説明

ボトムロック式の包装箱およびそのブランク

【課題】ボトムロック式の箱の底板の浮き上がりを抑制し、箱内部に物品収納のための容積を確保するようにした包装箱およびそのブランクを提供する。
【解決手段】板状のブランク200を折り曲げて組み立てることにより形成されるボトムロック式の包装箱であって、ブランク200が、上下方向の折り線60(以下、「第1の折り線」という)を介して順次接続された3枚以上の側面用板50〜56と、側面用板の各下縁に横方向の折り線62、74(以下、「第2の折り線」という)を介して接続された底面用板70、72、76、78と、底面用板の少なくとも1枚70(72)に設けられ、梱包箱の組立時に、他の底面用板72(70)と嵌合する嵌合段差部80(82)とを備え、嵌合段差部80(82)有する底面用板70(72)に、嵌合段差部80(82)から第2の折り線側68に向かって延びる少なくとも一本の撓み促進折り線86が設けられる包装箱およびそのブランクを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の梱包用の包装箱に関し、特に、板状のブランクを折り曲げてワンタッチで組み立てが可能なボトムロック式の包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅等の化粧品を始めとする様々な物品を保管・運搬する場合において、ワンタッチで組み立てが可能なボトムロック式の包装箱が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。こうしたボトムロック式の包装箱の一例を、図8に示す。図8の紙面上側を上、紙面下側を下、紙面で横方向を横方向として説明すると、図8に示すボトムロック式の包装箱は、各2枚の側板12、14と妻板16、18とが縦方向の折り曲げ線20により区画され、これら側板12、14と妻板16、18の下端側に横方向の折り曲げ線22を介して各2枚の底片24、26と舌片28、30とが連設され、さらに、側板14の上端側に横方向の折り曲げ線32を介して天板34および差し込み片36が連設されるように構成された、段ボール紙や板紙製のブランク10からなっている。
【0003】
そして、各底片24、26の略中央先端には、嵌合切り欠き38、40が設けられている。また、各底片24、26の上端隅から嵌合切り欠き38、40に向けて斜め方向に折り曲げ線42が設けられ、これにより、略三角形状の固定片44、46が各底片24、26の舌片28、30寄りに形成されるようになっている。
【0004】
このようなブランク10を包装箱に組み立てる場合には、縦方向の折り曲げ線20に沿って折り曲げ、ついで各2枚の舌片28、30、底片24、26を各々横方向の折り曲げ線22に沿って折り込む。そして、各固定片44、46を斜め方向の折り曲げ線42に沿って谷折りし、各舌片28、30の表面と各固定片44、46の裏面とをそれぞれ貼着し、妻板16、18と側板12、14との側縁を接続する。これにより、扁平に折り畳んだ状態のブランクが完成する。このブランク10をワンタッチで角筒状に起こすと、各底片24、26の嵌合切り欠き38、40が互いに嵌合され、包装箱の底部が固定される。このようにして蓋の開いた包装箱が組み立てられる。そして最後に、物品を包装箱に収納した後、天板34を折り曲げて差し込み片36を側板12の裏面に差し込むことで封緘が終了するようになっている。
【0005】
一方、箱の底面の隅部のような折り曲げ線が集中する部分に切り欠きを設けることにより、折り曲げ時の反発力を緩和し、組み立て容易性を高めた箱の構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−69566号公報
【特許文献2】実公平6−50337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の従来のボトムロック式の包装箱では、折り畳まれたスリーブ状のブランクを起こして箱を組み立てた際、底板の嵌合部分が箱の内側に向かって立ち上がる傾向があった。そして、底片24、26の先端部が箱の内側に向かって突き出るようになっていた。このため、箱に口紅化粧品などの比較的小型軽量の品物を数十本入れた際に、底片が板バネのように作用して品物を蓋側に突き上げ、上から荷重をかけて押さないと蓋が確実に閉まらないなどの問題があった。
また、上記の従来のボトムロック式の包装箱では、折り畳まれたスリーブ状のブランクを起こして箱を組み立てた際、上記のように、底板の嵌合部分が箱の内側に向かって立ち上がり、ボトムロックが不十分になることがあった。この場合、例えば、直方体の包装箱の場合、底板の平面形状は方形状とならずに、若干斜めに歪んだ平行四辺形状となる。
【0008】
そこで、上記の従来のボトムロック式の包装箱を用いる場合には、この底片の浮き上がり、または組み立て時の歪みを予め見込んで、収納物よりも縦横ともに若干大きいサイズの包装箱を用いるようにしていた。こうすることで、箱内部に品物が確実に入る容積を確保するようにしていた。
【0009】
しかしながら、このように収納物の寸法に対して過大な寸法の箱を用いることは、箱の材料の無駄であるとともに、箱内部に余分なスペースを生じることとなる。
【0010】
さらに、包装箱の運搬に伴う振動によって、板バネのように振る舞う底片がその上の品物を揺動させてバタツキを起こす。そうすると、品物同士が摩擦して品物に傷がついてしまうこととなる。このように、平坦でない底面上に載せられる品物は、転倒や滑動によって容易に損傷し易くなる。
【0011】
さらに、こうした箱に斜め方向の荷重が作用すると容易に押し潰されるので強度的に不利である。さらには、このような歪んだ箱を多数積み上げると荷崩れの原因ともなる。
【0012】
他方、組み立て時の負荷を低減させ、歪みを少なくするために、上記の従来の折り曲げ線が集中する部分に切り欠きを設けるようにした箱では、比較的薄い紙のブランクに比較的大きな切り欠きを設けた場合には、強度低下を招き、箱の斜め方向からの荷重により容易に押し潰され易くなる。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ボトムロック式の箱の底板の浮き上がりを抑制して箱内部に物品収納のための容積を確保するとともに、ボトムロックにおける嵌合度合いおよび箱を押し潰そうとする荷重に対する耐強度性を高め、箱の組み立て容易性を確保することができる包装箱およびそのブランクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る包装箱の1つの実施態様は、板状のブランクを折り曲げて組み立てることにより形成されるボトムロック式の包装箱であって、前記ブランクが、上下方向の折り線(以下、「第一の折り線」という)を介して順次接続された3枚以上の側面用板と、前記側面用板の各下縁に横方向の折り線(以下、「第二の折り線」という)を介して接続された底面用板と、前記底面用板の少なくとも1枚に設けられ、前記梱包箱の組立時に、他の前記底面用板と嵌合する嵌合段差部とを備え、前記嵌合段差部を有する前記底面用板に、前記嵌合段差部から前記第二の折り線側に向かって延びる少なくとも一本の撓み促進折り線が設けられることを特徴とする。
