説明

ボビン処理装置及び糸巻取システム

【課題】ボビン処理装置において、ベルトコンベアの斜行を容易に調整できるコンパクトな機構を提供する。
【解決手段】ボビン処理装置は、ベルトコンベアによって給糸ボビンを搬送する。ベルトコンベアは、無端環状の平ベルトと、モータ31と、モータブラケット34と、斜行調整部材と、を備えている。平ベルトは、従動ローラ及び駆動ローラ28の間に掛け渡される。モータ31は、その回転出力軸31aに駆動ローラ28を固定している。モータブラケット34には、モータ31が取り付けられる。斜行調整部材は、斜行調整軸40の軸線まわりに回転可能である。また、斜行調整部材には、斜行調整軸40の軸線に対して偏芯している偏芯部42を備える。そして、モータブラケット34は、偏芯部42の外周に接触することにより位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン処理装置において給糸ボビンを搬送するためのベルトコンベアの斜行調整に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機で生成された給糸ボビンに所定の処理を行ったのち、糸巻取装置に供給するボビン処理装置が知られている。この種のボビン処理装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この種のボビン処理装置には、給糸ボビンを載せた搬送トレイを搬送するためのボビン搬送路が形成されている。搬送トレイを搬送するための機構としては、無端環状体として構成された平ベルトを複数のローラで循環駆動する構成(いわゆるベルトコンベア)が採用される場合がある。
【0004】
ベルトコンベアにおいては、斜行調整を行わなければ、平ベルトがローラから外れてしまったり、搬送トレイが斜めに搬送されてしまったりするなどの不具合が発生する。この点、特許文献2には、ベルトの斜行を容易に調整できる構成が開示されている。特許文献2に記載の構成は、テンションプーリの回転軸であるシャフトの軸方向を、ベルトの走行する面の法線方向のまわりに回転可能、かつ当該法線方向と所定の角度ズラしたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247517号公報
【特許文献2】実開昭61−133862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の斜行調整機構は、テンションプーリが必要であるため、当該斜行調整機構が占めるスペースが大きくなるという問題がある。また、特許文献2が開示しているのは、ベルトが掛け渡されたローラ及びプーリが全て従動回転する構成である。しかし、ボビン処理装置が備えるベルトコンベアにおいては、平ベルトが掛け渡されるローラのうち1つはモータ等によって積極的に回転駆動される。従って、特許文献2の構成はボビン処理装置のベルトコンベアに採用することができない。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ボビン処理装置において、ベルトコンベアの斜行を容易に調整できるコンパクトな機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、ベルトコンベアによって給糸ボビンを搬送するボビン処理装置の以下の構成が提供される。即ち、前記ベルトコンベアは、無端環状の平ベルトと、モータブラケットと、斜行調整部材と、を備える。前記平ベルトは、複数のローラの間に掛け渡される。前記ブラケットには、前記複数のローラのうち何れか1つの回転軸が取り付けられる。前記斜行調整部材は、所定の斜行調整軸まわりに回転可能に構成される。また、前記斜行調整部材は、前記斜行調整軸に対して偏芯している偏芯部を備える。そして、前記ブラケットは、前記偏芯部の外周に接触することにより位置決めされている。
【0010】
この構成で、斜行調整部材を回転させることにより偏芯部が偏芯回転するので、当該偏芯部によって位置決めされているブラケットが移動する。これにより、ローラの回転軸の傾きを調整することができるので、ベルトコンベアの斜行調整を行うことができる。このように、斜行調整部材を回転させるという簡単な構成で斜行調整を行うことができるので、当該斜行調整を行うための機構をコンパクトに構成することができる。
【0011】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このボビン処理装置は、前記平ベルトを駆動するための駆動ローラと、モータと、を備える。前記駆動ローラは、前記モータの回転出力軸に固定される。そして前記モータは、前記ブラケットに固定される。
【0012】
この構成によれば、駆動ローラにモータを直接取り付け、モータそのものを斜行調整することができる。
【0013】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記偏芯部は、前記斜行調整軸に直交する平面による断面の輪郭形状が円形である。前記ブラケットには、前記偏芯部の直径と略一致した幅を有する長孔が形成されている。そして、前記偏芯部は、前記長孔の内側に配置される。
