ボロン酸化合物をインビボ投与するためのリポソーム組成物
ボロン酸化合物を投与するためのリポソーム製剤について記載する。リポソームはそれぞれの鎖が20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質及びリポソーム内に捕捉されたボロン酸化合物を含んでなる。好ましい実施形態では、ボロン酸化合物はメグルミンとの複合体の形態である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/957,045号(2007年8月21日出願)に対する優先権を主張し、それを参考として本明細書に組み込むものとする。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に記載する対象は捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソーム製剤に関する。より具体的には、対象はリポソーム内へのペプチドボロン酸化合物の充填及び保持を改善する成分から調製されるリポソームに関する。
【背景技術】
【0003】
リポソーム、すなわち脂質二重層小胞は水相を被包する同心状定序脂質二重層を含んでなる球形小胞である。リポソームは水相又は脂質二重層に収容される治療薬及び診断薬用の送達ビヒクルとして機能する。リポソームに捕捉された形態の薬物の送達は、薬物に応じて、例えば、薬物毒性の低下、薬物動態の変化、又は薬物の溶解度の向上を含む、種々の利点を提供できる。リポソームは親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含むように配合されるとき、すなわち、いわゆるステルス(STEALTH)(登録商標)又は長期循環リポソームは、1つには単核食細胞系によるリポソームの除去が減少することにより、血液循環寿命が長いという更なる利点を提供する。リポソームを注入部位から所望の標的部位又は細胞に到達させるために、寿命が長いことが必要なことが多い。
【0004】
理想的には、このようなリポソームは(i)高い充填効率で、(ii)高濃度で化合物を捕捉して、及び(iii)安定した形態で、すなわち、保管中化合物がほとんど漏れないように、捕捉された治療用又は診断用化合物を含むよう調製することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の態様並びに以下に記載及び例示するその実施形態は、代表的かつ例示的なものであり、範囲を限定することを意味しない。
【0006】
1つの態様では、それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質と、リポソーム内に捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソームを含んでなるリポソーム製剤を準備する。ボロン酸化合物はメグルミンとの複合体の形態である。
【0007】
1つの実施形態では、リン脂質は非対称なリン脂質である。別の実施形態では、リン脂質は対称なリン脂質である。
【0008】
1つの実施形態では、リン脂質は20個の炭素原子を有する。
【0009】
更に別の実施形態では、リン脂質は飽和リン脂質である。
【0010】
更に別の実施形態では、リン脂質はホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールからなる群から選択される。
【0011】
好ましい実施形態では、リン脂質は1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)又は1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)である。
【0012】
別の実施形態では、リポソームは親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含む。代表的な親水性ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0013】
更に別の実施形態では、親水性ポリマーに共有結合したリン脂質はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコールである。
【0014】
1つの実施形態では、ボロン酸化合物はペプチドボロン酸化合物である。更に別の実施形態では、ボロン酸化合物はボルテゾミブである。
【0015】
別の実施形態では、製剤は、捕捉された酢酸を更に含んでなるリポソームを含んでなる。
【0016】
別の態様では、捕捉されたボロン酸を有するリポソームの調製方法を提供する。方法は、それぞれ20〜22個の炭素原子を有する、2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームを準備し、リポソームはその中に捕捉されたメグルミンを有し、リン脂質の相転移温度を下回る温度でボロン酸化合物の存在下にリポソームをインキュベートすることを含んでなる。このインキュベートはボロン酸化合物をリポソームに取り込むために有効である。
【0017】
1つの実施形態では、リポソームはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールからなる群から選択されるリン脂質を含んでなる。
【0018】
別の実施形態では、インキュベートは90%を超えるボロン酸化合物をリポソームに取り込むために有効である。
【0019】
更に別の態様では、それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を含む2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームと、リポソームに捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソーム組成物の調製方法の改善を提供する。この改善はリポソームとボロン酸化合物とを相転移温度を下回る温度でインキュベートすることにより、ボロン酸化合物をリポソームに充填することを含んでなる。
【0020】
1つの実施形態では、改善はかかるインキュベートの前に、その中に捕捉されたメグルミンを含むリポソームを形成することを更に含んでなる。
【0021】
改善の別の実施形態では、リン脂質は1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)であり、充填は約20〜50℃の温度で行われる。
【0022】
更に別の実施形態では、リン脂質は1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)であり、かかる充填は約25〜50℃の温度で行われる。
【0023】
上記の代表的な態様及び実施形態に加えて、更なる態様及び実施形態は図面を参照し、以下の記述を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1B】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1C】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1D】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1E】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1F】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1G】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1H】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図2】リポソームの内側でポリオールとのボロン酸エステル化合物を形成するための、内側が高く/外側が低いpH勾配に逆らった、代表的なペプチドボロン酸のリポソームへの充填。
【図3A】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図3B】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図3C】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図4A】65℃で30分間(菱形)、60分間(四角形)、又は120分間(三角形)、ボルテゾミブの存在下でインキュベートした、捕捉されたメグルミンを収容するリポソーム(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE 50:45:5モル/モル)のカラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、捕捉されていない薬物に対応する画分番号10にピークがある。
【図4B】20〜25℃で、ボルテゾミブの存在下にインキュベーした、捕捉されたメグルミン収容するリポソーム(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE 50:45:5モル/モル)のカラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、リポソームに捕捉された薬物に対応する画分番号4にピークがある。
【図5】20〜25℃で、ボルテゾミブの存在下にインキュベーした、捕捉されたメグルミン及び酢酸を収容するリポソームのゲル濾過カラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、リポソームに捕捉された薬物に対応する画分番号14〜18及び捕捉されていない薬物画分に対応する35〜50にピークがある。
【図6】複合化剤としてメグルミン/酢酸を含む、HSPC/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5モル/モル)を含んでなるリポソームに捕捉されたボルテゾミブの投与後の時間(時間)の関数として、マウスの血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示し、ここでボルテゾミブは0.53mg/mL(三角形)、1.04mg/mL(四角形)及び2.13mg/mL(三角形)の用量で投与された。
【図7】脂質、卵スフィンゴミエリン/コレステロール(丸)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(三角形)、又は卵スフィンゴミエリン(菱形)を含んでなるリポソームについて、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図8A】HSPC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C20:0 PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームについて、17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図8B】HSPC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C20:0 PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームについて、17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図9】C20:0PC/mPEG−DSPE(95/5、四角形)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形及び四角形))を含んでなるリポソームのマウスへの静脈内投与後、又は遊離の薬物(菱形)の投与後の時間(時間)の関数としての血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図10A】5℃(菱形)又は25℃(四角形)で保管したときの、時間(週)の関数としてC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームへのボルテゾミブの被包率。
【図10B】4℃(菱形、三角形)又は25℃(四角形、丸)で保管したときの、時間(週)の関数として、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、菱形、四角形)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形、丸)からなるリポソームへのボルテゾミブの被包率。
【図11A】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図11B】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図11C】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図12】リポソーム捕捉型(C22:0 PC/mPEG 95:5)(黒丸)又は遊離型(白丸)でマウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブの血漿濃度(μg/mL)。
【図13】正常ラットに製剤4及び5(実施例6)を投与した後の時間(時間)の関数としての血漿中のボルテゾミブ残留率。
【図14】時間軸に沿って矢印で示す時点で4週間にわたって週1回、遊離の薬物(三角形)、リポソームビヒクルプラシーボ(四角形)、ボルテゾミブリポソーム製剤番号4及び5(逆三角形、丸、それぞれ実施例6)、及び別のリポソーム製剤(菱形)で処理したマウスにおいて、時間(日)の関数として、異種移植CWR22腫瘍を有するマウスの腫瘍の大きさ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
「ポリオール」は1分子あたり1つを超えるヒドロキシル(−OH)基を有する化合物を意図する。この用語は糖、グリセロール、ポリエーテル、グリコール、ポリエステル、ポリアルコール、炭水化物、カテコール、ビニルアルコールとビニルアミンとのコポリマー等のような、アルコール性ヒドロキシル基を含むモノマー化合物及びポリマー化合物を含む。
【0026】
「ペプチドボロン酸化合物」は
【0027】
【化1】
【0028】
R1、R2、及びR3は互いに同じであっても異なってもよく、nが1〜8、好ましくは1〜4である、独立して選択される部分である、化合物の形態を意図する。
【0029】
「親水性ポリマー」は室温で水にいくらかの溶解度を有するポリマーを意図する。代表的な親水性ポリマーとしてはポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド及び親水性ペプチド配列が挙げられる。ホモポリマー又はブロック若しくはランダムコポリマーのようなポリマーを使用してよい。好ましい親水性ポリマー鎖は好ましくは500〜10,000ダルトン、より好ましくは750〜10,000ダルトン、更により好ましくは750〜5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖のようなポリエチレングリコール(PEG)である。
【0030】
「内側が高く/外側が低いpH勾配」とはリポソーム内部(高pH)とリポソームが懸濁している外部媒質(低pH)との間の膜貫通pH勾配を指す。典型的には、リポソーム内部のpHは外部媒質のpHより少なくとも1pH単位、好ましくは2〜4単位高い。
【0031】
「リポソームに捕捉された」はリポソーム脂質二重層の間の水性空間、又は二重層自体内の、リポソームの中心水性コンパートメント中に隔離されている化合物を指す。
【0032】
II.リポソーム製剤
1つの態様では、捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソーム組成物を準備する。リポソームはリポソームへの化合物の充填及び保持を向上させる成分を含む。この節ではリポソーム組成物及び調製方法を記載する。
【0033】
A.リポソーム成分
リポソーム製剤は捕捉されたペプチドボロン酸化合物を収容しているリポソームを含んでなる。ペプチドボロン酸化合物は、酸性で、又はC−末端、ペプチド配列の端に、α−アミノボロン酸を含むペプチドである。一般に、ペプチドボロン酸化合物は、
【0034】
【化2】
【0035】
R1、R2、及びR3が互いに同じであっても異なってもよく、nが1〜8、好ましくは1〜4である、独立して選択される部分である形態である。側鎖としてボロン酸を有するアスパラギン酸又はグルタミン酸残基を有する化合物もまた想到される。
【0036】
好ましくは、R1、R2、及びR3は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アラルコキシ、シクロアルキル、又は複素環から選択され、又はR1、R2、及びR3のいずれかがペプチド主鎖に隣接する窒素原子で複素環を形成してよい。アルコキシ、アラルキル及びアラルコキシのアルキル成分を含むアルキルは好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、直鎖であってもよく又は分岐鎖であってもよい。アリールオキシ、アラルキル、及びアラルコキシのアリール成分を含むアリールは好ましくは単核又は二核(すなわち2つの縮合環)、より好ましくは、ベンジル、ベンジルオキシ、又はフェニルのような単核である。アリールはまた、フリル、ピロール、ピリジン、ピラジン、又はインドールのようなヘテロアリール、すなわち、環内に1つ以上の窒素、酸素、又は硫黄原子を有する芳香環を含む。シクロアルキルは好ましくは炭素原子数3〜6である。複素環は環内に1つ以上の窒素、酸素、又は硫黄原子を有する非芳香環を指し、好ましくは炭素原子数3〜6の5〜7員環である。このような複素環としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンが挙げられる。シクロアルキル又は複素環のいずれかはアルキル、例えばシクロヘキシルメチルと結合してよい。
