説明

ボルト

【課題】弾性リング体が挿入された緩み止めナットに螺合されたとき、弾性リング体の摩擦力にかかわらず安定した緩み止め効果が得られるボルトを提供する。
【解決手段】雌ねじ部16と、雌ねじ部16と同軸上にリング状に形成され弾性を有するリング体18とを備えた緩み止めナット15に螺合されるボルト1であって、ボルト1の雄ねじ部2の外周にはボルト1の軸心4方向に沿った溝部5が形成されており、ボルト1が緩み止めナット15に螺合されて雄ねじ部2がリング体18に挿入されたとき、ボルト1の雄ねじの山部6に押圧されてリング体18の内周に形成される雌ねじ19の谷部には溝部5に突出した凸部20が形成され、該凸部20が溝部5に嵌合するので、弾性リング体18が挿入された緩み止めナット15にボルト1が螺合されたとき、弾性リング体18の摩擦力にかかわらず安定した緩み止め効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの回転防止構造に関し、詳しくは、雌ねじに樹脂リングが連設されたナットに螺合するボルトの緩み止めを図るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雌ねじに隣接して樹脂製のリングが一体的に設けられたナットがある。ナットの雌ねじに螺合したボルトの雄ねじが、さらに螺合されて樹脂リングに挿入されると、樹脂リングは弾性変形して、内周に雄ねじと螺合する雌ねじが形成される。ボルトの雄ねじは、弾性変形して形成されたリングの雌ねじに圧接するので、ボルトが緩みかけると、雄ねじが樹脂リングからの摩擦力を受けて緩み止めが図られる。
【0003】
特許文献1にはこのような緩み止めナットについての考案が記載されている。緩み止めナットは、雌ねじ部と、雌ねじ部と同軸方向に形成された中空凹部とを備え、該中空凹部には弾性樹脂材からなる弾性リング体が挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−51212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナットの中空凹部に設けられた弾性リング体をボルトの雄ねじに圧接させて、雄ねじに摩擦力を与えるものでは、弾性リング体の摩擦力が安定しないために、緩み止め効果が十分に発揮されない場合がある。
本発明の目的は、弾性リング体を備えた緩み止めナットに螺合されたとき、弾性リング体の摩擦力にかかわらず安定した緩み止め効果が得られるボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、雌ねじ部と、雌ねじ部と同軸上にリング状に形成され弾性を有するリング体とを備えたナットに螺合されるボルトであって、ボルトの雄ねじ部の外周にはボルトの軸心方向に沿った溝部が形成されており、ボルトがナットに螺合されて雄ねじ部がリング体に挿入されたとき、ボルトの雄ねじの山部に押圧されてリング体の内周に形成される雌ねじの谷部には溝部に突出した凸部が形成され、該凸部が溝部に嵌合するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、ボルトがナットに螺合されて雄ねじ部がリング体に挿入されたとき、ボルトの雄ねじ山部に押圧されてリング体の内周に形成される雌ねじ谷部には弾性的に溝部側に突出した凸部が形成され、該凸部が溝部に嵌合するので、弾性リング体を備えた緩み止めナットにボルトが螺合されたとき、弾性リング体の摩擦力にかかわらず安定した緩み止め効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ボルトの斜視図である。
【図2】ボルトの平面図である。
【図3】ボルトを雄ねじ部の端面側から見た側面図である。
【図4】緩み止めナットの斜視図である。
【図5】ボルトが緩み止めナットに螺合した状態の斜視図である。
【図6】ボルトが緩み止めナットの弾性リング体と螺合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1は、ボルト1の斜視図である。図2はボルト1の平面図である。図3はボルト1を雄ねじ部2の端面3側から見た側面図である。ボルト1の雄ねじ部2には、ボルト1の軸心4方向に沿って溝部5が複数個所形成される。本実施の形態において、溝部5は、雄ねじ部2の周方向に一定の間隔をおいて8箇所形成されているが、これに限定されるものではない。溝部5は、雄ねじ山部6に形成された凹部7がボルト1の軸心4方向に連続して複数個形成されたものである。凹部7は2つの平面8,9によってV字状に形成される。第1の面8はボルト1の軸心4を含んだ半径方向の面である。第2の面9は第1の面8から一定の角度傾いた面である。第1の面8と第2の面9との成す角度は、ボルト1の直径に応じた角度とされ、さらに後述する弾性リング体18の強度を確保するために、たとえば60°〜90°の範囲で設定される。