【0015】
本実施態様では、組み立てられた包装箱の底面を下にして水平面に置いた場合の垂直方向を「上下方向」とし、それに直交する方向を「横方向」とし、側面の水平面と接する縁部を「下縁」と称する。
本実施態様では、ブランクが3枚以上の側面用板を有するので、底面形状が三角形、四角形、五角形、六角形を始めとする任意の多角形となる、任意の物品を収納する包装箱が含まれる。更に、側面用板の上縁に蓋用板が接続される場合も接続されない場合も含まれ、また、組立時に糊代となる部材が接続される場合も接続されていない場合も含まれる。
嵌合段差部と他の底面用板とが嵌合する場合には、嵌合段差部どうしが嵌合する場合も含まれるし、嵌合段差部と他の底面用板の嵌合段差部が設けられていない領域と嵌合する場合も含まれる。
【0016】
本実施態様によれば、箱の底板を構成する底面用板に設けられる撓み促進折り線は、包装箱に品物が入れられた際の品物の重みによって、ヒンジのように機能して、底板を箱外側に向かって撓ませるように作用する。この底板の箱外側への撓みは、底板の箱内側への立ち上がり量を相殺する方向に生じるので、品物の箱底面への沈み込みを促進する。この結果、品物が上側へ押し上げられることを低減する。
【0017】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記嵌合段差部を有する前記底面用板と前記側面用板とを接続する前記第2の折り線に、切込部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本実施態様によれば、第二の折り線に形成される切込部は、底面用板と側面用板との間の荷重伝達を絶って底板の変位に対する拘束を解くように作用するので、底板は箱外側に向かってより撓み易くなる。この結果、底板の箱内部への浮き上がりをより確実に抑制することができる。
【0019】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記嵌合段差部を有する前記底面用板の前記嵌合段差部よりも先端側の領域に、屈曲誘導線が設けられることを特徴とする。
【0020】
ここで、「先端側」とは、第二の折り線をヒンジ部分として旋回可能な片持ちの底面用板を考えた場合の先端側を意味する。
本実施態様によれば、底面用板の嵌合段差部よりも先端側の領域に、屈曲誘導線が設けられるので、包装箱に品物を入れた場合に、この屈曲誘導線がヒンジのように機能して底面用板の先端側を下向きに屈曲させようと誘導する。このため、底面用板の先端側が箱内の上方に向かって突き出ないようにすることができる。
【0021】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記折り線が交差する箇所に切欠部が設けられることを特徴とする。
【0022】
本実施態様によれば、例えば、折り線が交差する底面の四隅などの箇所に切欠部が設けられるので、ブランクを折り曲げて箱に組み立てる際の反発力を緩和させることができる。また、底面の四隅における応力が小さくなることにより、底面の形状が略平行四辺形状に歪むことを抑制することができる。
【0023】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、少なくとも一本の前記撓み促進折り線に、前記嵌合段差部から始まる所定の長さの嵌合切込部が設けられることを特徴とする。
【0024】
本実施態様によれば、各嵌合段差部が互いに嵌合した際に、撓み促進折り線に設けられた嵌合段差部から始まる所定の長さの嵌合切込部が、他の底面用板または他の底面用板に設けられた嵌合切込部に噛み合って、嵌合段差部間の嵌合度合を増大させることができる。このため、底板を構成する底面用板の結合度をより高めることができる。また、底板が歪みにくくなるので、立体構造体としての包装箱の強度を向上させることができる。さらに、撓み促進線が存在することで噛み合いが強固となり、箱底の強度が増す。
【0025】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記各撓み促進折り線が、前記底面用板において略V字形状をなすように前記嵌合段差部から前記第二の折り線に向かって延びる2本の折り線であって、該2本の撓み促進折り線を斜辺とし前記第二の折り線を底辺とする略二等辺三角形をなすように設けられることを特徴とする。
【0026】
本実施態様によれば、略V字形状の撓み促進線がヒンジのように機能することから、底板はその略中央を頂点として形成される2つの略二等辺三角形状の面の領域ごと箱外側に向かって撓み易くなる。撓み易くされる部分が略二等辺三角形状の面領域として広範囲に及ぶため、底板の箱内部への浮き上がりをより確実に抑制する。
【0027】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記各撓み促進折り線と前記第2の折り線との交点によって、前記第2の折り線の長さが略三等分されることを特徴とする。
【0028】
本実施態様によれば、各撓み促進折り線と第二の折り線との交点によって、第2の折り線の長さが略三等分されるので、底板をより好適に撓み出し易くすることができる。
【0029】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記底面用板の前記嵌合段差部よりも先端側の領域に、前記第二の折れ線に平行に少なくとも一本の第一屈曲誘導線が設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第一屈曲誘導線よりも先端側が前記包装箱の下向きに屈曲誘導されることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記底面用板に前記第二の折れ線と非平行な少なくとも一本の第二屈曲誘導線が設けられ、前記第二屈曲誘導線は、一端が前記嵌合段差部よりも先端側に位置し、他端が前記撓み促進折れ線と交差しない方向に延びる直線上の少なくとも一部に設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第二屈曲誘導線よりも先端側が前記包装箱の下向きに屈曲誘導されることを特徴とする。
【0031】
これらの実施態様によれば、前記底面用板の前記嵌合段差部よりも先端側の領域に、前記第二の折れ線に平行に少なくとも一本の第一屈曲誘導線が設けられるので、包装箱に品物を入れた場合に、第一又は第二屈曲誘導線が多関節ヒンジのように機能して底面用板の先端側を下向きに屈曲させようと誘導する。よって、包装箱に品物を入れたときに、底面用板の先端部が品物を上方に押し上げず、品物の箱底面への沈み込みを促進する。