【0037】
上記基のいずれか(水素を除く)はハロゲン、好ましくはフルオロ又はクロロ;ヒドロキシ;低級アルキル;メトキシ又はエトキシのような低級アルコキシ;ケト;アルデヒド;カルボン酸、エステル、アミド、カーボネート、又はカルバメート;スルホン酸又はエステル;シアノ;1級アミノ、2級アミノ、又は3級アミノ;ニトロ;アミジノ;及びチオ又はアルキルチオから選択される1つ以上の置換基で置換してよい。好ましくは、その基は最大2つのこのような置換基を含む。
【0038】
代表的なペプチドボロン酸化合物を図1A〜1Hに示す。図1A〜1Hに示すR1、R2、及びR3の代表例としてはn−ブチル、イソブチル、及びネオペンチル(アルキル);フェニル又はピラジル(アリール);4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)ブチル、3−(ニトロアミジノ)プロピル、及び(1−シクロペンチル−9−シアノ)ノニル(置換アルキル);ナフチルメチル及びベンジル(アラルキル);ベンジルオキシ(アラルコキシ);及びピロリジン(R2は隣接する窒素原子と複素環を形成する)が挙げられる。
【0039】
一般に、ペプチドボロン酸化合物はモノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、又はより高次のペプチド化合物であってよい。他の代表的なペプチドボロン酸化合物は米国特許第6,083,903号、同第6,297,217号、及び同第6,617,317号に記載されており、これらは参考として本明細書に組み込まれる。
【0040】
図2に示した手順に従って、ペプチドボロン酸化合物をリポソームに充填して、ペプチドボロン酸化合物がペプチドボロン酸エステルの形態でリポソームに捕捉されたリポソーム製剤を得る。図2は1つの実線12により表される脂質二重層膜を有するリポソーム10を示す。多重膜リポソームでは、脂質二重層膜は介在性水性空間を有する複数の脂質二重層を含んでなることが理解されるであろう。リポソーム10は外部媒質14に懸濁しており、その外部媒質のpHは約7.0、一般には約5.5〜8.0、より一般には6.0〜7.0である。リポソーム10は脂質二重層により画定される内部水性コンパートメント16を有する。内部水性コンパートメントに捕捉されているのはポリオール18である。ポリオールは好ましくは、シス1,2−又は1,3−ジオール官能基を有する部分であり、好ましい実施形態ではポリオールはメグルミンである。内部水性コンパートメントのpHは好ましくは約8.0を超える、より好ましくは9を超える、更により好ましくは10を超える。
【0041】
また、リポソームに捕捉されているのは図2ではボルテゾミブにより表されているペプチドボロン酸化合物である。また、脂質二重層膜を通過する前のボルテゾミブを外部水性媒質内に示す。外部水性媒質ではボロン酸基のpHはpKa=9.7(ACD/labsバージョン6.0により算出)より著しく低いため、化合物は大部分が非荷電である。その非荷電状態では化合物は脂質二重層を超えて自由に透過する、なぜなら化合物がやや親油性である(logP=2.45±1.06、ACD/labsバージョン6.0により算出)ためである。ボロン酸エステルの形成は平衡を移動させて、更に外部媒質から脂質二重層を超えて化合物を透過させ、リポソーム内に化合物を蓄積させる。別の実施形態ではリポソーム内のポリオールに加えて、外部懸濁媒質のpHが低く、リポソーム内部のpHがやや高いことにより、リポソームの水性内部コンパートメント内への薬物の蓄積が誘発される。いったんリポソーム内部に入ると、化合物はポリオールと反応して、ボロン酸エステルを形成する。ボロン酸エステルは本質的に、脂質二重層を通過することができないため、ボロン酸エステルの形態の薬物化合物はリポソーム内部に蓄積される。ボロン酸エステル複合体の安定性はpHの上昇とともに向上する。
【0042】
リポソーム内のポリオール濃度は荷電基、例えば、ヒドロキシル基の濃度が、ボロン酸化合物の濃度より著しく高いような濃度であることが好ましい。25mMの最終薬物濃度(0.2mg/mLの総薬物濃度における内部薬物濃度)を有する組成物では、例えば、ポリマー荷電基の内部化合物濃度は典型的には、少なくとも薬物濃度より高い、好ましくは薬物濃度の数倍である。
【0043】
ポリオールは内側が高く/外側が低い濃度で存在する、つまり、リポソーム脂質二重層膜を超えてポリオールの濃度勾配が存在する。ポリオール捕捉剤が外部バルク相中にかなりの量存在する場合、ポリオールは外部媒質でペプチドボロン酸化合物と反応して、リポソーム内部への化合物の蓄積速度を遅くする。したがって、好ましくは、組成物がバルク相(外側水性相)にポリオール捕捉剤を実質的に含まないようにリポソームを以下に記載のように調製する。
【0044】
本明細書に記載の根拠となる研究では代表的な化合物ボルテゾミブを、捕捉剤(複合化剤とも呼ばれる)としてソルビトール、グルセプテート、又はメグルミンを有するリポソームに充填した。これらの化合物の構造をそれぞれ図3A〜3Cに示す。実施例1〜3に記載のように、水和緩衝液中でこれらの複合化剤の1つを用いてリポソームを調製した。透析により捕捉されていない複合化剤を全て除去した後、様々な時間、様々な温度で、薬物の溶液とともにリポソームをインキュベートすることにより、ボルテゾミブをリポソームに充填した。ソルビトール又はグルセプテートが複合化剤としてリポソーム内に存在し、充填を60〜65℃で実施したとき、リポソーム内に充填された薬物は検出されなかった。メグルミンを複合化剤として用い、充填を65℃で実施したときも、同様の結果が観察された。これを図4Aに提示するデータにより示し、図4Aは、30分間(丸)、60分間(四角形)、又は120分間(三角形)、65℃にて、ボルテゾミブの存在下にインキュベートした、捕捉されたメグルミンを含むリポソームについて、G10脱塩カラム画分の270nmにおける吸光度を示す。画分番号10におけるピークは捕捉されていない薬物に対応する。しかしながら、図4Bに見られるように、インキュベートを約20〜25℃の室温で実施したとき、画分番号4のピークにより証明されるように、ボルテゾミブは充填され、リポソーム内に保持された。
【0045】
別の研究では、実施例4に記載するように、リポソーム内にメグルミン及び酢酸が存在することにより確立されるイオン勾配に逆らって、ボルテゾミブはリポソーム内に充填された。図5に見られるように、酢酸を内部水和媒質に添加すると、ボルテゾミブの被包効率が高まる。図5では画分番号14〜18のピークは、リポソームに捕捉された薬物に対応し、総薬物の約95%が遠隔充填によりリポソームに捕捉されたことを示す。
【0046】
実施例5に記載のように、メグルミン/酢酸勾配に逆らった充填により捕捉されたボルテゾミブを有するリポソームを0.5mg/mL、1.0mg/mL、及び2.1mg/mLの薬物濃度を有するように調製した。3種の製剤を1.6mg/kgの薬物用量でマウスに注入し、ボルテゾミブの血漿濃度を時間の関数として決定した。図6は、0.53mg/mL(三角形)、1.04mg/mL(四角形)、及び2.13mg/mL(三角形)の薬物濃度で、リポソームに捕捉されたボルテゾミブを投与した後の、時間(時間)の関数としてのマウスの血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示す。インビボ投与時、リポソームから薬物が急速に漏れ出し、3時間の時点における血漿薬物濃度は遊離ボルテゾミブのインビボ投与に対して予測されるのとおよそ同じであった。
【0047】
更に研究を行って、ボロン酸化合物のインビボでの保持が改善されたリポソーム組成物に到達した。実施例6に記載のように、様々な脂質組成物からリポソームを調製し、ラット全血を用いてインビトロ放出アッセイで試験した。卵スフィンゴミエリン/コレステロール(95/5)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(50/45/5)、又は卵スフィンゴミエリンを含んでなる脂質二重層を有するリポソームを調製し、ボルテゾミブを充填した(実施例6A)。リポソームからの薬物放出をラットの全血を用いたインビトロ放出アッセイにより分析した。図7に見られるように、薬物は卵スフィンゴミエリン/コレステロール(丸)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(三角形)、又は卵スフィンゴミエリン(菱形)を含んでなるリポソームから急速に放出された。
【0048】
リン脂質ホスホコリンを含んでなる脂質二重層を有するリポソームを調製し、そのホスホコリンは炭素原子数18、20、22、又は24のアシル鎖長を有していた(図6B)。図8A、8Bは17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、水素添加ダイズホスホコリン(C18:0;HSPC)/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5、三角形)、又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(20:0PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームからの、ボルテゾミブの放出を示す。図8A、8BのデータはC20:0PC脂質で調製したリポソームがC18:0PC脂質で調製したリポソームと比べて、血液中でインキュベートしたとき、長期間薬物を著しく良好に保持したことを示す。
【0049】
実施例6Bに従って調製したリポソームをマウスに静脈内注入を介して投与した。注入後4時間にわたって血液サンプルを採取し、ボルテゾミブ濃度を分析した。図9は20:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号4、四角形)、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号6、三角形)、C24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号7及び8、それぞれ白丸及び黒丸)を含んでなるリポソームの投与時の薬物濃度(μg/mL)を示す。対照群の動物には遊離型のボルテゾミブを静脈内注入した(菱形)。薬物をホスホコリンリン脂質を含んでなる二重層を有するリポソームに捕捉したとき、遊離の薬物の血液循環寿命に比べて、ボルテゾミブの血液循環寿命は著しく増加した。特に、主な二重層成分としてC22:0PCを含むリポソームは、C24:0PC脂質のリポソームにより準備されるリポソームよりもわずかに長い血液循環寿命をもたらした。
【0050】
図10A、10BはC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームに捕捉されたボルテゾミブの保持を示す。図10Aは5℃(菱形)又は25℃(四角形)で保管したときの、時間(週)の関数としてC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームのボルテゾミブの被包率を示す。5℃では製剤は少なくとも3ヶ月間安定であり、本質的に測定可能な量の薬物喪失は生じなかった。25℃で保管したとき、約2週間保管した後、薬物がリポソームから漏れ始めた。
【0051】
図10Bは4℃(菱形、三角形)又は25℃(四角形、丸)で保管したときの、時間(週)の関数として、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、菱形、四角形)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形、丸)からなるリポソームのボルテゾミブの被包率を示す。C22:0鎖長を有するホスホコリンからなるリポソームはC24:0鎖長を有するホスホコリンからなるリポソームより、どちらの温度においても良好に薬物を保持した。
【0052】
したがって、1つの実施形態では、20、21、又は22個の炭素原子を有するリン脂質を含んでなるリポソームが想到される。脂質は非対称な脂質であってよく、この場合2本のアシル鎖は異なる炭素鎖長を有し、あるいは対称な脂質であってよく、この場合2本のアシル鎖は同じ数の炭素原子を有する。脂質が非対称である実施形態では、リン脂質は、2本のアシル鎖のうち1本が20、21、又は22個の炭素原子を有するとき、20、21、又は22個の炭素原子を有すると考えられる。好ましい実施形態では、互いの鎖の炭素原子の数は4個未満未満、より好ましくは2個未満異なる。
【0053】
リン脂質は小胞形成脂質であることが知られている、なぜなら、それらは水中で自然に、内側に接触した疎水性部分(アシル鎖)、二重層膜の親水性領域、及び二重層の外側、極性表面に向かって配向される頭部基部分を有する二重層小胞を形成するためである。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールのようなリン脂質を含む種々の合成小胞形成脂質及び天然小胞形成脂質が存在し、ここで、2本の炭化水素鎖の長さは典型的には、約14〜22個の炭素原子であり、様々な不飽和度を有する。
【0054】
小胞形成脂質は脂質の構造に応じて、特定の相転移、又はTmで、液晶相からより流動性の相に転移する。1つの実施形態では、リポソームは特定のTmを有する脂質から形成され、薬物はその脂質のTmを下回る温度で、薬物の存在下にリポソームをインキュベートすることによりイオン勾配に逆らってリポソームに充填され、その脂質は典型的には脂質二重層中の主な脂質成分である。この調製方法を一般に以下に記載し、実施例3〜6に記載のように調製したリポソーム製剤により例示し、ここでボルテゾミブのリポソームへの遠隔充填は室温で実現した。
【0055】
ボロン酸化合物の遠隔充填は1つの実施形態では、メグルミンを収容している予形成リポソームを用いて実施する。メグルミンは2級アミン化合物であり、ジオール官能基とボロン酸化合物とがボロン酸エステルを形成する。メグルミンの複数の隣接シスジオールはリポソーム脂質二重層膜を超えて拡散した後、ボロン酸化合物と反応し、それによりリポソーム内にボロン酸化合物を捕捉する。
【0056】
1つの実施形態では、プロセスはpHがリポソームの外側で低く(例えばpH6〜7)、リポソームの内側で若干高い(pH8.5〜10.5)場合、pHによって動かされ、ポリオールの存在と合わせて、化合物の蓄積及び充填を誘発する。この実施形態では、組成物は内側が高く/外側が低いポリオール勾配を有するリポソームを配合することにより調製した。上記のように選択したポリオールの水溶液を上記のように決定した所望の濃度で調製した。ポリオール溶液は脂質の水和に好適な粘度を有することが好ましい。水性ポリオール溶液のpHは緩衝剤を用いて内側のpHを高くするとき、約8.0超であることが好ましい。酢酸(又は他の膜透過性弱酸)を含有する水和溶液のpHは通常中性であり、この場合内側の高pHは透析又はダイアフィルトレーションプロセス中に発生する。
【0057】
水性ポリオール溶液は乾燥した脂質フィルムの水和のために用いられ、小胞形成脂質、非小胞形成脂質(コレステロール、DOPE等のような)、mPEG−DSPEのようなリポポリマー、及び任意の他の所望の脂質二重層成分の所望の混合物から調製される。乾燥した脂質フィルムは好適な溶媒、典型的には揮発性有機溶媒に選択した脂質を溶解させ、溶媒を蒸発させて、乾燥したフィルムを残すことにより調製される。脂質フィルムをポリオールを含有する溶液で水和し、所望のpHに調節して、リポソームを形成する。
【0058】
リポソーム形成後、リポソームは実質的に均質な大きさの範囲、典型的には約0.01〜0.5マイクロメートル、より好ましくは0.03〜0.40マイクロメートル、更により好ましくは0.08〜0.2マイクロメートルを有するリポソームの集団が得られるような大きさであってよい。REV及びMLVに対して有効な大きさを調節する1つの方法は、リポソームの水性懸濁液を0.8〜0.05マイクロメートルの範囲、典型的には0.8、0.4、0.2、0.1、0.08及び/又は0.05マイクロメートルの選択された均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことを含む。膜の孔径は特に同じ膜を通して製剤を2回以上押し出す場合、膜を通して押し出すことにより生じたリポソームの平均孔径におおよそ一致する。均質化方法はまた、リポソームを100nm以下の大きさに小型化するために有用である(マーティン(Martin)、F.J.、特殊化薬物送達システム−製造及び生成技術(Specialized Drug Delivery Systems - Manufacturing and Production Technology)、P.ティル(Tyle)編、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、267〜316ページ(1990年))。
【0059】
大きさを調節した後、被包されていないバルク相のポリオールを、透析、ダイアフィルトレーション、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、又はイオン交換のような好適な技術により除去して、内側のポリオール濃度が高い、好ましくは外側にポリオールをほとんどあるいは全く有さないリポソームの懸濁液を得る。また、リポソーム形成後、滴定、透析等により、リポソームの外相のpHを約7.0未満に調節する。