【0014】
このように、偏芯部が配置される孔の形状を長孔とすることにより、偏芯回転による偏芯部の移動に対応することができる。
【0015】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このボビン処理装置は、前記ブラケットに対して、前記長孔の長手方向と略平行な方向から接触するテンション調整部材を備える。そして前記テンション調整部材は、前記長孔の長手方向と略平行な方向での位置を調整可能に構成されている。
【0016】
即ち、ブラケットは、長孔の長手方向で移動させることができる。そこで、テンション調整部材をブラケットに接触させることにより、ブラケットが上記の方向に移動することを規制する。そしてテンション調整部材の位置を調整可能とすることにより、長孔の長手方向でブラケットを移動させ、ローラの位置を変更できるので、平ベルトにかかるテンションを調整することができる。
【0017】
上記のボビン処理装置においては、前記テンション調整部材が前記ブラケットに接して力を及ぼす方向に引かれた仮想線上に、前記長孔が位置していることが好ましい。
【0018】
これにより、平ベルトにかかる力が斜行調整によって大きく曲がることを防止できる。
【0019】
上記のボビン処理装置において、前記斜行調整部材には、つまみ部が形成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、斜行調整部材を容易に回転させることができるので、平ベルトの斜行調整を容易に行うことができる。
【0021】
本発明の別の観点によれば、上記のボビン処理装置と、前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備える糸巻取システムが提供される。
【0022】
即ち、上記ボビン処理装置は、ベルトコンベアの斜行調整を容易に行うことが可能であるので、メンテナンスの効率が向上する。従って糸巻取システム全体の生産性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダシステムの全体的な構成を示す平面図。
【図2】丸ベルトによる搬送機構の構成を示す斜視図。
【図3】ベルトコンベアの平面図。
【図4】斜行調整機構の組立斜視図。
【図5】(a)斜行調整部材を偏芯部側から見た斜視図。(b)斜行調整部材をつまみ部側から見た斜視図。
【図6】斜行調整機構の平面図。
【図7】(a)図6の状態から斜行調整部材を回転させた様子を示す平面図。(b)斜行調整部材を反対方向に回転させた様子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態に係るボビン処理装置3を備えた自動ワインダシステム(糸巻取システム)1の概略的な平面図である。
【0025】
この自動ワインダシステム1は、自動ワインダ(糸巻取装置)2と、ボビン処理装置3と、ボビン供給装置(ボビン供給部)4と、を備えている。
【0026】
自動ワインダ2は、複数の巻取ユニット5を多数並べて備えている。各巻取ユニット5は、紡績糸が巻かれた給糸ボビンから紡績糸を解舒し、巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する公知の構成である。自動ワインダ2には、各巻取ユニット5まで給糸ボビンを自動的に搬送するための供給路6が形成されている。また、自動ワインダ2には、各巻取ユニット5から排出される空ボビンを搬送するための回収路7が形成されている。
【0027】
前記供給路6及び回収路7はベルトコンベア等から構成されており、搬送トレイを搬送することができるように構成されている。この搬送トレイは、給糸ボビンを略直立状態で載置することができるように構成されている。
【0028】
給糸ボビンは、前工程の精紡機において生成された紡績糸を、ボビン管の周囲に巻き付けたものである。精紡機で生成された給糸ボビンは、ボビン供給装置4まで運搬され、当該ボビン供給装置4に投入される。ボビン供給装置4は、投入された給糸ボビンを、搬送トレイの上に一本ずつ略直立状態で載置していくように構成されている。このボビン供給装置4は、搬送トレイの上に給糸ボビンを載置するためのボビンシュート9を備えている。
【0029】
ボビン処理装置3は、ボビン供給装置4と自動ワインダ2との間に配置されている。ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンは、そのままでは自動ワインダ2において糸を適切に解舒できない場合がある。そこで、ボビン処理装置3において、ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンに対して予め適切な処置を行うように構成されている。ボビン処理装置3で行われる処置としては、例えば、バンチ巻き解舒、糸端処理、口出し処理などである。なお、バンチ巻き解舒、糸端処理、及び口出し処理については、例えば特許文献1に記載されている。ボビン処理装置3は、バンチ巻き解舒を行うためのバンチ解舒装置10、糸端処理を行うための糸端処理装置11、及び口出し処理を行うための口出し装置12を備えている。