【0032】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、それぞれ複数の前記第一及び第二屈曲誘導線が互いに交差しないように前記底面用板に並列に設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第一及び第二屈曲誘導線が設けられた箇所より先端側が、前記包装箱の下向きに弧状に屈曲誘導されることを特徴とする。
【0033】
本実施態様によれば、前記第一及び第二屈曲誘導線が複数本用意されているので、包装箱に品物を入れたときに、底面用板は多関節ヒンジとして機能し、品物の底面のより多くの部分を底面用板の下向きへの屈曲に寄与させることができる。よって、底面用板は全体的に箱の下向きに屈曲させるように誘導され、品物を上方に押し上げず品物の箱底面への沈み込みを促進すると同時に、包装箱の歪みを最小限にとどめることができる。
また、底面用板は先端側のみならず、全体的に箱の下向きに屈曲させるように誘導されるので、ボトムロックが不十分あっても矯正することにより前記嵌合段差部と他の前記底面用板の嵌合度合を高めることができ、立体構造物としての包装箱の強度を向上させることができる。よって、包装箱の歪みを最小限にとどめることができる。
本実施態様によれば、第一及び第二屈曲誘導線は、多関節ヒンジとして機能し、包装箱に品物を入れたときに、前記撓み促進折り線によって包装箱の底板が箱の外側に撓み出す部分に向かって屈曲されるように誘導される。よって、前記底面用板の先端側は確実に前記包装箱の下向きに屈曲されるように誘導される。
【0034】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記第一及び第二屈曲誘導線が、前記包装箱を組み立てたとき箱内に面する前記底面用板の板面に、その厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられることを特徴とする。
【0035】
本実施態様によれば、前記包装箱を組み立てた際に、前記第一及び第二屈曲誘導線は箱内に面する前記底面用板の板面に配置される。よって、前記包装箱を組み立てたとき箱内に面する前記底面用板の板面に、その厚さ方向の途中までの深さの切り込みがいれられているので、前記底面用板の前記第二屈曲誘導部より先端側は前記底面よりも下向きに可動可能となる。よって、底面用板は全体的に箱の下向きに屈曲させるように誘導され、品物を上方に押し上げず品物の箱底面への沈み込みを促進すると同時に、前記嵌合段差部を有する第一の底面用板とそれと嵌合する第二の底面用板とを突き合わせて嵌合させる作業を行う際に、前記第一及び第二の底面用板の前記嵌合段差部より先端側の縁が合わせ易くなり、ブランクの組み立て作業が容易になる。
【0036】
本発明に係る包装箱のその他の実施態様は、前記ブランクが、4枚の前記側面用板を有し、前記側面用板として、第一妻板と第一側板と第二妻板と第二側板とが順に接続され、前記底面用板として、前記第一および第二側板の各々の下縁には前記第2の折り線を介して第一および第二底板フラップが各々設けられ、前記第一および第二妻板の各々の下縁には前記第2の折り線を介して第一および第二底板補助片が各々設けられ、前記各底板フラップの各々の先端側に前記嵌合段差部が形成され、このブランクを前記各折り線に沿って折り曲げるとともに前記各底板フラップの嵌合段差部を互いに嵌合することにより底面が形成され、前記第一妻板と前記第二側板とを接続して直方体状または立方体状に組み立てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ボトムロック式の箱の底板が箱内側へ向かって浮き上がるのを抑制することができる。このため、収納物の沈み込みを高めるとともに、箱内部に品物収納のための容積を確保することができる。これにより、箱の材料の無駄を防ぎ、余分なスペースが箱内に形成されるのを防ぐことができる。
また、本発明に係る包装箱は、容易に組み立てることができ、組み立てた際における箱の底面の形状は、方形状により近くなるとともに略平行四辺形状に歪みにくくなるので、立体構造体としての箱の強度低下を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る包装箱およびそれを構成するブランクについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る包装箱の展開図となるブランクを示す概略平面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、蓋が開けられた状態を示す図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、箱の底面側から見た図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る包装箱の延出片の先端側の屈曲状態を示した図であり、図2のA−A線に沿った断面図である。なお、図1において、紙面上側を上、紙面下側を下、紙面左側を左、紙面右側を右として、以下に説明を行なう。
【0039】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る包装箱100のブランク200は、略矩形状の第一妻板50と第一側板52と第二妻板54と第二側板56と繋ぎ片58とがそれぞれ上下方向の折り線60を介して左右方向に順次設けられて、第二側板56の上縁にはそれぞれ左右方向の折り線62を介して略矩形状の蓋板64と差し込み片66とが順次設けられるように構成される。そして、第一および第二側板52、56の各々の下縁には左右方向の折り線68を介して第一および第二底板フラップ70、72が各々設けられ、第一および第二妻板50、54の各々の下縁には左右方向の折り線74を介して略三角形状の第一および第二底板補助片76、78が各々設けられる。各底板フラップ70、72の各々の左右方向略中央下端には嵌合段差部80、82が形成されるようになっている。また、箱の底板の四隅となる各折り線が交差する箇所には、切欠部84が設けられる。
【0040】
各底板フラップ70、72には、撓み促進部としての2本の撓み促進折り線86が各嵌合段差部80、82から上縁側に延びるように略V字形状に設けられる。この撓み促進折り線86は、組み立てられた箱に品物が入れられると、その重みによって底板が箱外側に向かって撓み出すのを促進するヒンジのように機能する。こうすることで底板の箱外側へ撓み出しを促進するようにしている。また、撓み促進折り線86の上端86a、86bに挟まれる各底板フラップ70、72の上縁側の左右方向略中央の区間には、折り線68に沿って切込部88が設けられる。こうすることで、底板フラップ70、72と側板52、56間の荷重伝達を絶って、底板の変位に対する拘束を開放し、底板が箱外側に向かって撓み出すのを促進するようになっている。
