説明

ボトル缶

【課題】ボトル缶の口金部の開口端部とキャップとの密着性を高め、充填される飲料が外部へ漏出するのを防止し、且つ中栓の製作費用を低減することができるボトル缶を提供することにある。
【解決手段】口金部3の内側に泡立てのための中栓5が装着可能なボトル缶10において、前記口金部3のカール部7とネジ部との間には、前記ボトル缶10の軸線に直交する径方向内方に向かって突出する中栓5係止用の突出部8が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料をボトル缶から他の容器に注ぐとき等に、該飲料を泡立たせるのに好適なボトル缶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料等が充填されて販売される容器として、大径の胴部と、該胴部の缶軸方向上端に連設されるとともに上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部と、該肩部の上端に連設されるとともに上方へ延在した小径筒状の口金部とを備えるボトル缶が多く採用されている。この種のボトル缶は、前記口金部の缶軸方向中央付近に雄ねじ部が形成されるとともに、缶軸方向上端部(開口端部)に径方向外方へ折り返されたカール部が形成され、キャップの内面に備えられたライナーが、前記カール部上端に密接することにより、該ボトル缶の内部が密封された状態で前記雄ねじ部にキャップが螺着される構成となっている。このようなボトル缶を完成させるには、多くの工程を経て加工する必要がある。
【0003】
その製造工程は、缶押し込み、油付け、ワーク肩部から口部にかけて段階的に行われる絞り加工、各種回転加工(口部端を揃えるトリミング加工・口部を部分的に拡径する口広げ加工・口部にネジを形成するネジ加工・口部端部をカールするカール加工・前記カール部をかしめるスロットル加工)、缶排出、により構成されている。
【0004】
また最近では、COを含有する飲料、例えば炭酸飲料やビール等もボトル缶に充填されて販売されるようになっている。一般に前記ボトル缶は開口形状が円形とされ、缶本体の開口端部に缶蓋が巻き締められてなるいわゆる通常缶と比べて、その開口面積が大きい等の理由により、ボトル缶に充填されているCO含有飲料を他の容器に注ぐとき、あるいは直接口を付けて飲むときに、該飲料はボトル缶の開口部から滑らかに流出することとなるため、この飲料を十分に泡立たせることが困難であった。
【0005】
このような問題を解決するための手段として、特許文献1に示されるものが知られている。このボトル缶には、ボトル缶用泡立て部材(中栓)が装着されている。前記中栓には複数の貫通孔がその底部に設けられており、該底部の外周縁から立ち上がる筒部を該ボトル缶の口金部の内周に嵌合させ、前記筒部上端から径方向外方へ拡径される円環状の支持部が前記口金部の開口端部を覆って支持するようにしてボトル缶に装着されている。そしてこのボトル缶を傾けて、その内部の飲料を他の容器に注ぐときに前記貫通孔を通って該飲料が排出されて、泡立たせられるようになっている。
【特許文献1】特開2006−168822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような中栓を設けたボトル缶においては、前記中栓は一般に樹脂材料等により形成されており、また前記支持部が下方に向けて開口する断面視コ字状とされて、このコ字状の内側に該ボトル缶の前記開口端部が嵌合されるようになっている。そのため、前記コ字状の内側の面と前記開口端部との密封が十分に行われず間隙から飲料が滲み出し、外部へ漏出する虞があった。また、前記コ字状の外側の面も前記ライナーと当接されるものの十分に密着されているとは言えず、該ライナーとの間より飲料が漏出する虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、ボトル缶の口金部の開口端部とキャップとの密着性を高め、充填される飲料が外部へ漏出するのを防止し、且つ中栓の製作費用を低減することができるボトル缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、口金部の内側に泡立てのための中栓が装着可能なボトル缶において、前記口金部のカール部とネジ部との間には、前記ボトル缶の軸線に直交する径方向内方に向かって突出する中栓係止用の突出部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明におけるボトル缶によれば、前記口金部のカール部とネジ部との間には、前記ボトル缶の軸線に直交する径方向内方に向かって突出する中栓係止用の突出部が設けられており、この口金部に嵌合される前記中栓をこの突出部によって係止させ、該口金部に支持させるようになっている。よって、後工程において螺着されるキャップと該キャップに当接される前記口金部の上端の開口端部との間には、前記中栓が介装されないようになっているため、この開口端部とキャップとの密着性を十分に得ることができる。
【0010】
