説明

ボールねじ装置

【課題】負荷ボール通路と方向転換路との境界部分の段差をなくしてボールのスムーズな循環を可能にするボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ装置は、外周面に螺旋状の第1ボール転動溝が形成されたねじ軸と、多数のボールを介してねじ軸に螺合するナット部材3とから構成され、ナット部材3にはねじ軸と略平行なボール戻し孔が貫通形成されると共にこのボール戻し孔の端部と第2ボール転動溝12の端部とを連結してボールの無限循環路を構成する一対の方向転換路が貫通孔40の接線方向に延在するように形成され、第2ボール転動溝12に連続するように開放溝47が形成されたナット本体4に案内溝45が形成された循環部51を有するエンドプレート5を装着することで互いに対向配置された開放溝47および案内溝45により方向転換路が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数のボールを介してねじ軸とナット部材とが螺合したボールねじ装置は公知である。この種のボールねじ装置は、ねじ軸の外周面に形成された螺旋状の第1ボール転動溝とナット部材の内周面に形成された螺旋状の第2ボール転動溝とが互いに対向して負荷ボール通路を構成しており、ボールはこの負荷ボール通路内を転動しながらねじ軸とナット部材との間で荷重を負荷する。また、ナット部材には負荷ボール通路を転動し終えたボールを再度負荷ボール通路へ循環させるための無負荷通路が備わっており、ねじ軸とナット部材との相対的な回転に伴い、ボールが無負荷通路から負荷ボール通路へと無限循環するように構成されている。
【0003】
ナット部材は、ナット本体と当該ナット本体の両端面に装着される一対のエンドキャップとから構成される。エンドキャップには、第2ボール転動溝からボールを離脱させる導入部と、離脱したボールを無負荷通路へと導く方向転換路が形成されており、エンドキャップをナット本体に装着することによって負荷ボール通路と方向転換路とが連通連結されてボールの無限循環路が完成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−148584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ナット本体とエンドキャップとの接合部分において、ナット本体の負荷ボール転動路と方向転換路との境界部分に段差が生じることにより、負荷ボール転動路を転動してきたボールが方向転換路へと進入する際に上記段差に衝突してしまい、無限循環路内をボールがスムーズに循環することができなくなってしまう。
このような不具合は、ボールねじ装置を低速駆動させる場合にはそれほど問題にはならないものの、ボールねじ装置を高速駆動させた場合に顕著に現れる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、負荷ボール通路と方向転換路との境界部分の段差をなくしてボールのスムーズな循環を可能にするボールねじ装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボールねじ装置は、外周面に螺旋状の第1ボール転動溝が形成されたねじ軸と、このねじ軸が貫通する貫通孔を有して略円筒状に形成されると共に、内周面には前記ねじ軸の前記第1ボール転動溝と相対向して螺旋状の負荷ボール通路を構成する螺旋状の第2ボール転動溝が形成され、多数のボールを介して前記ねじ軸に螺合するナット部材とから構成され、前記ナット部材には前記ねじ軸と略平行なボール戻し孔が貫通形成されると共に、このボール戻し孔の端部と前記第2ボール転動溝の端部とを連結して前記ボールの無限循環路を構成する一対の方向転換路が前記貫通孔の接線方向に延在するように形成されたボールねじ装置において、前記第2ボール転動溝に連続するように第1方向転換溝が形成されたナット本体に第2方向転換溝が形成された循環部を装着することで互いに対向配置された前記第1方向転換溝および前記第2方向転換溝により前記方向転換路が構成されることを特徴とする。
【0008】
従来では、方向転換路が循環部のみから構成されていたため、循環部をナット本体に装着するとこれらの境界部分に段差が生じてしまっていた。この場合、ボールが方向転換路内に進入する際にこの段差を乗り越えることになり、スムーズに循環させることができない。これはボールねじ装置を高速駆動させた場合に顕著に現れてしまう。
【0009】
これに対して本発明では、ナット部材を構成するナット本体と循環部とが互いに協働することで方向転換路が構成されており、具体的には、ナット本体の第2ボール転動溝に連続するように形成された第1方向転換溝と、ナット本体に固定される循環部に形成された第2方向転換溝とが互いに対向することで方向転換路が構成されている。このため、ねじ軸の側方(軸方向に直交する方向)から見てこれら第1方向転換溝と第2方向転換溝との境界線が方向転換路の延在方向(ボールの進行方向)に倣うようにして形成される。
【0010】
したがって、ナット本体と循環部との境界部分にボールが乗り越えなければならないほどの段差が形成されにくくなり、方向転換路内にボールがスムーズに進入する。また、上記境界部分からボールが受ける反力が低減されるため、ボールねじ装置を高速回転させたとしても、無限循環路(方向転換路)内をボールがスムーズに転動することになる。よって、信頼性の高いボールねじ装置が得られる。