【0060】
次いで、リポソームに能動充填するために、捕捉されるべきボロン酸化合物をリポソーム分散液に添加する。添加するボロン酸化合物の量は被包効率が100%である、すなわち、添加された化合物が全て最終的にボロン酸エステルの形態でリポソームに充填されると仮定して、被包されるべき薬物の総量から決定することができる。
【0061】
化合物とリポソーム分散液との混合物を好ましくは、脂質二重層を形成する脂質混合物中の主な脂質成分の相転移温度より低い温度でインキュベートする。リポソーム中の化合物濃度に対する化合物の取り込みがバルク媒質中の化合物の数倍であることが好ましく、これは多くの場合リポソーム中の沈殿の形成により証明される。後者は例えば、標準的な顕微鏡又はX線回折技術により確認することができる。55℃のTmを有する高相転移脂質では、例えば、20〜45℃でインキュベート実施することができる。インキュベート時間はインキュベート温度及びリポソーム内部の複合化剤の強度に応じて、数分から数十分、数時間若しくは12時間以下、又はそれ以上で変動してよい。薬物充填時間はまた、部分的に、充填のためにリポソームに添加される薬物の形態による。例えば、可溶化薬物を添加するときに必要な時間は短い。
【0062】
このインキュベート工程の終わりに懸濁液を更に処理して、捕捉されたポリオールを含有する初期リポソーム分散液から遊離ポリマーを取り除くための上述の方法のいずれかを用いて、遊離の(捕捉されていない)化合物を取り除いてよい。
【0063】
リポソームは所望により、親水性ポリマーに共有結合した小胞形成脂質を含んでよい。例えば、米国特許第5,013,556号に記載されているように、リポソーム組成物にこのようなポリマー誘導体化脂質を含むことにより、リポソームの周りに親水性ポリマー鎖の表面コーティングが形成される。親水性ポリマー鎖の表面コーティングはこのようなコーティングを欠くリポソームと比較したとき、リポソームのインビボ血液循環寿命を増加させるのに有効である。メトキシ(ポリエチレングリコール)(mPEG)及びホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)を含んでなるポリマー誘導体化脂質は、様々なmPEG分子量(350、550、750、1,000、2,000、3,000、5,000ダルトン)で、アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)(アラバマ州アラバスター(Alabaster))から入手できる。mPEG−セラミドのリポポリマーもまた、アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)から購入できる。脂質−ポリマーコンジュゲートの調製は、文献にも記載されており、米国特許第5,631,018号、同第6,586,001号、及び同第5,013,556号;ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻111ページ(1997年;ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Meth.Enzymol.、第387巻50ページ(2004年)を参照のこと。これらのリポポリマーは分子量の分散度が最小限である、明確に定義された、高純度の均質な物質として調製することができる(ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻111ページ(1997年)、ワン(Wong)、J.ら、サイエンス(Science)、第275巻820ページ(1997年))。リポポリマーはまた、本明細書に参考として組み込まれた米国特許第6,586,001号に記載されているようにポリマー−ジステアロイルコンジュゲートのような「中性」リポポリマーであってもよい。
【0064】
脂質−ポリマーコンジュゲートがリポソームに含まれるとき、典型的には1〜20モルパーセントの脂質−ポリマーコンジュゲートが総脂質混合物に組み込まれる(例えば、米国特許第5,013,556号を参照のこと)。
【0065】
リポソームは更に、リガンドを含むよう改変されたリポポリマーを含んでよく、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートの形成はまた、「リポポリマー−リガンドコンジュゲート」とも呼ばれる。リガンドは薬物若しくはインビボで活性を有する生体分子のような治療用分子、造影剤若しくは生体分子のような診断用分子、又は結合パートナーに対して結合親和性を有する標的化分子であってもよく、好ましくは細胞の表面上の結合パートナーである。好ましいリガンドは細胞表面に対して結合親和性を有し、リポソームの内部移行を介した細胞の細胞質への侵入を促進する。このようなリポポリマー−リガンドを含むリポソームに存在するリガンドはリポソーム表面から外向きに配向され、したがって、同種の受容体との相互作用に利用可能である。
【0066】
リガンドをリポポリマーに結合させる方法は既知であり、この場合、ポリマーは選択されたリガンドと後続反応するために官能化してよい(米国特許第6,180,134号、ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、FEBS Lett.、第353巻71ページ(1994年)、ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第4巻296ページ(1993年)、ザリプスキー、S.ら、J.Control.Rel.、第39巻153ページ(1996年)、ザリプスキー、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻2号111ページ(1997年)、ザリプスキー、S.ら、Meth.Enzymol.、第387巻50ページ(2004年))。官能化ポリマー−脂質コンジュゲートはまた、末端官能化PEG−脂質コンジュゲートのように、商業的に入手することもできる(アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)。リガンドとポリマーとの間の結合は安定な共有結合であってもよく、又はpHの変化若しくは還元剤の存在のような刺激に応答して切断される解放可能な結合であってもよい。
【0067】
リガンドは細胞受容体又は血液中を循環している病原体に対する結合親和性を有する分子であってよい。リガンドはまた、治療用又は診断用分子であってもよく、特に遊離型で投与したとき血液循環寿命の短い分子である。1つの実施形態では、リガンドは生物学的リガンドであり、好ましくは細胞受容体に対する結合親和性を有するものである。代表的な生物学的リガンドはCD4、葉酸、インスリン、LDL、ビタミン、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質、Eセレクチン、Lセレクチン、及びPセレクチンのようなセレクチン、Flk−1,2、FGF、EGF、インテグリン、特に、α4β1 αvβ3、αvβ1 αvβ5、αvβ6インテグリン、HER2、及び他のものの受容体に対する結合親和性を有する分子である。好ましいリガンドとしては抗体及び抗体フラグメント、例えばF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv(重鎖及び軽鎖の様々な領域からなるフラグメント)及びscFv(軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーにより接続される組み換え単鎖ポリペプチド分子)等を含む、タンパク質及びペプチドが挙げられる。リガンドはまた、小さな分子ペプチド模倣体であってもよい。細胞表面受容体、又はその断片はリガンドとして作用できることが明らかになるであろう。他の代表的な標的リガンドとしてはビタミン分子(例えば、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン)、オリゴペプチド、オリゴ糖が挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的なリガンドは米国特許第6,214,388号、同第6,316,024号、同第6,056,973号、及び同第6,043,094号に提示され、これらは参考として本明細書に組み込まれる。
【0068】
脂質−ポリマー−リガンド標的コンジュゲートを含むリポソーム製剤は様々なアプローチで調製することができる。1つのアプローチは末端官能化脂質−ポリマー誘導体を含む脂質小胞の調製を含む、つまり、それは遊離のポリマー末端が反応性である又は「活性化された」、脂質−ポリマーコンジュゲートである(例えば、米国特許第6,326,353号及び同第6,132,763号を参照のこと)。このような活性化コンジュゲートはリポソーム組成物に含まれており、活性化ポリマー末端はリポソーム形成後に標的リガンドと反応する。別のアプローチでは、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートはリポソーム形成時、脂質組成物に含まれている(米国特許第6,224,903号及び同第5,620,689号を参照のこと)。更に別のアプローチでは、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートのミセル溶液をリポソームの懸濁液とともにインキュベートし、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートは、予形成されたリポソームに挿入される(例えば、米国特許第6,056,973号及び同第6,316,024号を参照のこと)。
【0069】
III.使用方法
ボロン酸エステルの形態で捕捉されたペプチドボロン酸化合物を有するリポソーム製剤は、腫瘍を持った患者を治療するために用いられる。ボロン酸化合物はプロテアソーム阻害剤と呼ばれる薬物に分類される。プロテアソーム阻害剤はその細胞プロテアソーム活性を阻害する能力により、細胞のアポトーシスを誘発する。より具体的には、真核細胞ではユビキチン−プロテアソーム経路は、細胞内のタンパク質のタンパク質分解の中枢経路である。タンパク質は最初にポリユビキチン鎖の結合によりタンパク質分解の標的とされ、次いでプロテアソームにより急速に小ペプチドに分解され、ユビキチンは解放され、再利用される。
【0070】
本明細書に記載するように調製したリポソーム製剤をマウスにインビボ投与した。実施例7に記載のように、22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)を含んでなり、捕捉されたボルテゾミブを収容しているリポソームを調製し、腫瘍を持つマウスに静脈投与した。対照群のマウスはマンニトール中のボルテゾミブの混合物である、商品名ベルケード(VELCADE)(登録商標)として販売されているボルテゾミブで処置した。図11A〜11Cは遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(四角形)薬物について、血漿(図11A)、血液(図11B)及び腫瘍(図11C)中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示す。血漿、血液、及び腫瘍中のボルテゾミブ濃度は遊離の薬物として投与したときよりも、リポソームに捕捉された形で投与したとき、全ての時点で高かった。この研究はリポソーム製剤により、腫瘍中への薬物蓄積が促進されることを示す。
【0071】
薬物動態学パラメータを表1に要約する。
【0072】
【表1】
*Vss及びCLは、T1/2α相を用いて推定した。
【0073】
リポソームに捕捉されたボルテゾミブの血漿曲線下面積は遊離型の薬物のAUCより132倍大きく、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの血漿半減期は遊離型の薬物の血漿半減期より8倍長く、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの全血Cmax及びAUCは遊離型の薬物のCmax及びAUCより、それぞれ6.2倍及び10倍高く、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの腫瘍中のCmax及びAUCは遊離型の薬物のCmax及びAUCより、それぞれ1.5倍及び1.9倍高かった。
【0074】
別の研究で、リポソームに捕捉されたボルテゾミブをマウスに投与し、薬物動態学パラメータ決定した。リポソームは22:0PC/mPEG−DSPEからなり、実施例7に記載のように調製した。リポソームに捕捉されたボルテゾミブ(黒丸)及び遊離のボルテゾミブ(白丸)の血漿薬物動態学プロファイルを図12に示し、薬物動態学パラメータを表2に要約する。
【0075】
【表2】
【0076】
したがって、1つの実施形態では、ペプチドボロン酸化合物を含むリポソーム製剤は癌の治療、より具体的には癌患者の腫瘍の治療に用いられる。
【0077】
多発性骨髄腫は毎年米国で、およそ15,000人がそれと診断される不治の悪性腫瘍である(リチャードソン(Richardson)、P.G.ら、Cancer Control.、第10巻5号361ページ(2003年))。それは、典型的には、骨髄の複数の部位にクローン性の血漿細胞が蓄積することを特徴とする血液悪性疾患である。大部分の患者は化学療法及び放射線による初期治療に反応するが、耐性腫瘍細胞の増殖によりほとんどが最終的に再発する。1つの実施形態では、本発明はボロン酸エステルの形態で捕捉されたペプチドボロン酸化合物を含んでなるリポソーム製剤を投与することにより多発性骨髄腫を治療する方法を準備する。
【0078】
リポソーム製剤はまた、癌細胞が化学療法の作用に抵抗する主な経路のいくつかの克服を補助することにより乳ガンの治療にも有効である。例えば、NF−κB、アポトーシスの制御因子、及びp44/42マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路を通じたシグナル伝達は抗アポトーシス性であってもよい。プロテアソーム阻害剤がこれらの経路を阻害するため、化合物はアポトーシスを活性化することができる。したがって、本発明はペプチドボロン酸化合物を含むリポソームを投与することにより、乳癌に罹患している被験体を治療する方法を準備する。更に、タキサン及びアントラサイクリンのような化学療法剤はこれらの経路の一方又は両方を活性化することが示されているため、従来の化学療法剤と併せてプロテアソーム阻害剤を使用することはパクリタキセル及びドキソルビシンのような薬物の抗腫瘍活性を強化するように作用する。したがって、別の実施形態では、本発明はリポソームに捕捉されたペプチドボロン酸化合物と併せて、遊離型又はリポソーム捕捉型の化学療法剤を投与する、治療方法を提供する。
【0079】
リポソーム製剤の投薬量及び投薬レジメンは、治療される癌、癌の段階、患者の大きさ及び健康状態、及び主治医である医療介護者に容易に明らかである他の要因に応じて決定する。更に、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ、Pyz−Phe−ボロLeu(PS−341)の臨床研究は好適な投薬量及び投薬レジメンに対する十分な指針を提供する。例えば、週1回又は2回静脈内に投与する場合、固形腫瘍を有する患者の最大耐量は1.3mg/m2であった(オーロスキー(Orlowski)、R.Z.ら、Breast Cancer Res.、第5巻1〜7ページ(2003年)。別の研究では、3週間周期の1、4、8及び11日目に静脈内ボーラスとして投与されたボルテゾミブの最大耐量が1.56mg/m2であることが示唆された(ボーヒーズ(Vorhees)、P.M.ら、Clinical Cancer Res.、第9巻6316ページ(2003年))。
【0080】
リポソーム製剤は、典型的には、静脈内投与が好ましく、皮下投与が好ましい代替であるように、非経口投与される。製剤は送達を促進するために、必要な又は望ましい任意の製剤学的賦形剤を含んでよい。
【0081】
上記治療方法では好ましいプロテオソーム阻害剤は、以下の構造を有する、ボルテゾミブ、Pyz−Phe−ボロLeu、Pyz:2,5−ピラジンカルボン酸、PS−341)である。
【0082】
【化3】
【0083】
ボルテゾミブは胸、卵巣、前立腺、肺を含む種々の癌組織に対して、並びに膵臓腫瘍、リンパ腫及び黒色腫のような種々の腫瘍に対して活性を有することが示されている(タイシャー(Teicher)、B.A.ら、Clin Cancer Res.、第5巻9号2638〜45ページ(1999年);アダムス(Adams)、J.、Semin.Oncol.、第28巻6号613〜19ページ(2001年);オーロスキー(Orlowski)、R.Z.;ディーズ(Dees)、E.C.、Breast Cancer Res、第5巻1号1〜7ページ(2002年);フランクル(Frankel)ら、Clin.Cancer Res.、第6巻9号3719〜28ページ(2000年);及びシャー(Shah)、S.A.ら、J Cell Biochem、第82巻1号110〜22ページ(2001年))。
【0084】
IV.実施例
以下の実施例は本明細書に記載の発明を更に例示するものであり、限定することは全く意図しない。
【0085】
(実施例1)
複合化剤としてソルビトールを使用するボルテゾミブのリポソームへの充填
