説明

ボルト軸力管理システム

【課題】ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うことが可能なボルト軸力管理システムを提供する。
【解決手段】歪センサと軸力検出部とをボルト内部に配備した軸力管理ボルトと、軸力検出部で検出された軸力をデータ化して記録し無線送信する軸力記録、送信部と、軸力検出部と軸力記録、送信部とを接続する接続部を有する締付管理レンチと、無線送信された軸力のデータを受信し表示する無線受信モジュールとから成り、締付管理レンチを介して軸力検出部と軸力記録、送信部とが接続され、且つ、締付管理レンチにより軸力管理ボルトが締付けられ、歪センサが締付けられた軸力管理ボルトの軸力を電気信号に変換し、軸力検出部が変換された電気信号を検出して出力し、軸力記録、送信部が当該出力をデータ化して無線送信し、無線受信モジュールが送信された軸力のデータを受信して表示し、軸力管理ボルトの締付状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト軸力管理システムに係り、詳しくは、ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うボルト軸力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線スペーサ、鉄骨構造物等の接続は一般的にボルトが使われる。ボルトの重要締付部に関しては、通常、まず仮締めが行われ、マーキングし、検査担者立会のもとで本締めが行われる。しかしながら、送電線の送電線スペーサの取り付け等においては、高所作業のため、簡単に第三者の立ち会いによりボルトの締付状態を検査することは不可能に等しく、省略される場合がある。このため、締付担当者のミスにより本締めが行われず、軸力が正しくかかっていない場合が生じ、放置すると脱落などの大事故になる危険性がある。
【0003】
特許文献1は、歪センサをボルトに埋め込み、ボルト締め込み時にボルトの軸力を測定する、旨の記載がある。しかし、特許文献1の発明は、ボルトの軸力測定のため機材の持ち込みが必要で、現場で簡単にボルトの締付けと軸力測定を行う事は不可能であった。また、第三者が別の場所で軸力を確認するのも困難であった。また、測定されるボルトが設置に指定されたボルトかどうかの検証もできなかった。特許文献2は、ボルトを特定するため、RFIDをボルトに貼り付け、その固有番号を非接触で読み取る、旨の記載がある。ところがRFIDで読み取る場合、非接触なので測定しているボルト以外の近辺のボルトの固有番号を読み取っている可能性がある。ボルトの締付状態の管理を確実に行うには、このような読み取りの曖昧さを排除する事が必要である。また、RFIDは電波の性質上、ボルト等の金属表面に貼ると電波の送受信が困難になる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−347349号公報
【特許文献2】特開2007−199867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うことが可能なボルト軸力管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボルト軸力管理システムは、ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うボルト軸力管理システムにおいて、歪センサと軸力検出部とをボルト内部に配備した軸力管理ボルトと、軸力検出部で検出された軸力をデータ化して記録し無線送信する軸力記録、送信部と、軸力検出部と軸力記録、送信部とを接続する接続部を有する締付管理レンチと、無線送信された前記軸力のデータを受信し表示する無線受信モジュールとから成り、締付管理レンチを介して軸力検出部と前記軸力記録、送信部とが接続され、且つ、締付管理レンチにより軸力管理ボルトが締付けられ、歪センサが締付けられた軸力管理ボルトの軸力を電気信号に変換し、軸力検出部が変換された電気信号を検出して出力し、軸力記録、送信部が該出力をデータ化して無線送信し、無線受信モジュールが送信された軸力のデータを受信して表示し、軸力管理ボルトの締付状態を検査することを特徴とする。
【0007】
