説明

ボールジョイント

【課題】ボールシートの共回りを防止できるボールジョイントを提供する。
【解決手段】ボールシート4に、軸方向に対して開口46と反対側の端部である底部開口45側の端部にて嵌合部53を突設する。ボールシート4を内室25に収容するソケット3の底部26に、嵌合部53が嵌合する嵌合受部34を設ける。嵌合部53と嵌合受部34の嵌合によりボールシート4を内室25にて周方向に回り止めし、ボール部15の回動あるいは摺動に伴うボールシート4の共回りを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスタッドのボール部を保持したベアリングシートが収容される内室を有するソケットを備えたボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるボールジョイントが知られている。そして、このようなボールジョイントは、一般に、開口部を備えた内室を有する略有底円筒状のソケットと、このソケットの内室に固定され開口部に連通する開口を有する可撓性のベアリングシートとしてのボールシートと、このボールシート内の摺動面に摺動可能に保持されるボール部及び開口と開口部とに挿通されるスタッド部を有するボールスタッドとを備えている。そして、このようなボールジョイントのボールシートは、ソケットの開口部の周縁部をかしめ変形することで、ソケットの内室に固定されている。
【0003】
そして、ボールジョイントの耐荷重性を向上させ耐久性の向上を図るために、ボールシートの軸方向の開口と反対側の端部の外周面に、ソケットの内室の底面部に当接する荷重受部を設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平7−12621号公報(第7−9頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボールジョイントでは、ボールスタッドのボール部と摺動面との摺動などによりボールシートに熱が発生すると、この熱の熱履歴によってボールシートが収縮することがある。
【0005】
この場合に、上述のボールジョイントでは、ソケットの開口部の周縁部のかしめ変形によりボールシートの開口側を中心軸方向に可塑変形させてソケットの内室の開口部側から底面部側へとボールシートを押さえているだけであるため、比較的滑らかな構造の外周面を有するボールシートの周方向への挙動を防止する部分がない。この結果、ボールシートの収縮により締め代が緩和されると、ボールスタッドのボール部の揺動あるいは回動に伴いボールシートが共回りするおそれがあるという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ベアリングシートの共回りを防止できるボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のボールジョイントは、ボール部を備えたボールスタッドと、前記ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する球面状の摺動面及び開口を備えた略筒状のベアリングシートと、前記ボールスタッドのボール部を保持した前記ベアリングシートが収容される内室、前記開口に連通する開口部及び底部を備えた略有底筒状のソケットとを具備し、前記ベアリングシートは、前記開口と軸方向に対して反対側の端部に突設された嵌合部を備え、前記ソケットは、前記ベアリングシートを前記内室に収容した状態で前記嵌合部が嵌合する嵌合受部を前記底部に備えているものである。
【0008】
そして、ボールスタッドのボール部を摺動可能に保持するベアリングシートに、開口と軸方向に対して反対側の端部にて嵌合部を突設し、このベアリングシートを内室に収容するソケットの底部に、嵌合部が嵌合する嵌合受部を設けることで、これら嵌合部と嵌合受部との嵌合によりベアリングシートが内室にて周方向に回り止めされ、ボール部の摺動に伴うベアリングシートの共回りが防止される。
【0009】
請求項2記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、嵌合部は、複数の当接面を外側面に有し、嵌合受部は、前記嵌合部が嵌合した際に前記当接面が当接する複数の保持面を有しているものである。
【0010】
そして、嵌合部の外側面に複数の当接面を設け、嵌合受部に当接面が当接する複数の保持面を設けることで、これら当接面と保持面との当接にてベアリングシートが、より確実に周方向に回り止めされる。
【0011】