モル比50:45:5の水素添加ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、及びポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE、PEG分子量2,000Da、アヴァンティ・ポラー・リピッズ(Avanti Polar Lipids)(アラバマ州バーミンガム(Birmingham))の混合物をエタノールに溶解した。次いで、脂質を400mMのソルビトール及び100mMトリス緩衝液の水和緩衝液(pH8.5)で水和した。最終水和脂質懸濁液は10%(w/v)のエタノールを含有していた。脂質懸濁液を孔径0.2μmの2つの積層ヌクレオポア(Nucleopore)(カリフォルニア州プレザントン(Pleasanton))膜を通して圧力下で押し出した。
【0086】
外側の緩衝液を透析により、pH7.0、150mM NaCl/100mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸ナトリウム(HEPES)の緩衝液に交換した。
【0087】
粉末化したボルテゾミブを3.4mg/mLの濃度になるようリポソーム懸濁液に添加し、混合物を、10分間〜7時間の範囲の種々の時間、振盪しながら65℃でインキュベートした。
【0088】
インキュベート時間後、リポソームを検査し、セファロースCL−4B(ファルマシア(Pharmacia)(ニュージャージー州、ピスカタウェイ(Piscataway))のゲルクロマトグラフィーにより捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。リポソーム内に捕捉された薬物は検出されなかった。
【0089】
(実施例2)
複合化剤としてグルセプテートを使用するリポソームへのボルテゾミブの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMグルセプテート及び200mMトリス(pH8.5)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。
【0090】
ボルテゾミブを2.5mg/mLのボルテゾミブ/20mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間〜2時間の範囲の種々の時間、振盪しながら65℃でインキュベートした。
【0091】
インキュベート時間後、リポソームをアッセイし、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。約0.15mg/mLの薬物がリポソームに充填され、被包効率は約7%であった。
【0092】
(実施例3)
複合化剤としてメグルミンを使用するボルテゾミブのリポソームへの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMメグルミン及び100mMトリス(pH8.5)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。
【0093】
ボルテゾミブを2.5mg/mLのボルテゾミブ/20mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間、60分間、及び120分間(65℃で)又は室温で3日間の種々の時間、振盪しながらインキュベートした。
【0094】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。結果を図4A、4Bに示す。インキュベートを65℃で実施したとき、薬物充填は検出されなかった(図4A)。薬物とともに室温でインキュベートしたリポソームは、0.3mg/mLの捕捉された薬物を有し、被包効率は約16%であった(図4B)。
【0095】
(実施例4)
メグルミン及び酢酸を含有するリポソームへのボルテゾミブの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMメグルミン及び300mM酢酸(pH7)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。粉末化したボルテゾミブをおよそ100mMの脂質中に1.88mg/mLのボルテゾミブという最終濃度で(押し出し時の脂質濃度であり、薬物充填前には測定していない)リポソーム懸濁液に添加し、混合物を一晩(およそ16時間)、穏やかに振盪しながら室温(22〜25℃)でインキュベートした。
【0096】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。結果を図5に示し、ここで被包効率は約95%に達した。
【0097】
(実施例5)
ボルテゾミブを含有するリポソームの薬物動態学的特徴
3種のリポソーム製剤を成分濃度を以下の表に記載の薬物/脂質比になるよう調節したことを除いて、実施例4に記載のように調製した。
【0098】
【表3】
【0099】
3群のマウス(n=9)を製剤番号1、2、又は3のリポソーム製剤を静脈内注入することにより処置した。注入の5分、3時間、及び24時間後に、それぞれの群の3匹のマウスから血液を採取。血液をボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図6に示す。
【0100】
(実施例6)
種々の脂質濃度を有するリポソームの特徴付け
A.卵スフィンゴミエリンリポソーム製剤
リポソームを卵スフィンゴミエリン及びコレステロール(55:45)の脂質混合物、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5)の脂質混合物、又は卵スフィンゴミエリンのみを、300mMメグルミン及び300mM酢酸の水和緩衝液(pH7.0)で水和したことを除いて、実施例1に記載のように調製した。水和後の脂質濃度は約100mMであった。
【0101】
それぞれのリポソーム懸濁液の外側の緩衝液を透析により、150mM NaCl/100mM HEPESの緩衝液(pH7.0)に交換した。
【0102】
粉末化したボルテゾミブを1mg/mLのボルテゾミブ濃度でそれぞれのリポソーム懸濁液に添加した。薬物充填を一晩(10〜12時間)、振盪しながら、20〜25℃でインキュベートすることにより実施した。
【0103】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。3種全ての製剤で少なくとも約99%の被包効率が達成された。90°で動的光散乱法により決定したリポソームの粒径は179nm(卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE)、266nm(卵スフィンゴミエリン/コレステロール)及び139nm(卵スフィンゴミエリン)であった。それぞれの製剤の薬物濃度は約0.9mg/mLであった。
【0104】
リポソーム組成物を5/95 v/vリポソーム懸濁液/血液比で、ラットの全血に添加した。血液中の薬物濃度は5.5μg/mLであった。血液/リポソーム混合物を37℃でインキュベートし、1時間、3時間、6時間、及び24時間でサンプルを採取し、5,000rpmで遠心分離し、上清をLC−MSを用いてボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図7に示す。結果は全血とともにインキュベートしたとき、被包されたボルテゾミブが容易にリポソームから漏れ出したことを示した。
【0105】
B.ホスファチジルコリンリポソーム製剤
リポソームをそれぞれのアシル鎖に20、22、又は24個の炭素原子を有するホスファチジルコリン脂質を用いて調製した。以下の表は脂質に関するいくつかの詳細を準備し、比較のためにC18(HSPC)脂質を含んだ。
【0106】
【表4】
【0107】
以下の脂質組成を有するリポソーム製剤を調製した。
【0108】
【表5】
【0109】
粉末化したボルテゾミブを製剤番号4及び5に添加し、100mM HEPES及び50mM NaClに可溶化したボルテゾミブ溶液(pH6.5)を製剤番号6〜8の充填に用いた。混合物を、振盪しながら20〜25℃で3日間(製剤番号4)、20〜25℃で3日間+50℃で1時間(製剤番号5)、45℃で30分間(製剤番号6)、50℃で30分間(製剤番号7及び8)インキュベートした。
【0110】
16.5μLのリポソーム製剤番号2(実施例5)及び20μLのリポソーム製剤番号4をそれぞれ30μL又は33.5μLの緩衝液(100mM HEPES、150mM NaCl、pH7)とともに、それぞれ950μLのラット全血に添加した。対照として、3.5mg/mLの遊離ボルテゾミブを45μLの緩衝液とともに、950μLのラット全血に添加した。サンプルを17℃又は37℃でインキュベートし、サンプルを24時間にわたって種々の時点で採取し、5,000rpmで遠心分離し、上清をLC−MSを用いてボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図8A、8Bに示す。
【0111】
製剤番号4、6、7、及び8をマウスに静脈内投与した。血液サンプルを注入の5分、30分、1時間、2時間、及び4時間後に採取した。血漿をボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図9に示す。
【0112】
別の研究では、製剤番号4及び5の薬物動態を正常ラットで評価した(0.1mg/kgで静脈内ボーラス、n=3/群)。血漿薬物濃度をLC−MSアッセイで決定し、結果を図13に示す。最初の時間点は製剤注入後5分以内に収集した。結果は、20:0PC及び22:0PCの両方で調製したリポソーム製剤が類似するPKプロファイルを有することを示す。この結果は重要である、なぜなら、炭素数20のアシル鎖を用いて調製したリポソーム製剤は薬物及び脂質の分解を低減するという観点で炭素数22のアシル鎖を用いて調製したものより好ましく、更にリポソーム製剤中で炭素数20のアシル鎖脂質を用いるとPKプロファイルに悪影響を与えないためである。したがって、より低い加工温度であり、炭素数の少ないアシル鎖を用いて調製したリポソーム製剤はスケールアップが容易である。
【0113】
別の研究では、製剤4及び5、並びに製剤4に類似しているが、DSPEの代わりにPEGに結合したDSを用いるリポソームボルテゾミブの抗腫瘍有効性を、異種移植片CWR22腫瘍を持つSCIDマウスで評価した。薬物投薬量は0.6mg/kg(n=10)であり、毎週、4回静脈内投与した。腫瘍の大きさを測定し、結果を図14に示す。3種のリポソーム製剤全て(製剤番号4、逆三角形、製剤番号5、丸、22:0PC/mPEG−DSを含む製剤、菱形)の有効性は、遊離ボルテゾミブ(ベルケード(VELCADE)、三角形)より著しく良好であった。3種のリポソーム製剤間で統計的差は見られなかった。
【0114】
(実施例7)
リポソームに捕捉されたボルテゾミブのインビボ活性
C22:0PC及びmPEG−DSPE(95/5モル比)の混合物をエタノールに溶解させた。脂質溶液を中性の、400mMメグルミン、400mM酢酸の水和緩衝液を用いて、振盪しながら30分間80〜85℃で水和して、リポソームを形成した。脂質分散液を0.1μmまで孔径を減少させながら、2つの積層ヌクレオポア(Nucleopore)(カリフォルニア州、プレザントン(Pleasanton))膜を通して圧力下で押し出した。
【0115】
リポソーム懸濁液の外側の緩衝液を透析により、pH7.0、150mM NaCl/100mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸ナトリウム(HEPES)の緩衝液に交換した。
【0116】
ボルテゾミブの100mM HEPES及び50mM NaCl、pH6.5溶液を、0.61mg/mLのボルテゾミブ/50mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間振盪しながら45℃でインキュベートした。被包効率は約95%であると決定された。滅菌濾過後の最終薬物の効力は0.498mg/mLであり、リンアッセイによりアッセイしたときの脂質濃度は52mMであった。90°で動的光錯乱法により決定した薬物充填後のリポソーム粒径は117nmであった。
【0117】
CWR22腫瘍を持つ雄SCIDマウスを、0.8mg/kgの投薬量で、ボルテゾミブ又はリポソームに捕捉されたボルテゾミブを静脈内投与することにより処置する、2つの試験群にランダムにグループ化した。血液及び腫瘍サンプルを種々の時点で採取した。血液、血漿及び腫瘍細胞中のボルテゾミブ濃度をLC−MSにより決定した。結果を図11A〜11Cに示す。
【0118】
多くの代表的な態様及び実施形態を上記で論じたが、当業者はその特定の修正、置換、追加、及びそれらの組み合わせを認識するであろう。それ故、以下に添付する特許請求の範囲及び以後に導入する特許請求の範囲は、全てのこのような修正、置換、追加、及びそれらの組み合わせを含むと解釈され、その真の趣旨及び範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/957,045号(2007年8月21日出願)に対する優先権を主張し、それを参考として本明細書に組み込むものとする。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に記載する対象は捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソーム製剤に関する。より具体的には、対象はリポソーム内へのペプチドボロン酸化合物の充填及び保持を改善する成分から調製されるリポソームに関する。
【背景技術】
【0003】
リポソーム、すなわち脂質二重層小胞は水相を被包する同心状定序脂質二重層を含んでなる球形小胞である。リポソームは水相又は脂質二重層に収容される治療薬及び診断薬用の送達ビヒクルとして機能する。リポソームに捕捉された形態の薬物の送達は、薬物に応じて、例えば、薬物毒性の低下、薬物動態の変化、又は薬物の溶解度の向上を含む、種々の利点を提供できる。リポソームは親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含むように配合されるとき、すなわち、いわゆるステルス(STEALTH)(登録商標)又は長期循環リポソームは、1つには単核食細胞系によるリポソームの除去が減少することにより、血液循環寿命が長いという更なる利点を提供する。リポソームを注入部位から所望の標的部位又は細胞に到達させるために、寿命が長いことが必要なことが多い。
【0004】
理想的には、このようなリポソームは(i)高い充填効率で、(ii)高濃度で化合物を捕捉して、及び(iii)安定した形態で、すなわち、保管中化合物がほとんど漏れないように、捕捉された治療用又は診断用化合物を含むよう調製することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の態様並びに以下に記載及び例示するその実施形態は、代表的かつ例示的なものであり、範囲を限定することを意味しない。
【0006】
1つの態様では、それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質と、リポソーム内に捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソームを含んでなるリポソーム製剤を準備する。ボロン酸化合物はメグルミンとの複合体の形態である。
【0007】
1つの実施形態では、リン脂質は非対称なリン脂質である。別の実施形態では、リン脂質は対称なリン脂質である。
【0008】
1つの実施形態では、リン脂質は20個の炭素原子を有する。
【0009】
更に別の実施形態では、リン脂質は飽和リン脂質である。
【0010】
更に別の実施形態では、リン脂質はホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールからなる群から選択される。
【0011】
好ましい実施形態では、リン脂質は1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)又は1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)である。
【0012】
別の実施形態では、リポソームは親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含む。代表的な親水性ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0013】
更に別の実施形態では、親水性ポリマーに共有結合したリン脂質はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコールである。
【0014】
1つの実施形態では、ボロン酸化合物はペプチドボロン酸化合物である。更に別の実施形態では、ボロン酸化合物はボルテゾミブである。
【0015】
別の実施形態では、製剤は、捕捉された酢酸を更に含んでなるリポソームを含んでなる。
【0016】
別の態様では、捕捉されたボロン酸を有するリポソームの調製方法を提供する。方法は、それぞれ20〜22個の炭素原子を有する、2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームを準備し、リポソームはその中に捕捉されたメグルミンを有し、リン脂質の相転移温度を下回る温度でボロン酸化合物の存在下にリポソームをインキュベートすることを含んでなる。このインキュベートはボロン酸化合物をリポソームに取り込むために有効である。
【0017】
1つの実施形態では、リポソームはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールからなる群から選択されるリン脂質を含んでなる。
【0018】
別の実施形態では、インキュベートは90%を超えるボロン酸化合物をリポソームに取り込むために有効である。
