説明

ボーリング用ロッド

【課題】掘削時に掘削坑の内面との摩擦によって生じる負荷トルクを低減して薄肉化を可能にし、軽量化及びコスト低減に寄与するとともに、可撓性を期待できるボーリング用ロッドを提供する。
【解決手段】掘削ドリル12の上端側に順次連結されて掘削ドリル12と一体に回転しながら土中に貫入されるパイプ状のボーリング用ロッドにおいて、隣接するロッド11と着脱自在に連結される両端部分11a,11bの外周径及び肉厚を、該両端部11a,11b間に位置する中間部分11cの外周径及び肉厚よりも大きく形成したボーリング用ロッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボーリング用ロッドに関するものであり、特に、土中を深く坑状に掘削するボーリングマシンにおける掘削ドリルの上端側に取り付けられて、該掘削ドリルと一体に回転しながら土中に貫入されるボーリング用ロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土中を深く坑状に掘削するボーリングマシンにおける掘削ドリルの上端側に取り付けられて、該掘削ドリルと一体に回転しながら土中に貫入されるパイプ状のボーリング用ロッドは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来におけるパイプ状のボーリング用ロッドの外形は、両端間に亘ってほぼ同一径を有して形成されており、掘削回転時には該ボーリング用ロッドの全ての外周面が掘削坑の内周面と接触した状態で回転する構造になっている。
【特許文献1】特開平2001−115766号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の外形が両端間に亘って同一径で形成されているボーリング用ロッドでは、掘削回転時に該ボーリング用ロッドの全ての外周面が掘削坑の内周面と接触した状態で回転することになるので、掘削坑の内周面との接触摩擦による負荷トルクが大きくなる。このため、ボーリング用ロッドを回転させる駆動装置の負担も大きく、問題となっている。
【0005】
また、ボーリング用ロッドへの負荷が大きいことからパイプ全体の肉厚を大きくして強度を確保している。このため、材料の使用量が多く、かつ、重量も大きくなるので、材料費及び輸送コストが大になるとともに現場での着脱作業等も面倒であった。
【0006】
さらに、今日では、直線方向への掘削だけでなく、ボーリング用ロッド自体を屈曲させて直線以外の方向に掘削する作業も少なくない。この場合、パイプの肉厚が大きいと剛性も大きくなり、ボーリング用ロッドを屈曲させるのが難しいという問題があった。
【0007】
そこで、掘削時に掘削坑の内面との摩擦によって生じる負荷トルクを低減して薄肉化を可能にし、軽量化及びコスト低減に寄与するとともに、可撓性を期待できるボーリング用ロッドを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、回転しながら土中に貫入されるパイプ状のボーリング用ロッドにおいて、隣接するロッドと着脱自在に連結される両端部分の外周径及び肉厚を、該両端部間に位置する中間部分の外周径及び肉厚よりも大きく形成したボーリング用ロッドを提供する。
【0009】
この構成によれば、中間部分の外周径は両端部分の外周径よりも小さいので、掘削による回転時、掘削坑の内周面には主として両端部分の外周面が接触し、この間に位置する中間部分は掘削坑の内周面から離れた状態で回転することになる。このため、ボーリング用ロッド全体に加わる摩擦トルクが低減されて負荷トルクが小さくなる。而して、負荷トルクが小さくなることから、中間部分の肉厚を薄くすることが可能になる。また、中間部分の肉厚を薄くすることによって可撓性を期待できる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記両端部の内周面に螺子部を設けたボーリング用ロッドを提供する。
【0011】
この構成によれば、肉厚の大きな両端部分の内周面に螺子部が設けられ、該螺子部に管継手ブラケットを介してボーリング用ロッドが順次連結される。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、上記アウターチューブを冷間引き抜き加工により形成したボーリング用ロッドを提供する。
