説明

ボールバルブ

【課題】内部の損傷や変形を防ぎ、操作トルクを抑えて優れた操作性によりスムーズに回転操作でき、高いシール性と調芯機能を発揮できる耐久性に優れたボールバルブを提供すること。
【解決手段】バルブ本体20のステム挿入位置に座面22を形成し、かつ当該位置を内方に折曲してステム30の鍔部31側に向けて筒状のバーリング部23を形成し、バーリング部23とステム30の間に装着した筒状パッキン部42とこのパッキン部42の上端に折曲させて座面22に当接する鍔状パッキン部41とでグランドパッキン40を構成し、このグランドパッキン40をグランド部材45で押圧して鍔状パッキン部41を座面22に密接させると共に、筒状パッキン部42の下端43を鍔部31に密接させ、バーリング部23の下端23aと鍔部31の上面31aの間にやや隙間Gを保持させるようにしたボールバルブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温水、空気、ガス等の配管に装着して流体の流れを開閉又は制御するボールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のボールバルブとして、各種産業機器・装置向けに、軽量・コンパクト・シール性に優れ、特に、低圧力損失、簡易的な流量制御性、高い操作性などの特性を備えたボールバルブがある(例えば、特許文献1参照。)。このボールバルブは、球形状のボールをステムによって回転するようになっており、このステムは、バーリング部分に設けたステム挿入穴に挿着するか、又は、バーリング部分のないステム挿入穴に挿着している。バーリング部分を設けたステム挿入穴にステムを挿着する場合には、ステムの鍔部をバーリング部先端に当接させるようにし、一方、バーリング部分のないステム挿入穴にステムを挿着する場合は、ステム挿入穴の周囲とステムの鍔部との間に軸受を装着する。このように鍔部とバーリング部先端を当接するか、又は、軸受を設けることにより、ステムを回転したときの回転トルク(スラスト荷重)を低減している。
【0003】
また、図13のボールバルブ1は、特許文献1と軸封構造の異なるボールバルブである。このボールバルブ1は、ステム2に設けた環状鍔部3を、バルブ本体4のステム挿入穴5の内壁に形成した座ぐり部6に装着している。更に、環状鍔部3と座ぐり部6の間には、弾性材料により形成した環状の軸受7を装着している。この軸受7は、環状鍔部3と座ぐり部6の直接の接触を防ぎ、ステム回転時におけるねじり応力等による摩擦抵抗を小さくしてスラスト荷重を低減している。
ゴム製のOリング8は、ステム2の外周側の溝部2aに装着され、このOリング8の自己弾性力により、ステム2とバルブ本体4を軸封シールしている。
【0004】
更に、この種のボールバルブの他例として、図14に示すボールバルブ11がある。このボールバルブは、バルブ本体14のステム挿入穴15よりも拡径したパッキン装着部16を設け、このパッキン装着部16に樹脂製などの自己弾性力を有する弾性材により断面略矩形状に形成したグランドパッキン18を挿入し、このグランドパッキン18の上からグランド19により押圧するようにしている。グランドパッキン18は、グランド19の押圧によって反発力が高まり、この反発力によって面圧力の高まった状態でパッキン装着部16やステム挿入穴15を押圧し、これにより、ステム12とバルブ本体14を軸封している。
【0005】
【特許文献1】WO01/57423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のボールバルブは、バルブ組付け時にナットの締付けによる上向きの引張応力がステムに加わった場合に、鍔部とバーリング部先端、又は鍔部と軸受の間に過大な面圧力が加わる。この状態でステムを回転操作した場合、軸受も摩耗して鍔部とバーリング部先端との摩擦抵抗が増大し、この摩擦抵抗によってステムとバルブ本体との間にいわゆるカジリ現象が発生して操作トルクが増大し、操作性が悪くなっていた。
更には、過大な面圧力によって環状鍔部が破損したり、大きなねじり応力や引張応力が加わることによってステムが破損したり破断するおそれがあった。
【0007】
一方、図13のボールバルブ1は、ナット10の過剰な締付けによって環状鍔部3と座ぐり部6の間に過大な面圧力が発生し、この間に挟まれた軸受7が永久変形して外部にはみ出したり圧縮割れなどにより破断したりしてシール機能を発揮できなくなる。
【0008】
また、このボールバルブ1の軸封部分にOリング8を設けると、このOリング8に軸封部分の隙間から流体内の微細な異物が浸入して付着すると傷が付くことがあった。また、弁軸2とバルブ本体4の接触面に加工粗さや隙間があると、これらが片寄った状態で組み込まれ、操作時に偏摩耗や裂傷が発生してOリング8の自己弾性力が減少し、シール性が低下していた。