【0011】
また、前記第1方向転換溝と前記第2方向転換溝との境界線が前記ボールの循環軌道に沿った前記第2ボール転動溝のリード角の接線に倣うように構成されていてもよい。
これによれば、第1方向転換溝と第2方向転換溝との境界線、つまり、ナット本体と循環部との境界線がボールの転動方向に倣うように形成されるので、負荷ボール通路内を転動してきたボールが方向転換路内をスムーズに転動していくことになる。
【0012】
また、前記方向転換路は、前記負荷ボール通路に接続された導入部と、前記ボール戻し孔へ向かって湾曲した方向転換部とを有し、前記境界線が前記方向転換部の接線に倣うように構成されていてもよい。
これによれば、負荷ボール通路から方向転換路内に進入してきたボールが導入部から方向転換部へとスムーズに導かれていくことになる。
【0013】
また、前記第1方向転換溝および前記第2方向転換溝によって形成される曲面が、前記第2ボール転動溝側から前記ボール戻し孔側に向かう従ってゴシックアーチ形状からサーキュラーアーチ形状へと漸次変化している構成としてもよい。
【0014】
一般的に、ナット本体に形成される第2ボール転動溝の形状がゴシックアーチ形状であるとともに、ボールに対して負荷のかからないボール戻し孔がサーキュラーアーチ形状となっている。このため、第2ボール転動溝に接続される方向転換路の一端側をゴシックアーチ形状とし、ボール戻し孔に連結される方向転換路の他端側をサーキュラーアーチ形状とする。さらに、その延在方向一端側(第2ボール転動溝側)から他端側(ボール戻し孔側)にかけてゴシックアーチ形状からサーキュラーアーチ形状へと漸次変化する構成であるため、第2ボール転動溝から方向転換路内にボールがスムーズに進入するとともにボール戻し孔へとスムーズに転動していくことになる。これにより方向転換路を介してボールの無限循環が良好に行われる。
【0015】
また、前記循環部が前記ナット本体の軸方向両端部にそれぞれ装着されるエンドプレートと一体に形成されている構成としてもよい。
これによれば、部品点数が削減されてコストを抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のボールねじ装置によれば、負荷ボール通路と方向転換路との境界に段差が形成されることもなく、ボールねじ装置を高速で駆動させた場合であっても無限循環路内をボールがスムーズに転動して行くことになり、信頼性の高い装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に適用したボールねじ装置の概略構成を示す断面図。
【図2】ボールねじ装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図3】ボールねじ装置をエンドプレート側から見た断面図。
【図4】ねじ軸の側方から見た部分拡大断面図。
【図5】ナット本体の概略構成を示す断面図。
【図6】プレート取付面側から見たナット部材の構成を示す平面図。
【図7】開放溝を部分的に拡大して示す平面図。
【図8】(a),(b)は、開放溝を部分的に拡大して示す斜視図。
【図9】開放溝のクラウニング位置を示す図。
【図10】開放溝の分割面の傾斜状態を示す図。
【図11】エンドプレートがナット本体に装着された状態を示す斜視図。
【図12】エンドプレートの概略構成を示す図。
【図13】エンドプレートのリード部を拡大して示す斜視図。
【図14】(a)は、ナット本体にエンドプレートが装着された状態を示す平面図、(b)は、ナット本体にエンドプレートが装着された状態を部分的に拡大して示す断面図。
【図15】リップ部の構成を示す部分拡大図。
【図16】ナット本体とエンドプレートとの境界部分を示す図。
【図17】(a)は、従来の構成のリップ部近傍を拡大して示す図、(b)は、本発明に係るリップ部近傍を拡大して示す図。
【図18】(a)〜(c)は、方向転換路の形状について部分ごとに説明するための図。
【図19】導入部の断面形状(ゴシックアーチ溝の断面形状)を示す図。
【図20】方向転換路における方向転換部の断面形状を示す図。
【図21】(a)は、方向転換路を示す斜視図であって、(b)〜(e)は、導入部においてボールがねじ軸の第1ボール転動溝から離脱する様子を示したもの。
【図22】(a)は従来の方向転換路の構成を示す断面図、(b)は本発明に係る方向転換路の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本発明に適用したボールねじ装置の概略構成を示す断面図である。図2は、ボールねじ装置の概略構成を示す分解斜視図である。
図1および図2に示すように、ボールねじ装置100は、ねじ軸1と、多数のボール2を介してねじ軸1に螺合するナット部材3とから構成され、ねじ軸1とナット部材3との相対的な回転時にボール2を無限に循環させるための無限循環路Bを備えている。無限循環路Bは、ねじ軸1の内周面とナット部材3の外周面との間に形成された負荷ボール通路Aと、負荷ボール通路Aとナット部材3のボール戻し孔46の両端側を接続する一対の方向転換路C(C1,C2)とによって構成されている。
【0020】