請求項3記載のボールジョイントは、請求項2記載のボールジョイントにおいて、嵌合部及び嵌合受部は、当接面及び保持面により軸方向から見てそれぞれ略正多角形状に形成されているものである。
【0012】
そして、嵌合部と嵌合受部とを、当接面と保持面とにより軸方向から見てそれぞれ略正多角形状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、周方向に容易に位置合わせされる。
【0013】
請求項4記載のボールジョイントは、請求項2記載のボールジョイントにおいて、嵌合部及び嵌合受部は、当接面及び保持面により軸方向から見てそれぞれ略正六角形状に形成されているものである。
【0014】
そして、嵌合部と嵌合受部とを、当接面と保持面とにより軸方向から見てそれぞれ略正六角形状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、周方向に容易に位置合わせされるとともに、当接面と保持面との面積を大きくとることが可能となり、これら当接面と保持面との当接により、ベアリングシートが、より確実に周方向に回り止めされる。
【0015】
請求項5記載のボールジョイントは、請求項2ないし4いずれか一記載のボールジョイントにおいて、当接面及び保持面は、ボール部の赤道位置から軸方向に離れる方向に向けて中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成されているものである。
【0016】
そして、当接面と保持面とを、ボール部の赤道位置から軸方向に離れる方向に向けて中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、容易に位置合わせされる。
【0017】
請求項6記載のボールジョイントは、請求項1ないし5いずれか一記載のボールジョイントにおいて、ベアリングシートは、ボール部の赤道位置に対応する位置よりも嵌合部側の外側面に突設されソケットの内室に組み付けられた状態で圧接される突起を備えているものである。
【0018】
そして、ベアリングシートのボール部の赤道位置に対応する位置よりも嵌合部側の外側面に、ソケットの内室に組み付けられた状態で圧接される突起を突設することで、突起が変形することにより、ベアリングシートの共回りがより確実に防止されるとともに、ボールスタッドからの荷重をソケットの内室で支持し、剛性及び耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載のボールジョイントによれば、ベアリングシートに、開口と軸方向に対して反対側の端部にて嵌合部を突設し、このベアリングシートを内室に収容するソケットの底部に、嵌合部が嵌合する嵌合受部を設けることで、これら嵌合部と嵌合受部との嵌合によりベアリングシートを内室にて周方向に回り止めし、ボール部の摺動に伴うベアリングシートの共回りを防止できる。
【0020】
請求項2記載のボールジョイントによれば、請求項1記載のボールジョイントの効果に加えて、嵌合部の外側面に複数の当接面を設け、嵌合受部に当接面が当接する複数の保持面を設けることで、これら当接面と保持面との当接にてベアリングシートを、より確実に周方向に回り止めできる。
【0021】
請求項3記載のボールジョイントによれば、請求項2記載のボールジョイントの効果に加えて、嵌合部と嵌合受部とを、当接面と保持面とにより軸方向から見てそれぞれ略正多角形状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、周方向に容易に位置合わせできる。
【0022】
請求項4記載のボールジョイントによれば、請求項2記載のボールジョイントの効果に加えて、嵌合部と嵌合受部とを、当接面と保持面とにより軸方向から見てそれぞれ略正六角形状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、周方向に容易に位置合わせできるとともに、当接面と保持面との面積を大きくとることが可能となり、これら当接面と保持面との当接により、ベアリングシートを、より確実に周方向に回り止めできる。
【0023】
請求項5記載のボールジョイントによれば、請求項2ないし4いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、当接面と保持面とを、ボール部の赤道位置から軸方向に離れる方向に向けて中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成することで、ベアリングシートをソケットの内室に組み付ける際に、容易に位置合わせできる。
【0024】