【0009】
更に、Oリング8の溝部2aへの装着時には、ねじりや引張り・圧縮応力等の負荷が加わってOリング8が損傷する場合があった。また、Oリング8を装着したステム2をバルブ本体4に装着する際には、座ぐり部6とステム挿入穴5の内径部分の間の段部5aやバルブ本体4と座ぐり部6の内径部分の間の段差5bの角部分に接触することで、Oリング8が傷付きやすくなっていた。
【0010】
また、このボールバルブ1は、Oリング8の外周側によってステムを支えるようになっているが、このステムの長さを短くした場合には、環状鍔部3からOリング8の装着部分までの距離が短くなる。このため、例えば、ステム2とステム挿入穴5の隙間が大きいと、ステム2がOリング8を支点として軸方向の振れ幅が大きくなってぐらつくおそれがある。
【0011】
他方、図14のボールバルブ11においては、グランドパッキン18が樹脂等の弾性材料で形成されているため、過剰な増し締めが行われると圧縮永久変形や圧縮割れしたりすることがあった。
【0012】
本発明は、上記の実情に鑑みて鋭意研究の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、内部の損傷や変形を防ぎ、操作トルクを抑えて優れた操作性によりスムーズに回転操作でき、高いシール性と調芯機能を発揮できる耐久性に優れたボールバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブ本体内に貫通孔を有するボールを途中に鍔部を有するステムを介して回転自在に設けたボールバルブにおいて、バルブ本体のステム挿入位置に座面を形成し、かつ当該位置を内方に折曲してステムの鍔部側に向けて筒状のバーリング部を形成し、バーリング部とステムの間に装着した筒状パッキン部とこのパッキン部の上端に折曲させて座面に当接する鍔状パッキン部とでグランドパッキンを構成し、このグランドパッキンをグランド部材で押圧して鍔状パッキン部を座面に密接させると共に、筒状パッキン部の下端を前記鍔部に密接させ、バーリング部の下端と鍔部の上面の間にやや隙間を保持させるようにしたボールバルブである。
【0014】
請求項2に係る発明は、ステムに螺合したナットの締付力でグランド部材を介してグランドパッキンを押圧すると共に、ステムの鍔部を引き上げるようにしたボールバルブである。
【0015】
請求項3に係る発明は、グランド部材の外周に環状突部を形成し、この環状突部の下端をバルブ本体の座面に当接させてナットの締付力を制限したボールバルブである。
【0016】
請求項4に係る発明は、筒状のバーリング部を内方に向かって縮径させた傾斜面とし、この傾斜面にグランドパッキンの筒状パッキン部をくさび状に嵌合したボールバルブである。
【0017】
請求項5に係る発明は、バルブ本体は、管材であり、この管材のステム挿入位置にバーリング加工を施してバーリング部を形成し、この管材の両側にインサート部材を挿入して管材とインサート部材を固着したボールバルブである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、ステム鍔部がバーリング部の下端に接触するのを防ぐことにより、バルブ本体とステムの接触を防ぎ、操作時において、内部の損傷や変形、及び、ステムとバルブ本体とのかじり現象を防いで摩擦抵抗や面圧力の増大を抑えて低トルクで操作でき、かつ、ステムの破損や破断も防ぎながら、優れた操作性によりスムーズに回転操作できるボールバルブである。更に、高い軸封シール性を保ちつつステムがぐらつくのを抑え、優れた調芯機能を発揮しながら操作できる耐久性の高いボールバルブである。
また、このボールバルブは、グランドパッキンを外方より組み込むことが可能であって組立性に優れるため、製作時においては自動化にも適しており量産性に優れている。しかも、このボールバルブは、ステムに過大なねじり応力がかからないことから、全体をダウンサイジングでき、不良率の低減、工数の低減、材料の減量化によるコストの低減化を図りつつ、安全かつ工数を大幅に低減しながら製作できる。
【0019】
請求項2に係る発明によると、ナットの締付力によって簡単かつ確実にグランドパッキンを押圧しつつ鍔部を引き上げながら組み込むことができ、グランドパッキンの鍔状パッキン部を座面に密接させつつその下端を鍔部に密接させることで、グランドパッキンとステムを確実に所定の位置に装着して優れたシール性を発揮でき、組立性にも優れたボールバルブである。
【0020】
