説明

ボールペン用油性インキ

【課題】筆記時に筆跡が途切れたりすることの無い油性ボールペン用インキを提供する。
【解決手段】着色剤と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルと、インキ全量に対し0.5〜5.0重量%のフェノール樹脂とインキ全量に対し0.2〜4.5重量%のポリエーテル変性シリコーンオイルとから少なくともなり、該フェノール樹脂1.0に対してポリエーテル変性シリコーンオイルの比率を0.05〜8としたインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてインキを紙面等の被筆記面に転写するボールと、このボールを先端開口部から一部臨出させて回転自在に抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップをペン先としたボールペンに収容されたボールペン用油性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
途切れのない筆跡を得るために、従来、潤滑性を付与する材料をインキに添加したりするなどしてボールの回転をスムーズにする試みがなされてきた。
例えば、脂肪酸アルカノールアミド化合物からなる潤滑剤を含有させる(特許文献1)ことや、オレイン酸と脂肪族アミンを含有させたり(特許文献2)、更には、平均分子量が1800〜15000であるポリエチレングリコールを3〜15%含有させてボール表面に適度なインキ膜を形成させる(特許文献3)等の手段がとられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−37878公報(2頁上から3行目〜2頁上から5行目)
【特許文献2】特開平6−212111号公報(2頁左欄上から2行目〜2頁左欄上から6行目)
【特許文献3】特開2005−200491公報(2頁左欄上から3行目〜2頁左欄上から6行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、ステンレス等の金属で作られたボールペンチップやボールの表面に脂肪酸アルカノールアミド化合物が強固に吸着することにより、ボールとボール受け座間に強固な潤滑層を形成するとしているが、筆記するにつれボールの回転による摩擦で吸着した脂肪酸アルカノールアミド化合物が外れてボールとチップの受け座が直接当たるようになりボール回転時に大きな摩擦力が働いてスムーズに筆記出来なくなる畏れがある。
特許文献2に記載の発明も同様に徐々にオレイン酸と脂肪族アミンがとれてしまいスムーズに筆記出来なくなる畏れがある。
特許文献3の発明ではボールやチップの受け座に対して固着していないのでボールと受け座が直接強く当たるのを防止する効果が弱く、ボールがスムーズに回転しない畏れがある。
このように、従来の技術ではボールを常にスムーズに回転させらない畏れがあり、結果として筆跡が途切れたりする場合があった。
本発明は、筆記時のボール回転をスムーズにし常に綺麗な筆跡が得られるボールペン用油性インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、着色剤と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルと、インキ全量に対し0.5〜5.0重量%のフェノール樹脂とインキ全量に対し0.2〜4.5重量%のポリエーテル変性シリコーンオイルとから少なくともなり、該フェノール樹脂に対するポリエーテル変性シリコーンオイルの重量比率を0.05〜8としたボールペン用油性インキを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
フェノール樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイルとは、それぞれフェノール樹脂の多数の水酸基部分、ポリエーテル変性シリコーンオイルのポリエーテル部分にて、溶剤であるジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルと親和し混和された状態で存在するが、フェノール樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイルとは、互いの疎水性部分で親和すると共に、ポリエーテル変性シリコーンオイルはポリシロキサン部分があるのでジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルとは溶けにくいので、疎水部分をジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルの外側に向けるように移行するものと考えられる。よって、互いに親和した状態のフェノール樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイルとが、インキ界面に移行してボールペンチップの内面に付着する。
フェノール樹脂は比較的強い粘着性を有しており、ボールペンチップ内面に強固に吸着し、該部にフェノール樹脂とポリエーテル変性シリコーンオイルの各ジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルに対して親和性のある部分をインキ側に向けた層が形成されるものと推察され、特にボール表面をインキで濡れた状態を維持するため、筆記中においてもボールの金属表面が露出した状態とならずにいつもインキで濡れた状態となり、ボールのスムースな回転が維持されるものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に発明を詳細に説明する。
着色剤としては、従来、ボールペン用インキに用いられている染料、顔料の全てが使用でき、染料、顔料は単独で用いても、併用しても良い。