請求項6記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし5いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、ベアリングシートのボール部の赤道位置に対応する位置よりも嵌合部側の外側面に、ソケットの内室に組み付けられた状態で圧接される突起を突設することで、突起が変形することにより、ベアリングシートの共回りをより確実に防止できるとともに、ボールスタッドからの荷重をソケットの内室で支持し、剛性及び耐久性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態のボールジョイントのソケットの構成を図1ないし図7を参照して説明する。
【0026】
図1において、1はボールジョイントで、このボールジョイント1は、鋼鉄製などのボールスタッド2、金属製などの略有底円筒状のソケット3、ベアリングシートとしての合成樹脂製などのボールシート4、及び、ゴムあるいは軟質合成樹脂などにて略円筒状に形成された図示しないダストカバーなどを備えている。そして、このボールジョイント1は、例えば軸方向を横として自動車の操舵装置のラックエンドなどに用いられるものである。
【0027】
ボールスタッド2は、ボールシート4に回動可能に保持されたボール部15と、このボール部15から軸状に突設されたスタッド部16とを有している。
【0028】
ボール部15は、ボールシート4に保持された状態でソケット3内に収容されている。
【0029】
また、スタッド部16は、ソケット3から突出し、先端部が例えば図示しないタイロッドエンドに接続されている。
【0030】
さらに、ソケット3は、図2ないし図4に示すように、略有底円筒状のソケット本体21と、このソケット本体21の軸方向の一端部からボールスタッド2のスタッド部16と逆方向に突設された接続部22とを有している。
【0031】
ソケット本体21は、ボールシート4が嵌着される内室25を内部に備え、軸方向の一端部に、接続部22が突設される底部26が形成され、この底部26と反対側である軸方向の他端部に、内室25に連通する開口部27が開口形成されるとともに、外周部に一対の凹部28が互いに対向する位置に設けられている。そして、このソケット本体21は、内室25にボールシート4を嵌着した状態で、図1に示すように開口部27の外周縁部を中心軸方向にかしめ変形してかしめ部29を形成することにより、ボールシート4を内室25に保持するとともに、ソケット3及びボールシート4に対してボールスタッド2を抜け止めする。
【0032】
内室25は、図3及び図4に示すように、開口部27側から底部26側へと、開口部側内周面部31、内周面部32、傾斜面部33、嵌合受部34及び底面部36が順次連続的に同心状に形成され、底部26側である傾斜面部33側が縮径されている。
【0033】
開口部側内周面部31は、ボールシート4の最大外径寸法よりも若干大きい内径寸法を有する円筒内面状に形成されている。また、この開口部側内周面部31は、内周面部32側の端部が、ボール部15の赤道Eに対応する位置よりも底部26側に位置している。言い換えると、開口部側内周面部31は、内周面部32側の端部近傍がボール部15の赤道Eに対応する位置となっている。
【0034】
なお、ボール部15の赤道Eとは、ボールスタッド2の中心軸に直交する平面上でのボール部15の半径が最大となる位置をいう。
【0035】
また、内周面部32は、ボールシート4の最大外径寸法と略等しい外径寸法を有する円筒内面状に形成されている。したがって、各内周面部31,32の連続部には、ソケット3の中心軸方向に向けて若干の段部38が形成されている。この段部38は、図1に示すように、ソケット本体21のかしめ変形時に、ボール部15の赤道Eの位置に対応して位置した緩衝部となり、トルクを緩和するものである。
【0036】
なお、各内周面部31,32を一体、すなわち互いに等しい内径寸法に形成して、段部38を内室25に形成しないようにしてもよい。
【0037】
さらに、傾斜面部33は、ボールシート4の外周面に沿って内周面部32から底面部36側へと中心軸に向けて傾斜して形成された円筒内面状である。
【0038】
そして、嵌合受部34は、底部26に凹状に設けられ、ソケット3の中心軸側に突出した複数、本実施の形態では6つの保持面39が設けられている。
【0039】
保持面39は、ボール部15の赤道Eの位置から軸方向に離れる方向、すなわち底面部36側に向けてソケット3の中心軸側に傾斜した傾斜面状すなわちテーパ状に形成されている。そして、これら保持面39は、ソケット3の周方向に略等間隔に離間されている。このため、嵌合受部34は、ソケット3の軸方向から見て略正多角形状、本実施の形態では略正六角形状に形成されている。