【0030】
ボビン処理装置3には、給糸ボビンを搬送する搬送路8が形成されている。図1に示すように、搬送路8は、自動ワインダ2の供給路6と回収路7とを接続するように構成されている。
【0031】
また、ボビン処理装置3は、当該ボビン処理装置3が備える各構成を制御するための制御部を備えている。
【0032】
この自動ワインダシステムにおける搬送トレイの流れについて説明すると、以下のとおりりである。
【0033】
ボビン処理装置3は、給糸ボビンの有無を検出するためのボビンセンサを、搬送路8の各所に備えている。また、ボビン処理装置3は、搬送トレイの有無を検出するためのトレイセンサを、搬送路8の各所に備えている。なお、以下の説明では、ボビンセンサとトレイセンサをまとめて、単に「センサ」と呼ぶ場合がある。
【0034】
例えば、空の搬送トレイ(ボビンが載っていない搬送トレイ)がボビンシュート9の直下位置16まで到達すると、当該空の搬送トレイが前記センサによって検知される。この場合、制御部は、ボビンシュート9を作動させ、前記空の搬送トレイの上に給糸ボビンを1つ、略直立状態で載置する。
【0035】
ボビンシュート9によって給糸ボビンが載置された搬送トレイは、下流側のバンチ解舒装置10へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)がバンチ解舒装置10の正面位置17に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、バンチ解舒装置10を動作させて、給糸ボビンに形成されているボトムバンチを除去する。
【0036】
ボトムバンチを除去された給糸ボビンは、更に下流側の糸端処理装置11へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が糸端処理装置11の正面位置18に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、糸端処理装置11を動作させて、給糸ボビンの外周に巻き付いているバックワインド糸を切断し、糸端を形成する。
【0037】
バックワインド糸を切断された給糸ボビンは、更に下流側の口出し装置12へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が口出し装置12の正面位置19に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、口出し装置12を動作させて、糸端処理装置11で形成された糸端をボビン管の内側に挿入する(口出し)。
【0038】
口出しされた給糸ボビンは、搬送路8を更に下流へと搬送され、自動ワインダ2の供給路6へと供給される。給糸ボビンは、供給路6を搬送され、巻取ユニット5のうち何れかに供給される。
【0039】
巻取ユニット5においては、給糸ボビンから糸の解舒が行われ、解舒された糸がパッケージに巻き取られる。糸が全て解舒されたボビン(空ボビン)を乗せた搬送トレイは、巻取ユニット5から排出され、回収路7を介して再びボビン処理装置3の搬送路8に戻される。
【0040】
搬送路8において、ボビンシュート9の上流側には、ボビンプロー13が配置されている。ボビンプロー13は、回収路7から搬送路8に戻ってきた搬送トレイに載置されている空ボビンを抜き取るための装置である。空ボビンを乗せた搬送トレイがボビンプロー13の直下位置20に到達したことをセンサが検知した場合、制御部は、ボビンプロー13を動作させて、当該空ボビンを搬送トレイから抜き取る。
【0041】
次に、ボビン処理装置3の搬送路8によって給糸ボビンを搬送するための搬送機構について説明する。この搬送機構は、丸ベルトによる搬送機構と、平ベルトによる搬送機構と、によって構成されている。
【0042】
まず、丸ベルトによる搬送機構について説明する。丸ベルトによる搬送機構は、複数のプーリ(図略)の間に無端環状の丸ベルトを掛け渡して搬送路8に沿って配設し、前記プーリを駆動することにより、前記丸ベルトを循環駆動させる構成である。図2に示すように、給糸ボビン15を載せた搬送トレイ14の下面を丸ベルト21に接触させつつ、前記丸ベルト21を循環駆動させることにより、搬送路8に沿って搬送トレイ14(及び給糸ボビン15)を搬送することができる。
【0043】
図2に示すように、丸ベルト21は、プーリとプーリとの間の部分において、板バネ22によって下側から支持されている。この板バネ22は、斜め上方に向けて配置されるとともに、途中部分を湾曲させることにより上向きに凸となる湾曲部22aが形成されている。この湾曲部22aの上面を丸ベルト21の下面に接触させるとにより、当該丸ベルト21を下側から支持する構成である。なお、従来のボビン処理装置においては、丸ベルト21の途中部分を支持する部材として、従動回転する従動プーリを採用していた。しかし、この従来の構成では、回転する従動プーリに風綿(糸くず)などが絡み付き易く、清掃等のメンテナンスが煩雑であるという問題があった。この点、上記の構成であれば、板バネ22は回転する部材を有さないため風綿が絡み付くことがない。従って、この構成によれば清掃等のメンテナンスの手間を低減することができる。