【0010】
溝部5は片角フライスなどを用いたカッター加工によって形成される。または、2個の組となった転造ダイスの間でボルト1を転がして溝部5を形成することができ、あるいはスプラインダイスを用いて溝部5を形成することもできる。転造あるいはスプラインダイスを用いた加工の場合には加工時間を短縮することができる。
【0011】
図4は緩み止めナット15を示す。図5はボルト1が緩み止めナット15に螺合した状態の斜視図である。緩み止めナット15として、たとえばロックファスナー製のナイロンナットが用いられる。緩み止めナット15は、雌ねじ部16と、雌ねじ部16と同軸方向に形成されボルト1の軸心4方向に開口した中空凹部17とを備え、該中空凹部17に弾性樹脂材からなる弾性リング体18が挿入される。弾性リング体18として、たとえば旭化成製の66ナイロンが用いられ、弾性リング体18の内径は、緩み止めナット15の雌ねじ部16の有効径と等しくされる。中空凹部17に挿入された弾性リング体18が回転する恐れがある場合には、弾性リング体18の雌ねじ部16側端面が、たとえばかしめられ、あるいはコーキングされて固定される。
【0012】
ボルト1が緩み止めナット15に螺合して、ボルト1の雄ねじ部2が弾性リング体18の内周に挿入されたとき、弾性リング体18の内周はボルト1の雄ねじ部2に押圧されて、雄ねじ部2と噛合する雌ねじ19が形成される。図6はボルト1が緩み止めナット15の弾性リング体18と螺合した状態を示す断面図である。雄ねじ山部6には凹部7が形成されているので、凹部7には雌ねじ19谷部から弾性的に突出した凸部20が順次形成される。ボルト1が締め込まれると、この凸部20は第2の面9によって雌ねじ19谷部側に押圧され、雌ねじ19谷部と一体となって消滅する。
【0013】
ボルト1と緩み止めナット15との螺合が完了した状態で、外部から振動や衝撃が加えられると、螺合した雄ねじと雌ねじとの摩擦力に抗してボルト1が緩み方向に回転しようとする。このとき雄ねじ山部6の凹部7には凸部20が嵌合している。溝部5を形成する第1の面8は、ボルト1の軸心4を含んだ半径方向に形成されているので、凸部20が第1の面8によって雌ねじ19谷部側に押圧されて消滅することはなく、ボルト1は第1の面8が凸部20に当接した状態で固定される。これによってボルト1がさらに緩み方向に回転することが防止される。
【0014】
このように、雌ねじ部16と、雌ねじ部16と同軸上にリング状に形成され弾性を有するリング体18とを備えた緩み止めナット15に螺合されるボルト1であって、ボルト1の雄ねじ部2の外周にはボルト1の軸心4方向に沿った溝部5が形成されており、ボルト1が緩み止めナット15に螺合されて雄ねじ部2がリング体18に挿入されたとき、ボルト1の雄ねじの山部6に押圧されてリング体18の内周に形成される雌ねじ19の谷部には溝部5に突出した凸部20が形成され、該凸部20が溝部5に嵌合するので、弾性リング体18を備えた緩み止めナット15にボルト1が螺合されたとき、弾性リング体18の摩擦力にかかわらず安定した緩み止め効果が得られる。
【符号の説明】
【0015】
1 ボルト
2 雄ねじ部
3 端面
4 軸心
5 溝部
6 雄ねじ山部
7 凹部
8 第1の面
9 第2の面
15 緩み止めナット
16 雌ねじ部
17 中空凹部
18 弾性リング体
19 雌ねじ
20 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部と、雌ねじ部と同軸上にリング状に形成され弾性を有するリング体とを備えたナットに螺合されるボルトであって、
ボルトの雄ねじ部の外周にはボルトの軸心方向に沿った溝部が形成されており、
ボルトがナットに螺合されて雄ねじ部がリング体に挿入されたとき、ボルトの雄ねじの山部に押圧されてリング体の内周に形成される雌ねじの谷部には溝部に突出した凸部が形成され、該凸部が溝部に嵌合することを特徴とするボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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