【0041】
一方、各底板フラップ70、72の左側の領域には、下側に延びる延出片90、92が形成される。延出片90、92は、嵌合段差部80、82よりも下側に進むに従い左右方向の長さが短くなる略三角形状をしており、この延出片90、92の嵌合段差部80、82よりも下側には、屈曲誘導線としての逆折罫線94が各底板フラップ70、72の上縁の折り線68と平行な方向に設けられている。この逆折罫線94は、箱の底面上に品物が載せられると、ヒンジのように機能して延出片の先端側を箱の下側に向かって曲げるようになっている。
【0042】
さらに、各底板フラップ70、72の右側の領域には、上縁の端から嵌合段差部80、82に向けて設けられる斜め方向の折り線96を介して略三角形状の舌状片98が形成される。折り線96の中間部分には折り線に沿って切れ込みが形成されている。
【0043】
嵌合段差部80、82は、各舌状片98の折り線96の下端から左右方向略中央に向かって延びて下方に曲がり、それぞれ延出片90、92の付根に接続される輪郭形状を有して構成される。
【0044】
このブランク200を用いて、図2および図3に示すような包装箱100を組み立てる場合には、まず、ブランク200を各折り線60、62、68、74に沿って裏面側に折り曲げる。そして、第一妻板50の裏面側と繋ぎ片58の表面側とを貼着することにより、箱の角筒部分を形成する。ついで、各底板フラップ70、72を角筒の内側に折り込んで、各延出片90、92を箱の内側に、各舌状片98を箱の外側に配置するように重ね合わせて、嵌合段差部80、82を互いに突き合わせて嵌合させる。
【0045】
そして、各舌状片98の斜め方向の折り線96を折ってその先端が箱外側になるようにそれぞれ折り曲げ、各底板補助片76、78の裏面側を各底板フラップ70、72の表面側にそれぞれ重ねる。折り曲げられた各舌状片98を元の位置に戻して各舌状片98の裏面側と各底板補助片76、78の表面側とをそれぞれ貼り合わせる。こうすることにより箱の底板部分が形成される。そして最後に、組み立てられた箱の上面の開口から品物等を入れて蓋板64の差し込み片66を第一側板52の裏面側に差し込むことにより、包装箱100が組み立てられる。
【0046】
撓み促進折り線86は、上記のように、底板フラップ70、72において各々略V字形状をなすように各嵌合段差部80、82から上縁に向かって各々二本延びる折り線である。そして各底板フラップ70、72には、この二本の撓み促進折り線86を斜辺とし上縁の折り線68を底辺とする略二等辺三角形状の面領域が形成されるようになっている。撓み促進折り線86の上端86a、86bは、各底板フラップ70、72の上縁の折り線68の長さを略三等分する箇所に位置するように設けられる。
また、一本の撓み促進折り線86の下端側には所定の長さの嵌合切込部102が設けられ、各嵌合段差部80、82間の嵌合度合を増大するようになっている。
【0047】
上記構成の作用および動作を説明する。
本発明の第1実施形態に係る包装箱100の中に、口紅などの比較的軽量の品物を複数本収納すると、箱の底板を構成する各底板フラップ70、72に対称的に設けられた略V字形状の撓み促進折り線86と、各底板フラップ70、72の上縁の折り線68に沿って設けられた切込部88は、品物の重みを受けて底板が箱外側に向かって撓み出すのを促進する。この箱外側への底板の撓みは、箱内側への立ち上がり量を相殺する方向に生じることから、品物の箱底面への沈み込みを促進する。これにより、品物が箱の上側へ押し上げられることを低減する。したがって、蓋を閉じる際に品物を底面側へ押し込む必要はなくなる。
【0048】
一方、各底板フラップ70、72の延出片90、92の先端側に設けられた屈曲誘導線としての逆折罫線94は、図4に示すように、品物が延出片90、92の上に載せられると、品物の重みによってヒンジのように機能して、逆折罫線94よりも先端側の延出片90、92を箱の下向きに屈曲させるように誘導する。このため、延出片90、92の先端側は上側に向かって突き出ない。したがって、品物を上方へ押し上げず、品物の箱底面への沈み込みを妨げない。また、逆折罫線94を延出片90、92の先端側、つまり延出片90、92の略中間部分に設けることにより、延出片90、92は品物の重量によってこの逆折罫線94の部分で下向きに折れて底面側に押し潰され易くなる。このため、従来の包装箱のように運搬時に板バネのように作用し難くなるので、品物同士の摩擦による損傷の発生を抑制する。
【0049】
また、撓み促進折り線86と切込部88とを設けることにより、箱内側への底板の立ち上がり量が相殺される。このため、箱内部に形成される収納可能容積は従来の包装箱よりも大きくなるので、過大な寸法の箱を用いずにすむ。したがって、箱の材料の無駄がなくなり、箱内部に余分なスペースは生じない。
【0050】
さらに、この包装箱100を折り曲げて組み立てる際には、箱底面の四隅に設けられた切欠部84が、四隅における折り曲げに対する反発力を小さくしているので、箱を容易に組み立てることができる。
【0051】
次に、本発明の第1の実施形態に係る包装箱100の効果を確認するために行った品物の浮き上がり量の計測結果について、図5A、5B、5Cおよび表を用いて説明する。なお、以降の説明においては、上記で詳細に説明した実施形態を「実施例1」と表記して説明するものとする。図5Aは、実施例1における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。
そして、実施例1の包装箱100において延出片90、92の先端側を逆折罫線94で切断して除いた形態を「実施例2」と表記して説明する。図5Bは、実施形態2における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。
また、実施例1の包装箱において箱底面の四隅に切欠部84を設けないようにした形態を「実施例3」と表記して説明する。図5Cは、実施例3における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。なお、上記実施例1〜3の底板フラップには略V字形状の撓み促進折り線86が設けられている。
また、上記の従来のボトムロック式の包装箱10の形態を「従来例」と表記して説明する。
【0052】
本計測では、図5Aに示すように、包装箱に角柱状の品物を入れ、このときの包装箱の上縁側の右辺中央部、左辺中央部、正面中央部の各々から、品物の上縁側の右辺中央部、左辺中央部、正面中央部までの各々の上下方向の離間距離を計測して、これら三値の平均値をとり品物の浮き上がり量と定義とした。この場合、品物が包装箱の上縁から上方に突き出るとプラスの数値に、上縁から下方に沈み込むとマイナスの数値になるようにしている。