ナット部材3は、鋼製のナット本体4と、このナット本体4に装着される合成樹脂性の一対のエンドプレート5(5A,5B)とを有し、これらエンドプレート5A,5Bが、ナット本体4の軸方向両端部に嵌合するように装着、固定されることによって、ナット本体4と協働して方向転換路Cが構成され、ボール2の無限循環路Bが完成される。
【0021】
このようなボールねじ装置100では、ナット部材3をねじ軸1に対して相対的に回転させると、これらねじ軸1とナット部材3との相対的な回転によってナット部材3がねじ軸1の方向へ運動する。この際、負荷ボール通路A内をボール2が荷重を受けながら転がる。このため、図1で示されるように無限循環路B内で互いに隣接するボール2の間にはスペーサ20が介装されており、ボール2同士が直接的に接触することが防止されている。かかるスペーサ20は合成樹脂により製作された円盤状の部材であり、その表裏両面にはボール2の球面が着座する球面座が形成されている。
そして、負荷ボール通路Aの一端まで転がったボール2は、ナット部材3の一端側に形成された方向転換路Cを介してボール戻し孔46内へ進入し、ボール戻し孔46内を転動した後、ナット部材3の他端側に形成された方向転換路Cを介して元の負荷ボール通路Aに戻される。
【0022】
図3は、ボールねじ装置をエンドプレート側から見た平面図である。なお、図3では、ボールの循環軌道が分かるようにエンドプレートを一部切り欠いて示している。図4は、ねじ軸の側方から見た部分断面図である。
図3に示すように、本実施形態では、負荷ボール通路Aと方向転換路Cの繋ぎ目において方向転換路Cが負荷ボール通路Aの接線方向と連続になっている。つまり、方向転換路Cのねじ軸1側の接続部は、ねじ軸1の第1ボール転動溝10をねじ軸1の接線方向(Y方向)へ延伸させた方向、すなわち、ねじ軸1の軸線方向(Z方向)から見て、ボール2は負荷ボール通路Aの円形状の軌道の接線方向に移動するように掬われる。このため、負荷ボール通路A内を転動してきたボール2はねじ軸1(負荷ボール通路A)の接線方向へ移動するようにしてねじ軸1の第1ボール転動溝10(図4)から離脱し、方向転換路C内に進入することになる。
【0023】
さらに、方向転換路Cは、図4に示すようにねじ軸1(第1ボール転動溝10)のリード角βに沿ってナット部材3のエンドプレート取付け面44に対して所定の角度で傾斜している。このため、負荷ボール通路A内を転動してきたボール2は、ねじ軸1の側方から見てリード角βに合致させた方向へ導かれ、ボール戻し孔46の入り口へと案内されることになる。
【0024】
次に、ボールねじ装置の各構成要素の具体的な形状について述べる。
以下の説明において図4および図5を適宜参照する。また、図5は、ナット本体の概略構成を示す断面図である。
図4に示したように、鋼製からなるねじ軸1の外周には所定のリード(リード角β)を有する螺旋状の第1ボール転動溝10が形成されている。第1ボール転動溝10の断面形状は、例えば、2つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ形状に形成されている。ここでは第1ボール転動溝10の条数を一条に設定してあるが、許容荷重を増加させるために、第1ボール転動溝10の条数を二条以上に設定しても良い。
【0025】
図4および図5に示すように、ナット本体4は、中央にねじ軸1の貫通孔40を有する円筒状に形成されており、その外周面には該ナット本体4をテーブル等の可動体に固定するためのフランジ部41が突設されている。また、上記貫通孔40の内周面には、ねじ軸1の第1ボール転動溝10と相対向する螺旋状の第2ボール転動溝12が形成されており、ボール2はこれら第1ボール転動溝10と第2ボール転動溝12との間で荷重を負荷されながら転動する。
【0026】
また、このナット本体4の軸方向の両端面には、ねじ軸1の軸方向に対して略垂直なエンドプレート取付け面44,44が設けられている。これら取付け面44,44の間には、ナット本体4を軸方向へ貫通するようにしてボール直径よりも僅かに大きい内径のボール戻し孔46が形成されており、ボール2はこのボール戻し孔46の内部を無負荷状態でナット本体4の軸方向へ転動するようになっている。
【0027】
更に、各取付け面44には、ナット本体4の第2ボール転動溝12から上記ボール戻し孔46に連続する開放溝(第1方向転換溝)47が形成されており、この開放溝47を上記エンドプレート5で覆うことにより、第2ボール転動溝12とボール戻し孔46との間でボール2を往来させる方向転換路Cが完成する。
具体的には、図4に示すエンドプレート5に設けられた循環部51の案内溝(第2方向転換溝)45が開放溝47に対向配置され、これら開放溝47と案内溝45とにより方向転換路Cが構成される。案内溝45および開放溝47は、ボール2の循環軌道に沿った第2ボール転動溝12のリード角βに倣うように傾斜しているとともに互いの湾曲面が方向転換路Cの周方向で連続している。このため、負荷ボール通路A内を転動してきたボール2がその循環軌道に沿ってスムーズに方向転換路C内へ進入することになる。
【0028】
なお、上記フランジ部41に開設された挿通孔はナット本体4を可動体に固定するためのボルト通し孔43である。
【0029】
[ナット部材]