【0044】
丸ベルト21を駆動するための駆動プーリ(図略)、当該駆動プーリを回転駆動するモータ(図略)などは、外装パネル23の下方に配置されている。外装パネル23によって駆動プーリやモータなどを覆うことにより、ボビン処理装置3の動作中に、駆動プーリやモータなどに作業者が不用意に触れてしまうことを防止できる。
【0045】
駆動プーリやモータは回転部を有するために風綿が付着し易い。そこで、これらに対しては定期的に清掃等のメンテナンスが必要である。当該メンテナンスを行うことができるように、外装パネル23は容易に取り外し可能に構成されている。具体的には、外装パネル23は、当該外装パネル23の下方に配置されたベース体24に対して、ネジ25によりネジ止めされている。ネジ25を緩めることにより、外装パネル23を取り外すことができる。外装パネル23には、ネジ25を挿通させるためのネジ孔26が形成されているが、このネジ孔26は公知のダルマ孔として形成されている。従って、ネジ25を緩めるだけで、当該ネジ25を抜き取ることなく外装パネル23を取り外すことができる。これにより、外装パネル23の取り外しの際にネジ25が紛失してしまうことを防止でき、当該取り外し作業をスムーズに行うことができる。駆動プーリ等のメンテナンス(清掃)は定期的に行われるため、外装パネル23の取り外し作業は頻繁に行われる。従って、上記のように構成することでメンテナンスの作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0046】
次に、平ベルトによる搬送機構について説明する。
【0047】
即ち、上記のような丸ベルト21による搬送機構は、搬送トレイ14の姿勢を水平に保ったまま搬送することが難しいという欠点がある。通常であれば搬送トレイ14が多少傾いていても問題ないが、搬送路8の途中には、搬送トレイ14の水平姿勢が重要となる箇所がある。例えば前述のボビンシュート9においては、給糸ボビン15を搬送トレイ14に対して適切に載置するために、当該搬送トレイ14の姿勢が水平状態に保たれている必要がある。
【0048】
そこで、このように搬送トレイ14の水平姿勢が重要になる箇所においては、前記丸ベルト21に対してベルトコンベア(平ベルトによる搬送機構)を併設し、当該ベルトコンベアによって搬送トレイ14を搬送するように構成している。平ベルトによるベルトコンベアは、搬送トレイ14を載せる面(平ベルトの上面)が平面であるから、搬送トレイ14の水平姿勢を保って搬送することができるのである。
【0049】
このベルトコンベアの構成を、図3に示す。図3に示すように、ベルトコンベア27は、駆動ローラ28と、従動ローラ29と、平ベルト30と、を備えている。
【0050】
平ベルト30は無端環状に構成されており、駆動ローラ28と従動ローラ29との間に掛け渡されている。この平ベルト30は、搬送トレイ14を水平状態で搬送するために、当該平ベルトの搬送面(平ベルトの上面)が略水平となるように配設されている。前記駆動ローラ28は、ベルトコンベアの駆動源であるモータ31(本実施形態ではステッピングモータ)の回転出力軸31aに固定されている。従動ローラ29は、従動ローラ軸29aに対してベアリングを介して取り付けられており、当該従動ローラ軸29aを中心として回転自在に構成されている。この従動ローラ軸29aは、従動ローラブラケット32を介して固定されている。
【0051】
以上の構成で、モータ31を駆動することにより、駆動ローラ28が回転駆動され、当該駆動ローラ28と従動ローラ29との間に掛け渡された平ベルト30が循環駆動される。これにより、平ベルト30に乗った搬送トレイ14(及び給糸ボビン15)を搬送することができる。
【0052】
本実施形態のベルトコンベア27は、斜行調整を行うための斜行調整機構33を有している。この斜行調整機構33は、モータブラケット34と、斜行調整部材35と、を主に備えている。
【0053】
前記モータ31は、モータブラケット(ブラケット)34に固定されている。このモータブラケット34は、図4に示すように、略水平面として構成されたモータ取付面37に対してネジ止めされる。このモータブラケット34には、前記ネジ止めのためのネジ38を挿通させる長孔39が形成されている。なお、前記ネジ38は、モータ取付面37に対して略直交するように螺入される。前記モータ31は、その回転出力軸31aがモータ取付面37と平行になるように、モータブラケット34に取り付けられている。
【0054】