請求項3に係る発明によると、ナットの締付力を制限してグランドパッキンやステムが破損するのを防ぐことができるボールバルブである。この場合、仮に、ナットを過剰な締付力で締付けたとしてもグランドパッキンやステムの破損を確実に防ぐことができ、カジリを防ぎつつ、適切なシール性を発揮して確実に漏れを防ぐことができるボールバルブである。
【0021】
請求項4に係る発明によると、バーリング部の傾斜面とグランドパッキンのくさび状の筒状パッキン部の嵌合によりくさび効果を発揮でき、グランドパッキンをステムに密着シールし、グランドパッキンとステム、グランドパッキンと挿入穴との密着シール性がそれぞれ高まることで、優れた軸封シール機能を発揮させることができるボールバルブである。
【0022】
請求項5に係る発明によると、バルブ本体をプレス加工で形成できることにより、鋳造による製造の課題である巣割れや湯流れ不良等の鋳物欠陥や重量の増加を防いで、製作容易で組立性がよく工数やコストを大幅に削減できるボールバルブを製作できる。しかも、バーリング部は、容易に形成することができ、その後加工を施す必要もないため工数を低減でき、このバーリング部に対してグランドパッキンを外方より組み込むことで量産化にも適したボールバルブである。
更に、このバーリング部により、ステムの装着時にねじり応力や過大な引張・圧縮応力がグランドパッキンに加わることがなく、グランドパッキンが傷つくのを防いでシール性確実に保持しながら組み付けできるボールバルブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明におけるボールバルブの好ましい実施形態並びに作用を図面に基づいて詳細に説明する。図1ないし図6においては、本発明のボールバルブの第1実施形態を示している。このボールバルブは、一般的なボールバルブの構造を呈し、ステム30の回転トルクによって弁体(ボール)35を回転するものである。
【0024】
図中において、ボールバルブ本体20は、管材21によって略筒状に形成する。この管材21は、ステンレス又は銅合金製等の薄肉(非厚肉)タイプの継目なしパイプによって成形するか、又は、鋼板をロール状に成形した後に、溶接等の手段にて筒状に接合した継目のあるタイプにより形成する。バルブ本体20は、管材21を所定長さ、即ち、バルブ本体20を構成する長さに切断した後に、両端をバリ取りする。
【0025】
バルブ本体20(管材21)のステム挿入位置には、絞り又はタタキ成形してフラット状の座面22を外周側に形成し、かつ、当該位置を内方に折曲してステムの鍔部31側に向けてバーリング加工を施して筒状のバーリング部23を形成し、このバーリング部23の内周側に挿入穴24を設けている。バーリング部23は、バルブ本体20に対して略直角の角度に形成し、これにより、バーリング部23は、略円筒形状になっている。また、バーリング部23は、溶接などの間接的固定をしていないことから精度が高く、軸封部分と軸方向の直角度や同心度を向上させている。
【0026】
バルブ本体20の円周方向には、一対の適宜長さの切り込み26aを入れて切り曲げ部26を形成しており、この切り曲げ部26は、管材21の軸方向に対して独立して変形可能に設けている。本実施形態においては、この切り曲げ部26を、管材21の円周上の4箇所に等間隔で放射状に形成しているが、この切り曲げ部26の数は任意に変更できる。その場合、少なくとも2箇所以上に形成するのが望ましく、円周方向において確実に位置決めできる。切り曲げ部26は、塑性加工により形成できるため組込み時の精度が向上し、また、形成時には、機械的切削加工を少なくすることができる。
【0027】
ステム30は、下部付近の途中に鍔部31を環状に設けており、この鍔部31は、挿入穴24よりも大径に設けていることでステム30の装着後にこのステム30が流体の圧力等によりバルブ本体20の外方に飛び出すのを防止している。また、ステム30の下部には、非円形の突設部32が形成され、この突設部32がボール35と接合可能になっている。
【0028】
ボール35は、貫通孔36を有し、ステム30の取付位置には、弁全開時又は全閉時において、流路(軸方向)と平行になるようにステム嵌合面37を形成している。このボール35は、ステム嵌合面37にステム30の突設部32を係合させ、このステム30を介してバルブ本体20内で回転自在になるように設けている。
ボール35は、真球度や偏芯度等の寸法精度を高く保つように形成するようにし、例えば、アモルファス金属(金属ガラス。例えば、Zr−Al−Ni−Cu)を材料として、これを精密ダイカスト成形により加工することで、後加工をすることなく高い寸法精度や表面平滑性を得ることができる。これにより、ボール35に対するボールシート54の押圧力を過剰に高くすることなく弁座シール性が確保できることからステムの回動トルクも抑制することができ、延いては、ボールバルブ全体の軽量化を図ることが可能になる。