油溶性の染料としては、具体的には、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株)製)、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株)製)、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、BASF社製、独国)、バリファーストイエロー#3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー#3105(C.I.18690)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック#3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー#1101、バリファーストイエロー#1109、バリファーストイエロー#1151、バリファーストイエロー#1171、バリファーストオレンジ#2210、バリファーストレッド#1308、バリファーストレッド#1320、バリファーストブルー#1605、バリファーストバイオレット#1701(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーBPNH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)や、ネオスーパーブルーC−555(以上、中央合成化学(株)製)等の従来公知の一般的なものが使用できる。
【0008】
顔料は筆跡堅牢性の向上やインキの流動特性の改良を目的に添加され、一例としては、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサン系顔料、ベリノン、ベリレン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、アニリンブラック、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、等の有機顔料や、酸化鉄、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、鉄黒、酸化チタン、硫酸バリウム、カドミウムレッド、弁柄、クロムイエロー、黄土、カドミウムイエロー、バリウム黄、群青、紺青等の無機系顔料及び蛍光顔料、樹脂粒子を染料で着色した顔料で使用樹脂がインキ溶剤に溶解しないものが挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用することが出来る。
黒色顔料としては例えば、プリンテックス3、同25、同30、同35、同40、同45、同55、同60、同75、同80、同85、同90、同95、同300、スペシャルブラック4、同5、同100、同250、同550(以上デグサヒュルスジャパン(株)製)。三菱カーボンブラック#2700、同#2650、同#2600、同#2400、同#2350、同#2300、同#2200、同#1000、同#990、同#980、同#970、同#960、同#950、同#900、同#850、同#750、同#650、同#52、同#50、同#47、同#45、同#45L、同#44、同#40、同#33、同#32、同#30、同#25、同#20、同#10、同#5、同#95、同#260、同CF9、同MCF88、同MA600、同MA77、同MA7、同MA11、同MA100、同MA100R、同MA100S、同MA220、同MA230(以上、三菱化学(株)製)、トーカブラック#8500/F、同#8300/F、同#7550SB/F、同#7400、同#7360SB/F、同#7350/F、同#7270SB、同#7100/F、同#7050(以上、東海カーボン(株)製)等のカーボンブラックや、ダイヤモンドブラックN(玉億色材(株)製)などのアニリンブラックや、ボーンブラック(三重カラーテクノ(株)製)や、鉄化ブラックKN−320(日本鉄化(株)製)などの鉄黒が挙げられる。
青色顔料としては例えばC.I.Pigment Blue 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同28、同29、同36、同60、同68、同76、同80等が使用できる。
赤色の顔料としてはC.I.Pigment Red 2、同3、同5、同8、同14、同17、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同53:1、同53:2、同57:1、同112、同122、同144、同146、同149、同166、同170、同175、同176、同177、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同211、同213、同214、同242、同253、同254、同255、同256、同257、同264、同266、同268、同270、同272等が使用できる。
黄色の顔料としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同79、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同109、同110、同111、同120、同128、同133、同136、同138、同139、同147、同151、同154、同155、同167、同173、同174、同175、同176、同180、同185、同191、同194、同213等が使用できる。
橙色の顔料としてはC.I.Pigment Orange5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同62、同68、同72、同74等がある。
緑色の顔料としてはC.I.Pigment Green7、同36、同37等が使用できる。
紫色の顔料としてはC.I.Pigment Violet19、同23等が使用出来る。
【0009】
これらの着色剤の使用量は全インキに対し1重量%以上40重量%以下が好適に使用できる。使用量が1重量%より少ないと筆跡が薄すぎて耐光性試験や耐溶剤性試験を行ったときに紙面上に残る着色剤の量が少なくなり筆跡の判読がし難くなる。40重量%より多いと配合時の溶解不足や経時的な沈降による目詰まりによる筆記不能が生じやすくなる。また、これらの着色剤は単独で使用しても2種類以上を併用して使用しても良い。
【0010】