斜行調整部材35には、斜行調整軸40を挿通させるための丸孔41が形成されている。この斜行調整軸40はネジとして構成されている。図4に示すように、斜行調整軸40は、斜行調整部材35の丸孔41を介して、前記モータ取付面37に螺入される。これにより、斜行調整部材35がネジ止めされ、斜行調整軸40まわりで回転不能に固定される。また、この斜行調整軸40のネジの締め付けを弛めることにより、当該斜行調整軸40を中心として斜行調整部材35を回転させることができる。
【0055】
図5(a)に示すように、斜行調整部材35の一側の面には、円柱状に突出する偏芯部42が形成されている。偏芯部42は、斜行調整軸40と直交する平面で切断した断面の輪郭が、円形状となっている。この円柱状に突出した部分が偏芯部42と呼ばれるのは、前記丸孔41が、円柱の中心から外れた位置に形成されているためである。即ち、偏芯部42は、丸孔41に挿入される斜行調整軸40に対して偏芯している。従って、斜行調整軸40を中心として斜行調整部材35を回転させたときには、偏芯部42が偏芯運動を行うことになる。なお、前記斜行調整軸40は、モータ取付面37に対して略直交するように螺入される。従って偏芯部42は、モータ取付面37と平行な平面内で偏芯運動を行う。
【0056】
図4に示すように、モータブラケット34には、前記偏芯部42が挿入される長孔43が形成されている。この長孔43の幅(長孔43の長手方向と直交する方向の長さ)は、偏芯部42の直径と略一致している。斜行調整部材35をモータ取付面37にネジ止めする際には、図4に示すように、長孔43の内側に偏芯部42を挿入し、この状態で斜行調整部材35のネジ止めを行う。これにより、図6に示すように、長孔43の内側に偏芯部42が配置されることになる。前述のように、長孔43の幅は偏芯部42の直径と略一致しているので、長孔43の縁は、偏芯部42の外周に接触する。これにより、モータブラケット34が位置決めされる。
【0057】
以上の構成により、斜行調整部材35を、斜行調整軸40を中心として回転させることにより、ベルトコンベア27の斜行調整を行うことができる。即ち、斜行調整部材35を回転させることにより、偏芯部42が偏芯運動する結果、当該偏芯部42の外周が長孔43の縁を押す。これにより、図7(a)又は図7(b)に示すごとく、モータブラケット34が、ネジ38を中心として回動する。なお、偏芯部42は、長孔43の内側において、当該長孔43の長手方向に相対移動することができる。従って、偏芯部42の偏芯運動が阻害されることはない。
【0058】
以上のように、斜行調整部材35を回転させることでモータブラケット34を回動させることができるので、駆動ローラ28の回転軸(モータ31の回転出力軸31a)の傾きを、モータ取付面37と平行な平面内で調整することができる。ここで、モータ取付面37は、平ベルト30の搬送面(平ベルト30の上面)と平行になるように(水平に)設定されている。従って、斜行調整部材35を回転させることにより、駆動ローラ28の回転軸の傾きを、平ベルト30の搬送面と平行な平面内で調整することができる。
【0059】
このように、本実施形態の斜行調整機構33の構成によれば、斜行調整部材35を回転させるだけで、ベルトコンベア27の斜行調整を容易に行うことができる。また、本実施形態の斜行調整機構33は、モータブラケット34と、これに接触する斜行調整部材35からなるコンパクトな構成である。従って、狭いスペースに配設されたベルトコンベアに対しても、本実施形態の斜行調整機構33を設置することができる。
【0060】
なお、図5(b)に示すように、斜行調整部材35において、偏芯部42が形成されている面の反対側には、つまみ部44が形成されている。斜行調整を行う作業者は、このつまみ部44を指でつまむことにより、或いはつまみ部44を工具等によって挟み込むことにより、斜行調整部材35を容易に回転させることができる。なお、斜行調整が終わると、作業者は、斜行調整軸40のネジによって斜行調整部材35を締め付けることにより、当該斜行調整部材35の回転位相を固定する。これにより、駆動ローラ28の回転軸(回転出力軸31a)の角度が固定される。
【0061】
本実施形態において、長孔39,43は、その長手方向が平ベルト30の配設方向(走行方向)と略平行となるように形成されている。従って、斜行調整部材35の回転位相を固定した後であっても、モータブラケット34全体を、平ベルト30の配設方向と平行な方向に移動させることができる。平ベルトには所定のテンションが付与されているので、駆動ローラ28には従動ローラ29側に引っ張られる力がかかっている。従って、モータブラケット34は、従動ローラ29側に近づく方向に移動しようとする。そこで本実施形態では、モータブラケット34に対して、従動ローラ29側から接触するテンション調整部材45を備えている。これにより、モータブラケット34が従動ローラ29側に近づく方向に移動することを規制することができる。
【0062】
このテンション調整部材45は、平ベルト30の配設方向と平行な方向(長孔39,43の長手方向と略平行な方向)で位置を調整することができるように構成されている。テンション調整部材45の位置を調整することにより、モータブラケット34を、平ベルト30の配設方向と略平行な方向で位置決めすることができる。これにより、駆動ローラ28と従動ローラ29との距離を調整できるので、平ベルト30のテンションを調整することができる。