【0019】
更に別の態様では、それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を含む2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームと、リポソームに捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソーム組成物の調製方法の改善を提供する。この改善はリポソームとボロン酸化合物とを相転移温度を下回る温度でインキュベートすることにより、ボロン酸化合物をリポソームに充填することを含んでなる。
【0020】
1つの実施形態では、改善はかかるインキュベートの前に、その中に捕捉されたメグルミンを含むリポソームを形成することを更に含んでなる。
【0021】
改善の別の実施形態では、リン脂質は1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)であり、充填は約20〜50℃の温度で行われる。
【0022】
更に別の実施形態では、リン脂質は1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)であり、かかる充填は約25〜50℃の温度で行われる。
【0023】
上記の代表的な態様及び実施形態に加えて、更なる態様及び実施形態は図面を参照し、以下の記述を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1B】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1C】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1D】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1E】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1F】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1G】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図1H】代表的なペプチドボロン酸化合物の構造。
【図2】リポソームの内側でポリオールとのボロン酸エステル化合物を形成するための、内側が高く/外側が低いpH勾配に逆らった、代表的なペプチドボロン酸のリポソームへの充填。
【図3A】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図3B】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図3C】ポリオールソルビトール(図3A)、アルファ−グルコヘプトン酸(glycoheptonic acid)(グルコヘプトネート又はグルセプテートとも呼ばれる;図3B)、及びメグルミン(図3C)の構造。
【図4A】65℃で30分間(菱形)、60分間(四角形)、又は120分間(三角形)、ボルテゾミブの存在下でインキュベートした、捕捉されたメグルミンを収容するリポソーム(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE 50:45:5モル/モル)のカラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、捕捉されていない薬物に対応する画分番号10にピークがある。
【図4B】20〜25℃で、ボルテゾミブの存在下にインキュベーした、捕捉されたメグルミン収容するリポソーム(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE 50:45:5モル/モル)のカラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、リポソームに捕捉された薬物に対応する画分番号4にピークがある。
【図5】20〜25℃で、ボルテゾミブの存在下にインキュベーした、捕捉されたメグルミン及び酢酸を収容するリポソームのゲル濾過カラム画分についての270nmにおける吸光度を示し、リポソームに捕捉された薬物に対応する画分番号14〜18及び捕捉されていない薬物画分に対応する35〜50にピークがある。
【図6】複合化剤としてメグルミン/酢酸を含む、HSPC/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5モル/モル)を含んでなるリポソームに捕捉されたボルテゾミブの投与後の時間(時間)の関数として、マウスの血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示し、ここでボルテゾミブは0.53mg/mL(三角形)、1.04mg/mL(四角形)及び2.13mg/mL(三角形)の用量で投与された。
【図7】脂質、卵スフィンゴミエリン/コレステロール(丸)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(三角形)、又は卵スフィンゴミエリン(菱形)を含んでなるリポソームについて、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図8A】HSPC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C20:0 PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームについて、17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図8B】HSPC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C20:0 PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームについて、17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、インキュベート時間(時間)の関数としてのインビトロでの全血中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図9】C20:0PC/mPEG−DSPE(95/5、四角形)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形及び四角形))を含んでなるリポソームのマウスへの静脈内投与後、又は遊離の薬物(菱形)の投与後の時間(時間)の関数としての血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図10A】5℃(菱形)又は25℃(四角形)で保管したときの、時間(週)の関数としてC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームへのボルテゾミブの被包率。
【図10B】4℃(菱形、三角形)又は25℃(四角形、丸)で保管したときの、時間(週)の関数として、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、菱形、四角形)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形、丸)からなるリポソームへのボルテゾミブの被包率。
【図11A】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図11B】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図11C】遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(C22:0 PC/mPEG 95:5)(四角形)薬物について、血漿中(図11A)、血液中(図11B)及び腫瘍中(図11C)の濃度の薬物を、マウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブ濃度(μg/mL)。
【図12】リポソーム捕捉型(C22:0 PC/mPEG 95:5)(黒丸)又は遊離型(白丸)でマウスに静脈内投与した後の時間(時間)の関数としての、ボルテゾミブの血漿濃度(μg/mL)。
【図13】正常ラットに製剤4及び5(実施例6)を投与した後の時間(時間)の関数としての血漿中のボルテゾミブ残留率。
【図14】時間軸に沿って矢印で示す時点で4週間にわたって週1回、遊離の薬物(三角形)、リポソームビヒクルプラシーボ(四角形)、ボルテゾミブリポソーム製剤番号4及び5(逆三角形、丸、それぞれ実施例6)、及び別のリポソーム製剤(菱形)で処理したマウスにおいて、時間(日)の関数として、異種移植CWR22腫瘍を有するマウスの腫瘍の大きさ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.定義
「ポリオール」は1分子あたり1つを超えるヒドロキシル(−OH)基を有する化合物を意図する。この用語は糖、グリセロール、ポリエーテル、グリコール、ポリエステル、ポリアルコール、炭水化物、カテコール、ビニルアルコールとビニルアミンとのコポリマー等のような、アルコール性ヒドロキシル基を含むモノマー化合物及びポリマー化合物を含む。
【0026】
「ペプチドボロン酸化合物」は
【0027】
【化1】
【0028】
R1、R2、及びR3は互いに同じであっても異なってもよく、nが1〜8、好ましくは1〜4である、独立して選択される部分である、化合物の形態を意図する。
【0029】
「親水性ポリマー」は室温で水にいくらかの溶解度を有するポリマーを意図する。代表的な親水性ポリマーとしてはポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド及び親水性ペプチド配列が挙げられる。ホモポリマー又はブロック若しくはランダムコポリマーのようなポリマーを使用してよい。好ましい親水性ポリマー鎖は好ましくは500〜10,000ダルトン、より好ましくは750〜10,000ダルトン、更により好ましくは750〜5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖のようなポリエチレングリコール(PEG)である。
【0030】
「内側が高く/外側が低いpH勾配」とはリポソーム内部(高pH)とリポソームが懸濁している外部媒質(低pH)との間の膜貫通pH勾配を指す。典型的には、リポソーム内部のpHは外部媒質のpHより少なくとも1pH単位、好ましくは2〜4単位高い。
【0031】
「リポソームに捕捉された」はリポソーム脂質二重層の間の水性空間、又は二重層自体内の、リポソームの中心水性コンパートメント中に隔離されている化合物を指す。
【0032】
II.リポソーム製剤
1つの態様では、捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソーム組成物を準備する。リポソームはリポソームへの化合物の充填及び保持を向上させる成分を含む。この節ではリポソーム組成物及び調製方法を記載する。
【0033】
A.リポソーム成分
リポソーム製剤は捕捉されたペプチドボロン酸化合物を収容しているリポソームを含んでなる。ペプチドボロン酸化合物は、酸性で、又はC−末端、ペプチド配列の端に、α−アミノボロン酸を含むペプチドである。一般に、ペプチドボロン酸化合物は、
【0034】
【化2】
【0035】
R1、R2、及びR3が互いに同じであっても異なってもよく、nが1〜8、好ましくは1〜4である、独立して選択される部分である形態である。側鎖としてボロン酸を有するアスパラギン酸又はグルタミン酸残基を有する化合物もまた想到される。
【0036】
好ましくは、R1、R2、及びR3は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アラルコキシ、シクロアルキル、又は複素環から選択され、又はR1、R2、及びR3のいずれかがペプチド主鎖に隣接する窒素原子で複素環を形成してよい。アルコキシ、アラルキル及びアラルコキシのアルキル成分を含むアルキルは好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、直鎖であってもよく又は分岐鎖であってもよい。アリールオキシ、アラルキル、及びアラルコキシのアリール成分を含むアリールは好ましくは単核又は二核(すなわち2つの縮合環)、より好ましくは、ベンジル、ベンジルオキシ、又はフェニルのような単核である。アリールはまた、フリル、ピロール、ピリジン、ピラジン、又はインドールのようなヘテロアリール、すなわち、環内に1つ以上の窒素、酸素、又は硫黄原子を有する芳香環を含む。シクロアルキルは好ましくは炭素原子数3〜6である。複素環は環内に1つ以上の窒素、酸素、又は硫黄原子を有する非芳香環を指し、好ましくは炭素原子数3〜6の5〜7員環である。このような複素環としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンが挙げられる。シクロアルキル又は複素環のいずれかはアルキル、例えばシクロヘキシルメチルと結合してよい。
【0037】
上記基のいずれか(水素を除く)はハロゲン、好ましくはフルオロ又はクロロ;ヒドロキシ;低級アルキル;メトキシ又はエトキシのような低級アルコキシ;ケト;アルデヒド;カルボン酸、エステル、アミド、カーボネート、又はカルバメート;スルホン酸又はエステル;シアノ;1級アミノ、2級アミノ、又は3級アミノ;ニトロ;アミジノ;及びチオ又はアルキルチオから選択される1つ以上の置換基で置換してよい。好ましくは、その基は最大2つのこのような置換基を含む。
【0038】
代表的なペプチドボロン酸化合物を図1A〜1Hに示す。図1A〜1Hに示すR1、R2、及びR3の代表例としてはn−ブチル、イソブチル、及びネオペンチル(アルキル);フェニル又はピラジル(アリール);4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)ブチル、3−(ニトロアミジノ)プロピル、及び(1−シクロペンチル−9−シアノ)ノニル(置換アルキル);ナフチルメチル及びベンジル(アラルキル);ベンジルオキシ(アラルコキシ);及びピロリジン(R2は隣接する窒素原子と複素環を形成する)が挙げられる。
【0039】
一般に、ペプチドボロン酸化合物はモノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、又はより高次のペプチド化合物であってよい。他の代表的なペプチドボロン酸化合物は米国特許第6,083,903号、同第6,297,217号、及び同第6,617,317号に記載されており、これらは参考として本明細書に組み込まれる。
【0040】
図2に示した手順に従って、ペプチドボロン酸化合物をリポソームに充填して、ペプチドボロン酸化合物がペプチドボロン酸エステルの形態でリポソームに捕捉されたリポソーム製剤を得る。図2は1つの実線12により表される脂質二重層膜を有するリポソーム10を示す。多重膜リポソームでは、脂質二重層膜は介在性水性空間を有する複数の脂質二重層を含んでなることが理解されるであろう。リポソーム10は外部媒質14に懸濁しており、その外部媒質のpHは約7.0、一般には約5.5〜8.0、より一般には6.0〜7.0である。リポソーム10は脂質二重層により画定される内部水性コンパートメント16を有する。内部水性コンパートメントに捕捉されているのはポリオール18である。ポリオールは好ましくは、シス1,2−又は1,3−ジオール官能基を有する部分であり、好ましい実施形態ではポリオールはメグルミンである。内部水性コンパートメントのpHは好ましくは約8.0を超える、より好ましくは9を超える、更により好ましくは10を超える。
【0041】
また、リポソームに捕捉されているのは図2ではボルテゾミブにより表されているペプチドボロン酸化合物である。また、脂質二重層膜を通過する前のボルテゾミブを外部水性媒質内に示す。外部水性媒質ではボロン酸基のpHはpKa=9.7(ACD/labsバージョン6.0により算出)より著しく低いため、化合物は大部分が非荷電である。その非荷電状態では化合物は脂質二重層を超えて自由に透過する、なぜなら化合物がやや親油性である(logP=2.45±1.06、ACD/labsバージョン6.0により算出)ためである。ボロン酸エステルの形成は平衡を移動させて、更に外部媒質から脂質二重層を超えて化合物を透過させ、リポソーム内に化合物を蓄積させる。別の実施形態ではリポソーム内のポリオールに加えて、外部懸濁媒質のpHが低く、リポソーム内部のpHがやや高いことにより、リポソームの水性内部コンパートメント内への薬物の蓄積が誘発される。いったんリポソーム内部に入ると、化合物はポリオールと反応して、ボロン酸エステルを形成する。ボロン酸エステルは本質的に、脂質二重層を通過することができないため、ボロン酸エステルの形態の薬物化合物はリポソーム内部に蓄積される。ボロン酸エステル複合体の安定性はpHの上昇とともに向上する。
【0042】
リポソーム内のポリオール濃度は荷電基、例えば、ヒドロキシル基の濃度が、ボロン酸化合物の濃度より著しく高いような濃度であることが好ましい。25mMの最終薬物濃度(0.2mg/mLの総薬物濃度における内部薬物濃度)を有する組成物では、例えば、ポリマー荷電基の内部化合物濃度は典型的には、少なくとも薬物濃度より高い、好ましくは薬物濃度の数倍である。
【0043】
ポリオールは内側が高く/外側が低い濃度で存在する、つまり、リポソーム脂質二重層膜を超えてポリオールの濃度勾配が存在する。ポリオール捕捉剤が外部バルク相中にかなりの量存在する場合、ポリオールは外部媒質でペプチドボロン酸化合物と反応して、リポソーム内部への化合物の蓄積速度を遅くする。したがって、好ましくは、組成物がバルク相(外側水性相)にポリオール捕捉剤を実質的に含まないようにリポソームを以下に記載のように調製する。