本発明のボルト軸力管理システムの軸力検出部は、固有番号記録制御部をさらに有し、軸力管理ボルトの固有番号を管理することを特徴とする。
【0008】
本発明のボルト軸力管理システムの締付管理レンチは、軸力管理ボルトの頭部を覆う該頭部と同形状の空洞を有する締付部と、ボルトの締付方向を設定するラチェット機構を具備したレンチレバー部とを有し、レンチレバー部は、軸力検出部と軸力記録、送信部とを接続する接続部を当該空洞の上部に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うことが可能なボルト軸力管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるボルト軸力管理システムの構成図。
【図2】本発明による第1の軸力検出部及び軸力記録、送信部の構成図。
【図3】本発明による締付管理レンチの構成図。
【図4】本発明による第2の軸力検出部及び軸力記録、送信部の構成図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明によるボルト軸力管理システムの構成図である。図1において、ボルト軸力管理システム300は、軸力管理ボルト1と軸力検出部100と軸力記録、送信部200と締付管理レンチ70と無線受信モジュール50とを有する。軸力管理ボルト1は、T型に形成されたアセンブリー穴2を有している。軸力検出部100は、歪センサ12と軸力検出基板21とを有している。軸力記録、送信部200は、軸力記録、送信基板37を有している。また、無線受信モジュール50は、アンテナ51と受信機52とパソコン53とを有している。
【0012】
軸力管理ボルト1のT型の垂直方向の穴の壁面には、歪センサ22が封入固着され、T型の水平方向の穴には、軸力検出基板21が埋め込まれ、互いに歪センサリード線11により、接続されている。そして、軸力検出基板21と軸力記録、送信基板37とは、図3において説明する締付管理レンチ70の接続部75を介して挿入接続されている。
【0013】
図2は、本発明による第1の軸力検出部及び軸力記録、送信部の構成図である。図2において、第1の軸力検出部100−1の軸力検出基板21は、電源入力ピン24と、歪センサ出力ピン25と、軸力管理ボルト1の固有番号出力ピン26と、グランドピン29とを具備している。電源入力ピン24、歪センサ出力ピン25間には、抵抗素子23−1の両端がそれぞれ接続され、電源入力ピン24、固有番号出力ピン26間には、固有番号の記録制御を行うマイクロチップ28が接続され、歪センサ出力ピン25、グランドピン29間には、図2において説明する軸力管理ボルト1に単独に埋め込まれた歪センサ22の歪センサリード線11が接続されて軸力検出基板21が構成されている。
【0014】
第1の軸力記録、送信部200−1の第1の軸力記録、送信基板37は、外部出力端子36と、電源出力ピン38と、歪センサ入力ピン39と、軸力管理ボルト1の固有番号入力ピン40と、グランドピン41とを具備している。同様に、電源出力ピン38には、電源30が接続され、歪センサ入力ピン39、グランドピン41間には、A/D変換器31が接続され、固有番号入力ピン40、外部出力端子36間には、CPU35が接続される。さらに、CPU35により制御される、A/D変換器31、アンテナ43を具備する無線モジュール42、タイマー32、メモリー33、及びスピーカ34がCPU35に接続されて第1の軸力記録、送信基板37が構成されている。
【0015】
図3は、本発明による締付管理レンチの構成図である。図3aは、締付管理レンチを介して軸力検出基板と軸力記録、送信基板とが接続された接続構成図である。図3bは、締付管理レンチの平面図である。図3において、締付管理レンチ70は、内部に形成された軸力管理ボルト1の頭部を覆う該頭部と同形状の空洞を有する締付部73と、ボルトの締付方向を設定するラチェット機構を具備したレンチレバー部71とを有している。また、レンチレバー部71は、軸力検出基板21と軸力記録、送信基板37とを接続する接続部75を、締付部73の内部に形成された空洞の上部に有している。
【0016】