また、これらの顔料の他に加工顔料も使用可能である。それらの一例を挙げると、Renol Yellow GG−HW30、同HR−HW30、同Orange RL−HW30、同Red HF2B−HW30、同FGR−HW30、同F5RK−HW30、同Carmine FBB−HW30、同Violet RL−HW30、同Blue B2G−HW30、同CF−HW30、同Green GG−HW30、同Brown HFR−HW30、Black R−HW30(以上、クラリアントジャパン(株)製)、UTCO−001エロー、同012エロー、同021オレンジ、同031レッド、同032レッド、同042バイオレット、同051ブルー、同052ブルー、同061グリーン、同591ブラック、同592ブラック(以上、大日精化工業(株)製)、MICROLITH Yellow 4G−A、同MX−A、同2R−A、Brown 5R−A、Scarlet R−A、Red 2C−A、同3R−A、Magenta 2B−A、Violet B−A、Blue 4G−A、Green G−A(以上、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製)等がある。
【0011】
油性インキの主媒体としてはジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルを使用する。これはインキに流動性を強く付与することが出来るからである。その使用量はインキ全量に対し20〜80重量%が好ましい。20重量%未満ではインキに流動性を付与する作用が小さく十分な流動性が得られない。80重量%を超えると他の成分の添加量が確保出来ず、筆跡が薄くなったり書き味が悪くなったりインキとしての性能が低下する。
本発明のインキにおいては、ジエチレングリコールモノメチルエーテルやジエチレングリコールモノエチルエーテル以外の有機溶媒を上記効果を損ねない範囲で補助的に使用することが出来る。使用出来る有機溶媒としては、グリコールエーテル類、グリコール類、アルコール類が特に好ましいがこれらに限られるわけではない。
一例を挙げると、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルモノグリコール、ベンジルジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,3ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール類、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸−2−エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類をなどがある。
【0012】
インキの乾燥防止や低温時での凍結防止などの目的で、有機溶媒を添加する事も可能である。具体的には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2−エチル1,3−ヘキサングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル等のエーテル、チオジグリコール、N−メチルピロリドン、2−フェノキシエタノールなどが使用出来る。
これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。また、その使用量はインキ全量に対して0.5重量%以上30重量%以下の添加が好ましい。0.5重量%未満では塗布部の乾燥防止効果が弱く使用不能になる恐れがあり、30重量%を超えて添加してもその効果の向上は見られず添加することの意味が見い出せない。
【0013】
フェノール樹脂はポリオール変性シリコーンオイルと組み合わせてボール表面をインキで濡れやすくするために使用するものであり、一例を挙げると、住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR−219、同PR−19788、同PR−50641、同PR−51530、同PR−53053。荒川化学工業(株)製のタマノル135、同340、同350、同352、同354、同361、同366、同380、同386、同392、同396、同406、同409、同410、同412、同414、同417、同418、同420、同423、同100S、同200N、同1010R、同510、同521、同526、同586、同572S、同7509、同PA、同531、同758、同759、ハリマ化成(株)製のハリフェノール145G、同512、同532、同561、同573、同582、同504、同565、同P−102U、同P−130、同P−160、同P−292、同PN717、同S−420、同P−600、同T3120、同P−216、同P−637、同P−222、同P−622、日立化成工業(株)製のヒタノール1133、同1135、同1140、同1501、同1002、同2501、同2100、同2181、同2181S、同2181SL、同2300N、同2306N、同2330N、同2353N、同2420、同2422、同2423A、同2426B、同643KNなどが有る。
これらのフェノール樹脂はインキ全量に対し0.5〜5.0重量%使用する。0.5重量%未満ではボール表面にインキとともに張り付いて膜を形成することが不十分となりボール回転をスムーズに出来ない。また、5.0重量%を超えて添加するとインキが乾燥しやすくなり長時間ペン先を大気中に放置した後の書き出しで筆跡が掠れる畏れがある。
【0014】
ポリオール変性シリコーンオイルはフェノール樹脂と組み合わせてボール表面をインキで濡れやすくするために使用するものであり、一例を挙げると、東レ・ダウコーニング(株)製のFZ−2110、FZ−2122、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−2154、FZ−2191、FZ−7001、FZ−2120、FZ−2130、SF−8410、FZ−2101、SH8400、SH−8700、FZ−720、FZ−7002、FZ−2123、FZ−2104、FZ−77、FZ−2105、SH3748、FZ−2118、FZ−7604、FZ−2161、SH3771、FZ−2162や信越化学工業(株)製のKF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4615、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017やGE東芝シリコーン(株)製のSILWETL−77、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4450、TSF4452、TSF4460などがある。