図6は、プレート取付面側から見たナット部材の構成を示す平面図である。図7は、開放溝を部分的に拡大して示す平面図である。図8(a),(b)は、開放溝を部分的に拡大して示す斜視図である。図9は、開放溝のクラウニング位置を示す図である。図10は、開放溝の分割面の傾斜状態を示す図である。
【0030】
図6〜図8に示すように、開放溝47は、軸方向から見てナット本体4の貫通孔40から接線方向(Y方向)に伸びるようにして切り欠かれており、エンドプレート5の循環部51を収容する。開放溝47は、第1ボール転動溝10の端部に連続して形成されている。この開放溝47は、ナット本体4の第2ボール転動溝12とねじ軸1の第1ボール転動溝10との間で荷重を負荷しながら転動していたボール2を該荷重から開放するとともに、かかる第1ボール転動溝10からボール2を離脱させるためのピックアップ部P1と、このピックアップ部P1によって第1ボール転動溝10から離脱したボール2を上記ボール戻し孔46に送り込むためのターン部T1とを有する。この開放溝47は、そのピックアップ部P1側の端部が第2ボール転動溝12に連続し、ターン部T1側の端部がボール戻し孔46に連続するようにして形成されている。
【0031】
開放溝47のピックアップ部P1における深さ(ナット本体4の半径方向に関する深さ)はターン部T1に接近するにつれて徐々に深くなるように設定されており、これによって第2ボール転動溝12から開放溝47に進入したボール2が徐々にねじ軸1の第1ボール転動溝10から離脱するようになっている。ここで、ナット本体4に切り欠かれた開放溝47は、ボール2の循環軌道に沿ったリード角βに倣うように傾斜しているため、第1ボール転動溝10から開放溝47へとボール2がスムーズに転動することになる。
【0032】
また、図7および図8(a),(b)に示すように開放溝47の外方側にはエンドプレート5の循環部51が接合される接合部18が形成されている。この接合部18は、開放溝47に倣うようにしてその両側に存在する係合面118A、118Bと、取付け面44に略平行する係合面118Cとを有する。係合面118A,118Bは、係合面118Cに接近するにつれて取付け面44から遠ざかるように徐々に深くなるように湾曲形成されている。また、係合面118Cは、係合面118Aの先端側と、係合面118Bの先端側とを繋ぐようにして、ボール戻し孔46に連通する連通孔49aの周囲に円弧形状に形成されている。
【0033】
また、開放溝47は、図7に示す軸方向から見てピックアップ部P1からターン部T1にかけて幅が径方向外方に次第に拡がるように形成されている。この開放溝47にはクラウニング加工が施されている。ここで、図9に示すように、開放溝47と第2ボール転動溝12との境界領域における分割面60がナット本体4の第2ボール転動溝12に干渉しないようにする。つまり、図9中の二点鎖線の丸印で示すクラウニング開始位置を越えないようにする。
【0034】
また、図10に示すように本実施形態の開放溝47は、軸方向に沿う断面において循環部51との接合部分である係合面118A(分割面60)がターン部T1の接線方向に沿って傾斜しており、ピックアップ部P1からターン部T1へとボール2がスムーズに転動していく。
【0035】
[エンドプレート]
図11は、エンドプレートがナット本体に装着された状態を示す斜視図である。図12は、エンドプレートの概略構成を示す平面図である。図13は、エンドプレートのリード部を部分的に拡大して示す斜視図である。図14(a)は、ナット本体にエンドプレートが装着された状態を部分的に拡大して示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線に沿う断面図である。図15は、リップ部の構成を示す部分拡大図である。図16は、ナット本体4とエンドプレート5との境界部分を示す図である。図17は、図16のB−B線に沿う断面図であり、(a)は、従来の構成を示す図、(b)は、本実施形態の構成を示す図である。
【0036】
図11および図12(a)〜(c)に示すように、エンドプレート5は、ナット本体4側の取付け面44を部分的に覆うとともにねじ軸1が遊嵌する貫通孔50を有して略ドーナッツ状に形成され、合成樹脂の射出成形を用いて作製されている。エンドプレート5の貫通孔50の内径はナット本体4の貫通孔40の内径に略等しい。
【0037】
また、このエンドプレート5は単なる平板であるが、図12(b)に示すように、軸方向一方の取付け面55にはナット本体4側の開放溝47とボール戻し孔46の接続位置に対応する循環部51が突設されている。
【0038】
また、図12(a),(c)に示すように、エンドプレート5の循環部51には、貫通孔50内に突出するとともにねじ軸1の第1ボール転動溝10内にも突出するリップ部52が設けられている(図12も参照)。リップ部52は、係合面158Bの近傍においてその内面が案内溝45に連続し、案内溝45が第2ボール転動溝12からボール2を掬い始めるポイントにて、案内溝45とともにボール2を両側から抱え込みながら方向転換路C内に掬い上げることができるように形成されている。
【0039】