【0053】
なお、本計測に用いた包装箱の寸法は、それぞれ箱の横長154mm、箱の奥行き長106mm、箱の高さ82mmであり、厚さ1.2mm程度の段ボール紙を用いている。一方、包装箱の中に入れられる品物として用いたのは、横140mm、奥行き100mm、高さ79mm、重さ45gの角柱状体である。
【0054】
表1〜4は、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3および従来構造の包装箱に関する品物の浮き上がり量の計測結果である。ここで、本計測では、計測誤差低減を考慮して各形態につき各々10個の包装箱の供試体に対して計測を行っている。表中に表示される数値の単位はmmである。
【0055】
表5は、表1〜4の測定結果を整理集計したものである。表5における10個平均値とは、供試体10個の平均値をいい、最大値、最小値とは、各形態の供試体10個における最大測定値、最小測定値をいうようになっている。また、構成要素「四隅の切欠部」「延出片の先端側」「逆折罫線」の欄における「○」「×」といった記号は、その構成要素を有する場合には「○」、有しない場合には「×」を表記するようにしている。
【0056】
計測結果が集計された表5に示されるように、品物の浮き上がり量は、実施例1、実施例2、実施例3、従来の実施例でそれぞれ0.5mm、3mm、4.45mm、7.55mmであった。従来の実施例を基準として実施例1〜3を比較すると、実施例1は、品物の浮き上がり量が最も小さく、品物の沈み込みが良好に図られることから、最も本発明による効果を奏するものといえる。とくに7.55mmであった従来の品物の浮き上がり量を、実施例1によれば0.5mmという非常に小さい量になることから、本発明による効果が良好に発揮されているのがわかる。なお、実施例1に次いで、延出片の先端側を逆折罫線で切断して除いた実施例2が2番目に、箱底面の四隅に切欠部を設けないようにした実施例3が3番目に本発明による効果を奏するものといえる。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
上記の実施形態において、略V字形状の撓み促進折り線86の上端は、各底板フラップ70、72の上縁の折り線68の長さをそれぞれ略三等分する箇所に限られるものではなく、各底板フラップ70、72の上縁の折り線68上の任意の箇所に設けるようにしてもよいし、撓み促進折り線86と上縁の折り線68とで形成される形状は略二等辺三角形状に限られるものではない。このようにしても、本発明と同一の作用効果を奏することができ、ボトムロックの浮き上がりを抑制して、箱内部に物品収納のための容積を確保することができる。
【0063】
上記の実施形態において、切込部88が設けられる区間は、2本の撓み促進折り線86の上端86a、86bに挟まれる区間に限られるものではなく、底板フラップ70、72の上縁の折り線68に沿って部分的に設けるようにしてもよく、例えば、2本の撓み促進折り線86の上端86a、86bに挟まれる区間のさらに内側にのみ設けるようにしてもよいし、この区間から外側にはみ出して設けてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができ、底板が箱外側に向かって撓み出すのを促進することができる。
【0064】
上記の実施形態において、撓み促進折り線86として2本の折り線を略V字形状に設ける代わりに、嵌合段差部80、82から上縁に向かう1本の折り線を設けてもよいし、3本以上の複数の折り線であってもよい。また、撓み促進折り線86の代わりに、ミシン目線、部分的な切れ込み線を設けてもよく、底板が箱下側へ撓むように誘発、促進させるものであれば、いかなる態様の線でもよい。このようにしても本実施形態と同一の作用効果を奏することができ、ボトムロックの浮き上がりを抑制して、箱内部に物品収納のための容積を確保することができる。
【0065】
上記の実施形態において、屈曲誘導線として逆折罫線94を設ける代わりに、ミシン目線、折り線を設けてもよく、延出片90、92の先端側を下向きに屈曲させるように誘導するものであれば、切れ込みを設けてもよい。好ましくは、嵌合段差部よりも先端側を始点とする線であり、より好ましくは、嵌合段差部と先端の中間あたりを始点とする。さらに、底板フラップ70、72の上縁の折り線68と平行な方向の線に限られるものではなく、斜めの線であってもよいし、複数本あってもよい。このようにしても本実施形態と同一の作用効果を奏することができ、延出片90、92の浮き上がりを抑制して、箱内部に物品収納のための容積を確保することができる。
【0066】
上記の実施形態において、屈曲誘導線を設ける位置は、延出片90、92の先端側を下向きに屈曲させるように誘導するような位置とするのが好ましく、例えば、包装箱の寸法が横長150mm程度、奥行き長100mm程度、高さ80mmであり、厚さ1.2mm程度の段ボール紙で組み立てられる場合には、屈曲誘導線90、92は嵌合段差部80、82から1ないし2cm離れた下側にそれぞれ設けるのが好ましい。
【0067】
上記の実施形態においては、箱の底面の四隅に設けられる切欠部84の大きさは、包装箱のブランクの厚さの略3ないし6倍の長さを直径とする略円形状に形成するのが本実施形態の構成では好ましい。
【0068】
上記の実施形態においては、包装箱の形状が直方体状や立方体状などの六面体の場合について説明したが、六面体に限られるものではなく、例えば、箱の底面が正六角形状である包装箱に適用してもよく、この場合、底板フラップに撓み促進折り線を設け、延出片に逆折罫線などを設けるようにしてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができ、ボトムロックの浮き上がりを抑制するとともに品物の沈み込みを促進し、箱内部に物品収納のための容積を確保することができる。
【0069】
上記実施形態において、使用されるブランクは比較的厚み(1mm以上)のあるダンボールにおいて特に有効である。
【0070】
以上のように、本発明に係る包装箱およびそのブランクでは、ボトムロックの底板の箱内側への浮き上がりを抑制することができる。そして、収納物の沈み込みを高めるとともに、箱内部に品物収納のための容積を確保することができる。これにより、箱の材料の無駄を防ぎ、余分なスペースが箱内に形成されるのを防ぐことができる。
また、本発明に係る包装箱は、容易に組み立てることができ、立体構造体としての箱の強度低下を低減することができる。
【0071】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る包装箱およびそれを構成するブランクの実施形態について図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る包装箱の展開図となるブランクを示す概略平面図である。図7は、本発明の第2実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、蓋が開けられた状態を示す図である。なお、図6において、紙面上側を上、紙面下側を下、紙面左側を左、紙面右側を右として、以下に説明を行なう。
また、上記第1実施形態と同じ又は似たような形状又は機能を有する部材については、同じ参照符号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0072】
本発明の第2実施形態に係る包装箱300を構成するブランク400は、左右方向の折り線68に平行な二本の第一屈曲誘導線としての第一逆折罫線150、及び一端が前記嵌合段差部よりも先端側に位置し、他端が前記撓み促進折れ線と交差せず、底辺フラップ70、72の先端ではない方向に延びる直線上の少なくとも一部に設けられる二本の第二屈曲誘導線としての第二逆折罫線152と、を含み、これら前記第一及び第二屈曲誘導線は互いに交差しないように前記底面用板に並列に設けられている。また、本実施形態に係るブランク40では、前記包装箱を組み立てたとき箱内に面する各底板フラップ70、72の板面に、その厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられている。図6では、第一及び第二屈曲誘導線150、152が紙面の表向きに配置される方向から、ブランク400を見たものである。
【0073】
図6に示すように、二本の第一屈曲誘導線としての第一逆折罫線150は、底辺フラップ70、72の左側の領域の下側に形成される延出片90、92の、上下方向の長さをほぼ三等分するように折り線86に平行な直線として設けられる。また、この第一屈曲誘導線としての第一逆折罫線150は、延出片90、92の図中表面から厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられている。第一逆折罫線150は、延出片90、92の図中表面からの半切り刃によって形成することができる。
【0074】
また、底辺フラップ70、72は、その左側の領域の中の、嵌合段差部80、82から折り線68上の点86aに延びる撓み促進折れ線68及び延出片90、92の上縁で挟まれた領域に、二本の第二屈曲誘導線としての第二逆折罫線152を含んでいる。第二逆折罫線152は、底辺フラップ70、72の前記底面用板の外縁上の前記嵌合段差部より先端側の一点通り、底辺フラップ70、72の先端ではない方向に向かい、前記撓み促進折り線86と交差しない直線として設けられる。また、この第二屈曲誘導線としての第二逆折罫線152は、底辺フラップ70、72の図中表面から厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられている。第二逆折罫線152は、延出片90、92の図中表面から半切り刃によって形成することができる。
【0075】
また、複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152の少なくとも一部は、底辺フラップ70、72の嵌合段差部80、82から、ほぼ放射状となるように設けられている。よって、ブランク400を組み立てて形成した包装箱300に品物を入れたときに、前記撓み促進折り線86によって包装箱300の底板が箱の外側に撓み出す部分に向かって、底辺フラップ70、72の先端側が屈曲されるように誘導される。
【0076】
図7に示すように、本実施形態に係る包装箱300の寸法は、横長105mm程度、奥行き長95mm程度、高さ90mmであり、厚さ1.2mm程度と、底面が正方形に近くなるように形成されている。この場合、折り線68と嵌合段差部80、82の折り線68と平行な部分との距離は約50mmである。そして、二本の第一逆折罫線150は、嵌合段差部80、82の折り線68と平行な部分からそれぞれ約16mm、約26mm先端側に、二本の第二逆折罫線152は、共に嵌合段差部80、82の折り線68と平行な部分から約10mmの位置を一端とし、折り線68と平行方向から、それぞれ約25度、約50度折り線68側に傾いていることが好ましい。このように複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152を形成すると、ブランク400を組み立てて形成した包装箱300に品物を入れたときに、底辺フラップ70、72の先端側は、確実に、前記撓み促進折り線86によって包装箱300の底板が箱の外側に撓み出す部分に向かって屈曲されるように誘導される。
【0077】
本実施形態に係るブランク400は、略正方形状の第一妻板50と第一側板52と第二妻板54と第二側板56と繋ぎ片58とがそれぞれ上下方向の折り線60を介して左右方向に順次設けられて、第二側板56の上縁にはそれぞれ左右方向の折り線62を介して略正方形状の蓋板64と差し込み片66とが順次設けられるように構成される。そして、第一および第二側板52、56の各々の下縁には左右方向の折り線68を介して第一および第二底板フラップ70、72が各々設けられ、第一および第二妻板50、54の各々の下縁には左右方向の折り線74を介して略三角形状の第一および第二底板補助片76、78が各々設けられる。各底板フラップ70、72の各々の左右方向略中央下端には嵌合段差部80、82が形成されるようになっている。また、箱の底板の四隅となる各折り線が交差する箇所には、切欠部84が設けられる。従って、第1実施形態に係るブランク200を用いて包装箱100を組み立てる場合と同様の手順で、本実施形態に係るブランク400を用いて、図7に示すような包装箱300を組み立てることができる。
【0078】
上記構成の作用および動作を説明する。
本発明の第2実施形態に係る包装箱300の中に、箱の底板を構成する各底板フラップ70、72に対称的に設けられた略V字形状の撓み促進折り線86と、各底板フラップ70、72の上縁の折り線68に沿って設けられた切込部88と、包装箱に品物を入れたときにヒンジとして機能して各底板フラップ70、72の先端側を下向き方向に屈曲させるように誘導するそれぞれ複数の互いに交差しない第一及び第二逆折罫線150、152とを含んでいる。つまり、第一及び第二逆折罫線150、152は多関節ヒンジとして機能するので、包装箱300に比較的小型軽量の品物を数十本入れた際に、より多くの品物が第一及び第二逆折罫線150、152と接することができ、底辺フラップ70、72は、全体的に下向きに屈曲するように誘導される。よって、底辺フラップ70、72の箱の内側への立ち上がり量を最小にしつつ、底辺フラップ70、72の先端側が上側に向かって突き出ないようにすることができる。
【0079】