これらはインキ全量に対し0.2〜4.5重量%使用する。0.2重量%以下ではボール表面を濡らす効果が弱くなり、4.5重量%以上添加するとインキの表面張力が小さくなり、ペン先を下向きにして放置したときにインキが漏れ出す畏れがある。
また、特に、フェノール樹脂と共に、常にボール表面にインキが存在するものとするために、フェノール樹脂に対するポリエーテル変性シリコーンオイルの重量比率を0.05〜8とすることによって、ポリエーテル変性シリコーンオイル中のポリシロキサン部分及びフェノール樹脂の疎水部分をジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルに対して親和しているポリエーテル変性シリコーンオイルのポリエーテル部分及びフェノール樹脂の水酸基部分で覆いきることができるので、ボールが常にインキで濡れた状態が維持されるものと推察される。
【0015】
インキの粘度は所望の粘度になるよう増粘剤を適宜調整して使用することで調整できる。これらの具体例を挙げると、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルロース、HPC−SL、同L、同M、同H(以上、日本曹達(株)製)、アビセルPH−101、同102、同301、同M06、TG−101(以上、旭化成(株)製)等のセルロース類、NA−010(昭和電工(株)製)等のN−ビニルアセトアミド重合架橋物等の水溶性合成高分子などある。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0016】
顔料の分散性を良好なものとするために、アニオン、カチオン、ノニオン、両性の界面活性剤や、高分子樹脂を補助的に使用することができる。具体的には、高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸類、リン酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等のアニオン、ノニオン、カチオン性の界面活性剤や、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体樹脂などの顔料分散用の樹脂やオリゴマーなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
また、顔料を分散するには汎用されている一般的な方法を用いることが可能である。例えば、顔料と溶剤と分散剤を混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で顔料を分散する。ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の分散機はインキの有機溶媒の量、顔料濃度によって適宜選択する。
【0017】
その他必要に応じて、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、ケトン樹脂などの天然樹脂又は合成樹脂や、アニオン、カチオン、ノニオン、両性界面活性剤などの分散剤や、ベンゾトリアゾール、金属塩系、リン酸エステル系化合物などの防錆剤や、イソチアゾロン、オキサゾリジン系化合物などの防腐剤や、シリコン系、鉱物油、フッ素系化合物などの消泡剤や、グリセリン、ソルビタン系、多糖類、尿素、エチレン尿素またはこれらの誘導体などの湿潤剤や、アセチレングリコール、アセチレンアルコールなどのレベリング性付与剤や、凍結防止剤などの従来公知のインキ用添加剤を併用することも可能である。さらには、フォスファノールLB400、フォスファノールML−200、フォスファノールML−220、フォスファノールRD−510Y、フォスファノールRB−410、フォスファノールRD−720N、フォスファノールRL−210、フォスファノールRL−310、フォスファノールRS−410、フォスファノールRS−610、フォスファノールRS−710(以上東邦化学工業株製)、プライサーフA208B、プライサーフA219B、プライサーフA208S、プライサーフA212C、プライサーフA215C(以上第一工業製薬(株)製)等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系の潤滑剤をそのまま又は中和された形で添加しても良い。なお、中和剤には水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、有機及び無機のアミン、エタノールアミンなどのアルカノールアミン類ポリオキシエチレンアルキルアミン等が使用出来る。
【0018】
インキを製造するには、上記で分散した顔料と他の成分、例えば粘度調整用樹脂や溶剤、潤滑剤、水溶性多糖類等を混合し、ホモミキサー等の撹拌機にて均一になるまで溶解・混合することで得られるが、場合によって混合したインキをさらに分散機にて分散したり、得られたインキを濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。
【実施例】
【0019】
以下、実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明する。尚、各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルスジャパン(株)製) 6.0部
SPILON VIOLET C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
16.3部
VALIFAST YELLOW C−GNH(油性染料、オリエント化学工業(株)
3.1部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 50.1部
ベンジルグリコール 18.0部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 1.6部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 0.4部