このようなエンドプレート5をナット本体4に固定すると、循環部51が開放溝47のボール戻し孔46側の端部に入り込み、当該循環部51の内側に形成された案内溝45がナット本体4側の開放溝47に対向することになる。案内溝45は、開放溝47のピックアップ部P1に対向するピックアップ部P2と、開放溝47のターン部T1に対向するターン部T2とを有し、ナット本体4の第2ボール転動溝12に連続する湾曲面を有している。このような案内溝45が開放溝47と組み合わされることによって、負荷ボール通路A(第1ボール転動溝10、第2ボール転動溝12)を転動してきたボール2をボール戻し孔46に向けて90°方向転換させる方向転換路Cが構成されることになる。
【0040】
また、図13に示すように、循環部51にはナット本体4の接合部18に対応する接合部58が形成されている。接合部58は案内溝45の外方に形成され、軸方向から見てエンドプレート5の貫通孔50から接線方向に伸びるようにして延在する。この接合部58は、図13に示すように、案内溝45に倣うようにしてその両側に存在する係合面158A,158Bと、循環部51の先端面であるとともに、取付け面55と略平行するようにして形成された係合面158Cとを有する。これら係合面158A、158Bは、循環部51の基部(貫通孔50)側から先端側に接近するにつれて取付け面55から遠ざかるように徐々に軸方向外側に延出している。
【0041】
そして、図14(a),(b)に示すようにナット本体4にエンドプレート5が装着された状態において、循環部51の係合面158A,158Bがナット本体4側の係合面118A,118Bに対向するとともに係合面158Cがナット本体4側の係合面118Cに対向する。このようにして、案内溝45と開放溝47とが組み合わされることで、互いに対向するピックアップ部P1,P2によって構成される導入部Pと、互いに対向するターン部T1,T2によって構成される方向転換部Tとを有する方向転換路Cが構成される(図14(b))。方向転換路Cは、導入部Pにより負荷ボール通路A内を転動してきたボール2を掬い上げ、方向転換部Tによりボール2をボール戻し孔46に向けて90°方向転換させるよう機能する。
ここで、図15に示すように、開放溝47および案内溝45のそれぞれの内面は、互いに組み合わされた状態において方向転換路Cの周方向に連続する湾曲面とされているので、ナット本体4とエンドプレート5との接合部分、つまり、方向転換路Cの周方向において開放溝47と案内溝45との境界部分に段差が生じない構成になっている。さらに、案内溝45の湾曲面は、ナット本体4の第2ボール転動溝12およびねじ軸1の第1ボール転動溝10にそれぞれ連続する湾曲面であるため、方向転換路Cの延在方向にも段差が生じない構成となっている。
【0042】
また、図16に示すように、開放溝47と案内溝45との境界線L、つまり、ナット本体4とエンドプレート5の循環部51との境界線Lがボール2の循環軌道に沿ったリード角β(図4)に倣うように傾斜している。この境界線Lをリード角βになるべく近づける構成とすることで、ナット本体4とエンドプレート5の循環部51と境界線Lがボール2の軌道方向に沿って延在することになり、これらの境界部分によってボール2の進行が妨げられることが防止される。
【0043】
そして、ナット本体4のフランジ部41側の取付け面44にエンドプレート5Aが装着され、ナット本体4のフランジ部41とは軸方向反対側の取付け面44に装着されるエンドプレート5Bが装着されると、これらナット本体4と各エンドプレート5A,5Bとが協働することで方向転換路C1,C2が形成される。負荷ボール通路A内を転動してきたボール2は方向転換路C1を介してボール戻し孔46へと進入し、ボール戻し孔46内を転動した後、方向転換路C2を介して負荷ボール通路A内に再び進入する。
【0044】
このとき、ボール戻し孔46内を無負荷状態で転動してきたボール2は、方向転換路C2内に進入すると、該方向転換路C2のサーキュラーアーチ形状をなす方向転換部Tを無負荷状態で転動した後、ゴシックアーチ形状をなす導入部Pにおいて徐々に荷重が負荷されながら負荷ボール通路Aへと転動していく。
【0045】
ここで、図17(a)に示すようなエンドプレート単体で方向転換路Cを形成する従来の構成の場合、エンドプレート本体61と当該エンドプレート本体61に組み合わされるリターンピース62との各湾曲面61a,62aと、エンドプレート本体61側のリップ部63の内面とによって、方向転換路C内を無負荷状態で転動するボール2の幅方向への移動(転動方向に直交する方向)への蛇行を抑えるようになっていた。しかしながら、リップ部63とボール2との間の隙間分だけボール2が蛇行することになってしまい、この僅かな蛇行が、無負荷領域から負荷領域へとボール2が進入していく際に負荷領域の入口でボール2が詰まってしまう原因となることがあった。
【0046】
これに対して図17(b)に示すような本実施形態の構成であれば、方向転換路Cの幅方向に移動したボール2がエンドプレート5Bの案内溝45の一部に当接する構成となっている。つまり、方向転換路C内に進入してきたボール2がさらにリップ部52の先端側へと進んで行くと、案内溝45のリップ部52側の縁部に当接し、それ以上、リップ部52(の先端側)には近づかないようになっている。このため、ゴシックアーチ溝内を転動するボール2の蛇行をより抑えることが可能なため、ボール戻し孔46から方向転換路C内に転動してきたボール2が無負荷領域から負荷領域へと進入していく際に負荷領域の入口で詰まることなく転動してくことになる。よって、無限循環路B内をボール2がスムーズに循環する。
【0047】
