のロゴやマークを記載することができる。その結果、見栄えのさらなる向上を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0040】
たとえば、下板部14に載置された物の移動に対して抵抗を付与する加工の一例として、下板部14の側面視波状の加工を取り上げたが、これに限らず、下板部14が平板状に形成されて、下板部14の上面にステンレスよりも摩擦係数が高い材料からなるシートが貼られてもよい。
【0041】
また、内張部材1は、ロアパネル5に設けられたボックス2に装着されるとしたが、そのボックス2に限らず、インストルメントパネル3のロアパネル5以外の部分に設けられたボックス(たとえば、インストルメントパネル3の車幅方向の中央部のカーオーディオなどが装着されるスペースに設けられたボックス)に装着されてもよい。さらに、ドアトリムなど、インストルメントパネル3以外の自動車の内装部材に設けられたボックスに、内張部材1が装着されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 内張部材
2 ボックス
9A 底面
10A 天面
14 下板部
15 上板部
16 奥板部
17 堰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室側が開放されたボックスに装着される内張部材において、
1枚の板が屈曲されて形成され、
前記ボックスの底面に接する下板部と、
前記下板部に対向し、前記ボックスの天面に接する上板部と、
前記下板部および前記上板部の奥側の各端縁間を接続する奥板部とを備え、
前記下板部の車室側の端部は、前記ボックスの前記底面から持ち上がり、当該底面の車室側の端縁の周囲を取り囲むように湾曲していることを特徴とする、ボックスの内張部材。
【請求項2】
前記下板部に、当該下板部上に載置された物の移動に対して抵抗を付与するような加工が施されていることを特徴とする、請求項1に記載のボックスの内張部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−156949(P2011−156949A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19539(P2010−19539)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】