【0040】
さらに、底面部36は、内室25の底面となる部分であり、傾斜状に形成されている。
【0041】
一方、接続部22は、ソケット本体21の底部26にこのソケット本体21と同軸状に設けられ、例えば図示しないラックギヤバーにねじこまれる雄ねじ部41が外周面に設けられている。
【0042】
そして、ボールシート4は、例えば可撓性を有するポリアセタールなどの合成樹脂により、図5ないし図7に示すように、軸方向の一端側が縮径した略円筒状に形成され、ボール部15を回動可能に保持する球面状の摺動面44が内部に設けられ、軸方向の一端側に摺動面44に連通する底部開口45が開口形成され、かつ、軸方向の他端側に摺動面44に連通する開口46が開口形成されている。また、このボールシート4の外周部は、開口46側から底部開口45側へと、ソケット3のかしめ変形時にこのソケット3の各内周面部31,32により保持される開口側外周面部51、ソケット3の傾斜面部33により保持される傾斜外周面部52、ソケット3の嵌合受部34に嵌合する嵌合部53、及び、底面部36に対向する底部開口側外周面部55が順次連続的に同心状に形成されている。さらに、このボールシート4は、外周面が断面円形状に形成されている。
【0043】
摺動面44は、開口46側から底部開口45側へと、開口側摺動面57及び底部開口側摺動面58が順次連続的に同心状に形成されている。
【0044】
開口側摺動面57は、ボールスタッド2のボール部15の外径寸法と略等しい内径寸法を有する円筒内面状に形成され、ソケット3のかしめ変形により変形して潰れ、ボール部15の赤道Eよりもスタッド部16側寄りの外周面を保持する部分である。
【0045】
また、底部開口側摺動面58は、ボールスタッド2のボール部15の外周形状に沿った球面凹状に形成されている。さらに、この底部開口側摺動面58には、本実施の形態では、ボールシート4の軸方向の略中心域に、例えばグリースなどの潤滑剤をボール部15の外周面との間に保持する油溜まり部61が形成されている。このため、底部開口側摺動面58は、この油溜まり部61により、第1摺動面62と第2摺動面63とに分割されている。なお、この油溜まり部61は、必ずしも必要なものではない。
【0046】
そして、底部開口側摺動面58は、最大内径寸法が開口側摺動面57の内径寸法よりも小さく形成されている。このため、各摺動面57,58の連続部には、ボール部15の外周面との間に潤滑剤を保持する段差部65が形成されている。この段差部65は、ボールシート4をソケット3の内室25に取り付けた状態で段部38に対応する位置に設けられている。
【0047】
一方、開口側外周面部51は、内周面部32の内径寸法と略等しい外径寸法を有する円周面状に形成され、ボールシート4の赤道Eよりも底部開口45側に延設されている。
【0048】
また、傾斜外周面部52は、開口側外周面部51側から底部開口側外周面部55側へと、ボールシート4の中心軸に向けて傾斜された円周面状に形成されている。
【0049】
そして、この傾斜外周面部52には、開口側外周面部51側の端部に複数、本実施の形態では8つの突起67と、嵌合部53側に複数、本実施の形態では8つの突起68とがそれぞれ突設されている。これら突起67,68は、ボールシート4をソケット3の内室25に収容してソケット3のかしめ部29をかしめ変形した際に傾斜面部33に圧接されて変形して潰れることで、ボールシート4の外周面とソケット3の内室25との寸法公差を吸収し、ボールスタッド2からの荷重を傾斜面部33で支持するものである。
【0050】
突起67は、ボールシート4の周方向に略等間隔に離間されて配置されている。
【0051】
一方、突起68は、ボールシート4の周方向に対してそれぞれ突起67と突起67との間に位置している。したがって、これら突起67,68は、ボールシート4の周方向に互いにずれた位置に設けられている。
【0052】
なお、これら突起67,68は、その設ける位置及び個数を任意に設定でき、また、必ずしも必要ない場合もある。
【0053】
そして、嵌合部53は、ボールシート4をソケット3の内室25に取り付けた状態で嵌合部34に対応する位置、ボールシート4の底部開口45側に設けられている。さらに、この嵌合部53には、ボールシート4をソケット3の内室25に取り付けた状態で各保持面39に当接する複数、本実施の形態では6つの当接面69が形成されている。
【0054】