また、エンドプレート5にはナット部材3の内部に塵芥が進入するのを防止するためのラビリンスシール(不図示)が装着され、エンドプレート5はボルト等の締結手段を介してナット本体4の取付け面44に接合される。
さらに、このエンドプレート5にはナット本体4への取付けねじを挿通させるための取付け孔59が貫通している。
【0048】
図18(a),(b),(c)は、方向転換路の形状について部分ごとに説明するための図である。図中の矢印Eで示す部分は方向転換路の入口部分であり、矢印Fで示す部分は導入部と方向転換部との境界部分であり、矢印Gで示す部分は方向転換路の出口部分である。
【0049】
図18(a)〜(c)に示すように、方向転換路Cは導入部Pと方向転換部Tとを有する。導入部Pでは、半径rが同じで中心O1,O2が異なる2つの円弧(図17に示す案内溝45および開放溝47のピックアップ部P1,P2の各円弧)を組み合わせたゴシックアーチ形状をなす。また、方向転換部Tでは、案内溝45および開放溝47の各ターン部T1,T2を組み合わせた単一円からなるサーキュラーアーチ形状をなす。そして、開放溝7のピックアップ部P1と、案内溝45のピックアップ部P2とで、第2ボール転動溝12に沿って負荷ボール通路A内を転動してきたボール2の両側を抱え込みながら方向転換路C内へと掬い上げることが可能となっている。
【0050】
導入部Pは、図18(b)に示すように、方向転換路Cの入口(矢印Eで示す部分)から導入部Pと方向転換部Tとの境界部分(矢印Fで示す部分)にかけて、ゴシックアーチ形状からサーキュラーアーチ形状へと漸次変化している。つまり、半径rが同じで互いに異なる円弧(図16に示す案内溝45および開放溝47のピックアップ部P1,P2の各円弧)の中心O1,O2が方向転換部Tへ向かうに従って徐々に近づいていき、導入部Pの終端側(方向転換部Tとの境界部分)において一致する。
【0051】
また、方向転換部Tは、図18(c)に示すように、導入部Pとの境界部分(矢印Fで示す部分)から出口(矢印Gで示す部分)まで、同じ半径rを有するサーキュラーアーチ形状の単一円となっている。
【0052】
図19は、導入部の断面形状(ゴシックアーチ溝の断面形状)を示す図である。図20は、方向転換路における方向転換部の断面形状を示す図である。
図19に示すように、ゴシックアーチ形状とされた導入部Pでは、ボール2がゴシックアーチ溝の第1円弧151a,151b(案内溝45および開放溝47のピックアップ部P1,P2における一部分)と2点で接触している。ここで、ゴシックアーチ溝の断面形状は、径の等しい偏心円弧(第1円弧151aを含む第1の円弧、第2円弧151bを含む第2の円弧)からなり、双方の円弧とナット本体4の接線のなす角として所定の値が設定されている。
【0053】
図20に示すように、サーキュラーアーチ形状とされた方向転換部Tでは、ボール2がサーキュラーアーチ溝の縁部161a,161b(案内溝45および開放溝47のターン部T1,T2における一部分)に対して離間し、中央部161cと1点で接触している。
【0054】
図21(b)〜(e)は、導入部Pにおいてボール2がねじ軸1の第1ボール転動溝10から離脱する様子を示したものであり、各分図は、図21(a)に一点鎖線の丸で示した、導入部Pを通過するボール2の各位置に対応している。
ナット本体4の第2ボール転動溝12とねじ軸1の第1ボール転動溝10との間(負荷ボール通路A)を転動してきたボール2は、ねじ軸1の回転に伴ってナット本体4が軸方向一方へ移動すると、かかる負荷ボール通路Aを転動し終えた後(図21(b))、ナット本体4とエンドプレート5との協働により形成される方向転換路C内に進入する(図21(c))。このとき、ボール2は、ねじ軸1の第1ボール転動溝10に沿ってねじ軸1の周囲を螺旋状に転動しようとするが、ナット本体4に取り付けられたエンドプレート5の循環部51の内周縁(つまり、案内溝45)に当接することになる。つまり、第1ボール転動溝10に対向する第2ボール転動溝12に連続して形成されたナット本体4の開放溝47がエンドプレート5の循環部51によって覆われていることから、第1ボール転動溝10から突出したボール2の頂部は、第2ボール転動溝12に連続する開放溝47と、循環部51の案内溝45とによって構成される湾曲面に当接することになる。このため、ボール2はそのまま螺旋状に転動することはできず、開放溝47の延伸方向、すなわち開放溝47と案内溝45とによって構成される方向転換路Cに沿って強制的に転動することになる。
【0055】
ボール2は、第1ボール転動溝10を進むにつれて第1ボール転動溝10の一方の側縁に寄せられていき、方向転換路C内へと進入していく(図21(d))。高速回転下において、ボール2は遠心力によってナット本体4の第2ボール転動溝12に押し付けられながら転動し、第1ボール転動溝10とボール2の径方向で対向する方向転換路Cの導入部P(案内溝45および開放溝47の各ピックアップ部P1,P2)により案内されて奥へと転動していく(図21(e))。
【0056】
そして、方向転換部Tへと移行する導入部Pの終端付近で、第1ボール転動溝10からボール2が完全に離脱する。つまり、ボール2が方向転換路Cの入口から奥に進むにつれて、開放溝47がボール2を進行方向の両側から徐々に覆い方向転換路Cの内部へ収容するようになっている。ボール2がさらに奥へ進むと今度は案内溝45がボール2の両側を徐々に覆うようにしてボール戻し孔46へと案内するようになっている。