【0013】
この構成によれば、冷間引き抜き加工されたボーリング用ロッドが得られる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、中間部分の肉厚を薄く形成しているので、軽量化が図れ、駆動部へのトルク負担を軽減することができる。また、軽量化が可能になるとともに、材料費を少なくしてコスト低減に寄与する。さらに、可撓性が期待でき、掘削部等における直線方向以外の掘削作業も容易になり、作業性が向上する。
【0015】
請求項2記載の発明は、肉厚の大きな両端部分の内周面に螺子部を設けているので、該螺子部と管継手ブラケットを介してボーリング用ロッドが順次連結されるとともに、該螺子部を設けた部分の強度が低下するというような問題が避けられ、請求項1記載の発明の効果に加えて、連結強度の信頼性が向上する。
【0016】
請求項3記載の発明は、冷間引き抜き加工によりコスト低減が可能になるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、さらに経済性の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、掘削時に掘削坑の内面との摩擦によって生じる負荷トルクを低減して薄肉化を可能にし、軽量化及びコスト低減に寄与するとともに、可撓性を期待できるボーリング用ロッドを提供するという目的を達成するために、回転しながら土中に貫入されるパイプ状のボーリング用ロッドにおいて、隣接するロッドと着脱自在に連結される両端部分の外周径及び肉厚を、該両端部間に位置する中間部分の外周径及び肉厚よりも大きく形成したことにより実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明のボーリング用ロッドについて、好適な実施例をあげて説明する。図1乃至図3は本実施例を示すボーリング用ロッドで、図1は該ボーリング用ロッドの側面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図である。
【0019】
図1乃至図3において、ボーリング用ロッド11は、内周面に雌の螺子部12を設けている両端部分11a,11bと、該両端部分11a,11bの間に位置する中間部分11cを、一体に有してなるパイプ状のボーリング用ロッドである。また、前記両端部分11a,11bの外周径D1は前記中間部分11cの外周径D2よりも大きく、かつ、該両端部分11a,11bの肉厚が該中間部分11cの肉厚よりも厚く形成されている。さらに、中間部分11cと隣接している前記両端部分11a,11bの一部の外周径は、該中間部分11cに向かって徐々に小さく形成されている。
【0020】
なお、前記ボーリング用ロッド11は、例えば冷間引き抜き加工によって形成され、形成後、両端部11a,11bの内周面に前記螺子部12が各々設けられるが、これ以外の加工法でボーリング用ロッド11及び螺子部12を形成してもよい。而して、掘削に伴ってボーリング用ロッド11を継ぎ足す場合は、例えば図4及び図5に示すように、接続し合うボーリング用ロッド11とボーリング用ロッド11との間に管継手ブラケット13を介在させて連結することにより、同図に示しているようにボーリング用ロッド11を順次継ぎ足しすることができる。すなわち、該管継手ブラケット13の両端部外周面には雄の螺子部14が設けられており、該管継手ブラケット13の螺子部14とボーリング用ロッド11の螺子部12とは互いに螺合連結できる構造になっている。
【0021】
また、該連結状態にあるボーリング用ロッド11,11…は、掘削時、図示しない駆動装置の駆動により掘削ドリル(図示せず)と共に回転しながら土中に貫入されて行く。このとき、該ボーリング用ロッド11は、中間部分11cの外周面の径が両端部分11a,11bの外周面の径よりも小さく、該中間部分11cの外周面が該両端部分11a,11bの外周面よりも内側に凹んだ状態となっているので、該掘削回転時、掘削坑10(図4に示す)の内周面には主として両端部分11a,11bの外周面が接触し、中間部分11cの外周面は掘削坑10の内周面から離れた状態で回転する。これにより、該ボーリング用ロッド11,11…と掘削坑10との間に発生する摩擦力が小さく、該ボーリング用ロッド11,11…及び掘削ドリル等を回転させる駆動装置に与える負荷トルクを小さく抑えることができる。
【0022】
したがって、本実施例のボーリング用ロッド11を使用したボーリングマシンでは、駆動装置への負担を軽減させることができる。
【0023】
また、負荷トルクが小さくなることから中間部分11cの肉厚を薄くすることが可能になり、ボーリング用ロッド11の軽量化及び材料費の低減が期待できる。
【0024】
さらに、中間部分11cの肉厚を薄くすることによって可撓性が期待でき、ボーリング用ロッド11を屈曲させて直線方向以外の掘削も可能になるので、作業性の向上が期待できる。
【0025】
また、さらに肉厚の大きな両端部分11a,11bの内周面に螺子部12を設けているので、該螺子部12と管継手ブラケット13を介してボーリング用ロッド11を順次連結することができるとともに、該螺子部12を設けた部分の強度が低下するというような問題も避けられ、連結強度の信頼性が向上する。
【0026】
図6に前記ボーリング用ロッド11を形成する冷間引き抜き加工装置の一例を示す。該冷間引き抜き加工装置30は、最終的に前記ボーリング用ロッド11を形成するパイプ状管材40をダイス31とプラグ32によって引く抜き縮径部分を示している。該冷間引き抜き加工装置30は、前記ダイス31を固定しているダイス固定部33と前記プラグ32を固定しているロッド34とを備え、また、該ロッド34を矢印E方向に往復移動させるロッド移動手段(図示せず)、及び、管材40を矢印F方向に引っ張る管材引っ張り手段(図示せず)とを有している。
【0027】
前記ダイス31には、中央の挿入孔部31aと、該中央挿入孔部31aから引き抜き先端側に向かって徐々に内径が大きくなるように形成されている前側挿入孔部31bと、該挿入孔部31aから引き抜き後端側に向かって徐々に内径が大きくなるように形成されている後側挿入孔部31cが設けられている。
【0028】
前記プラグ32は、大径部32aとテーパ部32bを有した前側プラグ部35と、小径部32cとテーパ部32dと大径部32eを有した後側プラグ部36が軸方向へ順に並んで一体に形成されている。そして、該大径部32fの後端側に前記ロッド34が取り付けられ、小径部32cを前記ダイス31の中央挿入孔部31aに配置し、前記ロッド34により保持されている。
【0029】
而して、該冷間引き抜き加工装置30は、図示しない引っ張り手段により管材40を引っ張りながらダイス31内を通す。このとき該管材40内に配置されているプラグ32が、図示しないロッド移動手段の操作によりロッド34と一体に前後方向に移動され、ダイス31とプラグ32との間に該管材40を挟んで成形し、図1乃至図3に示す形状をしたボーリング用ロッドを形成する。その後、螺子部12を設けると図1乃至図3に示すボーリング用ロッド11を完成することができる。
【0030】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、ボーリング用ロッドの側面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】使用状態で示す本実施例に係るボーリング用ロッドの側面図。
【図5】使用状態で示す本実施例に係るボーリング用ロッドの縦断面図。
【図6】本実施例に係るボーリング用ロッドを冷間引き抜き加工する装置の横断面図。
【符号の説明】
【0032】
11 ボーリング用ロッド
12 螺子部
11a,11b 両端部分
11c 中間部分
12 螺子部
13 管継手ブラケット
14 螺子部
D1 両端部分の外周径
D2 中間部分の外周径
30 冷間引き抜き加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら土中に貫入されるパイプ状のボーリング用ロッドにおいて、
隣接するロッドと着脱自在に連結される両端部分の外周径及び肉厚を、該両端部間に位置する中間部分の外周径及び肉厚よりも大きく形成したことを特徴とするボーリング用ロッド。
【請求項2】
上記両端部の内周面に螺子部を設けたことを特徴とする請求項1記載のボーリング用ロッド。
【請求項3】
上記アウターチューブを冷間引き抜き加工により形成したことを特徴とする請求項1または2記載のボーリング用ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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