【0044】
本明細書に記載の根拠となる研究では代表的な化合物ボルテゾミブを、捕捉剤(複合化剤とも呼ばれる)としてソルビトール、グルセプテート、又はメグルミンを有するリポソームに充填した。これらの化合物の構造をそれぞれ図3A〜3Cに示す。実施例1〜3に記載のように、水和緩衝液中でこれらの複合化剤の1つを用いてリポソームを調製した。透析により捕捉されていない複合化剤を全て除去した後、様々な時間、様々な温度で、薬物の溶液とともにリポソームをインキュベートすることにより、ボルテゾミブをリポソームに充填した。ソルビトール又はグルセプテートが複合化剤としてリポソーム内に存在し、充填を60〜65℃で実施したとき、リポソーム内に充填された薬物は検出されなかった。メグルミンを複合化剤として用い、充填を65℃で実施したときも、同様の結果が観察された。これを図4Aに提示するデータにより示し、図4Aは、30分間(丸)、60分間(四角形)、又は120分間(三角形)、65℃にて、ボルテゾミブの存在下にインキュベートした、捕捉されたメグルミンを含むリポソームについて、G10脱塩カラム画分の270nmにおける吸光度を示す。画分番号10におけるピークは捕捉されていない薬物に対応する。しかしながら、図4Bに見られるように、インキュベートを約20〜25℃の室温で実施したとき、画分番号4のピークにより証明されるように、ボルテゾミブは充填され、リポソーム内に保持された。
【0045】
別の研究では、実施例4に記載するように、リポソーム内にメグルミン及び酢酸が存在することにより確立されるイオン勾配に逆らって、ボルテゾミブはリポソーム内に充填された。図5に見られるように、酢酸を内部水和媒質に添加すると、ボルテゾミブの被包効率が高まる。図5では画分番号14〜18のピークは、リポソームに捕捉された薬物に対応し、総薬物の約95%が遠隔充填によりリポソームに捕捉されたことを示す。
【0046】
実施例5に記載のように、メグルミン/酢酸勾配に逆らった充填により捕捉されたボルテゾミブを有するリポソームを0.5mg/mL、1.0mg/mL、及び2.1mg/mLの薬物濃度を有するように調製した。3種の製剤を1.6mg/kgの薬物用量でマウスに注入し、ボルテゾミブの血漿濃度を時間の関数として決定した。図6は、0.53mg/mL(三角形)、1.04mg/mL(四角形)、及び2.13mg/mL(三角形)の薬物濃度で、リポソームに捕捉されたボルテゾミブを投与した後の、時間(時間)の関数としてのマウスの血漿中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示す。インビボ投与時、リポソームから薬物が急速に漏れ出し、3時間の時点における血漿薬物濃度は遊離ボルテゾミブのインビボ投与に対して予測されるのとおよそ同じであった。
【0047】
更に研究を行って、ボロン酸化合物のインビボでの保持が改善されたリポソーム組成物に到達した。実施例6に記載のように、様々な脂質組成物からリポソームを調製し、ラット全血を用いてインビトロ放出アッセイで試験した。卵スフィンゴミエリン/コレステロール(95/5)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(50/45/5)、又は卵スフィンゴミエリンを含んでなる脂質二重層を有するリポソームを調製し、ボルテゾミブを充填した(実施例6A)。リポソームからの薬物放出をラットの全血を用いたインビトロ放出アッセイにより分析した。図7に見られるように、薬物は卵スフィンゴミエリン/コレステロール(丸)、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(三角形)、又は卵スフィンゴミエリン(菱形)を含んでなるリポソームから急速に放出された。
【0048】
リン脂質ホスホコリンを含んでなる脂質二重層を有するリポソームを調製し、そのホスホコリンは炭素原子数18、20、22、又は24のアシル鎖長を有していた(図6B)。図8A、8Bは17℃(図8A)又は37℃(図8B)における、水素添加ダイズホスホコリン(C18:0;HSPC)/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5、三角形)、又は1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(20:0PC)/mPEG−DSPE(95/5、菱形)を含んでなるリポソームからの、ボルテゾミブの放出を示す。図8A、8BのデータはC20:0PC脂質で調製したリポソームがC18:0PC脂質で調製したリポソームと比べて、血液中でインキュベートしたとき、長期間薬物を著しく良好に保持したことを示す。
【0049】
実施例6Bに従って調製したリポソームをマウスに静脈内注入を介して投与した。注入後4時間にわたって血液サンプルを採取し、ボルテゾミブ濃度を分析した。図9は20:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号4、四角形)、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号6、三角形)、C24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、製剤番号7及び8、それぞれ白丸及び黒丸)を含んでなるリポソームの投与時の薬物濃度(μg/mL)を示す。対照群の動物には遊離型のボルテゾミブを静脈内注入した(菱形)。薬物をホスホコリンリン脂質を含んでなる二重層を有するリポソームに捕捉したとき、遊離の薬物の血液循環寿命に比べて、ボルテゾミブの血液循環寿命は著しく増加した。特に、主な二重層成分としてC22:0PCを含むリポソームは、C24:0PC脂質のリポソームにより準備されるリポソームよりもわずかに長い血液循環寿命をもたらした。
【0050】
図10A、10BはC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームに捕捉されたボルテゾミブの保持を示す。図10Aは5℃(菱形)又は25℃(四角形)で保管したときの、時間(週)の関数としてC22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)からなるリポソームのボルテゾミブの被包率を示す。5℃では製剤は少なくとも3ヶ月間安定であり、本質的に測定可能な量の薬物喪失は生じなかった。25℃で保管したとき、約2週間保管した後、薬物がリポソームから漏れ始めた。
【0051】
図10Bは4℃(菱形、三角形)又は25℃(四角形、丸)で保管したときの、時間(週)の関数として、C22:0PC/mPEG−DSPE(95/5、菱形、四角形)又はC24:0PC/mPEG−DSPE(95/5、三角形、丸)からなるリポソームのボルテゾミブの被包率を示す。C22:0鎖長を有するホスホコリンからなるリポソームはC24:0鎖長を有するホスホコリンからなるリポソームより、どちらの温度においても良好に薬物を保持した。
【0052】
したがって、1つの実施形態では、20、21、又は22個の炭素原子を有するリン脂質を含んでなるリポソームが想到される。脂質は非対称な脂質であってよく、この場合2本のアシル鎖は異なる炭素鎖長を有し、あるいは対称な脂質であってよく、この場合2本のアシル鎖は同じ数の炭素原子を有する。脂質が非対称である実施形態では、リン脂質は、2本のアシル鎖のうち1本が20、21、又は22個の炭素原子を有するとき、20、21、又は22個の炭素原子を有すると考えられる。好ましい実施形態では、互いの鎖の炭素原子の数は4個未満未満、より好ましくは2個未満異なる。
【0053】
リン脂質は小胞形成脂質であることが知られている、なぜなら、それらは水中で自然に、内側に接触した疎水性部分(アシル鎖)、二重層膜の親水性領域、及び二重層の外側、極性表面に向かって配向される頭部基部分を有する二重層小胞を形成するためである。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールのようなリン脂質を含む種々の合成小胞形成脂質及び天然小胞形成脂質が存在し、ここで、2本の炭化水素鎖の長さは典型的には、約14〜22個の炭素原子であり、様々な不飽和度を有する。
【0054】
小胞形成脂質は脂質の構造に応じて、特定の相転移、又はTmで、液晶相からより流動性の相に転移する。1つの実施形態では、リポソームは特定のTmを有する脂質から形成され、薬物はその脂質のTmを下回る温度で、薬物の存在下にリポソームをインキュベートすることによりイオン勾配に逆らってリポソームに充填され、その脂質は典型的には脂質二重層中の主な脂質成分である。この調製方法を一般に以下に記載し、実施例3〜6に記載のように調製したリポソーム製剤により例示し、ここでボルテゾミブのリポソームへの遠隔充填は室温で実現した。
【0055】
ボロン酸化合物の遠隔充填は1つの実施形態では、メグルミンを収容している予形成リポソームを用いて実施する。メグルミンは2級アミン化合物であり、ジオール官能基とボロン酸化合物とがボロン酸エステルを形成する。メグルミンの複数の隣接シスジオールはリポソーム脂質二重層膜を超えて拡散した後、ボロン酸化合物と反応し、それによりリポソーム内にボロン酸化合物を捕捉する。
【0056】
1つの実施形態では、プロセスはpHがリポソームの外側で低く(例えばpH6〜7)、リポソームの内側で若干高い(pH8.5〜10.5)場合、pHによって動かされ、ポリオールの存在と合わせて、化合物の蓄積及び充填を誘発する。この実施形態では、組成物は内側が高く/外側が低いポリオール勾配を有するリポソームを配合することにより調製した。上記のように選択したポリオールの水溶液を上記のように決定した所望の濃度で調製した。ポリオール溶液は脂質の水和に好適な粘度を有することが好ましい。水性ポリオール溶液のpHは緩衝剤を用いて内側のpHを高くするとき、約8.0超であることが好ましい。酢酸(又は他の膜透過性弱酸)を含有する水和溶液のpHは通常中性であり、この場合内側の高pHは透析又はダイアフィルトレーションプロセス中に発生する。
【0057】
水性ポリオール溶液は乾燥した脂質フィルムの水和のために用いられ、小胞形成脂質、非小胞形成脂質(コレステロール、DOPE等のような)、mPEG−DSPEのようなリポポリマー、及び任意の他の所望の脂質二重層成分の所望の混合物から調製される。乾燥した脂質フィルムは好適な溶媒、典型的には揮発性有機溶媒に選択した脂質を溶解させ、溶媒を蒸発させて、乾燥したフィルムを残すことにより調製される。脂質フィルムをポリオールを含有する溶液で水和し、所望のpHに調節して、リポソームを形成する。
【0058】
リポソーム形成後、リポソームは実質的に均質な大きさの範囲、典型的には約0.01〜0.5マイクロメートル、より好ましくは0.03〜0.40マイクロメートル、更により好ましくは0.08〜0.2マイクロメートルを有するリポソームの集団が得られるような大きさであってよい。REV及びMLVに対して有効な大きさを調節する1つの方法は、リポソームの水性懸濁液を0.8〜0.05マイクロメートルの範囲、典型的には0.8、0.4、0.2、0.1、0.08及び/又は0.05マイクロメートルの選択された均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことを含む。膜の孔径は特に同じ膜を通して製剤を2回以上押し出す場合、膜を通して押し出すことにより生じたリポソームの平均孔径におおよそ一致する。均質化方法はまた、リポソームを100nm以下の大きさに小型化するために有用である(マーティン(Martin)、F.J.、特殊化薬物送達システム−製造及び生成技術(Specialized Drug Delivery Systems - Manufacturing and Production Technology)、P.ティル(Tyle)編、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、267〜316ページ(1990年))。
【0059】
大きさを調節した後、被包されていないバルク相のポリオールを、透析、ダイアフィルトレーション、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、又はイオン交換のような好適な技術により除去して、内側のポリオール濃度が高い、好ましくは外側にポリオールをほとんどあるいは全く有さないリポソームの懸濁液を得る。また、リポソーム形成後、滴定、透析等により、リポソームの外相のpHを約7.0未満に調節する。
【0060】
次いで、リポソームに能動充填するために、捕捉されるべきボロン酸化合物をリポソーム分散液に添加する。添加するボロン酸化合物の量は被包効率が100%である、すなわち、添加された化合物が全て最終的にボロン酸エステルの形態でリポソームに充填されると仮定して、被包されるべき薬物の総量から決定することができる。
【0061】
化合物とリポソーム分散液との混合物を好ましくは、脂質二重層を形成する脂質混合物中の主な脂質成分の相転移温度より低い温度でインキュベートする。リポソーム中の化合物濃度に対する化合物の取り込みがバルク媒質中の化合物の数倍であることが好ましく、これは多くの場合リポソーム中の沈殿の形成により証明される。後者は例えば、標準的な顕微鏡又はX線回折技術により確認することができる。55℃のTmを有する高相転移脂質では、例えば、20〜45℃でインキュベート実施することができる。インキュベート時間はインキュベート温度及びリポソーム内部の複合化剤の強度に応じて、数分から数十分、数時間若しくは12時間以下、又はそれ以上で変動してよい。薬物充填時間はまた、部分的に、充填のためにリポソームに添加される薬物の形態による。例えば、可溶化薬物を添加するときに必要な時間は短い。
【0062】
このインキュベート工程の終わりに懸濁液を更に処理して、捕捉されたポリオールを含有する初期リポソーム分散液から遊離ポリマーを取り除くための上述の方法のいずれかを用いて、遊離の(捕捉されていない)化合物を取り除いてよい。
【0063】
リポソームは所望により、親水性ポリマーに共有結合した小胞形成脂質を含んでよい。例えば、米国特許第5,013,556号に記載されているように、リポソーム組成物にこのようなポリマー誘導体化脂質を含むことにより、リポソームの周りに親水性ポリマー鎖の表面コーティングが形成される。親水性ポリマー鎖の表面コーティングはこのようなコーティングを欠くリポソームと比較したとき、リポソームのインビボ血液循環寿命を増加させるのに有効である。メトキシ(ポリエチレングリコール)(mPEG)及びホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)を含んでなるポリマー誘導体化脂質は、様々なmPEG分子量(350、550、750、1,000、2,000、3,000、5,000ダルトン)で、アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)(アラバマ州アラバスター(Alabaster))から入手できる。mPEG−セラミドのリポポリマーもまた、アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)から購入できる。脂質−ポリマーコンジュゲートの調製は、文献にも記載されており、米国特許第5,631,018号、同第6,586,001号、及び同第5,013,556号;ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻111ページ(1997年;ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Meth.Enzymol.、第387巻50ページ(2004年)を参照のこと。これらのリポポリマーは分子量の分散度が最小限である、明確に定義された、高純度の均質な物質として調製することができる(ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻111ページ(1997年)、ワン(Wong)、J.ら、サイエンス(Science)、第275巻820ページ(1997年))。リポポリマーはまた、本明細書に参考として組み込まれた米国特許第6,586,001号に記載されているようにポリマー−ジステアロイルコンジュゲートのような「中性」リポポリマーであってもよい。
【0064】
脂質−ポリマーコンジュゲートがリポソームに含まれるとき、典型的には1〜20モルパーセントの脂質−ポリマーコンジュゲートが総脂質混合物に組み込まれる(例えば、米国特許第5,013,556号を参照のこと)。
【0065】
リポソームは更に、リガンドを含むよう改変されたリポポリマーを含んでよく、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートの形成はまた、「リポポリマー−リガンドコンジュゲート」とも呼ばれる。リガンドは薬物若しくはインビボで活性を有する生体分子のような治療用分子、造影剤若しくは生体分子のような診断用分子、又は結合パートナーに対して結合親和性を有する標的化分子であってもよく、好ましくは細胞の表面上の結合パートナーである。好ましいリガンドは細胞表面に対して結合親和性を有し、リポソームの内部移行を介した細胞の細胞質への侵入を促進する。このようなリポポリマー−リガンドを含むリポソームに存在するリガンドはリポソーム表面から外向きに配向され、したがって、同種の受容体との相互作用に利用可能である。
【0066】