当接面69は、ボール部15の赤道Eの位置から軸方向に離れる方向、すなわち底部開口45側に向けてボールシート4の中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成されている。そして、これら当接面69は、ボールシート4の周方向に略等間隔に離間されている。このため、嵌合部69は、ボールシート4の軸方向から見て略正多角形状、本実施の形態では略正六角形状に形成されている。
【0055】
また、底部開口側外周面部55は、ボールシート4の外側の底面となる部分であり、ボールシート4の径方向に沿って平面状に形成され、ソケット3の底面部36に離間されて対向している。
【0056】
さらに、底部開口45は、ソケット3の底面部36に対向し、この底面部36とボールスタッド2のボール部15の外周面との間に潤滑剤を保持するものである。
【0057】
そして、開口46は、開口部27に連通し、ボールスタッド2のスタッド部16が挿通される部分である。
【0058】
次に、上記一実施の形態の組み立て手順を説明する。
【0059】
まず、ソケット3の内室25にボールシート4を収容する。
【0060】
このとき、ボールシート4を開口部27側から挿入すると、ボールシート4の当接面69とソケット3の保持面39とが当接するようにボールシート4の嵌合部53がソケット3の嵌合受部34に嵌合してボールシート4とソケット3とが位置合わせされ、かつ、ボールシート4の傾斜外周面部52及び開口側外周面部51がそれぞれソケット3の傾斜面部33及び開口部側内周面部31に保持され、このボールシート4が内室25に保持される。
【0061】
この後、ボールシート4の摺動面44にボールスタッド2のボール部15を保持するように、これらソケット3、ボールシート4及びボールスタッド2をかしめ加工機の所定の金型に納め、ソケット3に外力を加えて、ソケット3の開口部27の外周縁部を塑性変形させると、かしめ部29によりボールシート4の開口側外周面部51がボールスタッド2のボール部15の外周面に沿って変形するとともに、ボールシート4の突起67,68がソケット3の傾斜面部33に圧接されて潰れて変形し、ボールスタッド2がソケット3及びボールシート4から抜け止めされる。
【0062】
上述したように、上記一実施の形態によれば、ボールシート4に、軸方向に対して開口46と反対側の端部である底部開口45側の端部にて嵌合部53を突設し、このボールシート4を内室25に収容するソケット3の底部26に、嵌合部53が嵌合する嵌合受部34を設けることで、これら嵌合部53と嵌合受部34との嵌合によりボールシート4を内室25にて周方向に回り止めし、ボール部15の摺動、すなわち回動あるいは摺動に伴うボールシート4の共回りを防止できる。
【0063】
また、嵌合部53の外側面に複数の当接面69を設け、嵌合受部34にこれら当接面69が当接する複数の保持面39を設けることで、これら当接面69と保持面39との当接にてボールシート4を、より確実に周方向に回り止めできる。
【0064】
さらに、嵌合部53と嵌合受部34とを、当接面69と保持面39とにより軸方向から見てそれぞれ略正多角形状に形成することで、ボールシート4をソケット3の内室25に組み付ける際に、互いの周方向の位相を合わせやすくなるため、周方向に容易に位置合わせできる。
【0065】
特に、ボールシート4の底部開口45側に位置する嵌合部53とソケット3の底部26に位置する嵌合受部34とを、軸方向から見てそれぞれ略正六角形状に形成することで、当接面69と保持面39との面積を大きくとることが可能となり、これら当接面69と保持面39との当接により、ボールシート4を、より確実に周方向に回り止めできるとともに、例えば六角形よりも角数が大きい多角形状とする場合と比較して、当接面69と保持面39との面積を大きくしてボールシート4の回り止めの効果を向上でき、六角形よりも角数が小さい多角形状とする場合と比較して、ソケット3の内室25へのボールシート4の組み付けの際の位相合わせが容易となる。
【0066】
そして、嵌合受部34を略正多角形状とすることで、例えば嵌合受部を、例えば星形などの鋭角を有する多角形状とする場合と比較して、容易に形成できるとともに、ソケット3の強度を確保できる。
【0067】
同様に、嵌合部53を略正多角形状とすることで、例えば嵌合部を、鋭角を有する多角形状とする場合と比較して、容易に形成できるとともに、ボールシート4の強度を確保できる。
【0068】
また、当接面69と保持面39とを、ボール部15の赤道Eの位置から軸方向に離れる方向に向けて中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成することで、ボールシート4をソケット3の内室25に組み付ける際に、これら当接面69と保持面39との当接により嵌合部53がガイドされて容易に位置合わせできるとともに、当接面と保持面とを軸方向に平行な平面状にする場合と比較して、当接面69と保持面39とのそれぞれの面積を大きくでき、ボールシート4の回り止めの効果を向上できる。
【0069】
さらに、ボールシート4のボール部15の赤道Eの位置に対応する位置よりも嵌合部53側の外周面に、ソケット3の内室25に組み付けられた状態で圧接される突起67,68を突設することで、これら突起67,68が変形して潰れることにより寸法公差を吸収してボールシート4が内室に隙間なく保持され、ボールシート4の共回りをより確実に防止できるとともに、ボールスタッド2からの荷重をソケット3の傾斜面部33で支持し、剛性及び耐久性をより向上できる。
【0070】
そして、突起67,68をボールシート4の周方向にそれぞれ複数設けることで、ボールシート4をより確実に内室25に保持できるとともに、各突起67を傾斜外周面部52の開口側外周面部51側に設け、各突起68を傾斜外周面部52の嵌合部53側に設けることで、ボールシート4をより確実に内室25に保持できる。
【0071】
また、突起67,68をボールシート4の周方向に互いにずれた位置に設けることで、ボールシート4の傾斜外周面部52全体をソケット3の傾斜面部33に隙間なく保持できる。
【0072】
なお、上記一実施の形態において、嵌合受部34及び嵌合部53は、正多角形状とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態のボールジョイントを示す断面図である。
【図2】同上ボールジョイントのソケットの外部側を示す平面図である。
【図3】同上ソケットの断面図である。
【図4】同上ソケットの内部側を示す平面図である。
【図5】同上ボールジョイントのベアリングシートを示す平面図である。
【図6】同上ベアリングシートの図5に示すA−A断面図である。
【図7】同上ベアリングシートをソケットに取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 ボールジョイント
2 ボールスタッド
3 ソケット
4 ベアリングシートとしてのボールシート
15 ボール部
25 内室
26 底部
27 開口部
34 嵌合受部
39 保持面
44 摺動面
46 開口
53 嵌合部
67,68 突起
69 当接面
E 赤道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール部を備えたボールスタッドと、
前記ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する球面状の摺動面及び開口を備えた略筒状のベアリングシートと、
前記ボールスタッドのボール部を保持した前記ベアリングシートが収容される内室、前記開口に連通する開口部及び底部を備えた略有底筒状のソケットとを具備し、
前記ベアリングシートは、前記開口と軸方向に対して反対側の端部に突設された嵌合部を備え、
前記ソケットは、前記ベアリングシートを前記内室に収容した状態で前記嵌合部が嵌合する嵌合受部を前記底部に備えている
ことを特徴としたボールジョイント。
【請求項2】
嵌合部は、複数の当接面を外側面に有し、
嵌合受部は、前記嵌合部が嵌合した際に前記当接面が当接する複数の保持面を有している
ことを特徴とした請求項1記載のボールジョイント。
【請求項3】
嵌合部及び嵌合受部は、当接面及び保持面により軸方向から見てそれぞれ略正多角形状に形成されている
ことを特徴とした請求項2記載のボールジョイント。
【請求項4】
嵌合部及び嵌合受部は、当接面及び保持面により軸方向から見てそれぞれ略正六角形状に形成されている
ことを特徴とした請求項2記載のボールジョイント。
【請求項5】
当接面及び保持面は、ボール部の赤道位置から軸方向に離れる方向に向けて中心軸側に傾斜した傾斜面状に形成されている
ことを特徴とした請求項2ないし4いずれか一記載のボールジョイント。
【請求項6】
ベアリングシートは、ボール部の赤道位置に対応する位置よりも嵌合部側の外側面に突設されソケットの内室に組み付けられた状態で圧接される突起を備えている
ことを特徴とした請求項1ないし5いずれか一記載のボールジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−226346(P2006−226346A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38866(P2005−38866)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】