【0063】
なお、テンション調整部材45がモータブラケット34に接して力を及ぼす方向に引かれた仮想線46(図6及び図7)を考えたときに、長孔39,43は、前記仮想線46上に位置するように形成されている。また、この仮想線46上には、ネジ38及び斜行調整軸40が配置されている。なお、この仮想線46は、平ベルト30の配設方向と略平行である。
【0064】
上記ように、長孔39,43を仮想線46上に形成することで、斜行調整部材35を回転させて斜行調整を行ったときに、モータブラケット34が仮想線46方向で移動する距離を最小限とすることができる。従って、平ベルト30にかかる力が斜行調整によって大きく曲がる(平ベルト30に無理が力が働く)ことを防止できる。
【0065】
以上で説明したように、本実施形態のボビン処理装置3は、ベルトコンベア27によって給糸ボビン15を搬送する。ベルトコンベア27は、無端環状の平ベルト30と、モータブラケット34と、斜行調整部材35と、を備えている。平ベルト30は、従動ローラ29及び駆動ローラ28の間に掛け渡される。前記モータブラケット34には、駆動ローラ28の回転軸である回転出力軸31aが取り付けられている。斜行調整部材35は、斜行調整軸40まわりに回転可能である。また、斜行調整部材35は、斜行調整軸40に対して偏芯している偏芯部42を備えている。そして、モータブラケット34は、偏芯部42の外周に接触することにより位置決めされている。
【0066】
この構成で、斜行調整部材35を回転させることにより偏芯部42が偏芯回転するので、当該偏芯部42によって位置決めされているモータブラケット34が移動する。これにより、駆動ローラ28の回転軸(回転出力軸31a)の傾きを調整することができるので、ベルトコンベア27の斜行調整を行うことができる。このように、斜行調整部材35を回転させるという簡単な構成で斜行調整を行うことができるので、斜行調整機構33をコンパクトに構成することができる。
【0067】
また本実施形態のボビン処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、このボビン処理装置3は、平ベルト30を駆動するための駆動ローラ28と、モータ31と、を備えている。駆動ローラ28は、モータ31の回転出力軸31aに固定される。そしてモータ31は、モータブラケット34に固定される。
【0068】
この構成によれば、駆動ローラ28にモータ31を直接取り付け、モータ31そのものを斜行調整することができる。
【0069】
また本実施形態のボビン処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、偏芯部42は、斜行調整軸40に直交する平面による断面の輪郭形状が円形である。モータブラケット34には、偏芯部42の直径と略一致した幅を有する長孔43が形成されている。そして、偏芯部42は、長孔43の内側に配置される。
【0070】
このように、偏芯部42が配置される孔の形状を長孔43とすることにより、偏芯回転による偏芯部42の移動に対応することができる。
【0071】
また本実施形態のボビン処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、このボビン処理装置3は、モータブラケット34に対して、長孔43の長手方向と略平行な方向から接触するテンション調整部材45を備える。そしてテンション調整部材45は、前記長孔43の長手方向と略平行な方向での位置を調整可能に構成されている。
【0072】
即ち、モータブラケット34は、長孔43の長手方向で移動させることができる。そこでテンション調整部材45をモータブラケット34に接触させることにより、モータブラケット34が上記の方向に移動することを規制する。そしてテンション調整部材45の位置を調整することにより、長孔43の長手方向でモータブラケット34を移動させ、駆動ローラ28の位置を変更できるので、平ベルト30にかかるテンションを調整することができる。
【0073】
また本実施形態のボビン処理装置3は、テンション調整部材45がモータブラケット34に接して力を及ぼす方向に引かれた仮想線46上に、長孔43が位置している。
【0074】
これにより、平ベルト30にかかる力が斜行調整によって大きく曲がることを防止できる。
【0075】
また本実施形態のボビン処理装置3において、斜行調整部材35には、つまみ部44が形成されている。
【0076】
これにより、斜行調整部材35を容易に回転させることができるので、平ベルト30の斜行調整を容易に行うことができる。
【0077】
また本実施形態の自動ワインダシステム1は、上記のボビン処理装置3と、ボビン処理装置3に給糸ボビン15を供給するボビン供給装置4と、ボビン処理装置3によって所定の処理が施された給糸ボビン15から糸を巻き取る自動ワインダ2と、を備えている。