フォスファノールLB400(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、活性剤、東邦化学工業(株)製) 1.5部
ナイミーンL201(ポリエチレングリコール−1ラウリルアミン、日油(株)製)
1.0部
ヒタノール1501(アルキルフェノール樹脂、日立化成工業(株)製) 0.5部
FZ−7002(ポリエーテル変性シリコーンオイル、東レダウコーニング(株)製)
0.25部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で3時間攪拌して黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0020】
(実施例2)
実施例1においてFZ−7002の添加量を1.0部に増やしその分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0021】
(実施例3)
実施例1においてFZ−7002の添加量を4.0部に増やし、その分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0022】
(実施例4)
実施例1においてFZ−7002の添加量を4.4部に、ヒタノールの添加量を0.55部に増やし、その分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0023】
(実施例5)
SPILON VIOLET C−RH(前述) 13.0部
SPILON YELLOW C−GNH(前述) 7.0部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 60.0部
フェニルグリコール 10.0部
ハリフェノール145G(フェノール樹脂、ハリマ化成(株)製) 2.0部
ポリビニルピロリドン K−90(増粘剤、日本触媒(株)製) 2.5部
NIKKOL HCO−5(ポリオキシエチレン(5)硬化ひまし油、活性剤、日光ケミカルズ(株)製) 2.0部
フォスファノールLP710(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、東邦化学工業(株)製) 1.0部
アミート105(ポリオキシエチレンココナットアミン、(株)花王製) 0.5部
FZ2120(ポリエーテル変性シリコーンオイル、東レダウコーニング(株)製)
0.2部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0024】
(実施例6)
実施例5においてFZ−2120の添加量を1.0部に増やしその分ジエチレングリコールモノエチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0025】
(実施例7)
実施例5においてFZ−2120の添加量を4.5部に増やし、その分ジエチレングリコールモノエチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0026】
(実施例8)
NOVOPERM RED F3RK70(C.I.Pigment Red 170、
クラリアントジャパン(株)製) 3.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 14.6部
SPILON RED C−BH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 0.8部
SPILON YELLOW C−GNH(前述) 3.4部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 45.7部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 17.0部
タマノールPA(フェノール樹脂、荒川化学工業(株)製) 5.0部
エスレックBL−1(前述) 6.0部
フォスファノールLB400(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、活性剤、東邦化学工業(株)製) 1.5部
ナイミーンL201(ポリエチレングリコール−1ラウリルアミン、日油(株)製)
1.0部
KF353(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製) 0.25部
上記成分のうち、エチレングリコールモノメチルエーテルとエチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからNOVOPERM RED F3RK70の全量を加えダイノーミルで直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で3時間攪拌して赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0027】
(実施例9)
実施例8においてKF353の添加量を1.0部に増やしその分エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを減じた以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0028】
(実施例10)
実施例8においてKF353の添加量を4.0部に増やし、その分エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを減じた以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0029】
(実施例11)
VALIFAST BLUE 1603(C.I.DIRECT BLUE 86とC.I.BASIC BLUE 7との造塩染料、オリエント化学工業(株)製)20.0部SPILON RED C−GH(前述) 3.0部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 7.4部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 51.5部