本発明のボトル缶において、前記突出部は、前記口金部に環状に形成されていることとしてもよく、これにより、この口金部に嵌合される前記中栓を該口金部の内周全体で支持させることができるので、より確実にこの中栓を固定させ支持させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るボトル缶によれば、ボトル缶の口金部の開口端部とキャップとの密着性を高め、充填される飲料が外部へ漏出するのを防止し、且つ中栓の製作費用を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボトル缶の要部を示す概略図である。このボトル缶10は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等により形成され、その内部にCOを含有する飲料4が充填されている。前記ボトル缶10は、大径の胴部1と、該胴部1の缶軸方向上端に連設されるとともに、上方へ向かうに従い漸次縮径された肩部2と、該肩部2の上端に連設されるとともに、上方へ延在した小径筒状の口金部3とを備えている。この口金部3には、その缶軸方向中央付近に雄ねじ部13が形成され、また缶軸方向上端部に形成される開口端部7bには径方向外方へ折り返されたカール部7が形成されている。このカール部7のカールされる材料先端の端部7aは、その先端の向きを径方向外方から径方向内方へと転回されるようにして、後述する突出部8の上端外周面に当接されて配置されている。
【0013】
前記カール部7の缶軸方向下方の位置には、径方向内方に向かって突出する突出部8が形成されている。この突出部8は、前記カール部7と前記雄ねじ部13との間に環状に形成されており、その径方向内方の突出先端は、前記口金部3の径方向最内方となるよう配置されている。突出部8は、その缶軸方向の断面形状がR曲面状とされている。そしてその凹状となる外周面側の内RはR0.6となされている。
【0014】
中栓5は有底円筒状体とされ、その底部5aは円形状を成し複数の貫通孔(不図示)が設けられ、筒部5bは該底部5aの外周縁から立ち上がって円筒状に形成されている。また筒部5bには、断面形状がR曲面状に形成される溝状の溝部5cが設けられている。この溝部5cは、前記筒部5bの周方向に環状に形成されている。
前記貫通穴は、このボトル缶10に充填される前記飲料4を他の容器に注ぐとき等に、この飲料4を確実に泡立たせることができるように設けられるものである。
【0015】
前記中栓5は、樹脂材料によって一体的に成形されている。そして前記溝部5cの外周面に形成されるR曲面と前記突出部8の内周面に形成されるR曲面とが互いに同一形状とされて、密着されて配置されている。これにより該中栓5は前記口金部3の内周面に嵌合された状態で支持されている。また、前記カール部7の径方向内方に形成される内周面と、前記筒部5bの前記溝部5cの上方に形成される外周面とも、密着された状態とされて嵌合されている。
【0016】
また、キャップ6は、有底円筒状体の形状を成し、その底部内面を覆うようにしてシール材のライナー11が備えられている。前記ライナー11はその底部内面及びその外周縁から立ち上がる筒部の途中までに亘って設けられている。また前記筒部の軸方向中央付近から開口端までに亘り雌ねじ部14が設けられている。このキャップ6は、その開口端をボトル缶10の缶軸下方へ向けた状態で、前記雌ねじ部14と前記雄ねじ部13とを螺着させて前記口金部3の上端外周面に装着されている。
【0017】
このようにキャップ6が前記口金部3に装着された状態において、前記ライナー11の缶軸下方を向く面及び径方向内方を向く面は、夫々前記カール部7の前記開口端部7bとその外側に連続して形成される側面とに押圧され、密着された状態とされている。これにより、このボトル缶10はその内部を密封された状態となっている。また、前記ライナー11の缶軸方向下方を向く面と、前記中栓5の筒部5bの上端部との間には、缶軸方向の間隙が若干設けられて配置されている。
【0018】
ここで比較例として、従来の中栓について説明する。従来の中栓では、その筒部の上端部から径方向外方へ向けて拡径される円環状の支持部が形成されており、この支持部が缶軸方向下方に向けて開口する断面視コ字状に形成されて、そのコ字状の内側に口金部上端に設けられるカール部が嵌合されるようになっている。そのため前記コ字状の内側の面と前記カール部との間にはごく微小な間隙が存在することがあり、この間隙から飲料が滲み出し外部へと漏出する虞があった。また前記コ字状の外側の面も、前記ライナーと当接されるものの十分には密着性を得られず、これらの間の密着不足によって飲料が漏出する虞があった。
【0019】
本実施形態におけるボトル缶10によれば、前述したように、前記中栓5がその溝部5cを前記突出部8に嵌合させて支持されている。これにより、その筒部5bの上端部と前記ライナー11との間には、若干の間隙が設けられている。よって、従来この中栓5を支持させるために備えられていた断面視コ字状の支持部は必要なく、替わりに前記突出部8が該中栓5を支持するため、この支持部を削除しその分の材料費用を低減することができる。また、漏出の原因となっていた前記支持部を無くすことで前記カール部7とライナー11とを直接密着させることができる。これにより、このボトル缶10は良好に密封され、前記飲料4が外部へ漏出するのを防止することができる。