【0057】
このように、負荷ボール通路Aから方向転換路C内へ進入したボール2は、上記した各溝45,47におけるピックアップ部P1,P2により第2ボール転動溝12から徐々に離脱され、各溝45,47におけるターン部T1,S2によりボール戻し孔46の入り口へと導かれることになる。
【0058】
図22(a)は従来の構成を示す断面図であり、図22(b)は本実施形態の構成を示す断面図である。
図22(a)に示す従来のエンドプレート250の構成では、方向転換路Cと負荷ボール通路Aとの境界部分において循環部251の端面251aがボール2の軌道方向に対して垂直になっており、ボール2の転動路内に段差が生じていた。このため、ボール2がナット本体240とエンドプレート250とのの境界上を通過する際にこの境界部分に形成された段差260に衝突してしまい、ボール2の蛇行や磨耗が生じてボール2の循環の妨げになることがあった。
【0059】
なお、方向転換路Cと負荷ボール通路Aの各内面は緩面加工などでこれらの境界部分に形成される段差を小さくする工夫が実施されているものの、加工後に残るエッジ部分にボール2が衝突して蛇行することがあった。
【0060】
また、従来のボールねじ装置では低速(例えば、DN値=7万)で駆動させていたため、上記のような段差260の影響がボールの循環を大きく妨げる要因にはなっていなかったが、高速(例えば、DN値=13万)で駆動させる場合は、段差260に衝突する際にボール2が受ける衝撃が大きくなって、ボール2の循環が妨げられてしまっていた。ここで、DN値=ボールの中心径(D)×毎分回転数(N)とする。
【0061】
上述したように、本実施形態では、ナット本体4とその軸方向両側に装着される一対のエンドプレート5A,5Bとによって方向転換路C1,C2が形成されるとともに、ボール2の転動方向に沿う面において方向転換路C1,C2が分割されており、ナット本体4とエンドプレート5との境界線がボール2の軌道方向(方向転換路C1,C2の延在方向)に略倣う構成となっている。
【0062】
つまり、ナット本体4の第2ボール転動溝12に連続するように形成された開放溝47と、循環部51に形成された案内溝45とがボール2の軌道方向に直交する方向において互いに対向することで方向転換路Cが形成されているため、ねじ軸1の側方(軸方向に直交する方向)から見てこれら開放溝47と案内溝45との境界線が方向転換路Cの延在方向(ボール2の進行方向)に倣っている。このため、ナット本体4と循環部51との境界部分にボール2が乗り越えなければならないほど段差が形成されにくくなり、方向転換路C内にボール2がスムーズに進入することになる。
【0063】
上述したように、従来の構成では、方向転換路Cが循環部のみから構成されていたため、循環部251をナット本体240に装着すると、循環部251とナット本体240との境界線が方向転換路Cの周方向に沿って形成されることになるため双方の境界部分に段差が生じてしまっていた。すると、ボール2が方向転換路C内に進入する際にこの段差260を乗り越えることになり、スムーズに循環させることができない。これはボールねじ装置を高速駆動させた場合に顕著に現れる。
【0064】
本実施形態では、エンドプレート5をナット本体4の端部に装着することで、循環部51の内側に形成された案内溝45が、ナット本体4の開放溝47を覆うようにして組み合わされ、これら対向配置された案内溝45と開放溝47とによって方向転換路Cが構成されるようになっている。このため、方向転換路Cと負荷ボール通路Aとの境界部分において循環部51の案内溝45とナット本体4の開放溝47との境界線Lがボール2の軌道方向に倣うように延在するため、ボール2はこの境界上をスムーズに転動していく。方向転換路Cの一部を構成する開放溝47がナット本体4側の第2ボール転動溝12に連続して形成されているため、回転駆動時の遠心力によって第2ボール転動溝12側に押し付けられながら転動してきたボール2は開放溝47に沿ってスムーズに転動していくことになる。開放溝47と案内溝45との境界部分にはボール2の転動に影響を与えるような段差は形成されず、境界部分においてボール2が受ける反力が低減し、ボール2への通過への影響が抑えられる。よって、ボールねじ装置100を高速回転させたとしても無限循環路B内をボール2がスムーズに循環することになり、信頼性の高い製品となる。
【0065】
また、ボール2の蛇行や磨耗も防止される。よって、高速回転下におけるボール2の循環がより良好となり、高品位なボールねじ装置100が得られる。
【0066】
また、負荷ボール通路Aと方向転換路Cの繋ぎ目においてボール2の接線方向が連続しており、ねじ軸1の軸線方向(Z方向)から見て、ボール2は負荷ボール通路Aの円形状の軌道の接線方向に移動するように掬われる。このため、ボール2が方向転換路C内へと緩やかに誘導されて無理のないボール2の軌道となり、理想的な循環方式となっている。よって、DN値13万の高速使用を実現できる。また、このような循環構造によって、高速駆動時においても循環による衝突音が解消され、低騒音化を実現できる。よって、ボールねじ装置100のなめらかな回転運動が得られる。
【0067】