次に図1〜3を基に、本発明によるボルト軸力管理システム300の動作を説明する。軸力管理ボルト1は通常は上面が平らで、基板が見えているだけで他のボルトと何ら変わりがない。ボルト締付け時において、ボルトの頭部が締付管理レンチ70の締付部73の空洞内に差し込まれ、軸力検出基板21の各ピンが接続部75と接続される。また、軸力記録、送信基板37の各ピンが接続部75と接続されると、電源出力ピン38を経由して電源が軸力検出基板21に供給される。この、軸力検出基板21の各ピン、及び軸力記録、送信基板37の各ピンと接続部75との接続においては、これに限定されるものではない。
【0017】
軸力管理ボルト1は、締付管理レンチ70によりラチェットに設定された締付方向で締付けられると、ボルト1のネジ部と頭部が上下に引っ張られる軸力により、歪センサ22も引っ張られて伸びる。歪センサは引っ張られると抵抗素子値が変化するため、軸力は電気信号に変換されて検出される。ボルト1の伸びと抵抗素子値の変化がほぼ比例し、事前にボルトに加えた軸力と抵抗素子値の変化の関係を把握しておけば、ボルトの軸力を電気的に測定できる。また、金属は温度により伸び縮みがあるが、ボルトの熱膨張係数と歪センサの抵抗温度係数を逆になるように選べばそれぞれが相殺され、温度による影響が補償される。
【0018】
電源はまず抵抗素子23−1を経由して歪センサ22に供給される。歪センサ22は軸力に応じて伸縮し、歪センサ出力ピン25には歪センサ22の抵抗素子に応じた電圧が出力される。例えば、電源に3Vの電圧を供給し、抵抗素子23が880オーム、歪センサ22が120オームの場合、オームの法則により0.4Vの電圧が出力される。ボルトに軸力をかけることにより、この0.4Vの電圧が変化する。
【0019】
また、軸力検出基板21における固有番号の記録、制御を行う固有番号記録用マイクロチップ28は、例えばワンチップマイクロコンピュータで、電源が投入されると、予め記録された軸力管理ボルト1の固有番号が一定の間隔でシリアル信号でアウトプットされる。この信号は以前から使われている調歩同期方式で、例えば9600bps、8ビット等の信号である。固有番号は例えば10桁の英数字で最初の4桁が製造者ID、後の6桁がシリアル番号とする。この番号は後、製造ロット番号、製造日、納入先等の情報をデータベースで管理することができる。
【0020】
軸力記録、送信基板37をボルトに装着した時、まず軸力記録、送信基板37はマイクロチップ28からの固有番号を受ける。次に歪センサ22からの電圧をA/Dコンバータ31で読み取り、デジタル信号に変換する。この時はまだ軸力がかかっていないので、軸力がかかるのを待つ。ボルト1が締付管理レンチ70により締め付けられると軸力がかり、軸力に比例した音声がスピーカ24から発音される。規定の軸力に対応する発音になると締め付けを終了する。
【0021】
軸力記録、送信基板37を締付管理レンチ70の接続部75から抜くとボルト1からの固有番号出力が止まるので、軸力記録、送信基板37は締め付け完了とみなし、その時の時間を時計32から読み取り、ボルト1の固有データとしてボルト締め付け日時、ボルト固有番号、軸力の最終値がメモリー33に記録されると共に、無線モジュール42からアンテナ43を介し無線受信モジュール50へ送信される。
【0022】
無線受信モジュール50の受信機52は、アンテナ51を介し送信されたデータを受信し、パソコン53はそのデータを表示する。これにより、施工現場から安全な距離だけ離れた地点で、簡単に第三者の立ち会いにより所定のボルトの所定の締付状態を検査することが可能となるため、締付担当者のミスにより本締めが行われず、軸力が正しくかかっていない場合の事故の発生を防止することが可能となる。また、メモリー33はフラッシュメモリーであって、電源を落しても消えないため、工事完了後、工事管理者はこのメモリーのデータを外部出力端子36からダウンロードコマンドにより別の媒体に移し、完全な工事記録として保存することができる。
【0023】
図4は、本発明による第2の軸力検出部及び軸力記録、送信部の構成図である。図3において、第2の軸力検出部100−2の軸力検出基板21は、新たな歪センサ出力ピン45を具備し、電源入力ピン24、歪センサ出力ピン45間には、抵抗素子23−2の両端がそれぞれ接続され、歪センサ出力ピン45、グランドピン29間には、抵抗素子23−3の両端がそれぞれ接続されているところが、第1の軸力検出部100−1の軸力検出基板21と異なっている。
【0024】