また、第一及び第二逆折罫線150、152は、包装箱300に品物を入れたときに品物が包装箱300の下側に沈むと、底辺フラップ70、72の先端側のみならず全体的に箱内側への立ち上がりが抑えられるように設けられている。よって、包装箱300を組み立てたとき、ボトムロックが不十分で底辺フラップ70、72の嵌合部分が内側に向かって立ち上がっても矯正することができる。また、包装箱に品物を入れることにより、嵌合段差部80、82の互いの嵌合度合を高めることができ、立体構造物としての包装箱の歪みを減少させることができるのみならず、強度を向上させることができる。従って、運搬時に包装箱に入れた品物の損傷を防止できるだけでなく、多くの包装箱を効率良く一箇所に集積することができる。
【0080】
また、本発明の第2実施形態に係る包装箱300及びそれを構成するブランク400は、複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152が互いに交差しないように前記底面用板に並列に設けられており、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第一及び第二逆折罫線が設けられた箇所より先端側が、前記包装箱の下向きに弧状に屈曲誘導されるように構成されている。また、複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152の少なくとも一部は、底辺フラップ70、72の嵌合段差部80、82から、ほぼ放射状となるように設けられている。よって、複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152は多関節ヒンジとして機能して、包装箱300に品物を入れたときに、前記撓み促進折り線86によって包装箱300の底板が箱の外側に撓み出す部分に向かって、底辺フラップ70、72の先端側が屈曲されるように誘導される。従って、ブランク400を組み立てて形成した包装箱300に品物を入れたときに、底辺フラップ70、72の先端側は、確実に、前記撓み促進折り線86によって包装箱300の底板が箱の外側に撓み出す部分に向かって屈曲されるように誘導される。
また、包装箱300に品物を入れる品物の底面に凸凹がある場合でも、複数本の前記第一及び第二逆折罫線150、152のうちのいずれかが荷重を効率よく受け止め、ヒンジとしての機能を果たすことができる。
【0081】
また第一及び第二逆折罫線150、152は、底辺フラップ70、72の図面表面から表面の厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられる。多関節ヒンジとしての第一及び第二逆折罫線150、152を有する底辺フラップ70、72は包装箱300を組み立てたとき、下向きのみにしか屈曲せず、底辺フラップ70、72の第2の逆折罫線152より先端側は、確実に箱の下向きに屈曲するように誘導される。よって、第一及び第二逆折罫線150、152は、底辺フラップ70、72の先端側が箱内の上方に向かって突き出ないようにすると同時に、底辺フラップ70、72の箱内側への立ち上がり量を最小とすることができる。
【0082】
また、本実施形態による前記第一及び第二逆折罫線150、152は、底辺フラップ70、72は一方向にしか屈曲しないようになっている。よって、組み立て作業の中で、各底辺フラップ70、72を角筒の内側に折り込んで、各延出片90、92を箱の内側に、各舌状片98を箱の外側に配置するように重ね合わせ、嵌合段差部80、82を互いに突き合わせて嵌合させる作業を行う際に、各底辺フラップ70、72の嵌合段差部80、82より先端側の外縁が合わせ易くなり、その結果、組み立て作業が容易になる。また、包装箱300へ品物を入れる作業中に、誤って底辺フラップ70、72が箱の上向きに屈曲されることがなく、包装箱300を用いれば経済的な品物の包装及び運搬を行うことができる。
【0083】
上記実施形態では、第二逆折罫線152は、底辺フラップ70、72の前記底面用板の外縁上の前記嵌合段差部より先端側の一点通り、底辺フラップ70、72の先端ではない方向に向かい、前記撓み促進折り線86と交差しない直線として設けられる。しかしながら、十分な作用効果が認められる範囲において、第二逆折罫線152はその直線上の一部として設けられてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第一及び第二逆折罫線150、152は二本ずつ設けられたが、この本数に限定されず、さらには第一逆折罫線150又は第二逆折罫線152のいずれかのみが設けられてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、第一及び第二逆折罫線150、152は各底板フラップ70、72の表面からの半切り刃によって形成され、前記包装箱300を組み立てたとき箱内に面する各底板フラップ70、72の板面に、その厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられている。しかし、切り刃による折れ線として構成してもよいし、筋押し刃による折れ線として形成してもよい。
また、ミシン目線、折り線を設けてもよく、各底板フラップ70、72を全体的に包装箱300の下向きに向けるものであれば、切れ込みを設けてもよい。このようにしても本実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0086】
以上のように、本発明に係る包装箱およびそのブランクでは、ボトムロックの底板の箱内側への浮き上がりを確実に抑制することができる。そして、収納物の沈み込みを高めるとともに、箱内部に品物収納のための容積を確保することができる。これにより、箱の材料の無駄を防ぎ、余分なスペースが箱内に形成されるのを防ぐことができる。また、ボトムロックが不十分になることを防ぐことができ、箱に品物を入れることによって、箱の歪みを減少させることができる。
また、本発明に係る包装箱は、容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る包装箱の展開図となるブランクを示す概略平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、蓋が開けられた状態を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、箱の底面側から見た図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る包装箱の延出片の先端側の屈曲状態を示した図であり、図2のA−A線に沿った断面図である。
【図5A】実施例1における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。