また、本実施形態の方向転換路Cは、負荷ボール通路A側の導入部Pがゴシックアーチ溝形状をなす。この導入部Pは、半径rが同じで中心O1,O2が互いに異なる案内溝45と開放溝47のピックアップ部P1,P2が組み合わされることによって構成され、サーキュラーアーチ形状をなす方向転換部Tにかけて、各溝45,47の中心O1,O2が互いに近づくようにその溝形状(ゴシックアーチ溝形状)が変化し、方向転換部T側の端部においてサーキュラーアーチ溝形状となっている。これにより、ボール2の軌道方向においてその通路形状がゴシックアーチ溝形状からサーキュラーアーチ溝形状へと突如変化することはない。つまり、ゴシックアーチ溝形状をなす負荷ボール通路A内を転動してきたボール2は、同じくゴシックアーチ溝形状とされた方向転換路Cの導入部P内へとスムーズに誘導され、ボール戻し孔46と同じサーキュラーアーチ溝形状をなす方向転換部Tを介してこのボール戻し孔46へとスムーズに誘導されることになる。よって、負荷ボール通路Aから方向転換路Cを介してボール戻し孔46へとボール2が緩やかに転動し、通路を構成する溝形状の極端な変化によってボール2の転動が妨げられるおそれはない。
【0068】
本実施形態の構成では、ボールねじ装置100の定格荷重に関わるため、係合面118A(分割面60)がナット本体4の第2ボール転動溝12に干渉しないように形成されているとともに、第2ボール転動溝12に連続する緩やかなクラウニング面とされた開放溝47にかからないように形成されている。また、ねじ軸1の側方から見て、方向転換路Cの導入部Pの延在方向が方向転換部Tの接線に沿うようにも構成されていることから、方向転換路Cの入口側から進入したボール2が導入部Pから方向転換部Tへとスムーズに転動していくことになる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば、先の実施形態では、エンドプレート5に循環部51が一体に形成されているが、これに限られるものではなく、循環部51のみがナット本体4に装着される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…軸、2…ボール、3…ナット部材、4,240…ナット本体、5,5A,5B,250…エンドプレート、A…負荷ボール通路、B…無限循環路、C(C1,C2)…方向転換路、L…境界線、P…導入部、T…方向転換部、10…第1ボール転動溝、12…第2ボール転動溝、40,50…貫通孔、44…エンドプレート取付け面、55…取付け面、45…案内溝(第2方向転換溝)、46…ボール戻し孔、47…開放溝(第1方向転換溝)、51…循環部、100…ボールねじ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の第1ボール転動溝が形成されたねじ軸と、このねじ軸が貫通する貫通孔を有して略円筒状に形成されると共に、内周面には前記ねじ軸の前記第1ボール転動溝と相対向して螺旋状の負荷ボール通路を構成する螺旋状の第2ボール転動溝が形成され、多数のボールを介して前記ねじ軸に螺合するナット部材とから構成され、前記ナット部材には前記ねじ軸と略平行なボール戻し孔が貫通形成されると共に、このボール戻し孔の端部と前記第2ボール転動溝の端部とを連結して前記ボールの無限循環路を構成する一対の方向転換路が前記貫通孔の接線方向に延在するように形成されたボールねじ装置において、
前記第2ボール転動溝に連続するように第1方向転換溝が形成されたナット本体に第2方向転換溝が形成された循環部を装着することで互いに対向配置された前記第1方向転換溝および前記第2方向転換溝により前記方向転換路が構成される
ことを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記第1方向転換溝と前記第2方向転換溝との境界線が前記ボールの循環軌道に沿った前記第2ボール転動溝のリード角の接線に倣うように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記方向転換路は、前記負荷ボール通路に接続された導入部と、前記ボール戻し孔へ向かって湾曲した方向転換部とを有し、
前記境界線が前記方向転換部の接線に倣うように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記第1方向転換溝および前記第2方向転換溝によって形成される曲面が、前記第2ボール転動溝側から前記ボール戻し孔側に向かう従ってゴシックアーチ形状からサーキュラーアーチ形状へと漸次変化している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記循環部が前記ナット本体の軸方向両端部にそれぞれ装着されるエンドプレートと一体に形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のボールねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−61026(P2013−61026A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200496(P2011−200496)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】