リガンドをリポポリマーに結合させる方法は既知であり、この場合、ポリマーは選択されたリガンドと後続反応するために官能化してよい(米国特許第6,180,134号、ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、FEBS Lett.、第353巻71ページ(1994年)、ザリプスキー(Zalipsky)、S.ら、Bioconjugate Chem.、第4巻296ページ(1993年)、ザリプスキー、S.ら、J.Control.Rel.、第39巻153ページ(1996年)、ザリプスキー、S.ら、Bioconjugate Chem.、第8巻2号111ページ(1997年)、ザリプスキー、S.ら、Meth.Enzymol.、第387巻50ページ(2004年))。官能化ポリマー−脂質コンジュゲートはまた、末端官能化PEG−脂質コンジュゲートのように、商業的に入手することもできる(アヴァンティ・ポラー・リピッズ社(Avanti Polar Lipids, Inc.)。リガンドとポリマーとの間の結合は安定な共有結合であってもよく、又はpHの変化若しくは還元剤の存在のような刺激に応答して切断される解放可能な結合であってもよい。
【0067】
リガンドは細胞受容体又は血液中を循環している病原体に対する結合親和性を有する分子であってよい。リガンドはまた、治療用又は診断用分子であってもよく、特に遊離型で投与したとき血液循環寿命の短い分子である。1つの実施形態では、リガンドは生物学的リガンドであり、好ましくは細胞受容体に対する結合親和性を有するものである。代表的な生物学的リガンドはCD4、葉酸、インスリン、LDL、ビタミン、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質、Eセレクチン、Lセレクチン、及びPセレクチンのようなセレクチン、Flk−1,2、FGF、EGF、インテグリン、特に、α4β1 αvβ3、αvβ1 αvβ5、αvβ6インテグリン、HER2、及び他のものの受容体に対する結合親和性を有する分子である。好ましいリガンドとしては抗体及び抗体フラグメント、例えばF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv(重鎖及び軽鎖の様々な領域からなるフラグメント)及びscFv(軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーにより接続される組み換え単鎖ポリペプチド分子)等を含む、タンパク質及びペプチドが挙げられる。リガンドはまた、小さな分子ペプチド模倣体であってもよい。細胞表面受容体、又はその断片はリガンドとして作用できることが明らかになるであろう。他の代表的な標的リガンドとしてはビタミン分子(例えば、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン)、オリゴペプチド、オリゴ糖が挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的なリガンドは米国特許第6,214,388号、同第6,316,024号、同第6,056,973号、及び同第6,043,094号に提示され、これらは参考として本明細書に組み込まれる。
【0068】
脂質−ポリマー−リガンド標的コンジュゲートを含むリポソーム製剤は様々なアプローチで調製することができる。1つのアプローチは末端官能化脂質−ポリマー誘導体を含む脂質小胞の調製を含む、つまり、それは遊離のポリマー末端が反応性である又は「活性化された」、脂質−ポリマーコンジュゲートである(例えば、米国特許第6,326,353号及び同第6,132,763号を参照のこと)。このような活性化コンジュゲートはリポソーム組成物に含まれており、活性化ポリマー末端はリポソーム形成後に標的リガンドと反応する。別のアプローチでは、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートはリポソーム形成時、脂質組成物に含まれている(米国特許第6,224,903号及び同第5,620,689号を参照のこと)。更に別のアプローチでは、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートのミセル溶液をリポソームの懸濁液とともにインキュベートし、脂質−ポリマー−リガンドコンジュゲートは、予形成されたリポソームに挿入される(例えば、米国特許第6,056,973号及び同第6,316,024号を参照のこと)。
【0069】
III.使用方法
ボロン酸エステルの形態で捕捉されたペプチドボロン酸化合物を有するリポソーム製剤は、腫瘍を持った患者を治療するために用いられる。ボロン酸化合物はプロテアソーム阻害剤と呼ばれる薬物に分類される。プロテアソーム阻害剤はその細胞プロテアソーム活性を阻害する能力により、細胞のアポトーシスを誘発する。より具体的には、真核細胞ではユビキチン−プロテアソーム経路は、細胞内のタンパク質のタンパク質分解の中枢経路である。タンパク質は最初にポリユビキチン鎖の結合によりタンパク質分解の標的とされ、次いでプロテアソームにより急速に小ペプチドに分解され、ユビキチンは解放され、再利用される。
【0070】
本明細書に記載するように調製したリポソーム製剤をマウスにインビボ投与した。実施例7に記載のように、22:0PC/mPEG−DSPE(95/5)を含んでなり、捕捉されたボルテゾミブを収容しているリポソームを調製し、腫瘍を持つマウスに静脈投与した。対照群のマウスはマンニトール中のボルテゾミブの混合物である、商品名ベルケード(VELCADE)(登録商標)として販売されているボルテゾミブで処置した。図11A〜11Cは遊離型(菱形)又はリポソームに捕捉された(四角形)薬物について、血漿(図11A)、血液(図11B)及び腫瘍(図11C)中のボルテゾミブ濃度(μg/mL)を示す。血漿、血液、及び腫瘍中のボルテゾミブ濃度は遊離の薬物として投与したときよりも、リポソームに捕捉された形で投与したとき、全ての時点で高かった。この研究はリポソーム製剤により、腫瘍中への薬物蓄積が促進されることを示す。
【0071】
薬物動態学パラメータを表1に要約する。
【0072】
【表1】
*Vss及びCLは、T1/2α相を用いて推定した。
【0073】
リポソームに捕捉されたボルテゾミブの血漿曲線下面積は遊離型の薬物のAUCより132倍大きく、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの血漿半減期は遊離型の薬物の血漿半減期より8倍長く、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの全血Cmax及びAUCは遊離型の薬物のCmax及びAUCより、それぞれ6.2倍及び10倍高く、リポソームに捕捉されたボルテゾミブの腫瘍中のCmax及びAUCは遊離型の薬物のCmax及びAUCより、それぞれ1.5倍及び1.9倍高かった。
【0074】
別の研究で、リポソームに捕捉されたボルテゾミブをマウスに投与し、薬物動態学パラメータ決定した。リポソームは22:0PC/mPEG−DSPEからなり、実施例7に記載のように調製した。リポソームに捕捉されたボルテゾミブ(黒丸)及び遊離のボルテゾミブ(白丸)の血漿薬物動態学プロファイルを図12に示し、薬物動態学パラメータを表2に要約する。
【0075】
【表2】
【0076】
したがって、1つの実施形態では、ペプチドボロン酸化合物を含むリポソーム製剤は癌の治療、より具体的には癌患者の腫瘍の治療に用いられる。
【0077】
多発性骨髄腫は毎年米国で、およそ15,000人がそれと診断される不治の悪性腫瘍である(リチャードソン(Richardson)、P.G.ら、Cancer Control.、第10巻5号361ページ(2003年))。それは、典型的には、骨髄の複数の部位にクローン性の血漿細胞が蓄積することを特徴とする血液悪性疾患である。大部分の患者は化学療法及び放射線による初期治療に反応するが、耐性腫瘍細胞の増殖によりほとんどが最終的に再発する。1つの実施形態では、本発明はボロン酸エステルの形態で捕捉されたペプチドボロン酸化合物を含んでなるリポソーム製剤を投与することにより多発性骨髄腫を治療する方法を準備する。
【0078】
リポソーム製剤はまた、癌細胞が化学療法の作用に抵抗する主な経路のいくつかの克服を補助することにより乳ガンの治療にも有効である。例えば、NF−κB、アポトーシスの制御因子、及びp44/42マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路を通じたシグナル伝達は抗アポトーシス性であってもよい。プロテアソーム阻害剤がこれらの経路を阻害するため、化合物はアポトーシスを活性化することができる。したがって、本発明はペプチドボロン酸化合物を含むリポソームを投与することにより、乳癌に罹患している被験体を治療する方法を準備する。更に、タキサン及びアントラサイクリンのような化学療法剤はこれらの経路の一方又は両方を活性化することが示されているため、従来の化学療法剤と併せてプロテアソーム阻害剤を使用することはパクリタキセル及びドキソルビシンのような薬物の抗腫瘍活性を強化するように作用する。したがって、別の実施形態では、本発明はリポソームに捕捉されたペプチドボロン酸化合物と併せて、遊離型又はリポソーム捕捉型の化学療法剤を投与する、治療方法を提供する。
【0079】
リポソーム製剤の投薬量及び投薬レジメンは、治療される癌、癌の段階、患者の大きさ及び健康状態、及び主治医である医療介護者に容易に明らかである他の要因に応じて決定する。更に、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ、Pyz−Phe−ボロLeu(PS−341)の臨床研究は好適な投薬量及び投薬レジメンに対する十分な指針を提供する。例えば、週1回又は2回静脈内に投与する場合、固形腫瘍を有する患者の最大耐量は1.3mg/m2であった(オーロスキー(Orlowski)、R.Z.ら、Breast Cancer Res.、第5巻1〜7ページ(2003年)。別の研究では、3週間周期の1、4、8及び11日目に静脈内ボーラスとして投与されたボルテゾミブの最大耐量が1.56mg/m2であることが示唆された(ボーヒーズ(Vorhees)、P.M.ら、Clinical Cancer Res.、第9巻6316ページ(2003年))。
【0080】
リポソーム製剤は、典型的には、静脈内投与が好ましく、皮下投与が好ましい代替であるように、非経口投与される。製剤は送達を促進するために、必要な又は望ましい任意の製剤学的賦形剤を含んでよい。
【0081】
上記治療方法では好ましいプロテオソーム阻害剤は、以下の構造を有する、ボルテゾミブ、Pyz−Phe−ボロLeu、Pyz:2,5−ピラジンカルボン酸、PS−341)である。
【0082】
【化3】
【0083】
ボルテゾミブは胸、卵巣、前立腺、肺を含む種々の癌組織に対して、並びに膵臓腫瘍、リンパ腫及び黒色腫のような種々の腫瘍に対して活性を有することが示されている(タイシャー(Teicher)、B.A.ら、Clin Cancer Res.、第5巻9号2638〜45ページ(1999年);アダムス(Adams)、J.、Semin.Oncol.、第28巻6号613〜19ページ(2001年);オーロスキー(Orlowski)、R.Z.;ディーズ(Dees)、E.C.、Breast Cancer Res、第5巻1号1〜7ページ(2002年);フランクル(Frankel)ら、Clin.Cancer Res.、第6巻9号3719〜28ページ(2000年);及びシャー(Shah)、S.A.ら、J Cell Biochem、第82巻1号110〜22ページ(2001年))。
【0084】
IV.実施例
以下の実施例は本明細書に記載の発明を更に例示するものであり、限定することは全く意図しない。
【0085】
(実施例1)
複合化剤としてソルビトールを使用するボルテゾミブのリポソームへの充填
モル比50:45:5の水素添加ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、及びポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE、PEG分子量2,000Da、アヴァンティ・ポラー・リピッズ(Avanti Polar Lipids)(アラバマ州バーミンガム(Birmingham))の混合物をエタノールに溶解した。次いで、脂質を400mMのソルビトール及び100mMトリス緩衝液の水和緩衝液(pH8.5)で水和した。最終水和脂質懸濁液は10%(w/v)のエタノールを含有していた。脂質懸濁液を孔径0.2μmの2つの積層ヌクレオポア(Nucleopore)(カリフォルニア州プレザントン(Pleasanton))膜を通して圧力下で押し出した。
【0086】
外側の緩衝液を透析により、pH7.0、150mM NaCl/100mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸ナトリウム(HEPES)の緩衝液に交換した。
【0087】
粉末化したボルテゾミブを3.4mg/mLの濃度になるようリポソーム懸濁液に添加し、混合物を、10分間〜7時間の範囲の種々の時間、振盪しながら65℃でインキュベートした。
【0088】
インキュベート時間後、リポソームを検査し、セファロースCL−4B(ファルマシア(Pharmacia)(ニュージャージー州、ピスカタウェイ(Piscataway))のゲルクロマトグラフィーにより捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。リポソーム内に捕捉された薬物は検出されなかった。
【0089】
(実施例2)
複合化剤としてグルセプテートを使用するリポソームへのボルテゾミブの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMグルセプテート及び200mMトリス(pH8.5)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。
【0090】
ボルテゾミブを2.5mg/mLのボルテゾミブ/20mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間〜2時間の範囲の種々の時間、振盪しながら65℃でインキュベートした。
【0091】
インキュベート時間後、リポソームをアッセイし、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。約0.15mg/mLの薬物がリポソームに充填され、被包効率は約7%であった。
【0092】
(実施例3)
複合化剤としてメグルミンを使用するボルテゾミブのリポソームへの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMメグルミン及び100mMトリス(pH8.5)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。
【0093】
ボルテゾミブを2.5mg/mLのボルテゾミブ/20mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間、60分間、及び120分間(65℃で)又は室温で3日間の種々の時間、振盪しながらインキュベートした。
【0094】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。結果を図4A、4Bに示す。インキュベートを65℃で実施したとき、薬物充填は検出されなかった(図4A)。薬物とともに室温でインキュベートしたリポソームは、0.3mg/mLの捕捉された薬物を有し、被包効率は約16%であった(図4B)。
【0095】
(実施例4)
メグルミン及び酢酸を含有するリポソームへのボルテゾミブの充填
リポソームを水和緩衝液が300mMメグルミン及び300mM酢酸(pH7)を含んでなっていたことを除いて、実施例1に記載のように調製した。粉末化したボルテゾミブをおよそ100mMの脂質中に1.88mg/mLのボルテゾミブという最終濃度で(押し出し時の脂質濃度であり、薬物充填前には測定していない)リポソーム懸濁液に添加し、混合物を一晩(およそ16時間)、穏やかに振盪しながら室温(22〜25℃)でインキュベートした。
【0096】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。結果を図5に示し、ここで被包効率は約95%に達した。
【0097】
(実施例5)
ボルテゾミブを含有するリポソームの薬物動態学的特徴
3種のリポソーム製剤を成分濃度を以下の表に記載の薬物/脂質比になるよう調節したことを除いて、実施例4に記載のように調製した。
【0098】
【表3】
【0099】
3群のマウス(n=9)を製剤番号1、2、又は3のリポソーム製剤を静脈内注入することにより処置した。注入の5分、3時間、及び24時間後に、それぞれの群の3匹のマウスから血液を採取。血液をボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図6に示す。
【0100】
(実施例6)
種々の脂質濃度を有するリポソームの特徴付け
A.卵スフィンゴミエリンリポソーム製剤
リポソームを卵スフィンゴミエリン及びコレステロール(55:45)の脂質混合物、卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE(50:45:5)の脂質混合物、又は卵スフィンゴミエリンのみを、300mMメグルミン及び300mM酢酸の水和緩衝液(pH7.0)で水和したことを除いて、実施例1に記載のように調製した。水和後の脂質濃度は約100mMであった。
【0101】
それぞれのリポソーム懸濁液の外側の緩衝液を透析により、150mM NaCl/100mM HEPESの緩衝液(pH7.0)に交換した。
【0102】
粉末化したボルテゾミブを1mg/mLのボルテゾミブ濃度でそれぞれのリポソーム懸濁液に添加した。薬物充填を一晩(10〜12時間)、振盪しながら、20〜25℃でインキュベートすることにより実施した。
【0103】
インキュベート後、リポソームを検査し、捕捉されたボルテゾミブの量を決定した。3種全ての製剤で少なくとも約99%の被包効率が達成された。90°で動的光散乱法により決定したリポソームの粒径は179nm(卵スフィンゴミエリン/コレステロール/mPEG−DSPE)、266nm(卵スフィンゴミエリン/コレステロール)及び139nm(卵スフィンゴミエリン)であった。それぞれの製剤の薬物濃度は約0.9mg/mLであった。
【0104】
リポソーム組成物を5/95 v/vリポソーム懸濁液/血液比で、ラットの全血に添加した。血液中の薬物濃度は5.5μg/mLであった。血液/リポソーム混合物を37℃でインキュベートし、1時間、3時間、6時間、及び24時間でサンプルを採取し、5,000rpmで遠心分離し、上清をLC−MSを用いてボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図7に示す。結果は全血とともにインキュベートしたとき、被包されたボルテゾミブが容易にリポソームから漏れ出したことを示した。
【0105】
B.ホスファチジルコリンリポソーム製剤
リポソームをそれぞれのアシル鎖に20、22、又は24個の炭素原子を有するホスファチジルコリン脂質を用いて調製した。以下の表は脂質に関するいくつかの詳細を準備し、比較のためにC18(HSPC)脂質を含んだ。
【0106】
【表4】
【0107】
以下の脂質組成を有するリポソーム製剤を調製した。
【0108】
【表5】
【0109】
粉末化したボルテゾミブを製剤番号4及び5に添加し、100mM HEPES及び50mM NaClに可溶化したボルテゾミブ溶液(pH6.5)を製剤番号6〜8の充填に用いた。混合物を、振盪しながら20〜25℃で3日間(製剤番号4)、20〜25℃で3日間+50℃で1時間(製剤番号5)、45℃で30分間(製剤番号6)、50℃で30分間(製剤番号7及び8)インキュベートした。
【0110】
16.5μLのリポソーム製剤番号2(実施例5)及び20μLのリポソーム製剤番号4をそれぞれ30μL又は33.5μLの緩衝液(100mM HEPES、150mM NaCl、pH7)とともに、それぞれ950μLのラット全血に添加した。対照として、3.5mg/mLの遊離ボルテゾミブを45μLの緩衝液とともに、950μLのラット全血に添加した。サンプルを17℃又は37℃でインキュベートし、サンプルを24時間にわたって種々の時点で採取し、5,000rpmで遠心分離し、上清をLC−MSを用いてボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図8A、8Bに示す。
【0111】
製剤番号4、6、7、及び8をマウスに静脈内投与した。血液サンプルを注入の5分、30分、1時間、2時間、及び4時間後に採取した。血漿をボルテゾミブ濃度について分析した。結果を図9に示す。
【0112】
別の研究では、製剤番号4及び5の薬物動態を正常ラットで評価した(0.1mg/kgで静脈内ボーラス、n=3/群)。血漿薬物濃度をLC−MSアッセイで決定し、結果を図13に示す。最初の時間点は製剤注入後5分以内に収集した。結果は、20:0PC及び22:0PCの両方で調製したリポソーム製剤が類似するPKプロファイルを有することを示す。この結果は重要である、なぜなら、炭素数20のアシル鎖を用いて調製したリポソーム製剤は薬物及び脂質の分解を低減するという観点で炭素数22のアシル鎖を用いて調製したものより好ましく、更にリポソーム製剤中で炭素数20のアシル鎖脂質を用いるとPKプロファイルに悪影響を与えないためである。したがって、より低い加工温度であり、炭素数の少ないアシル鎖を用いて調製したリポソーム製剤はスケールアップが容易である。
【0113】
別の研究では、製剤4及び5、並びに製剤4に類似しているが、DSPEの代わりにPEGに結合したDSを用いるリポソームボルテゾミブの抗腫瘍有効性を、異種移植片CWR22腫瘍を持つSCIDマウスで評価した。薬物投薬量は0.6mg/kg(n=10)であり、毎週、4回静脈内投与した。腫瘍の大きさを測定し、結果を図14に示す。3種のリポソーム製剤全て(製剤番号4、逆三角形、製剤番号5、丸、22:0PC/mPEG−DSを含む製剤、菱形)の有効性は、遊離ボルテゾミブ(ベルケード(VELCADE)、三角形)より著しく良好であった。3種のリポソーム製剤間で統計的差は見られなかった。
【0114】
(実施例7)
リポソームに捕捉されたボルテゾミブのインビボ活性
C22:0PC及びmPEG−DSPE(95/5モル比)の混合物をエタノールに溶解させた。脂質溶液を中性の、400mMメグルミン、400mM酢酸の水和緩衝液を用いて、振盪しながら30分間80〜85℃で水和して、リポソームを形成した。脂質分散液を0.1μmまで孔径を減少させながら、2つの積層ヌクレオポア(Nucleopore)(カリフォルニア州、プレザントン(Pleasanton))膜を通して圧力下で押し出した。
【0115】
リポソーム懸濁液の外側の緩衝液を透析により、pH7.0、150mM NaCl/100mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸ナトリウム(HEPES)の緩衝液に交換した。
【0116】
ボルテゾミブの100mM HEPES及び50mM NaCl、pH6.5溶液を、0.61mg/mLのボルテゾミブ/50mMの脂質の比でリポソーム懸濁液に添加し、混合物を30分間振盪しながら45℃でインキュベートした。被包効率は約95%であると決定された。滅菌濾過後の最終薬物の効力は0.498mg/mLであり、リンアッセイによりアッセイしたときの脂質濃度は52mMであった。90°で動的光錯乱法により決定した薬物充填後のリポソーム粒径は117nmであった。
【0117】
CWR22腫瘍を持つ雄SCIDマウスを、0.8mg/kgの投薬量で、ボルテゾミブ又はリポソームに捕捉されたボルテゾミブを静脈内投与することにより処置する、2つの試験群にランダムにグループ化した。血液及び腫瘍サンプルを種々の時点で採取した。血液、血漿及び腫瘍細胞中のボルテゾミブ濃度をLC−MSにより決定した。結果を図11A〜11Cに示す。
【0118】
多くの代表的な態様及び実施形態を上記で論じたが、当業者はその特定の修正、置換、追加、及びそれらの組み合わせを認識するであろう。それ故、以下に添付する特許請求の範囲及び以後に導入する特許請求の範囲は、全てのこのような修正、置換、追加、及びそれらの組み合わせを含むと解釈され、その真の趣旨及び範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質と、リポソーム内に捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソームを含んでなり、該化合物がメグルミンとの複合体の形態であるリポソーム製剤。
【請求項2】
前記リン脂質が非対称なリン脂質又は対称なリン脂質である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記リン脂質が前記アシル鎖の少なくとも1本に20個の炭素原子を有する請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記リン脂質が飽和リン脂質である請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールから選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記リン脂質が1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)である請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記リン脂質が1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)である請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記リポソームが親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含む請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールである請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記親水性ポリマーに共有結合したリン脂質がジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコールである請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
前記ボロン酸化合物がペプチドボロン酸化合物である請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記ボロン酸化合物がボルテゾミブ(bortezomib)である請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記リポソームが捕捉された酢酸を更に含んでなる請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
それぞれ20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームを準備し、該リポソームがその中に捕捉されたメグルミンを有し、
リン脂質の相転移温度より低い温度で、ボロン酸化合物の存在下にリポソームをインキュベートし、
該インキュベートがボロン酸化合物のリポソームへの取り込みを達成するのに有効である、
捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソームの調製方法。
【請求項15】
前記準備がホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールから選択されるリン脂質を含んでなるリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記準備が1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)及び1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)から選択されるリン脂質を含んでなるリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベートがペプチドボロン酸化合物の存在下でインキュベートすることを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドボロン酸化合物がボルテゾミブである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記準備が親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含むリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記準備がリン脂質に結合した親水性ポリマーポリエチレングリコールを有するリポソームを準備することを含んでなる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インキュベートがリポソーム中に90%を超えるボロン酸化合物を取り込ませるのに有効である請求項14に記載の方法。
【請求項1】
それぞれの鎖に20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質と、リポソーム内に捕捉されたボロン酸化合物とを含んでなるリポソームを含んでなり、該化合物がメグルミンとの複合体の形態であるリポソーム製剤。
【請求項2】
前記リン脂質が非対称なリン脂質又は対称なリン脂質である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記リン脂質が前記アシル鎖の少なくとも1本に20個の炭素原子を有する請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記リン脂質が飽和リン脂質である請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールから選択される請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記リン脂質が1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)である請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記リン脂質が1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)である請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記リポソームが親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含む請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールである請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記親水性ポリマーに共有結合したリン脂質がジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコールである請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
前記ボロン酸化合物がペプチドボロン酸化合物である請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記ボロン酸化合物がボルテゾミブ(bortezomib)である請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記リポソームが捕捉された酢酸を更に含んでなる請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
それぞれ20〜22個の炭素原子を有する2本のアシル鎖を有するリン脂質を含んでなるリポソームを準備し、該リポソームがその中に捕捉されたメグルミンを有し、
リン脂質の相転移温度より低い温度で、ボロン酸化合物の存在下にリポソームをインキュベートし、
該インキュベートがボロン酸化合物のリポソームへの取り込みを達成するのに有効である、
捕捉されたボロン酸化合物を有するリポソームの調製方法。
【請求項15】
前記準備がホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールから選択されるリン脂質を含んでなるリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記準備が1,2−アラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)及び1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)から選択されるリン脂質を含んでなるリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベートがペプチドボロン酸化合物の存在下でインキュベートすることを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドボロン酸化合物がボルテゾミブである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記準備が親水性ポリマーに共有結合したリン脂質を更に含むリポソームを準備することを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記準備がリン脂質に結合した親水性ポリマーポリエチレングリコールを有するリポソームを準備することを含んでなる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インキュベートがリポソーム中に90%を超えるボロン酸化合物を取り込ませるのに有効である請求項14に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−536874(P2010−536874A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522020(P2010−522020)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073840
【国際公開番号】WO2009/026427
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510046310)アルザ・コーポレーシヨン (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073840
【国際公開番号】WO2009/026427
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510046310)アルザ・コーポレーシヨン (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]