【0029】
グランドパッキン40は、例えば、PFAやPTFEなどの樹脂材料により、筒状パッキン部42とこのパッキン部42の上端に折曲させて鍔状パッキン部41を設けた形状になっている。このグランドパッキン40は、挿入穴24に挿入され、挿入後には筒状パッキン部42がバーリング部23とステム30との間に装着され、また、鍔状パッキン部41が座面22に当接できるようになっている。これにより、グランドパッキン40は、ステム30に対して同軸状態に調芯させる軸受機能を働かせることができるようになっている。また、このとき、筒状パッキン部42が挿入穴24に密着することで、グランドパッキン40は、軸封機能を働かせることができる。このため、バルブ本体20は、スラスト荷重を低減した状態でステム30を回動できるようになっている。
【0030】
グランド部材45は、ステム39に螺合したナット34の締付力で締付可能にグランドパッキン40の上方に装着しており、ナット34を締付けたときには、このグランド部材45を介してグランドパッキン40を押圧すると共に、ステム30の鍔部31を引き上げるようになっている。
また、グランド部材45でグランドパッキン40を押圧すると、鍔状パッキン部41が座面22に密接すると共に、筒状パッキン部42の下端43が鍔部31の上面31aに密接するように設けている。
【0031】
更に、図2に示すように、筒状パッキン部42の長さLは、バーリング部の長さMに対してL>Mの関係になるように設定しており、これにより、バーリング部23の下端23aと鍔部31の上面31aの間にやや隙間を保持させるようにしている。このときの隙間を図2においてGで示している。また、グランド部材45の上面にはワッシャー49が装着される。なお、ナットの過剰な増し締めが行われた場合には、下端46aが座面22に当接するようにし、ナットの締付力を制限している。
【0032】
皿バネ48は、後述するハンドル58の上面側に装着され、ボールバルブを組付けたときにグランドパッキン40にかかる圧力を適度な圧力に補正できるようになっている。これにより、例えば、寒冷地でボールバルブを使用する際にグランドパッキン40が収縮した場合でもこの皿バネ48の弾性力によって適切な面圧力に保持できる。
【0033】
インサート部材50は、略筒型形状に形成し、このインサート部材50、50を管材21の両側より挿入して管材21とインサート部材50を固着している。インサート部材50は、例えば、ロストワックス鋳造等の精密鋳造などによって図のような形状に成形し、管材21への挿入時に強い力が加わっても変形しない強度を有している。
【0034】
インサート部材50の外周には凹状の係止溝51を有しており、この係止溝51に対応する位置に、予めバルブ本体20の切り曲げ部26を形成するようにしておき、この切り曲げ部26をバルブ本体20の求心方向へ押圧して当該切り曲げ部26を係止溝51に対して落し込むことによりバルブ本体20とインサート部材50を固定している。
【0035】
また、インサート部材50の外端側には配管接合部であるめねじ52を形成している。更に、インサート部材50の先端には装着部53を設け、この装着部53にボールシート54を装着している。ボールシート54は、ボール35が回転したときに一定のトルクとシール性を確保できる材料により形成し、例えば、超高密度樹脂成形により加工し、ボールシート54をボール35に当接させたときに、外気温の変化による熱伸縮現象を抑え、高弾性を維持することができ、各部品の寸法精度のバラツキを原因とした組付け時の変形・ズレによる偏摩耗の発生などを防ぐことができる。
【0036】
インサート部材50の先端側外周にはOリング装着用の外周溝55を形成し、この外周溝55に樹脂製等のOリング56を装着している。このOリング56は、インサート部材50の外周面とバルブ本体29の内周面の間をシールしている。
【0037】
インサート部材50の外端側の外周面には、位置決め突条部57を形成しており、バルブ本体20にインサート部材50を挿入したときに、この位置決め突条部57がバルブ本体20の管端20aに係合し、インサート部材50に装着したボールシート54により、ボール35のボール面38に適切な面圧が加わるようにしている。このため、位置決め突条部57は、インサート部材50の軸方向に対して正確な位置に形成しておく必要がある。
【0038】
ハンドル58は、ステム30上部の平行二面部33に嵌合可能な嵌合穴部58aを有し、この嵌合穴部58aを平行二面部33に嵌合することでステム30に対して非回転状態で取付け可能に設けている。
図4ないし図6に示すように、ハンドル58には、切り曲げ加工により2箇所の突設片59、59を形成しており、この突設片59は、嵌合穴部58aの図示しない軸心に対して略90°の間隔で形成している。しかも、この突設片59は、ハンドル58をステム30に装着し、このハンドル58を回転したときにバルブ本体20の切り曲げ部26に対応する位置に形成しており、ハンドル58を閉又は開状態に操作したときに何れか1方の突設片59が切り曲げ部26の係止面26bに係止して、ハンドル58の回転を略90°に回転規制できるようになっている。
【0039】
これにより、切り曲げ部26の係止面26bを、インサート部材50とバルブ本体20のストッパー以外の目的である回転規制部として兼用でき、バルブ本体20側にわざわざ回転規制部分を形成することなくボール35を正確に回転規制することができる。このため、加工工数の削減を図りつつ、切り曲げ部26と係止溝51をストッパーと回転規制部として機能の合理化を図ることができる。
【0040】
更に、ハンドル58の突設片59は、切り曲げ部26の位置に合わせるために精密な切り曲げ加工技術により形成すると、この優れた寸法精度により、曲げ剛性が向上して幅寸法も正確に設けられる。また、この突設片58は、図4、図5に示すように、バルブ本体20の上部に設けた切り曲げ部26の係止面26bに係止するように設定することにより、突設片58の長さを短く形成できるので、打ち抜き時に剛性不足で捩れたり、根元部分よりクラックなどの破断が発生するのが防がれて寸法精度が向上し、剛性を確保できる。このため、ハンドル58成形時の不良率の低減を図ることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0041】
しかも、ハンドル58の回転時において、係止面26bに突設片59が当接する当接面59aは、突設片59の折り曲げ方向に対して直角方向に位置する面であるため剛性を高めることができる。このため、仮に、過大な操作荷重によって高トルクでハンドル58を回転させ、突設片59が強い力で係止面26bに当接したとしても、この突設片59が折れ曲がったりすることがなく、曲げの形状が維持されて回転規制角度を正確に保つことができる。また、切り曲げ部26に突設片59を当接させることにより、バルブ本体のボデー側面に当接させる場合よりも突設片の長さを短くすることができる。
なお、本実施形態におけるボールバルブは、ハンドル58によって手動回転しているが、図示しないアクチュエータ等によって自動回転させるようにしてもよい。
【0042】
続いて、本発明のボールバルブを組み付ける際の手順並びに作用を説明する。
ボールバルブを組付ける際には、先ず、バルブ本体20の一側の管端20aより一方のインサート部材50を挿入した後に、挿入穴24の下方からステム30を挿入し、このステム30の突設部32をボール35のステム嵌合面37に嵌合させてボール35をステム30に対して非回転自在に接合する。
この状態でステム30の上方からグランドパッキン40を装着し、鍔部41の下面41bが座面22に密着するまで筒状パッキン部42を挿入穴24に挿入する。このとき、筒状パッキン部の下端43がステムの鍔部31に当接した状態になり、また、この鍔部31は、バーリング部23の下端23aから離間した状態になってこの鍔部31とバルブ本体20が非接触の状態になっている。
【0043】
次いで、バルブ本体20の他側の管端20aより他方のインサート部材50を挿入する。双方のインサート部材50、50の挿入後には、位置決め突条部57がバルブ本体20の管端20aに係合することでインサート部材50、50がバルブ本体20の正確な位置に配設され、これにより、ボールシート54によるボール面38へのシール面圧を適切な状態に確保できるようにしている。この状態で、バルブ本体20の切り曲げ部26を求心方向に押圧して、当該切り曲げ部26をインサート部材50、50の係止溝51に落し込み、バルブ本体20とインサート部材50、50を固定する。
【0044】
この場合、切り曲げ部26は、バルブ本体20にインサート部材50を挿入した後に、一回のプレス工程により切り込みの形成と曲げ加工を同時に施すのが好ましいが、前述したように、バルブ本体20に予め設けた切り込み26aを押圧して曲げ加工するようにしてもよい。何れの加工方法の場合にも、位置決め突条部57と管端20aの係合により確実に位置決めした状態で切り曲げ部26を係止溝51に確実に落し込むことができる。
【0045】
また、切り曲げ部26は、例えば、ファインブランキング(精密打ち抜き)を応用した加工方法によって形成するのがよく、この場合、板厚の厚い金属を打ち抜き加工のみによってバリの無い状態で成形でき、しかも、一般のプレス金型に比較して高精度に形成できる。
【0046】
次いで、グランドパッキン40の上方からグランド部材45を装着する。グランド部材45の装着時には、環状突部46の内周面側を鍔部41に嵌合させた状態で取り付ける。更に、この上からワッシャー49をステム30に取り付ける。
【0047】
続いて、このグランドパッキン40とグランド部材45と同様に、ワッシャー49の上から嵌合孔部58aを平行二面部33に嵌合させるようにハンドル58を取付ける。次に、ハンドル58の上に皿バネ48を装着し、ステム30に形成したおねじ部30aにめねじ部34aを螺着させるようにしながらナット34を締め付ける。このナット34の締付けにより、ステム30は、バルブ本体20の上部(遠心方向)に引き上げられようとするが、この締め付け力により、グランド部材45の上面45aに面圧力が加わっているため、このグランド部材45は、ステム30に対して下方に圧縮され、これにより、鍔部41が座面22に圧接されると共に、筒状パッキン部42の内外周側がステム外周面30bと挿入穴24に密着シールする。
【0048】
また、このとき、グランドパッキン40がバーリング部23の先端側に移動し、筒状パッキン部の下端43が鍔部の上面31aに当接することにより、鍔部31とバーリング部の下端23aとの離間状態が確保された状態でボールバルブが一体に組み付けられる。この状態は、ハンドル58を操作してステム30を回転したときにも維持される。
【0049】
本発明のボールバルブは、バルブ本体20のステム挿入位置に座面22を形成し、かつ当該位置を内方に折曲してステム30の鍔部31側に向けて筒状のバーリング部23を形成し、バーリング部23とステム30の間に装着した筒状パッキン部42とこのパッキン部42の上端に折曲させて座面22に当接する鍔状パッキン部41とでグランドパッキン40を構成し、このグランドパッキン40をグランド部材45で押圧して鍔状パッキン部41を座面22に密接させると共に、筒状パッキン部42の下端43を鍔部31に密接させているので、バーリング部23の下端23aとステムの鍔部31が接触することがなく、摩擦抵抗やカジリ現象を抑えて操作トルクの増加を防ぐことができる。
【0050】
この筒状パッキン部42は、従来技術(図13参照)に示すような薄肉環状の軸受7に比して、ステムの外周に沿って体積を大きく確保できることから、摩耗しにくい。従って、パッキン下端を継続的にステムの鍔部に密着させることができ、隙間Gを維持することができる。
しかも、グランドパッキン40は、グランド部材45によってナット34による締付力が制限されているので鍔部31に過大な面圧力が加わるのが防がれ、仮に、過剰な締付力でナット34を締付けたとしても、鍔部31の破損を防ぐことができる。
【0051】
また、グランドパッキン40は、ステム30の回転時にステム30を軸受でき、この軸受機能により、操作時のトルクの増加を抑えつつ、外部応力や配管接合時の振動などの外力が加わっても、ステム30が振れるのを防いで軸封シール機能を維持することができる。更に、ステム30の軸心と挿入穴24の同心状態を維持できることにより、偏摩耗などによってシール性能が損なわれるのを防ぐことができる。また、グランドパッキン40が軸方向に長い距離で密接できることにより、ステム30が倒れるのを防いでボール35が偏芯するのを防止できる。これらの軸封機能により、本発明のボールバルブは、バルブ本体20とステム30の間から流体が漏れるのを防いで優れたシール性を発揮できる。
【0052】
また、グランド部材45は、その外周に延設され且つバルブ本体20側に屈曲された環状突部46によりグランドパッキン40の鍔部41を外周側から包囲しながら内側底面45cにより鍔部上面41aを押圧しているので、ナット34の締付力によってパッキン面圧力が増加したとしても、鍔部41の外周面41cが環状突部46の内周面46bに当接して拡径が防止され、鍔状パッキン部41が外部にはみ出すのを抑制できる。また、このように、グランド部材45は、環状突部46により鍔部41を包囲しながら上方側から押圧できるので、この相乗効果により、グランドパッキンを効果的に下方側に押圧し、強い力で圧接させることができる。これにより、グランドパッキン40によるシール面圧を保持し、ステムの鍔部31に当接する下端43のシール面圧を保持して、バーリング部23の下端23aと鍔部31の接触を確実に防いでいる。
【0053】
軸封シール時には、グランド部材45の内側底面45cとグランドパッキン40の鍔部上面41a、環状突部46の内周面46bと鍔部41の外周面41c、鍔部41の下面41bとバルブ本体20の座面22、円筒部外周面42aと挿入穴24、円筒部先端面43と鍔部上面31a、円筒部内周面42bとステム外周面30bがそれぞれ密着し、この6面シールによって優れたシール性能が発揮され、各シール面同士のシール面圧の均一化が図られた状態で流体漏れを防ぐことができる。
【0054】
更に、円筒部内周面42bとステム外周面30bの摩耗は、皿バネ48による加重によってグランド部材45がバルブ本体20との隙間分だけ移動して許容することができる。また、この皿バネ48により、グランドパッキン40に許容できる面圧力以上の力が加わるのが防がれるため、グランドパッキン40が永久変形して外部にはみ出したり、圧縮割れや破断してシール機能が損なわれるのを防ぐことができる。
【0055】
このように、グランドパッキン40は、皿バネ48による外部の弾性力によってシール力を発揮するようにしているので、流体内の異物等によってシール性に悪影響を受けるのを抑えることができる。また、組付け時にグランドパッキン40の自己弾性力を必要としないため、ステム30やバルブ本体20の接触面に加工粗さや隙間があり、これらが片寄った状態で組み込まれたとしても、ステム操作時における偏摩耗や裂傷が防がれ、長期に渡って高いシール性を維持することができる。
【0056】
しかも、グランドパッキン40の組込み時には、このグランドパッキン40をバーリング部23に挿入するだけでねじりや引張り・圧縮応力等の負荷が加わるのを抑えつつ簡単に装着して損傷を防ぐことができる。また、グランドパッキン40は、PFA等の樹脂材料により超高密度に成形できるため、ナット34による増し締め後にも流体の熱や内部圧力に対して膨張・収縮し難く、圧縮永久変形や圧縮割れを防ぐことが可能になる。
【0057】
続いて、図7においては、本発明のボールバルブの第2実施形態であり、要部を分解した状態を示している。なお、この実施形態以降において、上記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。このボールバルブは、バルブ本体60の筒状のバーリング部61を内方に向かって緩やかに縮径させた傾斜面とし、この傾斜面61にグランドパッキン40の筒状パッキン部42をくさび状に嵌合させている。これにより、バーリング部61と筒状パッキン部42との間にくさび効果を発揮させることができ、このくさび効果により、グランドパッキン40がステム30に対して下方に圧縮され、バーリング部61の微量傾斜面によるスプリング効果と相俟って、グランドパッキン40の筒状パッキン部42とバーリング部61、筒状パッキン部42とステム30とのシール性を高めることができ、且つ、ステム30をより効果的に自動調芯することができる。
【0058】
図8ないし図10においては、本発明のボールバルブの第3実施形態を示している。このボールバルブでは、ハンドル65を図の形状に形成し、このハンドル65の内部にステム30を嵌合可能な嵌合穴66を設け、更に、この嵌合穴66の一部に内周方向に突設した突起部67を設け、この突起部67をステム30に設けた凹状部30cに係止可能に設けていることで、このハンドル65をワンタッチで簡易的に着脱可能にしている。
【0059】
係止リング68は、スリット69aによって内径側に設けた穴状の挿入部68aを拡径可能に設けており、この挿入部68aの拡径により、内径側にテーパ突起部69を形成可能に設けている。係止リング68は、ナット34の代替としてステム30に装着し、装着時には、内方下面側をグランドパッキン40の鍔部上面41aに当接させ、また、挿入部68aの縁部位をステム30上方の拡径段部30dに係合させるようにする。
【0060】
このボールバルブは、係止リング68の装着後に、この係止リング68がグランドパッキン40の鍔部上面41aとステム30の拡径段部30dの間で弾発し、この力によりステム30を上方(遠心方向)に引き上げる力を得ることができる。よって、鍔状パッキン部41が座面22、筒状パッキン部42の下端43が鍔部31に密着し、かつ、バーリング部23の下端23aと鍔部31が離間した状態を維持することができ、優れた軸封機能を発揮することができる。
また、係止リング68は、ボールバルブからハンドル65を取外してもステム30への嵌め合い状態が維持されるため、その軸封機能を維持することができる。
【0061】
また、図示しないが、挿入穴24にバーリング加工を施す際に、バーリング部23の一部を遠心方向に突出させてストッパ片を形成し、一方、ステム30の鍔部31にこのストッパ片に係止してその回転を規制できる切欠溝を形成してストッパ機構を設け、このストッパ機構によって、ボールを略90°の角度で回転規制するようにしてもよい。
【0062】
図11、図12においては、本発明のボールバルブの第4実施形態を示している。このボールバルブでは、第1実施形態のボールバルブと異なる形状のハンドル70を装着し、このハンドル70で操作可能に設けたものである。
ハンドル70は、ステム30への嵌合孔部70aを中心として2つの操作部71、71を有する形状を呈しており、各操作部71を操作することでステム30を回動可能に設けている。これにより、このボールバルブを狭い場所に設置した場合でも何れかの操作部71を操作できることで容易に操作でき、あらゆる場所にこのボールバルブを設置することができる。
また、ハンドル70は、第1実施形態の場合と同様にバルブ本体20の切り曲げ部26の位置に対応する突設片72を有しており、ハンドル70を閉又は開状態に操作した場合には、この突設片70が切り曲げ部26の係止面26bに係止することで、ハンドル70を略90°に回転規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のボールバルブの第1実施形態を示した断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1のボールバルブの平面図である。
【図4】ハンドルのストッパ構造の一例を示す斜視図である。
【図5】図4のハンドルの閉状態を示す斜視図である。
【図6】ハンドルを示した斜視図である。
【図7】本発明のボールバルブの第2実施形態を示した要部断面図である。
【図8】本発明のボールバルブの第3実施形態を示した断面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】係止リングを示す平面図である。
【図11】本発明のボールバルブの第4実施形態を示した部分断面図である。
【図12】図11のボールバルブの平面図である。
【図13】従来のボールバルブの要部断面図である。
【図14】従来の他のボールバルブの要部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
20 バルブ本体
21 管材
22 座面
23 バーリング部
23a 下端
30 ステム
31 鍔部
31a 上面
34 ナット
35 ボール(弁体)
36 貫通孔
40 グランドパッキン
41 鍔状パッキン部
42 筒状パッキン部
43 下端
45 グランド部材
46 環状突部
46a 下端
50 インサート部材
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体内に貫通孔を有するボールを途中に鍔部を有するステムを介して回転自在に設けたボールバルブにおいて、前記バルブ本体のステム挿入位置に座面を形成し、かつ当該位置を内方に折曲して前記ステムの鍔部側に向けて筒状のバーリング部を形成し、前記バーリング部とステムの間に装着した筒状パッキン部とこのパッキン部の上端に折曲させて前記座面に当接する鍔状パッキン部とでグランドパッキンを構成し、このグランドパッキンをグランド部材で押圧して鍔状パッキン部を座面に密接させると共に、前記筒状パッキン部の下端を前記鍔部に密接させ、前記バーリング部の下端と前記鍔部の上面の間にやや隙間を保持させるようにしたことを特徴とするボールバルブ。
【請求項2】
前記ステムに螺合したナットの締付力で前記グランド部材を介してグランドパッキンを押圧すると共に、ステムの鍔部を引き上げるようにした請求項1に記載のボールバルブ。
【請求項3】
前記グランド部材の外周に環状突部を形成し、この環状突部の下端を前記バルブ本体の座面に当接させて前記ナットの締付力を制限した請求項1又は2に記載のボールバルブ。
【請求項4】
前記筒状のバーリング部を内方に向かって縮径させた傾斜面とし、この傾斜面にグランドパッキンの筒状パッキン部をくさび状に嵌合した請求項1乃至3の何れか1項に記載のボールバルブ。
【請求項5】
前記バルブ本体は、管材であり、この管材のステム挿入位置にバーリング加工を施してバーリング部を形成し、この管材の両側にインサート部材を挿入して管材とインサート部材を固着した請求項1乃至4の何れか1項に記載のボールバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−127726(P2009−127726A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302663(P2007−302663)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】