ベンジルグリコール 5.2部
エスレックBH−3(前述) 1.4部
フォスファノールLP710(前述) 1.0部
アミート105(前述) 0.5部
KF353(ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製) 0.22部
スミライトレジン PR−19788(フェノール樹脂、住友ベークライト工業(株)
製) 4.4部
上記成分を70℃で攪拌し、均一に溶解して青色のボールペン用油性インキを得た。
【0030】
(比較例1)
実施例2においてヒタノール1501の量を0.4部に減じその分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを加えた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0031】
(比較例2)
実施例2においてヒタノール1501の量を5.5部に増やしその分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0032】
(比較例3)
実施例5においてFZ2120の量を0.1部に減じその分ジエチレングリコールモノエチルエーテルを加えた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0033】
(比較例4)
実施例5においてFZ2120の量を5.0部に増やしその分ジエチレングリコールモノエチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0034】
(比較例5)
実施例1においてFZ7002の量を4.5部に増やしその分ジエチレングリコールモノメチルエーテルを減じた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0035】
(比較例6)
実施例8においてKF353の量を0.2部に減じその分エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを加えた以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0036】
(比較例7)
実施例4においてハリフェノール145Gを、マルキード#33(マレイン酸樹脂、荒川化学工業(株)製)に代えた以外は同様に為し黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0037】
(比較例8)
実施例6においてハリフェノール145Gを、マルキード#33(マレイン酸樹脂、荒川化学工業(株)製)に代え、KF353をニッコールBO−7V(ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、日光ケミカルズ(株)製)に代えた以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0038】
(比較例9)
実施例6においてKF353をニッコールBO−7V(ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、日光ケミカルズ(株)製)に代えた以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0039】
(比較例10)
比較例8のハリフェノール145Gの添加量を6.0部に、ニッコールBO−7Vの添加量を5.5部に増やした以外は同様に為し赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0040】
以上、実施例、比較例で得たインキについて、下記の試験を行った。結果を表1に示す。
(試験用油性ボールペンの作製)
上記実施例1〜11及び比較例1〜10で得たボールペン用油性インキを市販の油性ボールペン(.e−ball、製品符号 BK127、ぺんてる(株)製(ボール径φ0.7))と同構造の筆記具に0.3g充填し、遠心機にて遠心力(1000rpm、5分間)を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0041】
筆跡状態の測定:上記実施例、比較例のボールペンを作成して24時間後にn=5本ずつ(株)トリニティーラボ製のTribo−master(Type:TL201Sa)にて、筆記角度70°、荷重100g、筆記速度2mm/sec)で10cm筆記させた時のかすれた部分の距離の和を測定した。
【0042】
ペン先耐乾燥性試験:上記実施例、比較例のボールペンを作成して24時間後にn=5本ずつ温度25℃、湿度60%の環境キャップオフの状態で横向きに30分放置した後(株)トリニティーラボ製のTribo−master(Type:TL201Sa)にて、筆記角度70°、荷重100g、筆記速度7cm/sec)筆記した時に掠れた距離を測定した。
【0043】
インキ漏れ試験:上記実施例、比較例のボールペンを作成して24時間後にn=5本ずつペン先を下向きにして温度25℃、湿度60%の環境に24時間放置したときのペン先から染み出てチップに付着したインキの長さを測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
以上、詳細に説明したように、本発明のインキは、筆記時に筆跡が途切れたりすることの無い油性ボールペン用インキに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノエチルエーテルと、インキ全量に対し0.5〜5.0重量%のフェノール樹脂とインキ全量に対し0.2〜4.5重量%のポリエーテル変性シリコーンオイルとから少なくともなり、該フェノール樹脂1.0に対してポリエーテル変性シリコーンオイルの比率を0.05〜8としたボールペン用油性インキ。

【公開番号】特開2010−222409(P2010−222409A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68759(P2009−68759)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】