【図5B】実施例2における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。
【図5C】実施例3における品物の浮き上がり量の計測状態を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る包装箱の展開図となるブランクを示す概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る包装箱を示す概略斜視図であり、蓋が開けられた状態を示す図である。
【図8】従来のボトムロック式の包装箱の展開図となるブランクの概略平面図である。
【符号の説明】
【0088】
50 第一妻板
52 第一側板
54 第二妻板
56 第二側板
58 繋ぎ片
60,62,74 折り線
64 蓋板
66 差し込み片
68 底板フラップの上縁の折り線
70 第一底板フラップ
72 第二底板フラップ
76 第一底板補助片
78 第二底板補助片
80,82 嵌合段差部
84 切欠部
86 撓み促進折り線
88 切込部
90,92 延出片
94 逆折罫線
96 斜め方向の折り線
98 舌状片
100 包装箱
102 嵌合切込部
200 ブランク
150 第一逆折罫線
152 第二逆折罫線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のブランクを折り曲げて組み立てることにより形成されるボトムロック式の包装箱であって、
前記ブランクが、
上下方向の折り線(以下、「第一の折り線」という)を介して順次接続された3枚以上の側面用板と、
前記側面用板の各下縁に横方向の折り線(以下、「第二の折り線」という)を介して接続された底面用板と、
前記底面用板の少なくとも1枚に設けられ、前記包装箱の組立時に、他の前記底面用板と嵌合する嵌合段差部とを備え、
前記嵌合段差部を有する前記底面用板に、前記嵌合段差部から前記第二の折り線側に向かって延びる少なくとも一本の撓み促進折り線が設けられることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記嵌合段差部を有する前記底面用板と前記側面用板とを接続する前記第二の折り線に、切込部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記嵌合段差部を有する前記底面用板の前記嵌合段差部よりも先端側の領域に、屈曲誘導線が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記折り線が交差する箇所に切欠部が設けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項5】
少なくとも一本の前記撓み促進折り線に、前記嵌合段差部から始まる所定の長さの嵌合切込部が設けられることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項6】
前記各撓み促進折り線は、前記底面用板において略V字形状をなすように前記嵌合段差部から前記第二の折り線に向かって延びる2本の折り線であって、該2本の撓み促進折り線を斜辺とし前記第二の折り線を底辺とする略二等辺三角形をなすように設けられることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項7】
前記各撓み促進折り線と前記第二の折り線との交点によって、前記第二の折り線の長さが略三等分されることを特徴とする請求項6に記載の包装箱。
【請求項8】
前記底面用板の前記嵌合段差部よりも先端側の領域に、前記第二の折れ線に平行に少なくとも一本の第一屈曲誘導線が設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第一屈曲誘導線よりも先端側が前記包装箱の下向きに屈曲誘導されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項9】
前記底面用板に前記第二の折れ線と非平行な少なくとも一本の第二屈曲誘導線が設けられ、前記第二屈曲誘導線は、一端が前記嵌合段差部よりも先端側に位置し、他端が前記撓み促進折れ線と交差しない方向に延びる直線上の少なくとも一部に設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第二屈曲誘導線よりも先端側が前記包装箱の下向きに屈曲誘導されることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項10】
それぞれ複数の前記第一及び第二屈曲誘導線が互いに交差しないように前記底面用板に並列に設けられ、前記包装箱を組み立てたときに、前記底面用板の前記第一及び第二屈曲誘導線が設けられた箇所より先端側が、前記包装箱の下向きに弧状に屈曲誘導されることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項11】
前記第一及び第二屈曲誘導線が、前記包装箱を組み立てたとき箱内に面する前記底面用板の板面に、その厚さ方向の途中までの深さの切り込みを入れることによって設けられることを特徴とする請求項10又は11に記載の包装箱。
【請求項12】
前記ブランクが、
4枚の前記側面用板を有し、
前記側面用板として、第一妻板と第一側板と第二妻板と第二側板とが順に接続され、
前記底面用板として、前記第一および第二側板の各々の下縁には前記第2の折り線を介して第一および第二底板フラップが各々設けられ、前記第一および第二妻板の各々の下縁には前記第二の折り線を介して第一および第二底板補助片が各々設けられ、
前記各底板フラップの各々の先端側に前記嵌合段差部が形成され、
このブランクを前記各折り線に沿って折り曲げるとともに前記各底板フラップの嵌合段差部を互いに嵌合することにより底面が形成され、前記第一妻板と前記第二側板とを接続して直方体状または立方体状に組み立てられることを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の包装箱。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の包装箱を折り込んで成形するためのブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−96552(P2009−96552A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245127(P2008−245127)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【出願人】(507323112)尾下紙業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】