【0078】
即ち、上記ボビン処理装置3は、ベルトコンベア27の斜行調整を容易に行うことが可能であるので、メンテナンスの効率が向上する。従って自動ワインダシステム1全体の生産性も向上させることができる。
【0079】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
上記実施形態では、精紡機で生成された給糸ボビン15をボビン供給装置4まで運搬し、当該給糸ボビン15をボビン供給装置4に投入する構成として説明した。しかしこれに限らず、例えばボビン処理装置と精紡機との間を搬送路で繋ぎ、精紡機で生成された給糸ボビンがボビン処理装置に対して連続的に供給されるように構成しても良い。この場合、精紡機がボビン供給部に相当する。
【0081】
斜行調整部材35の形状は図面に記載したものに限らず、斜行調整軸40に対して偏芯した部分を有していれば良い。また、モータブラケット34は、偏芯部42の外周に接触して位置決めされるように構成されていれば良く、必ずしも長孔43の内側に偏芯部42を配置する構成でなくても良い。
【0082】
駆動ローラ28の回転軸(回転出力軸31a)の傾きを調整する構成に限らず、従動ローラ29の回転軸(従動ローラ軸29a)の傾きを調整する構成にも本発明の構成を適用することができる。
【0083】
また、平ベルトが掛け渡されるローラは3つ以上であってもよい。この場合、何れのローラの回転軸の調整にも本発明の構成を適用することができる。
【0084】
平ベルトは搬送ボビンを水平に搬送するように配設されるとして説明したが、搬送ボビンを斜めに搬送する構成であっても、本発明の構成を適用することができる。
【0085】
テンション調整部材45によって平ベルト30のテンションを調整する構成は省略しても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 自動ワインダシステム(糸巻取システム)
2 自動ワインダ(糸巻取装置)
3 ボビン処理装置
11 糸端処理装置
15 給糸ボビン
27 ベルトコンベア
28 駆動ローラ
29 従動ローラ
30 平ベルト
31 モータ
34 モータブラケット(ブラケット)
35 斜行調整部材
40 斜行調整軸
42 偏芯部
43 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアによって給糸ボビンを搬送するボビン処理装置であって、
前記ベルトコンベアは、
無端環状の平ベルトと、
ブラケットと、
斜行調整部材と、
を備え、
前記平ベルトは、複数のローラの間に掛け渡され、
前記ブラケットには、前記複数のローラのうち何れか1つの回転軸が取り付けられ、
前記斜行調整部材は、所定の斜行調整軸まわりで回転可能に構成されるとともに、前記斜行調整軸に対して偏芯している偏芯部を備え、
前記ブラケットは、前記偏芯部の外周に接触することにより位置決めされていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボビン処理装置であって、
前記平ベルトを駆動するための駆動ローラと、モータと、を備え、
前記駆動ローラは、前記モータの回転出力軸に固定され、
前記モータは、前記ブラケットに固定されることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボビン処理装置であって、
前記偏芯部は、前記斜行調整軸に直交する平面による断面の輪郭形状が円形であり、
前記ブラケットには、前記偏芯部の直径と略一致した幅を有する長孔が形成され、
前記偏芯部は、前記長孔の内側に配置されることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のボビン処理装置であって、
前記ブラケットに対して、前記長孔の長手方向と略平行な方向から接触するテンション調整部材を備え、
前記テンション調整部材は、前記長孔の長手方向と略平行な方向での位置を調整可能に構成されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のボビン処理装置であって、
前記テンション調整部材が前記ブラケットに接して力を及ぼす方向に引かれた仮想線上に、前記長孔が位置していることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のボビン処理装置であって、
前記斜行調整部材に、つまみ部が形成されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のボビン処理装置と、
前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、
前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、
を備えることを特徴とする糸巻取システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate