説明

ボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置

【課題】プレス装置のように高い主荷重と低い非主荷重が繰り返し加わる用途であっても優れた耐久性および信頼性を発揮できる新規なボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置の提供。
【解決手段】(a)ボールが一方のねじ溝に密着した状態で当該ボールと他方のねじ溝とのラジアル隙間をボール径の1/300〜1/1200にし、(b)ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%とし、(c)ラジアル隙間のない場合のボールと主荷重側のねじ溝との初期接触角を35°〜43°とし、(d)ラジアル隙間のない場合のボールと非主荷重側のねじ溝との初期接触角を44°〜60°とする。これによって、プレス機として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大荷重においてもボールの乗り上げが発生することがなく、優れた耐久性および信頼性を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り機構の1つであるボールねじ装置に係り、特にプレス機などのようにストロークが短く(例えば、2リード以下)、かつ高荷重負荷が繰り返しかかる機器に最適なボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プレス機や射出成型機などでは油圧シリンダに代わりモータでボールねじを駆動して荷重を発生させる構成が増加しているが、ボールねじを用いた場合には、その耐久性や寿命が問題となってくる。
例えば、射出成型機に代表される用途では、数〜数十ストローク(ボールねじが数〜数十回転する)駆動される間、大きな荷重がボールねじに付与される。このため、ボールねじには射出成型機として設定されたショット数(型締めや射出の回数)まで剥離などが生ずることなく使用できる寿命が必要とされる。
このような要求に応じるためには、ねじ溝曲率をボール径にできるだけ近く設定して負荷容量を増加させて長寿命になる設計が行われていた。
【0003】
しかし、板金などの曲げ加工や打ち抜き加工などのプレス機用では、1mm以下から数mm程度の板材を加工するため、ボールねじに力がかかるストローク長は、射出成型機よりも小さく、高負荷容量用ボールねじの通常リード(16〜32mm)より小さくなる。そのため、これらのプレス機用のボールねじでは、1ショット当たりに移動する距離が短くなり、同じ荷重であれば射出成型機用のボールねじの数倍から数十倍のショット数まで耐えられる。
このため、寿命までのシャット数は射出成型機より大きくなり、同寸のボールねじを用いると要求寿命より遙かに長い寿命となることから、ボールねじをダウンサイズして要求寿命と計算寿命を合わせられれば、プレス機のコンパクト化を図ることができる。
【0004】
しかし、現状の設計でサイズダウンを行うと要求寿命は満足するものの、大きな荷重が負荷されるため、ボールがねじ溝肩部に乗り上げ、ねじ溝肩部を破損させる可能性が高まる。従って、このリスクを回避するため、今までは計算寿命が要求寿命より非常に長くなってもサイズの大きなボールねじを使用せざるを得なくなり、装置をコンパクトにできないといった問題があった。
一方、以下の特許文献1〜3などでは、ボールとねじ溝との初期接触角に着目し、その初期設定角を調整することで、ボールのねじ溝肩部への乗り上げを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−68996号公報
【特許文献2】特開2006−105308号公報
【特許文献3】特開2002−276765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1〜3のようにボールとねじ溝との初期接触角を調整しただけでは、高荷重用途に用いた場合に充分な耐久性と信頼性を発揮することが困難である。
すなわち、高荷重が加わった場合には、ボールとねじ溝との接触角は、ラジアル隙間との関係により上方に変化するため、単に初期接触角のみを調整してもボールのねじ溝肩部への乗り上げを防止することはできない。また、ボールとねじ溝との接触楕円の長径寸法がねじ溝肩部に乗り上げるか否かが重要であるため、ボールとねじ溝曲率との関係も重要となってくる。
そこで、本発明は前記のような従来技術が有する問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、プレス機などのように高い主荷重と低い非主荷重が繰り返し加わる用途であっても優れた耐久性および信頼性を発揮できるボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題解決するために第1の発明は、
外周に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、内周に前記ねじ軸のねじ溝と対向するように螺旋状のねじ溝を有するナットとを有し、前記両ねじ溝間に複数のボールを転動自在に配設したボールねじ装置であって、
(a)前記ボールが一方のねじ溝に密着した状態で当該ボールと他方のねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200にすること、(b)前記ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%とすること、(c)前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと主荷重側のねじ溝との初期接触角を35°〜43°とすること、(d)前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと非主荷重側のねじ溝との初期接触角を44°〜60°とすること、といった全ての条件を満たすことを特徴とするボールねじ装置である。
【0008】
ここで、(a)の条件、すなわち前記ボールが一方のねじ溝に密着した状態で当該ボールと他方のねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200としたのは、この隙間が1/300を超えると、ボールとねじ溝との接触角が上昇し、高荷重が加わった際にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからであり、その一方、1/1200未満では、その隙間が小さすぎて管理が困難となるからである。より望ましくは、ボールとねじ溝とのラジアル隙間は、1/500〜1/1000の範囲である。
【0009】
また、(b)の条件、すなわち、前記ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%と規定したのは、後に実証するように51.5%未満では、最大荷重負荷時にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからであり、反対に54.0%を超えると、プレス機に適用した場合に必要な寿命を発揮するのが難しくなるからである。より望ましくは、この曲率は52.0%〜53.0%の範囲である。
【0010】
また、(c)の条件、すなわち、前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと主荷重が作用する側のねじ溝との初期接触角を35°〜43°としたのは、同じく後に実証するように、35°未満では、本発明をプレス機に適用した場合に必要な寿命を発揮するのが難しくなり、反対に43°を超えると、最大主荷重負荷時にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからである。より望ましくは、この初期接触角は約40°である。
なお、ここで主荷重とは、本発明のボールねじ装置をプレス機などの一方向に大荷重を作用させて加圧するような装置に適用した場合のその大荷重をいい、また、主荷重が作用する側とは、この主荷重が前記ボールを介して直接作用するねじ溝の一方の面(円弧)をいう。
【0011】
さらに、(d)の条件、すなわち、前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと非主荷重側のねじ溝との初期接触角を44°〜60°としたのは、プレス機などの一方向に大荷重を作用させて加圧する用途では、バックラッシなどをあまり気にしないため、ねじ溝とボールとのラジアル隙間設定が大きい場合が殆どである。
その場合、接触角が60°を超えると小さな荷重でもボールが溝肩部に乗り上げてしまうからである。そして、このように接触角が60°では、戻り側の荷重が主荷重の20%程度までボールが溝肩部に乗り上げることはない。
【0012】
一方、この接触角が44°未満では、ボールが溝肩部に乗り上げてしまうのを防止することはできるが、定格荷重が低下してしまうため、長寿命を発揮するのが難しくなるからである。
なお、ここで非主荷重とは、プレス機の戻り時などに発生する前記主荷重の反対方向の荷重をいい、また、この非主荷重が作用する側とは、この非主荷重が前記ボールを介して直接作用するねじ溝の他方の面(円弧)をいう。
【0013】
つまり、このように非主荷重側では、主荷重側のように大きな荷重が作用しないため、その戻り側のねじ溝をボールとの接触角を大きくすることで定格荷重を増加させて寿命を確保するようにしたものである。
また、第2の発明は、
発明1のボールねじ装置をプレス型の送り機構として用いたことを特徴とするサーボプレス装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記(a)〜(c)の条件を満足することによって、プレス機として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大荷重においてもボールの乗り上げが発生することがなく、優れた耐久性および信頼性を発揮することができる。
また、さらに前記(d)の条件を満足することによって、主荷重とは反対方向に作用する非主荷重側である戻り側のねじ溝とボールとの接触角を主荷重側よりも大きくできるため、定格荷重が増加して寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るボールねじ装置100の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係るボールねじ装置100のボールBとねじ溝30(40)との関係などを示す概念図である。
【図3】本発明に係るボールねじ装置100に主荷重が作用した場合のボールBとねじ溝30(40)との位置関係などを示す概念図である。
【図4】本発明に係るボールねじ装置100に非主荷重が作用した場合のボールBとねじ溝30(40)との位置関係などを示す概念図である。
【図5】本発明に係るボールねじ装置100を用いたサーボプレス装置200の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1乃至図4は、本発明に係るボールねじ装置100の実施の一形態を示したものである。
図示するようにこのボールねじ装置100は、 外周に螺旋状のねじ溝40を有するねじ軸10と、内周に前記ねじ軸10のねじ溝40と対向するように螺旋状のねじ溝30を有するナット20とを有し、前記両ねじ溝30,40内に転動体となるボールBを複数、転動自在に配設した構造となっている。
【0017】
また、このナット20の側面には、これを貫通するようにリターンチューブ50,50が設けられており、両ねじ溝30,40内を転動してきたボールBを貫通孔22を介してナット20外に抜き出してから再び両ねじ溝30,40内に戻すように循環するようになっている。
図5は、このような構成をしたボールねじ装置100をプレス型の送り機構として用いたサーボプレス装置200の一例を示したものである。
【0018】
図示するように、このサーボプレス装置200は、鉄骨製の堅牢な機台110に対して、このボールねじ装置100を垂直方向に備えた構成となっている。すなわち、このボールねじ装置100のねじ軸10の上端側は、軸受92およびロックナット93によって機台110に垂直方向に軸支されており、そのねじ軸10の上端にはプーリー80が設けられている。また、ナット20には、プレス上型90が取り付けられている。このプレス上型90は、ナット20のフランジ21に設けられたボルト孔(図示せず)に通したボルト(図示せず)によってナット20に一体的に固定されている。
【0019】
そして、このねじ軸10上端のプーリー80(ねじ軸10)を機台110に設けられたサーボモータ60とタイミングベルト70によって回転させてナット20を上下動させることによって、プレス上型90とその下部に固定されたプレス下型91とを近接離間させて所定のプレス加工(板金の曲げ、打ち抜きプレス(プレスブレーキ、パンチングプレス、ベンダーなど)など)を行うことになる。
【0020】
従って、このような構成をしたサーボプレス装置200にあっては、プレス上型90をプレス下型91側に接近(降下)させてプレスを行うごとに、このボールねじ装置100に対して大きな主荷重が繰り返し掛かり、反対にプレスを終えてプレス上型90をプレス下型91側から離す(上昇)ごとに、このボールねじ装置100に対して主荷重方向とは反対方向の非主荷重、すなわちプレス上型90自体の荷重などが繰り返し掛かることになる。
【0021】
このようなサーボプレス装置200に適用されるボールねじ装置100にあっては、図2に示すように、先ず、ボールBが一方のねじ溝30(40)に密着したときの他方のねじ溝40(30)とのラジアル隙間Sがこのボール径dの1/300〜1/1200の大きさに設定されている。
具体的には、このボールBの径が3/8インチ(9.525mm)であるとすると、このラジアル隙間Sは、約30μm〜8μmとなる。但し、このボールBの径が1インチであるとすると、このラジアル隙間Sは、約85μm以下でその下限は、管理が容易な最小値である20μm以上となる。
【0022】
なお、このラジアル隙間Sとは、図2に示すようにボールBをナット20のねじ溝30の2つの円弧30a、30bに接触するように配置し、ねじ軸10を点線の位置まで移動させてねじ軸10側のねじ溝40の2つの円弧30a、30bをボールBと接触させ、次に、このねじ軸10およびナット20のねじ溝30,40とボールBが4点で接触している状態でナット20をねじ軸10の軸線と垂直な方向に移動させたときに動き得る距離をいう。
【0023】
次に、図示するようにこのねじ溝30および40の断面形状は、それぞれ2つの円弧30a、30b、40a、40bで形成されるゴシックアーク形状となっていると共に、各円弧30a、30b、40a、40bの曲率Cは、前記ボール径dに対して51.5%〜54.0%の範囲となっている。
また、図2および図3に示すようにこれら互いに対向するねじ溝30、40のうち、ラジアル隙間Sのない場合に前記ボールBと接触する主荷重側の各円弧30a、40aの初期接触角βは、ねじ軸10の半径方向に対して35°〜43°の範囲となっている。
【0024】
以下の表1は、ボールねじを図5に示したようなプレス装置200に適用した場合に必要な寿命を満足する、ねじ溝曲率CおよびボールBとねじ溝30、40の各円弧30a、40aとの接触角βの関係を示したものである。また、以下の表2は、最大主荷重負荷時にボールBがねじ溝肩部に乗り上げることがない、ねじ溝曲率CおよびボールBとねじ溝30、40の各円弧30a、40aとの接触角βの関係を示したものである。
【0025】
ここで、各表中、塗り潰し領域が各条件を満足する範囲であり、また、表2はボールBが循環する部分の配列や、ねじ軸10とナット20との軸方向弾性変形量を考慮した。
また、この評価に用いたボールねじ装置としては、軸径φ63mm、リード16mm、循環巻き数2.5巻3列、ボール径1/2インチ仕様のボールねじを用い、最大荷重150kN、要求寿命1000万サイクルとして実験を行った。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
この結果、先ず表1に示すように、本発明のボールねじ装置100を図5に示すようなプレス装置200に用いた場合に必要な寿命を満足するボールBとねじ溝30、40の主荷重側の円弧30a、30bとの初期接触角βをみてみると、ねじ軸10の半径方向に対して少なくとも30°以上必要であることがわかる。
また、これら円弧30a、40aの曲率Cは、前記ボール径dに対して少なくとも曲率比(×100)で0.550(55.0%)以下が必要なことがわかる。
【0029】
従って、本発明のボールねじ装置100をプレス装置用に用いた場合に必要な寿命を満足するねじ溝曲率と、ボールとねじ溝との接触角との関係を調べてみると、同表の塗り潰し範囲に示したように、ねじ溝30、40の主荷重側の円弧30a、40aではボールBとの初期接触角βが30°以上、かつねじ溝曲率が55.0%以下が必要であることがわかる。
【0030】
一方、表2に示すように、最大荷重負荷時にボールBがねじ溝肩部に乗り上げることがないボールBとの接触角βと、ねじ溝曲率Cとの関係をみてみると接触角βが小さく、かつねじ溝曲率Cが大きい領域ほど良好な結果が得られることがわかる。
従って、本発明装置100をプレス装置に用いて図3に示すように主荷重を加えた場合に、これら両方の特性を満足する範囲としては、表1および表2の塗り潰し領域のうち、それぞれ太い実線で囲んだ重なり合った領域の範囲にすることが望ましい。
【0031】
すなわち、上述したようにラジアル隙間Sのない場合の前記ボールBと主荷重側のねじ溝30,40の各円弧30a、30bとの初期接触角βがねじ軸10の半径方向に対して35°〜43°の範囲で、かつねじ溝30,40の円弧30a、40aの曲率Cが前記ボール径dに対して51.5%〜54.0%の範囲とすることが望ましい。
より好ましくは、表1および表2の太い実線で囲んだ領域の略中央の領域である、初期接触角αが約40°±1°、かつねじ溝30,40の溝曲率Cが52.0%〜53.0%とすることが望ましい。
【0032】
他方、図2および図4に示すようにこれら互いに対向するねじ溝30、40のうち、ラジアル隙間Sのない場合に前記ボールBと接触する非主荷重側の円弧30b、40bの初期接触角αは、ねじ軸10の半径方向に対して44°〜60°の範囲となっている。
以下の表3および表4は、この非主荷重側の各円弧30b、40bとボールBとの初期接触角α(縦軸)と前記の主荷重側の円弧30a、40aとボールBとの初期接触角β(横軸)との動定格荷重比および寿命比の関係をそれぞれ示したものである。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
表3からもわかるように図4に示すような非主荷重側のねじ溝30、40の各円弧30b、40bの初期接触角αを大きくすればするほど動定格荷重を大きくすることができ、最小の動定格荷重の約1.5倍程度まで増加することができる。
また、表4に示すようにこの初期接触角αを大きくすればするほど寿命を延ばすことができ、60°では最小寿命の約3倍程度まで延ばすことができる。なお、前述したようにこの初期接触角αが60°を超えると、小さい負荷(非主荷重)がかかった場合でもボールBがねじ溝肩部に乗り上げてしまいやすくなるため望ましくない。
このように本発明のボールねじ装置100およびこれを備えたサーボプレス装置200にあっては、プレス装置として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大主荷重が加わった場合でもボールBがねじ溝肩部に乗り上げるようなことがなく、ねじ溝肩部の破損などを回避できる。
【0036】
また、図4に示すように主荷重とは反対方向に作用する非主荷重側である戻り側のねじ溝の円弧30b、40bについて、そのボールBとの初期接触角αを主荷重側よりも大きくしたことから、定格荷重が増加して長寿命を発揮することができる。
従って、本発明のボールねじ装置100は、プレス装置のような高い主荷重と低い非主荷重が繰り返し加わり、かつストロークが短い機器に用いた場合に特に優れた耐久性および信頼性を発揮することができる。
なお、表1および表2からもわかるように、溝曲率C:0.510、接触角β:25°〜30°の範囲もオーバーラップ範囲であって両特性を満足するが、この範囲はボール径dに対して溝曲率Cが非常に小さく、精度の良い加工が困難であるといった不都合があるため、この範囲での設計は現実的でない。
【符号の説明】
【0037】
100…ボールねじ装置
110…機台
200…サーボプレス装置
10…ねじ軸
20…ナット
21…フランジ
30、40…ねじ溝
30a、40a…円弧(主荷重側)
30b、40b…円弧(非主荷重側)
50…リターンチューブ
60…サーボモータ
70…タイミングベルト
80…プーリー
90…プレス上型
91…プレス下型
92…軸受
93…ロックナット
B…ボール
C…ねじ溝曲率
S…ラジアル隙間
α…初期接触角(非主荷重側)
β…初期接触角(主荷重側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、内周に前記ねじ軸のねじ溝と対向するように螺旋状のねじ溝を有するナットとを有し、前記両ねじ溝間に複数のボールを転動自在に配設したボールねじ装置であって、以下の条件(a)〜(d)を全て満たすことを特徴とするボールねじ装置。
(a)前記ボールが一方のねじ溝に密着した状態で当該ボールと他方のねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200にする
(b)前記ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%とする。
(c)前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと主荷重側のねじ溝との初期接触角を35°〜43°とする。
(d)前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールと非主荷重側のねじ溝との初期接触角を44°〜60°とする。
【請求項2】
請求項1に記載のボールねじ装置をプレス型の送り機構として用いたことを特徴とするサーボプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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