第2の軸力記録、送信部200−2の第2の軸力記録、送信基板37は、新たな歪センサ入力ピン46を具備し、A/D変換器31と接続されているところが、第1の軸力記録、送信部200−1の第1の軸力記録、送信基板37と異なっている。この構成において、歪センサ22と抵抗素子23−1〜23−3は、ブリッジ回路接続を構成し、電源入力ピン24とグランドピン29に電源が供給され、歪センサ出力ピン25、45間から歪センサ22の抵抗素子変化の電圧出力が取り出され、A/D変換器31に入力されることにより、より精度良く軸力値を検出、記録、送信することができる。
【0025】
以上説明したように本発明によれば、ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うことが可能となるため、締付担当者のミスにより本締めが行われず、軸力が正しくかかっていない場合等で起きる、接続部品の脱落などの事故を事前に防止できるボルト軸力管理システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 軸力管理ボルト
2 アセンブリー穴
11 歪センサリード線
12 歪センサ
21 軸力検出基板
22 歪センサ
23−1〜3 抵抗素子
24 電源入力ピン
25 歪センサ出力ピン
26 固有番号出力ピン
28 マイクロチップ
29 グランドピン
30 電源
31 A/D変換機
32 時計
33 メモリー
34 スピーカ
35 CPU
36 外部出力端子
37 軸力記録、送信基板
38 電源出力ピン
39 歪センサ入力ピン
40 固有番号入力ピン軸力記録、送信基板37の各ピン
41 グランドピン
42 無線送信モジュール
43 アンテナ
45 歪センサ出力ピン
46 歪センサ入力ピン
50 無線受信モジュール
51 アンテナ
52 受信機
53 パソコン
70 締付管理レンチ
71 レンチレバー部
73 締付部
75 接続部
100 軸力検出部
100−1 第1の軸力検出部
100−2 第2の軸力検出部
200 軸力記録、送信部
200−1 第1の軸力記録、送信部
200−2 第2の軸力記録、送信部
300 ボルト軸力管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの締付施工時におけるボルトの軸力管理を行うボルト軸力管理システムにおいて、
歪センサと軸力検出部とをボルト内部に配備した軸力管理ボルトと、前記軸力検出部で検出された軸力をデータ化して記録し無線送信する軸力記録、送信部と、前記軸力検出部と前記軸力記録、送信部とを接続する接続部を有する締付管理レンチと、前記無線送信された前記軸力のデータを受信し表示する無線受信モジュールとから成り、
前記締付管理レンチを介して前記軸力検出部と前記軸力記録、送信部とが接続され、且つ、前記締付管理レンチにより前記軸力管理ボルトが締付けられ、前記歪センサが前記締付けられた軸力管理ボルトの軸力を電気信号に変換し、前記軸力検出部が前記変換された電気信号を検出して出力し、前記軸力記録、送信部が前記出力をデータ化して無線送信し、前記無線受信モジュールが前記送信された軸力のデータを受信して表示し、前記軸力管理ボルトの締付状態を検査することを特徴とするボルト軸力管理システム。
【請求項2】
前記軸力検出部は、固有番号記録制御部をさらに有し、前記軸力管理ボルトの固有番号を管理することを特徴とする請求項1に記載のボルト軸力管理システム。
【請求項3】
前記締付管理レンチは、前記軸力管理ボルトの頭部を覆う前記頭部と同形状の空洞を有する締付部と、ボルトの締付方向を設定するラチェット機構を具備したレンチレバー部とを有し、
前記レンチレバー部は、前記軸力検出部と前記軸力記録、送信部とを接続する接続部を前記空洞の上部に有することを特徴とする請求項1に記載のボルト軸力管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230254(P2011−230254A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103962(P2010−103962)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【出願人】(501489465)ワイマチック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】