【0020】
次に、このボトル缶10の製造について説明する。
一般に、ボトル缶を完成させるには多くの工程を経て加工する必要があるが、その製造工程は、缶押し込み、油付け、ワーク肩部から口部にかけて段階的に行われる絞り加工、各種回転加工(口部端を揃えるトリミング加工・口部を部分的に拡径する口広げ加工・口部にネジを形成するネジ加工・口部端部をカールするカール加工・前記カール部をかしめるスロットル加工)、缶排出、により構成されている。前記ネジ加工では、前記口金部3にキャップ6と螺合させるための前記雄ねじ部13を成形させる。またその後工程において前記カール加工では、該口金部3の材料端に形成され缶軸方向上方を向く端部7aを径方向外方へと開口し、さらに径方向外方から下方、さらには下方から内方へと、転回させるようにしてカール部を成形させるようになっている。
【0021】
前記カール部は、その後工程においてスロットル加工により外方から内方へと圧縮されてかしめられ、最終的な形のカール部7が形成されるようになっている。本実施形態では、このスロットル加工の後工程に、前記突出部8を形成させるための溝付け加工が行われるようになっている。
【0022】
図2及び図3は、溝付け加工機30による突出部8の成形を示す概略図である。図2は突出部成形前の状態を示し、図3は突出部成形後の状態を示している。
図2に示すように、溝付け加工機30は、回転軸線Oを中心として回転可能な不図示の回転体と、この回転体の同軸上で下方に配置される略円柱状の中子支持体21とを備えている。これら回転体と中子支持体21とは連結されており、該中子支持体21は該回転体の回転によって回転自在とされてボトル缶10の口金部3内に挿入されるよう配置されている。そして前記中子支持体21の周囲には略円柱状の形状を有するローラー22が複数設けられ、これらのローラー22が、前記回転軸線Oを中心として前記回転体の周囲を回転可能とされている。また夫々のローラー22は各別に回転軸線Cを有している。この回転軸線Cは夫々前記回転軸線Oからの距離が均等になるよう配置されており、またローラー22は該回転軸線Cを中心として各別に回転可能とされている。これらのローラー22の下方端部はフランジ状に形成されており、その下方端部の外周縁先端部は断面R状に形成され、その断面RはR0.6となされている。そして、前記ローラー22は、前記回転軸線Cを中心として各別に回転されながら前記回転軸線Oへ向けて均等に接近・離反することが可能なように構成されている。
【0023】
そして、前記回転体が回転軸線Oの同軸上にボトル缶10の缶軸を重ねるようにして配置され、缶軸方向の下方へと移動されていき、前記中子支持体21が口金部3内に挿入されると、該中子支持体21は、この口金部3を内部から径方向外方へと支持する。前記ローラー22は、各別に前記回転軸線Cを中心として回転されつつ、前記回転軸線Oを中心として大きく回転されながら、前記回転軸線Oに向けて均等に接近されていく。そして該ローラー22の各外周縁先端部が口金部3のカール部7と雄ねじ部13との間の外周面に当接され径方向内方へと押圧することにより、図3に示すように前記突出部8が形成されるようになっている。
【0024】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば本実施形態では前記突出部8は、前記口金部3に環状に形成されるとしたがその内部に嵌合される中栓5を支持可能であればこれに限られることなく、該口金部3の周方向に間隔を開けて断続的に形成させたり、局部的に形成させたりしてもよい。また突出部8及び中栓5の嵌合する断面の形状は曲面に限られるものではなく、角状やその他の形状で形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るボトル缶の要部を示す概略図である。
【図2】本発明のボトル缶の製造に係る突出部の成形前の状態を示す概略図である。
【図3】本発明のボトル缶の製造に係る突出部の成形後の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
3 口金部
5 中栓
7 カール部
8 突出部
10 ボトル缶
13 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口金部の内側に泡立てのための中栓が装着可能なボトル缶において、
前記口金部のカール部とネジ部との間には、前記ボトル缶の軸線に直交する径方向内方に向かって突出する中栓係止用の突出部が設けられていることを特徴とするボトル缶。
【請求項2】
請求項1記載のボトル缶であって、
前記突出部は、前記口金部に環状に形成されていることを特徴とするボトル缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−18817(P2009−18817A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181045(P2007−181045)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】